(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】センサコントローラ、アクティブペン、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231023BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20231023BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G06F3/041 560
G06F3/03 400B
G06F3/03 400Z
G06F3/041 500
G06F3/044 B
(21)【出願番号】P 2020531302
(86)(22)【出願日】2019-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2019027826
(87)【国際公開番号】W WO2020017477
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2018135288
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】久野 晴彦
【審査官】酒井 優一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/139861(WO,A1)
【文献】特開2011-018090(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042583(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0262084(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0246390(US,A1)
【文献】国際公開第2016/171976(WO,A1)
【文献】特開2017-138648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/03
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ電極に接続され、前記センサ電極に誘導される電荷に応じて1以上のアクティブペンの位置を検出するセンサコントローラであって、
前記センサ電極を用いてアクティブペンの接近を検出するステップと、
前記接近を検出した前記アクティブペンとペアリングを行うとともに、ペアリング中の1以上のアクティブペンそれぞれのペアリング状態を示すペアリング状態情報を更新するステップと、
前記センサ電極から、時刻同期の基準となるアップリンク信号を介して、前記ペアリング状態情報を複数のアクティブペンに対して報知するステップと、を実行
し、
前記ペアリング状態情報を検出したアクティブペンは、検出された前記ペアリング状態情報に基づいてペアリング状態の維持又は解除を行う、
センサコントローラ。
【請求項2】
前記アップリンク信号は、該アップリンク信号の宛先である前記アクティブペンを示すアドレス情報と、前記ペアリング状態情報とを含む、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
【請求項3】
前記アップリンク信号は、該アップリンク信号の宛先が全ての前記アクティブペンであることを示すアドレス情報と、前記ペアリング状態情報とを含む、
請求項1に記載のセンサコントローラ。
【請求項4】
センサ電極に接続されたセンサコントローラとの間で通信を行うアクティブペンであって、
ペン先電極と、
前記ペン先電極に接続された集積回路と、を含み、
前記集積回路は、
前記ペン先電極と前記センサ電極との結合容量を介して、前記センサコントローラがペアリング中の1以上のアクティブペンそれぞれのペアリング状態を示すペアリング状態情報を含むアップリンク信号の検出動作を行い、
検出された前記ペアリング状態情報に基づいてペアリング状態の維持又は解除を行い、前記ペアリング状態を維持する場合には、該ペアリング状態に基づいた設定でダウンリンク信号を送信する、
アクティブペン。
【請求項5】
前記集積回路は、
前記アップリンク信号の検出に失敗した後も所定期間にわたって前記ペアリング状態の維持を行うよう構成され、
前記所定期間内に再び前記アップリンク信号が検出され、かつ、該アップリンク信号内の前記ペアリング状態情報が自身とのペアリングを前記センサコントローラが維持していることを示す場合に、前記ペアリング状態に基づいた設定でダウンリンク信号を送信する、
請求項4に記載のアクティブペン。
【請求項6】
前記集積回路は、
検出された前記ペアリング状態情報が自身とのペアリングを前記センサコントローラが解除したことを示す場合に、前記ペアリング状態の解除を行う、
請求項4に記載のアクティブペン。
【請求項7】
アクティブペンとセンサコントローラとの間で実行される通信方法であって、
前記アクティブペンが、前記センサコントローラとペアリング済みであるときに、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号を送信するステップと、
前記センサコントローラが、前記第1の識別データを含む前記ダウンリンク信号を受信し、受信された前記第1の識別データに基づいて取得される第2の識別データを含むアップリンク信号を送信するステップと、
前記アクティブペンが、前記第2の識別データを含む前記アップリンク信号を受信し、受信した前記第2の識別データと前記第1の識別データとを比較し、比較結果に応じて、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号の送信、又は、前記センサコントローラとのペアリングを変更する処理を行うステップと、
を含む、通信方法。
【請求項8】
前記アクティブペンは、前記比較の結果、受信した前記第2の識別データと前記第1の識別データとが一致すると判定した場合に、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号の送信を行い、
前記アクティブペンは、前記比較の結果、受信した前記第2の識別データと前記第1の識別データとが一致しないと判定した場合に、前記センサコントローラとのペアリングを変更する処理を行う、
請求項
7に記載の通信方法。
【請求項9】
前記第1の識別データは、ペン先がタッチ面にコンタクトしているか否かを示すコンタクト状態データである、
請求項
7又は8に記載の通信方法。
【請求項10】
センサコントローラから送信されたアップリンク信号に基づいて、ダウンリンク信号の送信制御を実行するアクティブペンであって、
前記センサコントローラとペアリング済みであるときに、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号を送信し、前記第1の識別データに対応する第2の識別データを含むアップリンク信号を受信した場合に、
受信した前記第2の識別データ
と前記第1の識別データとを比較し、比較結果に応じて、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号の送信、又は、前記センサコントローラとのペアリングを変更する処理を行う集積回路、
を含むアクティブペン。
【請求項11】
前記集積回路は、
前記比較の結果、受信した前記第2の識別データと前記第1の識別データとが一致すると判定した場合に、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号の送信を行い、
前記比較の結果、受信した前記第2の識別データと前記第1の識別データとが一致しないと判定した場合に、前記センサコントローラとのペアリングを変更する処理を行う、
請求項
10に記載のアクティブペン。
【請求項12】
前記第1の識別データは、当該アクティブペンのペン先がタッチ面にコンタクトしているか否かを示すコンタクト状態データである、
請求項
10又は11に記載のアクティブペン。
【請求項13】
アクティブペンを検出するセンサコントローラであって、
前記アクティブペンは、前記センサコントローラとペアリング済みであるときに、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号をペン先に設けられたペン先電極を介して送信するものであり、
前記ペン先電極と静電結合するセンサ電極に接続され、
前記第1の識別データを含む前記ダウンリンク信号を前記センサ電極を介して受信し、受信された前記第1の識別データに基づいて取得される第2の識別データを含むアップリンク信号を送信
し、
前記アクティブペンは、前記第2の識別データを含む前記アップリンク信号を受信した場合に、受信した前記第2の識別データと前記第1の識別データとを比較し、比較結果に応じて、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号の送信、又は、前記センサコントローラとのペアリングを変更する処理を行う、
センサコントローラ。
【請求項14】
前記第1の識別データは、前記ペン先がタッチ面にコンタクトしているか否かを示すコンタクト状態データである、
請求項
13に記載のセンサコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサコントローラ、アクティブペン、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
双方向通信を行い、アクティブペンとセンサコントローラとがペアリングをするシステムが知られている。この種のシステムでは、センサコントローラが新しいローカルペンID及び通信設定データ(ダウンリンク信号の送信に使える周波数、時間スロットなど)の割り当てを含むアップリンク信号を送信し、これを受信したアクティブペンが応答を返すことで、このローカルペンIDによって識別されるペアリングが確立される。ペアリング確立後のアクティブペンは、割り当てられた通信設定データを利用してダウンリンク信号の送信を行う。
【0003】
特許文献1には、上記のようなシステムの一例が開示されている。特許文献1の技術によれば、センサコントローラは、沈黙IDリスト(a quiet ID list)と呼ばれるリストを保持するように構成される。沈黙IDリストは、上記ローカルペンIDを格納するリストであり、センサコントローラは、ペアリング済みのアクティブペンからダウンリンク信号が届かなくなった場合に、そのアクティブペンに割り当てたローカルペンIDを沈黙IDリストに格納する。こうして沈黙IDリストに格納されたローカルペンIDは、古いものから順に、新たなペアリングに割り当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2016/0246390号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術には、ペアリング状態を維持管理するための処理に起因してシステムのパフォーマンスが下がってしまうという課題がある。以下、詳しく説明する。
【0006】
アクティブペンは、アップリンク信号が継続的に受信されている間には、自身宛のコマンドが含まれているか否か等に基づいてセンサコントローラが自身とのペアリング状態をまだ維持しているか否かを把握することができるが、タッチ面から離れたなどの理由でアップリンク信号が受信できなくなると、センサコントローラが自身とのペアリング状態をまだ維持しているか否かを把握できなくなる。その結果、アクティブペンは、次にダウンリンク信号を送信するときに、同じ通信設定データを利用してよいか否かが分からなくなる。
【0007】
そこで、アクティブペンとしては、受信されるはずのタイミングでアップリンク信号を受信できなかった場合に、ペアリング状態を一方的に解除してしまうか、又は、その後ダウンリンク信号を送信する際にセンサコントローラの間で双方向通信を行い、ペアリング状態を確認することになる。しかしながら、いずれの処理を行うにしても、次のペンダウン時に直ちに入力を開始できないことになるため、ユーザから見ると、システムのパフォーマンスが下がって見えてしまうことになる。特に、文字の筆記など、短時間に頻繁にアップリンク信号の到達範囲への出入りが発生するような場合には、その都度、ペアリング状態の解除又は確認が発生することになるので、著しくパフォーマンスが下がって見えてしまう。また、1つのアップリンク信号でペアリングを確立又は確認できるアクティブペンは1本のみであることから、1つのセンサコントローラが複数のアクティブペンと同時にペアリングする場合(以下、このような場合を「マルチペン」と称する)には、さらにパフォーマンスが下がって見えることになる。
【0008】
したがって、本発明の目的の一つは、ペアリング状態を維持管理するための処理に起因するパフォーマンス低下を抑制できるセンサコントローラ及びアクティブペンを提供することにある。
【0009】
また、上記マルチペンを利用する場合、ユーザは、アクティブペンごとに筆記属性(線色、線種など)を変えて使用することが一般的である。この筆記属性は、システム内においては、上述したローカルペンIDに紐付けて管理される。しかし、このローカルペンIDはユーザに通知されるものではなく、また、各アクティブペンの外観は全く同じであることが普通であるため、これまでのアクティブペンのユーザは、どのアクティブペンにどの筆記属性を割り当てたのか、書いてみないと分からなかった。これでは不便であるので、改善が必要とされていた。
【0010】
したがって、本発明の目的の他の一つは、各アクティブペンに割り当てた筆記属性をユーザが容易に把握できるアクティブペンを提供することにある。
【0011】
また、1つのタッチ面の近傍にグローバルペンID又はそのハッシュ値が一致する2つのアクティブペンが存在していた場合、2本のアクティブペンが同じローカルペンIDでセンサコントローラとのペアリングを確立してしまうという状況(ペアリングの衝突)が発生する可能性がある。センサコントローラが衝突を検出する方法を有していれば、センサコントローラから両方のアクティブペンに対してペアリング解除のコマンドを送信することで、衝突状態を解消することはできるが、そうすると、描画中の線の途切れを誘発することになってしまう。
【0012】
したがって、本発明の目的の他の一つは、描画中の線の途切れを誘発することなく、ペアリングの衝突を解消できる通信方法、アクティブペン、及びセンサコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面によるセンサコントローラは、センサ電極に接続され、前記センサ電極に誘導される電荷に応じて1以上のアクティブペンの位置を検出するセンサコントローラであって、前記センサ電極を用いてアクティブペンの接近を検出するステップと、前記接近を検出した前記アクティブペンとペアリングを行うとともに、ペアリング中の1以上のアクティブペンそれぞれのペアリング状態を示すペアリング状態情報を更新するステップと、前記センサ電極から、時刻同期の基準となるアップリンク信号を介して、前記ペアリング状態情報を複数のアクティブペンに対して報知するステップと、を実行するセンサコントローラである。
【0014】
本発明の第1の側面によるアクティブペンは、センサ電極に接続されたセンサコントローラとの間で通信を行うアクティブペンであって、ペン先電極と、前記ペン先電極に接続された集積回路と、を含み、前記集積回路は、前記ペン先電極と前記センサ電極との結合容量を介して、前記センサコントローラがペアリング中の1以上のアクティブペンそれぞれのペアリング状態を示すペアリング状態情報を含むアップリンク信号の検出動作を行い、検出された前記ペアリング状態情報に基づいてペアリング状態の維持又は解除を行い、前記ペアリング状態を維持する場合には、該ペアリング状態に基づいた設定でダウンリンク信号を送信する、アクティブペンである。
【0015】
本発明の第2の側面によるアクティブペンは、センサ電極に接続されたセンサコントローラとの間で通信を行うアクティブペンであって、ペン先電極と、前記ペン先電極に接続された集積回路と、インジケータと、を含み、前記集積回路は、前記センサコントローラが送信したアップリンク信号によりローカルペンIDが付与された場合に、該ローカルペンIDを識別するための表示を行うよう前記インジケータを制御する、アクティブペンである。
【0016】
本発明の第3の側面による通信方法は、アクティブペンとセンサコントローラとの間で実行される通信方法であって、前記アクティブペンが、前記センサコントローラとペアリング済みであるときに、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号を送信するステップと、前記センサコントローラが、前記第1の識別データを含む前記ダウンリンク信号を受信し、受信された前記第1の識別データに基づいて取得される第2の識別データを含むアップリンク信号を送信するステップと、を含む、通信方法である。
【0017】
本発明の第3の側面によるアクティブペンは、センサコントローラから送信されたアップリンク信号に基づいて、ダウンリンク信号の送信制御を実行するアクティブペンであって、前記センサコントローラとペアリング済みであるときに、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号を送信し、前記第1の識別データに対応する第2の識別データを含むアップリンク信号を受信した場合に、該第2の識別データに基づいて次のダウンリンク信号の送信制御を実行する集積回路、を含むアクティブペンである。
【0018】
本発明の第3の側面によるセンサコントローラは、アクティブペンを検出するセンサコントローラであって、前記アクティブペンは、前記センサコントローラとペアリング済みであるときに、当該アクティブペンを他のアクティブペンと区別するための第1の識別データを含むダウンリンク信号をペン先に設けられたペン先電極を介して送信するものであり、前記ペン先電極と静電結合するセンサ電極に接続され、前記第1の識別データを含む前記ダウンリンク信号を前記センサ電極を介して受信し、受信された前記第1の識別データに基づいて取得される第2の識別データを含むアップリンク信号を送信する、センサコントローラである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の側面によれば、ペアリング中の1以上のアクティブペンそれぞれのペアリング状態を示すペアリング状態情報がアップリンク信号により全てのアクティブペンに対して報知されているので、各アクティブペンは、ペアリング状態情報を見ることにより自身とのペアリングがセンサコントローラ内で維持されているか否かを把握できる。したがって、一方的なペアリング状態の解除や、ペアリング状態を確認するための双方向通信が不要になるので、ペアリング状態を維持管理するための処理に起因するパフォーマンス低下を抑制することが可能になる。
【0020】
本発明の第2の側面によれば、各アクティブペンがローカルペンIDを識別するための表示を行うので、ユーザは、各アクティブペンに割り当てた筆記属性を容易に把握することが可能になる。
【0021】
本発明の第3の側面によれば、1つのタッチ面の近傍にグローバルペンID又はそのハッシュ値が一致する2つのアクティブペンが存在していた場合であっても、描画中の線の途切れを誘発することなく、ペアリングの衝突を解消することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1の実施の形態による位置検出システム1の全体構成を示す図である。
【
図2】アクティブペン2の内部構成を示す図である。
【
図3】アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの到達範囲を示す図である。
【
図4】アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信のために使用されるフレームの構造を示す図である。
【
図5】センサコントローラ31が送信するアップリンク信号USの種類を示す図である。
【
図6】センサコントローラ31の状態遷移図である。
【
図8】センサコントローラ31とアクティブペン2の動作を示すシーケンス図である。
【
図9】本発明の第2の実施の形態によるセンサコントローラ31が送信するアップリンク信号USの種類を示す図である。
【
図10】センサコントローラ31とアクティブペン2の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態による位置検出システム1の全体構成を示す図である。同図に示すように、位置検出システム1は、複数のアクティブペン2a~2eと、タッチ面3tを有する位置検出装置3とを有して構成される。以下の説明では、アクティブペン2a~2eを特に区別する必要がない場合に、アクティブペン2と総称する場合がある。
【0025】
アクティブペン2は、例えばアクティブ静電方式に対応する電子ペンであり、位置検出装置3と双方向に通信可能に構成される。
【0026】
図2は、アクティブペン2の内部構成を示す図である。同図に示すように、アクティブペン2は、芯体20、ペン先電極21、筆圧検出部22、スイッチ23、インジケータ24、電源25、及び集積回路26を有して構成される。
【0027】
ペン先電極21は、芯体20の近傍に設けられる導電体であり、配線により集積回路26と電気的に接続されている。ペン先電極21は、後述する複数のセンサ電極30X,30Yのそれぞれと静電結合するように構成される。筆圧検出部22は、芯体20の先端(ペン先)に加えられた力(筆圧)を検出する機能部である。具体的に説明すると、筆圧検出部22は芯体20の後端部と当接しており、この当接を通じて、ユーザがアクティブペン2のペン先を位置検出装置3のタッチ面3tに押し当てたときに芯体20に加わる力を検出するよう構成される。具体的な例では、筆圧検出部22は、ペン先に加えられた力に応じて静電容量の変化する可変容量モジュールにより構成される。
【0028】
スイッチ23は、アクティブペン2の側面に設けられたスイッチであり、ユーザによってオンオフ可能に構成される。インジケータ24は、後述するアップリンク信号USにより当該アクティブペン2に付与されたローカルペンIDをユーザが識別するための表示を行う装置であり、例えば、数字を表示可能に構成されたLED数字表示器や、複数種類の色を表示可能に構成されたLEDなどによって構成され得る。電源25は、集積回路26に動作電力(直流電圧)を供給するためのもので、例えば円筒型のAAAA電池により構成される。
【0029】
集積回路26は、図示しない基板に形成された回路群によって構成される処理部であり、ペン先電極21、筆圧検出部22、スイッチ23、及びインジケータ24のそれぞれに接続される。アクティブペン2が行う後述の各処理はいずれも、集積回路26によって実行される。
【0030】
集積回路26は、ペン先電極21を用いて、位置検出装置3との間で信号を送受信可能に構成される。以下、こうして送受信される信号のうち位置検出装置3からアクティブペン2に送信されるものをアップリンク信号USと称し、アクティブペン2から位置検出装置3に送信されるものをダウンリンク信号DSと称する。
【0031】
アップリンク信号USは、典型的には、アクティブペン2に対する制御内容を示すコマンドを含む信号であり、本実施の形態においては、ペアリング中の1以上のアクティブペンそれぞれのペアリング状態を示すペアリング状態情報を全てのアクティブペンに対して報知する役割も果たす。アップリンク信号USの詳細については、後ほど
図5を参照しながら詳しく説明する。また、ダウンリンク信号DSは、無変調の搬送波信号であるバースト信号と、所定のデータによって変調された搬送波信号であるデータ信号とを含む信号である。集積回路26は、アップリンク信号USに含まれていたコマンドに従って送信すべきデータを取得し、取得したデータによって搬送波信号を変調することによりデータ信号を送信する。データ信号によって送信されるデータには、筆圧検出部22によって検出される筆圧、スイッチ23のオンオフ状態を示す情報、当該アクティブペン2のグローバルペンIDなどが含まれる。グローバルペンIDは、ローカルペンIDとは異なりすべてのアクティブペン2に一意に割り当てられる情報であり、アクティブペン2の製造段階で集積回路26内に書き込まれる。
【0032】
図3は、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの到達範囲を示す図である。同図に示すゾーンAは、その中にアクティブペン2のペン先電極21が位置しているとき、センサコントローラ31が送信したアップリンク信号USをアクティブペン2が受信でき、かつ、アクティブペン2が送信したダウンリンク信号DSをセンサコントローラ31が受信できる領域である。
図3の例では、アクティブペン2c,2d,2eがゾーンA内に位置している。
【0033】
ゾーンBは、その中にアクティブペン2のペン先電極21が位置しているとき、アクティブペン2はセンサコントローラ31が送信したアップリンク信号USを受信できるが、センサコントローラ31はアクティブペン2が送信したダウンリンク信号DSを受信できない領域である。ゾーンBが生ずるのは、図示するように、アップリンク信号USの到達範囲がダウンリンク信号DSの到達範囲よりも広いためである。
図3の例では、アクティブペン2b,2fがゾーンB内に位置している。
【0034】
ゾーンCは、その中にアクティブペン2のペン先電極21が位置しているとき、アクティブペン2はセンサコントローラ31が送信したアップリンク信号USを受信できず、センサコントローラ31もアクティブペン2が送信したダウンリンク信号DSを受信できない領域である。
図3の例では、アクティブペン2a,2gがゾーンC内に位置している。
【0035】
このように、位置検出装置3のタッチ面3t上の領域は、タッチ面3tから近い順にゾーンA、ゾーンB、ゾーンCに分類される。
【0036】
図4は、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信のために使用されるフレームの構造を示す図である。同図に示すように、アップリンク信号US及びダウンリンク信号DSの送受信は、フレーム単位で行われる。このフレームは、例えば、位置検出装置3に含まれるディスプレイ33(後述)の1画面分の表示期間である。アップリンク信号USは、典型的にはフレームの先頭で送信され、フレームの開始タイミングをアクティブペン2に知らせる役割(時刻同期の基準としての役割)を果たす。なお、1つのフレームの中で複数回にわたりアップリンク信号USを送信することとしてもよい。
【0037】
フレーム内におけるダウンリンク信号DSの送信時間はn個の時間スロットに分かれている。各時間スロットの継続時間はYμ秒であり、アップリンク信号USの送信後、Xμ秒ずつ間隔を空けてフレーム内に配置される。ダウンリンク信号DSの送信が行われないXμ秒の間には、後述するディスプレイ33による表示動作や、後述するセンサコントローラ31による指の位置検出動作などが実行される。各時間スロット内では、複数のアクティブペン2により同時に、所定シンボル数のダウンリンク信号DSが送信される。
【0038】
位置検出装置3は、ペアリングする各アクティブペン2に対し、周波数と時間スロットの互いに異なる組み合わせを割り当てるよう構成される。各アクティブペン2は、こうして割り当てられた周波数と時間スロットの組み合わせを用いて、ダウンリンク信号DSの送信を行う。これにより、複数のアクティブペン2が同じフレーム内でダウンリンク信号DSを送信することが可能になる。
【0039】
図1に戻る。位置検出装置3は、タッチ面3t内における各アクティブペン2の位置を検出可能に構成された装置である。典型的には、位置検出装置3はタブレット端末等のコンピュータであり、ディスプレイの表示面がタッチ面3tとなる。ただし、位置検出装置3は、表示面を有しないデジタイザであってもよい。以下では、位置検出装置3がタブレット端末であるとして説明を続ける。
【0040】
位置検出装置3は、タッチ面3tの直下に配置されたセンサ30と、センサコントローラ31と、これらを含む位置検出装置3の各部の機能を制御するホストプロセッサ32と、センサ30の下側に配置されたディスプレイ33とを有して構成される。
【0041】
センサ30は、相互容量型のタッチセンサを構成するもので、複数のセンサ電極30Xと複数のセンサ電極30Yとがマトリクス状に配置された構成を有して構成される。複数のセンサ電極30Xは、それぞれ図示したY方向に延在し、Y方向と直交するX方向に等間隔で配置された複数の線状導電体によって構成される。また、複数のセンサ電極30Yは、それぞれX方向に延在し、Y方向に等間隔で配置された複数の線状導電体によって構成される。
図1には、各複数のセンサ電極30X,30Yのうちの一部のみを示している。複数のセンサ電極30Yはディスプレイ33の共通電極を兼ねていてもよく、その場合の位置検出装置3は「インセル型」と呼ばれる。これに対し、センサ電極30X,30Yとディスプレイ内の共通電極とを別々に設けるタイプの位置検出装置3は、例えば「アウトセル型」又は「オンセル型」と呼ばれる。以下では、位置検出装置3はインセル型であるとして説明を続ける
【0042】
センサコントローラ31は、複数のセンサ電極30X,30Yのそれぞれに接続され、これらに誘導される電荷に応じて1以上のアクティブペン2の位置を検出する装置である。具体的には、タッチ面3t上における各アクティブペン2の指示位置を検出するとともに、各アクティブペン2がダウンリンク信号DSを用いて送信したデータを受信する機能と、タッチ面3t上における指の位置を検出する機能とを有して構成される。位置検出装置3がインセル型である場合には、センサコントローラ31はさらに、ディスプレイ33の表示動作(画素電極の駆動動作)に必要な共通電位を複数のセンサ電極30Yに印加する機能も有する。
【0043】
アクティブペン2に関してセンサコントローラ31は、センサ30を通じ、各アクティブペン2に向けてアップリンク信号USを送信するとともに、各アクティブペン2が送信したダウンリンク信号DSを受信する機能を有する。ダウンリンク信号DS中のバースト信号が受信された場合、センサコントローラ31は、各センサ電極30X,30Yにおけるバースト信号の受信レベルに基づいてアクティブペン2の指示位置を導出し、ホストプロセッサ32にレポートする。また、ダウンリンク信号DS中のデータ信号が受信された場合、センサコントローラ31は、データ信号を復調することによってアクティブペン2が送信したデータを取り出し、ホストプロセッサ32にレポートする。
【0044】
ホストプロセッサ32は、位置検出装置3の全体を制御する中央処理装置である。ホストプロセッサ32上では、描画アプリケーションや通信アプリケーションなどの各種アプリケーションが動作可能に構成される。描画アプリケーションは、センサコントローラ31から順次レポートされるアクティブペン2又は指の一連の位置に基づいて、タッチ面3t上におけるそれぞれの軌跡を示すインクデータを生成し記憶するとともに、記憶したインクデータのレンダリングを行う役割を果たす。描画アプリケーションはまた、アクティブペン2が送信したデータのレポートをセンサコントローラ31から受けた場合、レポートされたデータに応じて、レンダリングするインクデータの線幅、透明度、線色などの制御を行う。その他、ホストプロセッサ32は、ディスプレイ33の表示内容をフレームごとに書き換える制御も行う。ディスプレイ33の表示内容には、上記レンダリングの結果として得られる画像が含まれる。
【0045】
図5は、センサコントローラ31が送信するアップリンク信号USの種類を示す図である。同図に示すように、アップリンク信号USにはタイプ1~タイプ3の3種類があり、センサコントローラ31は、これらを使い分けることにより、各アクティブペン2の制御を行う。
【0046】
図5(a)に示すタイプ1のアップリンク信号USは、アクティブペン2の接近を検出するために、全てのアクティブペン2に対してブロードキャストされる信号であり、アップリンク信号種別フラグ1と、フレーム構造情報と、通信設定データと、ペアリング状態情報とを有して構成される。
【0047】
アップリンク信号種別フラグ1は、アクティブペン2がタイプ1のアップリンク信号USとタイプ2,3のアップリンク信号USとを区別するためのフラグであり、タイプ1のアップリンク信号USでは「0」が設定される。したがって、「0」であるアップリンク信号種別フラグ1は、全てのアクティブペン2が宛先であることを示すアドレス情報を構成する。
【0048】
フレーム構造情報は、フレームの時間長、フレーム内におけるアップリンク信号USの位置、
図4に示したXμ秒及びYμ秒の具体的な時間長、フレーム内に含まれる時間スロットの数、使用可能な周波数のセットなどによって特定されるフレームの構造を示す情報である。具体的なフレーム構造情報は、予めアクティブペン2とセンサコントローラ31の間で共有されている複数の構造のうちの1つを示す識別情報によって構成される。
【0049】
通信設定データは、これから通信しようとするアクティブペン2に対して割り当てる周波数と時間スロットの組み合わせを示すデータである。具体的な通信設定データは、予めアクティブペン2とセンサコントローラ31の間で共有されている複数の組み合わせのうちの1つを示す識別情報によって構成される。
【0050】
ペアリング状態情報は、センサコントローラ31がペアリング中の1以上のアクティブペン2それぞれのペアリング状態を示す情報であり、ペアリング時に各アクティブペン2に割り当てるローカルペンID(LPID)ごとに、ペアリング中か否かを示すペアリングフラグを有して構成される。ペアリングフラグは、対応するローカルペンIDがいずれかのアクティブペン2に割り当て中である場合に「1」となり、対応するローカルペンIDがいずれのアクティブペン2にも割り当てられていない場合に「0」となる情報である。
図5には、最大で6つのアクティブペン2と同時にペアリング可能なセンサコントローラ31の例を示している。この場合、ローカルペンIDは1~6の6つであり、ペアリング状態情報は6つのペアリングフラグを含んで構成される。
【0051】
ここで、ペアリング状態は、ペアリングが完了し維持されている状態、又は、ペアリングが維持されていない状態のいずれかである。ペアリングが完了し維持されている状態は、アクティブペン2が位置検出装置3に信号を供給可能にする上で必要な設定が維持されている状態である。必要な設定には、通信チャネルに関する設定(例えば周波数あるいは時間スロット)、ローカルペンIDの付与状態、などの通信リソースあるいはパラメータの払い出し状態が含まれる。他方、ペアリングが維持されていない状態は、アクティブペン2が位置検出装置3に信号を供給可能にする上で必要な設定がされていない状態である。
【0052】
タイプ1のアップリンク信号US内のペアリング状態情報はさらに、ペアリング可否フラグを有して構成される。ペアリング可否フラグは、センサコントローラ31が新たなペアリングを確立できるときに「1」となり、センサコントローラ31が新たなペアリングを確立できないときに「0」となる情報である。センサコントローラ31は、対応可能な最大数(
図5の例では6)のアクティブペン2とペアリング中である場合にペアリング可否フラグを「0」とし、それ以外の場合に「1」とする。
【0053】
タイプ1のアップリンク信号USを受信したアクティブペン2のうち、まだセンサコントローラ31とのペアリング状態にないアクティブペン2は、まずペアリング可否フラグを参照する。そして、ペアリング可否フラグが「1」であった場合に、受信したアップリンク信号USに含まれるフレーム構造情報、通信設定データ、及びペアリング状態情報を図示しないメモリに一時的に記憶するとともに、記憶した通信設定データにより示される周波数及び時間スロットを用いて、ペアリング要求を含むダウンリンク信号DSを送信する。このペアリング要求には、上述したグローバルペンIDが含まれる。
【0054】
一方、タイプ1のアップリンク信号USを受信したアクティブペン2のうち、センサコントローラ31とペアリング中のアクティブペン2は、自身に割り当てられたローカルペンIDに対応するペアリングフラグを参照し、「1」となっていれば、引き続きペアリング状態を維持する。一方、このペアリングフラグが「0」となっていれば、センサコントローラ31がペアリング状態を解除したと判定し、自身においてもペアリング状態を解除する。
【0055】
図5(b)に示すタイプ2のアップリンク信号USは、接近を検出したアクティブペン2とのペアリングを行うために、ペアリング要求を含むダウンリンク信号DSに対する応答として送信される信号であり、アップリンク信号種別フラグ1と、アップリンク信号種別フラグ2と、ペアリング対象アクティブペン情報と、ペアリング状態情報とを有して構成される。このうちアップリンク信号種別フラグ1には、タイプ2のアップリンク信号USでは「1」が設定される。
【0056】
アップリンク信号種別フラグ2は、アクティブペン2がタイプ2のアップリンク信号USとタイプ3のアップリンク信号USとを区別するためのフラグであり、タイプ2のアップリンク信号USでは「0」が設定される。
【0057】
ペアリング対象アクティブペン情報は、ペアリング要求に含まれていたグローバルペンID又はそのハッシュ値により構成される。したがって、ペアリング対象アクティブペン情報は、当該アップリンク信号USの宛先であるアクティブペン2を示すアドレス情報を構成する。なお、ペアリング対象アクティブペン情報を構成するハッシュ値は、センサコントローラ31により、予めセンサコントローラ31と各アクティブペン2との間で共有されている所定のハッシュ関数を用いて算出される。
【0058】
タイプ2のアップリンク信号US内のペアリング状態情報は、ペアリング可否フラグを有しない点を除き、タイプ1のアップリンク信号US内のペアリング状態情報と同様の情報である。ただし、センサコントローラ31は、ペアリング要求を含むダウンリンク信号DSを受信したことを受けて、該ダウンリンク信号DSを送信したアクティブペン2に割り当てるローカルペンIDを決定し、決定したローカルペンIDに対応するペアリングフラグを「1」に更新する。これは、新たに割り当てるローカルペンIDをアクティブペン2に通知するための処理である。
【0059】
タイプ2のアップリンク信号USを受信したアクティブペン2は、まずペアリング対象アクティブペン情報を構成するグローバルペンID又はそのハッシュ値が自身のものか否かを判定する。そして自身のものであると判定した場合に、直前に受信し記憶しておいたタイプ1のアップリンク信号US内のペアリング状態情報と、今回受信したタイプ2のアップリンク信号US内のペアリング状態情報とを比較する。アクティブペン2は、この比較の結果として、対応するペアリングフラグが「0」から「1」に変更されたローカルペンIDを取得し、自身に割り当てられたローカルペンIDとして図示しないメモリに記憶する。また、一時的に記憶していたフレーム構造情報及び通信設定データについても、改めて図示しないメモリに記憶する。これにより、アクティブペン2の内部において、センサコントローラ31とのペアリング状態が確立される。
【0060】
ペアリング状態を確立したアクティブペン2は、記憶している通信設定データにより示される周波数及び時間スロットを用いて、ダウンリンク信号DSを送信する。このダウンリンク信号DSは、例えば筆圧を含むこととしてもよい。こうして送信されたダウンリンク信号DSを受信したセンサコントローラ31は、該ダウンリンク信号DSを送信したアクティブペン2を示す情報を図示しないメモリ内のリストに追加することにより、該アクティブペン2とのペアリング状態を確立する。
【0061】
図5(c)に示すタイプ3のアップリンク信号USは、ペアリング中の1以上のアクティブペン2のうちの1つに対する制御を行うために送信される信号であり、アップリンク信号種別フラグ1と、アップリンク信号種別フラグ2と、コマンドと、ペアリング状態情報とを有して構成される。このうちアップリンク信号種別フラグ1及びアップリンク信号種別フラグ2のそれぞれには、タイプ3のアップリンク信号USではともに「1」が設定される。
【0062】
コマンドは、アクティブペン2に対する制御の内容と、制御の対象となるアクティブペン2を示すローカルペンIDと含む情報である。コマンドにより示される制御の具体的な内容には、筆圧検出部22によって検出される筆圧の送信、スイッチ23のオンオフ状態を示す情報の送信などが含まれる。
【0063】
タイプ3のアップリンク信号USを受信したアクティブペン2は、自身に割り当てられているローカルペンIDがコマンド内に含まれているか否かをまず判定する。そして、含まれていると判定した場合、コマンドによって示される制御の内容に応じた処理を行う。例えばアクティブペン2は、コマンドによって示される制御の内容が筆圧検出部22によって検出される筆圧の送信であれば、筆圧検出部22から最新の筆圧を取得し、ダウンリンク信号DSに含めて送信する。
【0064】
図6及び
図7はそれぞれ、センサコントローラ31及びアクティブペン2の状態遷移図である。以下、これらの図に加えて、前掲した
図4及び
図5も再度参照しながら、センサコントローラ31及びアクティブペン2の動作について、より詳しく説明する。
【0065】
まず
図6を参照すると、センサコントローラ31は、アップリンク信号送信状態S0と、その他の状態S1と、ダウンリンク信号検出状態S2とのいずれかで動作するよう構成される。アップリンク信号送信状態S0には、通常状態S0aと、ペアリング中状態S0bとが含まれる。
【0066】
センサコントローラ31の初期状態は、通常状態S0aである。この状態においてセンサコントローラ31は、
図5(a)に示したタイプ1のアップリンク信号US、又は、
図5(c)に示したタイプ3のアップリンク信号USのいずれかの送信を行う。この場合においてセンサコントローラ31は、ある程度以上の間隔を空けないでタイプ1のアップリンク信号USを送信することが好適である。こうすることで、新たにセンサコントローラ31に接近したアクティブペン2とのペアリングとを適切なタイミングで実行することが可能になる。
【0067】
センサコントローラ31は、送信したタイプ1のアップリンク信号USに対してペアリング要求を含むダウンリンク信号DSを受信した場合、ペアリング中状態S0bに遷移する。ペアリング中状態S0bでは、センサコントローラ31は、タイプ2のアップリンク信号USの送信を行う。その結果として、直前のタイプ1のアップリンク信号USで送信した通信設定データにより示される周波数及び時間スロットを用いて送信されたダウンリンク信号DSを受信した場合、センサコントローラ31は、ペアリングが成功したと判定し、該ダウンリンク信号DSを送信したアクティブペン2の情報を図示しないリストに追することによってペアリングを確立した後、通常状態S0aに戻る。一方、そのようなダウンリンク信号DSが受信されなかった場合には、センサコントローラ31は、ペアリングが失敗したと判定し、通常状態S0aに戻る。
【0068】
センサコントローラ31は、アップリンク信号USの送信を完了すると、そのアップリンク信号USのタイプとは関わりなく、一旦、その他の状態S1に遷移する。その他の状態S1においてセンサコントローラ31は、指の位置を検出する動作、又は、ディスプレイ33の表示のための動作(具体的には、上述した共通電位の印加)を行う。センサコントローラ31がその他の状態S1にある間に、
図1に示したホストプロセッサ32による表示内容の書き換え制御の一部(例えば、1ゲート線分の制御)も実行され得る。その他の状態S1への遷移からXμ秒が経過した場合、センサコントローラ31は、ダウンリンク信号検出状態S2に遷移する。
【0069】
ダウンリンク信号検出状態S2に遷移したセンサコントローラ31は、
図1に示したセンサ30を介して、アクティブペン2が送信したダウンリンク信号DSの検出動作を行う。そして、ダウンリンク信号検出状態S2への遷移からYμ秒が経過した場合に、その他の状態S1に戻り、再び、指の位置を検出する動作、又は、ディスプレイ33の表示のための動作を実行する。
【0070】
センサコントローラ31は、その他の状態S1及びダウンリンク信号検出状態S2をn回ずつ繰り返した後、アップリンク信号送信状態S0に戻り、アップリンク信号USの送信を実行する。
【0071】
次に
図7を参照すると、アクティブペン2は、スリープ状態S0と、ディスカバリ状態S1と、ペアリング中状態S2と、オペレーション状態S3と、ホールド状態S4とのいずれかで動作するよう構成される。
【0072】
アクティブペン2の初期状態は、スリープ状態S0である。この状態においてアクティブペン2は、自身の電源がオンされた場合に、ディスカバリ状態S1に遷移する。また、スリープ状態S0にあるアクティブペン2は、タッチ操作が発生したことの検出動作を継続的に行い、タッチ操作が発生したことを検出した場合にも、ディスカバリ状態S1に遷移する。なお、タッチ操作が発生したことの検出は、例えば、筆圧検出部22により検出されている筆圧が所定値を上回ったことによって行うこととしてもよいし、ペン先電極21に電荷が誘導されたことによって行うこととしてもよい。
【0073】
ディスカバリ状態S1においてアクティブペン2は、自身の電源がオフされた場合に、スリープ状態S0に戻る。また、ディスカバリ状態S1にあるアクティブペン2は、タッチ操作が発生したことの検出動作を継続的に行い、タッチ操作が一定時間発生していないことを検出した場合にも、スリープ状態S0に戻る。この場合におけるタッチ操作が発生したことの検出も、例えば、筆圧検出部22により検出されている筆圧が所定値を上回ったことによって行うこととしてもよいし、ペン先電極21に電荷が誘導されたことによって行うこととしてもよい。
【0074】
ディスカバリ状態S1にあるアクティブペン2はさらに、ペン先電極21と各複数のセンサ電極30X,30Yとの結合容量を介してアップリンク信号USの検出動作も行い、その結果としてタイプ1のアップリンク信号USが検出された場合に、ペアリング中状態S2に遷移する。このときアクティブペン2は、上述したように、検出したアップリンク信号USに含まれるフレーム構造情報、通信設定データ、及びペアリング状態情報を一時的に記憶する。
【0075】
ペアリング中状態S2においてアクティブペン2は、記憶した通信設定データにより示される周波数及び時間スロットを用いて、ペアリング要求を含むダウンリンク信号DSを送信する。そして、アップリンク信号USの検出動作を行い、自身のグローバルペンID又はそのハッシュ値を含むタイプ2のアップリンク信号USが検出された場合に、その中のペアリング状態情報から自身に割り当てられたローカルペンIDを取得し、記憶しておいた通信設定データとともに集積回路26内の図示しないメモリに設定することによりペアリング状態を確立する。アクティブペン2はまた、取得したローカルペンIDを識別するための表示を行うようインジケータ24を制御する。その後、アクティブペン2は、オペーレーション状態S3に遷移する。一方、自身のグローバルペンID又はそのハッシュ値を含むタイプ2のアップリンク信号USが所定時間内に検出されなかった場合、アクティブペン2は、ペアリングに失敗したと判定し、ディスカバリ状態S1に戻る。
【0076】
オペーレーション状態S3に遷移したアクティブペン2は、アップリンク信号USが受信される都度、その中のペアリング状態情報を参照し、自身のローカルペンIDに対応するペアリングフラグが「1」、すなわちセンサコントローラ31が自身とのペアリングを維持していることを確認する。そして、センサコントローラ31が自身とのペアリングを維持していることを確認できる限り、オペーレーション状態S3を維持し、ペアリング状態に基づいた設定で(すなわち、記憶している通信設定データにより示される周波数及び時間スロットにより)ダウンリンク信号DSの送信を行う。一方、自身のローカルペンIDに対応するペアリングフラグが「0」となり、センサコントローラ31が自身とのペアリングを維持していないことが確認された場合には、ディスカバリ状態S1に戻る。
【0077】
オペーレーション状態S3でアップリンク信号USが検出されなくなった場合(例えば、アクティブペン2が
図3のゾーンCに移動した場合)、アクティブペン2は、直ちにディスカバリ状態S1に戻ることはせず、一旦ホールド状態S4に遷移する。ホールド状態S4は、アップリンク信号USの検出に失敗した後も所定期間にわたってペアリング状態の維持を行うための状態である。ホールド状態S4によるアクティブペン2は、一定期間、アップリンク信号USの不検出が継続した場合、又は、アップリンク信号USを検出できたが、その中に含まれるペアリング状態情報によりセンサコントローラ31が自身とのペアリングを解除したことが確認できた場合、アクティブペン2はペアリング状態を解除し、ディスカバリ状態S1に戻る。このとき、アクティブペン2は、ローカルペンID及び通信設定データの保持を中止するとともに、ローカルペンIDを識別するための表示を停止するようインジケータ24を制御する。一方、ホールド状態S4にある間に、アップリンク信号USに含まれるペアリング状態情報によりセンサコントローラ31が自身とのペアリングを維持していることが確認できた場合には、アクティブペン2は、オペーレーション状態S3に戻る。
【0078】
図8は、センサコントローラ31とアクティブペン2の動作を示すシーケンス図である。以下、この
図8を参照することにより、異なる観点から再度、ペアリングにかかるセンサコントローラ31とアクティブペン2の動作を説明する。
【0079】
センサコントローラ31は、各フレームにおいて、
図5(a)に示したタイプ1のアップリンク信号USを送信する(ステップS10,S11)。
図8に示すように、アクティブペン2がフレーム1においてタイプ1のアップリンク信号USを受信したとする(ステップS12)と、アクティブペン2は、ペアリング要求を含むダウンリンク信号DSを送信する(ステップS13)。ペアリング要求にグローバルペンIDが含まれるのは、上述したとおりである。
【0080】
センサコントローラ31は、ペアリング要求を含むダウンリンク信号DSを受信する(ステップS14)と、次のフレーム2において、
図5(b)に示したタイプ2のアップリンク信号USを送信する(ステップS15)。このタイプ2のアップリンク信号USには、上述したように、ペアリング要求に含まれたグローバルペンID又はそのハッシュ値を示すペアリング対象アクティブペン情報と、新たに割り当てられるローカルペンIDのペアリングフラグが「0」から「1」に変化してなるペアリング状態情報とが含まれる。
【0081】
アクティブペン2は、タイプ2のアップリンク信号USを受信すると、その中のペアリング状態情報から自身に割り当てられたローカルペンIDを取得して記憶するとともに、直前に受信されていたタイプ1のアップリンク信号USに含まれていた通信設定データを記憶する(ステップS16)。これ以後、アクティブペン2は、記憶した通信設定データにより示される周波数及び時間スロットを用いて、ダウンリンク信号DSの送信を行う(ステップS17)。このダウンリンク信号DSには、上述したように、バースト信号と、例えば
図2に示した筆圧検出部22により検出された筆圧を示すデータ信号とが含まれる。このダウンリンク信号DSを受信したセンサコントローラ31は、バースト信号に基づいてアクティブペン2の位置を検出するとともに、データ信号から筆圧等を取得し、その結果に基づいて、上述したインクデータの出力を行う(ステップS18)。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ペアリング中の1以上のアクティブペン2それぞれのペアリング状態を示すペアリング状態情報がアップリンク信号USにより全てのアクティブペン2に対して報知されているので、各アクティブペン2は、ペアリング状態情報を見ることにより自身とのペアリングがセンサコントローラ31内で維持されているか否かを把握できる。したがって、一方的なペアリング状態の解除や、ペアリング状態を確認するための双方向通信が不要になるので、ペアリング状態を維持管理するための処理に起因するパフォーマンス低下を抑制することが可能になる。
【0083】
また、本実施の形態によれば、各アクティブペン2が
図2に示したインジケータ24によりローカルペンIDを識別するための表示を行うので、ユーザは、各アクティブペン2に割り当てた筆記属性を容易に把握することが可能になる。
【0084】
次に、本発明の第2の実施の形態による位置検出システム1について、説明する。本実施の形態による位置検出システム1は、ペアリング中のアクティブペン2とセンサコントローラ31との間で、各アクティブペン2を互いに区別するためのデータ(後述する第1及び第2の識別データ)の送受信がなされる点で第1の実施の形態と異なり、その他の点では第1の実施の形態による位置検出システム1と同様であるので、以下では、第1の実施の形態と同一の構成には同一の符号を付し、第1の実施の形態との相違点に着目して説明を続ける。
【0085】
本実施の形態は、1つのタッチ面3tの近傍にグローバルペンID又はそのハッシュ値が一致する2つのアクティブペン2が存在していた場合に、第1の実施の形態による位置検出システム1で生じ得るペアリングの衝突を是正するための発明に関するものである。以下、この発明の課題及び構成の概略を最初に説明し、その後、本実施の形態について詳しく説明する。
【0086】
初めに、グローバルペンID又はそのハッシュ値が一致する2つのアクティブペン2がいずれも未ペアリングの状態でタッチ面3tに接近し、一方が
図3に示したゾーンAに、他方が
図3に示したゾーンBにそれぞれ位置していたとする。この状態でセンサコントローラ31がタイプ1のアップリンク信号USを送信する(
図8のステップS11)と、そのアップリンク信号USは2本のアクティブペン2の両方により受信される。すると、2本のアクティブペン2のそれぞれがペアリング要求を含むダウンリンク信号DSを送信することになる(
図8のステップS13)が、ゾーンBに位置しているアクティブペン2が送信したダウンリンク信号DSはセンサコントローラ31に届かないため、センサコントローラ31は、ダウンリンク信号DSを1つだけ受信することになる。その結果、センサコントローラ31は、通常どおり、受信できたダウンリンク信号DSに含まれていたグローバルペンID又はそのハッシュ値を含むタイプ2のアップリンク信号USを送信することになる(
図8のステップS15)が、このアップリンク信号USは2本のアクティブペン2の両方により受信される。すると、先ほどダウンリンク信号DSを送信した2本のアクティブペン2の両方が、受信したアップリンク信号USに含まれていたグローバルペンID又はそのハッシュ値が自身のものであると判定することになる。その結果、2本のアクティブペン2が同じローカルペンIDでセンサコントローラ31とのペアリングを確立してしまう。つまり、ペアリングの衝突が発生することになる。
【0087】
このようなペアリングの衝突が発生した場合、もしセンサコントローラ31が衝突を検出する方法を有していれば、センサコントローラ31から両方のアクティブペン2に対してペアリング解除のコマンドを送信することで、衝突状態を解消することができる。しかし、このようなペアリングの解除は、描画中の線の途切れを誘発することになる。なお、ローカルペンIDが同一であるため、センサコントローラ31が送信するコマンドでは、片方のアクティブペン2のみに対してペアリング解除を指示することはできない。また、センサコントローラ31が衝突を検出する方法を有していなければ、上記のようにしてペアリングを解除することもできず、いずれかのアクティブペン2が
図3に示したゾーンCに退去するまで、ペアリングの衝突状態が継続することになる。
【0088】
加えて言えば、ペアリングの衝突状態が継続している場合、一方のアクティブペン2により送信されるダウンリンク信号DSが他方のアクティブペン2により送信されるダウンリンク信号DSに対するノイズとなるため、アクティブペン2の位置検出精度が低下してしまう。さらに、センサコントローラ31によって受信されないダウンリンク信号DSは無駄に送信されたものということになってしまうので、アクティブペン2の電力を無駄に消費してしまうことにもなる。
【0089】
そこで本実施の形態では、各アクティブペン2を互いに区別するためのデータ(第1の識別データ)をダウンリンク信号DS内に配置することとする。典型的な例では、第1の識別データは、ペン先がタッチ面3tに接触(コンタクト)しているか否かを示すデータ(コンタクト状態データ)である。以下、第1の識別データはコンタクト状態データであるとして説明を続ける。
【0090】
センサコントローラ31は、第1の識別データを含むダウンリンク信号DSをアクティブペン2から受信すると、そのアクティブペン2に対して送信するアップリンク信号US内に、受信した第1の識別データに基づいて取得される第2の識別データを配置する。この第2の識別データは、例えば、第1の識別データと同内容のデータである。
【0091】
アクティブペン2は、こうして受信される第2の識別データと自身の送信した第1の識別データとを比較することにより、センサコントローラ31によって自身が正しく検出されているか否かを判定する。そして、正しく検出されていないと判定した場合には、ペアリングを解除する。これにより、例えば、ペン先がタッチ面3tに接触しているアクティブペン2のペアリングが維持される一方で、ホバー中(ペン先がタッチ面3tに接触していない状態)のアクティブペン2のペアリングが解除されるので、描画中の線の途切れを誘発することなく、ペアリングの衝突を解消することが可能になる。その結果として、アクティブペン2の位置検出精度の低下や、アクティブペン2の電力の無駄な消費を防止することも可能になる。
【0092】
以上が、本実施の形態にかかる発明の課題及び構成の概略である。次に、本実施の形態による位置検出システム1の構成及び動作について、詳しく説明する。以下でも、第1の識別データはコンタクト状態データであるとして説明を続ける。
【0093】
図9は、本実施の形態によるセンサコントローラ31が送信するアップリンク信号USの種類を示す図である。同図に示すように、本実施の形態においても、アップリンク信号USにはタイプ1~タイプ3の3種類がある。このうちタイプ1,2のアップリンク信号USはそれぞれ、
図5(a)(b)に示した第1の実施の形態のものと同一である。一方、タイプ3のアップリンク信号USは、ペアリング状態情報の構成の点で、
図5(c)に示した第1の実施の形態のものと相違する。
【0094】
具体的に説明すると、本実施の形態によるタイプ3のアップリンク信号USに含まれるペアリング状態情報は、データ種別フラグと、ローカルペンIDごとのペアリングデータとを有して構成される。データ種別フラグは、各ペアリングデータの具体的な内容の種別を示す1ビットのデータであり、各ペアリングデータが上述したペアリングフラグであるときに「0」、各ペアリングデータが上述した第2の識別データであるときに「1」となる。したがって、データ種別フラグが「1」であるタイプ2,3のアップリンク信号USは、ローカルペンID(LPID)ごとに、第2の識別データを含む信号となる。なお、センサコントローラ31は、データ種別フラグが「0」であるタイプ3のアップリンク信号USと、データ種別フラグが「1」であるタイプ3のアップリンク信号USとを、タイプ3のアップリンク信号USの送信タイミングにおいて、所定の割合(例えば1:1)で交互に送信するように構成される。
【0095】
もちろん、データ種別フラグが「0」であるタイプ3のアップリンク信号USと、データ種別フラグが「1」であるタイプ3のアップリンク信号USとの送信割合は、適宜変更可能である。それぞれの優先度に応じて、例えば「10:1」にしてもよいし、例えば第2の識別データがコンタクト状態データであれば、センサコントローラ31とのペアリング後に始めてタッチ面3tに接触したときや、さらにその後ホバー状態になったときなど、データ種別フラグが「1」であるタイプ3のアップリンク信号USの送信タイミングをアクティブペン2の状態が変化した時に限定しても構わない。こうすることで優先度の高いペアリングフラグの送信頻度を上げ、ペアリング状態の管理をより最適化することが可能となる。
【0096】
図10は、本実施の形態によるセンサコントローラ31とアクティブペン2の動作を示すシーケンス図である。以下、
図10を参照しながら、第1及び第2の識別データに関するセンサコントローラ31及びアクティブペン2の動作について、詳しく説明する。なお、
図10では記載を省略しているが、
図8等を参照して説明した各ステップも実際には実行される。また、
図10には、
図3に示したアクティブペン2b,2d(ゾーンBに位置しているアクティブペン2と、ペン先がタッチ面3tに接触しているアクティブペン2)を示している。さらに、
図10には、アクティブペン2b,2dに上述したペアリングの衝突が発生している状態(すなわち、アクティブペン2b,2dが同じローカルペンIDを記憶している状態)を示している。
【0097】
まず、センサコントローラ31がアップリンク信号USを送信する(ステップS30)と、アクティブペン2b,2dのそれぞれがこのアップリンク信号USを受信する(ステップS31)。なお、このアップリンク信号USはタイプ1~3のいずれであってもよい。
【0098】
ここで、タイプ2のアップリンク信号はグローバルID又はそのハッシュ値により宛先を特定する信号であり、タイプ3のアップリンク信号USはローカルペンIDにより宛先を特定する信号であるが、アクティブペン2b,2dについてのこれらのデータは、すべて同一の値となる。したがって、ステップS30で送信されたアップリンク信号USがタイプ2,3のアップリンク信号USであったとしても、ステップS31においては、アクティブペン2b,2dの両方により受信されることになる。
【0099】
ステップS31でアップリンク信号USを受信したアクティブペン2b,2dは、筆圧検出部22(
図2を参照)により検出されている筆圧を参照することにより、それぞれのペン先のタッチ面3tへのコンタクト状態を検出する(ステップS32)。こうして検出されるコンタクト状態は、アクティブペン2bでは「ホバー」、アクティブペン2bでは「コンタクト」となる。そして、検出したコンタクト状態を示す第1の識別データを含むダウンリンク信号DSを送信する(ステップS33)。
【0100】
ステップS33でアクティブペン2b,2dのそれぞれが送信したダウンリンク信号DSのうち、アクティブペン2bが送信したものは、センサコントローラ31に届かない。これは、アクティブペン2bが
図3に示したゾーンBに位置しているためである。一方、アクティブペン2dが送信したダウンリンク信号DSは、センサコントローラ31によって受信される。
【0101】
第1の識別データを含むダウンリンク信号DSを受信したセンサコントローラ31は、その中から第1の識別データを抽出するとともに、そのダウンリンク信号DSの送信に用いられた周波数及び時間スロットに基づき、送信元であるアクティブペン2のローカルペンIDを取得する(ステップS34)。そして、
図9に示したデータ種別フラグが「1」であるタイプ3のアップリンク信号USを次に送信するタイミングにおいて、取得したローカルペンIDのペアリングデータとして、抽出した第1の識別データに基づいて取得される第2の識別データを設定する。これにより、第2の識別データを含むタイプ3のアップリンク信号USが送信される(ステップS40)。以下、第2の識別データの内容はステップS34で抽出された第1の識別データの内容と同一であるとして説明を続ける。
【0102】
ステップS40で送信されたアップリンク信号USは、ステップS31と同様に、アクティブペン2b,2dの両方によって受信される(ステップS41)。こうしてアップリンク信号USを受信したアクティブペン2b,2dは、その中に含まれていた第2の識別データと、直前に送信した第1の識別データとを比較し(ステップS42)、比較の結果に応じて次のダウンリンク信号の送信制御を実行する。
【0103】
具体的に説明すると、ステップS42で一致と判定したアクティブペン2(この場合はアクティブペン2d)は、ステップS32以降の処理を繰り返す。これにより、アクティブペン2dについてはペアリングが維持され、描画が発生している場合であれば、引き続き描画が行われる。
【0104】
一方、ステップS42で不一致と判定したアクティブペン2(この場合はアクティブペン2b)は、センサコントローラ31とのペアリングを変更する処理を行う(ステップS43)。この処理は、センサコントローラ31とのペアリングを一旦解除する処理、つまり、
図8のステップS16で記憶したローカルペンID及び通信設定データを削除し、未ペアリングの状態に戻る処理であってもよいし、
図8のステップS16で記憶したローカルペンIDをアクティブペン2のメモリ内で変更する処理であってもよい。後者の場合、アクティブペン2からセンサコントローラ31に対し、変更したローカルペンIDを通知できるようにすることが好ましい。また、ペアリングを変更する処理は、ダウンリンク信号DSの送信を停止する処理であってもよい。
【0105】
ステップS43を実行した後のアクティブペン2bは、通常どおりタイプ1のアップリンク信号USの受信を待機すればよい。この時点ではアクティブペン2dはペアリング中であるので、アクティブペン2bは、待機の結果として受信されたタイプ1のアップリンク信号USに基づいてペアリングを実行することにより、少なくともアクティブペン2dとの間で衝突を発生させることなく、センサコントローラ31との間でペアリングを確立することが可能になる。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態による位置検出システム1によれば、1つのタッチ面3tの近傍にグローバルペンID又はそのハッシュ値が一致する2つのアクティブペン2が存在していた場合に、一方のアクティブペン2(具体的には、ホバー中のアクティブペン2)のみにペアリングを解除させることができる。したがって、描画中の線の途切れを誘発することなく、ペアリングの衝突を解消することが可能になる。また、アクティブペン2の位置検出精度の低下や、アクティブペン2の電力の無駄な消費を防止することも可能になる。
【0107】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0108】
例えば、上記各実施の形態では、1~6のローカルペンIDにそれぞれ対応する6つのペアリングデータ(ペアリングフラグ又は第2の識別データ)を含むペアリング状態情報を各アップリンク信号US内に配置する例を説明したが、1~6のローカルペンIDにそれぞれ対応する6つのペアリングデータを含むペアリング状態情報を含むアップリンク信号USと、7~12のローカルペンIDにそれぞれ対応する6つのペアリングデータを含むペアリング状態情報を含むアップリンク信号USとを交互に送信する、というように、1つのアップリンク信号USにペアリング状態情報の一部のみを含めることとしてもよい。この方法は、例えば1つのフレーム(16.7msec)内でアップリンク信号USを複数回送信する場合などに、特に好適である。
【0109】
また、1つのアップリンク信号US内に、ペアリングフラグと第2の識別データの両方を含むこととしてもよい。例えば、1~3のローカルペンIDにそれぞれ対応する3つのペアリングデータがペアリングフラグであり、4~6のローカルペンIDにそれぞれ対応する3つのペアリングデータが第2の識別データであるアップリンク信号USや、逆に、1~3のローカルペンIDにそれぞれ対応する3つのペアリングデータが第2の識別データであり、4~6のローカルペンIDにそれぞれ対応する3つのペアリングデータがペアリングフラグであるアップリンク信号USを用いることとしてもよい。
【0110】
また、上記第2の実施の形態では、第1の識別データはコンタクト状態データであるとして説明したが、各アクティブペン2を互いに区別するためのデータであれば、他の種類のデータにより第1の識別データを構成することも可能である。例えば、
図2に示した筆圧検出部22により検出されている筆圧(例えば256段階の多値データ)を第1の識別データとして取り扱うこととしてもよい。また、アクティブペン2の筐体に設けられたサイドスイッチの押下状態やアクティブペン2の傾きなど、人間の把持の仕方によって異なる値を取り得る操作状態であって、センサコントローラ31が認識可能なデータ(操作状態データ)を第1の識別データとして取り扱うこととしてもよい。さらに、アクティブペン2の内部で筐体ユニークに時間変化するデータ(時変データ)を生成できる場合には、この時変データを第1の識別データとして取り扱うこととしてもよい。
【0111】
また、上記第2の実施の形態では、第1及び第2の識別データの内容が同一であるとして説明したが、これらは必ずしも同一でなくてもよく、例えば、直前数回分の第1の識別データの統計データにより第2の識別データを構成することとしてもよい。この場合、第2の識別データを受信したアクティブペン2は、
図10に示したステップS42において、自身が送信した直前数回分の第1の識別データの統計データを取得し、第2の識別データと比較すればよい。
【0112】
また、上記第2の実施の形態では、直前に送信した第1の識別データをステップS42における比較の対象としたが、ステップS42の直前に新たに第1の識別データを取得し直し(すなわち、コンタクト状態を新たに検出し)、その結果として取得された第1の識別データをステップS42における比較の対象としてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 位置検出システム
2 アクティブペン
3 位置検出装置
3t タッチ面
20 芯体
21 ペン先電極
22 筆圧検出部
23 スイッチ
24 インジケータ
25 電源
26 集積回路
30 センサ
30X,30Y センサ電極
31 センサコントローラ
32 ホストプロセッサ
33 ディスプレイ
DS ダウンリンク信号
US アップリンク信号