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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】コンクリート構造物のシール構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20231023BHJP
   E21D 11/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
E21D11/38 Z
E21D11/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020030121
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021134517
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 泰文
(72)【発明者】
【氏名】夏目 岳洋
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-110495(JP,A)
【文献】特開平06-248892(JP,A)
【文献】実開昭58-194294(JP,U)
【文献】特開2013-142265(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0012239(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/38
E21D 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状のコンクリート部材を互いに端面同士が対向するように突き合わせて配置してなるコンクリート構造物に用いられ、コンクリート部材の端面間に弾性変形可能なシール部材を介在させたコンクリート構造物のシール構造において、
前記コンクリート部材の端面に端面の長手方向に延びる溝を設けるとともに、
溝をコンクリート部材の厚さ方向の端部が含まれない部分に形成し、
前記シール部材を、コンクリート部材の端面に接する面が溝以外の部分のみに接するように溝及び溝以外の部分に亘って配置してコンクリート部材の端面間に圧縮状態で介在させることにより、シール部材の一部に溝内に位置する低圧縮部または非圧縮部を形成し、シール部材の他の部分に溝以外の部分で圧縮される高圧縮部を形成した
ことを特徴とするコンクリート構造物のシール構造。
【請求項2】
前記溝を断面半円形状に形成した
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物のシール構造。
【請求項3】
前記溝を断面三角形状に形成した
ことを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物のシール構造。
【請求項4】
複数の板状のコンクリート部材を互いに端面同士が対向するように突き合わせて配置してなるコンクリート構造物に用いられ、コンクリート部材の端面間に弾性変形可能なシール部材を介在させたコンクリート構造物のシール構造において、
前記コンクリート部材の端面に端面の長手方向に延びる溝を設けるとともに、
溝をコンクリート部材の厚さ方向の端部が含まれない部分に形成するとともに、溝の開口部の幅寸法が内側の寸法よりも小さい断面形状になるように形成し、
前記シール部材の一部を弾性変形させながら溝に係合するとともに、シール部材を溝及び溝以外の部分に亘って配置してコンクリート部材の端面間に圧縮状態で介在させることにより、シール部材の一部に溝内に位置する低圧縮部または非圧縮部を形成し、シール部材の他の部分に溝以外の部分で圧縮される高圧縮部を形成した
ことを特徴とするコンクリート構造物のシール構造。
【請求項5】
前記シール部材は液体吸収性を有する弾性部材からなる
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載のコンクリート構造物のシール構造。
【請求項6】
所定方向及びこれに直交する他の所定方向にそれぞれ並べて配置されるコンクリート部材のうち、各辺すべての端面に前記シール部材を配置したコンクリート部材と、各辺のいずれの端面にも前記シール部材を配置していないコンクリート部材とを前記各所定方向にそれぞれ交互に配置した
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載のコンクリート構造物のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトンネルの覆工体、擁壁、地中壁等に用いられるコンクリート構造物のシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の板状のコンクリート部材を互いに端面同士が対向するように突き合わせて配置してなるコンクリート構造物として、例えば道路等に用いられるトンネルの覆工体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。トンネルの覆工体は、コンクリート部材としての複数のセグメントを継ぎ合わせることにより構築されるため、各セグメントの端面間を密閉するシール構造を備えている。
【0003】
例えば、図16に示す従来のシール構造では、互いに対向するセグメント1の端面に溝1aが設けられ、溝1a内にはセグメント1の端面間を密閉するシール部材2が設けられている。セグメント1によって覆工体を構築した後は、図17に示すようにセグメント1の外周側と地山Yとの隙間にモルタルMが充填されるが、セグメント1の端面間はシール部材2によって密閉されているため、セグメント1の内空側へのモルタルMの侵入がシール部材2によって防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平3-137398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記シール構造では、シール部材2用の溝1aがセグメント1の外周側(地山側)に設けられるのが一般的であるが、この場合は溝1aがセグメント1の外周面側において開断面となるため、その分だけセグメント1の外周側における端面同士の接触部分が少なくなる。このため、図18に示すようにセグメント1の外周側に荷重Fが加わると、セグメント1に各端面における溝1aの角部を基点Pとする回転力が生じ、溝1aのない場合に比べて荷重に対するセグメント1の突き合わせ部分の強度が低下するという問題点があった。特に、厚さ寸法の小さいセグメントを用いる場合は、回転力の基点Pがより中立軸C側に近づくため、強度低下がより大きくなる。また、溝1a内にシール部材2を配置するのみのシール構造では、モルタルMの充填時の圧力に対して十分な密閉性が得られないという問題点もあった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンクリート部材の突き合わせ部分の強度を低下させることがなく、且つ密閉性の向上を図ることのできるコンクリート構造物のシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、複数の板状のコンクリート部材を互いに端面同士が対向するように突き合わせて配置してなるコンクリート構造物に用いられ、コンクリート部材の端面間に弾性変形可能なシール部材を介在させたコンクリート構造物のシール構造において、前記コンクリート部材の端面に端面の長手方向に延びる溝を設けるとともに、溝をコンクリート部材の厚さ方向の端部が含まれない部分に形成し、前記シール部材を、コンクリート部材の端面に接する面が溝以外の部分のみに接するように溝及び溝以外の部分に亘って配置してコンクリート部材の端面間に圧縮状態で介在させることにより、シール部材の一部に溝内に位置する低圧縮部または非圧縮部を形成し、シール部材の他の部分に溝以外の部分で圧縮される高圧縮部を形成している。また、本発明は前記目的を達成するために、複数の板状のコンクリート部材を互いに端面同士が対向するように突き合わせて配置してなるコンクリート構造物に用いられ、コンクリート部材の端面間に弾性変形可能なシール部材を介在させたコンクリート構造物のシール構造において、前記コンクリート部材の端面に端面の長手方向に延びる溝を設けるとともに、溝をコンクリート部材の厚さ方向の端部が含まれない部分に形成するとともに、溝の開口部の幅寸法が内側の寸法よりも小さい断面形状になるように形成し、前記シール部材の一部を弾性変形させながら溝に係合するとともに、シール部材を溝及び溝以外の部分に亘って配置してコンクリート部材の端面間に圧縮状態で介在させることにより、シール部材の一部に溝内に位置する低圧縮部または非圧縮部を形成し、シール部材の他の部分に溝以外の部分で圧縮される高圧縮部を形成している。
【0008】
これにより、溝がコンクリート部材の厚さ方向の端部を含まない部分に形成されることから、コンクリート部材間で溝が閉断面となり、コンクリート部材に厚さ方向の荷重が加わった際、コンクリート部材の厚さ方向端部においても端面同士の接触面が確保され、従来のように開断面の溝を設けた場合に比べて外圧に対するコンクリート部材の突き合わせ部分の強度を低下させることがない。また、コンクリート部材間に圧縮状態で介在するシール部材の一部に溝内に位置する低圧縮部が形成され、シール部材の他の部分に溝以外の部分で圧縮される高圧縮部が形成されることから、高圧縮部によって液状の侵入物が阻止されるとともに、低圧縮部によって溝内に侵入物が貯溜される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来のようにコンクリート部材の端面に開断面の溝を設けた場合に比べて外圧に対する強度を低下させることがないので、耐久性の向上を図ることができる。また、シール部材の高圧縮部によって液状の侵入物を阻止することができるとともに、シール部材の低圧縮部によって溝内に侵入物を貯溜することができるので、コンクリート部材の端面間を二種類のシール部分によって確実にシールすることができ、密閉性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態を示すシール構造の要部断面図
図2】セグメントの要部拡大断面図
図3】セグメントの継ぎ合わせ工程を示す要部断面図
図4】シール構造の要部拡大断面図
図5】トンネルの覆工体を示す要部断面図
図6】セグメントの配列状態を示す図
図7】第1の実施形態の変形例を示すセグメントの要部拡大断面図
図8】第1の実施形態の他の変形例を示すセグメントの継ぎ合わせ工程を示す要部断面図
図9】第1の実施形態の他の変形例を示すシール構造の要部断面図
図10】本発明の第2の実施形態を示すシール構造の要部拡大断面図
図11】本発明の第3の実施形態を示すシール構造の要部拡大断面図
図12】本発明の第4の実施形態を示すセグメントの要部拡大断面図
図13】本発明の第4の実施形態を示すセグメントの継ぎ合わせ工程を示す要部拡大断面図
図14】本発明の第4の実施形態を示すシール構造の要部拡大断面図
図15】第4の実施形態の変形例を示すセグメントの要部拡大断面図
図16】従来例を示すセグメントの継ぎ合わせ工程の要部分解断面図
図17】従来例を示すトンネルの覆工体の要部断面図
図18】従来例を示すシール構造の要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図9は本発明の第1の実施形態を示すもので、コンクリート構造物としてのトンネルの覆工体に用いられるシール構造を示すものである。尚、本実施形態では覆工体のシール部分のみを図示し、覆工体全体の図示は省略する
本実施形態では、コンクリート部材としての複数のセグメント10を互いに端面同士が対向するように突き合わせてトンネル周方向及びトンネル軸方向にそれぞれ並べて配置することにより覆工体が構築され、各セグメント10は互いに端面間にシール部材20を介在させて継ぎ合わされる。尚、セグメント10は一部のみを図示したが、図面左右方向に長い板状に形成されている。
【0012】
セグメント10は、予め工場で製作された円弧状のブロックからなり、鉄筋コンクリート製のもの、或いは鋼材とコンクリートを一体化して鋼板で覆うようにしたものなどが用いられる。セグメント10の端面には、端面の長手方向(トンネル周方向及びトンネル軸方向)に延びる溝11が設けられ、溝11は断面半円形状に形成されている。溝11の幅方向(セグメント10の厚さ方向)両端側には溝11に連続する凹部12がそれぞれ設けられ、各凹部12は平坦状の底面を有するように形成されている。溝11及び各凹部12はセグメント10の厚さ方向端部側が含まれない部分に形成され、セグメント10の厚さ方向中央よりもやや外周寄りに配置されている。この場合、各凹部12は、その深さ寸法A1 が溝11の中央の深さ寸法A2 よりも小さくなるように形成されている。
【0013】
シール部材20は、液体吸収性を有する弾性部材としての周知のゴムスポンジ(例えば、連続気泡スポンジからなる発泡ゴム)によって形成され、セグメント10の長手方向に沿って延びるように形成されている。シール部材20は断面四角形状に形成され、自然状態における幅方向(セグメント10の厚さ方向)の寸法B1 が各凹部12の両端の間隔A3 よりも小さく、溝11の幅寸法A4 よりも大きく形成されている。また、シール部材20は、自然状態における厚さ方向(セグメント10の長手方向)の寸法B2 が溝11の中央の深さ寸法A2 よりも大きく形成されている。
【0014】
以上の構成において、セグメント10同士を継ぎ合わせる際には、図3に示すように互いに対向するセグメント10のうち一方のセグメント10の端面にシール部材20を溝11及び各凹部12に亘るように接着剤または粘着テープで貼り付けることにより一方のセグメント10にシール部材20を装着し、図1に示すようにセグメント10の端面同士を突き合わせて連結金具(図示せず)等により連結する。これにより、セグメント10の端面間に介在するシール部材20が各端面で圧縮されて溝11及び各凹部12に沿って弾性変形し、各端面の溝11及び各凹部12以外の部分は直接突き合わされる。その際、各端面の溝11及び各凹部12によって形成される空間内にシール部材20が圧縮状態で充填されるが、各凹部12の深さ寸法A1 は溝11の中央の深さ寸法A2 よりも極めて小さいので、シール部材20の幅方向両端側は各凹部12間で高圧縮となり、図4に示すように各凹部12内にシール部材20の高圧縮部21が形成される。一方、溝11内に配置されるシール部材20の幅方向中央側は両端側よりも低圧縮となり、溝11内にシール部材20の低圧縮部22が形成される。
【0015】
各セグメント10によって覆工体を構築した後は、図5に示すようにセグメント1の外周側と地山Yとの隙間にモルタルMが充填されるが、セグメント10の端面間はシール部材20によって密閉されているため、セグメント1の内空側への液状のモルタルMの侵入がシール部材20によって防止される。
【0016】
その際、シール部材20が配置される溝11及び各凹部12はセグメント10の厚さ方向端部側を含まない部分に形成されているため、溝11及び各凹部12が閉断面となり、セグメント10は厚さ方向端部側の端面同士が直接接触することになる。これにより、覆工体が地山Y側から荷重を受けた場合、セグメント10の厚さ方向一端側(セグメント10の外周側)においても端面同士の接触面が確保されることから、従来のように開断面の溝1aを設けた場合に比べて外圧に対する強度を低下させることがない。
【0017】
また、セグメント10の外周側から端面間にモルタルMが侵入すると、各凹部12内にはそれぞれシール部材20の高圧縮部21が形成されているため、シール部材20の一方(図中上方)の高圧縮部21によって侵入を阻止される。高圧縮部21はシール部材20が高密度で圧縮されているため密閉性が高く、モルタルMの通過を十分に阻止することができるが、僅かなモルタルMが高圧縮部21を通過した場合は溝11内に収容される。溝11内にはシール部材20の低圧縮部22が形成されているため、溝11内に侵入したモルタルMは低圧縮部22によって溝11内に貯溜される。低圧縮部22はシール部材20が低密度で圧縮されているため液体吸収性が高く、モルタルMを吸収して溝11内に貯溜することができる。更に、セグメント10の端面間はシール部材20の他方(図中下方)の高圧縮部21によって密閉されているため、低圧縮部22内のモルタルMが溝11から漏出することがない。
【0018】
また、各セグメント10によって前記覆工体を構築する際、図6に示すように、トンネル周方向及びトンネル軸方向にそれぞれ並べて配置される複数のセグメント10のうち、各辺すべての端面にシール部材20を配置したセグメント10と、いずれの辺にもシール部材20を配置していないセグメント10とをトンネル周方向及びトンネル軸方向にそれぞれ交互に配置する。
【0019】
このように、本実施形態によれば、セグメント10の端面に端面の長手方向に延びる溝11を設けるとともに、溝11をセグメント10の厚さ方向の端部が含まれない部分に形成したので、溝11が閉断面となり、セグメント10に厚さ方向の荷重が加わった際、セグメント10の厚さ方向端部においても端面同士の接触面が確保することができる。これにより、従来のように開断面の溝1aを設けた場合に比べて外圧に対するセグメント10の突き合わせ部分の強度を低下させることがなく、耐久性の向上を図ることができる。
【0020】
また、シール部材20を溝11及び溝11以外の部分に配置してセグメント10の端面間に圧縮状態で介在させることにより、シール部材20の一部に溝11内に位置する低圧縮部22を形成し、シール部材20の他の部分に溝11の両側の溝11以外の部分で圧縮される高圧縮部21を形成するようにしたので、高圧縮部21によってモルタルMの侵入を阻止することができるとともに、低圧縮部22によって溝11内にモルタルMを貯溜することができる。これにより、セグメント10の端面間を二種類のシール部分によって確実にシールすることができるので、密閉性の向上を図ることができる。
【0021】
更に、凹部12の深さ寸法A1 を極めて小さくすることにより(例えば1mm程度)、セグメント10の端面間において、溝11と各凹部12以外の部分の接触面のみならず、各凹部12間の高圧縮部21によってもセグメント10間の軸力(セグメント10の端面に垂直な方向の力)を伝達することができ、凹部12を設けることによるセグメント10の接合部分の強度低下を極めて小さくすることができる。
【0022】
また、シール部材20は液体吸収性を有する弾性部材によって形成されているので、シール部材20の低圧縮部22の液体吸収性を高めることができ、低圧縮部22による溝11内でのモルタルMの貯溜効果を高めることができる。
【0023】
更に、溝11を断面半円形状に形成したので、セグメント10の端面間でシール部材20を圧縮する際、溝11内にシール部材20が入り込みやすくすることができ、低圧縮部22を容易に形成することができる。この場合、図7に示す変形例のように溝11と溝11以外の部分(凹部12)との間部分に面取り部11aを形成すれば、溝11内にシール部材20がより一層入り込みやすくなり、溝11内に低圧縮部22を満遍なく形成することができる。
【0024】
また、各辺すべての端面にシール部材20を配置したセグメント10と、いずれの辺にもシール部材20を配置していないセグメント10とをトンネル周方向及びトンネル軸方向に交互に配置するようにしたので、覆工体全体に用いられるセグメント10のうち半分のセグメント10のみに予めシール部材20を装着すればよく、シール部材20の装着作業を効率よく行うことができる。
【0025】
尚、前記実施形態では、セグメント10の端面に凹部12を設けたものを示したが、図8及び図9に示す他の変形例のように、凹部を設けずにシール部材20を溝11及び溝11以外の部分で圧縮して高圧縮部21及び低圧縮部22を形成するようにしてもよい。
【0026】
図10乃至図15は本発明の他の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0027】
即ち、前記第1の実施形態では、溝11内に低圧縮部22を形成するようにしたものを示したが、図10に示す第2の実施形態のように、シール部材20を自然状態における厚さ方向の寸法B2 が各溝11の深さ方向の最大寸法A5 よりも小さくなるように形成することにより、溝11内にシール部材20の非圧縮部23を形成するようにしてもよい。この場合、シール部材20の寸法B2 が各溝11の寸法A5 よりも小さい分、溝11内にシール部材20の存在しない空隙部11bが形成されるので、空隙部11b内にもモルタルMを貯溜することができ、溝11内でのモルタルMの貯溜効果を高めることができる。
【0028】
また、図11に示す第3の実施形態のように、前記断面半円形状の溝11に代えて、断面三角形状の溝13を設けるようにしてもよい。本実施形態では、セグメント10の端面間でシール部材20を圧縮する際、断面三角形状の溝13の角部まではシール部材20が入り込みにくいため、溝13の角部付近と低圧縮部22との間に空隙部13aを形成しやすくなる。これにより、シール部材20を自然状態における厚さ方向の寸法B2 が大きくなるように形成しても溝13内に空隙部13aを形成することができるので、圧縮率の高い高圧縮部21を形成し且つ空隙部13aも形成することができるという利点がある。
【0029】
図12乃至図14に示す第4の実施形態は、前記断面半円形状の溝11に代えて、シール部材を係合可能な形状の溝14を設け、断面円形状のシール部材30を溝14に係合するようにしたものである。溝14は開口部の幅寸法が内径寸法よりも小さい断面略円形状に形成されており、図13に示すようにシール部材30の一部を一方のセグメント10の溝14に押し込むことにより、シール部材30が溝14に係合して一方のセグメント10の端面に保持される。この状態で一方のセグメント10の端面に他方のセグメント10の端面を突き合わせると、他方のセグメント10の溝14にシール部材30の他の一部が圧入し、図14に示すように凹部12間に高圧縮部31が形成され、溝14内に低圧縮部32が形成される。
【0030】
これにより、本実施形態では、シール部材30の一部をセグメント10の溝14に押し込むことによりシール部材30をセグメント10に保持することができるので、シール部材30をセグメント10に接着剤や粘着テープを用いて貼り付ける必要がなく、シール部材30の装着作業を容易に行うことができる。この場合、図16に示す変形例のように溝14と溝14以外の部分(凹部12)との間部分に面取り部14aを形成すれば、溝14内にシール部材20をより一層入り込みやすくすることができる。
【0031】
尚、前記実施形態では、トンネルの覆工体の外周側に充填されるモルタルMの侵入を防止するためのシール構造を示したが、モルタルMのみならず湧水等の水の侵入を防止することも可能です。
【0032】
また、前記実施形態では、溝を断面半円形状、断面三角形状、断面略円形状に形成したものを示したが、断面四角形状、断面台形状等、溝を他の形状に形成するようにしてもよい。
【0033】
更に、前記実施形態では、本発明をトンネルの覆工体に用いたものを示したが、例えば擁壁、地中壁等、複数のコンクリート部材を継ぎ合わせて構築されるものであれば、他のコンクリート構造物にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0034】
10…セグメント、11…溝、12…凹部、13,14…溝、20…シール部材、21…高圧縮部、22…低圧縮部、23…非圧縮部、30…シール部材、31…高圧縮部、32…低圧縮部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18