IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-制御装置および制御方法 図1
  • 特許-制御装置および制御方法 図2
  • 特許-制御装置および制御方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】制御装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20231023BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20231023BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20231023BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20231023BHJP
   B62D 117/00 20060101ALN20231023BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20231023BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D113:00
B62D117:00
B62D119:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020030217
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021133763
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直幸
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-297877(JP,A)
【文献】特開2018-052311(JP,A)
【文献】特開2006-069307(JP,A)
【文献】特開2016-068584(JP,A)
【文献】特開2006-094574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04, 6/00
H02P 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するための駆動力を分担して出力する第1電動モータと第2電動モータと、前記第1電動モータと前記第2電動モータを駆動する制御システムとを有する制御装置であって、
前記制御システムは、
前記第1電動モータと前記第2電動モータを制御するための各制御信号を出力する制御部と、
前記第1電動モータと前記第2電動モータの出力値を検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1電動モータの駆動方向と逆方向に前記第2電動モータを駆動し、
前記負荷の状態情報を少なくとも含む負荷情報に基づき前記第1電動モータと前記第2電動モータを駆動するための各目標電流値を演算する目標電流演算部と、
補正用目標電流値を生成し、制御電流演算部に入力する、または、前記検出部が検出した出力値に基づき、前記各目標電流値を補正するための前記各電動モータのトルク定数に関する係数である各パラメータ値を算出する第2補正部と、
前記第2補正部が算出した前記各パラメータ値に基づき前記各目標電流値を補正する第1補正部と、
前記補正用目標電流値または前記各目標電流値に基づき前記第1電動モータと前記第2電動モータを駆動する各駆動電流値を演算し、該各駆動電流値を前記各制御信号として出力する制御電流演算部と、
を備え、
前記第2補正部は、前記第1電動モータと前記第2電動モータの駆動方向が互いに逆方向になるように前記補正用目標電流値を生成し、
前記制御電流演算部は、該補正用目標電流値に基づき前記各駆動電流値を出力し、
前記検出部は、前記第1電動モータと前記第2電動モータの出力値を検出し、
前記補正用目標電流値に基づいた前記各駆動電流値の出力の前後で該出力値に変化があったことを検出した場合、前記第2補正部は、前記各パラメータ値を算出し、
前記目標電流演算部は、該算出された前記各パラメータ値に基づき前記各目標電流値を補正し、
前記制御電流演算部は、該補正された前記各目標電流値に基づき前記各駆動電流値を演算する、
制御装置。
【請求項2】
車両の操舵機構を駆動するための駆動力を分担して出力する第1電動モータと第2電動モータと、前記第1電動モータと前記第2電動モータを駆動する制御システムとを有する制御装置であって、
前記制御システムは、
前記第1電動モータと前記第2電動モータを制御するための各制御信号を出力する制御部と、
前記操舵機構のステアリングの操舵トルクを検出する検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記第1電動モータの駆動方向と逆方向に前記第2電動モータを駆動し、
前記車両の操舵機構の状態情報を少なくとも含む情報に基づき前記第1電動モータと前記第2電動モータを駆動するための各目標電流値を演算する目標電流演算部と、
補正用目標電流値を生成し、制御電流演算部に入力する第2補正部と、
前記各目標電流値を補正するための操舵トルクと各目標電流の特性に関する係数である各パラメータ値を算出する第1補正部と、
前記補正用目標電流値または前記各目標電流値に基づき前記第1電動モータと前記第2電動モータを駆動する各駆動電流値を演算し、該各駆動電流値を前記各制御信号として出力する制御電流演算部と、
を備え、
前記第2補正部は、前記第1電動モータと前記第2電動モータの駆動方向が互いに逆方向になるように前記補正用目標電流値を生成し、
前記制御電流演算部は、該補正用目標電流値に基づき前記各駆動電流値を出力し、
前記検出部は、前記操舵機構のステアリングの操舵トルクを検出し、
前記補正用目標電流値に基づいた前記各駆動電流値の出力の前後で操舵トルクが所定の閾値以上の場合、前記第1補正部は、前記各パラメータ値を算出し、
前記目標電流演算部は、該算出された前記各パラメータ値に基づき前記各目標電流値を補正し、
前記制御電流演算部は、該補正された前記各目標電流値に基づき前記各駆動電流値を演算する、
制御装置。
【請求項3】
前記第1電動モータと前記第2電動モータを駆動する制御システムは、前記第1電動モータを制御する第1制御部システムと前記第2電動モータを制御する第2制御システムからなることを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置および制御方法に関し、特に冗長系を有する制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冗長系を有する制御装置において異常を検知する技術が知られている。例えば、特許文献1は、冗長化された構成の異常を検知することができるアクチュエータシステム等を開示する。このアクチュエータシステムは、双方向に駆動可能なアクチュエータと、アクチュエータに制御信号を出力する第1および第2のアクチュエータ制御部と、第1および第2のアクチュエータ制御部を制御する異常検知部と、を備え、異常検知部は、第1のアクチュエータ制御部にアクチュエータを第1方向へ駆動させる第1の制御信号を出力させ、第2のアクチュエータ制御部にアクチュエータを第1方向と対となる方向である第2方向へ駆動させる第2の制御信号を出力させることにより異常を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-052311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術では、いずれの制御部において異常が発生しているのかを特定し、異常が発生していると特定された方の制御を停止し、正常な制御部のみでアクチュエータを駆動する。しかし、複数のシステムを冗長系として備える場合、経年劣化や個体差などによりシステム間でアクチュエータの出力値が異なってきて、バランスが悪くなってくる場合がある。そのような場合において劣化したシステムを停止させて残ったシステムのみでアクチュエータを駆動したり、バランスが悪い状態で駆動し続けたりすることは効率が悪い。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みて考案されたものであり、冗長系を有するアクチュエータを駆動制御する制御装置において、冗長系のアクチュエータ間でバランスが悪い状態を検知すると共に、冗長系のアクチュエータ間でアクチュエータの駆動制御のアンバランスを補正する制御装置および制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、負荷を駆動するための駆動力を分担して出力する第1アクチュエータと第2アクチュエータと、第1アクチュエータを制御する第1制御システムと第2アクチュエータを制御する第2制御システムとを有する制御装置であって、第1制御システムと第2制御システムは、それぞれ、アクチュエータを制御するための制御信号を出力する制御部と、アクチュエータの出力値を検出する検出部と、を備え、制御部は、他のシステムのアクチュエータの駆動方向と逆方向に自己のシステムのアクチュエータを駆動し、そのときに検出部が検出した出力値に基づき制御信号を補正する制御装置が提供される。
これによれば、補正用目標電流値でアクチュエータを駆動してアクチュエータの出力値を検出し、その出力値が互いに異なる場合目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出し、そのパラメータ値で目標電流値を補正してアクチュエータを駆動することで、システム間でバランスが悪い状態を検知すると共に、システム間でアクチュエータの駆動制御のアンバランスを補正する制御装置を提供することができる。
【0007】
さらに、制御部は、負荷の状態情報を少なくとも含む負荷情報に基づきアクチュエータを駆動するための目標電流値を演算する目標電流演算部と、補正用目標電流値を生成し、検出部が検出した出力値に基づき、目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出する第2補正部と、第2補正部が算出したパラメータ値に基づき目標電流値を補正する第1補正部と、補正用目標電流値または目標電流値に基づきアクチュエータを駆動する駆動電流値を演算し、該駆動電流値を制御信号として出力する制御電流演算部と、を備え、第2補正部は、アクチュエータの駆動方向が互いに逆方向になるように補正用目標電流値を生成し、制御電流演算部は、該補正用目標電流値に基づき駆動電流値を出力し、検出部は、アクチュエータの出力値を検出し、補正用目標電流値に基づいた駆動電流値の出力の前後で該出力値に変化があったことを検出した場合、第2補正部は、パラメータ値を算出し、目標電流演算部は、該算出されたパラメータ値に基づき目標電流値を補正し、制御電流演算部は、該補正された目標電流値に基づき駆動電流値を演算することを特徴としてもよい。
これによれば、冗長系を有する電動モータを駆動制御する電動パワーステアリング制御装置において、システム間でバランスが悪い状態を検知すると共に、システム間で電動モータの駆動制御のアンバランスを補正する電動パワーステアリング制御装置を提供することができる。
【0008】
さらに、制御部は、他のシステムと通信を行う通信部を備え、制御電流演算部は、通信部同士を介して他のシステムと同期を取り、補正用目標電流値に基づき駆動電流値を出力することを特徴としてもよい。
これによれば、タイミングを合わせて補正用目標電流値でアクチュエータを駆動してアクチュエータの出力値を検出することで、正確な補正パラメータ値を算出することができる。
【0009】
さらに、負荷は、車両の操舵機構であり、アクチュエータは、操舵機構を駆動する電動モータであり、検出部は、電動モータの回転角、回転トルク、回転角速度、回転角加速度、操舵機構の操舵角、操舵トルクの少なくとも1つを検出するセンサであり、電動パワーステアリング制御装置であることを特徴としてもよい。
これによれば、補正用目標電流値で電動モータを駆動して電動モータの出力値を検出し、その出力値が互いに異なる場合目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出し、そのパラメータ値で目標電流値を補正して電動モータを駆動することで、システム間でバランスが悪い状態を検知すると共に、システム間で電動モータの駆動制御のアンバランスを補正する電動パワーステアリング制御装置を提供することができる。
【0010】
さらに、回転トルク、回転角速度、または回転角加速度が所定の閾値以上の場合にパラメータ値を算出することを特徴としてもよい。
これによれば、様々な物理量に基づきパラメータを算出することで、電動モータの駆動制御のアンバランスの補正を的確に行うことができる。
【0011】
さらに、アクチュエータの出力値に変化があったことを検出した場合、両方の第2補正部がパラメータ値を算出する、または、一方の第2補正部のみがパラメータ値を算出することを特徴としてもよい。
これによれば、補正するシステムを両方または一方とすることで、柔軟な補正を行うことができる。
【0012】
さらに、アクチュエータの出力値に変化があったことを検出した場合、第2補正部は、予め定めた値または検出部が検出した出力値の変化量に基づきパラメータ値の大きさを算出することを特徴としてもよい。
これによれば、予め定めた補正量に基づきパラメータ値を算出することで容易に補正を行うことができ、出力値の変化量に基づきパラメータ値を算出することで電動モータの駆動制御のアンバランスの補正を的確に行うことができる。
【0013】
さらに、パラメータ値は、電動モータのトルク定数に関する係数、または、操舵トルクと目標電流の特性に関する係数であることを特徴としてもよい。
これによれば、電動モータの補正を直接的に補正できる。
【0014】
上記課題を解決するために、負荷を駆動するための駆動力を分担して出力する第1アクチュエータと第2アクチュエータと、第1アクチュエータを制御する第1制御システムと第2アクチュエータを制御する第2制御システムとを有する制御装置の制御方法であって、第1制御システムと第2制御システムのそれぞれにおいて、他のシステムのアクチュエータの駆動方向と逆方向に自己のシステムのアクチュエータを駆動し、そのときのアクチュエータの出力値を検出し、アクチュエータを制御するための制御信号をその出力値に基づき補正して出力する制御方法が提供される。
これによれば、補正用目標電流値でアクチュエータを駆動してアクチュエータの出力値を検出し、その出力値が互いに異なる場合目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出し、そのパラメータ値で目標電流値を補正してアクチュエータを駆動することで、システム間でバランスが悪い状態を検知すると共に、システム間でアクチュエータの駆動制御のアンバランスを補正する制御方法を提供することができる。
【0015】
上記課題を解決するために、負荷を駆動するための駆動力を分担して出力する第1アクチュエータと第2アクチュエータと、第1アクチュエータと第2アクチュエータを駆動する制御システムとを有する制御装置であって、制御システムは、第1アクチュエータと第2アクチュエータを制御するための各制御信号を出力する制御部と、第1アクチュエーと第2アクチュエータの出力値を検出する検出部と、を備え、制御部は、第1アクチュエータの駆動方向と逆方向に第2アクチュエータを駆動し、そのときに検出部が検出した出力値に基づき各制御信号を補正する制御装置が提供される。
これによれば、制御部が共通化されている制御装置においても、冗長系のアクチュエータ間でバランスが悪い状態を検知すると共に、冗長系のアクチュエータ間でアクチュエータの駆動制御のアンバランスを補正する制御装置を提供することができる。
【0016】
さらに、制御部は、負荷の状態情報を少なくとも含む負荷情報に基づき第1アクチュエータと第2アクチュエータを駆動するための各目標電流値を演算する目標電流演算部と、補正用目標電流値を生成し、検出部が検出した出力値に基づき、各目標電流値を補正するための各パラメータ値を算出する第2補正部と、第2補正部が算出した各パラメータ値に基づき各目標電流値を補正する第1補正部と、補正用目標電流値または各目標電流値に基づき第1アクチュエータと第2アクチュエータを駆動する各駆動電流値を演算し、該各駆動電流値を各制御信号として出力する制御電流演算部と、を備え、第2補正部は、第1アクチュエータと第2アクチュエータの駆動方向が互いに逆方向になるように補正用目標電流値を生成し、制御電流演算部は、該補正用目標電流値に基づき各駆動電流値を出力し、検出部は、第1アクチュエータと第2アクチュエータの出力値を検出し、補正用目標電流値に基づいた各駆動電流値の出力の前後で該出力値に変化があったことを検出した場合、第2補正部は、各パラメータ値を算出し、目標電流演算部は、該算出された各パラメータ値に基づき各目標電流値を補正し、制御電流演算部は、該補正された各目標電流値に基づき各駆動電流値を演算することを特徴としてもよい。
これによれば、制御部が共通化されている制御装置においても、冗長系のアクチュエータ間でバランスが悪い状態を検知すると共に、冗長系のアクチュエータ間で電動モータの駆動制御のアンバランスを補正する電動パワーステアリング制御装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、冗長系を有するアクチュエータを駆動制御する制御装置において、冗長系のアクチュエータ間でバランスが悪い状態を検知すると共に、冗長系のアクチュエータ間でアクチュエータの駆動制御のアンバランスを補正する制御装置および制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る第一実施例の制御装置のブロック構成図。
図2】本発明に係る第一実施例の制御装置の制御方法を示すフローチャート。(A)は、全体の制御フロー、(B)はトルク補正処理の制御フロー。
図3】本発明に係る第二実施例の制御装置のブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る実施例について説明する。
【0020】
<第一実施例>
図1を参照し、本実施例における制御装置1を説明する。制御装置1は、車両に搭載される電動パワーステアリング(図示せず)に使用される第1電動モータMT1/第2電動モータMT2(アクチュエータ)を制御するための電動パワーステアリング制御装置である。第1電動モータMT1/第2電動モータMT2は、それぞれ3相電動モータであり、1個のロータに2巻線(第1巻線組と第2巻線組)を備え、2系統に冗長化された電動モータである。第1電動モータMT1/第2電動モータMT2は、これに限定されず、1個のロータに1巻線を備えた電動モータを2個用いて、2系統に冗長化された電動モータであってもよい。第1電動モータMT1と第2電動モータMT2は、車両の操舵機構(負荷)を駆動するための駆動力を分担して出力する。負荷は、本実施例の車両の操舵機構以外に、たとえば、自動車の電子化に伴う冗長システムでは電子制御ブレーキ(制御装置)における電磁弁などがある。また、アクチュエータは、電動モータに限定されず、双方向に駆動可能な作動装置である。
【0021】
制御装置1は、いずれかの系(システム)で異常が生じても制御を継続するため、2系統に冗長化された電動モータに対応するように冗長系を有する。制御装置1は、第1電動モータMT1に対する第1システム100に対応した第1制御システム110と、第2電動モータMT2に対する第2システム200に対応した第2制御システム210を備える。第1制御システム110および第2制御システム210は、バッテリ(図示せず)から電力を供給され、トルクセンサ(図示せず)からステアリングに付加される操舵トルク値を、ECU(Electric Control Unit、図示せず)から車速を、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2のロータの回転角を取得し、パワーステアリングの補助力を生成するために第1電動モータMT1および第2電動モータMT2をそれぞれ駆動する。第1電動モータMT1および第2電動モータMT2の駆動力は、車両の運転者がステアリングを操舵する力を補助する。
【0022】
第1制御システム110は、これらのセンサの信号を取得し、第1電動モータMT1の回転を制御するマイクロコンピュータ120(制御部)と、マイクロコンピュータ120が出力した制御信号に基づき、第1電動モータMT1を駆動するための駆動信号を生成するドライバIC140と、ドライバIC140内のインバータ回路において生成される第1電動モータMT1を回転駆動する駆動力を出力するため電流を検出する電流検出部150と、第1電動モータMT1の回転軸に設けられたマグネットから得られるロータの回転角を検出するMRセンサ130と、を備える。
【0023】
また、第2制御システム210は、同様に、第2電動モータMT2の回転を制御するマイクロコンピュータ220と、マイクロコンピュータ220が出力した制御信号に基づき、第2電動モータMT2を駆動するための駆動信号を生成するドライバIC240と、ドライバIC240内のインバータ回路において生成される第2電動モータMT2を回転駆動する駆動力を出力するため電流を検出する電流検出部250と、第2電動モータMT2の回転軸に設けられたマグネットから得られるロータの回転角を検出するMRセンサ230と、を備える。なお、以下では、第1制御システム110の各構成要素を説明し、同機能の構成要素を備える第2制御システム210については説明を省略する。
【0024】
ドライバIC140は、制御信号に基づきPWM(Pulse Width Modulation)信号を演算するプリドライバと、そのPWM信号に基づき第1電動モータMT1の駆動するインバータ回路を備える。電流検出部150は、インバータ回路の各相に流れる電流を検出するシャント抵抗であり、第1電動モータMT1を正確に駆動するために検出した電流値をフィードバックするために設けられる。MRセンサ130は、第1電動モータMT1の出力値(ロータの回転角)を検出する磁気抵抗(Magnetic Resistance)センサであり、電流検出部150で検出した電流値と共に、第1電動モータMT1を正確に駆動するためマイクロコンピュータ120にフィードバックする。
【0025】
マイクロコンピュータ120は、操舵機構のステアリングに付加される操舵トルク値やECUから得られる車速に基づき第1電動モータMT1を駆動するための目標電流値を設定する目標電流設定部126と、MRセンサ130が検出した第1電動モータMT1のモータ回転角信号に基づき補正用のパラメータ値を算出するまたは補正用目標電流値を生成する第2補正部123と、補正用目標電流値または目標電流値に基づき第1電動モータMT1を駆動する駆動電流値を演算し、その駆動電流値を制御信号として出力する制御電流演算部124と、他のシステムである第2制御システム210と通信を行う通信部125と、を備える。目標電流設定部126は、操舵トルク値や車速に基づき第1電動モータMT1を駆動するための目標電流値を演算する目標電流演算部121と、第2補正部123が算出したパラメータ値に基づいて目標電流値を補正する第1補正部122と、を備える。
【0026】
目標電流設定部126は、操舵トルク値や車速を取り込み、これらの状態情報に基づき必要なトルクを第1電動モータMT1に発生させるための電流を算出する。その中で、目標電流演算部121は、車速ごとに操舵トルク値と目標電流値とが対応づけられている所定のテーブル(T-Iマップ、トルク-電流マップ)を有し、取得した状態情報から第1電動モータMT1が発生させるべき操舵トルク値を算出し、その操舵トルク値に対応する目標電流値を決定する。制御電流演算部124は、目標電流演算部121で演算された目標電流値に基づき、第1電動モータMT1を駆動するためのPWMデューティ値を演算し、制御信号として出力する。なお、目標電流設定部126は、操舵トルク値や車速などの状態情報を含む負荷情報に基づき目標電流値を演算する。負荷情報には、アクチュエータの種類やその仕様なども含まれる。
【0027】
第2補正部123は、補正用目標電流値を生成し、制御電流演算部124に入力する。したがって、制御電流演算部124は、目標電流演算部121で算出された目標電流値または第2補正部123で生成された補正用目標電流値に基づきPWMデューティ値を演算する。第1制御システム110の第2補正部123が生成する補正用目標電流値とは、他のシステムである第2制御システム210の第2電動モータMT2の駆動方向と逆方向に、自己のシステムである第1制御システム110の第1電動モータMT1を駆動する電流値である。たとえば、第1制御システム110の補正用目標電流値が第1電動モータMT1(第1巻線組)を正回転(または右回転)させるものであれば、第2制御システム210の補正用目標電流値は第2電動モータMT2(第2巻線組)を逆回転(または左回転)させるものである。好ましくは、第1制御システム110の補正用目標電流値の絶対値は、第2制御システム210の補正用目標電流値の絶対値と同じである。
【0028】
第1制御システム110/第2制御システム210のそれぞれにおいて、第2補正部123/第2補正部223は、同時に同じ大きさの補正用目標電流値をそれぞれの制御電流演算部124/制御電流演算部224に出力すると、第1電動モータMT1と第2電動モータMT2は互いにとって逆方向に駆動される。しかし、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2はロータを共有しているので、理想的な状態においては両出力値が打ち消し合うため、ロータは動かない。一方、両システムのバランスが悪く両出力値の大きさが異なるとロータが回転する場合がある。第2補正部123/第2補正部223が補正用目標電流値を出力したとき、MRセンサ130/MRセンサ230がロータの回転(出力値)を検出することにより、両システムの出力値のバランスの良否を診断することが可能になる。
【0029】
なお、制御電流演算部124は、通信部125/通信部225を介して他のシステムである第2制御システム210と同期を取り、補正用目標電流値に基づき駆動電流値を出力することが好ましい。これによれば、タイミングを合わせて補正用目標電流値で第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を駆動してその出力値を検出することで、正確な補正パラメータ値を算出することができる。
【0030】
また、第2補正部123は、補正用目標電流値を出力した際にMRセンサ130が検出した第1電動モータMT1のモータ回転角信号(出力値)がフィードバックされ、そのフィードバックされたモータ回転角信号に基づき、目標電流演算部121が算出した目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出する。このパラメータ値は、補正用目標電流値を出力した際にロータが回転するなど両システムのバランスが悪いと判断される場合にそのバランスの悪さを是正するために、目標電流演算部121が演算した目標電流値を調整して補正するものである。たとえば、パラメータ値は、目標電流演算部121が演算した目標電流値に乗算する係数である。
【0031】
なお、補正は、以下のように行ってもよい。第1電動モータMT1と第2電動モータMT2の出力にアンバランスがあると、共通のロータにトルクTxが発生し、回転することになる。そのときの、ロータの回転角θの二階微分値(角速度)をα、慣性モーメントをJとすると、次の関係がなりたつ。
Tx=α*J ・・・式1
いま第1電動モータMT1の方が第2電動モータMT2よりも発生トルクが大きいと仮定する。補正用目標電流値をIC、第1電動モータMT1モータのトルク定数をKとし、また第2電動モータMT2の発生トルクと釣り合うトルクをT0とすると、次の関係がなりたつ。
IC*K=T0+TX ・・・式2
IC*K=T0+α*J ・・・式3 (式2に式1を代入)
【0032】
つぎに第1電動モータMT1の出力が小さくなるように補正する手順を説明する。第1電動モータMT1と第2電動モータMT2の出力のバランスを取るために、補正用目標電流を流したときの第1電動モータMT1の出力が小さくなるように補正する。補正のために、第1電動モータMT1の補正用目標電流値に係数(1-y)を乗ずることによって、発生するトルクをTx分小さくなるとすると次の関係がなりたつ。
IC*(1-y)*K=T0 ・・・式4
IC*(1-y)*K=IC*K-α*J ・・・式5 (式4に式3を代入)
y=α*J/(IC*K) ・・・式6
【0033】
つまり、第1電動モータMT1を補正するためには、目標電流値に係数(1-α*J/(IC*K)を乗ずる補正を行えばよい。これによれば、予め定めた補正量に基づきパラメータ値を算出することで容易に補正を行うことができ、出力値の変化量に基づきパラメータ値を算出することで第1電動モータMT1/第2電動モータMT2の駆動制御のアンバランスの補正を的確に行うことができる。
【0034】
また、パラメータ値は、目標電流演算部121が有するT-Iマップで規定されている電流値に乗ずるゲインである。後者の場合、第2補正部123は、第1補正部122ではなく、直接目標電流演算部121にフィードバックしてもよく、目標電流演算部121が演算した目標電流値が直接制御電流演算部124に出力されてもよい。なお、正常時のパラメータ値は、ディフォルトで1である。
【0035】
なお、第1電動モータMT1の出力値を検出する検出部としては、ロータの回転角を検出するMRセンサ130以外に、回転トルク、回転角速度、回転角加速度を検出するセンサを備えてもよい。なお、第2補正部123は、回転トルク、回転角速度、または回転角加速度が所定の閾値以上の場合にパラメータ値を算出するようにしても良い。また、検出部として、電動モータの回転トルクなどの代用変数として、操舵機構のステアリングの操舵角、操舵トルクを検出するセンサを備えてもよい。この場合、第1補正部122は、操舵角、操舵トルクが所定の閾値以上の場合にパラメータ値を算出する。これによれば、様々な物理量に基づきパラメータ値を算出することで、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2の駆動制御のアンバランスの補正を的確に行うことができる。
【0036】
また、第2補正部123/第2補正部223は、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2の出力値に変化があったことを検出した場合、両方の第1補正部122/第1補正部222がパラメータ値を算出してもよいし、第2補正部123/第2補正部223の内一方のみがパラメータ値を算出してもよい。すなわち、補正用目標電流値を出力した際に第1電動モータMT1/第2電動モータMT2のロータが回転した場合、目標電流演算部121/目標電流演算部221が算出した目標電流値を両方で補正してもよいし、一方のみで補正してもよい。一方のみで補正する場合、たとえば、どちらのシステムで補正するかを予め定めておいてもよいし、ロータが回転した方向によってどちらが補正するかを決めてもよい。これによれば、補正するシステムを両方または一方とすることで、柔軟な補正を行うことができる。
【0037】
また、第2補正部123/第2補正部223は、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2の出力値に変化があったことを検出した場合、予め定めた値またはMRセンサ130/MRセンサ230が検出した回転角(出力値)の変化量に基づきパラメータ値の大きさを算出してもよい。たとえば、第2補正部123は、予め定めた微小な値をパラメータ値として記憶しており、回転角(出力値)の変化が所定値以上の場合に、この値を第1補正部122に出力してもよいし、予め定めた微小な値を第1補正部122が記憶しておいて、係数に加減算してもよい。また、回転角の変化量に基づく場合であって両方のシステムで補正する場合、たとえば、ロータが回転した方向と逆の方向へ、回転した回転角の1/2だけ回転するように調整されたパラメータ値としてもよい。
【0038】
上述したように、マイクロコンピュータ120/マイクロコンピュータ220は、相手方のシステムの第2電動モータMT2/第1電動モータMT1の駆動方向と逆方向に自己のシステムの第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を駆動し、そのときMRセンサ130/MRセンサ230が検出したロータの回転角(出力値)に基づきドライバIC140に出力する制御信号を補正する。これによれば、補正用目標電流値で第1電動モータMT1/第2電動モータMT2(アクチュエータ)を駆動してその出力値を検出し、本実施例のような1個のロータに2巻線(第1巻線組と第2巻線組)を備えるモータにおいては、その出力値がゼロでない場合または所定値を超える場合には、目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出し、そのパラメータ値で目標電流値を補正して第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を駆動することで、システム間でバランスが悪い状態を検知すると共に、システム間で第1電動モータMT1/第2電動モータMT2の駆動制御のアンバランスを補正する制御装置1を提供することができる。
【0039】
図2を参照して、制御装置1の制御フローを説明する。制御装置1は、イグニッションスイッチがオンにされた時などに、S200においてトルク補正処理を行う。トルク補正処理は、S202~S208で説明される。第2補正部123/第2補正部223は、S202において、第1電動モータMT1と第2電動モータMT2の駆動方向が互いに逆方向になるように補正用目標電流値を生成する。第2補正部123/第2補正部223は、S204において、制御電流演算部124/制御電流演算部224に入力する。制御電流演算部124/制御電流演算部224は、補正用目標電流値が入力されると、それに対応した制御信号をドライバIC140/ドライバIC240に出力し、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を駆動する。
【0040】
MRセンサ130/MRセンサ230は、S206において、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2のロータの回転角を読み込む。MRセンサ130/MRセンサ230が読み込んだロータの回転角は、第2補正部123/第2補正部223にフィードバックされる。第2補正部123/第2補正部223は、S208において、そのフィードバックされたモータ回転角信号(出力値)に駆動電流値の出力の前後で変化があった場合、目標電流演算部121が算出した目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出する。
【0041】
トルク補正処理を終えると、制御装置1は、S100において、操舵機構のステアリングに付加される操舵トルク値やECUから得られる車速を取得する。目標電流演算部121/目標電流演算部221は、S102において、T-Iマップを用いて取得した操舵トルク値や車速に基づいて目標電流値を演算する。第1補正部122/第1補正部222は、S104において、S208で算出したパラメータ値を用いて目標電流演算部121/目標電流演算部221が演算した目標電流値を補正する。制御電流演算部124/制御電流演算部224は、S106において、補正された目標電流値を用いて演算された制御信号を演算し、ドライバIC140/ドライバIC240に対して出力する。ドライバIC140/ドライバIC240は、イグニッションスイッチがオフになるまで(S108)、補正された制御信号に基づいて第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を駆動する。このように、冗長系を有する電動モータを駆動制御する電動パワーステアリング制御装置において、システム間でバランスが悪い状態を検知すると共に、システム間で電動モータの駆動制御のアンバランスを補正することができる。
【0042】
上述したことは、制御装置1の制御方法である。すなわち、この制御方法は、第1制御システム110と第2制御システム210のそれぞれにおいて、他のシステムの第2電動モータMT2/第1電動モータMT1の駆動方向と逆方向に自己のシステムの第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を駆動し、そのときの第1電動モータMT1/第2電動モータMT2の出力値を検出し、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を制御するための制御信号をその出力値に基づき補正して出力する制御方法である。これによれば、補正用目標電流値で電動モータを駆動して電動モータの出力値を検出し、その出力値が互いに異なる場合目標電流値を補正するためのパラメータ値を算出し、そのパラメータ値で目標電流値を補正して電動モータを駆動することで、システム間でバランスが悪い状態を検知すると共に、システム間でアクチュエータの駆動制御のアンバランスを補正する制御方法を提供することができる。
【0043】
<第二実施例>
図3を参照し、本実施例における制御装置1Aを説明する。重複記載を避けるため、上記実施例における構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略し、上記実施例と異なる点を中心に述べる。制御装置1Aは、車両に搭載される電動パワーステアリング(図示せず)に使用される第1電動モータMT1/第2電動モータMT2を制御するための電動パワーステアリング制御装置である。上述した制御装置1は、冗長化された第1電動モータMT1と第2電動モータMT2に対応して、それを駆動するドライバIC、ドライバICへの制御信号を出力するマイクロコンピュータ、第1電動モータMT1と第2電動モータMT2のロータの回転角を検出するMRセンサも冗長化されていた。一方、制御装置1Aでは、ドライバICが第1電動モータMT1と第2電動モータMT2に対応して冗長化されているが、マイクロコンピュータとMRセンサは冗長化されておらず共通化されている。
【0044】
制御装置1Aは、第1電動モータMT1と第2電動モータMT2と、第1電動モータMT1と第2電動モータMT2を駆動する制御システム110Aを含む。制御システム110Aは、操舵トルク等の信号を取得し、第1電動モータMT1および第2電動モータMT2の回転を制御するマイクロコンピュータ120Aと、マイクロコンピュータ120Aが出力した制御信号に基づき第1電動モータMT1を駆動するための駆動信号を生成するドライバIC140と、マイクロコンピュータ120Aが出力した制御信号に基づき、第2電動モータMT2を駆動するための駆動信号を生成するドライバIC240と、ドライバIC140内のインバータ回路において生成される第1電動モータMT1を回転駆動する駆動力を出力するため電流を検出する電流検出部150と、ドライバIC240内のインバータ回路において生成される第2電動モータMT2を回転駆動する駆動力を出力するため電流を検出する電流検出部250と、第1電動モータMT1および第2電動モータMT2の回転軸に設けられたマグネットから得られるロータの回転角を検出するMRセンサ130と、を備える。
【0045】
マイクロコンピュータ120Aは、操舵機構のステアリングに付加される操舵トルク値やECUから得られる車速に基づき第1電動モータMT1および第2電動モータMT2を駆動するための各目標電流値を設定する目標電流設定部126Aと、MRセンサ130が検出した第1電動モータMT1および第2電動モータMT2のモータ回転角信号に基づき補正用の各パラメータ値を算出するまたは補正用目標電流値を生成する第2補正部123Aと、補正用目標電流値または各目標電流値に基づき第1電動モータMT1および第2電動モータMT2を駆動する各駆動電流値を演算し、その各駆動電流値を各制御信号として出力する制御電流演算部124Aと、を備える。目標電流設定部126Aは、操舵トルク値や車速に基づき第1電動モータMT1および第2電動モータMT2を駆動するための各目標電流値を演算する目標電流演算部121Aと、第2補正部123Aが算出した各パラメータ値に基づいて各目標電流値を補正する第1補正部122Aと、を備える。
【0046】
目標電流設定部126Aは、操舵トルク値や車速を取り込み、これらの状態情報に基づき必要なトルクを第1電動モータMT1および第2電動モータMT2に発生させるための電流を算出する。制御電流演算部124Aは、目標電流演算部121Aで演算された各目標電流値に基づき、第1電動モータMT1および第2電動モータMT2を駆動するためのPWMデューティ値を演算し、各制御信号として出力する。ドライバIC140とドライバIC240に出力する各制御信号は、基本的には各モータに同じトルクを出力させるので同じ制御信号であるが、異なる2つの制御信号とすることもある。例えば、一方のモータに異常が発生した場合には、異常側のモータの出力を低減あるいはゼロにし、正常側の出力を増加させるような場合である。第2補正部123Aは、補正用目標電流値を生成し、制御電流演算部124Aに入力する。第2補正部123Aが生成する補正用目標電流値とは、第2電動モータMT2の駆動方向と逆方向に第1電動モータMT1を駆動する電流値である。
【0047】
第2補正部123Aは、同時に同じ大きさの補正用目標電流値を制御電流演算部124Aに出力すると、第1電動モータMT1と第2電動モータMT2は互いにとって逆方向に駆動される。しかし、第1電動モータMT1/第2電動モータMT2はロータを共有しているので、理想的な状態においては両出力値が打ち消し合うため、ロータは動かない。一方、両出力値の大きさが異なるとロータが回転する場合がある。第2補正部123Aが補正用目標電流値を出力したとき、MRセンサ130がロータの回転(出力値)を検出することにより、両出力値のバランスの良否を診断することが可能になる。このように、制御部が共通化されている制御装置においても、冗長系のアクチュエータ間でバランスが悪い状態を検知すると共に、冗長系のアクチュエータ間で電動モータの駆動制御のアンバランスを補正することができる。
【0048】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
【符号の説明】
【0049】
1 電動パワーステアリング制御装置(制御装置)
100 第1システム
110 第1制御システム
120 マイクロコンピュータ(制御部)
121 目標電流演算部
122 第1補正部
123 第2補正部
124 制御電流演算部
125 通信部
130 MRセンサ(検出部)
140 ドライバIC
150 電流検出部
200 第2システム
210 第2制御システム
220 マイクロコンピュータ(制御部)
221 目標電流演算部
222 第1補正部
223 第2補正部
224 制御電流演算部
225 通信部
230 MRセンサ(検出部)
240 ドライバIC
250 電流検出部
MT1 第1電動モータ(第1アクチュエータ)
MT2 第2電動モータ(第2アクチュエータ)
図1
図2
図3