(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】化合物、光吸収剤、組成物及び光学フィルタ
(51)【国際特許分類】
C07D 209/24 20060101AFI20231023BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20231023BHJP
C07D 209/18 20060101ALN20231023BHJP
【FI】
C07D209/24 CSP
G02B5/22
C07D209/18
(21)【出願番号】P 2020513980
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(86)【国際出願番号】 JP2019003681
(87)【国際公開番号】W WO2019202815
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2018080826
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金原 有希子
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 哲千
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-211005(JP,A)
【文献】特開2007-073279(JP,A)
【文献】特開2013-054275(JP,A)
【文献】特開2016-162946(JP,A)
【文献】特開2017-120430(JP,A)
【文献】特開2017-142412(JP,A)
【文献】特開2017-210552(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002864(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/083606(WO,A1)
【文献】特開2013-173849(JP,A)
【文献】特開2013-116946(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144421(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/101946(WO,A1)
【文献】特開2007-286189(JP,A)
【文献】HONG Yanping, et al.,Synthesis of double D-A branched organic dyes employing indole and phenoxazine as donors for efficie,Tetrahedron,2014年,Vol.70(36),p.6296-6302
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 209/
G02B 5/22
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式
(A3)で表され
る化合物。
【化1】
(式中、R
1は、
シアノ基を表し、
R
2は、
水素原子を表し、
nは、
1を表し、
Xは、
水素原子を表し、
R
3
は、水素原子又
は炭素原子数6~30のアリール
基を表し、
R
4
は、炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が-COO-若しくは-OCO-で置換され、かつ、基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換された基を表し、
55aは、
0を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含む光吸収剤。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物と、
樹脂と、
を含む組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物を含む光吸収層を有する光学フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、400nm付近の光の吸収性に優れた化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特定の光に対して強度の大きい吸収を有する化合物は、CD-R、DVD-R、DVD+R、青色レーザ記録ディスク等の光学記録媒体の記録層や、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置の光学要素として用いられている。
【0003】
液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置用の光学フィルタにおいては、300~1100nmの波長の光を吸収する各種化合物が、光吸収剤として用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、紫外線吸収剤を含有し、200nm~410nmの光を遮断する有機ELディスプレイ素子用フィルタが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の紫外線吸収剤では、400nm付近の光の吸収が十分ではない場合がある。その結果、例えば、特許文献1記載のフィルタでは、有機ELディスプレイ素子の劣化を十分に抑制できない場合があるという不具合がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、400nm付近の光の吸収に優れた化合物を提供することを主目的とする。
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、インドール環及びシアノエテニル構造を有する特定構造の化合物が、400nm付近の光を効率的に吸収できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記一般式(A)で表される化合物(以下、化合物Aと称する場合がある。)である。
【0010】
【化1】
(式中、Arは、インドール環であり、
R
1は、シアノ基、-COOR、-OCOR、-CONHR、-NHCOR、-COONHR、-NHCOOR、-COR、-SO
2R、-SOR、-SO
2NRR’、ハロゲン原子、ニトロ基又はホスホノ基を表し、
R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R及びR’並びにR
2で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR''-、>P=O、-S-S-、-SO
2-又はこれらの組み合わせで置換されていてもよく、R''は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
R及びR’並びにR
2で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中の水素原子は、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、並びにカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基の塩で置換されていてもよく、
nは、1~10の整数を表し、
Xは、n価の基を表す。)
【0011】
本発明の化合物Aは、上記所定の構造を有するため、400nm付近の光の吸収性に優れる。
【0012】
上記化合物Aは、下記一般式(A1)、(A2)又は(A3)で表される化合物であることが好ましい。400nm付近の光の吸収性に、より優れるからである。
【0013】
【化2】
(式中、R
1、R
2、R、R’、n及びXは、一般式(A)におけるR
1、R
2、R、R’、n及びXと同じであり、
R
3及びR
4は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
5及びR
55は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表し、
R
3及びR
4並びにR
5及びR
55で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR''-、>P=O、-S-S-、-SO
2-又はこれらの組み合わせで置換されていてもよく、R''は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
R
3及びR
4並びにR
5及びR
55で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中の水素原子は、エチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、並びにカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基の塩で置換されていてもよく、
5aは、0~4の整数を表し、
55aは、0~3の整数を表す。)
【0014】
上記化合物Aの常圧下における10%重量減少温度は、250℃以上であることが好ましい。上記化合物Aが、揮散性の低い化合物となるからである。
【0015】
上記nは、2~10の整数であることが好ましい。上記化合物Aが、400nm付近の光の吸収性に優れ、揮散性の低い化合物となるからである。
【0016】
上記Xは、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又はこれらの基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましい。上記化合物Aが、400nm付近の光の吸収性に優れ、揮散性の低い化合物となるからである。
【0017】
上記R3、R4、R5及びR55の少なくとも1つが、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数2~20の複素環含有基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基が、炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましい。上記化合物Aが、揮散性の低い化合物となるからである。
【0018】
上記化合物Aは、下記(1)又は(2)を満たすものであることが好ましい。
(1)上記一般式(A1)で表される化合物であり、nが2又は3の整数であり、Xが炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又はこれらの基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基である。
(2)上記一般式(A3)で表される化合物であり、nが1であり、R4が炭素原子数1~10のアルキル基若しくはこれらの基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換されている基、又は炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が-COO-若しくは-OCO-で置換されており、かつ、基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基である。
上記化合物Aが、400nm付近の光の吸収性に優れ、揮散性の低い化合物となるからである。
【0019】
上記化合物Aの250nm以上、600nm以下の範囲における最大吸収波長は、350nm以上420nm以下であることが好ましい。上記化合物Aが、400nm付近の光の吸収性により優れたものとなるからである。
【0020】
本発明は、上記化合物Aを含むことを特徴とする光吸収剤を提供する。上記化合物Aを含むことで、該光吸収剤は、400nm付近の光の吸収性により優れたものとなる。
【0021】
本発明は、上記化合物Aと、樹脂と、を含むことを特徴とする組成物を提供する。上記化合物Aを含むことで、該組成物は、400nm付近の光の吸収性により優れたものとなる。
【0022】
本発明は、上記化合物Aを含む光吸収層を有することを特徴とする光学フィルタを提供する。上記光吸収層が上記化合物Aを含むことで、該光学フィルタは、400nm付近の光の吸収性により優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例1の化合物の吸光スペクトルである。
【
図2】
図2は、比較例1の化合物の吸光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、化合物、光吸収剤、組成物及び光学フィルタに関するものである。
以下、本発明の化合物、光吸収剤、組成物及び光学フィルタについて詳細に説明する。
【0025】
A.化合物
まず、本発明の化合物について説明する。
本発明の化合物は、上記一般式(A)で表されることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の化合物は、上記所定の構造、すなわち、インドール環に対して、シアノエテニル基(-CR2=C(CN)R1)が結合した構造を有するため、400nm付近の光の吸収性に優れる。上記所定の構造を有することで、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなる理由については、明確ではないが、以下のように推察される。
【0027】
インドール環は、単体では、250nm~300nmに最大吸収波長を有する。これに、シアノエテニル基を導入することで、共役系が長くなり、最大吸収波長の長波長シフトが生じる。その結果、400nm付近の光を吸収することが可能となる。また、上記化合物Aは、シアノエテニル基としてジシアノエテニル基を用いることができる。その結果、上記化合物Aは、400nm付近、特に、350nm以上、420nm以下に、急峻な吸収ピークを示すものとすることが容易となる。このようなことから、上記化合物Aは、上記所定の構造を有することで、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなると考えられる。
【0028】
上記化合物Aを含む光学フィルタは、化合物Aの上述のような特性により、所定の光を安定的に吸収することが可能なものとなる。このため、該光学フィルタは、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子と共に用いた場合に、有機EL素子の劣化を効果的に抑制することが可能となる。
【0029】
以下、本発明の化合物について詳細に説明する。
本発明の化合物は、上記一般式(A)で表されるものであり、上記インドール環Arには、シアノエテニル基(-CR2=C(CN)R1)及びn価の基Xが直接結合している。結合位置としては、シアノエテニル基が結合可能な箇所であれば制限はないが、下記式(a1)において「**」で表される、インドール環の第3位の位置であることが好ましい。この結合位置であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。
【0030】
【0031】
上記インドール環Arは、シアノエテニル基及びn価の基Xと直接結合しているが、これらの基が結合する部位以外の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
【0032】
上記化合物Aは、nが2以上である場合、n価の基Xとの結合位置の種類が2種類以上であってもよいが、1種類であることが好ましい。上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。上記化合物Aにおける、n価の基Xとの結合位置の種類が2種類以上であるとは、例えば、nが2である場合、2価の基Xが、一つのインドール環Arと第1位の位置で結合し、もう一つのインドール環Arと第2位の位置で結合している場合等を意味する。また、上記化合物Aのn価の基Xとの結合位置の種類が、1種類であるとは、例えば、nが2である場合、2価の基Xが、二つのインドール環Arとそれぞれ第1位の位置で結合している場合等を意味する。
【0033】
上記化合物Aは、より具体的には、上記一般式(A1)、(A2)又は(A3)で表される化合物(以下、それぞれ、化合物A1、化合物A2及び化合物A3と称する場合がある。)であることが好ましい。なかでも、上記化合物Aは、化合物A1であることがより好ましい。化合物A1は、n価の基Xとの結合位置が、上記インドール環Arの第1位の位置であることで、400nm付近の光の吸収性に優れるからである。また、化合物A1は、合成が容易であるからである。
【0034】
化合物A2は、n価の基Xとの結合位置が、上記インドール環Arの第2位の位置である例であり、化合物A3は、n価の基Xとの結合位置が、第4位~第7位である例である。また、化合物A1~A3は、n価の基Xとの結合位置の種類が、1種類である例である。
【0035】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表される炭素原子数1~40のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ブチル基、アミル基、iso-アミル基、tert-アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、iso-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、1-オクチル基、iso-オクチル基、tert-オクチル基及びアダマンチル基等が挙げられる。
【0036】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表される炭素原子数6~30のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基及びアントラセニル基等が挙げられる。
【0037】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表される炭素原子数7~30のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フルオレニル基、インデニル基及び9-フルオレニルメチル基等が挙げられる。
【0038】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表される炭素原子数2~20の複素環含有基としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピペリジル基、ピラニル基、ピラゾリル基、トリアジル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、フリル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、チエニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、インドリル基、2-ピロリジノン-1-イル基、2-ピペリドン-1-イル基、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル基及び2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル基等が挙げられる。
【0039】
R2、R3、R4、R5及びR55で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等が挙げられる。
【0040】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR''-、>P=O、-S-S-、-SO2-又はこれらの組み合わせで置換されていてもよい。
【0041】
すなわち、R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中のメチレン基が炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NR''-、>P=O、-S-S-、-SO2-又はこれらの組み合わせで置換された基であってもよい。
【0042】
上記R’’は、水素原子又は炭素原子数1~8のアルキル基を表し、炭素原子数1~8のアルキル基としては、R2等として例示したものうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
上記炭素-炭素二重結合としては、より具体的には、-CH=CH-、-C(CH3)=CH-、-C(CH3)=C(CH3)-等が挙げられる。
【0043】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中のメチレン基が上述の炭素-炭素二重結合等で置換される数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
【0044】
本発明において、基の炭素原子数は、基中のメチレン基が上述の炭素-炭素二重結合等で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、本明細書中、炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が上述の炭素-炭素二重結合等で置換されている場合、該「炭素原子数1~40」とは、メチレン基が置換された後の炭素原子数を指し、メチレン基が置換される前の炭素原子数を指すのではない。したがって、例えば、後述する化合物(41)のR1のように、プロピル基中のメチレン基の1つが、-CO-O-で置換された基の炭素原子数は、3となる。
【0045】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基は、置換基を有していてもよい。上記化合物Aは、特に断りがない限り、置換基を有していないもの及び置換基を有しているものを含む。
【0046】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中の水素原子は、ビニル基、アリル基、アクリル基及びメタクリル基等のエチレン性不飽和基;フッ素、塩素、臭素及びヨウ素等のハロゲン原子;アセチル基、2-クロロアセチル基、プロピオニル基、オクタノイル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、フェニルカルボニル(ベンゾイル)基、フタロイル基、4-トリフルオロメチルベンゾイル基、ピバロイル基、サリチロイル基、オキザロイル基、ステアロイル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、n-オクタデシルオキシカルボニル基及びカルバモイル基等のアシル基;アセチルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2-エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、クロロフェニルアミノ基、トルイジノ基、アニシジノ基、N-メチル-アニリノ基、ジフェニルアミノ基,ナフチルアミノ基、2-ピリジルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、ホルミルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、カルバモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノカルボニルアミノ基、N,N-ジエチルアミノカルボニルアミノ基、モルホリノカルボニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t-ブトキシカルボニルアミノ基、n-オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、N-メチル-メトキシカルボニルアミノ基、フェノキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、N,N-ジメチルアミノスルホニルアミノ基、メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基及びフェニルスルホニルアミノ基等の置換アミノ基;スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、並びにカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基及びリン酸基の塩等で置換されていてもよい。
【0047】
すなわち、R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55は、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中の水素原子がエチレン性不飽和基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、置換アミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、水酸基、ニトロ基、メルカプト基、イミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、リン酸基、又はカルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基若しくはリン酸基の塩により置換された基であってもよい。
【0048】
R、R’、R2、R3、R4、R5及びR55で表されるアルキル基、アリール基、アリールアルキル基及び複素環含有基中の水素原子が置換基で置換される数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
【0049】
本発明において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、上記炭素原子数1~40のアルキル基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1~40とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。したがって、例えば、後述する化合物(40)のR4のように、プロピル基の末端の水素原子の1つが、-CH=CH2で置換されている基の炭素原子数は、5となる。また、後述する化合物(103)および化合物(104)のR4の炭素原子数はそれぞれ13及び17となる。
【0050】
上記R1は、シアノ基、-COOR、-OCOR、-CONHR、-NHCOR、-COONHR、-NHCOOR、-COR、-SO2R、-SOR、-SO2NRR’、ハロゲン原子、ニトロ基又はホスホノ基を表すものであるが、なかでも、シアノ基、-COORであることが好ましく、特に、シアノ基であることが好ましい。上記R1がこれらの基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。さらに、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとなるからである。
【0051】
上記R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表すものであるが、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、なかでも特に、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましい。上記R及びR’がこれらの基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。さらに、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとなるからである。
【0052】
上記R及びR’は、それぞれ独立に、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基及び炭素原子数2~20の複素環含有基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基が炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましい。なかでも、炭素原子数1~40のアルキル基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、上記炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が、炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~10のアルキル基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、上記炭素原子数1~10のアルキル基中のメチレン基が、炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましい。なかでも特に、炭素原子数3~7のアルキル基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、上記炭素原子数3~7のアルキル基中のメチレン基が、炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましい。上記R等が上述の基であることで、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物となるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。
【0053】
上記R2は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表すものであるが、水素原子、シアノ基又は炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましく、なかでも、水素原子であることが好ましい。上記R2がこれらの基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。
【0054】
上記R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表すものであるが、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物となり、さらに、合成容易なものとなるからである。
本発明においては、R3が、後述する重合性基を有しない基である場合、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基または炭素原子数6~30のアリール基であることが好ましく、なかでも、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基または炭素原子数6~15のアリール基であることが好ましく、特に、水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基または炭素原子数6~12のアリール基であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物となり、さらに、合成容易なものとなるからである。また、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとするとの観点からは、R3が水素原子であることが好ましい。
また、本発明においては、R4が、後述する重合性基を有しない基である場合、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~20のアルキル基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~5のアルキル基であることが好ましい。上記R4が上述の基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとなるからである。
【0055】
上記R5及びR55は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基を表すものであるが、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基であることが好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとなるからである。上記R5及びR55は、複数存在する場合は、同一でも異なっていてもよい。
【0056】
上記R3、R4、R5及びR55がこれら基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。さらに、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物となるからである。
【0057】
上記化合物Aは、上記R3、R4、R5及びR55の少なくとも1つが重合性基を有するものであることが好ましい。これにより、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物となるからである。より具体的には、上記化合物Aは、例えば、化合物A同士の重合による多量化、アクリレートモノマー等の重合性化合物との重合等により、高分子量化できる結果、揮散性の低い化合物となるからである。上記重合性基としては、重合性基同士で重合して高分子量化可能なものであればよく、例えば、ラジカル重合性基、カチオン重合性基、アニオン重合性基等が挙げられる。
本発明においては、上記R3、R4、R5及びR55のいずれか1つのみが重合性基を有するものであることが好ましく、なかでも、R4のみが重合性基を有するものであることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとなるからである。
【0058】
上記ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられる。また、上記ラジカル重合性基としては、メチレン基を置換する上述の炭素-炭素二重結合も用いることができる。上記カチオン重合性基としては、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基等が挙げられる。上記アニオン重合性基としては、エポキシ基、ラクトン基等が挙げられる。上記重合性基としては、なかでも、エチレン性不飽和基、炭素-炭素二重結合等のラジカル重合性基であることが好ましい。上記化合物Aは、揮散性の低い化合物とすることが容易だからである。
【0059】
上記化合物Aは、より具体的には、上記R3、R4、R5及びR55の少なくとも1つが、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基又は炭素原子数2~20の複素環含有基であるか、炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数2~20の複素環含有基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、上記炭素原子数1~40のアルキル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数7~30のアリールアルキル基若しくは炭素原子数2~20の複素環含有基中のメチレン基が炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましく、なかでも、上記R3、R4、R5及びR55の少なくとも1つが、炭素原子数1~40のアルキル基であるか、炭素原子数1~40のアルキル基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が、炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましく、特に、R4が、炭素原子数1~40のアルキル基であるか、炭素原子数1~40のアルキル基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましく、中でも特に、R4が、炭素原子数1~10のアルキル基であるか、炭素原子数1~10のアルキル基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数1~10のアルキル基中のメチレン基が炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましく、R4が、炭素原子数3~10のアルキル基であるか、炭素原子数3~10のアルキル基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数3~10のアルキル基中のメチレン基の1つが炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましい。上記R3等が上述の基であることで、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物となるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。
【0060】
本発明においては、R4が、炭素原子数1~40のアルキル基であるか、炭素原子数1~40のアルキル基中の水素原子がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が炭素-炭素二重結合で置換されている基である場合、R4として、炭素原子数1~40のアルキル基中の水素原子の2つ以上がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、上記炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基の2つ以上が炭素-炭素二重結合で置換されている基であることも好ましい。なかでも、炭素原子数5~25のアルキル基中の水素原子の2つ以上がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数5~25のアルキル基中のメチレン基の2つ以上が炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましく、特に、炭素原子数8~22のアルキル基中の水素原子の2~5つがエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数8~22のアルキル基中のメチレン基の2~5つが炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましく、特に、炭素原子数10~20のアルキル基中の水素原子の2~4つがエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、炭素原子数10~20のアルキル基中のメチレン基の2~4つが、炭素-炭素二重結合で置換されている基であることが好ましい。上記R4が上述の基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとなるからである。
【0061】
また、R4が、炭素原子数1~40のアルキル基中の水素原子の2つ以上がエチレン性不飽和基で置換されている基、又は、上記炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基の2つ以上が炭素-炭素二重結合で置換されている基である場合、更にそれらの基中のメチレン基が、それぞれ独立に、-COO-又は-OCO-で置換されている基であることが好ましい。上記R4が上述の基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスに優れたものとなるからである。
【0062】
上記炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基が炭素-炭素二重結合で置換されている基の炭素数とは、メチレン基が炭素-炭素二重結合で置換された後の炭素原子数を指し、メチレン基が炭素-炭素二重結合に置換される前の炭素原子数を指すのではない。その他の基中のメチレン基が置換されている場合も同じである。
また、上記炭素原子数1~40のアルキル基中の水素原子が置換基で置換されている基の炭素原子数とは、水素原子が置換基で置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換基に置換される前の炭素原子数を指すのではない。その他の基中の水素原子が置換されている場合も同じである。
【0063】
上記nは、1~10の整数であるが、2~10の整数であることが好ましく、なかでも2~6の整数であることが好ましく、特に、2~4の整数であることが好ましい。上記nが上述の範囲であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れ、揮散性の低い化合物となるからである。
【0064】
上記5aは、0~4の整数を表すが、0又は1の整数であることが好ましい。
上記55aは、0~3の整数を表すが、0又は1の整数であることが好ましい。
5a及び55aが、上述の範囲であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。
【0065】
上記一般式(A)で表される化合物Aは、Xで表されるn価の基が、n個のインドール環Ar及びシアノエテニル構造を含む特定の構造と結合した構造を有する。このn個の特定の構造は、互いに同じである場合があり、異なる場合もある。
【0066】
上記Xは、n価の基を表す。
上記Xとしては、具体的には、直接結合、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子、下記(II-a)若しくは(II-b)で表される基、>C=O、>NR53、-OR53、-SR53、-NR53R54又はnと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基が挙げられる。
【0067】
上記R53及びR54は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表す。上記X、R53及びR54で表される脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-O-、-NR’-、-S-S-、-SO2-、窒素原子又はこれらの組み合わせで置換されていてもよい。置換されるメチレン基の数は1つに限定されず、2つ以上であってもよい。
すなわち、上記X、R53及びR54は、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基が-O-、-S-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-、-O-CO-O-、-O-CO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-S-CO-O-、-O-CO-S-、-CO-NH-、-NH-CO-、-NH-CO-O-、-NH-CO-O-、-NR’-、-S-S-、-SO2-、窒素原子又はこれらの組み合わせで置換された基であってもよい。
また、上記芳香環又は複素環は、他の環と縮合されていてもよい。
【0068】
Xが窒素原子、リン原子又は下記(II-a)又は(II-b)で表される結合基の場合、nは3であり、Xが直接結合、酸素原子又は硫黄原子、>C=O、-NH-CO-、-CO-NH-又は>NR53の場合、nは2であり、Xが-OR53、-SR53又は-NR53R54の場合、nは1であり、Xは、ベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。
【0069】
【化4】
(*は、*部分で隣接する基と結合することを意味する。)
【0070】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基は、1価のものとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、第三アミル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビシクロヘキシル基、1-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、第三ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基及びデシル基等のアルキル基;メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、第二ブチルオキシ基、第三ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、アミルオキシ基、イソアミルオキシ基、第三アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、第三ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、第三オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基及びデシルオキシ基等のアルコキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、第二ブチルチオ基、第三ブチルチオ基、イソブチルチオ基、アミルチオ基、イソアミルチオ基、第三アミルチオ基、ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、イソヘプチルチオ基、第三ヘプチルチオ基、n-オクチルチオ基、イソオクチルチオ基、第三オクチルチオ基及び2-エチルヘキシルチオ基等のアルキルチオ基;ビニル基、1-メチルエテニル基、2-メチルエテニル基、2-プロペニル基、1-メチル-3-プロペニル基、3-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、イソブテニル基、3-ペンテニル基、4-ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ビシクロヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ぺンタデセニル基、エイコセニル基及びトリコセニル基等のアルケニル基;並びにこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0071】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基は、2価のものとしては、上述の1価の脂肪族炭化水素基から水素原子を1つ除いた基を挙げることができ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基及びブチルジイル基等のアルキレン基;上記アルキレン基中のメチレン基が-O-、-S-、-CO-O-、-O-CO-で置換された基;エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール基の残基;エタンジチオール、プロパンジチオール、ブタンジチオール、ペンタンジチオール、ヘキサンジチオール等のジチオール基の残基及びこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0072】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基は、3価のものとしては、上述の1価の脂肪族炭化水素基から水素原子を2つ除いた基を挙げることができ、例えば、プロピリジン基及び1,1,3-ブチリジンプロピリジン基等のアルキリジン基;並びにこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
3価のものとしては、アルキリジン基のように、プロパン、ブタン等の脂肪族炭化水素中の1つの炭素原子から3つの水素原子を除いた基に限定されず、脂肪族炭化水素中の2つの炭素原子から合計3つの水素原子を除いた基、脂肪族炭化水素中の異なる3つの炭素原子からそれぞれ1つずつの水素原子を除いた基も挙げることができる。
【0073】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基は、1価のものとしては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、スチリル基及びシンナミル基等のアリールアルキル基;フェニル基及びナフチル基等のアリール基;フェノキシ基及びナフチルオキシ基等のアリールオキシ基;フェニルチオ基及びナフチルチオ基等のアリールチオ基:並びに、これらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0074】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基は、2価のものとしては、フェニレン基及びナフチレン基等のアリーレン基;カテコール基、ビスフェノール基等の二官能フェノール基の残基;2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン基;アルキレン基、アリーレン基及びアルキレン基がこの順で結合した基等のアルキレン基およびアリーレン基を組み合わせた基;並びにこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
アルキレン基としては、上記Xで表されるアルキレン基と同じものが挙げられる。
【0075】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基は、3価のものとしては、フェニル-1,3,5-トリメチレン基及びこの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0076】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する炭素原子数2~35の複素環含有基は、nが1価のものとしては、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、ピペリジル基、ピラニル基、ピラゾリル基、トリアジル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、トリアゾリル基、フリル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、チエニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、チアジアゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、インドリル基、2-ピロリジノン-1-イル基、2-ピペリドン-1-イル基、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル基、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル基及びベンゾトリアゾイル基、並びにこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0077】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する炭素原子数2~35の複素環含有基は、nが2価のものとしては、ピリジン環、ピリミジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、トリアジン環、フラン環、チオフェン環及びインドール環を有する2価の基、並びにこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0078】
上記Xで表される、nと同数の価数を有する炭素原子数2~35の複素環含有基は、nが3価のものとしては、イソシアヌル環を有する3価の基、トリアジン環を有する3価の基及びこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基等が挙げられる。
【0079】
R53及びR54で表される炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、上記Xで表される脂肪族炭化水素基又は上記脂肪族炭化水素基の水素原子が後述する置換基により置換された基のうち、炭素原子数が1~35のものが挙げられる。
【0080】
R53及びR54で表される炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上記Xで表される炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基又はこれらの基の水素原子が後述する置換基により置換された基が挙げられる。
【0081】
上記X、R53、R54等で表される脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の各官能基は、置換基を有していてもよい。このような脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の水素原子を置換する置換基としては、例えば、R2等で表されるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同じものが挙げられる。本発明の化合物Aは、特に断りがない限り、置換基を有していないもの及び置換基を有しているものを含む。
【0082】
上記Xとしては、nが2であるとき、下記一般式(1)で表される基が挙げられる。
上記Xとしては、nが3であるとき、下記一般式(2)で表される基が挙げられる。
上記Xとしては、nが4であるとき、下記一般式(3)で表される基が挙げられる。
上記Xとしては、nが5であるとき、下記一般式(4)で表される基が挙げられる。
上記Xとしては、nが6であるとき、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
【0083】
【化5】
(上記一般式(1)中、Y
1は、-CR
55R
56-、-NR
57-、2価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、2価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基、2価の炭素原子数2~35の複素環含有基、又は、下記(1-1)~(1-3)で表されるいずれかの基を表し、
R
55及びR
56は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基を表し、
Z
1及びZ
2は、それぞれ独立に、直接結合、-O-、-S-、>CO、-CO-O-、-O-CO-、-SO
2-、-SS-、-SO-、>NR
57又は>PR
58を表し、
R
57及びR
58は、水素原子、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
上記Y
1、R
55、R
56及びR
57で表される脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-若しくは-NH-又はこれらの組み合わせの基で置換されていてもよく、
*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0084】
【化6】
(上記式中、R
59は水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、又は置換基を有していてもよい炭素原子数3~10のシクロアルキル基を表し、
R
60は炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、炭素原子数2~10のアルケニル基又はハロゲン原子を表し、上記アルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基は置換基を有していてもよく、
c1は0~5の整数を表す、
*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0085】
【化7】
(*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0086】
【化8】
(上記式中、R
61及びR
62は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数6~20のアリールオキシ基、炭素原子数6~20のアリールチオ基、炭素原子数6~20のアリールアルケニル基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、炭素原子数2~20の複素環含有基又はハロゲン原子を表し、
上記R
61及びR
62で表されるアルキル基及びアリールアルキル基中のメチレン基は炭素-炭素二重結合、-O-又は-S-で置換されていてもよく、
R
61は、隣接するR
61同士で環を形成していてもよく、
c2は0~4の数を表し、
c3は0~8の数を表し、
c4は0~4の数を表し、
c5は0~4の数を表し、
c4とc5の数の合計は2~4であり、
*は、*部分で、隣接する基と結合することを意味する。)
【0087】
【化9】
(上記一般式(2)中、Y
11は、3価の炭素原子数3~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3~35の脂環族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
Z
1、Z
2及びZ
3は、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ
1~Z
2で表される基と同じ範囲の基を表し、
上記Y
11で表される脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基及び炭素原子数2~35の複素環含有基のメチレン基は、炭素-炭素二重結合、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-又は-SO
2-で置換されていてもよい。)
【0088】
【化10】
(上記一般式(3)中、Y
12は、炭素原子、4価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、4価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基、又は4価の炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
上記Y
12で表される脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で置換されていてもよく、
Z
1~Z
4は、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ
1~Z
2で表される基と同じ範囲の基である。)
【0089】
【化11】
(上記一般式(4)中、Y
13は、5価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、5価の炭素原子数6~30の芳香環含有炭化水素基又は5価の炭素原子数2~30の複素環含有基を表し、
上記Y
13で表される脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で置換されていてもよく、
Z
1~Z
5は、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ
1~Z
2で表される基と同じ範囲の基である。)
【0090】
【化12】
(上記一般式(5)中、Y
14は、6価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基、6価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は6価の炭素原子数2~35の複素環含有基を表し、
上記Y
14で表される脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基若しくは炭素原子数2~35の複素環含有基のメチレン基は、-COO-、-O-、-OCO-、-NHCO-、-NH-又は-CONH-で置換されていてもよく、
Z
1~Z
6は、それぞれ独立に、上記一般式(1)におけるZ
1~Z
2で表される基と同じ範囲の基である。)
【0091】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される2価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、上述のXで表される2価の脂肪族炭化水素基のうち、所定の炭素原子数である基が挙げられ、例えば、メタン、エタン、プロパン、iso-プロパン、ブタン、sec-ブタン、tert-ブタン、iso-ブタン、ヘキサン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、ヘプタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、iso-ヘプタン、tert-ヘプタン、1-メチルオクタン、iso-オクタン、tert-オクタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、2,4-ジメチルシクロブタン、4-メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素の水素原子が、Z1及びZ2で置換された2価の基が挙げられる。これらの基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置換されていてもよい。
【0092】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される2価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上述のXで表される2価の芳香環含有炭化水素基が挙げられ、例えば、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル等の芳香環含有炭化水素の水素原子が、Z1及びZ2で置換された2価の基等が挙げられる。
【0093】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される2価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上述のXで表される2価の複素環含有基が挙げられ、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ヘキサヒドロトリアジン、フラン、テトラヒドロフラン、クロマン、キサンテン、チオフェン、チオラン等の複素環含有化合物の水素原子が、Z1及びZ2で置換された2価の基が挙げられる。
【0094】
上記一般式(1)で表される基におけるY1で表される脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基の水素原子は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基又は炭素原子数1~8のアルコキシ基で置換されていてもよい。このような脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の水素原子を置換する置換基としては、R2等で表されるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同じものが挙げられる。上記脂肪族炭化水素基、芳香環含有炭化水素基及び複素環含有基等の各官能基は、置換基を有していてもよく、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換である又は置換基を有しているものである。
【0095】
上記一般式(1)で表される基におけるR55及びR56で表される炭素原子数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、t-アミル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、t-ヘプチル基、1-オクチル基、イソオクチル基及びt-オクチル基等が挙げられる。
【0096】
上記一般式(1)で表される基におけるR55及びR56で表される炭素原子数6~20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-iso-プロピルフェニル基、4-iso-プロピルフェニル基、4-ブチルフェニル基、4-iso-ブチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-ヘキシルフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基、4-オクチルフェニル基、4-(2-エチルヘキシル)フェニル基、2,3-ジメチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,4-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,5-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基、2,4-ジ-tert-ペンチルフェニル基、2,5-ジ-tert-アミルフェニル基及び2,4,5-トリメチルフェニル基等が挙げられる。
【0097】
上記一般式(1)で表される基におけるR55及びR56で表される炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、2-フェニルプロパン-2-イル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、スチリル、シンナミル等が挙げられる。
【0098】
上記一般式(1)で表される基におけるR57及びR58で表される炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又は炭素原子数2~35の複素環含有基は、R53及びR54として例示したものと同じものが挙げられる。
【0099】
上記一般式(1-1)で表される基における、R59で表される炭素原子数3~10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへブチル基、シクロオクチル基等及びこれらの基の水素原子が炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数1~10のアルコキシ基で置換された基等が挙げられる。
【0100】
上記一般式(1-1)で表される基における、R60で表される炭素原子数1~10のアルキル基としては、上記R2等で表されるアルキル基として例示したもののうち、炭素原子数が1~10であるものが挙げられる。
【0101】
上記一般式(1-1)で表される基における、R60で表される炭素原子数1~10のアルコキシ基としては、上記R2等で表されるアルキル基として例示した基の末端のメチレン基が-O-で置き換えられたもののうち、炭素原子数が1~10のものを用いることができる。上記アルコキシ基としては、例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、iso-プロピルオキシ等が挙げられる。
【0102】
上記一般式(1-1)で表される基における、R60で表される炭素原子数2~10のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基及び2-オクテニル等が挙げられる。
【0103】
上記R60で表されるアルキル基、アルコキシ基及びアルケニル基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、その置換位置は制限されない。上記ハロゲン原子としては、上記R2等として例示したものが挙げられる。
【0104】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数1~10のアルキル基、炭索原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基、ハロゲン原子としては、上記R2等として例示したものうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0105】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数6~20のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、2-メチルフェニルオキシ基、3-メチルフェニルオキシ基、4-メチルフェニルオキシ基、4-ビニルフェニル二オキシ基、3-iso-プロピルフェニルオキシ基、4-iso-プロピルフェニルオキシ基、4-ブチルフェニルオキシ基、4-tert-ブチルフェニルオキシ基、4-へキシルフェニルオキシ基、4-シクロヘキシルフェニルオキシ基、4-オクチルフェニルオキシ基、4-(2-エチルヘキシル)フェニルオキシ基、2,3-ジメチルフェニルオキシ基、2,4-ジメチルフェニルオキシ基、2,5-ジメチルフェニルオキシ基、2,6-ジメチルフェニルオキシ基、3,4-ジメチルフェニルオキシ基、3,5-ジメチルフェニルオキシ基、2,4-ジーtert-ブチルフェニルオキシ基、2,5-ジーtert-ブチルフェニルオキシ基、2,6-ジーtert-ブチルフェニルオキシ基、2,4-ジーtert-ペンチルフェニルオキシ基、2,5-tert-アミルフェニルオキシ基、4-シクロへキシルフェニルオキシ基、2,4,5-トリメチルフェニルオキシ基及びフェロセニルオキシ基及びこれらの基の水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0106】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数6~20のアリールチオ基としては、上記ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6~20のアリールオキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換したものが挙げられる。
【0107】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数8~20のアリールアルケニル基としては、上記ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数6-20のアリールオキシ基の酸素原子をビニル、アリル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-ブテニル、1,3-ブタジエニル、2-ペンテニル、2-オクテニル等のアルケニル基で置換した基等が挙げられる。
【0108】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表される炭素原子数2~20の複素環含有基としては、ピリジン基、ピラジン基、ピペリジン基、ピペラジン基、ピリミジン基、ピリダジン基、トリアジン基、ヘキサヒドロトリアジン基、フラン基、テトラヒドロフラン基、クロマン基、キサンテン基、チオフェン基及びチオフラン基並びにこれらの基の水素原子がハロゲン原子で置換された基等が挙げられる。
【0109】
上記一般式(1-3)で表される基における、R61及びR62で表されるアリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルケニル基、複素環含有基等の各官能基は、置換基を有していてもよく、特に断りがない限り、置換基を有していない無置換なものであるか又は置換基を有しているものである。アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルケニル基、複素環含有基等の水素原子を置換する置換基としては、R2等で表されるアルキル基等の水素原子を置換する置換基と同様の基が挙げられる。
【0110】
上記一般式(2)で表される基におけるY11で表される3価の炭素原子数3~35の脂肪族炭化水素基としては、上述のXで表される3価の脂肪族炭化水素基のうち、所定の炭素原子数である基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した脂肪族炭化水素の水素原子が、Z1、Z2及びZ3で置換された3価の基が挙げられる。これらの基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO2-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置き換えられていてもよい。
【0111】
上記一般式(2)で表される基におけるY11で表される3価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上述のXで表される3価の芳香環含有炭化水素基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した芳香環含有炭化水素の水素原子が、Z1、Z2及びZ3で置換された3価の基が挙げられる。
【0112】
上記一般式(2)で表される基におけるY11で表される3価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上述のXで表される3価の複素環含有基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した複素環含有化合物の水素原子が、Z1、Z2及びZ3で置換された3価の基が挙げられる。
【0113】
上記一般式(3)で表される基におけるY12で表される4価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基としては、上述のXで表される1価の脂肪族炭化水素基から水素原子を3つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した脂肪族炭化水素の水素原子が、Z1、Z2、Z3及びZ4で置換された4価の基が挙げられる。これらの基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置換されていてもよい。
【0114】
上記一般式(3)で表される基におけるY12で表される4価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上述のXで表される1価の芳香環含有炭化水素基から水素原子を3つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した芳香環含有炭化水素の水素原子が、Z1、Z2、Z3及びZ4で置換された4価の基が挙げられる。
【0115】
上記一般式(3)で表される基におけるY12で表される4価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上述のXで表される1価の複素環含有基から水素原子を3つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した複素環含有化合物の水素原子が、Z1、Z2、Z3及びZ4で置換された4価の基が挙げられる。
【0116】
上記一般式(4)で表される基におけるY13で表される5価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基としては、上述のXで表される1価の脂肪族炭化水素基から水素原子を4つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した脂肪族炭化水素の水素原子が、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5で置換された5価の基が挙げられる。これらの基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-SO2-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置換されていてもよい。
【0117】
上記一般式(4)で表される基におけるY13で表される5価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上述のXで表される1価の芳香環含有炭化水素基から水素原子を4つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した芳香環含有炭化水素の水素原子が、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5で置換された5価の基が挙げられる。
【0118】
上記一般式(4)で表される基におけるY13で表される5価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上述のXで表される1価の複素環含有基から水素原子を4つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した複素環含有化合物の水素原子が、Z1、Z2、Z3、Z4及びZ5で置換された5価の基が挙げられる。
【0119】
上記一般式(5)におけるY14で表される6価の炭素原子数2~35の脂肪族炭化水素基としては、上述のXで表される1価の脂肪族炭化水素基から水素原子を5つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した脂肪族炭化水素の水素原子が、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5及びZ6で置換された6価の基が挙げられ、基中のメチレン基は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-NH-又はこれらを組み合わせた基で置換されていてもよい。
【0120】
上記一般式(5)におけるY14で表される6価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基としては、上述のXで表される1価の芳香環含有炭化水素基から水素原子を5つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した芳香環含有炭化水素の水素原子が、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5及びZ6で置換された6価の基が挙げられる。
【0121】
上記一般式(5)におけるY14で表される6価の炭素原子数2~35の複素環含有基としては、上述のXで表される1価の複素環含有基から水素原子を5つ除いた基が挙げられ、例えば、上記一般式(1)におけるY1の説明で例示した複素環含有化合物の水素原子が、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5及びZ6で置換された6価の基が挙げられる。
【0122】
上記Xは、炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記Xが上述の基であることで、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。
【0123】
nが2~10である場合、上記Xは、炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、上記Xは、炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又はこれらの基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基も好ましく用いることができる。上記Xが上述の基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物とすることが容易であると共に、合成容易なものとなるからである。
【0124】
nが2である場合、上記Xは、2価の炭素原子数1~120の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、特に、2価の炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも特に2価の炭素原子数4~10の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、なかでも特に、基中の水素原子及びメチレン基が置換されていない炭素原子数5~10の2価の脂肪族炭化水素基(無置換の炭素原子数5~10の2価の脂肪族炭化水素基)であることが好ましい。なかでも特に、基中の水素原子及びメチレン基が置換されていない、直鎖の、炭素原子数5~10の2価の脂肪族炭化水素基(直鎖であり、かつ、無置換の炭素原子数5~10の脂肪族炭化水素基)であることが好ましく、なかでも特に、基中の水素原子及びメチレン基が置換されていない、直鎖の、炭素原子数5~10のアルキレン基(直鎖であり、かつ、無置換の炭素原子数5~10のアルキレン基)であることが好ましい。上記Xが上述の基であることで、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。上記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であっても分岐状であっても差し支えないが、直鎖状であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、合成容易なものとなるからである。また、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物とすることが容易となるからである。
【0125】
また、nが2である場合、上記Xは、2価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基又は2価の炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることも好ましく、なかでも、二価の炭素原子数3~20の脂肪族炭化水素基又は2価の炭素原子数8~20の芳香環含有炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、なかでも特に、2価の炭素原子数5~15の脂肪族炭化水素基又は2価の炭素原子数10~20の芳香環含有炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、なかでも特に、2価の炭素原子数5~15の脂肪族炭化水素基又は2価の炭素原子数10~20の芳香環含有炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数5~15のアルキレン基又は炭素原子数10~20の、アルキレン基及びアリーレン基を組み合わせた基中のメチレン基が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数5~15の直鎖又は分岐のアルキレン基又は上記炭素原子数12~18の、アルキレン基、アリーレン基及びアルキレン基がこの順で結合した基中のメチレン基が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましい。
上記Xが上述の基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物とすることが容易であると共に、合成容易なものとなるからである。
【0126】
また、本発明においては、nが3である場合、上記Xが、3価の炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基又は該脂肪族炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、特に、3価の炭素原子数5~15の脂肪族炭化水素基又は該脂肪族炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、なかでも特に、3価の炭素原子数8~15の脂肪族炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、なかでも特に、3価の炭素原子数8~15の脂肪族炭化水素基中のメチレン基が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましく、なかでも特に、炭素原子数8~15であり、脂肪族炭化水素中の異なる3つの炭素原子からそれぞれ1つずつの水素原子を除いた基であり、かつ、メチレン基が、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましい。上記Xが上述の基であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物とすることが容易であると共に、合成容易なものとなるからである。
【0127】
なお、本発明においては、nが1である場合、上記Xは1価の基であるが、例えば、上記化合物Aが一般式(A1)で表される場合には、上記Xは、水素原子又は炭素原子数1~40のアルキル基等、R4の好ましい基と同様の基であることが好ましく、上記化合物Aが一般式(A2)で表される場合には、上記Xは、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基又は炭素原子数6~30のアリール基等、R3の好ましい基と同様の基であることが好ましく、上記化合物Aが一般式(A3)で表される場合には、上記Xは、水素原子、炭素原子数1~40のアルキル基等、R55の好ましい基と同様の基であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性に優れるものとなるからである。また、上記化合物Aは、揮散性の低い化合物とすることが容易であると共に、合成容易なものとなるからである。
【0128】
上記化合物Aの具体例としては、例えば、下記式(1)~(75)で表される化合物が挙げられる。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
本発明の化合物は、上記一般式(A1)で表される化合物であることが好ましく、式中のnが2又は3であり、Xが炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又はこれらの基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0137】
なかでも本発明においては、上記一般式(A1)中のR1がシアノ基又は-COORであり、Rが炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキル基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換された基であり、R2が水素原子であり、R3が水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数6~15のアリール基であり、Xが炭素原子数1~35の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~35の芳香環含有炭化水素基又はこれらの基中のメチレン基が、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-で置換されている基であり、5aが0であり、nが2又は3であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0138】
さらに、上記一般式(A1)で表される化合物においては、式中のR1がシアノ基又は-COORであり、Rが炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のアルキル基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換された基であり、R2が水素原子であり、R3が水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数6~12のアリール基であり、Xが、炭素原子数5~10の脂肪族炭化水素基、又は、炭素原子数5~15の脂肪族炭化水素基又は炭素原子数10~20の芳香環含有炭化水素基であり、かつ、これらの基中のメチレン基が、-COO-又は-OCO-で置換されている基であり、5aが0であり、nが2又は3であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0139】
また、本発明の化合物は、上記一般式(A3)で表される化合物であることも好ましく、なかでも、nが1であり、R4が炭素原子数1~10のアルキル基若しくはこれらの基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換されている基、又は炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基の1つ若しくは2つ以上が、それぞれ独立に、-COO-若しくは-OCO-で置換されており、かつ、基中の水素原子の2つ以上がエチレン性不飽和基で置換されている基である化合物であることが好ましく、特に、式中のR1がシアノ基又は-COORであり、Rが炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルキル基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換された基であり、R2が水素原子であり、R3が水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数6~15のアリール基であり、R4が炭素原子数1~10のアルキル基若しくはこれらの基中の水素原子の1つががエチレン性不飽和基で置換されている基又は炭素原子数1~40のアルキル基中のメチレン基の1つ若しくは2つ以上が、それぞれ独立に、-COO-若しくは-OCO-で置換されており、かつ、基中の水素原子の2つ以上がエチレン性不飽和基で置換されている基であり、Xが水素原子であり、5aが0であり、nが1であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0140】
さらに、上記一般式(A3)で表される化合物においては、式中のR1がシアノ基又は-COORであり、Rが炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数1~5のアルキル基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換された基であり、R2が水素原子であり、R3が水素原子、炭素原子数1~5のアルキル基又は炭素原子数6~12のアリール基であり、R4が炭素原子数1~5のアルキル基、炭素原子数3~10のアルキル基中の水素原子の1つがエチレン性不飽和基で置換されている基、又は炭素原子数5~25のアルキル基中のメチレン基の1つ若しくは2つ以上が、それぞれ独立に、-COO-若しくは-OCO-で置換されており、かつ、基中の水素原子の2つ以上がエチレン性不飽和基で置換されている基であり、Xが水素原子であり、5aが0であり、nが1であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光の吸収性、揮散性の低さ及び合成容易性のバランスにより優れたものとなるからである。
【0141】
上記化合物Aの製造方法としては、所望の構造の化合物Aを得ることができる方法であれば特に限定されない。上記製造方法としては、例えば、特開平11-246627号公報等に記載されるような、アルデヒド構造を有する化合物(化合物(1))を準備し、化合物1にシアノ基含有化合物を添加して反応させる方法が挙げられる。上記化合物(1)としては、インドール-3-カルボキシアルデヒド構造を有する化合物等が挙げられる。また、上記シアノ基含有化合物としては、シアノ酢酸エチル又はマロノニトリル等が挙げられる。
【0142】
上記化合物Aの最大吸収波長としては、400nm付近の光を吸収可能なものであれば制限はなく、350nm以上420nm以下とすることができる。最大吸収波長は、360nm以上420nm以下であることが好ましく、380nm以上410nm以下であることが好ましく、390nm以上410nm以下であることが好ましく、395nm以上405nm以下であることが好ましい。上記最大吸収波長が上述の範囲内であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光を効果的に吸収できるからである。
【0143】
上記最大吸収波長は、JIS K0115に準拠して吸光度を測定することで得ることができる。上記最大吸収波長は、例えば、評価用サンプルとして、化合物Aを溶媒(クロロホルム)中に1.0×10-5mol/Lの濃度となるように溶解したものを準備し、次いで、評価用サンプルを、石英セル(光路長10mm、厚み1.25mm)に充填し、吸光光度計(例えば、U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて吸光度を測定することで得ることができる。最大吸収波長は、250nm以上600nm以下の範囲で測定されるものとすることができる。
【0144】
上記化合物Aの400nmでの吸光度としては、上記化合物Aの用途等に応じて適宜設定できるが、例えば、0.3以上であることが好ましく、なかでも、0.4以上であることが好ましく、特に、0.5以上であることが好ましい。上記化合物Aは、400nm付近の光を効率的に吸収可能となるからである。吸光度の測定方法としては、最大吸収波長の測定方法と同様の方法を用いることができる。
【0145】
上記化合物Aの450nmでの吸光度としては、400nm付近の光を吸収可能なものであれば制限はなく、0.1以下とすることができ、なかでも、0.05以下であることが好ましく、特に、0.01以下であることが好ましい。
【0146】
上記化合物Aの350nmでの吸光度としては、400nm付近の光を吸収可能なものであればよく、0.4以下とすることができ、なかでも、0.3以下であることが好ましく、特に、0.2以下であることが好ましい。
【0147】
上記化合物Aの300nmでの吸光度としては、400nm付近の光を吸収可能なものであればよく、0.3以下とすることができ、なかでも、0.1以下であることが好ましく、特に、0.05以下であることが好ましい。
る。
【0148】
上記化合物Aの最大吸収波長を含む吸収ピークの半値幅としては、400nm付近の光を吸収可能なものであれば制限はなく、例えば、100nm以下とすることができ、なかでも、80nm以下であることが好ましく、特に、10nm以上60nm以下であることが好ましい。上記半値幅が上述の範囲であることで、上記化合物Aは、400nm付近の光を効率的に吸収可能なものとなるからである。吸収ピークの測定方法としては、最大吸収波長の測定方法と同様の方法を用いることができる。また、半値幅は、最大吸収波長を含む吸収ピークにおいて、最大吸収波長における吸光度(最大吸収ピーク)の半分となる波長の幅とすることができる。
【0149】
上記化合物Aの常圧下の10%重量減少温度としては、所望の揮散性を有するものであれば制限はなく、化合物Aの用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、250℃以上であることが好ましく、なかでも、300℃以上であることが好ましく、特に、350℃以上であることが好ましい。上記化合物Aは、揮散性の低いものとなるからである。上記10%重量減少温度の上限としては、高いほど好ましいので、特に限定されるものではないが、例えば、450℃以下とすることができる。
常圧下の重量減少温度は、示差熱熱重量同時測定装置を用いて、試料約5mg、窒素200mL/min雰囲気下、昇温開始温度30℃、昇温終了温度500℃、昇温速度10℃/minで昇温した際における試料について熱減量を測定し、30℃時点の試料重量に対して10%減量した時点の温度を10%重量減少温度とすることができる。示差熱熱重量同時測定装置としては、熱減量を精度良く測定できるものであればよく、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、型式:EXSTAR TG/DTA6200を用いることができる。
【0150】
上記化合物Aの吸光度維持率としては、化合物Aの用途等に応じて適宜設定されるものであり、高いほど好ましいが、例えば、60%以上であることが好ましく、70%以上であることが好ましく、なかでも、80%以上であることが好ましく、特に、90%以上であることが好ましい。上記化合物Aは、耐光性に優れたものとなるからである。
吸光度維持率は、下記(1)~(3)の方法を用いることができる。
(1)化合物Aと熱可塑性のポリメチルメタクリレート(PMMA)をジクロロメタン中に溶かし、シャーレに入れ、乾燥させ、評価用サンプルとして化合物Aの濃度が3.8質量%のPMMA膜(100μm)を準備する。
(2)評価用サンプルに対して、キセノン光を240時間照射する。
(3)キセノン光照射前後の評価用サンプルについて、化合物Aの上記最大吸収波長での吸光度変化を測定し、吸光度維持率(照射後吸光度/照射前吸光度)を計算する。
【0151】
キセノン光の照射は、例えば、キセノンウェザーメーター「アトラス・ウエザオメータCi4000」((株)東洋精機製作所製)を用いることができる。
キセノン光の照射条件としては、以下が挙げられる。
放射照度:0.55W/m2(波長340nm)
試験槽内温度:62℃
試験槽内相対湿度:50%
【0152】
上記化合物Aの用途としては、400nm付近の光を吸収する光吸収剤として用いることができる。このような光吸収剤を用いたより具体的な用途としては、例えば、CD-R、DVD-R、DVD+R、BD-R等の光学記録媒体の記録層等の光記録材料、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、陰極管表示装置(CRT)、蛍光表示管、電界放射型ディスプレイ等の画像表示装置、分析装置、半導体装置製造用、天文観測用、光通信用、眼鏡レンズ、窓等の各種用途に用いられる光学フィルタ、インク、塗料、コーティング剤、シーリング材、光ファイバー、自動車内外装材料、建材等が挙げられる。
上記液晶表示装置(LCD)に用いられる光学フィルタとしては、カラーフィルタ等が挙げられる。また、上記エレクトロルミネッセンスディスプレイに用いられる光学フィルタとしては、カラーフィルタ、有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)の光劣化を防止する用途等が挙げられる。
上記用途の中でも、上記光学フィルタであることが好ましく、なかでも、有機EL素子の光劣化を防止する用途に用いられる光学フィルタであることが好ましい。上記有機EL素子を安定的に光劣化から保護可能となるからである。
【0153】
B.光吸収剤
次に、本発明の光吸収剤について説明する。
本発明の光吸収剤は、上述の化合物Aを含むことを特徴とするものである。上記化合物Aを含むことで、上記光吸収剤は、400nm付近の光の吸収性により優れたものとなる。
以下、本発明の光吸収剤に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0154】
1.化合物A
上記化合物Aの含有量としては、光吸収剤に対して所望の光吸収性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。上記含有量としては、光吸収剤100質量部中に、100質量部、すなわち、上記光吸収剤が上記化合物Aであるものとすることができる。また、上記含有量は、光吸収剤100質量部中に、100質量部未満、すなわち、光吸収剤が上記化合物A及びその他の成分を含む組成物であっても差し支えなく、例えば、10質量部より多く99質量部以下とすることができ、50質量部以上95質量部以下であることが好ましい。
本明細書において、特に断りがない場合には、含有量は質量基準である。
【0155】
上記光吸収剤に含まれる上記化合物Aの種類は、1種類のみであっても2種類以上であっても差し支えない。上記種類は、例えば、2種類以上5種類以下とすることができる。上記光吸収剤が、上記化合物Aを2種類含む例としては、例えば、上記化合物A1及び化合物A2を含むもの、n=1の化合物A及びn=2の化合物Aを含むもの、インドール環の水素原子を置換する置換基が、重合性基を有する化合物及び重合性基を有しない化合物を含むもの等が挙げられる。
【0156】
上述の化合物Aについては、「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0157】
2.その他の成分
上記光吸収剤は、上記化合物Aを含むものであるが、必要に応じてその他の成分を含むものであっても構わない。このようなその他の成分としては、例えば、後述する「C.組成物」の「2.樹脂」及び「3.その他の成分」の項に記載の内容等が挙げられる。
【0158】
上記光吸収剤の形状は、粉末状であってもペレット状であっても差し支えない。
ペレット状である場合、上記光吸収剤の製造方法としては、例えば、押出機等を用いて、上記化合物A及び樹脂を混合した後、ペレット状に成型する方法を用いることができる。
【0159】
C.組成物
次に、本発明の組成物について説明する。
本発明の組成物は、上述の化合物Aと、樹脂と、を含むことを特徴とするものである。上記化合物Aを含むことで、上記組成物は、400nm付近の光の吸収性により優れたものとなる。
以下、本発明の組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0160】
1.化合物A
上記化合物Aの含有量としては、組成物に対して所望の光吸収性を付与できるものであれば特に限定されるものではない。上記含有量としては、例えば、組成物の固形分100質量部に対して、0.05質量部以上10質量部以下とすることができ、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。上記含有量が上述の範囲であることで、樹脂等に効率的に400nm付近の光の吸収能を付与できるからである。固形分とは、溶媒以外のすべての成分を含むものである。
【0161】
上記組成物に含まれる上記化合物Aの種類は、1種類のみであっても2種類以上であっても差し支えない。上記種類は、例えば、2種類以上5種類以下とすることができる。
【0162】
上述の化合物Aについては、「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0163】
2.樹脂
上記組成物は、上記樹脂を含むことで、上記化合物Aを安定的に保持可能となる。その結果、上記組成物は、例えば、上記化合物Aを含むフィルム、成形体等の形成が容易となる。このような樹脂としては、化合物Aを安定的に保持可能なものであればよく、例えば、重合性基を有する重合性化合物、重合性基を有しない重合体等が挙げられる。
【0164】
(1)重合性化合物
上記重合性化合物は、重合性基を有するものであり、重合性基同士が重合することで、高分子量化することができ、上記化合物Aを安定的に保持可能となる。上記重合性化合物は、上記重合性基の種類、すなわち、重合反応の種類により異なるものであり、例えば、ラジカル重合性基を有するラジカル重合性化合物、カチオン重合性基を有するカチオン重合性化合物、アニオン重合性基を有するアニオン重合性化合物等が挙げられる。
【0165】
(1-1)ラジカル重合性化合物
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有するものである。
上記ラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合可能なものであれば制限はなく、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基等が挙げられる。(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルを含む意味で用いるものとすることができる。
上記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を1以上有するものとすることができ、ラジカル重合性基を1つ有する単官能化合物、ラジカル重合性基を2以上有する多官能化合物を用いることができる。
【0166】
上記ラジカル重合性化合物としては、酸価を有する化合物、酸価を有しない化合物等を用いることができる。上記酸価を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基等を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。上記酸価を有しない化合物としては、エポキシアクリレート樹脂、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル等のカルボキシル基等を有しない(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0167】
上記ラジカル重合性化合物は、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。例えば、ラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有し、酸価を有する化合物及びエチレン性不飽和基を有し、酸価を有しない化合物を組み合わせて使用することができる。ラジカル重合性化合物は、2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。このようなラジカル重合性化合物等としては、より具体的には、特開2016-176009号公報に記載されるラジカル重合性化合物等が挙げられる。
【0168】
(1-2)カチオン重合性化合物
カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基を有するものである。
上記カチオン重合性基としては、カチオンにより重合可能なものであれば制限はなく、例えば、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基等が挙げられる。カチオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ基を有するエポキシ化合物及びオキセタン基を有するオキセタン化合物等の環状エーテル基を有する化合物、並びにビニルエーテル基を有するビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0169】
上記カチオン重合性化合物は、カチオン重合性基を1以上有するものとすることができ、カチオン重合性基を1つ有する単官能化合物、カチオン重合性基を2以上有する多官能化合物を用いることができる。このようなカチオン重合性化合物等としては、より具体的には、特開2016-176009号公報に記載されるカチオン重合性化合物等が挙げられる。
カチオン重合性化合物は、2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。
カチオン重合性化合物は、光カチオン開始剤、熱カチオン開始剤等のカチオン開始剤と共に用いることができる。
【0170】
(1-3)アニオン重合性化合物
アニオン重合性化合物は、アニオン重合性基を有するものである。
上記アニオン重合性基としては、アニオンにより重合可能なものであればよく、エポキシ基、ラクトン基等が挙げられる。上記アニオン重合性化合物としては、例えば、エポキシ基を有するエポキシ化合物、ラクトン基を有するラクトン化合物、(メタ)アクリル基を有する化合物等が挙げられる。
上記アニオン重合性化合物は、アニオン重合性基を1以上有するものとすることができ、上記重合性基を1つ有する単官能化合物、上記重合性基を2以上有する多官能化合物を用いることができる。
上記ラクトン化合物としては、β-プロピオラクトン、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
エポキシ化合物としては、上記カチオン重合性化合物として例示したエポキシ化合物を用いることができる。また、(メタ)アクリル基を有する化合物としては、上記ラジカル重合性化合物として例示したものを用いることができる。
アニオン重合性化合物は、2種以上を混合して使用する場合には、それらを予め共重合して共重合体として使用してもよい。
【0171】
(2)重合性基を有しない重合体
上記重合体は、重合性基を有しないものである。
このような重合体としては、繰り返し構造を含むものであればよく、感光性を有する感光性樹脂、感光性を有しない非感光性樹脂等が挙げられる。
【0172】
(2-1)感光性樹脂
上記感光性樹脂は、感光性を有するものであり、例えば、酸発生剤と共に用いられ、酸の作用でエステル基またはアセタール基等の化学結合の切断等、現像液に対する溶解性が増加する方向に変化するポジ型樹脂が挙げられる。ポジ型樹脂としては、例えば、特開2016-89085号公報に記載のレジストベース樹脂または化合物等を用いることができる。
【0173】
(2-2)非感光性樹脂
上記非感光性樹脂としては、感光性を有しないものであればよく、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルサルホン、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、スチレン-ブタジエンコポリマー、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ノルボルネン系樹脂、アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のメタクリル樹脂、イソブチレン無水マレイン酸共重合樹脂、環状オレフィン系等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、ゼラチン、カゼイン、澱粉、セルロース誘導体、アルギン酸等の天然高分子材料も用いることができる。さらに、上記重合性化合物の重合物も用いることができる。すなわち、上記組成物は、上記化合物Aと、重合性化合物とを含む組成物の硬化物であってもよい。
【0174】
(2-3)重合体
上記重合体の重量平均分子量(Mw)は、組成物の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、1500以上とすることができ、1500以上300000以下とすることができる。
上記重量平均分子量Mwは、例えば、東ソー(株)製のHLC-8120GPCを用い、溶出溶媒を0.01モル/リットルの臭化リチウムを添加したN-メチルピロリドンとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw377400、210500、96000、50400、20650、10850、5460、2930、1300、580(以上、Polymer Laboratories社製 Easi PS-2シリーズ)及びMw1090000(東ソー(株)製)とし、測定カラムをTSK-GEL ALPHA-M×2本(東ソー(株)製)として測定して得ることができる。測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0175】
(3)その他の樹脂
上記樹脂としては、シリコン系、ウレタン系、アクリル系等の粘着剤、ポリビニルブチラール接着剤、エチレン-酢酸ビニル系接着剤等の公知の粘接着剤も用いることができる。上記粘接着剤を用いる場合、必要に応じて、硬化剤として、金属キレート系、イソシアネート系、エポキシ系等の架橋剤を用いることができる。
【0176】
(4)その他
上記組成物は、上述の化合物Aと、樹脂と、を含むものであり、化合物A及び樹脂は、共有結合により結合していないものを用いることができるが、共有結合により結合しているものであってもよい。
例えば、樹脂として、その構造中にエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基およびヒドロキシル基等の反応性官能基を備えるアクリル樹脂又はメタクリル樹脂を挙げることができ、この樹脂に対して、上記反応性官能基と反応して共有結合を形成可能な基を有する化合物Aを反応させ化合物A及び樹脂の結合体として用いることができる。
例えば、後述する実施例1において1,8-ジブロモオクタンの代わりに、3-ブロモプロピオン酸等を付加して、カルボキシル基を有する化合物Aを作成し、これを、水酸基を有する樹脂に結合することができる。
また、化合物Aとして、水酸基を有する化合物を用い、これをエポキシ基、アミノ基、カルボキシル基等を有する樹脂に結合することもできる。
上記反応性官能基を有する樹脂としては、重合性基を有するものであってもよく、重合性基を有しないものであってもよい。
また、上記反応性官能基を有する樹脂としては、重合体を用いることができる。このような重合体の重量平均分子量としては、上記「(2)重合性基を有しない重合体」の項に記載の内容と同様とすることができる。
上記反応性官能基を有する樹脂として用いることができる、反応性官能基を有する重合体の具体例としては、東亞合成社製のARUFON UG-4035、ARUFON UG-4010、ARUFON UG-4070、ARUFON UH-2000、ARUFON UH-2041、ARUFON UH-2170、ARUFON UP-1000などが挙げられる。
【0177】
3.その他の成分
上記組成物は、上記化合物Aを含むものであるが、必要に応じてその他の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、紫外線吸収剤、開始剤等が挙げられる。
【0178】
(1)紫外線吸収剤
上記組成物は、紫外線吸収剤を含むことで、紫外線領域から400nm付近までの高エネルギーの光を安定的に吸収可能となる。その結果、上記組成物は、例えば、有機EL素子の劣化防止のために用いられる光学フィルタとして用いた場合には、効果的に劣化を防止可能となる。
上記紫外線吸収剤としては、紫外線吸収剤として一般的に用いられるものを用いることができる。例えば、最大吸収波長が、350nm未満であるものを好ましく用いることができる。最大吸収波長の測定方法については、上記「A.化合物」の項に記載の方法と同様とすることができる。
【0179】
上記紫外線吸収剤としては、具体的には、特開2017-008221号公報に記載の2-ヒドロキシベンゾフェノン類、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類、ベンゾエート類及びトリアリールトリアジン類等や、特開2002-97224号公報に記載のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
また、上記紫外線吸収剤としては、加熱処理等により、紫外線吸収能が発現する潜在性紫外線吸収剤も用いることができる。このような潜在性紫外線吸収剤としては、例えば、国際公開第2014/021023号公報に記載の潜在性添加剤として記載されるものを用いることができる。
【0180】
上記紫外線吸収剤の含有量としては、組成物に所望の紫外線吸収性を付与できるものであれば制限はなく、例えば、上記化合物Aの含有量として記載した内容と同様とすることができる。上記紫外線吸収剤の化合物Aに対する質量割合(紫外線吸収剤/化合物A)としては、組成物に所望の光吸収性を付与できるものであれば差し支えなく、1以上でも1以下でも問題なく、例えば、0.1以上10以下とすることができる。
【0181】
(2)開始剤
上記組成物は、開始剤を含むことで、例えば、硬化性組成物として用いることが容易となる。
このような開始剤としては、重合性化合物を重合可能なものであればよく、例えば、ラジカル重合性化合物と共に添加し得るラジカル重合開始剤、カチオン重合性化合物共に添加し得る、又は感光性化合物と共に酸発生剤として添加し得るカチオン重合開始剤、アニオン重合性化合物と共に添加し得るアニオン重合開始剤等が挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤及びカチオン重合開始剤等としては、より具体的には、特開2016-176009号公報に記載されるラジカル重合開始剤及びカチオン開始剤等を用いることができる。また、上記アニオン重合開始剤等としては、より具体的には、特開2017-073389号公報に記載される光アニオン重合開始剤、熱アニオン重合開始剤等が挙げられる。
【0182】
(3)その他
上記その他の成分としては、紫外線吸収剤、開始剤以外の成分も含むことができ、例えば、溶媒、着色剤、無機化合物、着色剤、無機化合物等を分散させる分散剤、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカップリング剤等の添加剤が挙げられる。上記添加剤については、公知の材料を用いることができ、例えば、国際公開第2014/021023号公報に記載のものを用いることができる。
なお、溶媒は、上記各成分を溶解または分散可能な溶剤を含んでもよい。溶媒としては、25℃、大気圧下で液状であり、組成物の各成分を分散または溶解可能なものである。また、溶媒は、化合物A及び樹脂等と反応しないものである。したがって、例えば、重合性化合物に分類されるものは、25℃、大気圧下で液状であっても、本発明の組成物においては、溶媒に該当しない。
また、上記その他の成分としては、消光剤、光安定剤も含むことができる。
上記消光剤及び光安定剤としては、例えば、特開2016-160387号公報に記載のニッケル誘導体等の消光剤、ヒンダードアミン化合物(HALS)等が挙げられる。
【0183】
4.組成物
上記組成物の製造方法としては、上記各成分を分散性良く混合できる方法であれば制限はなく、公知の攪拌手段により混合する方法を用いることができる。例えば、樹脂が熱可塑性樹脂である場合には、押出機等を用いて樹脂を可塑化させながら樹脂及び化合物Aを混合する方法を用いることができる。また、樹脂として重合性化合物の重合物を含む場合には、上記化合物A及び重合性化合物、必要に応じて開始剤を含む組成物を準備した後、上記組成物に対して硬化処理する方法が挙げられる。硬化処理としては、開始剤として光重合開始剤を含む場合には、露光処理を挙げることができ、開始剤として熱重合開始剤を含む場合には、加熱処理が挙げられる。
【0184】
上記組成物の用途としては、上記「1.化合物A」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0185】
D.光学フィルタ
次に、本発明の光学フィルタについて説明する。
本発明の光学フィルタは、上述の化合物Aを含む光吸収層を有することを特徴とするものである。上記光吸収層が上記化合物Aを含むことで、上記光学フィルタは、400nm付近の光の吸収性により優れたものとなる。
以下、本発明の光学フィルタに含まれる光吸収層について詳細に説明する。
【0186】
1.光吸収層
上記光吸収層は、上記化合物Aを含むものである。
上記化合物A及びその含有量等については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
上記光吸収層は、化合物Aを含むものであれば制限はなく、樹脂を含むものであっても差し支えない。また、化合物A及び樹脂以外に、必要に応じてその他の成分を含むものであっても構わない。このような樹脂及びその他の成分については、上記「C.組成物」の項に記載の「2.樹脂」、「3.その他の成分」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0187】
上記光吸収層の平面視形状、面積及び厚み等の形状については、光学フィルタの用途等に応じて適宜設定することができる。
上記光吸収層の形成方法としては、所望の形状、厚みの光吸収層を形成可能なものであればよく、公知の塗膜の形成方法を用いることができる。上記形成方法としては、例えば、上記「C.組成物」の項に記載の組成物を塗布して、塗膜に対して乾燥処理、硬化処理等を行う方法を用いることができる。
【0188】
2.光学フィルタ
上記光学フィルタは、上記光吸収層のみを含むものであっても、上記光吸収層以外のその他の層を含むものであっても差し支えない。上記その他の層としては、透明支持体、下塗り層、反射防止層、ハードコート層、潤滑層、粘着剤層等が挙げられる。このような各層の内容及びその形成方法等については、光学フィルタに一般的に用いられるものとすることができ、例えば、特開2011-144280号公報、国際公開第2016/158639号等に記載の内容と同様とすることができる。
上記光吸収層は、例えば、上記透明支持体及び任意の各層の間を接着する接着層等として用いられるものであっても構わない。その際には、上記光学フィルタは、接着層としての光吸収層の表面に、易密着したポリエチレンテレフタレートフィルム等の公知のセパレータフィルムを設けることもできる。
【0189】
上記光学フィルタは、画像表示装置用として用いる場合、通常ディスプレイの前面に配置することができる。例えば、光学フィルタをディスプレイの表面に直接貼り付けても問題はなく、ディスプレイの前に前面板や電磁波シールドが設けられている場合は、前面板又は電磁波シールドの表側(外側)又は裏側(ディスプレイ側)に光学フィルタを貼り付けることができる。また、画像表示装置に含まれる各部材、例えば、カラーフィルタ、偏光板等の光学部材として用いることもできる。さらに、上記画像表示装置に含まれる各部材に直接積層されるものであっても構わない。
【0190】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0191】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0192】
[実施例1]
インドール-3-カルボキシアルデヒド(0.044mol)及び炭酸カリウム(0.050mol)をDMF(25mL)に加え、1,8-ジブロモオクタン(0.020mol)を滴下した。80℃で9時間加熱した後、反応液を酢酸エチルで抽出し、油層を水洗した。油層からの析出物をろ過し、メタノールで洗浄して、中間体を得た。
次いで、中間体(0.010mol)、マロノニトリル(0.022mol)、ピペリジン(0.0020mol)をエタノール(50mL)に加え、80℃で5時間加熱した。反応液をエタノールで希釈して析出物をろ過し、乾燥して、下記式(11)で表される化合物(以下、化合物11と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
得られた化合物の1H-NMR及びIR測定結果を下記表1及び表2に示す。
【0193】
[実施例2]
1,8-ジブロモオクタンの代わりに、5-ブロモ-1-ペンテンを用い、マロノニトリルの代わりにシアノ酢酸エチルを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(40)で表される化合物(以下、化合物40と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0194】
[実施例3]
マロノニトリルの代わりにシアノ酢酸エチルを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(41)で表される化合物(以下、化合物41と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0195】
[実施例4]
インドール-3-カルボキシアルデヒドの代わりに2-メチルインドール-3-カルボキシアルデヒド、1,8-ジブロモオクタンの代わりにヨードエタンを用い、マロノニトリルの代わりにシアノ酢酸アリルを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(62)で表される化合物(以下、化合物62と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0196】
[実施例5]
インドール-3-カルボキシアルデヒドの代わりに2-フェニルインドール-3-カルボキシアルデヒド、1,8-ジブロモオクタンの代わりにメタクリル酸2-ブロモエチルを用いた以外は、実施例1と同様にして、下記式(64)で表される化合物(以下、化合物64と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0197】
[実施例6]
1,8-ジブロモオクタンの代わりに、3-ブロモプロピオン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして化合物を得た。
次いで、得られた化合物、トリメチロールエタン(0.010mol)及び4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.010mol)をジクロロメタン(50mL)加え、0℃に冷却した。そこにジシクロヘキシルカルボジイミド(0.035mol)を撹拌しながら加えた。その後、室温まで昇温し、5時間撹拌した。反応液から析出物をろ別し、ろ液を希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を減圧下で脱溶媒し、メタノールで晶析した。析出物をろ過し、乾燥して、下記式(68)で表される化合物(以下、化合物68と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
[実施例101]
1,8-ジブロモオクタンの代わりに、3-ブロモプロピオン酸を用いた以外は、実施例1と同様にして得られた化合物(0.020mоl)に、1,4-ベンゼンジメタノール(0.010mol)、THF(50mL)、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(0.010mol)を入れ、0℃に冷却した。そこにジシクロヘキシルカルボジイミド(0.035mol)を撹拌しながら加えた。溶媒を留去し、シリカカラム(クロロホルム/メタノール=10/1)で精製後、メタノールで再結晶し、乾燥して、下記式(101)で表される化合物(以下、化合物101と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0202】
[実施例102]
1,4-ベンゼンジメタノールの代わりに1,3-プロパンジオールを用いた以外は、実施例101と同様にして、下記式(102)で表される化合物(以下、化合物102と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0203】
[実施例103]
1,4-ベンゼンジメタノールの代わりに2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレートを用いた以外は、実施例101と同様にして、下記式(103)で表される化合物(以下、化合物103と称する場合がある。)を得た。
得られた固体が目的物であることは、1H-NMRおよびIRにて確認した。
【0204】
[実施例104]
1,4-ベンゼンジメタノールの代わりにペンタエリスリトールトリアクリレートを用いた以外は、実施例101と同様にして、下記式(104)で表される化合物(以下、化合物104と称する場合がある。)を得た。
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
[比較例1]
下記一般式(B1)で表される化合物(以下、化合物B1)を準備した。
【0209】
【0210】
[評価1]
実施例及び比較例の化合物について、吸光スペクトル測定、常圧下の10%重量減少温度及び吸光度維持率について評価を行った。
【0211】
1.吸光スペクトル
実施例及び比較例の化合物の吸光度を、JIS K0115に準拠して測定した。
具体的には、溶媒(クロロホルム)中に1.0×10-5mol/Lの濃度となるように溶解し、評価用サンプルを得た。次に、得られた評価用サンプルを、石英セル(光路長10mm、厚み1.25mm)に充填し、吸光光度計(例えば、U-3900(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて各波長における吸光度を測定した。実施例1及び比較例1の化合物の測定結果を、それぞれ
図1及び
図2に示す。また、実施例1の化合物である化合物11、実施例103の化合物である化合物103及び比較例の化合物である化合物B1の最大吸収波長、半値幅及び各波長での吸光度の測定結果を、下記表3に示す。吸光度測定は、250nm以上600nm以下の範囲で測定した。
【0212】
2.常圧下の10%重量減少温度
実施例及び比較例の化合物について下記条件で10%重量減少温度を測定した。結果を下記表4に示す。10%重量減少温度が高いほど、揮散性が低いことを示す。
【0213】
(10%重量減少温度の測定条件)
示差熱熱重量同時測定装置として、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、型式:EXSTAR TG/DTA6200を用いた。
測定条件は、試料約5mg、窒素200mL/min雰囲気下、常圧下で、昇温開始温度30℃、昇温終了温度500℃、昇温速度10℃/minで昇温した際における試料について熱減量を測定し、30℃時点の試料重量に対して10%減量した時点の温度を10%重量減少温度とした。
【0214】
3.吸光度維持率
実施例及び比較例の化合物について、下記条件で吸光度維持率を測定し、下記評価基準で評価した。結果を下記表5に示す。吸光度維持率が高いほど、耐光性に優れることを示す。
<評価基準>
○:60%超
△:55%以上60%以下
×:55%未満
【0215】
(吸光度維持率測定条件)
吸光度維持率は、下記(1)~(3)をこの順で行う方法を用いた。
(1)化合物を3.8質量%添加したポリメチルメタクリレート(PMMA)膜(100μm)を準備し、評価用サンプルとする。
(2)評価用サンプルに対して、キセノン光を240時間照射する。
(3)キセノン光照射前後の評価用サンプルの化合物Aの最大吸収波長での吸光度変化を測定し、吸光度維持率(照射後吸光度/照射前吸光度)を計算する。
なお、キセノン光の照射は、キセノンウェザーメーター「アトラス・ウエザオメータCi4000」((株)東洋精機製作所製)を用いた。
また、キセノン光照射条件は、以下の条件を用いた。
【0216】
(キセノン光照射条件)
放射照度:0.55W/m2(波長340nm)
試験槽内温度:62℃
試験槽内相対湿度:50%
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
[評価2]
実施例及び比較例の化合物を用いた重合性組成物について、硬化性、化合物と樹脂との相溶性、硬化時のアウトガス及び硬化物の吸光度維持率について評価を行った。
【0221】
(重合性組成物の調製)
トリメチロールプロパントリアクリレート42質量部、ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート(ダイセル・オルネクス社製 EB3700)16質量部、トリプロピレングリコールジアクリレート42質量部、レベリング剤(SH-29A)0.5質量部及びラジカル開始剤(Irgacure 907)5質量部を混合した後、化合物A又は化合物B1 5質量部とN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)50質量部とを混合した溶液を添加し、40℃で10分間攪拌して重合性組成物を調製した。
【0222】
1.硬化性
ガラス基板上に上記重合性組成物をスピンコート(500rpm、7秒間)し、ホットプレートを用いて、90℃で120秒間プリベークを行った。光源として高圧水銀ランプ(20mW/cm2)を用いて200mJ/cm2露光し、評価用塗膜を得た。
得られた評価用塗膜についてタックの有無を確認し、下記評価基準で硬化性を評価した。結果を下記表6に示す。
<評価基準>
〇:タックフリーである。
×:タックが残っている。
タックが少ない程、化合物Aによる重合性組成物の硬化阻害が少ないと判断できる。また、その結果、安定的に化合物Aが保持された硬化物が得られると判断できる。
【0223】
2.相溶性
化合物A又は化合物B1 5質量部とDMAc5~150質量部とを混合した溶液を用いた以外は、上記重合性組成物の調製と同様にして重合性組成物を得た。得られた重合性組成物を目視で観察した際に、化合物A又は化合物B1の析出がない重合性組成物を調製するために必要となるDMAcの添加量から、化合物A又は化合物B1と樹脂との相溶性を下記評価基準で評価した。結果を下記表6に示す。
〇:DMAcの添加量が10質量部未満である。
△:DMAcの添加量が10質量部以上100質量部未満である。
×:DMAcの添加量が100質量部以上である。
DMAcの添加量が少ない程、化合物Aは樹脂との相溶性に優れると判断できる。また硬化物中で化合物Aがより均一に分散保持されることで、所望の波長の光を安定的に吸収可能な硬化物が得られると判断できる。
【0224】
3.アウトガス
ガラス基板上に上記重合性組成物をスピンコート(500rpm、7秒間)し、ホットプレートを用いて、90℃で120秒間プリベークを行った。光源として高圧水銀ランプ(20mW/cm2)を用いて200mJ/cm2露光し、硬化膜を得た。
この硬化膜の上に0.7mmのスペーサーとガラス基板を設置し、ホットプレートを用いて230℃2時間加熱した。
加熱後、硬化膜の上に設置したガラス基板の吸収スペクトル(400nm)を測定した。400nmの吸光度から、アウトガス性を下記基準で評価した。結果を下記表6に示す。
〇:400nmの吸光度が0.1未満である。
△:400nmの吸光度が0.1以上0.5未満である。
×:400nmの吸光度が0.5以上である。
400nmの吸光度が低いほど、化合物Aの揮散性が低く、硬化物で安定的に化合物Aが保持されていると判断できる。
【0225】
4.硬化物の吸光度維持率
上記「1.硬化性」の評価と同様の方法により作製した評価用塗膜を、評価用サンプルの代わりに用いた以外は、上記[評価1]の「1.吸光度維持率」と同様の条件で吸光度維持率を求めた。得られた吸光度維持率から、硬化物の吸光度維持率を下記評価基準で評価した。結果を下記表6に示す。
〇:60%超
△:55%以上60%以下
×:55%未満
なお、吸光度維持率が高い程、硬化物中の化合物Aの揮散性が低く、硬化物中で安定的に化合物Aが保持されていると判断できる。
【0226】
【0227】
[まとめ]
表3及び
図1より、実施例1の化合物11は、例えば、400nmでの吸光度が比較例1の化合物B1と比べて高く、400nm付近の光の吸収性に優れることが確認できた。 表4より、実施例1の化合物11及び実施例101~103の化合物101~103は、耐熱性に優れたものであることが確認できた。
表5より、実施例の化合物は、吸光度維持率に優れたものであることが確認できた。
表6より、実施例の化合物を用いた重合性組成物は、硬化性、化合物と樹脂との相溶性に優れ、化合物Aの揮散性が低く、硬化物の吸光度維持率に優れたものであることが確認できた。
以上の結果より、化合物A及び樹脂を含む組成物は、400nm付近の光を安定的に吸収し、例えば、この組成物を光学フィルタとして用いた場合には、400nm付近の光の透過を安定的に阻止できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0228】
本発明は、400nm付近の光の吸収性に優れた化合物を提供できるという効果を奏する。