(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】改質ユニット及び水素製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/38 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
C01B3/38
(21)【出願番号】P 2020099625
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】半谷 広央
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-063847(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134940(WO,A1)
【文献】特開平10-169902(JP,A)
【文献】特開2014-047083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気改質をする触媒層を含む反応部、及び上記触媒層を加熱する熱を用いて水蒸気を生成するボイラーを有する改質器と、
上記触媒層に上記水蒸気を含む原料ガスを供給する原料ガス供給路と、
上記触媒層から改質ガスを排出する改質ガス排出路と、
上記ボイラーに冷却水を供給する冷却水供給路と、
上記ボイラーで上記冷却水から生成した上記水蒸気を排出する水蒸気排出路と
を備え、
上記水蒸気排出路が、
上記水蒸気の一部を上記原料ガス供給路に供給する原料ガス混合流路と、
上記水蒸気の残部を上記改質ガス排出路に供給する改質ガス混合流路と、
上記水蒸気を上記原料ガス混合流路及び改質ガス混合流路に分配する分配部と
を有
し、
上記分配部が、上記水蒸気の圧力及び温度に基づいて上記原料ガス混合流路への上記水蒸気の流量を調整する流量調整機構を含む改質ユニット。
【請求項2】
上記ボイラーの耐熱温度が上記触媒層の活性温度以下である請求項
1に記載の改質ユニット。
【請求項3】
上記反応部及びボイラーが一体に構成されている請求項1
又は請求項
2に記載の改質ユニット。
【請求項4】
上記水蒸気を含む上記改質ガスと、上記冷却水とが熱交換する凝縮器をさらに備える請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の改質ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の改質ユニットと、
この改質ユニットから供給される上記水蒸気の残部と上記改質ガスとを混合した混合改質ガス中の水素以外の不純物を除去する吸着塔と
を備える水素製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質ユニット及び水素製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を製造する方法として水蒸気改質法が知られている。水蒸気改質法は、天然ガス等の原料ガスと水蒸気との混合ガスを加熱した触媒の存在下で改質して改質ガスを生成し、この改質ガスから一酸化炭素、メタン、二酸化炭素等の不純物を除去することで高純度水素ガスを得る。高純度水素ガスは、例えば燃料電池車等に利用される。改質ガスを安定して生成するには、上記原料ガスと水蒸気との混合が重要な要素の一つであり、この混合が不安定であると、結果として高純度水素ガスを安定して製造することができないおそれがある。
【0003】
改質反応器から排出される改質ガスの熱を水蒸気用の純水の予熱等に用いる水素製造装置が発案されている(特開2011-051860号公報)。この水素製造装置は、温度一定化器を備えることにより当該水素製造装置を含む設備の廃熱利用を行っても改質反応器の温度を安定させることができるため、水素製造量及び水素の純度を向上することができるとされている。
【0004】
上記水素製造装置によれば、設備の廃熱を有効に利用できるが、より簡易な構成として低コストで生産でき、かつ安定した高純度水素ガスの製造をすることができる水素製造装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような事情に鑑みて、本発明は、簡易な構成で、かつ安定して改質ガスを生成できる改質ユニット、及び安定して高純度水素ガスを製造することができる水素製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、水蒸気改質をする触媒層を含む反応部、及び上記触媒層を加熱する熱を用いて水蒸気を生成するボイラーを有する改質器と、上記触媒層に上記水蒸気を含む原料ガスを供給する原料ガス供給路と、上記触媒層から改質ガスを排出する改質ガス排出路と、上記ボイラーに冷却水を供給する冷却水供給路と、上記ボイラーで上記冷却水から生成した上記水蒸気を排出する水蒸気排出路とを備え、上記水蒸気排出路が、上記水蒸気の一部を上記原料ガス供給路に供給する原料ガス混合流路と、上記水蒸気の残部を上記改質ガス排出路に供給する改質ガス混合流路と、上記水蒸気を上記原料ガス混合流路及び改質ガス混合流路に分配する分配部とを有する改質ユニットである。
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の他の一態様は、上記改質ユニットと、吸着塔とを備える水素製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の改質ユニットは、簡易な構成で改質ガスを安定して生成することができる。また、本発明の水素製造装置は、簡易な構成で高純度水素ガスを安定して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る改質ユニットの構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0012】
図1に、本発明の一実施形態である改質ユニット1の構成を示す。
【0013】
[改質ユニット]
当該改質ユニット1は、水蒸気改質をする触媒層Cを含む反応部2、及び触媒層Cを加熱する熱を用いて水蒸気Sを生成するボイラー3を有する改質器4と、触媒層Cに水蒸気Sを含む原料ガスRを供給する原料ガス供給路5と、触媒層Cから改質ガスMを排出する改質ガス排出路6と、ボイラー3に冷却水Wを供給する冷却水供給路7と、ボイラー3で冷却水Wから生成した水蒸気Sを排出する水蒸気排出路8とを主に備える。水蒸気排出路8は、水蒸気Sの一部を原料ガス供給路5に供給する原料ガス混合流路81と、水蒸気Sの残部を改質ガス排出路6に供給する改質ガス混合流路82と、水蒸気Sを原料ガス混合流路及び改質ガス混合流路に分配する分配部83とを有する。
【0014】
本実施形態では、改質ユニット1は、原料ガス供給路5に原料ガスRを送出する原料ガス送出部53と、冷却水供給路7に冷却水Wを送出する冷却水送出部71とを含む。反応部2は、触媒層Cを加熱する加熱器21を有する。
【0015】
原料ガスRとしては、高純度水素ガスを生産できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、天然ガス、ナフサ、灯油、メタノール、LPG(Liquefied Petroleum Gas:液化石油ガス)等を用いることができる。
【0016】
<改質器>
改質器4は、水蒸気改質をする触媒層C及び触媒層Cを加熱する加熱器21を含む反応部2と、加熱器21が触媒層Cを加熱する熱を利用し、供給される冷却水Wから水蒸気Sを生成するボイラー3とを有する。
【0017】
〔反応部〕
反応部2は、水蒸気改質をする触媒層Cと、触媒層Cを加熱する加熱器21とを含む。
【0018】
(触媒層)
触媒層Cは、原料ガスR及び水蒸気Sの混合原料ガスRSを改質して改質ガスMを生成する。触媒層Cとしては、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えば、酸化改質部分とシフト反応部分とを有するものとすることができる。酸化改質部分は、混合原料ガスRS中の炭化水素を酸化(燃焼)させて触媒層Cを加熱し、加熱器21と共に水蒸気改質反応に必要な温度を得るための酸化触媒と、炭化水素を水蒸気改質させて水素を生成するための改質触媒とを含むものとすることができる。シフト反応部分は、シフト触媒が充填される高温シフト触媒及び低温シフト触媒を含むものとすることができる。シフト反応部分は、生成中の改質ガスに残存する水蒸気と一酸化炭素との混合物を上記シフト触媒の存在下で水素と二酸化炭素とにシフト変換して水素を発生させ、生成中の改質ガス中の水素濃度を向上し、これに応じて一酸化炭素濃度を低減する。
【0019】
(加熱器)
加熱器21は、触媒層Cを加熱する。加熱器21としては、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えば、燃料及び酸素を燃焼室に供給して燃焼し、この燃焼による熱エネルギーを触媒層Cに伝導するバーナーとすることができる。上記燃焼用の燃料としては、当該改質ガスユニットで使用される原料ガスRの一部を用いてもよく、当該改質ガスユニット1を含む水素製造装置から排出される高純度水素ガスを含むオフガスを用いてもよい。
【0020】
〔ボイラー〕
ボイラー3は、加熱器21が触媒層Cを加熱する熱を利用し、供給される冷却水Wから水蒸気Sを生成して排出する。ボイラー3としては、特に限定されるものでなく、加熱器21が触媒層Cを加熱する熱を直接的に利用するものとしてもよいし、間接的に利用するものとしてもよい。上記直接的に利用するものとしては、例えば、触媒層Cとボイラー3とを加熱器21が同時に加熱するものとすることができる。上記間接的に利用するものとしては、例えば、加熱器21が触媒層Cを加熱した廃熱又は余熱をダクト等を通じでボイラーに供給し、利用するものとすることができる。上記廃熱又は余熱を利用するボイラーがボイラー用加熱器を有し、このボイラー用加熱器の熱と上記廃熱又は余熱とで水蒸気Sを生成するものとしてもよい。
【0021】
改質器4は、反応部2及びボイラー3を別体とするものであってもよいが、反応部2及びボイラー3が一体に構成されていることが好ましい。このようにすることで、改質器4を簡易な構成とすることができ、小型化することが容易にできる。また、反応部2及びボイラー3を一体にすることで一つの加熱器で触媒層C及びボイラー3を加熱することが容易にでき、反応部2及びボイラー3それぞれの加熱器を用意する必要がないため、改質器4及び消費エネルギーのコストを低減することができる。
【0022】
反応部2及びボイラー3を一体として加熱器21で加熱することにより、触媒層Cとボイラー3とを同時に昇温することができるため、改質器4、改質ユニット1、及び当該改質ユニット1を含む水素製造装置の起動時間の短縮を図ることができる。
【0023】
<原料ガス供給路>
原料ガス供給路5は、原料ガス送出部53が原料ガスRを送出する原料ガス送出路54と、原料ガスRに水蒸気Sを混合する第一混合部51と、原料ガスRに水蒸気Sを混合した混合原料ガスRSを触媒層Cに供給する混合原料ガス供給路52とを有する。
【0024】
<改質ガス排出路>
改質ガス排出路6は、触媒層Cが改質ガスMを送出する改質ガス送出路62と、改質ガスMに水蒸気Sを混合する第二混合部61と、改質ガスMに水蒸気Sを混合した混合改質ガスMSを水素製造装置の吸着塔等に供給する混合改質ガス供給路63とを有する。
【0025】
<冷却水供給路>
冷却水供給路7は、ボイラー3に冷却水Wを供給する。冷却水Wは、冷却水送出部71から冷却水供給路7に送出される。
【0026】
<凝縮器>
当該改質ユニット1が、水蒸気Sを含む改質ガスMと冷却水Wとが熱交換する凝縮器9を備えることが好ましい。具体的には、混合改質ガス供給路63の一部及び冷却水供給路7の一部が凝縮器9内で構成されるように凝縮器9を配設し、凝縮器9内で高温の混合改質ガスMSと低温の冷却水Wとが熱交換するように構成されるのが好ましい。凝縮器9は、上記熱交換によって、混合改質ガスMS中の水分を凝縮させ、この凝縮水を廃液として排出すると共に、ボイラー3に供給する冷却水Wを予熱する。このようにすることで、水素製造装置の吸着塔等に供給される混合改質ガスMSの品質を向上できると共に、ボイラー3による水蒸気Sの生成効率を向上することができる。
【0027】
<水蒸気排出路>
水蒸気排出路8は、ボイラー3内で熱せられた冷却水の水蒸気Sを排出する。水蒸気排出路8は、水蒸気Sの一部を原料ガス供給路5に供給する原料ガス混合流路81と、水蒸気Sの残部を改質ガス排出路6に供給する改質ガス混合流路82と、水蒸気Sを原料ガス混合流路81及び改質ガス混合流路82に分配する分配部83とを有する。また、ボイラー3と分配部83とを連通する水蒸気送出路84を有する。
【0028】
〔原料ガス混合流路〕
原料ガス混合流路81は、水蒸気Sの一部を原料ガス供給路5に供給する。具体的には、原料ガス混合流路81は、分配部83と第一混合部51とを連通し、水蒸気Sの一部を第一混合部51で原料ガスRに混合する。
【0029】
〔改質ガス混合流路〕
改質ガス混合流路82は、水蒸気Sの残部を改質ガス排出路6に供給する。具体的には、改質ガス混合流路82は、分配部83と第二混合部61とを連通し、水蒸気Sの残部を第二混合部61で改質ガスMに混合する。
【0030】
〔分配部〕
分配部83は、水蒸気Sを原料ガス混合流路81及び改質ガス混合流路82に分配する。原料ガス混合流路81及び改質ガス混合流路82に分配する水蒸気Sの量は、触媒層Cに供給する原料ガスRの供給量に対する水蒸気Sの混合量を決定することで原料ガス混合流路81への水蒸気Sの分配量を決定し、残りの水蒸気Sが改質ガス混合流路82に分配されるようにすることが好ましい。原料ガス混合流路81への水蒸気Sの分配量は、例えば原料ガス混合流路81を構成する配管の内径を選定することで調整することができる。
【0031】
改質器4が、反応部2及びボイラー3を一体としてボイラー3が加熱器21の熱を直接的に利用するもの、又は反応部2及びボイラー3を別体としてボイラー3が間接的に加熱器21の熱を利用するものいずれにおいても、上記熱を一定の温度に保つことは容易ではない。上記熱の温度が変化すると、ボイラー3内の温度も変化をする。ボイラー3内の温度が上昇してボイラー3の耐熱温度に近づくと、冷却水Wの供給量を増加してボイラー3内の温度を低下させるが、この際に水蒸気Sの生成量が増大する。また、ボイラー3内の温度が低下をすると、冷却水Wの供給量を減少してボイラー3内の温度を水蒸気Sの生成に十分な温度まで上昇させるが、この際に水蒸気Sの生成量が低減する。このように生成される水蒸気Sの量が安定しないことで、原料ガスRの量と、これに混合される水蒸気Sの量との比を安定させることができず、生成される改質ガスMの品質及び最終製品である高純度水素ガスの品質も安定させることができないおそれがある。このため、水蒸気Sの分配量は、少なくとも過剰に原料ガスRに混合されることを防止するため、一定の量を超えて原料ガス混合流路81に供給されないように決定されることが好ましい。
【0032】
(流量調整機構)
分配部83が、水蒸気Sの圧力及び温度に基づいて原料ガス混合流路81への水蒸気Sの流量を調整する流量調整機構を有することが好ましい。具体的には、分配部83が、水蒸気排出路8に配設される圧力計85及び温度計86と、流量調整弁87と、制御部(不図示)とを含むことが好ましい。このようにすることで、より安定して水蒸気Sを原料ガスRに混合することができる。圧力計85、温度計86、及び流量調整弁87それぞれと、制御部とは電気的に接続されている。
【0033】
より具体的には、圧力計85及び温度計86は、分配部83より上流側の水蒸気送出路84に配設され、水蒸気Sの圧力及び温度を計測する。圧力計85及び温度計86は、分配部83より下流側に配設することもできるが、分配部83より上流側に配設してボイラー3が生成した直後の水蒸気Sの圧力及び温度を計測することが好ましい。圧力計85及び温度計86としては、特に限定されるものではないが、例えば、配管に付設して上記配管内の圧力及び温度を計測できるものとすることができる。又は、分配部83が圧力計85及び温度計86を内蔵してもよい。圧力計85及び温度計86は、一体に形成され、圧力及び温度を計測できるものであってもよい。
【0034】
制御部は、分配部83内に配設されてもよいし、分配部83と分離して配置されてもよい。制御部は、圧力計85及び温度計86が計測する水蒸気Sの圧力及び温度の計測値を電気信号として受信し、上記計測値に応じて原料ガス混合流路81内の水蒸気Sの流量が予め定められた所定の量となるように水蒸気Sの流量を調整するための指示を流量調整弁87に対して出力する。
【0035】
流量調整弁87は、分配部83より下流側で、改質ガス混合流路82に配設される。流量調整弁87としては、特に限定されるものではないが、例えば、上記制御部からの指示を受信して弁の開口面積を拡縮することにより水蒸気Sの流量を調整できるものとすることができる。
【0036】
水蒸気Sの圧力及び温度の計測値が低下すると、制御部は流量調整弁87に弁の開口を縮小する指示を出力して改質ガス混合流路82中の水蒸気Sの流量を減少させる。改質ガス混合流路82中の水蒸気Sの流量を減少することで、ボイラー3から排出される水蒸気Sの量に対する原料ガス混合流路81中の水蒸気Sの流量を相対的に増大させ、所定量の水蒸気Sを原料ガスRに混合することができる。上記計測値が増加すると、制御部は流量調整弁86に弁の開口を拡大する指示を出力して改質ガス混合流路82中の水蒸気Sの流量を増加させる。改質ガス混合流路82中の水蒸気Sの流量を増加することで、原料ガス混合流路81中の水蒸気Sの流量が相対的に低減し、所定量の水蒸気Sを原料ガスRに混合することができる。
【0037】
このように、分配部83が流量調整機構を有することで、ボイラー3が生成する水蒸気Sの量が増減しても原料ガス混合流路81中の水蒸気Sの流量を一定とすることができる。すなわち、ボイラー3内の温度変化に応じてボイラー3への冷却水Wの供給量を増減することにより生成される水蒸気Sの量が増減しても、水蒸気Sと原料ガスRとの混合比を常に一定とすることができ、高品質な改質ガスMを安定して生成することができる。
【0038】
ボイラー3の耐熱温度が触媒層Cの活性温度以下であることが好ましい。耐熱温度が触媒層Cの活性温度以下のボイラーを用いることで、改質ユニット1の低コスト化を図ることが容易にできる。
【0039】
改質ガスMを効率的に生成するのには触媒層Cの温度を700℃以上とすることが好ましい。これに対して、水蒸気Sを生成するには、ボイラー3内を概ね200℃以上400℃以下とすることが好ましい。一般に、ボイラーは、耐熱温度が高くなると共にコストが高くなる。このため、触媒層Cの活性温度と同等の耐熱温度を有するボイラーを用いると、改質器4、改質ユニット1及び当該改質ユニット1を含む水素製造装置の低コスト化を図ることが困難になるおそれがある。耐熱温度が低いボイラーを用いると、ボイラー3内の温度が上記耐熱温度を超えないように、冷却水Wの供給量を多くかつ細目に調整することを要する。当該改質ユニット1は、水蒸気排出路8に原料ガス混合流路81と改質ガス混合流路82とを有するため、低コストで耐熱温度が低いボイラー3を用いることで冷却水Wの供給量が多くかつ頻繁に変動する場合でも所定量の水蒸気Sを原料ガスRに混合することができる。
【0040】
[水素製造装置]
本発明の他の一態様である水素製造装置は、改質ユニット1と、吸着塔とを主に備える。また、水素製造装置は、改質ガスMを一時貯蔵する改質ガスバッファタンク、製品となる高純度水素ガスを貯蔵する製品ガスバッファタンク、上記吸着塔に含まれる吸着剤を再生する際に排出されるオフガスを貯蔵するオフガスバッファタンク、これらのバッファタンクと吸着塔等とを連通する各ガスの流通路等を有する。当該水素製造装置は、上記吸着塔を複数備えるのが好ましい。
【0041】
<吸着塔>
吸着塔は、改質ガスM中の特定成分を圧力スウィング吸着法により吸着除去する。吸着塔は、TSA(Temperature swing adsorption)法又はPSA(Pressure Swing Adsorption)法で再生可能な吸着剤が充填され、この吸着剤で改質ガスM中の水素以外の不純物を吸着して高純度の水素ガスを排出する。上記不純物としては、例えば、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、水分等である。
【0042】
吸着塔に充填される吸着剤としては、上記不純物を吸着し、水素を吸着しないものであれば特に限定されるものではない。また、上記不純物に応じて複数の吸着剤を吸着塔に充填してもよい。
【0043】
[高純度水素ガスの製造方法]
当該水素製造装置で高純度水素ガスを製造する方法は、水蒸気Sを原料ガスRに混合する工程と、水蒸気Sを含む原料ガスRを反応部2に供給する工程と、水蒸気Sを含む原料ガスRを改質して改質ガスMを生成する工程と、水蒸気Sを改質ガスMに混合して吸着塔に供給する工程と、吸着塔で水蒸気Sを混合した改質ガスM中の不純物を除去する工程とを主に有する。
【0044】
<原料ガス混合工程>
原料ガスR混合工程では、原料ガスRに水蒸気Sを混合する。具体的には、原料ガス送出部51から送出された原料ガスRと、ボイラー3で生成され、分配部83で原料ガス混合流路81に分配された水蒸気Sとを第一混合部51で混合する。
【0045】
<原料ガス供給工程>
原料ガス供給工程では、水蒸気Sを含む原料ガスRを反応部2に供給する。具体的には、反応部2に含まれ、加熱器21により加熱された触媒層Cに水蒸気Sを含む原料ガスRを供給する。
【0046】
<改質工程>
改質工程では、反応部2に供給された水蒸気Sを含む原料ガスRを改質して改質ガスMを生成する。具体的には、触媒層Cに供給された水蒸気Sを含む原料ガスRが触媒層Cに含まれる酸化触媒、改質触媒、シフト触媒等を通過することにより水素濃度の高いガスに改質されて改質ガスMが生成される。
【0047】
<改質ガス供給工程>
改質ガス供給工程では、水蒸気Sを改質ガスMに混合して吸着塔に供給する。具体的には、触媒層Cで改質した改質ガスMと、分配部83で改質ガス混合流路82に分配された水蒸気Sとを第二混合部61で混合して吸着塔に供給する。水蒸気Sを含む改質ガスMは、凝縮器9によって冷却されるのが好ましい。
【0048】
<不純物除去工程>
不純物除去工程では、水蒸気Sを含む改質ガスM中の不純物を吸着塔で除去する。具体的には、吸着塔に含まれる吸着剤が水蒸気Sを含む改質ガスM中の不純物を吸着して高純度水素ガスに精製する。高純度水素ガスは吸着塔から排出されて、製品ガスとして利用される。
【0049】
上記吸着塔は、吸着、減圧、洗浄及び均圧、昇圧、並びに吸着の一連の工程を順次切り替えて運転される。具体的には、上記不純物を吸着剤で吸着する吸着工程の終了後、吸着塔内の圧力を減圧する工程、及び得られた高純度水素ガスで吸着剤を洗浄する工程により、吸着した不純物を除去し、上記吸着剤を再生する。その後、上記吸着剤を再生した吸着塔を昇圧して高純度水素ガスの精製に再び供する。当該水素ガス製造装置が複数の吸着塔を備える場合、稼働中に少なくとも1の吸着塔が吸着工程となるように上記一連の工程のタイミングを各吸着塔でずらして行うことで、吸着と再生とを異なる吸着塔で同時に行うことが可能となり、連続的に高純度水素ガスを製造できる。
【0050】
不純物除去工程では、水蒸気Sを含む改質ガスMを冷媒により冷却しながら精製を行うとよい。このように吸着時に吸着塔内部に流通するガスを冷却することで、吸着剤による不純物の有効吸着量が増加し、吸着剤の必要量が低減することができ、当該水素製造装置を小型化することができる。
【0051】
[利点]
当該改質ユニット1は、ボイラー3内の温度変化に応じて冷却水Wの供給量を増減することにより水蒸気Sの生成量が変動しても、原料ガスRへの水蒸気Sの混合量を一定とすることが比較的容易にできる。よって、改質ガスMを安定して生成することができる。
【0052】
また、当該改質ユニット1は、反応部2の加熱器21の熱で水蒸気Sを生成するため、消費されるエネルギーを低減することができ、高品質な改質ガスMを低コストで生成することができる。
【0053】
当該水素製造装置は、改質ユニット1から高品質な改質ガスMの安定した供給を受けることができるため、効率的に高純度水素ガスを生産することができる。
【0054】
当該改質ユニット1の反応部2及びボイラー3を一体とすることで、当該改質ユニット1及び水素製造装置の小型化、低コスト及び起動時間の短縮を図ることが容易にできる。よって、当該改質ユニット1及び水素製造装置は、汎用性が高く、オフサイト型の水素ステーション、オンサイト型水素ステーションいずれに用いることができ、特に、営業日毎に起動及び停止を行う小規模のオンサイト型水素ステーションに好適に用いることができる。
【0055】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0056】
上記実施形態において、配設部83が有する流量調整機構の流量調整弁87が改質ガス混合流路82に配設されるものについて説明したが、流量調整弁87は、原料ガス混合流路81に配設してもよく、改質ガス混合流路82及び原料ガス混合流路81それぞれに配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る改質ユニット及び水素製造装置は、高純度な水素ガスを製造する水素ガスステーション等に特に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 改質ユニット
2 反応部
21 加熱器
3 ボイラー
4 改質器
5 原料ガス供給路
51 第一混合部
52 混合原料ガス供給路
53 原料ガス送出部
54 原料ガス送出路
6 改質ガス排出路
61 第二混合部
62 改質ガス送出路
63 混合改質ガス供給路
7 冷却水供給路
71 冷却水送出部
8 水蒸気排出路
81 原料ガス混合流路
82 改質ガス混合流路
83 分配部
84 水蒸気送出路
85 圧力計
86 温度計
87 流量調整弁
9 凝縮器
C 触媒層
M 改質ガス
MS 混合改質ガス
R 原料ガス
RS 混合原料ガス
S 水蒸気
W 冷却水