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特許7370876医療用刃物の製造方法及びその製造方法により製造される医療用刃物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】医療用刃物の製造方法及びその製造方法により製造される医療用刃物
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
A61B17/3205
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020006926
(22)【出願日】2020-01-20
(65)【公開番号】P2021112412
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001454
【氏名又は名称】株式会社貝印刃物開発センター
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】井上 兼汰
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03502082(US,A)
【文献】米国特許第05116346(US,A)
【文献】米国特許第10238417(US,B1)
【文献】米国特許第06398793(US,B1)
【文献】登録実用新案第3053471(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃体とハンドル部を有し、刃体は、ハンドル部から露出する刃部と、ハンドル部の挿入孔に挿入されて刃体をハンドル部に固定する脚部とから成る医療用刃物の製造方法であって、
帯状金属の中央部に環状の刃部が形成され且つその刃部の両端部からそれぞれ脚部が延びるように、一枚の帯状金属を曲げ加工して刃体を形成し、
その脚部同士を挟持手段により挟持させてほぼ全面的に接触させ、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側からハンドル部の挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入し、挿入がほぼ完了したときに挟持手段による挟持を解除し、樹脂を固化させて刃体を固定することを特徴とする医療用刃物の製造方法。
【請求項2】
ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部からそれぞれ延びる脚部は、互いに間隔を開けて延びる請求項1記載の医療用刃物の製造方法。
【請求項3】
ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部は互いに間隔を開け、その両端部からそれぞれ脚部が互いに間隔を開けて延びる請求項2記載の医療用刃物の製造方法。
【請求項4】
曲げ加工した刃体の刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせたときに、脚部は間隙を有し、且つその間隙を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有するように、刃体を曲げ加工し、
脚部のハンドル部への挿入がほぼ完了し挟持手段による挟持を解除したときに、刃体の弾性復元力により、溶けた樹脂の中で両脚部間に隙間を生じさせ、その隙間を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有するように樹脂を固化させる請求項3記載の医療用刃物の製造方法。
【請求項5】
刃体の脚部同士を全面的に接触させる挟持手段は2つ存在し、第一の挟持手段は脚部の基端部側を挟持し、第二の挟持手段は脚部の先端部側を先端付近を残した状態で挟持し、
脚部をハンドル部の挿入孔に挿入するときに、脚部の先端付近を挿入した時点で第二の挟持手段の挟持状態を解除してさらに挿入し、第一の挟持手段がハンドル部の先端面又はその付近に到達したときに、第一の挟持手段の挟持状態を解除する請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の医療用刃物の製造方法。
【請求項6】
第一の挟持手段は、脚部の基端部側を挟持したときに、同時に刃部もその両側から挟持可能に形成されている請求項5記載の医療用刃物の製造方法。
【請求項7】
第一の挟持手段が刃部を挟持したときに、第一の挟持手段は、脚部の先端部と反対側に位置する刃部の頂部付近に接触している請求項5記載の医療用刃物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、主に皮膚を切除するときに用いる医療用刃物の製造方法及びその製造方法により製造される医療用刃物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚を切除するときに用いる医療用刃物としては、特許文献1で開示された皮膚切除具が知られており、この皮膚切除具は、人が指先で摘まむ樹脂製の把持柄(ハンドル部)と刃部(刃体)とから成り、刃体は、円筒体と、この円筒体の円周壁外側から延設された腕体(脚部)とから成る。そして、この脚部がハンドル部の頭端部に挿着されている。この円筒体の両端縁のうち一方の端縁には円形状の刃先が形成されている。この皮膚切除具を製造する工程では、樹脂製のハンドル部側を電気ヒーター等で約100度から120度程度に加熱して、ハンドル部の樹脂を軟化させておき、次に、金属製の刃体の脚部(加熱されていない常温状態)を、軟化したハンドル部の挿入孔に挿入している。すると、ハンドル部の挿入孔の樹脂が刃体の脚部の周りに固着するので、刃体がハンドル部の先端に抜けないように取り付けられるのである。
【0003】
ただ、上述した従来の皮膚切除具では、金属製の刃体の脚部をハンドル部に挿入する際に、刃体の脚部に触れた樹脂の一部が、冷やされて固化した状態となる。さらに、その状態のまま、金属製の刃体の脚部が引き続き挿入されていくので、ハンドル部の樹脂の一部は、刃体の脚部の周囲に隙間を生じさせ、刃体を強固に固定するにはやや不十分であった。そして、皮膚切除具は、使用時において刃体が柄から抜ける方向の力がかかるので、刃体がハンドル部から抜ける虞があった。そのため、ハンドル部がより強固に固定され、刃体をハンドル部から更に抜けにくくすることが、要望されていた。
【0004】
また、上述した従来の医療用器具を製造する製造装置では、製造装置の製造ライン上で、樹脂製のハンドル部側を電気ヒーター等で比較的長い間(約300秒程度)、加熱する必要があるため、加熱工程を行う製造ラインが長く(又は大きく)なり、装置全体が大型化する問題や、生産効率が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3053471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明は、上記問題に鑑み、従来に比べ更に刃体が抜けにくい医療用刃物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、刃体とハンドル部を有し、刃体は、ハンドル部から露出する刃部と、ハンドル部の挿入孔に挿入されて刃体をハンドル部に固定する脚部とから成る医療用刃物の製造方法であって、帯状金属の中央部に環状の刃部が形成され且つその刃部の両端部からそれぞれ脚部が延びるように、一枚の帯状金属を曲げ加工して刃体を形成し、その脚部同士を挟持手段により挟持させてほぼ全面的に接触させ、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側からハンドル部の挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入し、挿入がほぼ完了したときに挟持手段による挟持を解除し、樹脂を固化させて刃体を固定する構成である。
【0008】
請求項2記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部からそれぞれ延びる脚部が、互いに間隔を開けて延びる構成である。
【0009】
請求項3記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部が互いに間隔を開け、その両端部からそれぞれ脚部が互いに間隔を開けて延びる構成である。
【0010】
請求項4記載の発明は、曲げ加工した刃体の刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせたときに、脚部は間隙を有し、且つその間隙を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有するように、刃体を曲げ加工し、脚部のハンドル部への挿入がほぼ完了し挟持手段による挟持を解除したときに、刃体の弾性復元力により、溶けた樹脂の中で両脚部間に隙間を生じさせ、その隙間を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有するように樹脂を固化させる構成である。
【0011】
請求項5記載の発明は、刃体の脚部同士を全面的に接触させる挟持手段が2つ存在し、第一の挟持手段は脚部の基端部側を挟持し、第二の挟持手段は脚部の先端部側を先端付近を残した状態で挟持し、脚部をハンドル部の挿入孔に挿入するときに、脚部の先端付近を挿入した時点で第二の挟持手段の挟持状態を解除してさらに挿入し、第一の挟持手段がハンドル部の先端面又はその付近に到達したときに、第一の挟持手段の挟持状態を解除する構成である。
【0012】
請求項6記載の発明は、第一の挟持手段が、脚部の基端部側を挟持したときに、同時に刃部もその両側から挟持可能に形成されている構成である。
【0013】
請求項7記載の発明は、第一の挟持手段が刃部を挟持したときに、第一の挟持手段が、脚部の先端部と反対側に位置する刃部の頂部付近に接触している構成である。
【0014】
請求項8記載の発明は、刃体とハンドル部を有し、刃体が、ハンドル部から露出する刃部と、ハンドル部の挿入孔に挿入されて刃体をハンドル部に固定する脚部とから成る医療用刃物であって、刃体は、一枚の帯状金属から成り、その中央部に環状の刃部が形成され、その刃部の両端部からそれぞれ脚部が延びており、それらの脚部は、脚部同士を挟持手段により挟持させてほぼ全面的に接触させ、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側からハンドル部の挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入されたものであって、樹脂の固化により脚部がハンドル部に挿入された状態で刃体が固定されている構成である。
【0015】
請求項9記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部からそれぞれ延びる脚部が、互いに間隔を開けて延びている構成である。
【0016】
請求項10記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部が互いに間隔を開け、その両端部からそれぞれ脚部が、互いに間隔を開けて延びている構成である。
【0017】
請求項11記載の発明は、脚部をその先端部側から挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入し、挿入がほぼ完了して挟持手段による挟持を解除したときに、刃体の弾性復元力により、溶けた樹脂の中で両脚部間に隙間が生じることを可能とする弾性復元力を刃体は有しており、前記隙間を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有する構成である。
【0018】
請求項12記載の発明は、刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせたときに、脚部は間隙を有しており、且つその間隙を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有する構成である。
【0019】
請求項13記載の発明は、両脚部の、刃部に連続するそれぞれの基端部寄りに、外側に凸の曲げ部が形成されている構成である。
【0020】
請求項14記載の発明は、刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせたときに、両脚部は、その基端部から先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げるように直線状に延びる構成である。
【0021】
請求項15記載の発明は、隙間を生じさせている両脚部がその先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分において、その部分の隙間に、溶けた樹脂が入り込んで固化している構成である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明は、刃体をハンドル部の挿入孔に挿入して固定する方法として、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側から挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入し、挿入がほぼ完了したときに挟持手段による挟持を解除し、樹脂を固化させて刃体を固定するものである。したがって、高周波誘導加熱を用いることによって、刃体の脚部とハンドル部とを溶着して刃体をハンドル部に固定することができる。さらに、前述したように、従来の脚部のハンドル部への挿入は、樹脂製のハンドル部側を電気ヒーター等で約100度から120度程度に加熱して、ハンドル部の樹脂を軟化させておき、次に、金属製の刃体の脚部(加熱されていない常温状態)を、軟化したハンドル部の挿入孔に挿入していた。これに対して、請求項1記載の発明は、高周波誘導加熱によって脚部を加熱して、その熱で樹脂を溶かしながら挿入するものである。したがって、高周波誘導加熱を用いることにより局所的に急速な加熱ができるので、加熱工程が短くなり装置全体が小型化できると共に、組立て時間の短縮化によって生産効率を向上させることができる。また、医療用刃物の組立てはクリーンルーム内で行われるが、加熱装置の小型化や加熱時間の短縮によって、発熱量をより少なくすることが可能で、空気の温度変化が抑制され、クリーンルーム内の空気の流れが安定しやすく、空気清浄度が保たれやすく衛生面で優れたものとすることができ、クリーンルーム内の環境が維持しやすくなる。さらに、装置の小型化により、クリーンルームという限られた空間を有効に活用することができる。また、従来に比べて組付けの精度が増し、これにより専門の使用者(ドクター)に負担を掛けることなく、スムーズな治療が可能になり、患者への負担も少なくすることができる。
【0023】
請求項2記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部からそれぞれ延びる脚部が、互いに間隔を開けて延びている。したがって、刃体の脚部の挿入が完了して脚部を挟持手段から解放すると、二本の脚部は、弾性力によって開く方向へ戻ろうとし、挿入孔の内面の樹脂へ向けて押し付けられる。そのため、樹脂は、押し付けられている脚部に隙間無く密着して溶着できるので、刃体がハンドル部から抜けにくくなるのである。
【0024】
請求項3記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部が互いに間隔を開け、その両端部からそれぞれ脚部が互いに間隔を開けて延びている。したがって、刃部の両端部が互いに間隔を開けるので、脚部を閉じたときは開いている刃部の両端部も閉じられる。これにより、二本の脚部が弾性力によって開く方向へ戻ろうとするときに、脚部の弾性復帰力に加えて刃部の弾性復帰力も加わるから、脚部が挿入孔の内面の樹脂へ向けて押し付ける力が大きくなり、樹脂と脚部の密着力が強くなる。
【0025】
請求項4記載の発明は、脚部のハンドル部への挿入がほぼ完了し挟持手段による挟持を解除したときに、刃体の弾性復元力により、溶けた樹脂の中で両脚部間に隙間を生じさせ、その隙間を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有するように樹脂を固化させる。したがって、請求項4記載の発明の製造方法により製造された医療用刃物の刃体は、両脚部が、片仮名のハ字形又はそれに近い形をなす部分を有する。このような部分を両脚部が有することによって、樹脂が固化した後、刃体を抜こうとする外力が刃体に作用した場合、刃体の脚部がハンドル部から抜け出すためには、両脚部のハ字形の部分が間隔を狭めてその部分同士が接触又はそれに近い近接状態に変形しなければ、刃体は抜け出ない。しかし、ハ字形に開いた両脚部を、ハ字の上方の部分から間隔を狭めるように変形させるということは大きな力が必要であり、しかも刃体が動き出す直前に最も大きな力が必要であるから、脚部のハンドル部内でのずれ防止、及びハンドル部からの抜け出し防止に大きく寄与することができる。また、本発明のような皮膚を切除するための刃物は、使用時、刃体には、刃体がハンドル部から抜ける方向に力が作用することが多く、またその回数も複数回になる場合が多いが、その使用に対して十分に耐えることができ、使用時に刃体が抜けるおそれがなく使用することができる。さらに、軟らかい組織だけでなく硬い組織を除去する(削り取る)際にも使用することができ、一つの道具で使用できる範囲が広くなる。
【0026】
請求項5記載の発明は、刃体の脚部同士を全面的に接触させる挟持手段が2つ存在し、第一の挟持手段は脚部の基端部側を挟持し、第二の挟持手段は脚部の先端部側を先端付近を残した状態で挟持し、脚部をハンドル部の挿入孔に挿入するときに、脚部の先端付近を挿入した時点で第二の挟持手段の挟持状態を解除してさらに挿入し、第一の挟持手段がハンドル部の先端面又はその付近に到達したときに、第一の挟持手段の挟持状態を解除する。これにより、最初に脚部の先端付近を挿入孔に挿入するときに、その先端に近接した脚部の部分が第二の挟持手段により挟持されているので、両脚部の先端同士が容易に広がりづらくなり、脚部の先端の挿入孔に対する位置決めが容易で挿入孔に確実に挿入することができる。また、第二の挟持手段の挟持状態を解除しても、第一の挟持手段が脚部を挟持しているので、脚部が閉じられた状態で挿入孔に円滑に挿入される。
【0027】
請求項6記載の発明は、第一の挟持手段が、脚部の基端部側を挟持したときに、同時に刃部もその両側から挟持可能に形成されている。したがって、第二の挟持手段の脚部に対する挟持面積に比べて、第一の挟持手段の脚部に対する挟持面積がかなり小さい場合でも、刃部を挟持することを要因として両脚部が閉じられるので、挟持面積の小さい分を補強することができる。
【0028】
請求項7記載の発明は、第一の挟持手段が刃部を挟持したときに、第一の挟持手段が、脚部の先端部と反対側に位置する刃部の頂部付近に接触している。したがって、第一の挟持手段が、脚部をハンドル部に挿入するために刃体を移動させる手段にもなっている。
【0029】
請求項8記載の発明は、刃体が、一枚の帯状金属から成り、その中央部に環状の刃部が形成され、その刃部の両端部からそれぞれ脚部が延びており、それらの脚部は、脚部同士を挟持手段により挟持させてほぼ全面的に接触させ、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側からハンドル部の挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入されたものであって、樹脂の固化により脚部がハンドル部に挿入された状態で刃体が固定されている。したがって、高周波誘導加熱を用いることによって、刃体の脚部とハンドル部とを溶着して刃体をハンドル部に固定することができる。
【0030】
請求項9記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部からそれぞれ延びる脚部が、互いに間隔を開けて延びている。したがって、刃体の脚部の挿入が完了して脚部を挟持手段から解放すると、二本の脚部は、弾性力によって開く方向へ戻ろうとし、挿入孔の内面の樹脂へ向けて押し付けられる。そのため、樹脂は、押し付けられている脚部に隙間無く密着して溶着できるので、刃体がハンドル部から抜けにくくなる
【0031】
請求項10記載の発明は、ハンドル部に取り付ける前の刃体の刃部の両端部が互いに間隔を開け、その両端部からそれぞれ脚部が互いに間隔を開けて延びている。したがって、刃部の両端部が互いに間隔を開けているので、脚部を閉じたときは開いている刃部の両端部も閉じられる。これにより、二本の脚部が弾性力によって開く方向へ戻ろうとするときに、脚部の弾性復帰力に加えて刃部の弾性復帰力も加わるから、脚部が挿入孔の内面の樹脂へ向けて押し付ける力が大きくなり、樹脂と脚部の密着力が強くなる。
【0032】
請求項11記載の発明は、製造時において、挟持手段による脚部の挟持を解除したときに、刃体の弾性復元力により、溶けた樹脂の中で両脚部間に隙間が生じることを可能とする弾性復元力を刃体は有しており、前記隙間を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有する。したがって、刃体の両脚部が、片仮名のハ字形又はそれに近い形をなす部分を有するのである。このような部分を両脚部が有することによって、樹脂が固化した後、刃体を抜こうとする外力が刃体に作用した場合、刃体の脚部がハンドル部から抜け出すためには、両脚部のハ字形の部分の間隔を狭めてその部分同士が接触又はそれに近い近接状態に変形しなければ、刃体は抜け出ない。しかし、ハ字形に開いた両脚部を、ハ字の上方の部分から間隔を狭めるように変形させるということは大きな力が必要であり、しかも刃体が動き出す直前に最も大きな力が必要であるから、脚部のハンドル部内でのずれ防止、及びハンドル部からの抜け出し防止に大きく寄与することができる。また、本発明のような皮膚を切除するための刃物は、使用時、刃体には、刃体がハンドル部から抜ける方向に力が作用することが多く、またその回数も複数回になる場合が多いが、その使用に対して十分に耐えることができ、使用時に刃体が抜けるおそれがなく使用することができる。さらに、軟らかい組織だけでなく硬い組織を除去する(削り取る)際にも使用することができ、一つの道具で使用できる範囲が広くなる。
【0033】
請求項12記載の発明は、刃体が、その刃部の両端部を互いに間隔を開けたものであるときは、刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせたときに、脚部は間隙を有しており、且つその間隙を生じさせている両脚部が、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有する。したがって、刃体の脚部同士を挟持手段によりほぼ全面的に接触させ、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側から挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入し、挿入がほぼ完了して挟持手段による挟持を解除したときに、溶けた樹脂の中で、刃体は、その弾性復元力により元の形状に戻ろうとする。その結果、脚部は開こうとするが、その脚部の開き方は、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有するように開く。これにより、その開いた両脚部の部分の作用で、脚部のハンドル部からの抜け出しを確実に防止することができる。
【0034】
請求項13記載の発明は、両脚部の、刃部に連続するそれぞれの基端部寄りに、外側に凸の曲げ部が形成されている。したがって、刃体の脚部同士を挟持手段によりほぼ全面的に接触させ、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側から挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入し、挿入がほぼ完了して挟持手段による挟持を解除したときに、溶けた樹脂の中で、刃体は、その弾性復元力により元の形状に戻ろうとする。その結果、脚部は開こうとするが、挟持されて押し潰されていた凸の曲げ部の弾性復帰力は非常に大きいために、押し潰されていた曲げ部は元の凸形状又はそれに近い凸形状に弾性復帰する。その結果、外側に膨らんだ曲げ部の頂点から、脚部の基端部側部分が、両脚部の先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げるように開く形状をなす。これにより、その開いた両脚部の部分の作用により、脚部のハンドル部からの抜け出しを確実に防止することができる。
【0035】
請求項14記載の発明は、刃体が、その刃部の両端部を互いに間隔を開けたものであるときは、刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせたときに、両脚部は、その基端部から先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げるように直線状に延びる。したがって、刃体の脚部同士を挟持手段によりほぼ全面的に接触させ、高周波誘導加熱により脚部を加熱しながら、脚部をその先端部側から挿入孔に脚部の熱で樹脂を溶かすことにより挿入し、挿入がほぼ完了して挟持手段による挟持を解除したときに、溶けた樹脂の中で、両脚部が、刃体の弾性復元力により開くのであるが、その開き方は、その先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分を有するように開く。その結果、その開いた両脚部の部分の作用により、脚部のハンドル部からの抜け出しを確実に防止することができる。
【0036】
請求項15記載の発明は、隙間を生じさせている両脚部がその先端部方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる部分において、その部分の隙間に、溶けた樹脂が入り込んで固化している。したがって、両脚部の隙間に入り込んで固化した樹脂によって両脚部が閉じることを阻止されるので、より確実に刃体の移動を阻止することができる。なお、溶けた樹脂が隙間を完全に埋めることはなく、その必要もない。樹脂が、隙間の奥まで入らず隙間の開口付近で固化しても、その固化した樹脂で両脚部が閉じることを阻止することができるからである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ハンドル部に取り付ける前の第一実施例の刃体の斜視図である。
図2】ハンドル部に取り付ける前の図1の刃体の正面図である。
図3】ハンドル部に取り付ける前の図1の刃体の側面図である。
図4】ハンドル部に取り付ける前の図1の刃体の両脚部に外力を加えることなく、刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせた正面図である。
図5】ハンドル部の斜視図である。
図6】ハンドル部の先端図である。
図7図6のA-A断面図である。
図8】挟持手段によって前記刃体を挟持する直前の正面図である。
図9】挟持手段によって前記刃体を挟持した正面図である。
図10】前記刃体を挟持した状態で、刃体の脚部の先端部をハンドル部に挿入した正面図である。
図11】下側の挟持手段を外して前記刃体の脚部をハンドル部に挿入している正面図である。
図12】上側の挟持手段で前記刃体を挟持した状態で刃体をハンドル部に一杯に挿入した正面図である。
図13図12の状態から上側の挟持手段を外した前記刃体の取り付け状態を示す正面図である。
図14】ハンドル部に取り付ける前の第二実施例の刃体の側面図である。
図15】ハンドル部に取り付ける前の第三実施例の刃体の正面図である。
図16】第三実施例の刃体の両脚部に外力を加えることなく、刃部をその両側から圧迫することにより刃部を閉じさせた正面図である。
図17】第三実施例の刃体がハンドル部に取り付けられた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の第一実施例について、図面を参照しながら説明する。ハンドル部1に取り付ける前の刃体2は、図1に示すように、略環状の刃部3と、その刃部3の両端部4のそれぞれから延びる脚部5とを備える。また、刃部4の正面側の前端縁は、対象物を切除するための鋭利な刃先6となっている。刃先6は、刃体2の材料となる長い帯状金属をラインに流しながら形成するので、刃体2の全長に亘って形成されている。
【0039】
図2に示すように、脚部5の基端部7は、刃部3の端部4に連続すると共に、内側へ向けて僅かに屈曲している。また、脚部4の先端部8も内側へ向けて僅かに屈曲している。そのため、脚部5には、基端部7寄りに、外側に凸の「く」字形状の曲げ部9が形成されている。そして、2つの脚部5は、刃部3の両側の各端部4から先端部8へ向けて、互いに離間した状態で延出している。また、この脚部5は、外面10側から内側に押圧されると、互いの内面11が接触して閉じるように弾性変形可能に構成されており、内側に弾性変形した脚部5には、外側へ開く方向へ弾性力が働くことになる。さらに、図4に示すように、刃体2は、脚部5の外面10に外力を加えることなく、刃部3を外力Pによりその両側から圧迫するように刃部3を閉じさせたときに、脚部5はその曲げ部9によって間隙24を有するように形成されている。そして、曲げ部9の頂点25と、脚部5の基端部7との間の傾斜部26は、脚部5の先端部8方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げるように傾斜している。
【0040】
刃体2は、オーステナイト系ステンレス鋼で構成されているが、これに限定されず、高周波誘導加熱によって加熱できる任意の金属(導体)を利用して構成してもよい。
【0041】
また、刃体2は、刃部3及び脚部5を含めた全長が約17mmで、刃部3の直径が約5mmとなっているが、これに限定されないことは勿論である。
【0042】
次に、図5は、ハンドル部1を示している。図6は、ハンドル部1の先端図である。ハンドル部1は、ポリプロピレン等の樹脂で形成された長尺の棒状部材であり、ハンドル部1の先端面12には、ハンドル部1の長尺方向に沿って延びる挿入孔13が設けられている。図6に示すように、この挿入孔13は刃体2の脚部5と対応した形状をしており、板状の脚部5を挿入できるように、断面が略長方形となっている。さらに、挿入孔13の大きさは、刃体2の脚部5よりも僅かに小さくなっている。具体的には、挿入孔13の縦方向の幅L2は、刃体2の脚部5の幅L1(図3参照)より僅かに狭くなっている。同様に、挿入孔13の横方向の幅L3は、刃体2の脚部5の幅、すなわち、脚部5を閉じた状態での厚さ方向の幅L4(図9参照)よりも僅かに狭くなっている。
【0043】
また、図7に示すように、挿入孔13の開口部22内面は、傾斜した案内面23となっており、刃体2の脚部5をその先端部8側から誘導して挿入孔13内部へ挿入し易くなっている。
【0044】
なお、図6に示すように、挿入孔13に直交するように補助孔14が設けられている。これは、ハンドル部1の製造時に、薄い板状部材を先端面12から内部に配置して、挿入孔13を形成しているが、薄い板状部材が曲がらないように、この板状部材に直交する補助板を取り付けているため、補助孔14が補助板によって形成されたためである。そして、この補助板はハンドル部1の製造過程で任意に設けるものなので、補助孔14も任意に形成される。
【0045】
また、ハンドル部1を構成する樹脂は、後述するように、加熱された刃体2の脚部5をハンドル部1の挿入孔13に挿入した際に、脚部5に接触した部分が溶融し、脚部5に溶着固化できるものとなっている。そして、本実施形態では、ハンドル部1を構成する樹脂は、融点が約160度のポリプロピレンを採用している。なお、ハンドル部1を構成する樹脂は、ポリプロピレンに限定されず、加熱された刃体2の脚部5に接触した部分が溶融し、脚部5に溶着固化できるのであれば、任意の樹脂例えば前記ポリプロピレンが含まれる熱可塑性樹脂等を採用できる。また、ハンドル部1は、全長が約145mmの棒状部材であるが、図2に示す形状に限定されず、挿入孔13を備えていれば、適宜任意の大きさで任意の形状を採用してもよい。
【0046】
次に、図1に示す刃体2をハンドル部1に取り付ける方法について説明する。まず始めに、図8に示すように、挟持手段である第一治具16及び第二治具17によって刃体2を挟持する。具体的には、両側の第一治具16の湾曲状の中央部18によって、刃体2の刃部3を包み込むように挟持し、両側の第一治具16の平坦状の先端部19によって、脚部5の両側の基端部7側を閉じるように挟持する。この第一治具16は、刃体2の脚部5を両側から挟持する挟持手段となる。同様に、両側の第二治具17の平坦な内面20によって、両側の脚部5の先端部8側を閉じるように挟持する。この第二治具17は、刃体2の脚部5の先端側を両側から挟持する補助的な挟持手段となる。すると、図9に示すように、第一治具16及び第二治具17によって、両側の脚部5の内面11が互いに接触して、脚部5は閉じるように弾性変形している。なお、脚部5の先端部8は、第二治具17から下方へ飛び出した状態となっている。
【0047】
次に、図10に示すように、ハンドル部1は、先端面12が上を向くように垂直に立てられた状態で製造装置の治具(図示せず。)により固定されているので、第一治具16及び第二治具17は、ハンドル部1の先端面12へ向けて下方に移動し、第二治具17の下面がハンドル部1の先端面12又はその付近の位置まで刃体2の脚部5の先端部8を挿入孔13の先端21へ挿入する。この挿入は比較的ゆっくりした速さで行われる。その理由は、先端部8が挿入孔13に十分挿入されておらず、挿入前の部分が曲がったり、挿入孔13から外れる虞があるからである。挿入の際には、刃体2の脚部5の正面側に配置された高周波誘導加熱手段(図示せず。)から、脚部5へ向けて磁界を発生させて、脚部5を約200度前後まで誘導加熱する。すると、脚部5に接触している挿入孔13内の樹脂は、脚部5によって融点の約160度程度まで加熱されて溶融した状態となる。高周波誘導加熱手段は、既存の誘導加熱コイルを備えた高周波誘導加熱装置によって構成されている。なお、従来の電気ヒーターによる加熱ではハンドル部の外側からの加熱であり、一番加熱したい部分である挿入孔13内の加熱には距離があった。それに対して高周波誘導加熱であれば、挿入孔13において脚部5に触れた部分がすぐに加熱されて効率的に挿入孔13を加熱することができる。
【0048】
次に、図11に示すように、第二治具17を脚部5から離し、第一治具16が下方へ移動できる状態とする。そのため、第一治具16によって脚部5を更に下方へ移動させれば、脚部5が溶融した挿入孔13内に容易に挿入していくのである。この場合、脚部5の先端部8が挿入孔13に十分に挿入されているので、早めの速度で挿入する。なお、この第一治具16は、刃体2の脚部5をハンドル部1の挿入孔13へ挿入させる挿入手段となる。また、図7に示された挿入孔13の案内面23が図11に示されていない理由は、加熱された脚部5が挿入孔3に挿入される際に、案内面23の形が崩れたり、溶融した樹脂が案内面23の間に入り込んだりする可能性があり、当初の案内面23の形状が維持されないためであるが、条件によっては案内面が維持されることもあることは勿論である。
【0049】
次に、図11に示す状態から、引き続き、高周波誘導加熱手段によって刃体2の脚部5を加熱しつつ、第一治具16によって刃体2の脚部5をハンドル部1の挿入孔13へ更に挿入すると、図12に示すように、第一治具16によって、刃体2の脚部5をハンドル部1の挿入孔13の奥一杯まで挿入した状態となる。そして、その挿入時には、脚部5の基端部7側のみを挟持手段である第一治具16によって挟持しているため、脚部5の先端部8側は、基端部7側に比べて挟持手段の挟持力が弱くなっている。そのため、脚部5の挿入時、脚部5の先端部8側では、溶融した樹脂が脚部5を僅かに押し開くようにして、二本の脚部5の間に入り込むことができる。
【0050】
図12に示すように、高周波誘導加熱手段によって刃体2の脚部5を加熱しつつ、第一治具16によって、刃体2の脚部5をハンドル部1の挿入孔13の奥一杯まで挿入している。このとき、刃体2は、図4に示すように、脚部5の外面10に外力を加えることなく、外力Pにより刃部3をその両側から圧迫するように刃部3を閉じさせたときに、脚部5はその曲げ部9によって間隙24を有するように形成されているので、脚部5が挟持されて閉じた状態にあるとき、互いに接触していた曲げ部9は、弾性力により元の曲がった状態に復帰しようとする復帰力が働いている。したがって、挿入が完了し、第一治具16を刃体2から離すと、脚部5は、その弾性復元力によって図4に近い形に戻る。これにより、図13に示すように、曲げ部9の頂点25と、脚部5の基端部7との間に、脚部5の先端部8方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる傾斜部26が形成される。また、先端部8同士は接触しているが、条件によって開き気味になる場合もある。加熱は、刃体2の脚部5をハンドル部1の挿入孔13に一杯に挿入したときに終了させる。それ以上加熱すると、その周囲のハンドル部自体の外形が変形してしまうからである。加熱が終了し樹脂が固化したときに、この傾斜部26は、刃体2のハンドル部1からの抜け出し防止に大きく寄与することができる。なお、加熱時間は刃体2のサイズによって異なる。また、脚部5が、その弾性復元力によって図4に近い形に戻るときに、脚部5の外面10がその外側の溶融した樹脂を押すので、その溶融した樹脂が隙間29の開口から入り込んで固化する。これにより、固化した樹脂が隙間29を閉じさせることを阻止する係止手段となるので、より確実に刃体2の移動を阻止することができる。また、図14に示す第二実施例の刃体27ように、脚部5に切欠き28や孔41を設けて、それらの中に溶融した樹脂が流れ込むことによりさらに刃体27がハンドル部1から抜けにくくなるが、脚部5の幅に余裕がないときは脚部5の強度を保つために切欠き27の深さや孔41の直径が小さくなるので、効果は減少される。
【0051】
以下では、図15図16及び図17を参照して、第三実施例の刃体30について説明する。本実施例では、脚部32の形状が第一実施例の刃体2と異なるが、その他の構成は第一実施例の刃体2と同じなので、同一の箇所については詳細な説明は省略する。さらに、本実施例では、第一実施例と同一のハンドル部1を利用している。
【0052】
図15に示すように、刃体30は、略環状の刃部31と、その刃部31の両端部33のそれぞれから延びる脚部32とを備える。また、脚部32の基端部34は、刃部31の端部33に連続すると共に、脚部32は、基端部34から先端部35に向けて直線状に延出し、平坦な形状をしている。そして、二本の脚部32は、先端部35側が互いに離間するように略ハの字状に開いている。また、この脚部32は、外面36から内側に押圧されると、互いの内面37が接触して閉じるように弾性変形可能に構成されており、内側に弾性変形した脚部32には、外側へ開く方向へ弾性力が働くことになる。さらに、図16に示すように、刃体30は、脚部32の外面36に外力を加えることなく、外力Pにより刃部31をその両側から圧迫するように刃部31を閉じさせたときに、脚部32は間隙38を有するように形成されている。
【0053】
第三実施例の刃体取り付け工程は、第一実施例の刃体取り付け工程とほぼ同じであって、第一実施例が、刃体2の挟持手段として、第一治具16と第二治具17の2つの治具を用いるように、第三実施例でも刃体30の挟持手段として2つの治具(図示せず。)を用いる。なお、第三実施例では、第二治具17を使用しなくてもよい。その理由は、その第二治具17なくても、第一治具16のみで脚部32の互いの内面37が接触して閉じるように弾性変形可能だからである。
【0054】
そして、第一実施例と同様に、脚部32を加熱しながらハンドル部39に挿入し挟持手段である治具を刃体30から離すと、図17に示すように、閉じていた脚部32が第一実施例と同様に弾性復帰力によりハ字形に開いて隙間40が生じる。これにより、脚部32の先端部35方向に行くに従って徐々に互いの間隔を広げる傾斜部42が形成される。加熱が終了し樹脂が固化したときに、この傾斜部42は、刃体30のハンドル部39からの抜け出し防止に大きく寄与することができる。また、脚部32が、その弾性復元力によって図16に近い形に戻るときに、脚部32の外面43がその外側の溶融した樹脂を押すので、その溶融した樹脂が隙間40の開口から入り込んで固化する。これにより、固化した樹脂が隙間40を閉じさせることを阻止する係止手段となるので、より確実に刃体30の移動を阻止することができる。
【0055】
なお、本願発明の医療用刃物は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能であり、これらの変形例、組み合わせもその権利範囲に含むものである。
【符号の説明】
【0056】
1 ハンドル部、 2 刃体、 3 刃部、 4 刃部の端部、 5 脚部、 6 刃先、 7 脚部の基端部、 8 脚部の先端部、 9 曲げ部、 10 脚部の外面、 11 脚部の内面、 12 ハンドル部の先端面、 13 挿入孔、 14 補助孔、 15 医療用刃物、 16 第一治具、 17 第二治具、 18 中央部、 19 先端部、 20 内面、 21 挿入孔の先端、 22 開口部、 23 案内面、 24 間隙、 25 曲げ部の頂点、 26 傾斜部、 27 刃体、 28 切欠き、 29 隙間、 30 刃体、 31 刃部、 32 脚部、 33 刃部の端部、 34 脚部の基端部、 35 脚部の先端部、 36 脚部の外面、 37 脚部の内面、 38 隙間、 39 ハンドル部、 40 隙間、 41 孔、 42 傾斜部、 43 脚部の外面
図1
図2
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