IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧 ▶ ラトガーズ、ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニュージャージーの特許一覧

<>
  • 特許-不整脈の起点の発見 図1
  • 特許-不整脈の起点の発見 図2
  • 特許-不整脈の起点の発見 図3
  • 特許-不整脈の起点の発見 図4
  • 特許-不整脈の起点の発見 図5
  • 特許-不整脈の起点の発見 図6
  • 特許-不整脈の起点の発見 図7
  • 特許-不整脈の起点の発見 図8
  • 特許-不整脈の起点の発見 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】不整脈の起点の発見
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/343 20210101AFI20231023BHJP
【FI】
A61B5/343
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019212109
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2020081890
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】62/771,360
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/663,945
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】306010244
【氏名又は名称】ラトガーズ、ザ ステイト ユニバーシティ オブ ニュージャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ガル・ハヤム
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ティモフェイエフ
(72)【発明者】
【氏名】タル・ハイム・バル-オン
(72)【発明者】
【氏名】アマディープ・サルーヤ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/184679(WO,A1)
【文献】特開2016-036731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
ヒト被験者の心臓の心室に挿入されるように構成されたプローブであって、前記プローブの遠位端部の位置座標を示す位置信号を発生させるように構成され、かつ前記遠位端部にて電極を備え、当該電極が、前記心室の表面上のポジションから、前記表面を横断する伝導波に応答してそれぞれの電気信号を取得するように構成された、プローブと、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
前記位置信号を処理して、前記表面の3次元(3D)表示を発生させ、かつ前記ディスプレイ上に提示し、
前記表面上の前記ポジションにおける前記それぞれの電気信号から、それぞれの局所興奮到達時間(LAT)を導出し、
前記表面上の前記ポジションの第1の対における前記それぞれのLAT間の第1の時間差、及び前記表面上の前記ポジションの第2の対における前記それぞれのLAT間の第2の時間差を計算し、
前記第1の時間差及び前記第2の時間差と前記伝導波の伝導速度とのそれぞれの積として、第1及び第2のLAT導出距離を計算し、
前記表面上の位置における不整脈の起点を、前記位置から前記ポジションの前記第1の対までの前記表面にわたる距離における第1の差が、前記第1のLAT導出距離に等しく、また前記位置から前記ポジションの前記第2の対までの前記表面にわたる距離における第2の差が、前記第2のLAT導出距離に等しいように、特定し
前記ディスプレイ上の前記表面の前記表示上に、前記特定された起点をマークし、かつ
前記位置座標から三角形の網目を発生させるように構成された、プロセッサと、を備え、
前記三角形の網目が、前記三角形の頂点である点と、当該点を接続する線分である端部によって構成されており、前記表面にわたる前記距離が、前記網目の端部に沿って測定された最短距離を含む、医療装置。
【請求項2】
前記ポジションの前記第1の対及び前記ポジションの前記第2の対が、1つの共通するポジションを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
第1の位置から前記ポジションの前記第1の対までの前記表面にわたる距離における前記第1の差が、前記第1のLAT導出距離と等しい、前記第1の位置の第1の軌跡、及び第2の位置から前記ポジションの前記第2の対までの前記表面にわたる距離における前記第2の差が、前記第2のLAT導出距離と等しい、前記第2の位置における第2の軌跡を、前記表示上でマークするように構成されている前記プロセッサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記特定された起点が、前記第1の軌跡と前記第2の軌跡との交点にある、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記不整脈が、単一原因の不整脈を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
距離における前記第1の差が、事前設定された誤差許容範囲内で前記第1のLAT導出距離に等しく、また距離における前記第2の差が、前記事前設定された誤差許容範囲内で前記第2のLAT導出距離に等しい、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記事前設定された誤差許容範囲が1mmである、請求項に記載の装置。
【請求項8】
医療装置であって、
ヒト被験者の心臓の心室に挿入されるように構成されたプローブであって、前記プローブの遠位端部の位置座標を示す位置信号を発生させるように構成され、かつ前記遠位端部にて電極を備え、当該電極が、前記心室の表面上のポジションから、前記表面を横断する伝導波に応答してそれぞれの電気信号を取得するように構成された、プローブと、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
前記位置信号を処理して、前記表面の3次元(3D)表示を発生させ、かつ前記ディスプレイ上に提示し、
前記表面上の前記ポジションにおける前記それぞれの電気信号から、それぞれの局所興奮到達時間(LAT)を導出し、
前記表面上の前記ポジションの第1の対における前記それぞれのLAT間の第1の時間差、及び前記表面上の前記ポジションの第2の対における前記それぞれのLAT間の第2の時間差を計算し、
前記第1の時間差及び前記第2の時間差と前記伝導波の伝導速度とのそれぞれの積として、第1及び第2のLAT導出距離を計算し、
前記表面上の位置における不整脈の起点を、前記位置から前記ポジションの前記第1の対までの前記表面にわたる距離における第1の差が、前記第1のLAT導出距離に等しく、また前記位置から前記ポジションの前記第2の対までの前記表面にわたる距離における第2の差が、前記第2のLAT導出距離に等しいように、特定し、かつ
前記ディスプレイ上の前記表面の前記表示上に、前記特定された起点をマークするように構成された、プロセッサと、を備え、
前記医療装置の操作者が、前記ポジションの第1の対及び前記ポジションの第2の対を選択する、医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許仮出願第62/771,360号(2018年11月26日出願)の利益を主張するものであり、参考として本明細書に組み込まれている。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に侵襲性医療処置に関し、また具体的には、心臓侵襲性処置の結果を分析することに関する。
【背景技術】
【0003】
1種類の心不整脈は、不整脈が局所的起点を有する、単一原因の不整脈である。不整脈を治癒させるためには、局所的起点を発見することが重要である。典型的には、起点が一度位置すると、起点又は起点に近接した領域にアブレーションを適用して、不整脈を治癒させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施形態は、医療装置を提供するものであり、本装置は、
ヒト被験者の心臓の心室に挿入されるように構成されたプローブであって、プローブの遠位端部の位置座標を示す位置信号を発生させるように構成され、かつ遠位端部にて電極を含み、電極が、心室の表面上のポジションから、表面を横断する伝導波に応答してそれぞれの電気信号を取得するように構成された、プローブと、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
位置信号を処理して、表面の3次元(3D)表示を発生させ、かつディスプレイ上に提示し、
表面上のポジションにおけるそれぞれの電気信号から、それぞれの局所興奮到達時間(LAT)を導出し、
表面上のポジションの第1の対におけるそれぞれのLAT間の第1の時間差、及び表面上のポジションの第2の対におけるそれぞれのLAT間の第2の時間差を計算し、
第1の時間差及び第2の時間差と伝導波の伝導速度とのそれぞれの積として、第1及び第2のLAT導出距離を計算し、
表面上の位置における不整脈の起点を、位置からポジションの第1の対までの表面にわたる距離における第1の差が、第1のLAT導出距離に等しく、また位置からポジションの第2の対までの表面にわたる距離における第2の差が、第2のLAT導出距離に等しいように、特定し、かつ
ディスプレイ上の表面の表示上に、特定された起点をマークするように構成された、プロセッサと、からなる。
【0005】
開示された実施形態では、ポジションの第1の対及びポジションの第2の対は、1つの共通するポジションからなる。
【0006】
更なる開示された実施形態では、プロセッサは、位置座標から網目を発生させるように構成され、かつ表面にわたる距離は、網目の端部に沿って測定された最短距離を含む。網目は、三角形の網目であってよい。
【0007】
依然として更なる開示された実施形態では、プロセッサは、第1の位置からポジションの第1の対まで表面にわたる距離における第1の差が第1のLAT導出距離と等しい、第1の位置における第1の軌跡、及び第2の位置からポジションの第2の対まで表面にわたる距離における第2の差が第2のLAT導出距離と等しい、第2の位置における第2の軌跡を、表示上でマークするように、構成されてよい。特定された起点は、典型的には、第1の軌跡と第2の軌跡との交点にある。
【0008】
代替的な実施形態では、不整脈は、単一原因の不整脈を含む。
【0009】
更なる代替実施形態では、プロセッサは、表面上の選択された一対の点に応答して伝導速度を計算するように構成され、点は、波面ベクトルに平行な線分により接続され、かつそれぞれのLAT及びポジションを有する。
【0010】
依然として更なる代替的実施形態では、距離における第1の差は、事前設定された誤差許容範囲内で第1のLAT導出距離に等しく、また距離における第2の差は、事前設定された誤差許容範囲内で第2のLAT導出距離に等しい。一実施形態では、事前設定された誤差許容範囲は1mmである。
【0011】
装置の操作者は、ポジションの第1の対及びポジションの第2の対を選択してよい。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、
ヒト被験者の心室内へとプローブを挿入することと、
プローブの遠位端部の位置座標を示す位置信号を発生させることと、
表面を横断する伝導波に応答して、心室の表面上のポジションからそれぞれの電気信号を取得することと、
位置信号を処理して、表面の3次元(3D)表示を発生させ、かつディスプレイ上に提示することと、
表面上のポジションにおけるそれぞれの電気信号から、それぞれの局所興奮到達時間(LAT)を導出することと、
表面上のポジションの第1の対におけるそれぞれのLAT間の第1の時間差、及び表面上のポジションの第2の対におけるそれぞれのLAT間の第2の時間差を計算することと、
第1の時間差及び第2の時間差と伝導波の伝導速度とのそれぞれの積として、第1及び第2のLAT導出距離を計算することと、
表面上の位置における不整脈の起点を、位置からポジションの第1の対までの表面にわたる距離における第1の差が第1のLAT導出距離に等しく、また位置からポジションの第2の対までの表面にわたる距離における第2の差が第2のLAT導出距離に等しいように、特定すること、及び
ディスプレイ上の表面の表示上に、特定された起点をマークすることと、を含む方法が更に提供される。
【0013】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による、不整脈起点位置決定システムの略図である。
図2】本発明の一実施形態による、電磁追跡システムにより生成された結果を示す概略図である。
図3】本発明の一実施形態による、電磁モジュールにより発生した結果の概略図である。
図4】本発明の一実施形態による、プロセッサにより選択された点の対について、等式により与えられる経路長の差がどのように使用されるかを示す。
図5】本発明の一実施形態による、図1のシステムを使用して単一原因の不整脈の起点の位置を判定する際に、プロセッサ及び操作者により実行される工程の、フローチャートである。
図6】本発明の一実施形態による、位置対までの距離を測定するための方法を示す。
図7】本発明の一実施形態による、不整脈の起点がどのように決定され得るかを概念的観点から示す概略図である。
図8】本発明の一実施形態による、発明者らにより得られた結果を示す概略図である。
図9】本発明の一実施形態による、発明者らにより得られた結果の図表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
本発明の実施形態は、最初に、単一原因の不整脈が存在する心室のマップを生成し、また加えて、心室の表面にわたる局所興奮到達時間(LAT)を測定する。不整脈は、起点から伝導波を放射すると仮定され、これにより、心室の表面上の所与の点において、起点からの波が点を通過する時間をその点のLATが示す。
【0016】
表面上の一対の点が選択される場合、点は、典型的には異なるLATを有し、LATにおける差は、2つの点から不整脈起点までの距離の差の尺度を与える。距離における実際の差は、伝導波速度及びLAT差の積であり、これは、本明細書ではLAT導出距離と称される。(2つの点が同じLATを有する場合、それらは不整脈起点から等距離である、と理解されるであろう。)
【0017】
選択された一対の点から、不整脈起点に関する可能なポジションの軌跡を見出すことができ、軌跡上の全ての点は、上記の選択された対との距離の実際の差を有する。
【0018】
表面上の別の点の対が同一手順で選択される場合、不整脈起点に関する第2のポジションの軌跡を見出して、第2の点の対に適用することができる。
【0019】
軌跡の交点は、不整脈起点のポジションに対応し、またこれは、マップ上に表示され得る。軌跡自体もまた、マップ上に表示されてよい。
【0020】
起点位置は、起点位置から点の第1の対までの表面にわたる距離における差が、第1の対に関するLAT導出距離に等しく、また同様に、起点位置から点の第2の対までの表面にわたる距離における差が、第2の対に関する第2のLAT導出距離に等しいようなものである、と理解されるであろう。
【0021】
典型的には、点の2つ対は、4つの物理的に分離された別個の点(2対)を含む。しかし、いくつかの実施形態では、点のうちの1つは両方の対に共通しているため、これらの実施形態では、3つの物理的に分離された別個の点は、2つの対を含む。
【0022】
システムの説明
以下の説明において、図面中の同様の要素は、同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別用の数字に文字を添えることにより、区別される。
【0023】
ここで図1を参照すると、本発明の一実施形態による、不整脈起点位置決定システム20の略図である。簡潔化及び明瞭化のために、以下の説明は、別途記載のない限り、本明細書では医療従事者と想定されるシステム20の操作者22により医療処置が実施されることを想定し、ここで操作者は、カテーテル24を患者28の左又は右大腿静脈内に挿入する。処置は、患者の心臓34の心室の調査を含むと想定され、またこの手順では、同様に、本明細書にてプローブ32と称されるカテーテルの遠位端部32が心室に到達するまで、カテーテルが最初に患者に挿入される。
【0024】
システム20は、電磁追跡モジュール36及び/又は電流追跡モジュール37と通信する処理ユニット(PU)42を備えるシステムプロセッサ40により、制御され得る。PU42はまた、アブレーションモジュール39及びECG(心電図)モジュール43と通信する。モジュールの機能は、以下により詳細に記載されている。PU42もまたメモリ44と通信する。プロセッサ40は、典型的にはコンソール46に載置されており、コンソール46は、典型的には、マウス又はトラックボールなどの位置決定装置を含む操作制御部38を備え、操作者22は、この操作制御部38を使用してプロセッサと相互作用する。プロセッサは、メモリ44内に格納されたソフトウェアを用いて、システム20を操作する。プロセッサ40により実行された操作の結果は、ディスプレイ48上で操作者に提示され、ディスプレイ48は、典型的には、心臓34のマップを提示する。ソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でプロセッサ40にダウンロードされてよい、又はこれに代えて若しくはこれに加えて、磁気メモリ、光メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的な有形媒体上に提供されてよい、及び/又は記憶されてよい。
【0025】
心臓34を含むマッピング領域30内のプローブ32の経路を追跡するために、本発明の実施形態は、電流系追跡システム21及び電磁系追跡システム23のうちの少なくとも1つを使用する。両方のシステムについて、以下に説明する。
【0026】
追跡システム21は、米国特許第8,456,182号(Bar-Talら)に記載されたものと同様の電流測定追跡システムを含み、その開示が参考として本明細書に組み込まれている。Biosense-Webster(33 Technology Drive,Irvine,CA 92618 USA)により製造されるCarto(商標)システムもまた、電流測定追跡システムを使用する。電流測定追跡システムは、電流追跡モジュール37の制御を受ける。プローブ32は、1つ以上のプローブ電極50を有し、また追跡システム21において、モジュール37は、追跡される1つ以上の電極50に電流を注入する。電流は、患者28の皮膚上に配置され、かつモジュールに戻される、本明細書ではパッチとも称される、複数の、一般に類似したパッチ電極77により受信される。
【0027】
本明細書にて記載されたパッチ電極77及びその他の皮膚電極用の導電性ケーブルは、電極のそれぞれに対して存在するが、明瞭性のために、図中では、ケーブルは電極の一部に対してのみ示されている。所与のプローブ電極50と皮膚パッチ77との間の電流は、とりわけ、パッチからの電極の異なる距離故に、電極の位置に従って変化し、所与のプローブ電極と異なるパッチとの間で異なるインピーダンスを発生させる。モジュール37は、パッチに接続されたそれぞれのチャネル上の異なるパッチ77により受信された異なる電流を測定し、また異なる電流から所与のプローブ電極の位置の指標を発生させるように構成されてよい。
【0028】
電磁追跡システム23は、その開示が参考として本明細書に組み込まれている、米国特許第6,690,963号(Ben-Haimら)に記載されるもの、及びBiosense-Websterにより製造されるCarto(商標)システムにおいて使用されているものと、類似している。電磁追跡システムは、電磁追跡モジュール36の制御を受ける。電磁追跡システムは複数の磁場発生器を含み、本明細書では3セットの発生器66を含むように想定され、各セットが3つの直交コイルを備えており、これにより、複数の発生器は合計9つのコイルを備える。発生器66は、患者28の真下の周知の位置に設置され、周知の位置は、発生器の基準系を定義している。モジュール36は、とりわけ、発生器により発生した交流磁場の振幅及び周波数を制御する。
【0029】
交流磁場は、プローブ32内に位置するコイルと相互作用し、これにより、コイル内に電極電位を発生させ、また電極電位は、追跡モジュール36により信号として受信される。モジュールは、処理ユニット42と共に、受信した信号を分析し、かつ分析から、定義された基準系中のプローブコイルのポジション、即ち、位置と方向、を決定することができる。
【0030】
典型的には、システムの一方又は両方による追跡は、例えば、プローブを表すアイコンを心臓34の画像へと組み込むことにより、並びにアイコンにより得られる経路により、ディスプレイ48上に視覚的に提示され得る。明瞭性のために、以下の説明では、電磁追跡システム23のみが使用されると想定されるが、システム23及びシステム21の両方が使用される場合、又はシステム21のみが使用される場合には、変更すべき点を変更して説明を修正適合させてよい。
【0031】
アブレーションモジュール39は、操作者22により選択された心臓34の領域にRF電力を送達する高周波(RF)発生器を備え、これにより、領域をアブレーションする。操作者22は、アブレーション電極を備えるアブレーションプローブを領域に位置決めすることにより、領域を選択する。いくつかの実施形態では、プローブ32及び電極50のうちの1つは、アブレーションプローブ及びアブレーション電極として使用されてよい。あるいは、別個のアブレーションプローブ及びアブレーション電極が、モジュール39により提供されるアブレーションに使用されてよい。
【0032】
ECGモジュール43は、電極50からECG信号を受信し、またPU42と共に信号を分析し、とりわけ、信号の局所興奮時間(LAT)を見出す。モジュールは、典型的には、心臓34の冠状動脈洞内に位置付けられた電極により提供され得るような、基準ECG信号に対するLAT値を測定する。
【0033】
図2は、本発明の一実施形態による、電磁追跡システム23により発生する結果を示す概略図である。上記で参照される手順の間、プローブ32は心臓34内で移動し、本明細書では心臓の心室内にあると想定され、またそれが移動する際に追跡モジュール36がプローブからポジション信号を取得し、かつ信号を使用してプローブの3次元(3D)ポジションを見出す。見出された複数のポジションは、心室の表面上の位置の点クラウド、並びに心室内の位置を含む。
【0034】
点クラウドプロセッサ40は、3D包囲表面の三角形網目、即ち、心室の表面に対応する点クラウド内の全ての獲得点を取り囲む表面を、発生させる。プロセッサは、網目を発生させるために、当該技術分野において周知の任意の方法を使用する。典型的には、プロセッサ40は、三角形網目を「カバー」して滑らかな連続3D表面を形成し、またプロセッサは、ディスプレイ48上に滑らかな3D表面のグラフィック表示49を表示してよい。なお、プロセッサは、典型的には、等間隔のサンプル点を伴う網目の三角形をカバーし、またこれらの点は、連続的な3D表面上で離散計算を実行する方法をプロセッサ40に提供する。本明細書にて記載されたサンプル点の使用の一例は、図6を参照して以下に提供される。
【0035】
図2は、上記で参照される点クラウド内にいくつかの点を含む、点80の集合を概略的に示し、点のそれぞれは、心室の表面上のそれぞれの点に対応する。図はまた、点を接続する端部84を示し、端部は、プロセッサ40が三角形網目を発生させる場合に、点を接合する線分に対応する。点80及び端部84は、三角形の頂点及び辺であり、本明細書では、頂点80及び辺84とも称される。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態による、ECGモジュール43により発生した結果の概略図である。プローブが移動し、プローブが心室の表面に接触する際に、プローブ32により取得されたECG信号から結果が発生する。ECG信号は、上記で参照されるポジション信号と同時に、又は別の方法としては異なる時間で、及び場合により異なるプローブと共に、取得されてよい。
【0037】
この図は、心室の表面上において4つの点80A、80B、80C、80D(図2)にて取得されたECG信号にそれぞれ対応する、4つの電圧V対時間tのグラフ90、92、94、96を示す。グラフの各組について、ECGモジュールは、局所興奮到達時間(LAT)のポジション(時間)を計算し、またLAT値は、グラフのそれぞれの上に円90L、92L、94L、96Lとして概略的に示される。4つのグラフのそれぞれは、上記で参照されるECG信号から導出されたゼロの基準時間に対応するV軸で描かれている。
【0038】
本発明の実施形態では、プロセッサ40は、点80の対を選択し、また点のECG信号のLAT値における差を計算する。従って、図3では、プロセッサ40は、点80A及び80Bを選択してよく、この場合、LAT値の差がΔt(AB)として見出される。同様に、プロセッサは、点80C及び80Dを選択してよく、この場合、LAT値の差がΔt(CD)として見出される。
【0039】
以下の説明は、プロセッサ40により選択される一般的な一対の点80に関して、ECG信号のLAT値の差がΔtである、と想定している。本発明の実施形態は、ECG信号が単一原因の不整脈から発生し、かつECG信号が伝導速度Vを伴って心室の表面を横断する、と想定している。この場合、本明細書で想定される一般的な対の点に関して、等式(1)により与えられる、単一の起点から一般対の2点までの経路長ΔPの差が存在する。
【0040】
【数1】
【0041】
経路長ΔPの差は距離であり、本明細書ではLAT導出距離とも呼ばれる。
【0042】
図4は、本発明の一実施形態による、プロセッサ40により選択された特定の点の対80について、等式(1)により与えられる経路長の差がどのように使用されるかを示す。図4に示す点は、点80A、80B、80C及び80D(図2)に対応し、また本明細書ではそれぞれA、B、C、Dと称される。
【0043】
点A、Bに関して、点Qは、等式(2)が有効である場合、単一原因の不整脈の起点とすることができる。
【0044】
【数2】
式中、BQは、点Bと点Qとの間における心室の表面上の距離であり、
AQは、点Aと点Qとの間における心室の表面上の距離であり、また
Δt(AB)は、点B及びAからのECG信号間のLAT値の差である。
【0045】
点A、Bに関するLAT導出距離は、積vΔt(AB)である。
【0046】
等式(2)を満たすために、点Qは複数の位置にあってよい、即ち、Qは軌跡又は線100上にあってよく、軌跡上の任意の点は等式(2)に従う、と理解されるであろう。線100は、単一原因の不整脈の起点が存在し得るかを予測する曲線であり、またライン100などの線は、本明細書では予測線とも称される。
【0047】
点C、Dに関して、点Rは、等式(3)が有効である場合、単一原因の不整脈の起点とすることができる。
【0048】
【数3】
式中、DRは、点Dと点Rとの間における心室の表面上の距離であり、
CRは、点Cと点Rとの間における心室の表面上の距離であり、また
Δt(CD)は、点DとCとの間のECG信号間のLAT値の差である。
【0049】
点C、Dに関するLAT導出距離は、積vΔt(CD)である。
【0050】
等式(2)に関して、等式(3)は、軌跡又は線102を発生させ、また点Rは、軌跡上の任意の点であってよい。線102はまた、単一原因の不整脈の起点のポジションについての予測線である。
【0051】
軌跡100及び102は領域104で交差し、また領域104は両方の軌跡上にあるため、領域104は、点80A、80B、80C及び80Dにて取得されたECG信号を発生させる単一原因の不整脈の予測される起点に対応する。
【0052】
図5は、本発明の一実施形態による、システム20を使用して単一原因の不整脈の起点の位置を判定する際に、プロセッサ40及び操作者22により実行される工程の、フローチャートである。
【0053】
初期工程150では、操作者22は、プローブ32を患者の心臓34の心室内へと挿入する。プローブ32は、典型的には、Biosense-Websterにより製造されるPentarayプローブなどの電極50を有する多電極プローブである。操作者はまた、心臓34内の想定される伝導速度、及び結果を評価する際に使用される誤差許容範囲などのパラメータの値を設定してよく、起点位置に関するその計算を実行する際に、プロセッサにより使用され得る。
【0054】
一実施形態では、心室内の伝導速度vは、1.0mm/msに設定され、また起点位置を決定する際の許容可能な誤差Eは1mmに設定される。これらの図の両方はいずれも一例であり、また操作者22は、伝導速度及び許容可能な誤差に関するその他の値を使用してもよい、と理解されるであろう。
【0055】
あるいは、伝導速度は、以下の工程154及び156が実施された後に計算されてもよい。この場合、不整脈に起因する伝導波の波面は、工程156で見られる点の位置及びLAT値からマッピングされる。伝導速度は、伝導波の想定波面ベクトルに平行である点を接合する、それぞれの線分を有するように選択された点の対から計算されてよい。
【0056】
データ取得工程154では、ECG信号データ及びポジション信号は、プローブの電極50のそれぞれから取得される。
【0057】
分析工程156では、プロセッサ40は、ポジション信号を使用して、点80の位置を最初に特定し、また次に、心室の表面の3D三角形網目を構築する。網目は、図2を参照して上述したように、端部と点を接合することにより構築され、これにより、三角形頂点80及び三角形辺84を伴う網目を形成する。網目及び/又は網目により発生した表面は、ディスプレイ48における操作者22に提示されてよい。
【0058】
プロセッサはまた、ECG信号を分析して、図3を参照して上述したように、電極50により接触した心室表面上の各点80に関するLAT値を見出す。
【0059】
対の選択工程160では、心室の表面上の位置対、即ち、プロセッサが工程156にて識別する2つの位置が選択される。位置は、本明細書ではX、Xと称される。以下の説明では、選択は、工程156にて操作者に提示されたマップを典型的に使用して、操作者22により実行される、と想定される。
【0060】
一度対が選択されると、プロセッサは、対のECG信号のそれぞれについてLAT値を決定し、また次に、LAT値Δtの差を見出す。プロセッサは次に、等式(1)を使用して、工程150にて設定された伝導速度v値を用いて、単一の起点から選択された位置対までの経路長差、LAT導出距離、ΔPを決定する。
【0061】
複数の位置発生工程164では、プロセッサは、等式(4)を満たすSの位置を見出すことにより、本明細書ではラベルSに割り当てられた、単一原因の不整脈の起点に関する可能性のある位置を見出すが、
【0062】
【数4】
式中、SXは、点Sと点Xとの間における心室の表面上の距離であり、また
SXは、点Sと点Xとの間における心室の表面上の距離である。
【0063】
点X、Xに関するLAT導出距離は、積vΔtである。
【0064】
(等式(4)は、等式(2)及び(3)と同じ形態を有し、点識別子のみが変更されている。)
【0065】
等式(4)が満たされているかどうかを確認するために、プロセッサ40は、以下のように、SX及びSXの値を別々に計算する。
点Xに関して、プロセッサは、辺84に沿って、工程156にて取得された頂点80のそれぞれまでの最短距離を見出す。プロセッサはまた、辺84に沿った、Xからこれらの頂点のそれぞれまでの最短距離を見出す。一実施形態では、プロセッサは、最短距離を見出すためにDijkstraのアルゴリズムを使用する。
【0066】
頂点80のそれぞれについて、プロセッサは、Δ最短距離における差を見出す。
【0067】
頂点80のそれぞれについて、比較工程168において、プロセッサは、差がΔ工程160にて見出された経路長差の値ΔPに近いかどうかを確認する。即ち、プロセッサは、式(5)が正しいかどうかを確認する。
【0068】
【数5】
式中、Eは、初期工程156にて設定された誤差許容範囲である。
【0069】
比較168が負に帰する場合、確認されている頂点80は、不整脈の可能な起点であるとは見なされない。この場合、制御は比較工程172に進み、プロセッサは、全ての頂点が工程160dにて選択された位置に関して確認されたかどうかを確認する。
【0070】
比較工程168が正に帰する場合、確認されている頂点80は、不整脈の可能な起点である。この場合、プロセッサ40は、頂点マーク工程176にて、操作者に提示されたマップ上の頂点をマークしてよく、制御は比較工程172に進む。
【0071】
上述のように、比較工程172にて、プロセッサは、全ての頂点が工程160にて選択された位置に関して確認されたかどうかを確認する。比較が負に帰する場合、即ち、全ての頂点が確認されていない場合、制御は工程164に戻る。
【0072】
比較工程172が正に帰する場合、プロセッサは、更なる比較工程180に進み、プロセッサは、工程160にて選択された2つ以上の位置対が、工程164、168、176、及び172の繰り返しにおいて選択されかつ分析されたかどうかを確認する。
【0073】
複数の位置対が選択されていない(比較180が負に帰する)場合、即ち、工程160において1つの位置対のみが選択された場合、次に、プロセッサは、選択された位置対工程184において、工程156にて見られる位置から別の位置対を選択する。次に、制御は工程160に戻り、新たな位置対が分析される。
【0074】
典型的には、各対の位置は異なるように選択され、これにより、2対では4つの異なる位置が存在する。しかし、いくつかの実施形態では、任意の2つの対は、1つの共通する位置を有してもよく、これにより、これらの場合には、3つの異なる位置が存在する。
【0075】
比較180が正に帰する場合、次に、2つ以上の位置対が選択され、かつ分析された。各対の頂点については、工程176において、不整脈起点に関する可能な点の軌跡としてマークされており、またこれにより、マップ上にマークされた2つ以上の軌跡が存在する。上述のように、複数の軌跡の交点は、不整脈の予測される起点に対応し、これにより、比較180が正に帰する場合に、最終工程188において、プロセッサ40は、マップ上の予測される不整脈起点として軌跡交差をマークしてよい。
【0076】
比較工程180では、プロセッサは、一度所定の数の位置対が確認されると、工程160に戻ることを停止してよく、また操作者22により数字が設定されてよい。一実施形態では、所定の数の対は、20個の位置から10個である。あるいは、複数の対が確認されたかどうかをプロセッサが確認するのではなく、むしろ、操作者は、一度2つ以上の位置対が確認されると、工程160に戻ることを停止してよく、またプロセッサが交差をマークするように、最終工程188を導いてよい。
【0077】
上記の説明は、プロセッサが、工程160において選択された各位置から辺184に沿った三角形頂点までの距離を測定する、と仮定した。この距離は、プロセッサが三角形頂点に最短距離を見出すことができるように、測定される。
【0078】
図6は、本発明の一実施形態による、位置対までの距離を測定するための代替的な方法を示す。三角形頂点まで測定するのではなく、むしろプロセッサは、選択された位置から、端部84に沿って、工程156において発生した網目の所与の三角形におけるサンプル点Pまでの距離を測定してよい。図2を参照して上述したように、プロセッサ40は、典型的には、等間隔のサンプル点を伴う三角形網目の三角形をカバーする。図6は、三角形網目の三角形200、及び三角形内のサンプル点204を示す。サンプル点の一例にはラベルPが割り当てられている。従って、図6では、点Aが、工程160において、選択された位置対のうちの1つである場合、プロセッサは、最初に、トライアングル200に連結した三角形の端部84(図示せず)に沿って、Aから三角形200の頂点V1、V2、V3までの距離を計算する。次に、プロセッサは、長さV1P、V2P、及びV3Pを合計して、Aから点Pまでの可能な距離を見出す。プロセッサは、選択された対のその他の位置と同様の、点Bの計算を行う。
【0079】
図5のフローチャートの説明は、変更すべき点を変更して、図6に関連して説明される、位置対までの距離を測定するための代替的な方法を使用するように修正適合されてよく、また従って、不整脈の予測される起点に対応する、1つ以上のサンプル点を見出すことができる。
【0080】
本発明者らは、アブレーションの成功を受けた患者からのデータを使用して、本発明の実施形態を試験した。以下で、試験の結果を要約する。
【0081】
図7は、本発明の一実施形態による、不整脈の起点がどのように決定され得るかを概念的観点から示す概略図である。図は、図4の位置A、Bなどの選択された位置対が、本明細書でxy平面と想定される平面表面上に描かれている、と仮定している。図は、点A、Bが距離zだけ離れており、かつ平面内の点Cが不整脈の可能な起点であることを更に想定している。
【0082】
図4を参照して上述したシステムに関して、tと想定される図における位置A、B間に、局所興奮到達時間差が存在する。従って、再び図4のシステムに関しては、CV・tのCAとCBとの間の経路差が存在し、CVは、不整脈からの波の伝導速度であり、以下の等式が所与される。
【0083】
【数6】
【0084】
等式(6)は、上記等式(2)、(3)及び(4)に対応する、と理解されよう。
【0085】
図に示すように、CがABより上の垂直距離yであり、かつBからの水平距離xである場合、次に、CA及びCBの両方は、x、y、及びzの観点から式に表すことができる。この式は図に提示され、かつ等式(6)に代入されて、以下を所与する。
【0086】
【数7】
【0087】
CV、t及びzが周知であると仮定すると、等式(7)は、Cに関する可能な値(x、y)について解くことができ、値(x、y)は、不整脈の起点の平面における可能なポジションの予測曲線を発生させる。
【0088】
平面内の別の位置対が選択される場合、次に、他方の対は、平面内の不整脈の起点の可能なポジションの第2の予測曲線を発生させ、また2つの線の交点は、平面内の不整脈の起点に関する予測ポジションに対応する。
【0089】
図8は、本発明の一実施形態による、発明者らにより得られた結果を示す概略図である。2つの位置対に関する予測曲線を、心室性期外収縮(PVC)が発生した3D電気解剖学的マップ上にプロットした。1つの予測曲線は、暗い灰色の点の集合を含み、第2の予測曲線は、明るい灰色の点の集合を含む。(実際のマップは色があり、また曲線は異なる色であった。)
【0090】
2つの曲線の交点は、不整脈の予測される起点に対応する白色の楕円により、図にマークされる。アブレーションが成功裏に実施された領域に対応する真の起点が図に示され、かつこれは予測される起点に非常に近い。
【0091】
図9は、本発明の一実施形態による、発明者らにより得られた結果の図表である。焦点波面のアブレーションが成功した患者は、従来のマッピング及び焦点アブレーション損傷を伴うアブレーションの成功が確認された際に、遡及的に登録された。各患者において、2つ以上の対の予測曲線が発生した。各予測曲線について、マッピングされた波面ベクトルに平行な点の対を使用して、各患者において伝導速度が評価された。
【0092】
主要な結果は、各予測曲線の対に関して、予測された起点と真の起点との間の距離であった。
【0093】
本発明者らは、28の症例について、予測曲線を作成した。図に示すように、28の交差に関する全体的な結果では、不整脈により発生した波面の予測された起点と真の起点との間の距離が6.4±7.8mmとして得られた。図はまた、異なる種類の不整脈に関する予測された起点と真の起点との間の距離のブレークダウンを与えている。
【0094】
図「ORT」は、順方向性回帰頻拍であり、「PVI」は、肺静脈隔離であり、「AT」は心房性頻脈であり、また「PVC/VT」は、心室性期外収縮/心室性頻脈症である。
【0095】
一変量分析を使用すると、精度は、起点の心室、伝導速度、伝導速度測定値の標準偏差、点対間の距離、及びリズムの周期長に関連することが見出されたが、点対の波面起点までの平均距離、又は点対間の興奮到達タイミングには関連しないことが見出された。多変量分析を使用すると、起点の心室のみが有意であった。
【0096】
上記実施形態は実施例として挙げたものであり、本発明は、本明細書で上述のとおり具体的に示し説明したものに限定されない、という点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書で上述のとおり種々の特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形形態及び改変を含む。
【0097】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置であって、
ヒト被験者の心臓の心室に挿入されるように構成されたプローブであって、前記プローブの遠位端部の位置座標を示す位置信号を発生させるように構成され、かつ前記遠位端部にて電極を備え、当該電極が、前記心室の表面上のポジションから、前記表面を横断する伝導波に応答してそれぞれの電気信号を取得するように構成された、プローブと、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
前記位置信号を処理して、前記表面の3次元(3D)表示を発生させ、かつ前記ディスプレイ上に提示し、
前記表面上の前記ポジションにおける前記それぞれの電気信号から、それぞれの局所興奮到達時間(LAT)を導出し、
前記表面上の前記ポジションの第1の対における前記それぞれのLAT間の第1の時間差、及び前記表面上の前記ポジションの第2の対における前記それぞれのLAT間の第2の時間差を計算し、
前記第1の時間差及び前記第2の時間差と前記伝導波の伝導速度とのそれぞれの積として、第1及び第2のLAT導出距離を計算し、
前記表面上の位置における不整脈の起点を、前記位置から前記ポジションの前記第1の対までの前記表面にわたる距離における第1の差が、前記第1のLAT導出距離に等しく、また前記位置から前記ポジションの前記第2の対までの前記表面にわたる距離における第2の差が、前記第2のLAT導出距離に等しいように、特定し、かつ
前記ディスプレイ上の前記表面の前記表示上に、前記特定された起点をマークするように構成された、プロセッサと、を備える、医療装置。
(2) 前記ポジションの前記第1の対及び前記ポジションの前記第2の対が、1つの共通するポジションを含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記プロセッサが、前記位置座標から網目を発生させるように構成され、かつ前記表面にわたる前記距離が、前記網目の端部に沿って測定された最短距離を含む、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記網目が三角形の網目を含む、実施態様3に記載の装置。
(5) 第1の位置から前記ポジションの前記第1の対までの前記表面にわたる距離における前記第1の差が、前記第1のLAT導出距離と等しい、前記第1の位置の第1の軌跡、及び第2の位置から前記ポジションの前記第2の対までの前記表面にわたる距離における前記第2の差が、前記第2のLAT導出距離と等しい、前記第2の位置における第2の軌跡を、前記表示上でマークするように構成されている前記プロセッサを含む、実施態様1に記載の装置。
【0098】
(6) 前記特定された起点が、前記第1の軌跡と前記第2の軌跡との交点にある、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記不整脈が、単一原因の不整脈を含む、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記表面上の選択された一対の点に応答して前記伝導速度を計算するように構成された前記プロセッサを含み、前記点が、波面ベクトルに平行な線分により接続され、かつそれぞれのLAT及びポジションを有する、実施態様1に記載の装置。
(9) 距離における前記第1の差が、事前設定された誤差許容範囲内で前記第1のLAT導出距離に等しく、また距離における前記第2の差が、前記事前設定された誤差許容範囲内で前記第2のLAT導出距離に等しい、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記事前設定された誤差許容範囲が1mmである、実施態様9に記載の装置。
【0099】
(11) 前記装置の操作者が、前記ポジションの第1の対及び前記ポジションの第2の対を選択する、実施態様1に記載の装置。
(12) ヒト被験者の心臓の心室内へとプローブを挿入することと、
前記プローブの遠位端部の位置座標を示す位置信号を発生させることと、
前記表面を横断する伝導波に応答して、前記心室の表面上のポジションからそれぞれの電気信号を取得することと、
前記位置信号を処理して、前記表面の3次元(3D)表示を発生させ、かつディスプレイ上に提示することと、
前記表面上の前記ポジションにおける前記それぞれの電気信号から、それぞれの局所興奮到達時間(LAT)を導出することと、
前記表面上の前記ポジションの第1の対における前記それぞれのLAT間の第1の時間差、及び前記表面上の前記ポジションの第2の対における前記それぞれのLAT間の第2の時間差を計算することと、
前記第1の時間差及び前記第2の時間差と前記伝導波の伝導速度とのそれぞれの積として、第1及び第2のLAT導出距離を計算することと、
前記表面上の位置における不整脈の起点を、前記位置から前記ポジションの前記第1の対までの前記表面にわたる距離における第1の差が、前記第1のLAT導出距離に等しく、また前記位置から前記ポジションの前記第2の対までの前記表面にわたる距離における第2の差が、前記第2のLAT導出距離に等しいように、特定することと、
前記ディスプレイ上の前記表面の前記表示上に、前記特定された起点をマークすることと、を含む、方法。
(13) 前記ポジションの前記第1の対及び前記ポジションの前記第2の対が、1つの共通するポジションを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記位置座標から網目を発生させることを含み、かつ前記表面にわたる前記距離が、前記網目の端部に沿って測定された最短距離を含む、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記網目が三角形の網目を含む、実施態様14に記載の方法。
【0100】
(16) 第1の位置から前記ポジションの前記第1の対までの前記表面にわたる距離における前記第1の差が、前記第1のLAT導出距離に等しい、前記第1の位置における第1の軌跡、及び第2の位置から前記ポジションの前記第2の対までの前記表面にわたる距離における前記第2の差が、前記第2のLAT導出距離に等しい、前記第2の位置における第2の軌跡を、前記表示上にマークすることを含む、実施態様12に記載の方法。
(17) 前記特定された起点が、前記第1の軌跡と前記第2の軌跡との交点にある、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記不整脈が、単一原因の不整脈を含む、実施態様12に記載の方法。
(19) 前記表面上の選択された一対の点に応答して前記伝導速度を計算することを含み、前記点が、波面ベクトルに平行な線分により接続され、かつそれぞれのLAT及びポジションを有する、実施態様12に記載の方法。
(20) 距離における前記第1の差が、事前設定された誤差許容範囲内で前記第1のLAT導出距離に等しく、また距離における前記第2の差が、前記事前設定された誤差許容範囲内で前記第2のLAT導出距離に等しい、実施態様12に記載の方法。
【0101】
(21) 前記事前設定された誤差許容範囲が1mmである、実施態様20に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9