IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社岡村製作所の特許一覧

<>
  • 特許-椅子の肘掛け取付構造、椅子 図1
  • 特許-椅子の肘掛け取付構造、椅子 図2
  • 特許-椅子の肘掛け取付構造、椅子 図3
  • 特許-椅子の肘掛け取付構造、椅子 図4
  • 特許-椅子の肘掛け取付構造、椅子 図5
  • 特許-椅子の肘掛け取付構造、椅子 図6
  • 特許-椅子の肘掛け取付構造、椅子 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】椅子の肘掛け取付構造、椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/54 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
A47C7/54 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019188536
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021062037
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 裕一郎
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-090987(JP,A)
【文献】特開2019-048014(JP,A)
【文献】特開2004-248780(JP,A)
【文献】特開2015-226699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/00-5/14
A47C 7/54
A47B 57/42
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れと、前記背凭れの側方に配置された肘掛けと、を備える、椅子の肘掛け取付構造であって、
前記背凭れは、前記背凭れの側方に開口し、且つ、上下方向において互いに離間して形成された第1開口部及び第2開口部を有し、
前記肘掛けは、
前記第1開口部に差し込まれると共に、前記第1開口部の開口側と逆側から前記背凭れに係止する差込部と、
前記第2開口部の開口縁に支持されると共に、前記差込部の前記背凭れに対するかかり代が少なくなる側への前記肘掛けの変位を規制する被支持部と、を有し、
前記第2開口部を挿通して配置され、前記被支持部を前記背凭れに締結するボルトを有する、椅子の肘掛け取付構造。
【請求項2】
前記背凭れは、前記第1開口部及び前記第2開口部と連通する筒状部を有し、
前記筒状部に挿入された挿入部を有する、請求項1に記載の椅子の肘掛け取付構造。
【請求項3】
前記挿入部に、前記ボルトが螺合するねじ孔が形成されている、請求項2に記載の椅子の肘掛け取付構造。
【請求項4】
前記挿入部は、前記筒状部に挿入された状態において、前記差込部を前記筒状部に差し込み可能とする逃げ溝を有する、請求項2または3に記載の椅子の肘掛け取付構造。
【請求項5】
背凭れと、前記背凭れの側方に配置された肘掛けと、を備える、椅子の肘掛け取付構造であって、
前記背凭れは、前記背凭れの側方に開口し、且つ、上下方向において互いに離間して形成された第1開口部及び第2開口部を有し、
前記肘掛けは、
前記第1開口部に差し込まれると共に、前記第1開口部の開口側と逆側から前記背凭れに係止する差込部と、
前記第2開口部の開口縁に支持されると共に、前記差込部の前記背凭れに対するかかり代が少なくなる側への前記肘掛けの変位を規制する被支持部と、を有し、
前記背凭れは、前記第1開口部及び前記第2開口部と連通する筒状部を有し、
前記筒状部に挿入された挿入部を有し、
前記挿入部は、前記筒状部に挿入された状態において、前記差込部を前記筒状部に差し込み可能とする逃げ溝を有する、椅子の肘掛け取付構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の椅子の肘掛け取付構造を備える、椅子。
【請求項7】
請求項3~5のいずれか一項に記載の椅子の肘掛け取付構造を備える、椅子であって、 少なくとも前記背凭れを支持する支持構造体を備え、
前記支持構造体に前記挿入部が設けられている、椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子の肘掛け取付構造、椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野に属するものとして、例えば、下記特許文献1に開示される椅子の肘掛け取付構造が公知である。
特許文献1に開示される椅子の肘掛け取付構造は、背凭れを、脚体の後部より起立する背凭れ支持杆により支持するとともに、肘掛けにおける上下方向を向く取付基部の下端部を、前記背凭れの側方において前記脚体の後側端に設けた肘掛け支持部材の上向突部に嵌合し、かつ前記取付基部の上端部を、前記背凭れの側面にボルトをもって締着することにより、前記肘掛けを、その取付基部の内側面が背凭れの側面と当接するようにして、前記脚体と背凭れに取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-095931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の構成では、肘掛けの取付基部における下端部を、脚体に設けた肘掛け支持部材の上向突部に嵌合させた状態で、肘掛けの取付基部における上端部を背凭れの側面にボルトをもって締着させている。このため、肘掛けを取り付ける際には、肘掛け、背凭れ、脚体の3つの部材を位置合わせする必要があった。また、脚体に肘掛けを下方から支持する上向突部を設けているため、デザイン上の制約が大きかった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、肘掛けを取り付ける際の位置合わせが容易であり、且つ、デザイン上の制約が小さい椅子の肘掛け取付構造、椅子の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る椅子の肘掛け取付構造は、背凭れと、前記背凭れの側方に配置された肘掛けと、を備える、椅子の肘掛け取付構造であって、前記背凭れは、前記背凭れの側方に開口し、且つ、上下方向において互いに離間して形成された第1開口部及び第2開口部を有し、前記肘掛けは、前記第1開口部に差し込まれると共に、前記第1開口部の開口側と逆側から前記背凭れに係止する差込部と、前記第2開口部の開口縁に支持されると共に、前記差込部の前記背凭れに対するかかり代が少なくなる側への前記肘掛けの変位を規制する被支持部と、を有する。
【0007】
この構成によれば、背凭れの第1開口部に差し込まれた肘掛けの差込部が、第1開口部の開口側と逆側から背凭れに係止するため、肘掛けの背凭れに対する側方への抜け(倒れ)を規制することができる。また、背凭れの第2開口部の開口縁に支持された肘掛けの被支持部が、差込部の前記背凭れに対するかかり代が少なくなる側への肘掛けの変位を規制するため、背凭れと肘掛けとの関係のみで相互の支持が完結する。したがって、肘掛けを取り付ける際の位置合わせが肘掛けと背凭れの2つの部材で済み、また、背凭れの他に、肘掛けを支持する部品を別途用意することが不要となるため、デザイン上の制約が小さくなる。
【0008】
また、上記椅子の肘掛け取付構造において、前記第2開口部を挿通して配置され、前記被支持部を前記背凭れに締結するボルトを有してもよい。
【0009】
この構成によれば、第2開口部に挿通されたボルトによって、被支持部が背凭れに締結されるため、第2開口部に対する被支持部の変位が確実に規制され、またこれによって、第1開口部に対する差込部の差し込み状態も確実に維持される。したがって、背凭れと肘掛けとの相互支持をより堅牢なものにすることができる。
【0010】
また、上記椅子の肘掛け取付構造において、前記背凭れは、前記第1開口部及び前記第2開口部と連通する筒状部を有し、前記筒状部に挿入された挿入部を有してもよい。
【0011】
この構成によれば、筒状部が第1開口部及び第2開口部に連通しているので、第1開口部においては差込部の係合深さを確保し易くなり、第2開口部においては被支持部の挿入深さを確保し易くなる。このような筒状部は、成型用金型のスライドにより容易に成型できる。また、筒状部には、挿入部が挿入され、挿入部が筒状部の内部空間の少なくとも一部を埋めているので、強度を維持できる。
【0012】
また、上記椅子の肘掛け取付構造において、前記挿入部に、前記ボルトが螺合するねじ孔が形成されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、背凭れの筒状部に挿入された挿入部がねじ孔を有し、挿入部にボルトを螺合させることで、被支持部が背凭れに締結される。これによって、背凭れにねじ孔を形成する必要がなくなる。また、挿入部は、背凭れの筒状部を内側から支えるため、ボルトの締結による背凭れの変形を抑制することができる。
【0014】
また、上記椅子の肘掛け取付構造において、前記挿入部は、前記筒状部に挿入された状態において、前記差込部を前記筒状部に差し込み可能とする逃げ溝を有してもよい。
【0015】
この構成によれば、挿入部が背凭れの筒状部を内側から支えつつ、差込部の第1開口部を介した筒状部への差し込みを可能とすることができる。また、挿入部と差込部の材料が異なっていても、逃げ溝の存在によってそれら異種材料の接触を回避し、挿入部と差込部の少なくともいずれか一方で発生する削れなどを抑制することができる。
【0016】
本発明の一態様に係る椅子は、先に記載の椅子の肘掛け取付構造を備える。
【0017】
本発明の一態様に係る椅子は、先に記載の椅子の肘掛け取付構造を備える、椅子であって、少なくとも前記背凭れを支持する支持構造体を備え、前記支持構造体に前記挿入部が設けられている。
【0018】
この構成によれば、挿入部が支持構造体に設けられているため、支持構造体を立てた状態で、背凭れの筒状部を挿入部に挿入させ易くなり、椅子を効率的に組み立てることができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、肘掛けを取り付ける際の位置合わせが容易であり、且つ、デザイン上の制約が小さい椅子の肘掛け取付構造、椅子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態における椅子の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態における椅子の上部の側面図である。
図3】本発明の一実施形態における左側の肘掛けを取り外した椅子の上部の図である。
図4】本発明の一実施形態における左側の肘掛けを右側からみた側面図である。
図5】本発明の一実施形態における支持構造体の差込杆の側面図である。
図6図2に示す矢視A-A断面図である。
図7】本発明の一実施形態の変形例における椅子の肘掛け取付構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における椅子1の斜視図である。
図1に示すように、椅子1は、支持構造体2と、座体3と、背凭れ4と、肘掛け5と、を備えている。座体3、背凭れ4、及び肘掛け5は、支持構造体2に支持されている。
【0022】
以下の説明においては、前後上下左右等の向きは、特に記載がなければ、水平な床面に設置した椅子1の座体3に、正規姿勢で着座した着座者の正面側を「前」、その逆側を「後」とし、上下左右も着座者から見た向きと同一とする。図中において、矢印UPは上方を示し、矢印FRは前方を示し、矢印LHは左方を示す。
【0023】
背凭れ4は、座体3の後方に配置されている。肘掛け5は、背凭れ4の左右の側方に配置されている。これらを支持する支持構造体2は、左右一対の前脚部21と、左右一対の後脚部22と、を有する。前脚部21は、後脚部22の上下方向の略中間位置から前方に延びている。前脚部21及び後脚部22の下端には、キャスター23が取り付けられている。
【0024】
左右一対の前脚部21は、連結杆24によって互いに連結されている。連結杆24は、座体3の下面を支持している。後脚部22における前脚部21との接続位置よりも上方には、座体取付部25が設けられている。座体取付部25は、座体3の後方の左右両側面を軸支している。
【0025】
後脚部22の上端には、差込杆26(挿入部)が上方に向かって突設されている。差込杆26は、背凭れ4の左右両端部において、下方に開口する筒状部41に差し込まれている。肘掛け5は、背凭れ4の側方に開口する係合溝42に係合すると共に、背凭れ4と共に差込杆26に側方からねじ止めされている。
【0026】
図2は、本発明の一実施形態における椅子1の上部の側面図である。図3は、本発明の一実施形態における左側の肘掛け5を取り外した椅子1の上部の側面図である。
図2及び図3に示すように、背凭れ4の側面40には、肘掛け5が係合する係合溝42が形成されている。係合溝42は、例えば背凭れ4の本体部と共に樹脂成形されている。
【0027】
図3に示すように、係合溝42は、背凭れ4の側方に開口し、且つ、背凭れ4に沿って上下方向に延びている。本実施形態の背凭れ4は、上下方向に延びると共に斜め後方に傾倒しているため、係合溝42も上下方向に延びると共に斜め後方に延びている。係合溝42の底壁42aは、背凭れ4の側面40に対し、その面直方向において一定の深さで設けられている。
【0028】
係合溝42の底壁42aは、側面視で略鈍角三角形状を呈している。この鈍角三角形状は、前端が鋭角、且つ、上端が前端の鋭角より小さい鋭角となっている。係合溝42の周壁42bは、底壁42aの周囲を環状に囲んでいる。周壁42bは、周壁42bの前方を形成する前壁面42b1と、周壁42bの後方を形成する後壁面42b2とを有し、前壁面42b1及び後壁面42b2は、それぞれ上下方向に延びると共に、上方に向かうに従って徐々に近接している。
【0029】
図2に示すように、肘掛け5は、背凭れ4よりも前方に延びる肘乗せ部51を有する。肘乗せ部51の上面は、肘乗せ面51aとなっている。肘乗せ部51の先端部51Aは、僅かに仰角方向を向いている。このため、肘乗せ面51aは、肘乗せ部51の基端部51Bから先端部51Aに向かって僅かに上向きに傾斜している。肘乗せ部51の基端部51Bには、ボルト60の挿通孔52が形成されている。
【0030】
肘掛け5は、肘乗せ部51の基端部51Bから上方に延び、係合溝42に係合する第1支持杆部53と、肘乗せ部51の基端部51Bから下方に延び、係合溝42に係合する第2支持杆部54と、を有する。第1支持杆部53及び第2支持杆部54は、肘乗せ部51の肘乗せ面51aに荷重が加わったときに、肘乗せ部51の基端部51B(ボルト60)を中心とするモーメント荷重を受ける部分である。
【0031】
第1支持杆部53は、係合溝42に沿って上方に延びている。つまり、第1支持杆部53は、肘乗せ部51の基端部51Bに向かって、前後方向の幅寸法が徐々に大きくなっている。第1支持杆部53は、係合溝42から側方に突出せずに、係合溝42内に収容されている。第1支持杆部53の上端面53aは、上方に向かうに従って係合溝42の底壁42aに近づく傾斜面となっている。これにより、第1支持杆部53の上端に指などが引っかからないようにすることができる。
【0032】
第1支持杆部53は、第2支持杆部54よりも長く形成されている。第1支持杆部53の長さL1(ボルト60の中心から第1支持杆部53の上端までの直線距離)は、第2支持杆部54の長さL2(ボルト60の中心から第2支持杆部54の下端までの直線距離)の5~10倍程度の寸法を有している。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態における左側の肘掛け5を右側からみた側面図である。図5は、本発明の一実施形態における支持構造体2の差込杆26の側面図である。図6は、図2に示す矢視A-A断面図である。
図4に示すように、肘掛け5は、背凭れ4(係合溝42)との対向面に、挿通孔52が形成されたボス部55(被支持部)を有する。ボス部55は、側面視矩形状の突起部である。
【0034】
一方で、背凭れ4には、図3に示すように、係合溝42の底壁42aに第1開口部42c1及び第2開口部42c2が形成されている。第1開口部42c1及び第2開口部42c2は、背凭れ4の側方に開口している。第2開口部42c2は、ボス部55と同様の側面視矩形状の開口であり、ボス部55が挿入されると共に、ボルト60が螺合するねじ孔26aを露出させる。ねじ孔26aは、図5に示すように、支持構造体2の差込杆26に形成されている。差込杆26にも、ボス部55が挿入される側面視矩形状の溝部26bが形成されている。
【0035】
第1開口部42c1は、図3に示すように、第2開口部42c2に対し、上下方向において離間して形成されている。第1開口部42c1は、第2開口部42c2の上方に配置され、背凭れ4に沿って斜め後方に延びる側面視矩形状の開口であるが、その上端開口縁は水平方向に延びている。この第1開口部42c1には、図4に示すように、肘掛け5の上方に延びる第1支持杆部53の先端に設けられた差込部56が差し込まれる。
【0036】
差込部56は、図6に示すように、第1開口部42c1に差し込まれると共に、第1開口部42c1の開口側(左右方向における背凭れ4の外側から内側に向かう側)と逆側(左右方向における背凭れ4の内側から外側に向かう側)から背凭れ4に係止する。差込部56は、図6に示す断面視で略L字のフック形状を有し、第1開口部42c1に挿入される水平部56aと、水平部5aの先端から上方に屈曲し、第1開口部42c1の開口縁の上端よりも上方の領域において筒状部41の内壁面と左右方向で対向する屈曲部56bと、を有する。
【0037】
一方で、差込杆26には、差込杆26が筒状部41に挿入された状態において、差込部56を第2開口部42c2を介して筒状部41に差し込み可能とする逃げ溝26cが形成されている。逃げ溝26cは、差込部56との間に隙間を形成し、差込杆26(例えば金属フレーム)と差込部56(例えば樹脂フレーム)との接触を回避させる。この逃げ溝26cは、図5に示すように、差込杆26の上端部において側方に開口すると共に前方にも開口している。
【0038】
上記構成によれば、図2に示すように、肘乗せ部51の肘乗せ面51aに対し、例えば下向きに荷重が加わると、肘乗せ部51の基端部51B(ボルト60)を中心とするモーメント荷重が発生する。このとき、第1支持杆部53は、係合溝42の周壁42bの前壁面42b1に当接して、モーメント荷重を受ける。また、第2支持杆部54は、係合溝42の周壁42bの後壁面42b2に当接して、モーメント荷重を受ける。
【0039】
ここで、逃げ溝26cは、前方に開口しているので、上述したように第1支持杆部53がモーメント荷重を受けて前方に回動しようとしたときでも差込部56が差込杆26に干渉することが無い。このため、差込杆26と差込部56の材料が異なっていても、逃げ溝26cの存在によってそれら異種材料の接触を回避し、差込杆26と差込部56の少なくともいずれか一方(例えば差込部56(樹脂フレーム))で発生する削れなどを抑制することができる。
【0040】
図6に示すように、ボス部55は、第2開口部42c2に挿入されて、その開口縁に支持されると共に、差込部56の背凭れ4に対するかかり代が少なくなる側(本実施形態では下方)への肘掛け5の変位を規制する。ボス部55は、第2開口部42c2を挿通して配置されるボルト60によって、背凭れ4に締結される。具体的に、背凭れ4及び肘掛け5は、ボルト60によって支持構造体2の差込杆26に対し共締めされている。
【0041】
すなわち、差込杆26は、背凭れ4の上述した筒状部41に差し込まれている。背凭れ4に形成された第2開口部42c2は、筒状部41の内側と外側とを連通させる。第2開口部42c2に肘掛け5のボス部55を挿入すると、挿通孔52とねじ孔26aが位置合わせされる。そして、挿通孔52を介して、ボルト60をねじ孔26aに螺合させることで、背凭れ4及び肘掛け5を差込杆26に対して共締めできる。
【0042】
なお、図6に示すように、第2支持杆部54の下端面54aは、支持構造体2に接触している。支持構造体2は、上述した後脚部22の上端面に接触面27(段差面)を有している。接触面27は、略水平方向に延び、第2支持杆部54の下端面54aと面で接触している。
【0043】
第2支持杆部54は、一部が係合溝42から突出しており、その突出した部分の下端面54aが、支持構造体2の接触面27に接触している。なお、第2支持杆部54の係合溝42内に収容されている収容部54bは、係合溝42の周壁42bに支持されている。
【0044】
上記構成の椅子1の肘掛け取付構造によれば、図6に示すように、背凭れ4の第1開口部42c1に差し込まれた肘掛け5の差込部56が、第1開口部42c1の開口側と逆側から背凭れ4に係止するため、肘掛け5の背凭れ4に対する側方への抜け(倒れ)を規制することができる。また、背凭れ4の第2開口部42c2の開口縁に支持された肘掛け5のボス部55が、差込部56の背凭れ4に対するかかり代が少なくなる側(下方)への肘掛け5の変位を規制するため、支持構造体2が無くても背凭れ4と肘掛け5との関係のみで相互の支持が完結する。したがって、肘掛け5を取り付ける際の位置合わせが肘掛け5と背凭れ4の2つの部材で済み、また、背凭れ4の他に、肘掛け5を支持する部品を別途用意することが不要となるため、デザイン上の制約が小さくなる。
【0045】
このように、上述した本実施形態によれば、背凭れ4と、背凭れ4の側方に配置された肘掛け5と、を備える、椅子1の肘掛け取付構造であって、背凭れ4は、背凭れ4の側方に開口し、且つ、上下方向において互いに離間して形成された第1開口部42c1及び第2開口部42c2を有し、肘掛け5は、第1開口部42c1に差し込まれると共に、第1開口部42c1の開口側と逆側から背凭れ4に係止する差込部56と、第2開口部42c2の開口縁に支持されると共に、差込部56の背凭れ4に対するかかり代が少なくなる側への肘掛け5の変位を規制するボス部55と、を有する、という構成を採用することによって、肘掛け5を取り付ける際の位置合わせが容易であり、且つ、デザイン上の制約が小さい椅子1及びその肘掛け取付構造が得られる。
【0046】
また、本実施形態の椅子1の肘掛け取付構造は、第2開口部42c2を挿通して配置され、ボス部55を背凭れ4に締結するボルト60を有している。この構成によれば、第2開口部42c2に挿通されたボルト60によって、ボス部55が背凭れ4に締結されるため、第2開口部42c2に対するボス部55の変位が確実に規制され、またこれによって、第1開口部42c1に対する差込部56の差し込み状態も確実に維持される。したがって、背凭れ4と肘掛け5との相互支持をより堅牢なものにすることができる。
【0047】
また、本実施形態の椅子1の肘掛け取付構造において、背凭れ4は、第1開口部42c1及び第2開口部42c2と連通する筒状部41を有し、筒状部41に挿入された差込杆26を有している。この構成によれば、筒状部41が第1開口部42c1及び第2開口部42c2に連通しているので、第1開口部42c1においては差込部56の係合深さを確保し易くなり、第2開口部42c2においてはボス部55の挿入深さを確保し易くなる。このような筒状部41は、成型用金型のスライドにより容易に成型できる。また、筒状部41には、差込杆26が挿入され、差込杆26が筒状部41の内部空間の少なくとも一部を埋めているので、強度を維持できる。
【0048】
また、本実施形態の差込杆26には、ボルト60が螺合するねじ孔26aが形成されている。この構成によれば、背凭れ4の筒状部41に挿入された差込杆26がねじ孔26aを有し、差込杆26にボルト60を螺合させることで、ボス部55が背凭れ4に締結される。これによって、背凭れ4にねじ孔26aを形成する必要がなくなる。また、差込杆26は、背凭れ4の筒状部41を内側から支えるため、ボルト60の締結による背凭れ4の変形を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態の差込杆26は、筒状部41に挿入された状態において、差込部56を筒状部41に差し込み可能とする逃げ溝26cを有している。この構成によれば、差込杆26が背凭れ4の筒状部41を内側から支えつつ、差込部56の第1開口部42c1を介した筒状部41への差し込みを可能とすることができる。また、差込杆26と差込部56の材料が異なっていても、逃げ溝26cの存在によってそれら異種材料の接触を回避し、差込杆26と差込部56の少なくともいずれか一方で発生する削れなどを抑制することができる。
【0050】
また、本実施形態の椅子1は、少なくとも背凭れ4を支持する支持構造体2を備え、支持構造体2に差込杆26が設けられているので、支持構造体2を立てた状態で、背凭れ4の筒状部41を差込杆26に挿入させ易くなり、椅子1を効率的に組み立てることができるようになる。
【0051】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態では、筒状部41に挿入され、ボルト60が螺合するねじ孔26aが形成された挿入部として、支持構造体2の差込杆26を例示したが、挿入部は支持構造体2に設けられていなくても構わない。具体的には、図7に示す変形例のように、筒状部41にナット70(例えばインサートナットが好ましい)を挿入し、ナット70のねじ孔26aにボルト60を螺合させる構成であってもよい。
また、差込杆26が支持構造体2と別体で形成されている構成であってもよい。
また、差込杆26にねじ孔26aが形成されていない構成であってもよい。
【0053】
また、例えば、上記実施形態では、第1開口部42c1が第2開口部42c2の上方に配置されている構成を例示したが、第1開口部42c1が第2開口部42c2の下方に配置されていても構わない。この場合、第2開口部42c2の開口縁に支持されるボス部55によって、差込部56の背凭れ4に対するかかり代が少なくなる側(この場合、上方)への肘掛け5の変位を規制する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…椅子、2…支持構造体、4…背凭れ、5…肘掛け、26…差込杆(挿入部)、26a…ねじ孔、26c…逃げ溝、41…筒状部、42c1…第1開口部、42c2…第2開口部、55…ボス部(被支持部)、56…差込部、60…ボルト、70…ナット(挿入部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7