(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/05 20060101AFI20231023BHJP
H01L 31/12 20060101ALI20231023BHJP
G01V 8/20 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
E03C1/05
H01L31/12 E
H01L31/12 F
G01V8/20 Q
(21)【出願番号】P 2020025361
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝 宣広
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 琴子
(72)【発明者】
【氏名】白井 雄喜
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-226909(JP,A)
【文献】特開2014-70380(JP,A)
【文献】特開2005-207012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/05
H01L 31/12
G01V 8/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を検知して吐水する給水装置であって、
水栓と、
吐水領域に向けて光を照射する発光部と、
所定方向に配置された複数の受光素子を有し、前記吐水領域に位置する前記物体から反射した反射光を受光する受光部と、
前記発光部が発光していない無発光状態における前記受光部から出力される受光データのばらつきを第1データとして記憶する記憶部と、
前記発光部が発光した発光状態における前記受光部から出力される第2データを取得し、前記第2データのばらつきと前記第1データとが所定以上連続して一致する部分の前記第2データに基づいて、前記第2データから差し引くオフセット値を算出し、前記第2データから前記オフセット値を差し引いた補正データに基づいて前記物体の検知を行う演算部と、
を備えている給水装置。
【請求項2】
前記受光素子は、一方向に並んでいる請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記第1データは、各前記受光素子の間の差分である請求項1から請求項2までのいずれか1項に記載の給水装置。
【請求項4】
前記演算部は、前記第2データのばらつきと前記第1データとが所定以上連続して一致する部分の前記第2データのうちの一つと、前記第1データと、に基づいて前記オフセット値を算出する請求項3に記載の給水装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記第2データのばらつきと前記第1データとが所定以上連続して一致する部分の前記第2データの平均値と、前記第1データと、に基づいて前記オフセット値を算出する請求項3に記載の給水装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記無発光状態における前記受光部から出力される第3データを定期的に更新して記憶する請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の給水装置。
【請求項7】
前記第2データのばらつきと前記第1データとが所定以上連続して一致する部分がない場合、前記演算部は、前記無発光状態における前記受光部から出力される第4データを取得し、前記第4データと前記第2データとの差に基づいて前記物体の検知を行う請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は給水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つのラインセンサによって複数の液体の吐出を制御する自動水栓装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラインセンサを用いて物体を検知する構成を構築する場合、周囲の明るさによって物体を検知する精度が変化することを避けるため、物体に対して光を照射する発光部を設け、物体から反射した発光部の光をラインセンサによって受光することが好ましい。さらに、こうした構成の場合、周囲からの光と発光部からの光とを区別することによって、物体を検知する精度をより高めることができる。周囲からの光と発光部からの光とを区別する方法として、発光部が発光したときと、発光部が発光していないときとの2つの受光データをラインセンサによって取得して、これら受光データの差分を物体から反射した発光部の光として用いることが知られている。しかし、こうした方法は、発光部が発光したときと、発光部が発光していないときとの2回、ラインセンサと発光部とを動作させる必要があり、消費電力が大きくなる要因となり得る。したがって、より電力を抑えて周囲からの光と発光部からの光とを区別する手法の確立が望まれている。
【0005】
本開示は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、消費電力を抑えつつ、物体の検知を良好にすることができる給水装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の給水装置は、水栓と、吐水領域に向けて光を照射する発光部と、所定方向に配置された複数の受光素子を有し、前記吐水領域に位置する物体から反射した反射光を受光する受光部と、前記発光部が発光していない無発光状態における前記受光部から出力される受光データのばらつきを第1データとして記憶する記憶部と、前記発光部が発光した発光状態における前記受光部から出力される第2データを取得し、前記第2データのばらつきと前記第1データとが所定以上連続して一致する部分の前記第2データに基づいて、前記第2データから差し引くオフセット値を算出し、前記第2データから前記オフセット値を差し引いた補正データに基づいて前記物体の検知を行う演算部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態1の給水装置を備えた洗面台を示す斜視断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1における、ラインセンサを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1における、第1データの一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施形態1における、第2データの一例を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施形態1における、オフセット値の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第2データから、オフセット値及び第4データを差し引き補正データを生成する様子を示すグラフである。
【
図8】
図8は、距離を利用した検知原理を説明する説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態1の給水装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態1の給水装置における、発光部、受光部、差分値比較処理の判定結果、物体、及び吐水の状態を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
図1に、実施形態1に係る給水装置が設けられた洗面台15を示す。洗面台15は、カウンタ155に、下方に向けて窪んで形成された鉢151が設けられている。鉢151の底部には、排水口152が開口して形成されている。
【0009】
[給水装置の構成]
給水装置は、
図1、2に示すように、吐水管16、水栓である電磁弁11、発光部25、受光部26、制御部3、及び演算部4を備えている。吐水管16は、カウンタ155の上面156に立設された略円柱状の胴部160と、この胴部160の台座をなす基部161と、を有している。胴部160は、鉢151側に傾けた状態で基部161に支持されている。鉢151側に面する胴部160の側面には、略円筒形の吐水部162が取り付けられ、その先端には、吐水口168が開口している。この吐水部162の上側に当たる胴部160の側面には、後述するセンサユニット2の検知面を形成するフィルタ板165が設けられている。フィルタ板165は、例えば、赤外領域の光を選択的に透過する合成樹脂で形成されている。電磁弁11は、吐水管16に給水する給水路12に設けられている。電磁弁11は、後述する制御部3によって開閉の制御がなされる。
【0010】
センサユニット2は、
図2に示すように、吐水管16に組み込まれている。センサユニット2は、発光部25であるLED素子251及び受光部26であるラインセンサ261を筐体21に収容された形態とされ、制御部3から供給される電力に基づいて動作する。発光部25は、赤外光を発するLED素子251と投光レンズ255とを有している。受光部26は、ラインセンサ261と集光レンズ265とを有している。発光部25と受光部26とは、遮光性を有した隔壁211を挟んで水平方向に並んで配置されている。
【0011】
LED素子251は、発光素子本体250が透明な合成樹脂254によって封止されている。発光部25は、遮光性を有するケース252によってLED素子251が覆われている。ケース252には、縦方向(鉛直方向)のスリット253が形成されている。スリット253は、発光素子本体250から発する光の水平方向への拡がりが抑制された縦方向に延びるスリット光を吐水領域に向けて照射することができる。ここでいう吐水領域とは、吐水管16から吐水された水が通過し得る空間である。
【0012】
ラインセンサ261は、
図3に示すように、受光した量を電気的な物理量(例えば、電圧値)に変換する受光素子である画素260が直線状(すなわち、一次元)に配列されて形成されている。ラインセンサ261は、有効画素として64個の画素260を含んでいる。ラインセンサ261では、これら64個の画素260によって受光エリア263が形成されている。ラインセンサ261は、図示しない電子シャッターを備えており、電子シャッターによって各画素260の受光(露光)時間を調整することができる。ラインセンサ261は、受光する動作を実行する毎に受光データを出力する。本実施形態における受光データは、例えば、受光量を表す256階調の画素値(電圧値)が各画素260の並ぶ順に配列された1次元のデジタルデータである。
【0013】
受光エリア263の長手方向は、発光部25と受光部26とが並ぶ方向(
図2における左右方向)に一致するようにされている。つまり、受光部26は、所定方向に配置された複数の画素260を有している。センサユニット2は、ラインセンサ261の受光エリア263によって鉢151の内周面である鉢面150(
図1参照)が位置する領域からの光が受光できるように、吐水管16に組み込まれている。つまり、ラインセンサ261が撮像できる範囲内に鉢面150が位置する。ラインセンサ261と鉢面150との間に手等の物体がない状態であれば、ラインセンサ261は物体からの反射光を受光することはない。ラインセンサ261と鉢面150との間に手等の物体がある状態であれば、ラインセンサ261は物体からの反射光を受光する。つまり、受光部26は、画素260が吐水領域に位置する物体から反射した反射光を受光するのである。
【0014】
制御部3は、商用電源(図示せず)から電力が供給されることによって動作する。制御部3は、センサユニット2のLED素子251及びラインセンサ261や、電磁弁11の開閉の動作を制御する。制御部3は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)などのメモリ、A/D変換器等を有して電気基板に実装された形態にされている(図示せず。)。
【0015】
制御部3は、LED素子251及びラインセンサ261の制御や、ラインセンサ261から受光データ(各画素260の受光量の分布を表す受光波形)を読み出す機能を備えている。制御部3は、LED素子251の発光及びラインセンサ261の受光が行われる撮像動作を制御する。具体的には、制御部3は、LED素子251が発光した発光状態に同期したラインセンサ261の露光(受光)をする発光状態撮像動作と、LED素子251が発光しない無発光状態に同期したラインセンサ261の露光(受光)をする無発光状態撮像動作と、を別々に実行し得る構成とされている。
【0016】
制御部3は、動作期間と非動作期間が交互に現れる間欠動作が行われるようにラインセンサ261の動作を制御する。制御部3は、前回の動作期間が終了してから所定時間(例えば、500ms)が経過するまでラインセンサ261への電源供給を停止して非動作期間を設け、所定時間が経過したときに電源供給を再開して動作期間を設定する。制御部3による撮像動作は、LED素子251の発光時間が所定時間(例えば、40μsや160μs)に設定されている。LED素子251における消費電力は、発光する時間が長いほど大きい。
【0017】
演算部4は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されており、CPUなどの演算装置、ROM又はRAMなどの記憶部5、A/D変換器等を有し電気基板に実装された形態にされている。演算部4は、制御部3と信号線Sを介して接続されており、制御部3を介してラインセンサ261からの受光データを得て、この受光データに基づいて、吐水領域における物体の有無を判定する。演算部4は、物体を検知した場合、物体を検知したことを示す検知信号を信号線Sを介して制御部3に向けて出力し得る構成とされている。
【0018】
記憶部5には、無発光状態撮像動作を実行することによって得られた受光データにおける各画素260からの出力値に基づく第1データが記憶されている。無発光状態撮像動作において各画素260は光を受光しない。この場合、各画素260からの出力値は0であることが好ましい。しかし、各画素260は、所定の大きさの出力値を出力する。さらに、各画素260の特性は一様でなく互いにばらついている。このため、無発光状態撮像動作において出力される各画素260からの出力値は、こうした特性のばらつきに応じてばらついている。無発光状態撮像動作における各画素260からの出力値はノイズ(以下、単にノイズともいう)として扱われる。第1データは、各画素260のノイズにおけるばらつきに関する情報をまとめたものである。つまり、記憶部5は、発光部25が発光していない無発光状態における受光部26から出力される受光データのばらつきを第1データとして記憶するのである。
【0019】
第1データの一例を
図4に示す。
図4において、横軸xは、画素番号(所定方向に配置された各画素260の位置)を示し、縦軸yは、画素番号xの画素260における出力値(画素値)を示している。出力値は、例えば電圧値に対応した値である。第1データは、例えば、隣合う画素260における出力値の差分(以下、差分値ともいう)によって構成されている。具体的には、
図4において、画素番号1(縦軸yに最も近い位置)には、画素番号1と画素番号2との差分値として+4があてがわれている。画素番号2には、画素番号2と画素番号3との差分値として0があてがわれている。画素番号3には、画素番号3と画素番号4との差分値として-4があてがわれている。画素番号4には、画素番号4と画素番号5との差分値として+3があてがわれている。つまり、第1データは、隣合う画素260の間の出力値の差分によって構成されており、画素番号nに、画素番号nと画素番号n+1との差分値があてがわれている。記憶部5に記憶された第1データは、例えば、無発光状態撮像動作における各画素260から出力される出力値を複数回(例えば数百回)測定し、各画素260におけるこれら複数の出力値の平均値に基づいて算出した差分値によって構成されている。つまり、記憶部5は、受光データのばらつきを第1データとして記憶している。
【0020】
演算部4は、制御部3における発光状態撮像動作によってラインセンサ261から出力される受光データを第2データとして取得する。第2データの一例を
図5に示す。第2データの画素260が並ぶ方向における中央部には、発光部25からの光の受光に起因するピークPが現れている。第2データにおける各画素260からの出力値の各々にはノイズが含まれている。第2データをそのまま利用して吐水領域における物体の有無の判別を行うと、ノイズによって誤判定を生じ易い。
図5において、ピークPが現れていない範囲(
図5に示す点線で囲まれた範囲)は、発光部25からの光を受光しておらず、主としてノイズによって構成されている。
【0021】
演算部4は、第2データにおいて、発光部25からの光を受光していない範囲(すなわち、ピークPが現れていない範囲)における各画素260の差分値と、この範囲に対応する第1データの差分値とを比較をする差分値比較処理を実行し得る構成とされている。差分値比較処理は、第2データにおいて、発光部25からの光を受光していない範囲における差分値を算出し、この差分値が第1データの差分値と一致するか否かを各画素260毎に比較する。差分値は第2データにおける出力値のばらつきの情報である。そして、差分値比較処理は、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲W(すなわち、第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分)が所定の画素数以上(例えば、10画素以上)連続しているか否かを判定するのである。
【0022】
演算部4は、差分値比較処理において、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲Wが所定の画素数以上連続していると判別すると、範囲Wにおける第2データのうちの1つと、第1データと、に基づいてオフセット値を算出する。具体的には、演算部4は、第1データにおける差分値を利用して各画素260に対応したオフセット値を算出する。例えば、範囲Wにおける第2データの最初の絶対値が100である場合、画素番号1には、100をあてがう。画素番号2には、第1データの画素番号1にあてがわれた+4を100に加えた104をあてがう。画素番号3には、第1データの画素番号2にあてがわれた0を104に加えた104をあてがう。画素番号4には、第1データの画素番号3にあてがわれた-4を104に加えた100をあてがう。こうして演算部4は、全ての画素番号に対応する値を算出してオフセット値を生成する。こうして演算部4は、第2データのばらつきと第1データとが一致する範囲Wが所定の画素数以上連続して一致する部分の第2データのうちの1つと、第1データと、に基づいてオフセット値を生成する。オフセット値の一例を
図6に示す。オフセット値は、第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分(範囲W)の第2データのうちの1つと、第1データと、に基づいて算出される。オフセット値は、無発光状態撮像動作において取得される受光データに対応する。
【0023】
演算部4は、差分値比較処理において、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲Wが所定の画素数以上連続していないと判別すると、無発光状態撮像動作を実行して第4データを取得する。つまり、第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分がない場合、演算部4は、無発光状態における受光部26から出力される第4データを取得する。第4データにおいて、各画素260からの出力値は、互いに同じ(すなわち、一定)ではなく、各画素260の特性のばらつきに応じてばらついている。第4データは、各画素260から出力されるノイズである。第4データとオフセット値とにおける各々の差分値は、概ね同様の値である。
【0024】
演算部4は、第2データに基づいて、発光部25の発光に基づく画素260毎の出力値を補正データとして算出する補正データ生成処理を実行し得る。具体的には、演算部4は、差分値比較処理において、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲Wが所定の画素数以上連続していると判別すると、
図7に示すように、第2データの各画素260の出力値から生成したオフセット値を差し引くことによって、補正データCを生成する。
【0025】
これに対して、演算部4は、差分値比較処理において、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲Wが所定の画素数以上連続していないと判別すると第2データの各画素260の出力値から第4データの出力値を差し引くことによって、補正データCを生成する(
図7参照。)。
【0026】
[物体からの反射光の重心の位置を特定する方法について]
演算部4は、生成した補正データCに基づいて、物体が吐水領域に位置するか否かを判定する。先ず、
図7に示す補正データCにおいて、画素260毎の出力値を積算して、すべての画素260(すなわち、64画素)の出力値の総和SLを求める。次に、受光エリア263の左端の画素(すなわち画素番号x=1)から順番に各画素260の出力値を積算して、積算された積算値が総和SLの半分の大きさに到達したかを判定する。そして、積算された積算値が総和SLの半分の大きさに到達したときの画素番号x=m(
図7における黒丸が示す位置)の画素260の位置を補正データCの重心(すなわち、物体からの反射光の重心)として定義する。
【0027】
[検知エリアについて]
図7に示す検知エリアDは、センサユニット2を利用した三角測量の原理に基づいて設定されている。具体的には、洗面台15におけるセンサユニット2、鉢面150、物体である使用者の手の位置関係は、
図8に示すように模式的に表現できる。LED素子251で生じた光のうち、物体Bによって反射した反射光がラインセンサ261に入射する際、ラインセンサ261から物体Bまでの距離Hに応じてその入射位置が変化する。具体的には、距離Hが短くなるほどラインセンサ261に入射する物体からの反射光の入射位置が
図8における上側に向い、距離Hが長くなるほど下側に向かうことになる。物体からの反射光の入射位置に対応する補正データCの重心の位置(以下、単に重心の位置ともいう)は、距離Hが短くなるほど画素番号xが小さくなる方向に移動し、距離Hが長くなるほど画素番号xが大きくなる方向に移動する。このように、ラインセンサ261に対する物体からの反射光の入射位置は、ラインセンサ261から物体Bまでの距離Hに対応しており、距離Hの大きさを表す指標として用いることができる。
【0028】
検知エリアDは、吐水領域に対応するように受光エリア263内に設定されたエリアである。つまり、重心の位置が検知エリアD内に属するときは、物体Bが吐水領域に位置することに対応し、重心の位置が検知エリアDよりも大きい画素番号xの位置に属するときは、物体Bが非吐水領域に位置することに対応している。演算部4は、生成した補正データCの重心の位置が受光エリア263内に設定された検知エリアD内に属するか否か(すなわち、吐水領域における物体の有無を検知する)エリア判定処理を行い得る構成とされている。
【0029】
[給水装置の動作について]
実施形態1の給水装置の動作の一例について、
図9、10等を参照しつつ説明する。
【0030】
図9のフローチャートは、演算部4において所定の周期で繰り返して実行される。先ず、制御部3が発光状態撮像動作を実行し、演算部4が第2データを取得する。すると、演算部4は、ステップS1において、差分値比較処理を実行する。演算部4は、ステップS1において、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲Wが所定の画素数以上連続している(ステップS1におけるYes)と判別すると、ステップS4に移行して、範囲Wにおける各画素260からの出力値と第1データとに基づいてオフセット値を算出する。オフセット値を生成した後、演算部4は、ステップS3に移行して、補正データ生成処理を実行する。演算部4は、補正データ生成処理において、第2データにおける各画素260の出力値からオフセット値を差し引いて補正データを生成した後、処理を終了する。
【0031】
演算部4は、ステップS1において第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲Wが所定の画素数以上連続していない(ステップS1におけるNo)と判別すると、ステップS2に移行して、無発光状態撮像動作によって第4データを取得する。第4データを取得した後、演算部4は、ステップS3に移行して、補正データ生成処理を実行する。演算部4は、補正データ生成処理において、第2データにおける各画素260の出力値から第4データにおける各画素260の出力値を差し引いて補正データを生成して処理を終了する。演算部4は、
図9のフローチャートを実行した後、例えば、生成した補正データを利用してエリア判定処理を実行する。
【0032】
このときの発光部25、受光部26からの受光データの出力、差分値比較処理の判定結果、物体の有無、及び吐水の状態の変化を
図10に示す。
図10に示すように、制御部3は、周期的にLED素子251の発光を繰り返し、発光状態撮像動作を実行する。これと共に、受光部26は発光状態撮像動作に応じて受光データを出力する。時刻T1において、演算部4は、差分値比較処理においてYesと判別する。すると、演算部4は、オフセット値を算出し、このオフセット値を利用して補正データ生成処理を実行する。この動作は、
図9のフローチャートにおいて、ステップS1においてYesと判別された後、ステップS4、及びステップS3が実行されることに対応している。補正データ生成処理を実行した後、例えば、演算部4は、補正データを利用してエリア判定処理を実行する。つまり、演算部4は、第2データからオフセット値を差し引いた補正データに基づいて物体の検知を行うのである。
【0033】
時刻T2に物体が吐水領域に進入する。すると、時刻T2以降、演算部4は、エリア判定処理において補正データの重心の位置が検知エリアD内に属しているとの判別を繰り返す。演算部4は、例えば、補正データの重心の位置が検知エリアD内に属しているとの判別を繰り返す回数をカウントし得る構成とされており、カウントした回数が所定回数に到達した場合に、制御部3に向けて検知信号を出力し得る構成とされている。
【0034】
時刻T3において、演算部4は、差分値比較処理においてNoと判別する。すると、時刻T4において制御部3は、無発光状態撮像動作を実行する。これと共に、受光部26は無発光状態撮像動作に応じて受光データを出力する。さらに、演算部4は、制御部3を介して受光データを第4データとして取得し、第4データを利用して補正データ生成処理を実行する。この動作は、
図9のフローチャートにおいて、ステップS1においてNoと判別された後、ステップS2、ステップS3を実行することに対応している。時刻T4においても、演算部4は、エリア判定処理において補正データの重心の位置が検知エリアD内に属しているとの判別をする。つまり、演算部4は、第4データと第2データとの差に基づいて物体の検知を行うのである。こうして演算部4は、差分値比較処理においてYesと判別した場合には、オフセット値を算出し、オフセット値を利用して補正データ生成処理を実行し、差分値比較処理においてNoと判別した場合には、第4データを取得し、第4データを利用して補正データ生成処理を実行することを繰り返すのである。
【0035】
時刻T5において、演算部4は、差分値比較処理においてYesと判別する。このとき、演算部4において、補正データの重心の位置が検知エリアD内に属していると判別した回数が所定回数に達する。すると、演算部4は、制御部3に向けて検知信号を出力する。制御部3は、検知信号に基づいて、時刻T5において電磁弁11を開弁する。こうして給水装置は吐水を開始する。
【0036】
次に、時刻T6において、物体が吐水領域から離れると、演算部4は、補正データの重心の位置が検知エリアD内に属していないとの判別を繰り返す。演算部4は、例えば、補正データの重心の位置が検知エリアD内に属していないとの判別を繰り返す回数をカウントし得る構成とされており、カウントした回数が所定回数に到達した場合に、制御部3に向けて出力していた検知信号の出力を停止し得る構成とされている。
【0037】
時刻T7において、演算部4は、差分値比較処理においてYesと判別する。このとき、演算部4において、補正データの重心の位置が検知エリアD内に属していないと判別した回数が所定回数に達する。すると、演算部4は、制御部3に向けて出力していた検知信号の出力を停止する。制御部3は、検知信号が停止したことに基づいて、時刻T7において電磁弁11を閉弁する。こうして給装装置は吐水を終了する。
【0038】
上記のように構成された実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0039】
実施形態1の給水装置は、電磁弁11と、吐水領域に向けて光を照射する発光部25と、所定方向に配置された複数の画素260を有し、吐水領域に位置する物体から反射した反射光を受光する受光部26と、発光部25が発光していない無発光状態における受光部26から出力される受光データのばらつきを第1データとして記憶する記憶部5と、発光部25が発光した発光状態における受光部26から出力される第2データを取得し、第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分の第2データに基づいて、第2データから差し引くオフセット値を算出し、第2データからオフセット値を差し引いた補正データに基づいて物体の検知を行う演算部4とを備えている。
【0040】
この構成によれば、発光部25が発光していないときの受光部26からの受光データのばらつきを第1データとして記憶部5が記憶する。このため、演算部4においてオフセット値を算出する際、受光部26を動作させて受光データを取得する必要がない。これによって、この給水装置は、第2データを取得するときのみ受光部26を動作させれば済むため、発光部25が無発光状態のときの受光データと発光部25が発光状態のときの第2データとを取得するために受光部26を2回動作させる場合に比べて消費電力を抑えることができる。これと共に、発光部25が発光した発光状態における受光部26から出力される第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分を用いて補正データを生成するため、第2データと第1データとが一致していない部分の影響を除いて補正データを生成することができるため、物体の検知を良好にすることができる。
【0041】
画素260は、一方向に並んでいる。この構成によれば、画素260が2方向に並んでいる場合に比べて受光部26の構成をより簡単なものにすることができる。
【0042】
第1データは、各画素260の間の差分である。この構成によれば、各画素260の特性のばらつきの特徴を取り使い易くすることができる。
【0043】
演算部4は、第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分の第2データのうちの1つと、第1データと、に基づいてオフセット値を算出する。この構成によれば、第1データが有する各画素260の特性のばらつきを有するオフセット値を平均値の大きさに関わらず容易に算出することができる。
【0044】
第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分がない場合、演算部4は、無発光状態における受光部26から出力される第4データを取得し、第4データと第2データとの差に基づいて物体の検知を行う。この構成によれば、第1データと第2データとが所定以上連続して一致する部分がない場合であっても、確実に物体の検知を行うことができる。
【0045】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1では、差分値比較処理において、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲が所定の画素数以上連続していないと判別した場合、無発光状態撮像動作を実行して取得した第4データを第2データから差し引くことが開示されている。しかし、これに限らない。例えば、制御部は、無発光状態撮像動作を所定時間(例えば、3時間)毎に実行し得る構成とする。制御部において所定時間毎に実行された無発光状態撮像動作によってラインセンサから取得した受光データを第3データとして定期的に更新して記憶部に記憶する。第3データは、所定時間毎に実行される無発光状態撮像動作によって取得した最新の受光データに更新され得る構成とする。差分値比較処理において、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲が所定の画素数以上連続していないと判別した場合、第3データを第2データから差し引くのである。この構成によれば、画素は時間の経過と共に特性が変化することが考えられる。このため、記憶部に記憶された第3データを定期的に更新して記憶することによって、画素の特性の経時変化を加味しつつ物体の検知を行うことができる。
(2)実施形態1では、第1データは、画素番号nに、画素番号nと画素番号n+1との差分値があてがわれる構成である。しかし、これに限らず、第1データとして、画素番号nに、画素番号1と画素番号nとの差分値をあてがう構成としてもよい。
(3)実施形態1では、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲における第2データのうちの1つと、第1データと、に基づいてオフセット値を算出している。しかし、これに限らず、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲における最大の出力値に基づいてオフセット値を算出してもよい。また、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲における第2データの平均値をオフセット値として用いてもよい。また、第2データにおける差分値と、第1データの差分値とが一致する範囲における第2データの平均値に基づいてオフセット値を算出してもよい。具体的には、この範囲における第2データの平均値を算出する。そして、第1データにおける差分値を利用して各画素に対応したオフセット値を算出する。例えば、この範囲における第2データの平均値が100である場合、画素番号1には、100をあてがう。画素番号2には、第1データ(
図4参照)の画素番号1にあてがわれた+4を100に加えた104をあてがう。画素番号3には、第1データの画素番号2にあてがわれた0を104に加えた104をあてがう。画素番号4には、第1データの画素番号3にあてがわれた-4を104に加えた100をあてがう。こうして、全ての画素番号に対応する値を算出してオフセット値を生成する。こうして演算部は、第2データのばらつきと第1データとが一致する範囲が所定の画素数以上連続して一致する部分の第2データの平均値と、第1データと、に基づいてオフセット値を生成する。オフセット値は、第2データのばらつきと第1データとが所定以上連続して一致する部分の第2データの平均値と、第1データと、に基づいて算出される。この構成によれば、第1データが有する各画素の特性のばらつきを有するオフセット値を平均値の大きさに関わらず容易に算出することができる。
(4)実施形態1では、発光状態撮像動作においてLED素子の発光時間が40μsや160μsとされている。しかし、LED素子の発光時間はこれに限られない。
(5)実施形態1では、受光部としてラインセンサが用いられている。これに限らず、受光部として、所定方向に並べられた複数のフォトダイオードを用いてもよい。
(6)実施形態1では、発光部としてLED素子が用いられている。これに限らず、発光部として、半導体レーザー素子を用いてもよい。
(7)実施形態1では、ラインセンサへの電源供給を停止する非動作期間を500msとしている。しかし、非動作期間の時間はこれに限らない。
【0046】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
4…演算部、5…記憶部、11…電磁弁(水栓)、25…発光部、26…受光部、260…画素(受光素子)