(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ナノワイヤ構造及びそのような構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/24 20100101AFI20231023BHJP
H01L 33/42 20100101ALI20231023BHJP
H01L 33/16 20100101ALI20231023BHJP
H01L 33/08 20100101ALI20231023BHJP
H01L 33/32 20100101ALI20231023BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01L33/24
H01L33/42
H01L33/16
H01L33/08
H01L33/32
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2019552287
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018056881
(87)【国際公開番号】W WO2018172281
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-11
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510094104
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ エナジーズ アルタナティブス
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥダン,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ドロネー,マルク
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/025407(WO,A1)
【文献】特開2009-009978(JP,A)
【文献】特開2009-152474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0210956(US,A1)
【文献】特表2016-518708(JP,A)
【文献】特開2002-208483(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105741979(CN,A)
【文献】特開2015-212213(JP,A)
【文献】特開2016-225525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノワイヤ(1)の受容端(13)と接触する第1の材料、具体的には酸化インジウムスズの膜(3)を備える構造(100)を製造する方法であって、
平面を形成するように形成された前記受容端(13)を有するナノワイヤデバイス(10)を形成するステップと、
転写により、前記膜を受け入れるための前記受容端の前記平面において前記ナノワイヤ上に直接膜デバイス(3;34)を配置するステップと、を含む方法。
【請求項2】
導電性の第2の材料の膜(4)を前記膜(3)上に堆積するステップを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記膜が透明であり導電性である、及び/又は、前記膜が電極を形成するためのものである、及び/又は、前記ナノワイヤが発光ダイオード構造であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記膜デバイス(3,34)を製造するステップを含み、
前記製造するステップは、
第2の基板(31)を準備するステップと、
犠牲層(32)を前記第2の基板上に堆積するステップと、
第1の材料の層(3)を前記犠牲層上に堆積するステップと、
レジスト層(34)を前記第1の材料の層上に堆積するステップと、
前記犠牲層を化学的に侵食するステップと、を含むことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記受容端において前記ナノワイヤ上に前記膜デバイスを配置するステップの後、前記構造が溶媒で洗浄されることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ナノワイヤデバイスを形成するステップは、
分子線エピタキシー、有機金属気相成長法又はエッチングにより実施されることを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記形成するステップは、
前記デバイスが第1の基板(2)を有し、前記ナノワイヤが前記第1の基板上に配置され、前記デバイスを形成するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記形成するステップは、
前記受容端が平らな又は実質的に平らな不連続面を形成するように、前記受容端を形成するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記形成するステップは、
前記受容端の表面の面積の合計と、前記受容端と接触するための膜の表面の連続面積との比が、80%より大きく、又は90%より大きく、又は95%より大きくなるように、前記デバイスを形成するステップを含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記形成するステップは、
前記ナノワイヤが、前記受容端の方向にサイズが増加する若しくはラッパ状に広がる幾何学的形状を有するように、ナノワイヤを形成するステップを含み、
及び/又は、
前記形成するステップは、
前記ナノワイヤが、受容端を有するマイクロピラー若しくはナノピラーを形成し、前記受容端の表面の寸法が、前記受容端から離れた前記ナノワイヤの多角形底部の内接円の径の寸法よりも大きくなるように、ナノワイヤを形成するステップを含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記形成するステップは、
ナノワイヤがそれぞれ本体(11;11’)及びヘッド(12;12’)を有し、前記ヘッドは受容端(13)を有し、前記受容端の表面が、ナノワイヤの前記本体の断面の面積より、20%大きい又は50%も大きい面積を有するように、ナノワイヤを形成するステップを含むことを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記形成するステップは、
前記ナノワイヤの前記本体を、n型GaNの層(111)、InGaNの層(112)及びブロッキング層(113)の積層体に形成するステップを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記形成するステップは、
前記ナノワイヤの前記ヘッドを、p型GaNの層(121)及びp
++型GaNの層(122)の積層体に形成するステップを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記形成するステップは、
シリコン系材料から前記ナノワイヤを形成するステップを含むことを特徴とする請求項1乃至11いずれか1項記載の方法。
【請求項15】
導電性の第2の材料の膜(4)を前記膜(3)上に堆積する前記ステップは、前記第1の材料と同じ第2の材料の層を堆積するステップを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項16】
前記第2の基板(31)はシリコンウェハであり、
前記犠牲層(32)はニッケル又は銅の犠牲層であり、
前記第1の材料の層(3)は約30nmの厚さの層であり、
前記犠牲層を化学的に侵食する前記ステップにはFeCl
3溶液が用いられる、
ことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項17】
前記構造は、前記膜デバイスのレジスト層を溶解するために溶媒で洗浄されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項18】
前記ナノワイヤが前記第1の基板の表面(21)に垂直若しくは実質的に垂直に配置され、及び/又は、前記ナノワイヤがプリズム状若しくは実質的にプリズム状であるように、及び/又は、前記ナノワイヤが発光ダイオード構造を有することを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項19】
前記受容端の前記表面が、前記受容端から少なくとも2μmの距離で前記受容端と平行に計測される前記ナノワイヤの断面の面積より、若しくは、前記ナノワイヤの中央において前記受容端と平行に計測される前記ナノワイヤの断面の面積より、20%大きい又は50%も大きい面積を有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノワイヤ構造の製造方法に関する。本発明は、さらに、当該製造方法を実施することにより得られる構造に関する。
【0002】
本発明は、特に、発光ダイオード(LED)の分野に関する。発光ダイオードは、可視光から紫外光にわたる放射範囲で放射することができる。より正確には、本発明は、ナノワイヤLEDの系統群に関するが、他のナノ構造デバイスにも適用することができる。一般的に、本発明は、基板上に堆積された若しくはエッチングされた非合体三次元ナノ構造の1つ、いくつか又は一組からなる任意のLED又は任意のデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
この分野においては、ナノ構造上の電気接点の製造に課題がある。具体的には、電極とナノ構造の上部との間の電気接点を製造することが必要である。したがって、電流の均一な通過を確保し、かつナノ構造の上部と下部との間の短絡を回避しつつ、多数のナノ構造との電気接点を確保する必要がある(典型的には1cm2当たり108~1010個の接点)。
【0004】
電気接点は、バリア層上に次いで堆積される金属層が短絡することを防止するのに十分なバリア層をナノ構造の上部に堆積することによって製造されると考えられてきた。バリア層はさらに、電流が通過できるように十分薄いか、又は導電性でなければならない。この目標を達成するために、グラフェンを用いてバリア層を製造することが構想されている。したがって、電極を形成するために、バリア層上に次いで追加の層が堆積される前に、まずグラフェン単層がナノ構造の上部に堆積される。しかしながら、問題は残っている。第1に、グラフェンの電気伝導は当然のことではなく、電流がトンネリングにより通過できるようにするには、グラフェン層は非常に薄くなければならない。第2に、非常に薄いグラフェン層の場合、とりわけ広い範囲に層を延在させることが望まれる場合に層の機械的強度に問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上述の欠点を改善すること及び電気的に接続されなければならないナノワイヤ構造の製造方法を改善することである。特に、本発明は、電気的に接続されたナノワイヤを有する構造を確実に製造できるプロセスを提案する。
【0006】
本発明によれば、複数のナノワイヤの受容端と接触する第1の材料、特に酸化インジウムスズの膜を有する構造を製造する方法であって、
平面を形成するように形成された前記受容端を有するナノワイヤデバイスを形成するステップと、
特に転写により、前記膜を受け入れるための前記受容端の前記平面において前記ナノワイヤ上に膜デバイスを直接配置するステップと、を含む方法。
【0007】
前記方法は、前記膜上に導電性の第2の材料の層を堆積するステップ、特に、前記第1の材料と同じ第2の材料の層を堆積するステップを含んでいてもよい。
【0008】
前記膜は透明で導電性であってもよく、及び/又は、前記膜は電極を形成するためのものであってもよく、及び/又は、前記ナノワイヤは発光ダイオード構造であってもよい。
【0009】
前記方法は、前記膜デバイスを製造するステップを含んでいてもよく、前記膜デバイスを製造するステップは、
第2の基板、特にシリコンウェハを準備するステップと、
前記第2の基板上に、犠牲層、特に金属犠牲層、具体的にはニッケル又は銅の犠牲層を堆積するステップと、
前記犠牲層上に、第1の材料の層、特に約30nmの厚さの層を堆積するステップと、
前記第1の材料の層上にレジスト層を堆積するステップと、
例えばFeCl3溶液を用いて前記犠牲層を化学的に侵食するステップと、を含む。
【0010】
前記受容端において前記ナノワイヤ上に前記膜デバイスを配置するステップの後、特に前記膜デバイスの層を溶解するために、具体的には前記膜デバイスのレジスト層を溶解するために、前記構造は溶媒で洗浄されてもよい。
【0011】
前記ナノワイヤデバイスを形成するステップは、分子線エピタキシー、有機金属気相成長法又はエッチングにより実施されてもよい。
【0012】
前記形成するステップは、前記デバイスが第1の基板を有し、前記ナノワイヤが前記第1の基板上に配置され、特に前記ナノワイヤが前記第1の基板の表面に垂直若しくは実質的に垂直に配置されるように、及び/又は、前記ナノワイヤがプリズム状若しくは実質的にプリズム状であるように、及び/又は、前記ナノワイヤが発光ダイオード構造を有するように、前記デバイスを形成するステップを含んでいてもよい。
【0013】
前記形成するステップは、前記受容端が平らな又は実質的に平らな不連続面を形成するように、前記受容端を形成するステップを含んでいてもよい。
【0014】
前記形成するステップは、前記受容端の前記表面の前記面積の前記合計と、前記受容端と接触するための膜の前記表面の前記連続面積との前記比が、80%より大きく、又は90%より大きく、又は95%より大きくなるように、前記デバイスを形成するステップを含んでいてもよい。
【0015】
前記形成するステップは、前記受容端の前記方向にサイズが増加する若しくはラッパ状に広がる幾何学的形状を前記ナノワイヤが有するように、ナノワイヤを形成するステップを含んでいてもよく、及び/又は、前記形成するステップは、前記ナノワイヤが、受容端を有するマイクロピラー若しくはナノピラーを形成し、前記受容端の前記表面の寸法が、前記受容端から離れた前記ナノワイヤの前記径の寸法よりも大きくなるように、ナノワイヤを形成するステップを含んでいてもよい。
【0016】
前記形成するステップは、ナノワイヤがそれぞれ本体及びヘッドを有し、前記ヘッドは受容端を有し、前記受容端の前記表面が、ナノワイヤの前記本体の断面の前記面積より、特に、前記受容端から少なくとも2μmの距離で前記受容端と平行に計測される前記ナノワイヤの断面の前記面積より、若しくは、前記ナノワイヤの前記中央において前記受容端と平行に計測される前記ナノワイヤの断面の前記面積より、20%大きい又は50%も大きい面積を有するように、ナノワイヤを形成するステップを含んでいてもよい。
【0017】
前記形成するステップは、前記ナノワイヤの前記本体を、n型GaNの層、InGaの層及びブロッキング層(blocking layer)の積層体に形成するステップを含んでいてもよい。
【0018】
前記形成するステップは、前記ナノワイヤの前記ヘッドを、p型GaNの層及びp++型GaNの層の積層体に形成するステップを含んでいてもよい。
【0019】
前記形成するステップは、シリコン系材料から前記ナノワイヤを形成するステップを含んでいてもよい。
【0020】
本発明によれば、以上のように定義される製造方法を実施することにより、構造、特にナノワイヤ発光ダイオード構造を得ることができる。
【0021】
本発明の目的、特徴及び利点は、デバイスの一実施形態及び構造の製造方法の一実装形態に関する以下の説明において詳細に説明される。本実施形態及び実装形態は、非限定的である。添付の図面は、以下の図を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】ナノワイヤを有する構造の一実施形態の斜視図である。
【
図2】ナノワイヤの第1の変形実施形態の概略図である。
【
図3】ナノワイヤの第2の変形実施形態の概略図である。
【
図4】ナノワイヤ構造の製造方法の一実装形態を示す概略図である。
【
図5】ナノワイヤ構造の製造方法の一実装形態を示す概略図である。
【
図6】ナノワイヤ構造の製造方法の一実装形態を示す概略図である。
【
図7】ナノワイヤ構造の製造方法の一実装形態を示す概略図である。
【
図8】ナノワイヤ構造の製造方法の一実装形態を示す概略図である。
【
図9】ナノワイヤ構造の製造方法の一実装形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、
図1を参照して、ナノワイヤ発光ダイオード100の一実施形態を説明する。
【0024】
ダイオードはナノワイヤ構造を有する。ナノワイヤ構造は、ナノワイヤデバイス10及び第1の材料、特に酸化インジウムスズから形成される膜3を有する。
【0025】
ナノワイヤは発光ダイオード構造を有することが望ましい。
【0026】
膜はナノワイヤデバイスを覆う。具体的には、膜は、膜を受け入れるための端部又は受容端と呼ばれる、ナノワイヤの端部を覆う。ナノワイヤ同士は合体していない。受容端は不連続面を形成する。
【0027】
「不連続面」とは、例えば、受容端同士が接触しないことを意味する。具体的には、少なくとも所定の受け面が他の隣接する受け面から離れて配置されていることを意味する。好ましくは、各受け面が他の隣接する受け面から離れて配置されていることを意味する。
【0028】
オプションとして、構造100は、導電性の第2の材料、特に第1の材料と同じ第2の材料の層4を有していてもよい。
図9に示すように、この層は膜3を覆う。
【0029】
好ましくは、膜は導電性である。特に、膜は、ナノワイヤに電流を注入するための電極として機能するためのものである、又は、ナノワイヤに電位を印加するための電極として機能するためのものである。発光ダイオード構造の場合には、膜は、透明であることが望ましい。
【0030】
転写された膜は、十分に薄くなければならず、及び/又は、ナノワイヤの受容端の表面の形状に沿うのに十分な柔軟性がなければならない。
【0031】
デバイス10は、少なくとも1つのナノワイヤを有する。好ましくは、デバイス10は、複数のナノワイヤを有する。これらのナノワイヤは、例えば、それぞれが他のナノワイヤから離間するようにパターン配列される。ナノワイヤ同士は合体しない。受容端は不連続面を形成する。例えば、ナノワイヤは、複数の連続した列で基板2上に配置される。
【0032】
ナノワイヤは、列をなして縦に並べられていてもよい。したがって、ナノワイヤの行はナノワイヤの列に垂直に方向づけられる。代替的に、ナノワイヤは、千鳥状に配列されていてもよく、次の列の各ナノワイヤが、前の列の2つのナノワイヤの間に配置される。また、代替的に、ナノワイヤはよりランダムに配置されていてもよい。
【0033】
ナノワイヤは、受容端の方向にサイズが増加する又はラッパ状に広がる幾何学的形状を有することが望ましい。また、好ましくは、ナノワイヤは、受容端を有するマイクロピラー若しくはナノピラーを形成し、受容端の表面の寸法が、受容端から離れたナノワイヤの径の寸法よりも大きい。
【0034】
図2及び3に示すように、少なくとも1つのナノワイヤ、好ましくは所定の数のナノワイヤ、より好ましくはすべてのナノワイヤは、それぞれ本体11、11’及びヘッド(head)12、12’を有する。本明細書において、「ナノワイヤ」とは、好ましくは、主に方向A又は曲線に沿って延伸し、この方向又はこの曲線に対して横方向の寸法が、1マイクロメートル又は1マイクロメートルより小さいオーダーである任意の構造を意味する。また、好ましくは、方向A又は曲線に対して横方向に計測される構造のすべての寸法は、1マイクロメートル又は1マイクロメートルより小さいオーダーである。
【0035】
好ましくは、ナノワイヤは、基板2の表面21上に垂直に又は実質的に垂直に配置される。したがって、表面21においてナノワイヤが延伸する方向A又は曲線は、この表面21に垂直又は実質的に垂直である。
【0036】
表面21は平面である。代替的に、表面は、非平面の線織面(ruled surface)又は歪んだ表面(warped surface)であってもよい。
【0037】
ナノワイヤは、好ましくはプリズム状又は実質的にプリズム状であり、具体的には直角柱の形状をとる。例えば、ナノワイヤは断面が六角形であってもよい。ただし、ナノワイヤの断面は他の任意の形状であってもよい。
【0038】
好ましくは、すべてのナノワイヤは同様又は同一である。
【0039】
本体は、基板2の表面21とナノワイヤのヘッドとを接合する。
【0040】
発光ダイオード構造の第1の実施形態の変形例に示すように、ナノワイヤは、
図2に示すようなアキシャル型ヘテロ構造を有する。本変形例において、本体は、n型GaNの層111、InGa
Nの層112及びブロッキング層113(blocking layer)の積層体を有する。層111は基板の表面21と接触する。層112は層111と接触する。層113は層112及びヘッドと接触する。
【0041】
ヘッドは本体と接触し、特に、表面21と接触しない本体の端部と接触する。
【0042】
本体と接する端部と反対側のヘッドの端部は、受容端13を有する。これらの受容端は、ナノワイヤを形成する段階の終わりに自由表面を形成する。これらの受容端は、構造100の製造に続くステップにおいて、膜3を受け入れるためのものである。
【0043】
好ましくは、受容端の表面は平面又は実質的に平面である。ただし、受容端の表面は所定の凹曲率又は凸曲率を有していてもよい。例えば、ナノワイヤの受容端の表面は、最小曲率半径がナノワイヤ本体の高さ以上である場合、平面であるとみなされる。
【0044】
受容端の表面の面積は、ナノワイヤの本体の断面sの面積よりも実質的に大きく、例えば、少なくとも20%大きく、又は50%も大きい。ナノワイヤの本体の当該断面sは、特に受容端に平行に又は軸Aに垂直に配置される。さらに、好ましくは、当該断面sは、受容端から少なくとも2μm離れて配置される。例えば、ナノワイヤの当該断面sは、ナノワイヤの中央又はナノワイヤの本体の中央において受容端と平行である。したがって、膜と接触するナノワイヤの面積は、ナノワイヤの基部(ナノワイヤが延伸する方向Aに垂直)の投影面積よりもかなり大きい。例えば、膜と接触するナノワイヤの面積は、ナノワイヤの基部の投影面積の10倍より大きくてもよい。
【0045】
好ましくは、ナノワイヤが延伸する方向Aに対して横方向に計測される少なくとも1つの寸法の変化により、ヘッドを本体から識別することができる。この場合、本体とヘッドの境界は、例えば、本体の横方向の寸法の著しい増加、特に10%より大きい増加により定義されてもよい。より一般的には、ヘッドの少なくとも1つの横方向の寸法は、本体の横方向の寸法よりも大きい。
【0046】
図1、2及び4~10に示した実施形態において、ヘッドは、円錐台状であり断面が多角形である、又は、断面が多角形の円錐台を有する。この円錐台の小さな基部が本体と接触する。
【0047】
ナノワイヤが分子線エピタキシーにより製造されると仮定すると、ナノワイヤの成長条件の賢明な選択により、ヘッドを広げることができ、特に多角形断面の円錐台の形状をしたヘッドを得ることができる。
【0048】
図1及び2を参照して説明した実施形態において、ヘッドは、p型GaNの層121及びp
++型GaNの層122の積層体である。ヘッドは、異なる方法により製造されてもよい。具体的には、実施形態の他の例において、層121はInGaNから形成されていてもよく、p型GaNの次のコンフォーマル層又は広げられた層によって覆われていてもよく、それ自体がp
++型GaNの次のコンフォーマル層又は広げられた層によって覆われる。層121は、例えば円錐台形であり、断面が多角形である。層122の1つの面は受容端を形成する。
【0049】
多くの受容端が不連続面を形成する。具体的には、多くの受容端の間において、受容端の表面を接続して連続面、特に曲率に大きな不連続性がない表面を形成することができる。接続された不連続面は、平面又は実質的に平面であってもよい。より一般的には、この接続された不連続面は、非平面の線織面(ruled surface)又は歪んだ表面(warped surface)であってもよい。膜が受容端上に配置されると、膜により、ナノワイヤデバイスの不連続構造上で電気的連続性が確保される。
【0050】
好ましくは、
図10に示すように、受容端の表面の面積の合計と、受容端間で接続された不連続面の総面積との比は、例えば、80%より大きい、又は90%より大きい、又は95%より大きい。それ故、受容端上に膜が配置されると、膜は、その表面の80%超、又は90%超、又は95%超がナノワイヤと接触する。したがって、ヘッドの幾何学的形状は、膜が接触する物質の面積密度を定義する。この密度は非常に重要である。密度が高ければ高いほど、膜がナノワイヤ上に配置されたときに膜が破れる又は貫通されるリスクが低くなり、膜とナノワイヤの間の電気的接触が良くなる。
【0051】
受容端の物質の存在密度が低すぎる場合、ナノワイヤの薄さ及び/又はそれらを隔てる大きな距離により、特に構造の端部において膜が貫通される可能性がある。このような損傷はもちろん望ましくない。これを回避するために、物質の存在密度(上述のパーセンテージで表される)が十分高くなければならない。受容端における物質の高い存在密度を得るためには、上述のようなナノワイヤデバイスが用いられる。追加的に又は代替的に、例えば表面21上に1cm2当たり1010のオーダーのナノワイヤの高い面密度を有するデバイスを用いることができる。高密度のナノワイヤと、ナノワイヤが特定の形状である、すなわちナノワイヤが上述のようであるナノワイヤデバイスの組み合わせは、損傷又は破れのない膜の転写に適している。
【0052】
好ましくは、受容端の表面の面積の合計と、受容端間で接続された不連続面の総面積との比は、例えば、厳密には100%未満である。
【0053】
膜は、ナノワイヤが互いにさらに離れている場合にも転写され得る。例えば、ナノワイヤ間の距離、換言すればナノワイヤアレイのピッチがナノワイヤの本体の横方向寸法の少なくとも5倍以上であってもよい。ナノワイヤアレイのピッチは、膜を形成する材料の機械的強度に応じて特に調整することができる。
【0054】
他の変形実施形態において、ナノワイヤのヘッドは、円錐台形ではなく、断面が多角形でなくてもよく、他の形状を有していてもよい。具体的には、ヘッドは、
図3に示すようにプリズム状であってもよい。この場合、ヘッド12’の径は、本体11’の径より大きい。ナノワイヤが分子線エピタキシーにより製造されると仮定すると、ナノワイヤの成長条件の賢明な選択により、ヘッドを広げることができ、特に「ネイルヘッド(nail head)」の幾何学的形状をしたヘッドを得ることができる。
【0055】
他の変形実施形態において、ナノワイヤは、発光ダイオード構造を有していなくてもよい。具体的には、上述のナノワイヤ構造を、光を放出するために使用する必要はない。他のアプリケーションにおいて、ナノワイヤは、電気注入及び/又は電位の印加の連続性を確保できるように、膜を堆積するのに重要な、特にシリコン系材料、又は、ヒ素族に属する他の半導体系若しくは他の物質系(金属、ポリマー、セラミック)の材料から形成されてもよい。
【0056】
以下、
図4~9を参照して、電極を形成する膜3及び複数のナノワイヤ1を有する構造100の製造方法の一実装形態を説明する。
【0057】
第1の段階において、層34で覆われた膜3を有する膜デバイス3,34が製造される。
【0058】
第2の段階において、上述のナノワイヤデバイス10、又は、ナノワイヤがヘッドと本体とを区別できない構造、すなわち、例えば、横方向断面若しくは寸法がナノワイヤの全長に亘って一定若しくは実質的に一定である構造を有する点で上述とは異なるナノワイヤデバイスが製造又は形成される。デバイス10のナノワイヤは不連続面を形成する。ナノワイヤ同士は合体されておらず、それぞれが他のナノワイヤから離れた位置にある。膜を受け入れるための端部又は受容端と呼ばれるナノワイヤの端部は、不連続面を形成する。
【0059】
第3の段階において、特に転写により、ナノワイヤデバイス10上に膜デバイス3,34が配置される。膜デバイスは、ナノワイヤの膜を受け入れる端部の表面に直接配置される。膜デバイスは、ファンデルワールス力を介して受容端の表面に「結合」する。これにより、本工程において膜デバイスが受容端上に直接配置される。膜デバイスは、膜デバイスの導電性及び/又は透明の層がナノワイヤに直接接触するように、特にナノワイヤの受容端に直接接触するように配置される。これにより、膜デバイスは、次のいずれかが事前に配置されていない状態でナノワイヤ上に配置される。
多数のナノワイヤ間の充填材料、又は、
ナノワイヤ上のバリア層、具体的にはナノワイヤの自由端部に載置されるバリア層。
【0060】
第4の段階において、特に膜デバイスの層34を溶解するために、具体的には膜デバイスのレジスト層を溶解するために、構造は、例えばアセトンなどの溶媒により洗浄される。本第4の段階において、その後、オプションとして、
図9に示すように、膜3上に導電性の第2の材料の層4を堆積することができる。第2の材料は第1の材料と同じであってもよい。この任意の堆積ステップにより、例えば膜を厚くして膜を機械的に強化することができる。
【0061】
第1及び第2の段階は、任意の順序で実行することができる。第1及び第2の段階はまた、並行又は同時に実行することもできる。
【0062】
第1の段階において、以下のステップを実行することができる。
【0063】
第1のステップにおいて、例えばシリコンウェハなどの第2の基板31を準備する。
【0064】
第2のステップにおいて、
図4に示すように、金属層、具体的にはニッケル又は銅の層の犠牲層32が第2の基板上に堆積される。
【0065】
第3のステップにおいて、
図5に示すように、第1の材料の層3、特に、例えば約30nmの厚さの層又は約20nmの厚さの層が犠牲層上に堆積される。この層は膜3を形成する。
【0066】
第4のステップにおいて、
図6に示すように、第1の材料の層上にレジスト層34が堆積される。
【0067】
第5のステップにおいて、
図7に示すように、例えばFeCl
3溶液を用いて犠牲層32が化学的エッチングされる。これにより、
図7に示すように、(層3及び34から形成される)膜が得られる。
【0068】
好ましくは、第2の段階において、例えば分子線エピタキシー、有機金属気相成長法若しくはエッチングにより、デバイス10が形成される又は製造される。使用する手順のパラメータの賢明な選択により、ヘッドを広げることができる。ナノワイヤの成長条件の賢明な選択により、ヘッドを広げることができる。
【0069】
上述のデバイス及び方法によれば、それぞれの上部がピラーの径より大きい寸法の平面であるマイクロ又はナノピラー上に、(透明で導電性の)電極を製造することができる。これらの上面に(透明で導電性の)膜を配置又は転写することにより、製造は完了する。上面の幾何学的形状及び密度により、ピラーにより膜を貫通する可能性を防ぎつつ、最適化された電気的接触が得られる。膜により、ナノワイヤデバイスの不連続構造上での電気的連続性が確保される。
【0070】
上記のように、本発明の有利な一アプリケーションは、LED構造の製造に関する。なお、金属層を堆積するための従来の技術によって損傷を受ける可能性のある有機LEDの場合は、転写の溶液は、膜を配置する際に膜の完全性を保持できる穏やかな手法である。
【0071】
さらに、ワイヤ状要素を含む任意の構造は、ワイヤ状要素の密度又はサイズとは無関係に、本明細書の主題であるデバイス及び方法の利益を受けることができる。したがって、特に、単一光子エミッタ又は様々な光子オブジェクト(マイクロディスク)への接触を想定することが可能である。
【0072】
転写された導電性の膜の使用は、原則としてLEDの分野に限定されるものではない。このタイプの膜は、ボトムアップ技術又はトップダウン技術により得られるナノワイヤ又はナノピラーの任意のタイプに転写することもできる。
【0073】
酸化インジウムスズ又はITOから形成される膜の転写について説明した。しかしながら、ITOとは別として、原則として他の材料から形成される任意の膜は、例えば犠牲層の化学エッチングを経て初期キャリアから簡単に分離できるのであれば、転写することができる。