(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】半導体パッケージ基板の層間絶縁材料の研磨方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/14 20060101AFI20231023BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231023BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20231023BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20231023BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01L23/14 R
H01L21/304 622D
H01L23/12 501Z
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
(21)【出願番号】P 2020038191
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591186888
【氏名又は名称】株式会社トッパンインフォメディア
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅村 忠弥
(72)【発明者】
【氏名】北 友美
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157120(JP,A)
【文献】特開2018-168354(JP,A)
【文献】特開2009-161371(JP,A)
【文献】特開2001-115144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/14
H01L 21/304
H01L 23/12
B24B 37/00
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体パッケージ基板を研磨する方法であって、
基板上に、無機粒子と樹脂材料とからなる無機有機混合樹脂シートとして層間絶縁材料を適用する工程と、
前記無機粒子の平均粒子径と等しいかまたは大きい平均粒子径を有する第一の研磨粒子と、分散剤とを含んだ第一の研磨スラリーを調製する工程と、
前記無機粒子の平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有する第二の研磨粒子と、分散剤とを含んだ第二の研磨スラリーを調製する工程と、
前記層間絶縁材料を、前記第一の研磨スラリーで研磨する工程と、
前記第一の研磨スラリーで研磨された前記層間絶縁材料を、前記第二の研磨スラリーでさらに研磨する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記無機有機混合樹脂シートにおける前記無機粒子の含有量が、80~90質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記無機有機混合樹脂シートが、無機粒子としてシリカ粒子を、樹脂材料としてエポキシ樹脂を含み、
前記第一の研磨スラリーおよび前記第二の研磨スラリーの一方もしくは両方が、研磨粒子としてシリカ粒子を、分散剤として硝酸を含む
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記無機有機混合樹脂シートが含む前記無機粒子の平均粒子径Psに対して、前記第一の研磨スラリーが含む前記第一の研磨粒子の平均粒子径P1が、P1≧2Psを満たし、
前記第二の研磨スラリーが含む前記第二の研磨粒子の平均粒子径P2が、P2≦0.5Psを満たす
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機有機混合樹脂シートが含む前記無機粒子の平均粒子径Psが、Ps = 0.5~1.5μmであることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の研磨スラリーおよび前記第二の研磨スラリーの少なくとも一方がさらにpH調整剤を含むことにより、pHが6.5~7.5であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ基板の層間絶縁材料の研磨方法に関し、より具体的には、無機粒子と樹脂材料が混合された無機有機混合樹脂シートからなる層間絶縁材料の研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板(プリント基板)は、集積回路、抵抗器、コンデンサーなどの多数の電子部品をその表面に固定してその部品間を配線で接続することで電子回路を構成するために使用させる板状またはフィルム上の部品である。プリント基板はパソコンやスマートフォンなどの様々な電子機器に搭載されている。
【0003】
近年、電子機器の高密度化・多様化に伴い、半導体素子をプリント基板に実装するための技術として、半導体パッケージが用いられている。半導体パッケージは、半導体素子自体を外部から保護するための樹脂部分と、半導体素子を電気的に外部に接続するための外部端子とから構成される。その中でも、高機能素子向けパッケージに分類されるFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)は、半導体素子と外部端子を、はんだバンプと導電層と絶縁層からなるパッケージ基板を介して接続することで、従来のようにワイヤ接続を用いない手法である。FCBGAは、半導体パッケージの多ピン化に伴って開発された手法であり、パッケージ裏面全体にハンダボール端子を形成してエリアレイ化することを特徴としている。このためFCBGAは、省スペース、高速伝送などに適したパッケージ技術として知られている(特許文献1)。
【0004】
さらにFCBGAの次世代技術として、FOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)が注目を集めている。FOWLPは、再配線層をウェハプロセスを用いて形成するので、ワイヤやバンプを必要とせずに厚みを薄くできるため、電気信号の伝送速度を高速化できるという特徴がある。
【0005】
FOWLP技術では、半導体素子と外部素子を接合するために用いられるパッケージ基板を、導体層(導電層)と絶縁層を積み上げて回路形成を行なうビルドアップ工法により形成する。その導体層には主に金属が用いられ、絶縁層には樹脂材料が用いられる。そして銅などの金属で再配線層をポリイミド基板上に形成して、その上から樹脂フィルムを熱圧着して絶縁層を形成する。その後、再配線層の表面にある絶縁層を除去する。
【0006】
微細配線を要求されるFOWLP技術では、処理対象となる層がそれぞれ非常に薄いため、従来の製造プロセス(レーザー加工)の適用が困難である。そのため、半導体分野における精密研磨による微細配線形成工程で実績のあるCMP(Chemical-Mechanical Polishing)処理工程を、FOWLP技術にも導入することが新たに検討されている。例えば、特許文献2、3には、半導体素子製造技術における基板表面の平坦化工程において使用される研磨方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-353776号公報
【文献】特開2011-233748号公報
【文献】国際公開第2004/100242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体製品の生産に求められる速度は年々上がっているため、各生産工程にかけられる時間は非常に限られているのが現実である。しかしながら、従来技術に係るCMP処理をそのままFOWLP技術に適用しようとしても、半導体パッケージ基板に求められる平坦化の程度がきわめて高いので、研磨速度を十分に大きくできない問題が解決できていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明では以下を提供できる。
【0010】
態様1.
半導体パッケージ基板を研磨する方法であって、
基板上に、無機粒子と樹脂材料とからなる無機有機混合樹脂シートとして層間絶縁材料を適用する工程と、
前記無機粒子の平均粒子径と等しいかまたは大きい平均粒子径を有する第一の研磨粒子と、分散剤とを含んだ第一の研磨スラリーを調製する工程と、
前記無機粒子の平均粒子径よりも小さい平均粒子径を有する第二の研磨粒子と、分散剤とを含んだ第二の研磨スラリーを調製する工程と、
前記層間絶縁材料を、前記第一の研磨スラリーで研磨する工程と、
前記第一の研磨スラリーで研磨された前記層間絶縁材料を、前記第二の研磨スラリーでさらに研磨する工程と
を含む、方法。
【0011】
態様2.
前記無機有機混合樹脂シートにおける前記無機粒子の含有量が、80~90質量%であることを特徴とする、態様1に記載の方法。
【0012】
態様3.
前記無機有機混合樹脂シートが、無機粒子としてシリカ粒子を、樹脂材料としてエポキシ樹脂を含み、
前記第一の研磨スラリーおよび前記第二の研磨スラリーの一方もしくは両方が、研磨粒子としてシリカ粒子を、分散剤として硝酸を含む
ことを特徴とする、態様1または2に記載の方法。
【0013】
態様4.
前記無機有機混合樹脂シートが含む前記無機粒子の平均粒子径Psに対して、前記第一の研磨スラリーが含む前記第一の研磨粒子の平均粒子径P1が、P1≧2Psを満たし、
前記第二の研磨スラリーが含む前記第二の研磨粒子の平均粒子径P2が、P2≦0.5Psを満たす
ことを特徴とする、態様1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0014】
態様5.
前記無機有機混合樹脂シートが含む前記無機粒子の平均粒子径Psが、Ps = 0.5~1.5μmであることを特徴とする、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0015】
態様6.
前記第一の研磨スラリーおよび前記第二の研磨スラリーの少なくとも一方がさらにpH調整剤を含むことにより、pHが6.5~7.5であることを特徴とする、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分に大きな研磨速度を以って半導体パッケージ基板を十分に平坦化でき、特にFOWLP技術において顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】FOWLP技術における基板表面の平坦化工程の概要を説明する模式図である。
【
図2】実施例における研磨対象物表面の、研磨前の状態を撮影した倍率20000倍の電子顕微鏡写真を示す。
【
図3】実施例における研磨対象物表面の、第一の研磨スラリーを用いて一度目の研磨をした後の状態を撮影した倍率20000倍の電子顕微鏡写真を示す。
【
図4】実施例における研磨対象物表面の、第二の研磨スラリーを用いて二度目の研磨をした後の状態を撮影した倍率20000倍の電子顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書における数値範囲は、別段の断わりがないかぎりはその下限値および上限値を含むものとする。本明細書に開示される方法が含む各工程の順番は、その効果を発揮できるかぎりにおいて、時系列的に自由に変更してもよい。
【0019】
本明細書における粒子の平均粒子径とは、レーザー回折散乱法によって求められる粒度分布における、体積基準積算値50%での粒径(D50)を意味する。
【0020】
本発明に係る研磨方法は、半導体パッケージ基板を対象とするものであり、より好ましくはFOWLP技術に基づきビルドアップ工法により形成する半導体パッケージ基板を対象にできる。
図1には、分かりやすくするために簡略化した基板表面と、その平坦化工程の概要を示す。
【0021】
まず
図1(a)に示すように、ベースとなる基板(ベークライト基板、ガラスエポキシ基板、エポキシやポリエステルなどの樹脂基板、またはこれらのコンポジット基板など)の表面に、導体層を形成する。この導体層は、金・銀・銅・ニッケル・コバルト・スズ・鉛などの金属で形成するピラー(例えばCuピラー)であってもよく、例えば金属の箔(銅箔など)を貼り付けてエッチングで形成したものであってもよい。あるいは導体層を、インクジェット印刷などの印刷手法により回路を直接形成するようにして作成してもよい。この状態のものを「コア基板」とも称する。特にFOWLP技術によるコア基板の場合は、エポキシやポリエステルなどの樹脂基板上に導電層を回路形成したものが好ましい。
【0022】
次に
図1(b)に示すように、コア基板上に層間絶縁材料を積層する。この図では、わかりやすくするために凹凸を極端に誇張していることに留意されたい。本発明に係る方法においては、層間絶縁材料は、無機粒子と樹脂材料とからなる無機有機混合樹脂シートであるのが好ましい。そうした無機有機混合樹脂シートは、加熱圧着などによって樹脂をBステージ(半硬化状態)とすることで、コア基板上に接着(積層)でき、コア基板へ薄膜絶縁性を付与できる。無機有機混合樹脂シートの厚みは本発明の効果を発揮できるかぎりにおいて任意に設定できるが、例えば15μm以下が好ましい。
【0023】
無機有機混合樹脂シートが含む無機粒子の材料としては任意のものを使用でき、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、硫酸バリウム、炭酸バリウムなどを使用可能である。好ましくは無機粒子としてシリカ粒子を使用でき、さらに好ましくは充填性のよい球状シリカを使用できる。
【0024】
無機粒子の平均粒子径(Ps)は、後述する研磨スラリー中の研磨粒子の平均粒子径との所定の関係を満たすようにしつつ任意に設定可能である。例えば無機粒子を高充填させ薄膜絶縁性を向上させる観点からは、Ps = 0.5~1.5μm が好ましい。
【0025】
無機有機混合樹脂シートが含む樹脂材料としては任意のものを使用でき、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、またはエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂との複合体などを使用できる。好ましくはエポキシ樹脂を使用できる。樹脂材料は必要に応じて硬化剤を含めてもよい。
【0026】
無機有機混合樹脂シートにおける無機粒子の含有量は任意に設定でき、作業性向上の観点からはシート全体の重量を基準として80~90質量%であるのが好ましい。
【0027】
そして
図1(c)に示したように、コア基板上の層間絶縁材料を研磨して、導体層を露出させるように基板表面を平坦化する。平坦化の評価には公知の手法を使用でき、任意の表面粗さパラメータを測定することで評価可能である。例えばそうした表面粗さパラメータとしては、JIS B0601:2013の附属書JBに定義される中心線平均粗さR
a75が挙げられるがこれに限定はされない。
【0028】
本発明に係る方法では、研磨工程において研磨スラリーを使用する。研磨スラリーは、研磨粒子と分散剤とを含むように調製する。
【0029】
本発明に係る方法では、短時間で高い研磨速度かつ高い平坦化を実現するために、研磨スラリーを二種類以上使用できる。すなわち、機械的研磨力の高い研磨スラリーを用いて層間絶縁材料を高速かつ粗く研磨したのちに、機械的研磨力の低い研磨スラリーを用いて層間絶縁材料を細かく研磨することで、優れた効果を得られる。
【0030】
第一の研磨スラリーが含む第一の研磨粒子の平均粒子径(P1)は、層間絶縁材料の含む無機粒子の平均粒子径(Ps)以上にできる。第二の研磨スラリーが含む第二の研磨粒子の平均粒子径(P2)は、Ps未満にできる。すなわち一般に P1 > P2 である。
【0031】
機械的研磨力の高い第一の研磨スラリーについて、P1は大きめであることが好ましく、例えば P1 = 1~10μm 、より好ましくは P1 = 1.5~10μm 、さらに好ましくは P1 = 2.5~10μm にできる。さらに好ましい実施形態においては、 P1≧2Ps であってよい。仮説ではあるが、無機粒子と研磨粒子の平均粒子径が倍以上違うと、そうでない場合に比べて研磨速度に大きな差が出ることから、このように平均粒子径の大小関係を設定することで顕著な効果が得られると考えられる。特に、無機粒子と研磨粒子の硬度が同程度(例えばJIS Z2244:2009に定義されるビッカース硬度として、同じ試験力においてのHV値が、一方を基準として他方がその90~110%の範囲であることなど)であるか、もしくはそれらの材質が同種である場合、この効果が顕著であり、材料の硬度差による大きな傷(スクラッチ)の発生を抑えられる。第一の研磨工程によっては、研磨前の表面よりも表面粗さが粗くなってもよい。
【0032】
また精密な研磨をするための第二の研磨スラリーについて、P2は小さめであるのが好ましく、例えば P2 = 0.01~1μm 、より好ましくは P2 = 0.01~0.5μm 、さらに好ましくは P2 = 0.01~0.2μm にできる。さらに好ましい実施形態においては、 P2≦0.5Ps としてよい。
【0033】
特に好ましくは、各研磨スラリーの組み合わせとして P1≧2Ps かつ P2≦0.5Ps とすることで、高速かつ優れた研磨性能を発揮できる。
【0034】
さらに別の研磨スラリーを調製して研磨に使用してもかまわないことは言うまでもない。例えば三種類の研磨スラリーを使う場合、第一の研磨スラリーが含む第三の研磨粒子の平均粒子径(P3)について、 P1 > P2 > P3 としてもよいことは当業者には理解できる。
【0035】
研磨粒子の材料としては、無機有機混合樹脂シートである層間絶縁材料を研磨できる硬度を持つものであれば任意のものを使用でき、例えば樹脂、酸化セリウム、酸化チタン、酸化クロム、シリカ、アルミナ、またはダイヤモンドなどの粒子を用いてよい。研磨性能の観点から好ましくはヒュームドシリカを使用できる。複数種の研磨スラリーにおいて、研磨粒子の材料は同じであってもよいしそれぞれ異なっていてもよい。複数種の研磨スラリーにおいて、研磨粒子の材料が無機粒子の材料と同種である場合、または研磨粒子の材料の硬度が無機粒子のそれと同程度である場合には、材料の硬度差による大きな傷(スクラッチ)の発生を抑えられる効果がある。
【0036】
研磨スラリーの研磨粒子の濃度(すわなち砥粒濃度)は任意に設定でき、例えば0.01~10質量%、さらに好ましくは0.5~5質量%であってよい。
【0037】
また研磨スラリーが分散剤を含むことにより、研磨粒子を効率よく分散させて、層間絶縁材料内にすみやかに研磨粒子を供給できる効果が得られる。そうした分散剤としては公知のものを使用でき、例えば界面活性剤にある分子鎖の立体障害を利用するものや、粒子表面電位の電気的反発により分散向上させるものなどを使用できる。
【0038】
研磨粒子として酸化セリウム、酸化チタン、酸化クロム、シリカ、アルミナなどの極性が高い酸化物を使う場合においては、分散剤として界面活性作用を有する物質を使用するのが好ましく、例えばポリアクリル酸塩やポリスチレンスルホン酸塩などのイオン性高分子界面活性剤や、塩酸や硝酸などの酸を使用できる。半導体パッケージ基板への表面汚染の回避(洗浄のしやすさ)という観点と、研磨粒子の電気的反発を利用して単分散に近い分散性が得られるという観点からは、分散剤として酸を使用するのが好ましい。また層間絶縁材料が含む樹脂材料への適度な侵食性を得る観点からは、分散剤として樹脂材料をある程度溶解できる物質を使うのが好ましい。例えば樹脂材料がエポキシ樹脂を含む場合には、分散剤として硝酸を使用できる。
【0039】
層間絶縁材料が含む無機粒子の材料と、研磨スラリーが含む研磨粒子の材料とが同一であってもよいし異なっていてもよい。目的である薄膜絶縁性を阻害しない観点からは、当該材料が上述した分散剤に対し難溶性であるのが好ましい。
【0040】
研磨スラリーがさらに他の成分を含んでもよく、例えばpH調整剤、増粘剤、酸化剤、錯形成剤、腐食防止剤などを適宜含んでいてもよい。好ましい実施形態では、半導体パッケージ基板を損傷させにくい観点から、研磨スラリーがpH調整剤を含むことで、研磨スラリーのpHを6.5~7.5の範囲としてもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0042】
(実験例1)
<研磨スラリーの作製>
粒子径の異なる各種シリカの40質量%シリカ/水混合物に対し、硝酸0.7質量%を添加し、ビーズミルで分散した後、希釈してシリカ濃度(砥粒濃度)が1質量%である研磨スラリーをそれぞれ作製した。研磨スラリーのpHを、アンモニア添加により pH = 7 に調整した。
【0043】
<被研磨物>
研磨対象基板を模擬する被研磨物として以下を調製した。平均粒子径1μmの球状シリカ粒子を85質量%含有したエポキシ樹脂シートを、シリコンウェハ(株式会社アドバンテック社製、φ200mm低抵抗シリコンウェハ)上に熱圧着して積層したものを準備した。積層したエポキシ樹脂シートは、厚さ35μm、Ra75 ≒ 25nmであった。中心線平均粗さ Ra75 は、接触式表面粗さ計(Tencor社製 P-15 KLA)を用いて測定した。
【0044】
<研磨条件>
研磨実験は、スピードファム・アイペック社製SH-24型を使用して以下に示す条件設定で行った。研磨機の定盤には研磨パッド(ニッタ・ハース社製IC 1400)を貼り付けて使用した。
Down Force = 4.0 psi (1.11kg/cm2)
Career Speed / Table Speed = 103/100 rpm
Slurry Flow = 200 ml/min
Polish Time = 180 sec
【0045】
<測定方法>
研磨速度は、研磨前後の被研磨物の重量変化を精密天秤で測定し、重量変化値を膜厚値に換算して、研磨時間あたりの膜厚減少量を研磨速度として算出した。研磨後の中心線平均粗さも上記と同様に測定した。
【0046】
<実験結果>
粒子径の異なる各種シリカを研磨粒子として用いた研磨スラリーによる研磨結果を下記表1に示す。
【0047】
【0048】
上記結果から、平均粒子径1μmの球状シリカ粒子を含有したエポキシ樹脂シートを層間絶縁材料とした被研磨物に対し、平均粒子径が2μm以上のシリカ粒子を含んだ研磨スラリーでは表面粗さを荒らしながら(大きくしながら)研磨速度が増加することがわかり、また平均粒子径が0.5μm以下のシリカ粒子を含んだ研磨スラリーでは表面粗さを低下させる(平坦性が向上する)ことがわかった。
【0049】
(実験例2)
実験例1で使用したものと同じ被研磨物に対し、実験例1で使用した研磨スラリーNo.8(平均粒子径2.8μm)を使って上記条件下で第一研磨工程を行い、さらにその後に研磨スラリーNo.3(平均粒子径0.20μm)を使って上記条件下で第二研磨工程を行った。結果を下記表に示す。また、研磨前、第一研磨後、および第二研磨後の被研磨物の表面をそれぞれ日立ハイテクフィールディング社製S-4800型走査電子顕微鏡を使って、被研磨物の表面にAu蒸着を施した後、加速電圧5~10kV、倍率20000倍で撮影した写真を
図2~4に示した。
【0050】
【0051】
図3からは、第一研磨工程だけでは表面に凹凸がかなり残っていたことがわかる。そして
図4から、第二研磨工程によって平滑な表面が得られていることもわかる。
【0052】
以上の結果から、第一の研磨スラリーが含む研磨粒子の平均粒子径を、層間絶縁材料が含む無機粒子のそれ以上とし、かつ第二の研磨スラリーが含む研磨粒子の平均粒子径をそれ未満とすることで、十分に高速にしかも優れた平坦化を実現できることがわかった。