IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ステージ装置 図1
  • 特許-ステージ装置 図2
  • 特許-ステージ装置 図3
  • 特許-ステージ装置 図4
  • 特許-ステージ装置 図5
  • 特許-ステージ装置 図6
  • 特許-ステージ装置 図7
  • 特許-ステージ装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ステージ装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/68 20060101AFI20231023BHJP
   B23Q 1/62 20060101ALI20231023BHJP
   B23Q 1/28 20060101ALI20231023BHJP
   G03F 9/00 20060101ALI20231023BHJP
   G12B 5/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01L21/68 K
B23Q1/62 C
B23Q1/28 Z
G03F9/00 H
G12B5/00 T
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020062981
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163835
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 龍太
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208373(JP,A)
【文献】特開平5-77126(JP,A)
【文献】特開2002-130281(JP,A)
【文献】国際公開第06/068233(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/68
B23Q 1/62
B23Q 1/28
G03F 9/00
G12B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1移動体と、
前記第1移動体をX軸方向に駆動する、Y軸方向に移動可能に構成されたX軸駆動部と、
前記第1移動体のX軸方向の移動を案内し、Y軸方向に移動可能に構成された第2移動体と、
前記X軸駆動部または前記第2移動体をY軸方向に駆動するY軸駆動部と、
前記X軸駆動部と前記第2移動体とのX軸方向の相対移動を拘束せず、Y軸方向の相対移動を両者が非接触の状態で拘束する拘束ユニットと、
を備えることを特徴とするステージ装置。
【請求項2】
前記X軸駆動部と前記第2移動体とは、互いに独立して支持されることを特徴とする請求項1に記載のステージ装置。
【請求項3】
前記拘束ユニットは、エアの吸引力、エアの反発力、磁気の吸引力または磁気の反発力により、前記X軸駆動部と前記第2移動体とのY軸方向の相対移動を拘束することを特徴とする請求項1または2に記載のステージ装置。
【請求項4】
前記X軸駆動部と前記Y軸駆動部とは、互いに独立して支持されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のステージ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を位置決めするためのステージ装置が知られている。従来では、第1移動体と、第1移動体をX軸方向に駆動する駆動体と、第1移動体のX軸方向の移動を案内し、Y軸方向に移動可能に構成された第2移動体と、を備えるステージ装置が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-101427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のステージ装置では、X軸駆動部は、第2移動体に支持される。そのため、X軸駆動部が第1移動体を駆動させたときの反力は第2移動体に伝搬しうる。
【0005】
ところで、ステージ装置をより大きい対象物の位置決めに使用したいという要求がある。この場合、ステージ装置を大型化する必要があり、それに伴ってX軸駆動部も大型化し、X軸駆動部が第1移動体を駆動させたときの反力も大きくなる。従来のステージ装置をそのまま大型化すると、この大きい反力が第2移動体に伝搬してしまう。これは、第2移動体の構造部材に起因するヒステリシスおよび振動を誘発する。すなわち、高精度化への妨げとなる。
【0006】
また、ステージ装置は、半導体デバイスの製造に使用される場合がある。半導体デバイスのデザインルールの微細化や重ね合わせにより、または積層のニーズにより、製造に使用されるステージ装置には、さらなる高精度化が求められている。
【0007】
いずれにせよ、ステージ装置には高精度化が求められている。
【0008】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ステージ装置の高精度化を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のステージ装置は、第1移動体と、第1移動体をX軸方向に駆動する、Y軸方向に移動可能に構成されたX軸駆動部と、第1移動体のX軸方向の移動を案内し、Y軸方向に移動可能に構成された第2移動体と、X軸駆動部または第2移動体をY軸方向に駆動するY軸駆動部と、X軸駆動部と第2移動体とのX軸方向の相対移動を拘束せず、Y軸方向の相対移動を両者が非接触の状態で拘束する拘束ユニットと、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ステージ装置の高精度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るステージ装置を示す図である。
図2図2(a)~(c)は、図1のステージ装置を示す図である。
図3図2(a)のA-A線断面図である。
図4図1のガイドビームの一端とその周辺を示す斜視図である。
図5】拘束ユニットの一例を説明する図である。
図6】拘束ユニットの別の例を説明する図である。
図7】拘束ユニットのさらに別の例を説明する図である。
図8】拘束ユニットのさらに別の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0014】
本明細書において、「部材Aが部材Bと非接触」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に非接触であり、かつ、部材Aと部材Bが間接的にも非接触である(すなわち他の部材を介して間接的にも接続されていない)ことをいう。
【0015】
図1は、実施の形態に係るステージ装置100の斜視図である。説明の便宜上、図示のように、盤面10a(後述)に平行なある方向をX軸方向、X軸方向に直交する盤面10aに平行な方向をY軸方向、両者に直交する(すなわち盤面10aに直交する)方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定める。図2(a)~(c)は、図1のステージ装置100を示す図である。図2(a)はステージ装置100の上面図、図2(b)はX軸方向に見たステージ装置100の側面図、図2(c)はY軸方向に見たステージ装置100の側面図である。
【0016】
ステージ装置100は、XYステージと称され、対象物をX軸方向、Y軸方向に位置決めする。ステージ装置100は、定盤10と、X軸方向に移動可能に構成された第1移動体12と、第1移動体12のX軸方向の移動を案内するとともにY軸方向に移動可能に構成された第2移動体14と、第1移動体をX軸方向に駆動する第1X軸駆動部16および第2X軸駆動部18と、第2移動体をY軸方向に駆動する第1Y軸駆動部20および第2Y軸駆動部22と、第1Y軸ガイド24と、第2Y軸ガイド26と、X軸駆動部と第2移動体とのY軸方向の相対移動を非接触で拘束する4つの拘束ユニット88と、を備える。
【0017】
定盤10は、平面視で矩形状の部材である。定盤10の上面である盤面10aには、平面加工が施される。また、Y軸方向に沿って延在する第1側面10bにも、平面加工が施される。盤面10aおよび第1側面10bは、後述するようにエアベアリングが滑走する滑走面として機能する。
【0018】
第1Y軸駆動部20は、第1Y軸固定子28と、第1Y軸可動子30と、を含む。第1Y軸固定子28は、長手方向に直交する断面が円形状である細長い棒状の部材であり、複数の円柱状の磁石を連結して構成される。第1Y軸固定子28は、軸線方向がY軸方向と一致するよう配置され、定盤10の第1側面10bに固定された図示しない一対の保持部材により両端が保持される。すなわち、第1Y軸固定子28は、平面視において定盤10の外側に配置される。
【0019】
第1Y軸可動子30は、ハウジング32と、コイル(不図示)と、を含む。ハウジング32には、Y軸方向に貫通する断面が円形の挿通孔が形成されており、第1Y軸固定子28が挿通される。コイルは、第1Y軸固定子28を取り囲むよう挿通孔内に配置され、挿通孔の周面に固定される。コイルに電流が流れると、コイルと第1Y軸固定子28との間に電磁力が発生し、その電磁相互作用によってコイルひいては第1Y軸可動子30がY軸方向に移動する。
【0020】
第2Y軸駆動部22は、第2Y軸固定子34と、第2Y軸可動子36と、を含む。第2Y軸固定子34、第2Y軸可動子36は、第1Y軸固定子28、第1Y軸可動子30と同様に構成される。なお、第2Y軸固定子34は、その軸線方向がY軸方向と一致し、かつ、第1Y軸固定子28と平行に並ぶよう配置される。また、第2Y軸固定子34は、盤面10a上に固定された一対の保持部材(不図示)により両端が支持される。
【0021】
第2移動体14は、第2可動部38と、複数のY軸ヨーエアベアリング40と、ガイドビーム42と、複数のY軸リフトエアベアリング44と、を含む。
【0022】
第2可動部38は、板状の部材であり、2つの主面がX軸方向を向くよう配置される。第2可動部38は、第1Y軸可動子30の下方に設けられ、第1Y軸可動子30に連結される。したがって、第2可動部38は、第1Y軸可動子30とともに移動する。第2可動部38の下側部分は、定盤10の第1側面10bと対向する。
【0023】
複数のY軸ヨーエアベアリング40は、定盤10の第1側面10bと対向する第2可動部38の下側部分に固定され、第1側面10bに対して空気などの気体を噴出する。その反発力により、第2可動部38と第1側面10bとの非接触状態が維持される。
【0024】
ガイドビーム42は、長尺状の部材であり、長手方向がX軸方向に一致するように、第1X軸固定子52(後述)と第2X軸固定子58(後述)との間に配置される。ガイドビーム42は、一端が第2可動部38に連結され、他端が第2Y軸可動子36に連結される。ガイドビーム42は、X軸方向に直交する断面の形状が凹形を有する。詳しくは、ガイドビーム42は、底壁46と、第1側壁48と、第2側壁50と、を含む。底壁46は、X軸方向に長い平板状の部材であり、2つの主面がZ軸方向を向くよう設けられる。第1側壁48は、X軸方向に長い立壁であり、底壁46の上面(すなわち一方の主面)のY軸方向の一端から立設する。第2側壁50は、第1側壁48と同様、X軸方向に長い立壁であり、第1側壁48とY軸方向で対向するように底壁46の上面のY軸方向の他端から立設する。
【0025】
第1側壁48の外側の面、すなわち第2側壁50と対向する面とは反対側の面は、平面加工が施され、エアベアリングが滑走するための滑走面として機能する。以下、第1側壁48の外側の面を第1滑走面48aと呼ぶ。同様に、第2側壁50の外側の面は、平面加工が施され、エアベアリングが滑走するための滑走面として機能する。以下、第2側壁50の外側の面を第2滑走面50aと呼ぶ。
【0026】
複数のY軸リフトエアベアリング44は、ガイドビーム42に固定されている。Y軸リフトエアベアリング44は、定盤10の盤面10aに対して気体を噴出する。その反発力によってY軸リフトエアベアリング44ひいてはガイドビーム42は、盤面10aと非接触のまま、詳しくは盤面10aとの間に数μm程度の隙間を介して、Z軸方向に支持される。
【0027】
第1X軸駆動部16は、第1X軸固定子52と、第1X軸可動子54と、を含む。第1X軸固定子52は、第1Y軸固定子28や第2Y軸固定子34と同様に構成される。第1X軸固定子52は、軸線方向がX軸方向と一致するよう配置され、第1支持部材56により両端が支持される。第1X軸可動子54は、第1Y軸可動子30や第2Y軸可動子36と同様に構成され、第1X軸固定子52との電磁相互作用によってX軸方向に移動する。
【0028】
第2X軸駆動部18は、第2X軸固定子58と、第2X軸可動子60と、第2支持部材62と、を含む。第2X軸固定子58、第2X軸可動子60はそれぞれ、第1X軸固定子52、第1X軸可動子54と同様に構成される。第2X軸固定子58は、軸線方向がX軸方向と一致し、かつ、第1X軸固定子52と平行に並ぶよう配置され、第2支持部材62により両端が支持される。
【0029】
図3は、図2(a)のA-A線断面図である。第1移動体12は、第1可動部64と、複数のX軸ヨーエアベアリング66と、複数のX軸リフトエアベアリング68と、ステージ70と、を含む。第1可動部64は、四角筒状の部材であり、ガイドビーム42が挿通される。第1可動部64は、底壁72と、上壁74と、第1側壁76と、第2側壁78と、を含む。第1側壁76はガイドビーム42の第1滑走面48aと対向し、第2側壁78はガイドビーム42の第2滑走面50aと対向する。第1側壁76の外側の面には、図示しない接続部材を介して第1X軸可動子54が連結され、第2側壁78の外側の面には、図示しない接続部材を介して第2X軸可動子60が連結される。したがって、第1可動部64は、第1X軸可動子54および第2X軸可動子60とともに移動する。
【0030】
複数のX軸ヨーエアベアリング66は、第1側壁76の内面(すなわち第2側壁78と対向する面)76a、第2側壁78の内面(すなわち第1側壁76と対向する面)78aに固定され、ガイドビーム42の第1滑走面48a、第2滑走面50aに対して気体を噴出する。また、複数のX軸リフトエアベアリング68は、底壁72の下面72aに固定され、盤面10aに対して気体を噴出する。第1可動部64は、X軸ヨーエアベアリング66およびX軸リフトエアベアリング68が気体を噴出することによる反発力によって、ガイドビーム42および盤面10aと非接触のまま、詳しくはガイドビーム42および盤面10aとの間に数μm程度の隙間を介して、Y軸方向およびZ軸方向に支持される。
【0031】
ステージ70は、第1可動部64に固定される。ステージ70には、例えば、半導体ウェハなどの加工対象物等が載せられる。
【0032】
図1図2(a)~(c)に戻り、第1Y軸ガイド24は、第1Y軸ガイドレール80と、2つの第1スライダ82と、を含む。第1Y軸ガイドレール80は、延在方向がY軸方向に一致するよう盤面10a上に固定される。2つの第1スライダ82はそれぞれ、複数の転動体を含み、第1Y軸ガイドレール80に沿ってY軸方向に移動する。
【0033】
第2Y軸ガイド26は、第2Y軸ガイドレール84と、2つの第2スライダ86と、を含む。第2Y軸ガイドレール84、第2スライダ86はそれぞれ、第1Y軸ガイドレール80、第1スライダ82と同様に構成される。なお、第2Y軸ガイドレール84は、延在方向がY軸方向に一致し、かつ、第1Y軸ガイドレール80と平行に並ぶよう配置される。
【0034】
第1X軸固定子52を支持する2つの第1支持部材56の一方は、第1Y軸ガイド24の第1スライダ82に支持され、他方は、第2Y軸ガイド26の第2スライダ86に支持される。つまり、第1支持部材56ひいては第1X軸駆動部16は、Y軸方向に移動可能に構成される。
【0035】
同様に、第2X軸固定子58を支持する2つの第2支持部材62の一方は、第1Y軸ガイド24の第1スライダ82に支持され、他方は、第2Y軸ガイドの第2スライダ86に支持される。つまり、第2支持部材62ひいては第2X軸駆動部18は、Y軸方向に移動可能に構成される。
【0036】
ここで、第1移動体12、第2移動体14、X軸駆動部、Y軸駆動部の支持についてまとめる。
【0037】
(i)第1移動体12は、第2移動体14、X軸駆動部およびY軸駆動部には直接的にも間接的(すなわち他の部材を介しても)支持されない。第1移動体12は、定盤10に直接的に支持される。具体的には、第1移動体12はX軸リフトエアベアリング68から噴出される気体の反発力によって、定盤10と非接触の状態で定盤10に支持される。
【0038】
(ii)第2移動体14は、第1移動体12、X軸駆動部およびY軸駆動部には直接的にも間接的にも支持されない。第2移動体14は、定盤10に直接的に支持される。具体的には、第2移動体14は、複数のY軸リフトエアベアリング44から噴出される気体の反発力によって、定盤10と非接触の状態で、定盤10に支持される。
【0039】
(iii)X軸駆動部は、第1移動体12、第2移動体14およびY軸駆動部には直接的にも間接的にも支持されない。X軸駆動部は、定盤10に直接的に支持されるY軸ガイドを介して、定盤10に支持される。
【0040】
(iv)Y軸駆動部は、第1移動体12、第2移動体14およびX軸駆動部には直接的にも間接的にも支持されない。Y軸駆動部は、定盤10に直接的に支持される図示しない保持部材を介して、定盤10に支持される。
【0041】
以上のように、第1移動体12、第2移動体14、X軸駆動部およびY軸駆動部は、互いに独立して、言い換えると共通の部材や互いを介さずに、定盤10に支持される。
【0042】
図4は、ガイドビーム42の一端とその周辺を示す斜視図である。拘束ユニット88は、X軸駆動部と第2移動体14とのX軸方向の相対移動は拘束せずに、X軸駆動部と第2移動体14のY軸方向の相対移動を拘束する。拘束ユニット88は特に、X軸駆動部と第2移動体14とが非接触の状態で、より具体的には、X軸駆動部と第2移動体14とが直接接触せず、かつ、他の部材を介して接続されることもなく、Y軸方向の相対移動を拘束する。
【0043】
図5は、拘束ユニット88の一例を説明する図である。図5は、ステージ装置100の上面図である。図5では、第1移動体12やY軸駆動部の表示を省略している。拘束ユニット88は、第1磁石90と、第2磁石92と、磁性体93と、を含む。磁石90,92は、永久磁石であっても電磁石であってもよい。第1磁石90は、X軸駆動部に固定される。図5では、ガイドビーム42と対向する支持部材の側面に固定されている。第2磁石92および磁性体93は、第2移動体14に固定される。図5では、支持部材と対向するガイドビーム42の側面に固定されている。
【0044】
磁性体93は、第1磁石90とY軸方向に対向する。なお、磁性体93は、X軸駆動部に固定され、第2磁石92とY軸方向に対向してもよい。いずれにせよ、磁性体93と磁石とがY軸方向に引き合い、これにより、X軸駆動部と第2移動体14とがY軸方向に互いに引き合い、X軸駆動部と第2移動体14とのY軸方向の相対移動が拘束される。つまり、本実施の形態の拘束ユニット88は、磁気の吸引力により、X軸駆動部と第2移動体14とのY軸方向の相対移動を拘束する。Y軸方向の相対移動が拘束されることにより、Y軸駆動部に駆動されて第2移動体14がY軸方向に移動すると、第2移動体14に追従してX軸駆動部もY軸方向に移動する。
【0045】
また、第1磁石90と、第2磁石92とは、同じ磁極がY軸方向に対向するように固定される。図5では、S極同士が対向するように固定されている。同じ磁極がY軸方向に対向することで、第1磁石90と第2磁石92とはY軸方向に反発し合う。この反発力により、第1磁石90ひいてはX軸駆動部と、第2磁石92ひいては第2移動体14との非接触状態が維持される。
【0046】
一方、X軸駆動部と第2移動体14とは、X軸方向の相対移動は拘束されておらず、また、互いに独立して支持されるため、X軸駆動部により第1移動体12を駆動させたときの反力は、第2移動体14に伝搬されない。
【0047】
以上のように構成されたステージ装置100の動作を説明する。
第1Y軸駆動部20の第1Y軸可動子30のコイルと、第2Y軸駆動部22の第2Y軸可動子36のコイルに電流が供給されると、各コイルとY軸固定子との間に電磁力が発生し、その電磁相互作用によってY軸可動子ひいては第2移動体14(および第1移動体12)がY軸方向に移動する。第1X軸駆動部16の第1X軸可動子54のコイルと、第2X軸駆動部18の第2X軸可動子60のコイルに電流が供給されると、各コイルとX軸固定子との間に電磁力が発生し、その電磁相互作用によってX軸可動子ひいては第1移動体12がX軸方向に移動する。このように第1移動体12および第2移動体14を移動させることにより、第1移動体12のステージ70をXY方向に移動させ、ステージ70に載置される対象物をXY方向に位置決めする。第1X軸駆動部16および第2X軸駆動部18と第2移動体14とは、拘束ユニット88によりY軸方向の相対移動が拘束されているため、第2移動体14のY軸方向の移動にともなって第1X軸駆動部16および第2X軸駆動部18もY軸方向に移動する。
【0048】
以上説明した実施の形態に係るステージ装置100によると、X軸駆動部と第2移動体14とのX軸方向の相対移動は拘束されず、Y軸方向の相対移動が非接触で拘束され、さらにX軸駆動部と第2移動体とは互いに独立して支持される。これにより、第2移動体14のY軸方向の移動に追従してX軸駆動部をY軸方向に移動させつつも、X軸駆動部により第1移動体12を駆動させたときの反力が第2移動体14(特に第2可動部38)に伝搬するのが抑止される。そのため、第2可動部38の構造部材に起因するヒステリシスおよび振動が発生しなくなる、あるいはその発生が抑止される。つまり、より高精度なステージ装置100が実現される。また、反力が第2可動部38に伝搬するのが抑止されるため、その反力による第2可動部38の振動が比較的早く収まる。これにより、ステージ装置100を用いた生産のスループットが向上する。
【0049】
以上、実施の形態にステージ装置について説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下変形例を示す。
【0050】
(変形例1)
図6は、拘束ユニット88の別の例を説明する図である。図6は、図5に対応する。本変形例では、拘束ユニット88は、エアパッド96である。エアパッド96は、X軸駆動部および第2移動体14の一方に固定される。図6では、エアパッド96は、ガイドビーム42と対向する支持部材の側面に固定される。エアパッド96は、ガイドビーム42との隙間が微小になるように、スペーサ98を介して支持部材に固定されてもよい。エアパッド96は、ガイドビーム42の側面を向いた吸引口96aおよび噴出口96bを有する。エアパッド96は、吸引口96aからエアを吸引する。この吸引力により、X軸駆動部と第2移動体14とのY軸方向の相対移動を拘束される。
【0051】
また、エアパッド96は、図示しない給気系から供給される高圧の気体を噴出口96bからガイドビーム42に向けてY軸方向に噴出する。その反発力により、X軸駆動部と第2移動体14との非接触状態が維持される。
【0052】
本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0053】
(変形例2)
図7は、拘束ユニット88のさらに別の例を説明する図である。図7は、図5に対応する。第1X軸駆動部16と第2X軸駆動部18とは、一体となってY軸方向に移動するように、接続部材94によって互いに接続されている。図7では、第1支持部材56と第2支持部材62とが、接続部材94によって接続されている。
【0054】
拘束ユニット88は、第1磁石90と、第2磁石92と、を含む。第1磁石90は、X軸駆動部に固定される。図7では、ガイドビーム42と対向する支持部材の側面に固定されている。第2磁石92は、第2移動体14に固定される。図7では、支持部材と対向するガイドビーム42の側面に固定されている。第1磁石90と、第2磁石92とは、同じ磁極がY軸方向に対向するように固定される。図7では、S極同士が対向するように固定されている。これにより、第1磁石90と第2磁石92とは、Y軸方向に反発し合う。
【0055】
第2移動体14が第1X軸駆動部16側に移動すると、第1支持部材56ひいては第1X軸駆動部16は、磁石の反発力を介してガイドビーム42(第2移動体14)に押され、第2移動体14とともに移動する。第1X軸駆動部16と接続された第2X軸駆動部18も、同じ向きに移動する。第2移動体14が第2X軸駆動部18側に移動すると、第2支持部材62ひいては第2X軸駆動部18は、磁石の反発力を介してガイドビーム42(第2移動体14)に押され、第2移動体14とともに移動する。第2X軸駆動部18と接続された第1X軸駆動部16も、同じ向きに移動する。
【0056】
つまり、本変形例では、磁気の反発力を用いて、X軸駆動部と第2移動体14とのY軸方向の相対移動を拘束する。
【0057】
本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0058】
(変形例3)
図8は、拘束ユニット88のさらに別の例を説明する図である。図8は、図7に対応する。
【0059】
拘束ユニット88は、X軸駆動部および第2移動体14の一方に固定されるエアパッド96を含む。図8では、エアパッド96は、ガイドビーム42と対向する支持部材の側面に固定されている。エアパッド96は、噴出型のエアパッドである。エアパッド96は、図示しない給気系から供給される高圧の気体をガイドビーム42に向けてY軸方向に噴出し、ガイドビーム42との間の微小な隙間に高圧の気体層を形成する。なお、エアパッド96は、ガイドビーム42の側面に固定されてもよい。
【0060】
第2移動体14が第1X軸駆動部16側に移動すると、第1支持部材56ひいては第1X軸駆動部16は、気体層を介してガイドビーム42(第2移動体14)に押され、第2移動体14とともに移動する。第1X軸駆動部16と接続された第2X軸駆動部18も、同じ向きに移動する。第2移動体14が第2X軸駆動部18側に移動すると、第2支持部材62ひいては第2X軸駆動部18は、気体層を介してガイドビーム42(第2移動体14)に押され、第2移動体14とともに移動する。第2X軸駆動部18と接続された第1X軸駆動部16も、同じ向きに移動する。
【0061】
つまり、本変形例では、エアの反発力を用いて、X軸駆動部と第2移動体14とのY軸方向の相対移動を拘束する。
【0062】
本変形例によれば、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0063】
(変形例4)
実施の形態では、Y軸駆動部が第2移動体14をY軸方向に駆動する場合について説明したが、これには限定されず、Y軸駆動部は、X軸駆動部をY軸方向に駆動してもよい。この場合、Y軸駆動部の可動子とX軸駆動部とが連結される。Y軸駆動部に駆動されてX軸駆動部がY軸方向に移動すると、拘束ユニット88によりX軸駆動部とのY軸方向の相対移動が拘束された第2移動体は、X軸駆動部とともにY軸方向に移動する。
【0064】
上述した実施の形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0065】
12 第1移動体、 14 第2移動体、 16 第1X軸駆動部、 18 第2X軸駆動部、 20 第1Y軸駆動部、 22 第2Y軸駆動部、 88 拘束ユニット、 100 ステージ装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8