(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】射出成形機および射出成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/18 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
B29C45/18
(21)【出願番号】P 2020016798
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下楠薗 壮
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-344383(JP,A)
【文献】特開2002-347073(JP,A)
【文献】特開平04-062129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダと、前記加熱シリンダに供給する樹脂を蓄えるホッパと、前記加熱シリンダに収容されたスクリューと、を有する射出成形機であって、
前記ホッパ内を、前記加熱シリンダと接続された第1供給部と、前記第1供給部の上方に位置する、樹脂供給装置と接続された第2供給部と、に仕切るように配置されたシャッタと、
制御装置と、を有し、
前記制御装置が、
前記第1供給部の樹脂の残量が基準残量より少なくかつ前記スクリューが停止していないとき、前記シャッタを閉じ、
前記第1供給部の樹脂の残量が前記基準残量より少なくかつ前記スクリューが停止しているとき、前記シャッタを開くように構成されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項
1に記載の射出成形機と、
前記射出成形機から出力された樹脂供給信号に応じて当該射出成形機のホッパに樹脂を供給する樹脂供給装置と、を有することを特徴とする射出成形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の供給を自動で行う射出成形機および射出成形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形機の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の射出成形機は、樹脂を移送する吸引式補給装置が接続されており、射出を行うたびにホッパへ樹脂を補給して、ホッパ内の樹脂の残量を射出毎に同一にする。
【0003】
特許文献1の射出成形機は、計量工程におけるスクリューの後退限界位置を位置検出装置が検知し、位置検出装置から出力される制御信号に基づいて吸引式補給装置を起動させる。吸引式補給装置を起動させるタイミングは、スクリューが後退限界位置に達したことを検出したときに限ることなく、計量工程が開始され、スクリューが一定の位置まで後退したときでもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の射出成形機では、スクリューが回転していたり前後進していたりするなど、スクリューが停止していない状態でホッパに樹脂が供給されることがあった。そのため、樹脂の供給の際に生じる気流によりホッパ内で樹脂が舞い上がり、樹脂を加熱シリンダに供給する際に当該樹脂に加わる荷重が急変して、密度や混練度合いなどの可塑化した樹脂の状態にばらつきが生じてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂の状態のばらつきを抑制できる射出成形機および射出成形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る射出成形機は、加熱シリンダと、前記加熱シリンダに供給する樹脂を蓄えるホッパと、前記加熱シリンダに収容されたスクリューと、を有する射出成形機であって、前記スクリューが停止しているときのみ、前記ホッパ内に樹脂が供給されるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、加熱シリンダに収容されたスクリューが停止しているときのみ、ホッパ内に樹脂が供給される。このようにしたことから、樹脂の供給に伴ってホッパ内で樹脂が舞い上がるおそれがあるもののスクリューが停止しているため加熱シリンダに樹脂が供給されることがない。そして、舞い上がった樹脂が落下したあとにスクリューを動作させることで加熱シリンダに樹脂が供給される。そのため、樹脂を加熱シリンダに供給する際に当該樹脂に加わる荷重が急変することを防いで、樹脂の状態のばらつきを抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂の状態のばらつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の射出成形システムの機能ブロック図である。
【
図3】
図1の射出成形システムが有する射出成形機のホッパおよびその近傍の拡大断面図である(シャッタを開いた状態)。
【
図4】
図1の射出成形システムが有する射出成形機のホッパおよびその近傍の拡大断面図である(シャッタを閉じた状態)。
【
図5】
図1の射出成形システムが有する射出成形機のホッパおよびその近傍の拡大断面図である(シャッタを再度開いた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る射出成形システムについて、
図1~
図5を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る射出成形システムの概略構成を示す図である。
図2は、
図1の射出成形システムの機能ブロック図である。
図3~
図5は、
図1の射出成形システムが有する射出成形機のホッパおよびその近傍の拡大断面図であって、シャッタを開いた状態、閉じた状態、および、再度開いた状態を示す。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る射出成形システム1は、樹脂供給装置5と、射出成形機8と、を有している。
【0014】
この射出成形システム1では、樹脂供給装置5の乾燥容器6に温度および湿度が管理された粒状または粉状の樹脂Pが収容されている。樹脂供給装置5の吸引機7によって吸引することにより、移送管5aを通じて乾燥容器6から射出成形機8に樹脂Pを供給する。そして、射出成形機8によって可塑化された樹脂Pを固定側金型81および可動側金型82により形成されるキャビティ83に射出充填する。
【0015】
射出成形機8は、型締装置10と、射出装置20と、制御装置30と、を有している。
【0016】
型締装置10は、固定ダイプレート11と、可動ダイプレート12と、型締駆動機構13と、を有している。固定ダイプレート11には、固定側金型81が取り付けられる。可動ダイプレート12には、可動側金型82が取り付けられる。型締駆動機構13は、固定ダイプレート11と可動ダイプレート12とにより固定側金型81および可動側金型82を
図1の左右方向に締め付けて型締力を発生させる。
【0017】
射出装置20は、加熱シリンダ21と、スクリュー22と、スクリュー駆動機構23と、を有している。加熱シリンダ21は、
図1において固定ダイプレート11の右側に配置されている。加熱シリンダ21の前方の端部には、固定側金型81にタッチするノズル21aが設けられている。スクリュー22は、加熱シリンダ21に回転可能かつ前後進可能に収容されている。スクリュー駆動機構23は、加熱シリンダ21内でスクリュー22を回転および前後進させることにより、樹脂Pを可塑化してキャビティ83に射出充填する。
【0018】
また、射出装置20は、ホッパ25と、シャッタ26と、シャッタ駆動機構27と、残量センサ28と、を有している。
【0019】
ホッパ25は、加熱シリンダ21に供給する樹脂Pを蓄える。ホッパ25は、
図3に示すように、管部25aと、蓄積部25bと、蓋体25cと、を有している。管部25aは、内側が視認可能なように透明なガラスや合成樹脂で円形管状に形成されている。管部25aは、例えば、四角管状や六角管状など円形管状以外であってもよい。管部25aは、上下方向に沿って配置され、下端が加熱シリンダ21の樹脂供給口21bに接続されている。蓄積部25bは、管部25aより大径の円筒形状を有し、管部25aの上端に連なっている。蓄積部25bの下部は逆円錐状に形成されている。蓄積部25bの上部開口は、蓋体25cで塞がれている。蓋体25cには、樹脂供給装置5の移送管5aおよび排気管5bが貫通して配置されている。
【0020】
シャッタ26は、ホッパ25の管部25aの上端近傍に配置されている。すなわち、シャッタ26は、ホッパ25内を管部25aの内側の空間(第1供給部S1)と、蓄積部25bの内側の空間(第2供給部S2)とに仕切るように配置されている。第1供給部S1は、加熱シリンダ21と接続されている。第2供給部S2は、移送管5aと接続されている。シャッタ駆動機構27は、シャッタ26を水平方向に移動させて、第1供給部S1と第2供給部S2とを接続したり分断したりする。
【0021】
残量センサ28は、例えば、光電センサで構成されている。残量センサ28は、ホッパ25の管部25aの外周面に設置されており、管部25a内にある樹脂Pの残量(高さ)に応じた信号を出力する。
【0022】
制御装置30は、射出成形システム1全体の動作を司る。制御装置30は、マイクロコンピュータを有して構成されている。制御装置30は、型締駆動機構13、スクリュー駆動機構23、シャッタ駆動機構27、および、樹脂供給装置5の吸引機7などの各駆動機構の動作を制御する。また、制御装置30は、残量センサ28から出力される信号に基づいて管部25a内の樹脂Pの残量を検出する。
【0023】
次に、上述した本実施形態の射出成形システム1における動作の一例について、
図3~
図5を参照して説明する。
【0024】
射出成形システム1の射出成形機8のホッパ25には、
図3に示すように、複数回の射出が可能な量の樹脂Pが蓄えられている。射出成形機8の制御装置30は、各駆動機構を制御して、固定側金型81および可動側金型82を型締する型締動作、可塑化した樹脂Pをキャビティ83に射出充填する射出動作、キャビティ83に射出充填する樹脂Pを可塑化して計量する可塑化動作、固定側金型81および可動側金型82を型開して成形品を取り出す型開動作、を繰り返し実行する。本実施形態において、型開動作時は、スクリュー22が回転または前後進しておらず停止している。これ以外にも、例えば、各動作の間にスクリュー22が停止する状態を設けてもよい。
【0025】
制御装置30は、型締動作、射出動作、計量動作、型開動作を繰り返し実行しているときに、残量センサ28が出力する信号に基づいて、ホッパ25の管部25a内(第1供給部S1)の樹脂Pの残量を検出する。そして、制御装置30は、管部25a内の樹脂Pの高さが残量センサ28を設置した高さより低いこと、すなわち、第1供給部S1の樹脂Pの残量が基準残量Rより少ないことを検出すると、吸引機7に樹脂供給信号を出力する。樹脂供給信号は、樹脂Pの供給を要求する信号である。これにより、吸引機7によって移送管5aを通じて乾燥容器6からホッパ25の蓄積部25b内(第2供給部S2)に複数回の射出を可能とする所定量の樹脂Pが供給される。
【0026】
制御装置30は、第1供給部S1の樹脂Pの残量が基準残量Rより少なくかつスクリュー22が回転または前後進していて停止していないとき、
図4に示すように、シャッタ駆動機構27を制御してシャッタ26を閉じる。これにより、第1供給部S1と第2供給部S2とが分断されて、第2供給部S2から第1供給部S1に樹脂Pが供給されることを回避する。
【0027】
制御装置30は、第1供給部S1の樹脂Pの残量が基準残量Rより少なくかつスクリュー22が回転または前後進しておらず停止しているとき、
図5に示すように、シャッタ駆動機構27を制御してシャッタ26を開く。これにより、第1供給部S1と第2供給部S2とが接続されて、第2供給部S2から第1供給部S1に樹脂Pが供給される。
【0028】
制御装置30は、第1供給部S1の樹脂Pの残量が基準残量R以上のとき、吸引機7に樹脂供給信号を出力しない。そのため、樹脂Pが蓄積部25b内に供給されないことから、ホッパ25内の樹脂Pが舞い上がることもないので、このとき制御装置30は、シャッタ駆動機構27を制御してシャッタ26を開くようにしてもよい。
【0029】
このようにすることで、射出成形機8は、スクリュー22が停止しているときに、第1供給部S1に樹脂Pが供給されるようになり、かつ、スクリュー22が停止していないときに、第1供給部S1に樹脂が供給されることを防ぐ。
【0030】
以上より、本実施形態の射出成形システム1によれば、加熱シリンダ21に収容されたスクリュー22が停止しているときのみ、ホッパ25における加熱シリンダ21と接続された管部25aの内側の空間(第1供給部S1)に樹脂Pが供給される。このようにしたことから、樹脂Pの供給に伴ってホッパ25内で樹脂Pが舞い上がるおそれがあるもののスクリュー22が停止しているため加熱シリンダ21に樹脂Pが供給されることがない。そして、舞い上がった樹脂Pが落下したあとにスクリュー22を動作させることで加熱シリンダ21に樹脂Pが供給される。そのため、樹脂Pを加熱シリンダ21に供給する際に当該樹脂Pに加わる荷重が急変することを防いで、樹脂Pの状態のばらつきを抑制できる。
【0031】
また、射出成形機8は、ホッパ25内を管部25aの内側の空間(第1供給部S1)と当該第1供給部S1の上方に位置する、樹脂供給装置5と接続された蓄積部25bの内側の空間(第2供給部S2)とに仕切るように配置されたシャッタ26と、第1供給部S1の樹脂Pの残量が基準残量Rより少ないとき、樹脂供給装置5の吸引機7に樹脂供給信号を出力する制御装置30と、を有している。そして、制御装置30が、第1供給部S1の樹脂Pの残量が基準残量Rより少なくかつスクリュー22が停止していないとき、シャッタ26を閉じ、第1供給部S1の樹脂Pの残量が基準残量Rより少なくかつスクリュー22が停止しているとき、シャッタ26を開くように構成されている。このようにすることで、スクリュー22が停止しているときのみ、ホッパ25の第2供給部S2から第1供給部S1に樹脂Pが供給されるので、樹脂Pを加熱シリンダ21に供給する際に当該樹脂Pに加わる荷重が急変することを防いで、樹脂Pの状態のばらつきを抑制できる。
【0032】
上述した実施形態では、シャッタ26によりホッパ25内を第1供給部S1と第2供給部S2とに仕切る構成であったが、本発明はこのような構成に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態の射出成形システムにおいて、シャッタ26を省略した構成としてもよい。このようなシャッタ26を省略した構成では、ホッパ25内の全体を、加熱シリンダ21と接続されるとともに樹脂供給装置5とも接続される第1供給部S1とみなすことができる。そして、制御装置30は、ホッパ25内(第1供給部S1)の樹脂Pの残量が基準残量Rより少なくかつスクリュー22が停止するタイミングに応じて、樹脂供給装置5の吸引機7に樹脂供給信号を出力する。すなわち、制御装置30は、ホッパ25内の樹脂Pの残量が基準残量Rより少なくなったことを検出すると、タイミングを見計らって樹脂供給信号を出力する。このタイミングは、樹脂供給信号を出力してから実際にホッパ25内に樹脂Pが供給されるまでに時間差がない場合(時間差がほぼない場合を含む)には、スクリュー22が停止するタイミングと一致する。または、このタイミングは、樹脂供給信号を出力してから実際にホッパ25内に樹脂Pが供給されるまでに時間差がある場合には、当該時間差を見込んで、スクリュー22が停止するより早いタイミングとする。このような構成を採用することでも、スクリュー22が停止しているときに合わせて樹脂供給装置5からホッパ25内に樹脂Pを供給することができるので、スクリュー22が停止しているときのみ、ホッパ25内に樹脂Pを供給して、樹脂Pを加熱シリンダ21に供給する際に当該樹脂Pに加わる荷重が急変することを防いで、樹脂Pの状態のばらつきを抑制できる。
【0033】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1…射出成形システム、5…樹脂供給装置、5a…移送管、5b…排気管、6…乾燥容器、7…吸引機、8…射出成形機、10…型締装置、11…固定ダイプレート、12…可動ダイプレート、13…型締駆動機構、20…射出装置、21…加熱シリンダ、21a…ノズル、21b…樹脂供給口、22…スクリュー、23…スクリュー駆動機構、25…ホッパ、25a…管部、25b…蓄積部、25c…蓋体、26…シャッタ、27…シャッタ駆動機構、28…残量センサ、30…制御装置、81…固定側金型、82…可動側金型、83…キャビティ、S1…第1供給部、S2…第2供給部、P…樹脂、R…基準残量