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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】捕虫シートおよびこれを用いた捕虫具
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/14 20060101AFI20231023BHJP
   A01M 3/04 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A01M1/14 A
A01M3/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019514064
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2019009635
(87)【国際公開番号】W WO2019176840
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2018046421
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】394012245
【氏名又は名称】株式会社カーボーイ
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】廻本 一夫
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3006115(JP,U)
【文献】特開2012-210200(JP,A)
【文献】特開2015-198625(JP,A)
【文献】実開昭61-201579(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面または床面などにいる害虫をその上から被せて捕捉する捕虫シートであって、
軟質のシート本体の粘着面に粘着層を備えると共に、当該粘着層上に網目間隔が5mm~20mmの網状体を備え、前記網状体を構成する糸の交差部が点状に盛り上がっていることを特徴とする捕虫シート。
【請求項2】
請求項1に記載の捕虫シートにおいて、
前記シート本体はほぼ縦長矩形状になっておりその先端から所定の位置にこれを前記粘着面を内側にして折り重ねるための折り線を形成すると共に、前記シート本体の先端面に前記粘着面の粘着層と連続または独立した先端粘着層を備えたことを特徴とする捕虫シート。
【請求項3】
請求項1または2の捕虫シートを保持する捕虫具であつて、
前記捕虫シートの粘着面の裏面側に位置する抑えプレートと、前記捕虫シートの後端側を前記抑えプレートで挟持するクランプと、前記抑えプレートの前記クランプ側から延びるグリップとを有することを特徴とする捕虫具。
【請求項4】
請求項3の捕虫具において、前記グリップは伸縮性の多段チューブからなることを特徴とする捕虫具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴキブリやムカデのような家屋内に侵入してきた害虫を粘着して捕獲するための捕虫シートおよびこれを用いた捕虫具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来一般家屋に棲み着いている害虫としては、チャバネゴキブリやクロゴキブリなどが代表的であるが、これに加え最近では地球温暖化などに伴いムカデやヤスデ、蛾、カメムシ、ヤモリなどの多様な昆虫が侵入するケースが増えてきている。さらに将来的にはスズメバチやセアカゴケグモ、ヒアリのような猛毒を持つ害虫の侵入による被害も懸念される。
【0003】
これら害虫を発見した場合には、通常スプレー式の殺虫剤を噴霧したり、ハエたたきで潰すなどして駆除している。しかし、スプレー式の殺虫剤で駆除する方法では即効性が乏しく、すぐにタンスの陰や隙間などに逃げ込まれたりしてしまい、達成感や効果が得られにくい。一方、ハエたたきで潰す方法では、叩く力が弱いと逃げられてしまい、反対に強くたたきすぎると虫の体が潰れて体液などが周囲に飛び散ってしまい、極めて不快な上にその箇所の清掃や死骸の後始末が面倒である。
【0004】
そのため、本発明者は例えば以下の特許文献1に示すような新しい捕虫具を提案している。この捕虫具は例えば長さが30cm程度の柄の先端にプレートと押え板を取りつけると共に、そのプレートと押え板の間に粘着面を備えた軟質の捕虫板を取りつけたものである。そして、この捕虫具を用いてゴキブリなどの害虫を捕るときには、片手で柄を握り、その捕虫板の粘着面の剥離紙を剥がし、ハエたたきの要領でその捕虫板の粘着面をゴキブリの上にから被せることによってそのゴキブリを捕虫板に粘着して捕捉する。
【0005】
そして、ゴキブリを捕らえた後は、この捕虫板の先端側の粘着剤が塗布されていない面をそのまま床面に押しつけるなどして柏餅を作る要領で二つ折りに重ね合わせてその中にゴキブリを包み込むようにし、その後、そのまま捕虫板と共にゴミ箱に捨てることで捕らえたゴキブリをスマートに始末できるしたものである。
【0006】
また、この特許文献1に示すような捕虫具によって害虫を捕獲するに際し、的が外れて害虫を捕獲し損なった場合にはその捕虫板全体が、また、うまく捕獲できてもその害虫以外の部分がそのまま床面や壁面などに粘着して剥がれなくなってしまうことがある。そのため、捕虫板の断面形状を波形にしたり、粘着剤が塗布された面を網目状の凸部やエンボス加工することで平面上の床面などとの接触面積を小さくして床面などとの粘着力を小さくする工夫をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】登録実用新案第3006115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、動きの速い害虫を確実に捕獲するためには、捕虫板の粘着剤として強い粘着力のあるものを使う必要があり、そうすると従来のように捕虫板と床面や壁面などとが点または線接触したとしてもその粘着板が床面や壁面などに強く粘着してしまい、剥がれなくなることがある。また、点または線接触であっても粘着剤の一部がそのまま床面や壁面などに残って床面を汚してしまうこともある。
【0009】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その主な目的は、害虫を捕獲する際にシート本体が床面や壁面などと強く粘着することを防止できる新規な捕虫シートおよびこれを用いた捕虫具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために第1の発明は、軟質のシート本体の粘着面に粘着層を備えると共に、当該粘着層上に網状体を備え、当該網状体を含む前記粘着層全体を剥離紙で覆ったことを特徴とする捕虫シートである。このような構成によれば、シート本体の粘着面を床面や壁面などに接触させたときに、網状体が邪魔となってその粘着層が床面や壁面などと直接接触し難くなるため、害虫を捕獲する際にシート本体が床面や壁面などと強く粘着することを防止できる。また、床面や壁面などに粘着剤が残らないため、床面を汚すこともない。その一方、床面や壁面上の害虫に対しては、その網状体から露出している粘着層部分が接触するため、確実に粘着して捕獲することができる。
【0011】
第2の発明は、軟質のシート本体の粘着面に突起を複数備えると共に、前記粘着面の突起を除くほぼ全面に粘着層を備え、当該粘着層全体を剥離紙で覆ったことを特徴とする捕虫シートである。このような構成によれば、軟質シートの粘着面を床面や壁面などに接触させたときに、床面や壁面などと接する突起に粘着成分がないため、害虫を捕獲する際にシート本体が床面や壁面などと強く粘着することを防止できる。また、第1の発明と同様に床面や壁面などに粘着剤が残らないため、床面を汚すこともない。また、床面や壁面上の害虫に対しては、その網状体から露出している粘着層部分が接触するため、確実に粘着して捕獲することができる。
【0012】
第3の発明は、第1または2の発明において、前記シート本体に、これを前記粘着面を内側にして折り重ねるための折り線を備えたことを特徴とする捕虫シートである。このような構成によれば、害虫を捕獲した後に、その折り線部分からシート本体を容易に二つ折りできるため、捕獲した害虫を包み込むようにしてスマートに処理することができる。
【0013】
第4の発明は、第1乃至3いずれかの発明において、前記シート本体の先端面に先端粘着層を備えたことを特徴とする捕虫シートである。このような構成によれば、害虫を捕獲した後、これをシート本体を二つ折りして包み込んで処理する際に、その先端粘着層を床面などに接触させてその部分を床面に軽く粘着させるようにすれば、容易且つ確実に害虫をシート本体の粘着面に包み込むことができる。
【0014】
第5の発明は、前記捕虫シートを保持する捕虫具であって、前記捕虫シートの粘着面の裏面側に位置する抑えプレートと、前記捕虫シートを前記抑えプレートで挟持するクランプと、前記抑えプレートから延びるグリップとを有することを特徴とする捕虫具である。このような構成によれば、利用者は捕虫シートをクランプによって抑えプレートに取り付けた後にグリップを把持してハエたたきの要領でその捕虫シートを害虫に被せて粘着することで害虫を簡単に捕獲してスマートに処理することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
1.シート本体の粘着面を床面や壁面などに接触させたときに、網状体が邪魔となってその粘着層が床面や壁面などと直接接触し難くなるため、害虫を捕獲する際にシート本体が床面や壁面などと強く粘着することを防止できる。
2.床面などと接する突起部分に粘着成分がないため、害虫を捕獲する際にシート本体が床面や壁面などと強く粘着することを防止できる。
3.床面などに粘着剤が残らないため、床面を汚すこともない。
4.害虫を捕獲した後に、その折り線部分からシート本体を容易に二つ折りできるため、捕獲した害虫を包み込むようにしてスマートに処理することができる。
5.害虫を捕獲した後、これをシート本体を二つ折りして包み込んで処理する際に、その先端粘着層を床面などに接触させてその部分を床面に軽く粘着させるようにすれば、容易且つ確実に害虫をシート本体の粘着面に包み込んで処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る捕虫シート100の実施の一形態を示す表面図である。
図2】本発明に係る捕虫シート100の実施の一形態を示す裏面図である。
図3図1中A-A線断面図である。
図4図3中A方向からみた正面図である。
図5】本発明に係る捕虫具20の実施の一形態を示す斜視図である。
図6】本発明に係る捕虫具20の実施の一形態を示す側面図である。
図7】本発明に係る捕虫具20の実施の一形態を示す底面図である。
図8】捕虫シート100およびこれを取り付ける抑えプレート21を示す底面図である。
図9】クランプ22を示す斜視図である。
図10】(A)はクランプ22を示す平面図、(B)はその側面図である。
図11】(A)はクランプ22を開いた状態を示す側面図、(B)はクランプ22を閉じた状態を示す側面図である。
図12】捕虫具20のグリップ23構造およびこれを伸ばした状態を示す側面図である。
図13】本発明に係る捕虫具20の使用例を示す説明図である。
図14】捕獲した害虫Pの包み込み処理を示す説明図である。
図15】捕獲した害虫Pの包み込み処理を示す説明図である。
図16】本発明に係る捕虫シート100の他の実施の形態を示す表面図である。
図17】本発明に係る捕虫シート100の他の実施の形態を示す裏面図である。
図18図16中A-A線断面図である。
図19図18中A方向からみた正面図である。
図20図16に示す捕虫シート100の製造例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1乃至図4は本発明に係る捕虫シート100の実施の一形態を示したものであり、図1はその表面図、図2はその裏面図、図3図1中A-A線断面図、図4図3中A方向から見た正面図である。図示するようにこの捕虫シート100は、ほぼ矩形状をした軟質のシート本体10の粘着面(表面)12に粘着層12aを有すると共にその粘着層12a上に網状体11を備えた構造となっている。
【0018】
また、この網状体11の上には粘着層12a全体を覆うように剥離紙13が重ねて設けられており、この剥離紙13を剥がすことで、粘着層12a全体を網状体11と共に露出できるようになっている。一方、この粘着面12の反対面(裏面)は図2に示すように粘着層12aや網状体11などは設けられておらず、シート本体10の地肌がそのまま剥き出し状態となっている。
【0019】
この軟質のシート本体10は、容易に折り畳みが可能な材料であれば特に限定されるものではないが、例えば発泡ポリスチレンなどの軽量で柔軟な材料が望ましく、また、その大きさとしては例えば長さ約150mm、幅100mm、厚さ2~3mm程度となっている。また、このシート本体10の一端部(後端)には、これと連続するように取付部10aが設けられていると共に、この取付部10aには、この捕虫シート100を後述する捕虫具20に取り付けるための一対の取付穴14,14がその幅方向に形成されている。
【0020】
このシート本体10には、その先端から所定の位置、例えば先端から5~6cmの位置に折り線15がその幅方向に延びるように形成されており、この折り線15部分からシート本体10を粘着面12を内側にして二つ折りできるようになっている。なお、この折り線15は、図3の拡大図に示すように具体的にはV字状のスリットや凹部からなっている。また、このシート本体10の粘着面12は、予めその全体に亘って円滑なコーティング処理がなされており、耐久性(硬度)の強化および粘着剤の定着性を向上させている。
【0021】
シート本体10上の粘着層12aは、ゴム系やアクリル系などの公知の粘着剤からなっている。また、図4に示すようにこのシート本体10の先端面のほぼ中央部にも粘着面12の粘着層12aと連続または独立した先端粘着層12bが設けられており、従って、剥離紙13もこの部分を覆うように先端側部分が延長して形成されている。
【0022】
網状体11は、太さが0.2mm程度のポリプロピレン(PP)などの樹脂からなる糸Yを格子状または菱形(ダイヤモンド形)に編み込んでなるものであり、粘着層12a上に浮くように設けられている。また、この網状体11は、図1に示すようにその網目間隔が約5mm~20mm、好ましくは約10mm前後となっていると共に、各糸Yの交差部Cが相互に結び合った有結節となっていて点状に盛り上がった状態となっている。なお、この網状体11の交差部は無結節構造やラッセル構造であってもよい。
【0023】
図5乃至図7は、この捕虫シート100を取り付けて用いる捕虫具20の実施の一形態を示したものであり、図5はその斜視図、図6はその側面図、図7はその底面図である。
図示するようにこの捕虫具20は、前述した捕虫シート100の裏面(非粘着面)側に位置する抑えプレート21と、この抑えプレート21に捕虫シート100を保持するクランプ22と、このクランプ22から延びるグリップ23とから構成されている。先ず、抑えプレート21は、図5乃至図7に示すように杓文字の如く先端が楕円形に広がったへら状になった薄板体からなっており、その内側(下面側)に捕虫シート100を取り付けるようになっている。
【0024】
すなわち、図8に示すようにこの抑えプレート21の下面端部の狭窄部(グリップ23側)には、シート本体10の取付部10aに形成された一対の取付穴14,14と対応する一対の突起21a、21aと、その取付部10aの外縁部に沿って延びるガイド21b、21bが形成されており、この突起21a、21aをそれぞれシート本体10の取付穴14,14に嵌め込むことで図7に示すように抑えプレート21の下面に捕虫シート100を取り付けることができるようになっている。
【0025】
なお、この抑えプレート21は、その全体あるいは少なくともその先端の平板部分、例えば図9のラインLより先の部分は、ゴム(エラストマー)、またはソフトラバーなどと称されるポリ塩化ビニル(PVC)、またはポリエチレン、ポリプロピレンなどの柔軟な樹脂材料から形成されており、適度な力が加わることで変形・復元可能な可撓性を有している。
【0026】
クランプ22は、図9および図10に示すように、扇形状をしたクランプ本体22aと、このクランプ本体22aから延びるバー状のハンドル22bと、その接続部に位置する軸孔22c、22cと、コイルスプリング22dと、連結用の分割ピン22e、22eとから構成されている。
【0027】
そして、図11に示すように、このコイルスプリング22dの一端をハンドル22bのばね溝22g内に嵌め込むように位置させた状態でその軸孔22c、22cを、抑えプレート21側の図示しない軸孔と同軸になるように位置させた後、図10に示すようにその軸孔22c、22cに対し、その両側から分割ピン22e、22eを差し込んで一体化させることで、この分割ピン22e、22eを軸としてクランプ22が上下に揺動自在に取り付けられるようになっている。
【0028】
このようにして抑えプレート21側に取り付けられたクランプ22は、その軸部に設けられたコイルスプリング22dによってその扇形状をしたクランプ本体22a側が抑えプレート21の下面側に密着するように付勢されている。従って、指によって図12に示すようにハンドル22bをグリップ23側に動かせば、その全体が揺動してクランプ本体22aが抑えプレート21から離間し、その状態からグリップ23を離せばコイルスプリング22dの付勢力によって自動的に元も戻るようになっている。
【0029】
また、図9および図10に示すようにこのクランプ22のクランプ本体22aには、捕虫シート100の取付穴14,14と相似形の嵌合穴22f、22fが形成されており、クランプ本体22a側が抑えプレート21の下面側に密着したときに、これが抑えプレート21側の突起21a、21aと嵌合し、干渉することなく両者が密着するようになっている。
【0030】
グリップ23は、図12に示すように伸縮自在な多段のチューブ(管体)から構成されている。すなわち、このグリップ23は図示するように手で直接把持する内部中空のグリップ本体23aと、このグリップ本体23a内に挿脱される第1インナーチューブ23bと、この第1インナーチューブ23b内に挿脱される第2インナーチューブ23cと、この第2インナーチューブ23c内に挿脱される第3インナーチューブ23dとから構成されている。
【0031】
そして、この第3インナーチューブ23dの先端側が、抑えプレート21の上端面から延びるグリップヘッド23eを介して抑えプレート21に一体的に連結されている。なお、これらグリップ本体23a、第1インナーチューブ23b、第2インナーチューブ23c、第3インナーチューブ23dの長さとしては、例えばそれぞれ約20cm程度であり、それらを最大に伸張した状態での長さは60~80cm、最小に伸縮した状態での長さはそのグリップ本体23aの長さ、すなわち約20cm程度となっている。従って、このグリップ本体23a内に収めされた第1インナーチューブ23b、第2インナーチューブ23c、第3インナーチューブ23dの繰出量を調整することでこのグリップ23全体の長さを約20~80cmの範囲で自由に調整できるようになっている。
【0032】
次に、このような構成をした本発明に係る捕虫具20の作用を説明する。居住者がその室内の床面や壁面などに害虫を発見した場合は、先ず図11に示すようにクランプ22のハンドル22bを持ち上げて抑えプレート21の下面に、粘着面12が下側に向くように捕虫シート100を取り付けた後、クランプ22のハンドル22bを離してその捕虫シート100をクランプ22と抑えプレート21で挟持する。また、これと共に図12に示すようにそのグリップ23の第1インナーチューブ23bなどを引き出して適用な長さに調整する。
【0033】
そして、図13(A)、(B)に示すようにそのグリップ23のグリップ本体23a部分を手で把持してハエたたきの如くその害虫Pの上から捕虫シート100を被せるようにその抑えプレート21をその床面または壁面W上に瞬時にたたきつける。これによって、その床面W上の害虫Pが捕虫シート100の粘着層12aに粘着してその動きが規制されて捕捉される。なお、図では便宜上グリップ23を最小に縮めた状態で示している。
【0034】
また、このグリップ23は伸縮性の多段チューブからなるため、前述したようにこのグリップ23を適宜伸ばせば、天井や物陰のように手が届きにくい位置にも簡単にその捕虫シート100を臨ませることができるため、そのような場所に居る害虫Pであっても容易に捕捉することができる。
【0035】
そして、このようにして害虫Pを捕虫シート100で捕捉したならば、図13(C)に示すようにその捕虫シート100を床面Wから離すと、その害虫Pがその捕虫シート100の粘着面12に粘着して捕獲されることになる。このとき、その害虫P周囲の粘着面12が床面Wに触れてしまうことになるが、前述したようにこの粘着面12の粘着層12a上には網状体11が設けられているため、これが邪魔となってその捕虫シート100がそのまま床面Wなどにべったりと貼り付いてしまったり、粘着層12aの粘着剤が床面Wなどに残って汚してしまうようなことはない。
【0036】
この点は、仮にその捕虫シート100で害虫Pを捕捉し損なった場合でも同様であり、捕虫シート100の粘着面12が床面Wなどに粘着して剥がれなくなってしまうようなことはない。また、網状体11が前記のように有結節を有するものであれば、この有結節部分だけが床面Wに対して点状に接触するため、床面Wと粘着層12aとが接触するのを回避または接触してもその面積をより少なく抑えることができる。その一方、床面や壁面W上の害虫Pに対しては、その網状体11から露出している粘着層12a部分が接触するため、確実に粘着して捕獲することができる。
【0037】
このようにして害虫Pを捕虫シート100の粘着面12に捕捉したならば、そのままグリップ23を操作して図14に示すように捕虫シート100の先端をその近傍の床面Wなどに押し付けてその捕虫具20を床面Wとほぼ平行に前方に動かす。すると、その捕虫シート100のシート本体10の先端側がその折り線15部分で粘着面12側に折り曲がるため、そのまま捕虫具20を床面W側に押し込んで二つ折りに折り重ねる。これによって、図15に示すようにその粘着面12に捕捉された害虫Pの全体がその折り曲げられたシート本体10の先端部分で包み込むように覆われて外から見えないようにその内部に完全に捕捉される。
【0038】
また、このように捕虫シート100の先端を床面や壁面Wなどに押し付けて二つ折りするに際しては、図15に示すようにそのシート本体10の先端粘着層12bを床面Wなどに接触させることにより、容易かつ確実にその作業を行うことができる。すなわち、このシート本体10の先端粘着層12bがないと、そのシート本体10の先端を床面Wなどに押し付けた際にそのまま床面上を滑ってしまってその作業が難しくなることがあるが、その部分に先端粘着層12bを設けることにより、その部分を床面Wに確実に引っ掛けることができるため、害虫Pの包み込み処理を容易かつ確実に行うことができる。
【0039】
そして、このようにして害虫Pを包み込むように捕獲したならば、そのままゴミ箱の上などに移動してそのままクランプ22のハンドル22bをつまみ上げれば、その捕虫シート100を、捕らえた害虫Pと共に抑えプレート21から離脱(落下)してゴミ箱内に収容されることになる。これによって、捕獲した害虫Pに触れたり、直接目にしたりすることなく、衛生的かつスマートに始末することができる。
【0040】
このように本発明に係る捕虫シート100は、シート本体10の粘着面12の粘着層12aに網状体11を備えたため、シート本体10の粘着面12を床面や壁面Wなどに接触させたときに、網状体11が邪魔となってその粘着層12aが床面や壁面Wなどと直接接触し難くなってシート本体10が床面や壁面Wなどと強く粘着することを防止できる。その結果、床面や壁面Wなどに粘着剤が残らないため、床面Wを汚すこともない。
【0041】
また、害虫Pを捕獲した後に、その折り線15部分からシート本体10を容易に二つ折りできるため、捕獲した害虫Pを包み込むようにしてスマートに処理することができる。さらに、害虫Pを捕獲した後、これをシート本体10を二つ折りして包み込んで処理する際に、その先端粘着層12bを床面などに接触させてその部分を床面Wに軽く粘着させるようにすれば、容易且つ確実に害虫Pの包み込み処理を行うことができる。
【0042】
次に、図16乃至図19は本発明に係る捕虫シート100の他の実施の実施形態を示したものであり、図16はその表面図、図17はその裏面図、図18図1中A-A線断面図、図19図3中A方向から見た正面図である。図示するように本実施の形態に係る捕虫シート100は、ほぼ矩形状をした軟質のシート本体10の粘着面(表面)12に半球状をした突起16が複数ほぼ等間隔かつ格子点状に設けられていると共に、この突起16部分を除くほぼ全面に粘着層12aが形成された構造となっている。
【0043】
また、この粘着層12aの上には剥離紙13が重ねて設けられており、粘着層12aをシート本体10側に残して剥がし取ることができるようになっている。一方、この粘着面12の反対面(裏面)は前記実施の形態と同様に粘着層12aなどは設けられておらず、シート本体10の地肌がそのまま剥き出し状態となっている。
【0044】
本実施の形態に係るシート本体10上の粘着層12aは、前記実施の形態と同様にゴム系やアクリル系などの公知の粘着剤からなっているが、突起16部分を除くその表面の全体に形成されている。すなわち図18に示すようにこの粘着面12の各突起16部分には粘着層12aが形成されておらず、従って、その粘着層12a上に被覆される剥離紙13の突起16に位置する部分にも突起16が剥き出しになるようにそれぞれ貫通穴13aが形成されている。
【0045】
このような構成をした本実施の形態に係る捕虫シート100の場合は、粘着面12に粘着層12aを有しない突起16が複数が設けられているため、これらの突起16が前記の網状体11と同様に作用してその捕虫シート100がそのまま床面Wなどにべったりと貼り付いてしまったり、粘着層12aの粘着剤が床面Wなどに残って汚してしまうような事態を回避することができる。また、仮にその捕虫シート100で害虫Pを捕捉し損なった場合でも同様であり、捕虫シート100の粘着面12が床面Wなどに粘着して剥がれなくなってしまうようなことはない。
【0046】
なお、このような構成をした本実施の形態に係る捕虫シート100の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば図20に示すような工程によって容易に製造することができる。すなわち予め突起16部分に合わせて貫通穴13aが形成されたロール状の接着剤付き剥離紙13と、ロール状のシート本体10をそれぞれのロールから、剥離紙13の貫通穴13aに突起16部分が位置するように同期させて繰り出しながら、圧着ローラR1、R2によって接着剤側がシート本体10になるようにその剥離紙13とシート本体10を重ね合わせて圧着した後、型抜き機R3によって図16に示すような形状に型抜きすることで連続的に製造することができる。
【符号の説明】
【0047】
100…捕虫シート
10…シート本体
11…網状体
12…粘着面
12a…粘着層
12b…先端粘着層
13…剥離紙
13a…貫通穴
15…折り線
16…突起
20…捕虫具
P…害虫
W…床面または壁面
図1
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図20