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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】免震ダクト装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/02 20060101AFI20231023BHJP
   F16L 3/18 20060101ALI20231023BHJP
   F16L 3/20 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F24F13/02 H
F24F13/02 A
F24F13/02 B
F24F13/02 F
F16L3/18 Z
F16L3/20 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020044805
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143814
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001834
【氏名又は名称】三機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】豊桑 健一郎
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-035165(JP,A)
【文献】特開2010-065910(JP,A)
【文献】特開2006-336892(JP,A)
【文献】特開2001-193998(JP,A)
【文献】特開2000-304341(JP,A)
【文献】特開平10-339386(JP,A)
【文献】特開平11-044382(JP,A)
【文献】特開2006-226517(JP,A)
【文献】特開2003-302094(JP,A)
【文献】特開2013-064427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F16L 3/18
F16L 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1構造物に固定されるダクト系統と第2構造物に固定されるダクト系統の間に介在される免震ダクト装置であって、
第1構造物に固定されるダクト系統の端部に一端が接続されるフレキシブルな第1ダクトと、
第2構造物に固定されるダクト系統の端部に一端が接続されるフレキシブルな第2ダクトと、
第1ダクトと第2ダクトの間に介在され、第1ダクト及び第2ダクトのそれぞれ他端が接続される2つの平行する短管端を有する短管と、
前記短管を、前記短管端が前記第1ダクトの一端または前記第2ダクトの一端に平行になるように吊り下げ支持する吊り構造とからなり、
前記吊り構造が、前記短管の軸方向に離れた2個所を吊り下げる2つの下吊バンドと、前記短管端と平行な2辺を有し、当該2辺それぞれに前記下吊バンドを移動自在に吊り下げ支持する長方形をなす矩形枠と、当該矩形枠を短管の軸方向に移動可能に吊り下げ支持する上吊バンドとを備えている、
免震ダクト装置。
【請求項2】
前記吊り構造が、第1構造物または第2構造物に固定され、略水平に延び、互いに平行で前記短管の軸方向に延び、前記矩形枠を構成する長方形の、前記短管端と直角の2辺の上方にある2本の第1レールと、
前記矩形枠の4交点から上方へ延長される4本の上吊バンドの上部に位置し、前記第1レールによって走行自在に支持される4つの第1ローラとを備えている、
請求項記載の免震ダクト装置。
【請求項3】
第1構造物に固定されるダクト系統と第2構造物に固定されるダクト系統の間に介在される免震ダクト装置であって、
第1構造物に固定されるダクト系統の端部に一端が接続されるフレキシブルな第1ダクトと、
第2構造物に固定されるダクト系統の端部に一端が接続されるフレキシブルな第2ダクトと、
第1ダクトと第2ダクトの間に介在され、第1ダクト及び第2ダクトのそれぞれ他端が接続される2つの平行する短管端を有する短管と、
前記短管を、前記短管端が前記第1ダクトの一端または前記第2ダクトの一端に平行になるように吊り下げ支持する吊り構造とからなり、
第1構造物または第2構造物に固定され、前記第1ダクト、前記第2ダクト、前記短管のそれぞれの中心軸が直線になる場合の上方に配置される第2レールと、
前記第1ダクト、第2ダクトを第2レールへ連結するスプリング機構を有するダクト吊り下げ部材とを備えている
震ダクト装置。
【請求項4】
吊バンドが短管を吊る部位、前記ダクト吊り下げ部材が第1ダクトを吊る部位、前記ダクト吊り下げ部材が第2ダクトを吊る部位には、
第1ダクト、第2ダクト、短管に各々鋼板からなるフランジ補強が設けられていることを特徴とする、
請求項に記載の免震ダクト装置。
【請求項5】
フレキシブルな前記第1ダクト、第2ダクトとも、その構成材をアルミガラスクロスと鋼製の補強材とし、中心軸に直交する断面が円形であることを特徴とする、
請求項1乃至の何れか1項に記載の免震ダクト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は免震ダクト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物などの構造物同士の間に介在されるダクトとしては、地震などによって構造物同士が相対的に変位したときでも損壊しないように、フレキシブル性を持たせた免震ダクトが知られている(特許文献1、2)。これらの免震ダクトは、ある程度の長さになると中間部が垂れ下がるので、垂れ下がりを防止するため、たとえば特許文献1では、ダクトの1または2個所をコイルばねを介して天井部に吊り下げることを提案している(特許文献1の図1図7参照)。
【0003】
他方、特許文献1の図8図9図13では、免震ダクトの両端に設けた建物に固定されるダクト系統末端と連結する連結枠に形成した貫通孔に吊り棒の両端を遊挿し、免震ダクト本体を吊り下げるコイルばねの上端を吊り棒に係止固定したものが開示されている。このものは、吊り棒が免震ダクト中心軸方向に移動可能であるので、免震ダクトの伸縮に対応して免震ダクト自体が変形しやすい。また、特許文献1の段落[0055]には、コイルばねが吊り棒上を移動可能にされたものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、免震ダクトの複数個所に設けた取り付け部に、吊り棒を遊嵌する貫通孔を形成し、貫通孔を鳩目金具で保護することにより、吊り棒に対して円滑な摺動を促進することが記載されている。また、免震ダクトを建物に固定されたほかのダクトに連結する連結枠に設けた吊り棒支持部に横方向に長い貫通孔を形成し、吊り棒の横方向の移動や角度を許容できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-302094号公報
【文献】特許第4762606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の免震ダクトは、地震発生時に伸縮や屈曲などの変形をすることにより、建物同士のずれに追従することができる。また、ダクトの途中を吊り下げることにより、垂れ下がりを防止することができる。しかしこのような免震ダクトは、それぞれの建物に固定される2つのダクト系統の末端位置に合わせて設計し特別にメーカーで製作する必要がある。とくに長い免震ダクトや高温のガスに対応する免震ダクトは、個別設計であることもあって、製造コストが高くなる。そして、従来の長い免震ダクトでは、フレキシブル部分が長くなり、蛇腹の一部がねじれてしまって風路を閉じたり急縮小させてしまうことが多い。
本発明は汎用性および免震機構が高く、製造コストを抑制しうる免震ダクト装置を提供することを課題とする。また、本発明はフレキシブル部位のねじれが生じずに免震しながら十分な内部風路を確保する免震ダクト装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の免震ダクト装置10、10Aは、第1構造物11に固定されるダクト系統12と第2構造物13に固定されるダクト系統14の間に介在される免震ダクト装置10、10Aであって、第1構造物11に固定されるダクト系統12の端部に一端が接続されるフレキシブルな第1ダクト15と、第2構造物13に固定されるダクト系統14の端部に一端が接続されるフレキシブルな第2ダクト16と、第1ダクト15と第2ダクト16の間に介在され、第1ダクト15及び第2ダクト16のそれぞれ他端が接続される2つの平行する短管端17b、17bを有する短管17と、前記短管17を、前記短管端が前記第1ダクト15の一端または前記第2ダクト16の一端に平行になるように吊り下げ支持する吊り構造18、23とからなることを特徴としている。
【0008】
このような免震ダクト装置10、10Aにおいては、前記吊り構造18、23が、前記短管17の軸方向に離れた2個所を吊り下げる2つの下吊バンド(下吊ローラユニット36)と、前記短管端17b、17bと平行な2辺(横レール28)を有し、該2辺(横レール28)それぞれに前記下吊バンド36を移動自在に吊り下げ支持する長方形をなす矩形枠25と、当該矩形枠25を短管17の軸方向に移動可能に吊り下げ支持する上吊りバンド(上吊ローラユニット32)とを備えているものが好ましい。
【0009】
さらに前記吊り構造23が、第1構造物11または第2構造物13に固定され、略水平に延び、互いに平行で前記短管17の軸方向(つまり前記矩形枠25の短管端17b、17bと直交する方向の2辺28と平行な方向)に延び、前記矩形枠25を構成する長方形の、前記短管端と直角の2辺(横レール28)の上方にある2本の第1レール26と、前記矩形枠25の4交点(四隅)から上方へ延長される4本の上吊バンド32の上部に位置し、前記第1レール26によって走行自在に支持される4つの第1ローラ29とを備えているものが好ましい。また、短管端17b、17bと平行な2辺を有し、それにより長方形を構成する前記矩形枠25の当該2辺に平行に沿って横レール28が設けられてもよく、前記下吊りバンド36が、それらの横レール28によって走行自在に支持される第2ローラ33を有するものであってもよい。
【0010】
また、第1構造物11または第2構造物13に固定され、前記第1ダクト15、前記第2ダクト16、前記短管17のそれぞれの中心軸が直線になる場合の上方に配置される第2レール38と、前記第1ダクト15、第2ダクト16を第2レール38へ連結するスプリング機構を有するダクト吊り下げ部材18とからなるものが一層好ましい。その場合、前記第2レール38が1本、2本の互いに平行に設けられた前記第1レール26間の中央部分に前記第1レール26と平行に設けられているものが一層好ましい。
【0011】
前記下吊バンド36が短管17を吊る部位、前記ダクト吊り下げ部材18が第1ダクト15を吊る部位、前記ダクト吊り下げ部材18が第2ダクト16を吊る部位には、第1ダクト15、第2ダクト16、短管17に各々鋼板からなるフランジ補強が設けられていることがさらに好ましい。フレキシブルな前記第1ダクト15、第2ダクト16とも、その構成材をアルミガラスクロスと鋼製の補強材とし、中心軸に直交する断面が円形であることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の免震ダクト装置は、第1ダクトと第2ダクトの間に短管を介在させていて、短管を第1ダクトの一端及び第2ダクトの一端の面に対して平行移動するようにしたので、短管によってフレキシブルである第1ダクトや第2ダクトがことさら捻じれることを防止できる。また、中間に短管が入るためつぶれに強くなる。そのため、既製の汎用材料を用いて現場にてフレキシブルなダクトとして組み立てても構造的に無理がなく、第1ダクトや第2ダクトは現地製造や調達が可能となり、製造コストを抑制することができる。さらに既製品を使用することにより、短納期の要望にも対応しうる。
【0013】
前記吊り構造が、短管の軸方向に離れた2個所を吊り下げる2つの下吊バンド(下吊ローラユニット)と、前記短管端と平行な2辺(横レール)を有し、当該2辺(横レール)それぞれに前記下吊バンドを移動自在に吊り下げ支持する長方形をなす矩形枠と、当該矩形枠25を短管17の軸方向に移動可能に吊り下げ支持する上吊りバンド(上吊ローラユニット)とを備えている場合は、短管を安定して水平支持しながら第1構造物と第2構造物の相対位置変異が発生しても、構造物からの固定された吊元と矩形枠との移動可能な上吊バンド同士の離間距離についての回転角の余弦定理から距離変化に対する復元移動の働きから、短管の水平回転の動きが矩形枠の水平回転の動きに倣い、矩形枠は回転しないよう自己保持することができ、第1ダクトおよび第2ダクトの変形を想定内の範囲に抑制しやすくなる。それにより第1ダクトおよび第2ダクトにかける負担を軽減できる。
【0014】
さらに前記吊り構造が、第1構造物または第2構造物に固定され、略水平に延び、互いに平行で前記短管の軸方向に延び、前記矩形枠を構成する長方形の、前記短管端と直角の2辺の上方にある2本の第1レールと、前記矩形枠の4交点から上方へ延長される4本の上吊バンドの上部に位置し、前記第1レールによって走行自在に支持される4つの第1ローラとを備えている場合は、略水平に延びてお互い平行で前記短管の軸方向(つまり前記枠体の短管端と直交する方向の2辺と平行な方向)に伸び前記矩形枠の短管端と直交する2辺の上方にある2本の第1レールと、前記矩形枠の4交点から上方へ延長される4本の上吊バンドの上部に位置し第1レールによって走行自在に支持される4つの第1ローラとからなる場合は、吊り下げ部材の水平方向の位置の変動に容易に対応することができ、第1ダクトおよび第2ダクトにかける負担を一層軽減できる。
【0015】
また、前記支持構造が、第1構造物または第2構造物に固定され、前記第1ダクト、前記第2ダクト、前記短管のそれぞれの中心軸が直線になる場合の上方に配置される第2レールと、前記第1ダクト、第2ダクトを第2レールへ連結するダクト吊り下げ部材とからなる場合は、第2レールからスプリング機構を有するダクト吊り下げ部材によって第1ダクトおよび第2ダクトを吊り下げているので、変位の大きな第1ダクト吊り下げ部材や第2ダクト吊り下げ部材の吊位置から伸縮して倣ってさまざまな方向に移動することができる。そのため、地震によって第1ダクトおよび第2ダクトにかかる負荷を一層軽減することができる。
【0016】
前記下吊バンドが短管を吊る部位、前記ダクト吊り下げ部材が第1ダクトを吊る部位、前記ダクト吊り下げ部材が第2ダクトを吊る部位に、第1ダクト、第2ダクト、短管に各々鋼板からなるフランジ補強が設けられている場合は、吊り下げることによる短管を構成する金属板、第1ダクト、第2ダクトを構成するフレキシブル材料のそれぞれの吊り下げ位置に応力集中する変形が生じず、応力が分散しそれによりさらに変形しにくいという好循環が発生する。そのためフランジ補強により一層安定して、かつ、無理な変形をしないように支持することができる。
【0017】
フレキシブルな前記第1ダクト、第2ダクトとも、その構成材をアルミガラスクロスと鋼製の補強材とし、中心軸に直交する断面が円形である場合は、ダクト系統や免震ダクト装置内部を流通するガス体が、200℃程度の高温でも耐熱は十分であり、現場での組み立ても容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1Aは本発明の免震ダクト装置の設置状況の概念を示す平面図、図1B図1AのI-I線断面図である。
図2】本発明の免震ダクト装置の実施形態を示す斜視図である。
図3図3Aおよび図3B図2の免震ダクト装置の平面図および側面図である。
図4図3BのIII-III線断面図である。
図5図5A図5Bおよび図5Cは吊りバンド(ローラユニット)の一例を示す斜視図、正面図および側面図である。
図6図6Aおよび図6Bは免震ダクト装置の作用を示す概略斜視図および概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1A図1Bに示す免震ダクト装置10は、第1構造物11(例えば外部スタンションなど)に固定される例えば熱排気ガスを流すダクト系統12と、第2構造物13(例えば熱排気ガスを内部で発生する工場建屋など)に固定される例えば熱排気ガスを流すダクト系統14間に介在されるものであり、それぞれフレキシブルな第1ダクト15および第2ダクト16と、それらの間に介在される短管17と、これらを吊り下げる吊り構造18とからなる。第1ダクト15および第2ダクト16の自由端には、第1構造物11に固定される末端である角丸ホッパ19と、第3構造物13に固定されるエルボに相当するチャンバの開口フランジ19がそれぞれ設けられている。この実施形態では第1ダクト15および第2ダクト16はそれぞれ短いダクト15a、16aを2個連結したものを採用し、連結部にフランジ15b、16bを施して吊れるようにしている。しかし長いダクトを用い中間外側にフランジ補強を施してもよい。
【0020】
各ダクト15a、16aは、キャンバス地を筒状に形成したものであり、内面にはアルミガラスクロスの被覆層を設けて耐熱性をもたせている。さらに形状保持のため、金属線を螺旋状に形成した支持材(図3Aの符号15c参照)を内面側に設けて張りを与えると共に、端部には断面L字状の金属板を円形に成形したフランジ15b、16bを取り付けている。キャンバス地としては、耐熱性を考慮して表面を金属であるアルミ箔で被覆し、生地として耐熱性のあるガラス繊維やロックウール繊維などを織ったもので、厚さ5~30mm程度のものが好ましい。キャンバス地を円筒状に縫製することにより、ダクト15a、16aを形成することができる。ダクト15a、16aは支持材15cに沿って蛇腹を形成しているので軸方向に縮むことができ、縮んだ状態から伸びることができる。ある程度縮んだ状態で設置するのが好ましい。なお、両端のフランジ15b、15b(16b、16b)の間には、伸びを制限するワイヤ(図3Bの符号15d参照)を連結して、キャンバス地に過大な引っ張り力が加わるのを防止するのが好ましい。
【0021】
短管17は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス、アルミニウムなどの耐候性および耐熱性を有する金属板を円筒状に成形したものが用いられる。耐熱性は、たとえば150℃~250℃程度の空気に耐えうる事が望ましい。短管17の端部には、ダクト15a、16aのフランジ15b、16bと連結するためのフランジ17aが設けられている。そして上記の第1ダクト15、第2ダクト16および短管17は、図1Bに示すように、いずれかの上端の中央を吊り下げることにより、中央部が垂れさがらないよう支持することができる。この設置状況の概要では、短管17の両端のフランジ17aのそれぞれ上端中央部を吊り下げている。このように軸方向に離れた2か所を吊り下げると、ダクトの吊り下げが安定する。
【0022】
吊り構造18にはワイヤ20や小判型の丸カン、スィーベルジョイントなどが用いられる。途中にスプリング21を介在させると、地震のときの上下動の衝撃を緩和することができ、さらに構造物11、13の間の相対的な上下左右の変位が生じたときも、力を吸収して変位を許すのでダクトを保護することができる。スプリング21としては、コイルスプリングが好ましい。スプリング21による振動の吸収は、とくに高速の振動に追従できる利点がある。ワイヤ20の上端は、いずれか一方の構造物11、13の天井構造などに取り付けるが、ダクト15、16や短管17の軸心に対し平面視で直角(ねじれの位置)に延びるビーム22によって吊り下げ支持してもよい。その場合は吊り下げ位置を比較的自由に選択できる。
【0023】
前記設置状況の概要では、短管17の両端のフランジ17aを吊り下げているが、この吊り構造に代えて、あるいはこの吊り構造に加えて、第1ダクト15の長さ方向の中間部のフランジ15bや第2ダクト16の長さ方向の中間部のフランジ16bを吊り下げることもできる。吊り下げ個所が多いと、ダクト全体を直線状に支持することができるので好ましい。
【0024】
つぎに図2~4を参照して本発明の免震ダクト装置の具体的な実施形態を示す。図2~4の免震ダクト装置10Aでは、吊り構造23にダクトの軸方向Xと軸に対して直角の横方向Yの移動を許すXY走行機構を採用し、免震ダクト装置10Aの短管17の短管端が第1構造物11に固定されるダクト系統の末端部19や第2構造物13に固定されるダクト系統の末端部19と平行が保てるようにしている。この吊り構造23は、第1構造物11または第2構造物13に固定されダクトの上方で横方向Yに延びる2本一対の片持ち梁24と、その片持ち梁24によって吊り下げられている矩形枠25と、片持ち梁24の上部に載置されダクトの軸方向Xに沿って延びる延長材38(第2レール)とを備えている(図3A参照)。片持ち梁24の上には、軸方向に延びる2本一対の縦レール(第1レール)26が設けられている。矩形枠25は軸方向に延びる2本の短い縦材27と、それらの両端を連結して横方向に延びる2本の横材(横レール)28とからなる。
【0025】
図4に示すように、1本の縦レール26には、2個の第1ローラ29が転動自在に係合しており、第1ローラ29は略円形の吊り枠30によって回転自在に支持されている(図5A参照)。吊り枠30の下端から下方に向けて吊り軸31が延びており、その吊り軸31の下部は前記矩形枠25の縦材27に連結されている。吊り軸31の上部と下部とはスィーベルジョイントによって軸回りに回動自在に連結されている。このような第1ローラ29と吊り枠30と吊り軸31の組み合わせ(以下、ローラユニット32という)としては、市販のローラバンドを上下逆したものを使用することができ、それにより製造コストを低くすることができる(図5A参照)。
【0026】
それぞれの縦レール26に2個ずつ係合された、全体として4個のローラユニット32の吊り軸31は前述のように矩形枠25の4交点近傍位置の縦材27に連結されており、それにより矩形枠25は、4個のローラユニット32によって安定して吊られ、さらに軸方向(X方向)に走行自在である。
【0027】
同様に矩形枠25の横材(横レール)28には、それぞれ第2ローラ33と、吊り枠34と、吊りボルト35からなるローラユニット36が横方向(Y方向)に走行自在に吊られている。そして吊り軸35の下端は、短管17の両端のフランジ17aの中央上端に連結されている。したがって短管17は、X方向の第1ローラ29の作動範囲内およびY方向の第2ローラ33の作動範囲内でXY方向に移動自在に吊られることになる。また、短管17の上端中央bの端部が吊られていることにより、短管17は安定して吊られる。
【0028】
また、縦レール26も横レール28も、例えば山形鋼で形成されそのL字断面の一面をほかの鋼材に固定することで上方は刃の端部のようになり接触面積が小さくなっている。ここにローラユニット32やローラユニット36の第1ローラ29や第2ローラ33が転がりながら接触するので、無理な力がかかる前にローラユニット32やローラユニット36はかかり始めの小さな力により縦レール26や横レール28上を移動する。
【0029】
図6Aおよび図6Bを参照して、短管端17b、17bと、矩形枠25を構成する平行な2辺(横材)28とが平行な状態の場合、それぞれが直交する短管端17b間距離と同じ上側のローラユニット32間距離(矩形枠との連結部の距離、図6AのL1)と縦レール26上の2つの上側のローラユニット32の(ローラ29の)接触点間距離L1’とは同じ距離である。ところが、短管17がゆすられて中心軸が水平に角度θだけ回転し、そのまま下側のローラユニット36を介して矩形枠25を水平に回転角度θ回転するよう伝達し矩形枠25が回転移動したとすると、上側のローラユニット32間距離L1は不変なものの、矩形枠25の辺である縦材27と縦レール26とのなす角度がθとなり、縦レール26と2つのローラユニット32の接触点間距離L1’が余弦定理から、L1’=1/cosθ×L1となり、距離が一致しないように長くなろうとする。
【0030】
しかし縦材27に取り付けられるローラユニット32同士の距離と、縦レール26に接するローラユニット32同士の間の接点間の距離とが上記余弦定理から相対的に変わろうと2つの上側のローラユニット32と縦レール26の刃との接触点間を広げようと無理な力がかかり始めると、その前にその無理な力が小さいうちに摩擦が小さいので、上側のローラユニット32のローラ29が転がって、矩形枠25と縦レール26と上側のローラユニット32とで形成する矩形とが平行になるように上側のローラユニット32が移動して逃げていく。そのため、結局相対的に水平回転しないように自己保持がかかる。
【0031】
上記では、短管17がゆすられて中心軸が水平に角度θ回転しそのまま下側のローラユニット36を介して矩形枠25を水平に回転角度θ回転するよう伝達するとしたが、短管17は、矩形枠25の横レール28に2つの下側のローラユニット36で吊られているので、短管端17b、17bとの間の距離と、2つの第2ローラ33で各2つの横レール28に吊られる接触点間との距離とが、水平回転角度の余弦定理の理屈で変わろうと無理な力がかかり始めると、上記と同様に、距離が大きく変わる前に第2ローラ33が動くので、矩形枠25の長手の辺でもある横レール28と2つの第2ローラ33間を結ぶ線との回転角度が直交するように移動する。この動きにより、短管端17b、17bが第1ダクト15の一端または第2ダクト16の一端に平行になるように吊り下げ支持され続けるのである。
【0032】
図2の免震ダクト装置10Aでは、前述のXY走行機構のほか、図1Bと同様のワイヤ20とスプリング21などによるシンプルな伸縮自在の吊り構造18を第1ダクト15や第2ダクト16の吊り部材として合わせて採用している。すなわち2本の片持ち梁24の上に、ダクトの軸方向に延びる延長材38を取り付け、その延長材38の端部と中間部の2個所に、スプリング21や小判型の丸カン39、スィーベルジョイント40などからなる吊り構造18を介して第1ダクト15の軸方向の中央部のフランジ15bおよび第2ダクト16の軸方向の中央部のフランジ16bを吊り下げている。
【0033】
それにより、常時(外部から負荷がかかっていないとき)は、第1ダクト15、短管17および第2ダクト16の全体が延長材38に沿ってその下方に安定して保持されることになる(図3A図3B図4参照)。また、延長材38を細い棒材で構成し、片持ち梁24から長く伸び出しているので、延長材38自体の撓みを免震に利用することができる。そして、地震によって第1構造物11と第2構造物13との相対位置が変位した場合は、吊り構造18の途中にスプリング21が介在しているので、地震のときの上下動の衝撃を緩和する。また、相対的な上下左右の変位が生じたときも、力を吸収して変位を許すので、ダクトを保護することができる。
【0034】
上記のように構成される免震ダクト装置10、10Aは、地震が発生して図3A図3Bの第1構造物11と第2構造物12とが相対的に離れたり近づいたりする変位が生じても、また、上下・左右にずれる相対的な変位が生じても、フレキシブルな第1ダクト15、第2ダクト16がそれらの変位をスムーズに吸収することができる。そして図2の免震ダクト装置10Aでは、短管17を吊り下げている矩形枠25が前後左右にスムーズに移動できるので、振幅の大きい地震によって質量が大きい短管17が振り回されても安全である。また、上下方向の変位に対しては、延長材38の撓みで追従することができ、とくに高い振動数の地震に対しても、スプリング20が機敏に追従するので一層安全である。
【0035】
以上、いくつかの実施形態に関して図面に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。例えば図2~4の実施形態では、ダクトの中間部をXY方向に移動自在に吊り下げているが、X方向(軸方向)のみに移動自在であってもよく、Y方向(横方向)のみに移動自在であってもよい。また、図2~4の実施形態では、短管17は1個だけであるが、長いダクトでは2個以上設けることもできる。
【符号の説明】
【0036】
10、10A 免震ダクト装置
11 第1構造物
12 配管系統
13 第2構造物
14 配管系統
15 第1ダクト
15a 短いダクト
15b フランジ
15c 延びを制限するワイヤ
16 第2ダクト
16a 短いダクト
16b フランジ
17 短管
17a フランジ
17b 短管端
18 吊り構造
19 固定部
20 ワイヤ
21 スプリング
23 吊り構造
24 片持ち梁
25 矩形枠
26 縦レール(第1レール)
27 縦材
28 横材(横レール)
29 第1ローラ
30 吊り枠
31 吊り軸
32 (上側の)ローラユニット
33 第2ローラ
34 吊り枠
35 吊り軸
36 (下側の)ローラユニット
38 延長材(第2レール)
39 小判型の丸カン
40 スィーベルジョイント
L1 上側のローラユニット間距離
L1’ 上側のローラユニットの接触点間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6