(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】新規な組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/24 20060101AFI20231023BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20231023BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231023BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20231023BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20231023BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61K8/24
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/25
A61K8/21
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2020532800
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2018084522
(87)【国際公開番号】W WO2019115601
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-08
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】315010950
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン コンシューマー ヘルスケア(ユーケー) アイピー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーン,シャザダ ヤサール
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-526298(JP,A)
【文献】特表2004-513142(JP,A)
【文献】国際公開第99/013852(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/172334(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0258691(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体活性ガラスである
リンケイ酸ナトリウムカルシウム、湿潤剤、ヒドロキシエチルセルロースポリマー及び焼成シリカを脱感作/再石灰化沈殿物のその場での形成を容易にする増粘剤として含み、イオン性フッ素含有化合物を含む非水系口腔ケア歯磨組成物
であって、
リンケイ酸ナトリウムカルシウムは、45重量%の二酸化ケイ素、24.5重量%の酸化ナトリウム、6重量%の酸化リン、及び24.5重量%の酸化カルシウムを含み、
ヒドロキシエチルセルロースポリマーは、組成物の0.3重量%~2.0重量%の範囲で存在し、
焼成シリカは、組成物の0.3重量%~5.0重量%の範囲で存在する、非水系口腔ケア歯磨組成物。
【請求項2】
リンケイ酸ナトリウムカルシウムが、組成物の1~20重量%の範囲の量で存在する、請求項
1に記載の非水系口腔ケア組成物。
【請求項3】
湿潤剤が、グリセリンである、請求項1
又は2に記載の非水系口腔ケア組成物。
【請求項4】
湿潤剤が、組成物の20~90重量%の範囲の量で存在する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
【請求項5】
ヒドロキシエチルセルロースポリマーが、スピンドル番号4及びRPM60を有するブルックフィールドLVFを使用して2%w/w水溶液として25℃で測定した場合、4,500~6,500mPa・sの粘度を示す、請求項1から
4のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
【請求項6】
親水性の焼成シリカが、40nm未満の一次粒子平均径を有する、請求項1から
5のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
【請求項7】
イオン性フッ素含有化合物が、フッ化ナトリウムである、請求項1から
6のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記組成物が、さらなる/追加の増粘剤を含まない、請求項1から
7のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
【請求項9】
象牙質知覚過敏症の処置において使用するための、請求項1から
8のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルシウムイオンの供給源及びリン酸イオンの供給源、湿潤剤、ヒドロキシエチルセルロースポリマー、並びに焼成シリカを含む、非水系口腔ケア組成物に関する。カルシウムイオン及びリン酸イオンは、歯の表面の再石灰化及び象牙質知覚過敏症の処置に有用なリン酸カルシウム系の沈殿物をその場で形成するのに必要な必須前駆体である。本発明の組成物において使用するためのカルシウムイオン及びリン酸イオンの供給源の一例は、生体許容可能な(bioacceptable)生体活性ガラス、例えばリンケイ酸ナトリウムカルシウムである。
【背景技術】
【0002】
主に、結晶性リン酸塩鉱物であるヒドロキシアパタイトからなるヒトの歯エナメル質は、脱灰及び再石灰化のプロセスを自然に受ける。カルシウムイオン及びリン酸イオンに関して過飽和である唾液は、脱灰から歯を保護する一助になり、酸によって脱灰されるようになった歯を、ゆっくり再石灰化することができる。しかし、今日の世界における糖を含む酸性の食事では、自然な再石灰化プロセスは、強力なエナメル質を維持するには不適切であることが多い。唾液及び食品に曝露されると、歯からミネラルがゆっくり浸出し、最終的には象牙質知覚過敏症に対する感受性の増大、歯牙酸蝕症、う蝕、初発う蝕、さらにはう蝕性象牙質脱灰が生じる。自然の脱灰プロセスの低減及び/又は再石灰化プロセスの増強に関して、フッ化物を含む又は含まないリン酸カルシウム系の技術の開発を含めた多くの研究が行われてきた。フッ化物イオンの存在は、自然の再石灰化プロセスを増強することができ、このことは、フッ化物入り練り歯磨き粉が歯を強力にし、脱灰に対して歯エナメル質をより抵抗性の高いものにするように働く、認められている機序の1つであることが周知である。
【0003】
特許文献1は、リン酸カルシウム塩の溶解度が高い条件下での、低pH(2.5~4の間)のカルシウムイオン及びリン酸イオンの準安定溶液を開示している。溶液を脱灰したエナメル質に浸透させた後、pHが上昇する場合、リン酸カルシウム塩の沈殿から再石灰化が生じる。フッ化物(flouride)イオンは、準安定溶液に含まれ得る。特許文献1によれば、その文書に企図される通り再石灰化が行われる場合、再石灰化されたエナメル質は、本来のエナメル質よりも脱灰に対する抵抗性が高い。しかし、このような準安定溶液の著しい不利益は、低pHを使用するということであり、低pHは、潜在的に歯エナメル質の脱灰をもたらし、且つ/又は口腔軟組織に傷害若しくは刺激を引き起こす。
【0004】
特許文献2は、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含有する別個の溶液で歯の表面を連続的に処置することによって再石灰化する方法を開示している。カルシウムイオン及びリン酸イオンを順次、別個に塗布することによって、高濃度のイオンがエナメル質に浸透し、それによって、それらのイオンがリン酸カルシウム塩として沈殿する。この処置方法は、複数の連続的な塗布を伴い、それによって時間がかかり、不都合である。
【0005】
特許文献3は、カルシウム及びリン酸塩が別個に保持される二部システムを用いる改善を開示しており、ここで2種の化合物は、調剤される場合に混合され、連続的な処置を必要とすることなく処置のために歯にすぐに塗布される。特許文献3によれば、二部システムは、カルシウム塩、リン酸塩及び/又はフッ化物塩の反応を防止するために必要である。水系の歯磨剤において生じることが公知のこのような反応では、保存時に不溶性リン酸カルシウム又はヒドロキシアパタイトが形成されて、歯磨剤の使用時にカルシウムイオンが利用不可能になる。
【0006】
特許文献4は、歯エナメル質の再石灰化(remimeralization)のための、カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む、一部品からなる安定な水溶液を開示している。その溶液は、フッ化物供給源の存在下でリン酸カルシウムの溶解度を維持するために、核形成防止剤を用いる。
【0007】
特許文献5は、水溶性カルシウム塩、リン酸塩、及び親水性非水系ビヒクル、及び任意選択でフッ化物放出剤を含む、単一部分からなる組成物の形態の製剤を開示している。カルシウム塩、リン酸塩及び/又はフッ化物塩の反応を防止するためには、このシステムが、a)安定化乾燥剤を用いるか、又はb)活性材料の間の反応を防止する親油性材料(olephilic material)若しくは重合体材料で塩をカプセル化若しくはコーティングすることが必要である。カプセル化は、歯磨組成物の製剤において有用に用いることができる周知の技術であるが、カプセル化された材料は、拡散又は「カプセル破砕」に起因して頻繁に水と接触するので、問題は完全には解決されない。また、製造方法に追加のカプセル化又はコーティングステップが必要になるので、製造がより複雑になる。
【0008】
特許文献6は、象牙質知覚過敏症を低減し、曝露された象牙質表面及び開いた象牙質細管を再石灰化するための、非水系担体、水溶性カルシウム塩から本質的になる脱感作/再石灰化剤、及びカルシウム塩と普通なら反応するはずの不適合性成分を含む組成物を開示している。一実施形態では、不適合性成分は、水溶性ケイ酸塩、水溶性リン酸塩、及び水溶性フッ化物塩、又はそれらの混合物から選択される。その文書における歯磨組成物のための非水系担体は、鉱油、グリセロール、ポリオール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、ワセリン、トリアセチン等を含めた、水を含まない有機溶媒の1つ又はそれらの組合せである。使用に適したバインダーには、ヒドロキシエチルセルロース、並びにキサンタンガム、アイリッシュモス(Iris moss)及びトラガカントガムが含まれる。
【0009】
特許文献7は、リンケイ酸カルシウムの生体活性ガラス組成物を開示しており、これは、象牙質知覚過敏症及び歯の表面の再石灰化を即時に長期間低減するために、カルシウム及びリン酸塩の即時且つ長期間のイオン放出により唾液と急速に連続反応させて、象牙質細管上及び象牙質細管内に沈着した安定な結晶性ヒドロキシアパタイト層を生成する。
【0010】
特許文献8は、歯の構造を生体活性ガラス及びフッ化物を含む組成物と接触させることを含む、歯の構造上へのフッ化物の取込みを増大させる方法を開示している。特許文献8によれば、生体活性ガラスがフッ化物口腔ケア組成物、例えば歯磨剤に含まれる場合、有利には、生体活性ガラスから追加のカルシウム及びリンが放出されて、歯の表面上へのフッ化物の取込みが増大する。また、これらのイオンが放出されると、口腔環境における再石灰化を増大する潜在的可能性を有する、穏やかなpH上昇を誘発することができる。その文書に記載される組成物は、例えば、湿潤材料を増粘し、研磨剤を懸濁させるために必要なレオロジーをもたらすためのポリアクリル酸を含む、非水系組成物である。
【0011】
特許文献9によれば、生体活性ガラス(特許文献7に開示されているタイプの)を含む従来の歯磨組成物は、水系であり、生体活性ガラスによって放出されたカルシウムイオンが水分子と反応し、架橋して、容認しがたい濃厚なペーストを形成するので、練り歯磨き粉として常用するには適していない。特許文献9によれば、カラギーナン(carrageenean)及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択されるガム、少なくとも1つの湿潤剤、並びに生体活性ガラスを含む非水性歯磨組成物は、日常的な常用に適しており、許容される口内感覚、発泡、及び生成物安定性を示す歯磨剤を提供する。
【0012】
本明細書で先に引用される従来技術からわかる通り、非水系(無水)担体又はビヒクルシステムの使用は、一般に当技術分野で公知である。このようなシステムは、水系の歯磨組成物の使用と関連する不適合性又は安定性の問題を克服する手段として提案されている。
【0013】
特許文献10は、頬-歯の衛生において使用するための、グリセリン、疎水性鎖を有するヒドロキシエチルセルロース、及び焼成シリカに基づく無水歯磨組成物を記載している。特許文献10によれば、その組成物は、水系媒体においてわずかに安定又は不安定であり、使用時に滑らかさ、均質性、ブライトニングの特徴、粘度、粘稠度、並びに清浄及び研磨能力を示す活性剤の導入を可能にする。
【0014】
特許文献11は、水系環境と不適合性の材料のためのビヒクルとして適した非水系歯磨組成物を記載している。その組成物は、ヒドロキシエチルセルロースポリマー、湿潤剤、ポリエチレングリコール及び歯科的に許容される研磨剤を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第4,080,440号明細書
【文献】米国特許第4,083,955号明細書
【文献】米国特許第5,833,957号明細書
【文献】米国特許第4,183,915号明細書
【文献】米国特許第5,866,102号明細書
【文献】国際公開第2002/30381号
【文献】国際公開第1997/27148号
【文献】国際公開第2009/158564号
【文献】国際公開第2010/115037号
【文献】米国特許第5,670,137号明細書
【文献】国際公開第2002/38119号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ここで、湿潤剤、ヒドロキシエチルセルロースポリマー及び焼成シリカを含む非水系組成物は、歯の表面へのカルシウムイオン及びリン酸イオンの送達を容易にし、リン酸カルシウムの脱感作/再石灰化沈殿物の形成を増強することが発見された。本組成物は、日常的な常用に適しており、理想的には、消費者受容性の非常に重要な牽引力になる1つ以上の特性、例えば許容される味、粘稠度及び歯をブラッシングする際の適切な発泡を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、カルシウムイオンの供給源、リン酸イオンの供給源、湿潤剤、ヒドロキシエチルセルロースポリマー及び焼成シリカを含む非水系口腔ケア組成物に関する。
【0018】
本発明はさらに、カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源、湿潤剤、ヒドロキシエチルセルロースポリマー、並びに焼成シリカを含む、脱感作量の非水系口腔ケア組成物を歯に塗布することによって、過敏症の歯を脱感作する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1に示されるQCM-D装置を使用して決定される通り、様々な製剤についての初期時点及び2時間の時点における沈殿物の沈着を示す。
【
図3】様々な製剤についての通水コンダクタンス(HC)データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「含む」は、その通常の意味を含み(すなわち、具体的に言及されるすべての特色と同様に、任意選択の、追加の、又は不特定の特色も含む)、「からなる」及び「を主成分とする」も含む。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、組成物のパラメータについての値に適用される場合、その値の算出又は測定が、組成物の化学的又は物理的特質に対して実質的な効果を有することのないわずかな不正確さを許容することを示す。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「脱感作量」は、送達及び製剤化の方法を考慮して、敏感な歯の脱感作を助けるのに十分な量を意味する。
【0023】
適切には、本発明の口腔ケア組成物は、半固体の形態、例えば歯磨剤又はバーム(balm)である。一実施形態では、口腔ケア組成物は、歯磨剤の形態である。適切には、歯磨剤は、押出し可能な半固体の形態、例えばクリーム、ペースト又はゲル(又はその混合物)である。
【0024】
本発明の口腔ケア組成物は、リン酸カルシウム系の脱感作/再石灰化沈殿物をその場での生成を含めた経口作用の目的のために、通常の使用過程において歯の表面の一部又はすべてと接触するのに十分な時間にわたって口腔内に保持される、製品である。
【0025】
本発明は、本発明による非水系口腔ケア組成物が、歯の表面上の、カルシウム及びリン酸塩に基づく脱感作/再石灰化沈殿物の沈着を増強するという予期しなかった知見に基づく。カルシウムイオン及びリン酸イオンの供給源としての生体活性ガラス、ヒドロキシエチルセルロースポリマー(増粘剤として)、並びに焼成シリカ(増粘剤として)を含む本発明による非水系組成物は、対照組成物、すなわちカルシウムイオン及びリン酸イオンの供給源としての生体活性ガラス、ポリアクリル酸(増粘剤として)、並びに従来の増粘性シリカを含む非水系組成物と比較して、4倍まで多くの沈殿物の沈着が観察された。理論に拘泥するものではないが、組成物中に存在するヒドロキシエチルセルロースポリマー及び焼成シリカは、カルシウムイオン及びリン酸イオンの放出を容易にし、脱感作/再石灰化沈殿物の形成を促進するようにさらに働くと考えられる。ポリアクリル酸とは対照的に、本発明において使用されるヒドロキシエチルセルロースポリマーは、沈殿物の形成を妨害又は邪魔しないと思われる。焼成シリカは、従来の増粘性シリカとは対照的に、脱感作/再石灰化沈殿物の形成をさらに容易にする、追加の核形成部位を提供すると考えられる。
【0026】
沈殿物形成の任意の増強又は改善の結果として、本発明による組成物は、再石灰化特性の改善を示し、それによって、象牙質知覚過敏症、歯牙酸蝕症、う蝕の可能性をさらに低減することができ、且つ/又は新しいヒドロキシアパタイト若しくはヒドロキシアパタイトのような材料の作製により、ホワイトニングによる歯の外観の改善をもたらすことができる。
【0027】
本発明による口腔ケア歯磨組成物は、その非水系性質にもかかわらず、許容される物理的安定性及び構造を示し、流れやすい特徴を示さない。この組成物は、対費用効果が高く、製造し易い。
【0028】
有利には、本発明による組成物は、単相組成物の形態である。カルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源の間の任意の早計の反応を回避するために2つの供給源を互いに分離しておく必要はない。このことは、例えば、国際公開第2012/143220号に開示される二重相組成物に見られる通り、カルシウム及びリン酸の供給源が使用直前まで離しておかれる従来技術の組成物とは対照的である。
【0029】
本発明のこれら及び他の特色、態様及び利点は、本発明を読むことによって当業者に明らかとなろう。
【0030】
本発明の口腔ケア組成物は、非水系であり、すなわちいかなる水も実質的に含まない。これは、水を組成物に添加しないことにより、水系担体を使用しないことにより、及び可能な場合には水和形態の構成成分の使用を回避することにより達成される。適切には、組成物において使用するために選択された構成成分は、その無水形態である。この組成物の個々の構成成分は、制限された量の遊離の及び/又は結合した水を含有し得ると認識されるが、組成物全体は、いかなる水も実質的に含まないままであることが必須である。本発明では、歯磨組成物において一般に使用されるタイプの水系担体は回避され、これらには、例えばラウリル硫酸ナトリウムの水溶液、水酸化ナトリウムの水溶液及び着色剤の水溶液が含まれる。本発明の組成物における水の総量(遊離の水及び結合した水の両方)は、最小限に抑えられる。適切には、本発明の組成物は、組成物の重量の5%未満の水、適切には、組成物の重量の3%未満の水、さらにより適切には、組成物の重量の1%未満の水を含む。
【0031】
本発明による組成物によって、使用中に様々なタイプのリン酸カルシウム系の脱感作/再石灰化沈殿物が形成され得ることが、当業者によって認識されよう。形成される脱感作/再石灰化沈殿物は、組成物において使用されるカルシウムイオン供給源及びリン酸イオン供給源に応じて変わる。適切には、形成される沈殿物には、カルシウム及びリン酸の供給源、並びに組成物中に存在する他の成分、例えばフッ化物に応じて、例えば式Ca10(PO4)6(OH)2によって表されるヒドロキシアパタイト、ケイ酸カルシウム、例えば式(Ca10(PO4)6F2)によって表されるフルオロアパタイト、例えば式(Ca10(PO4)2)によって表されるリン酸三カルシウム、及び他の様々な種類の公知のリン酸カルシウム系の化合物が含まれる。
【0032】
一態様では、形成される脱感作/再石灰化沈殿物は、ヒドロキシアパタイト、炭酸ヒドロキシアパタイト、ケイ酸カルシウム、フルオロアパタイト、リン酸三カルシウム又はそれらの混合物である。
【0033】
一実施形態では、形成される脱感作/再石灰化沈殿物は、炭酸ヒドロキシアパタイトである。
【0034】
本発明による組成物は、カルシウムイオンの供給源及びリン酸イオンの供給源を含む。一実施形態では、カルシウムイオン及びリン酸イオンは、同じ供給源、すなわちカルシウム及びリン酸塩の両方を含有する化合物(以下、「リン酸カルシウム化合物」と呼ぶ)に由来する。
【0035】
適切には、リン酸カルシウム化合物は、生体活性ガラス、グリセロリン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸オクタカルシウム、非晶質リン酸カルシウム、アパタイト、α-リン酸三カルシウム又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0036】
一実施形態では、リン酸カルシウム化合物は、生体活性ガラス、アパタイト、グリセロリン酸カルシウム若しくはリン酸水素カルシウム二水和物、又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0037】
一実施形態では、リン酸カルシウム化合物は、生体許容可能な生体活性ガラスである。
【0038】
一実施形態では、生体許容可能な生体活性ガラスは、リンケイ酸ナトリウムカルシウムである。
【0039】
本発明において使用するための生体活性ガラスは、典型的に、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ナトリウム(Na2O)及び酸化リン(P2O5)の組合せから形成され、ここで、前述の酸化物の1つ以上は、酸化ストロンチウム(SrO)、三酸化ホウ素(B2O3)、酸化カリウム(K2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、MFx(式中、Mは、一価又は二価のカチオンであり、xは、1又は2である)の1つ以上(one of more)によって置き換えることができる。
【0040】
一実施形態では、生体活性ガラスは、40重量%~60重量%の二酸化ケイ素、10重量%~40重量%の酸化カルシウム、10重量%~35重量%の酸化ナトリウム、2%~8%の酸化リン、0重量%~25重量%のフッ化カルシウム、0重量%~10重量%の酸化ホウ素、0重量%~8重量%の酸化カリウム、0%~5%の酸化マグネシウムの組合せから形成される。
【0041】
さらなる一実施形態では、生体活性ガラスは、約45重量%の二酸化ケイ素、約24.5重量%の酸化ナトリウム、約6重量%の酸化リン、及び約24.5重量%の酸化カルシウムを含む。このような一実施形態では、生体活性ガラスは、45S5 Bioglass(登録商標)としても公知の商標名NovaMin(登録商標)で市販されているリンケイ酸ナトリウムカルシウムの生体活性ガラスである。
【0042】
理論に拘泥するものではないが、リンケイ酸ナトリウムカルシウムの生体活性ガラス粒子中に存在するナトリウムイオン(Na+)は、唾液と接触すると、唾液中に存在するH+で急速に交換され始めると考えられる。この交換により、カルシウム(Ca2+)及びリン酸(PO4
3-)種を、粒子構造から放出させることができる。粒子及び唾液からのカルシウム及びリン酸塩の沈殿を容易にする穏やかな局所的な一過性のpH上昇が生じて、歯の表面上にカルシウム-リン酸(Ca-P)層を形成する。Ca-P複合体の反応及び沈着が継続すると、歯の天然ミネラルに構造的且つ化学的に類似している、結晶性炭酸ヒドロキシアパタイト(HCA)層が形成される。
【0043】
本発明の口腔組成物において使用するための生体活性ガラスは、粒子形態であり、約500μm未満若しくはそれに等しい、適切には約250μm未満、又は約150μm未満の平均粒径(レーザー回折によって決定される通り)を有する。本発明の一部の実施形態では、小さい粒子が使用され、例えば100μm未満、例えば約0.01μm~約90μm又は約0.1μm~約25μmの範囲の平均粒径を有する粒子が使用される。
【0044】
適切には、リン酸カルシウム化合物は、本発明の組成物中に、組成物の0.5~20重量%、より適切には組成物の1~10重量%の範囲の量で存在する。
【0045】
一実施形態では、カルシウムイオン及びリン酸イオンは、異なる供給源に由来する。カルシウムイオン供給源には、口内の唾液と接触すると、リン酸イオンの供給源と反応して脱感作/再石灰化沈殿物をその場で形成することができる、任意の毒物学的に無害なカルシウム化合物が含まれる。
【0046】
この文脈で使用することができる適切なカルシウム供給源には、例えば、塩化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、フマル酸カルシウム、乳酸カルシウム、酪酸カルシウム及びイソ酪酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、酒石酸カルシウム、コハク酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、アルギン酸カルシウム又はそれらの混合物が含まれる。
【0047】
一実施形態では、カルシウムイオン供給源は、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及びそれらの混合物から選択される。
【0048】
ケイ酸カルシウムが用いられる場合、ケイ酸カルシウムは、国際公開第2008/015117号及び国際公開第2008/068248号として公開されているPCT出願に記載される通り、酸化カルシウム-シリカ(CaO-SiO2)を含むことができる。
【0049】
硫酸カルシウムが用いられる場合、硫酸カルシウムは、米国特許第6,159,448号明細書に記載される通り、無水硫酸カルシウム、硫酸カルシウム半水和物及び硫酸カルシウム二水和物を含むことができる。
【0050】
適切には、本発明の組成物におけるカルシウムイオン供給源の量は、組成物の0.5~20重量%、より適切には組成物の1~10重量%の範囲である。
【0051】
本発明の組成物において用いられるリン酸イオン供給源には、口内の唾液と接触すると、カルシウム供給源と反応して脱感作/再石灰化沈殿物をその場で形成することができる、任意の毒物学的に無害なリン酸化合物が含まれる。
【0052】
この文脈で使用することができる適切なリン酸イオン供給源には、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム又はそれらの混合物が含まれる。
【0053】
一実施形態では、リン酸イオン供給源は、リン酸三ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウム(sodium dihydrogen phosphate)の混合物である。
【0054】
一実施形態では、カルシウムイオン供給源は、ケイ酸カルシウムであり、リン酸イオン供給源は、リン酸三ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウム(monosodium dihydrogen phosphate)の混合物である。
【0055】
適切には、本発明の組成物におけるリン酸イオン供給源の量は、組成物の0.5~20重量%、より適切には組成物の1~10重量%の範囲である。
【0056】
本発明による組成物は、湿潤剤を含む。本発明において使用するのに適した湿潤剤には、グリセリン、ソルビトール及びプロピレングリコール又はそれらの混合物が含まれる。一実施形態では、湿潤剤は、グリセリンである。市販のグリセリンは、グリセリンと会合している約0.5~約2.0重量%の間の水を含有し得ることが周知である。典型的に、この量は、約0.5~約1.0重量%の間である。この少量の水はグリセリンと結合するため、その他の成分には利用不可能である。当業者は、グリセリンを含有する組成物を、それでもなお非水系であるとみなすと予想される。湿潤剤は、いずれの場合も可能な限り無水であり、好ましくは固体形態で使用されるべきである。湿潤剤は、製剤を100%にするために使用されるので、組成物の約20重量%~約95重量%の範囲で存在することができる。適切には、湿潤剤は、組成物の約50重量%~約90重量%で存在する。一実施形態では、湿潤剤は、組成物の約70重量%~約96重量%で存在する。
【0057】
本発明による組成物は、組成物において増粘剤として働く、ヒドロキシエチルセルロースポリマー及び焼成シリカをさらに含む。増粘剤は、組成物の成分を一緒に結合し、調製、保存及び利用中に適切な質感及びレオロジーを付与するために必要である。有利には、本明細書において使用される増粘剤は、脱感作/再石灰化沈殿物のその場での形成を容易にする。
【0058】
一態様では、本発明による組成物は、任意のさらなる/追加の増粘剤を本質的に含まない。
【0059】
一態様では、本発明による組成物は、ポリアクリル酸を本質的に含まない。
【0060】
本発明の口腔ケア組成物において使用される適切なヒドロキシエチルセルロースポリマーには、様々なレベルのエチレンオキシド置換を有する、高粘度、中粘度及び低粘度グレードが含まれる。本発明において使用されるヒドロキシエチルセルロースポリマーは、疎水性アルキル又はアラルキル基の導入によって修飾されていないものである。これは、修飾されており、疎水性鎖を含む、特許文献10の歯磨組成物において使用するために開示されているヒドロキシエチルセルロースポリマーとは対照的である。
【0061】
したがって一態様では、本発明による組成物は、疎水性アルキル又はアラルキル基の導入によって修飾されているヒドロキシエチルセルロースポリマーを含まず、又は本質的に含まない。「本質的に含まない」とは、組成物が、0.01重量%以下のこれらの修飾ポリマーを有することを意味する。
【0062】
一実施形態では、ヒドロキシエチルセルロースポリマーは、5~800マイクロメータの間、例えば10~250マイクロメータの間の粒径範囲を有する。一実施形態では、ヒドロキシエチルセルロースは、100~6000mPa・sの間の粘度を有する(1%w/w水溶液として25℃で測定した場合)。
【0063】
適切には、本発明において使用するためのヒドロキシエチルセルロースポリマーは、商標名Natrosolで市販されている。このようなポリマーの例として、以下に示す特性を有する以下のものが挙げられる。
【0064】
【0065】
本発明において使用するのに適したヒドロキシエチルセルロースポリマーは、Hercules Inc、Aqualon Division、Hercules Plaza、1313 North Market Street、ウィルミントン、デラウェア州19894-0001から市販されているNatrosol MXである。Natrosol MXは、4,500~6,500mPa・sの粘度を示す(スピンドル番号4及びRPM60を有するブルックフィールドLVFを使用して2%w/w水溶液として25℃で測定した場合)。
【0066】
適切には、ヒドロキシエチルセルロースポリマーは、組成物の0.1重量%~7.5重量%、適切には0.3%~2.0%の範囲で存在することができる。
【0067】
本発明による組成物は、増粘性シリカとして焼成シリカを含む。焼成シリカ(フュームドシリカとしても公知)は、合成非晶質シリカの形態であり、通常、燃焼によりSiCl4から調製される。焼成シリカは、非晶質シリカの微小液滴からなるふわふわした白色粉末であり、分岐した鎖のような三次元粒子に融合し、次にそれによって三次粒子に凝集する。本発明において使用される焼成シリカは、本質的に非多孔質であり、約50~600m2/gの範囲のBET表面積を有する。
【0068】
適切には、本発明において使用される焼成シリカは、40nm未満、より適切には30nm以下の一次粒子平均径を有する。一次粒子平均径は、適切には5~30nmの間である。
【0069】
本発明において使用される焼成シリカは、親水性である。40nm未満の平均粒径を有する親水性の焼成シリカには、Degussa Companyによって名称Aerosil 90、Aerosil 130、Aerosil 150、Aerosil 200、Aerosil 300及びAerosil 380で販売されている製品が含まれる。
【0070】
適切には、焼成シリカは、組成物の0.1重量%~10重量%、適切には0.3%~5.0%の範囲で存在することができる。
【0071】
適切には、本発明による組成物は、研磨性シリカを含む。
【0072】
一般に、本発明の組成物において使用するのに適した研磨剤の量は、当技術分野で周知の技術に従って、許容される清浄及び研磨レベルをもたらすように、経験的に決定されよう。適切には、研磨剤は、組成物の約1重量%~約60重量%、適切には組成物の約2重量%~約30重量%、又は組成物の約3重量%~約10重量%の量で存在する。
【0073】
界面活性剤材料は、通常、清浄及び/又は発泡特性を提供するために歯磨剤製品に添加される。本発明では、水溶液状態でない固体粉末として添加することができるという条件で、歯磨製剤において使用される従来の任意の界面活性剤を使用することができる。
【0074】
適切な界面活性剤には、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性界面活性剤が含まれる。
【0075】
適切な非イオン性界面活性剤には、例えば、ポリエトキシ化ソルビトールエステル、特にポリエトキシ化ソルビトールモノエステル、例えばジイソステアリン酸PEG(40)ソルビタン、及びICIによって商標名「Tween」で販売されている製品、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの縮重合体(ポロキサマー)、例えばBASF-Wyandotteによって商標名「Pluronic」で販売されている製品、プロピレングリコールの縮合物、ポリエトキシル化水素化ヒマシ油、例えばクレモフォール(cremophor)、並びにソルビタン脂肪エステルが含まれる。
【0076】
適切なアニオン性界面活性剤には、例えば、Albright及びWilsonによって販売されており、「SLS」として公知のラウリル硫酸ナトリウムが含まれる。SLSは、本発明において使用される場合、粉末形態で使用される。さらなる適切なアニオン性界面活性剤は、Croda chemicalsによって製造されている、商標「Adinol CT 95」で販売されているココイル(cocyl)メチルタウリンナトリウムである。
【0077】
適切な両性界面活性剤には、例えば、ベタインが含まれる。構造的に、ベタイン化合物は、アニオン性官能基、例えばカルボキシレート官能基及びカチオン性官能基、例えばメチレン部分によって分離した第四級窒素官能基を含有する。ベタイン化合物には、n-アルキルベタイン、例えばセチルベタイン及びベヘニルベタイン、並びにn-アルキルアミドベタイン、例えばコカミドプロピルベタインが含まれる。一実施形態では、ベタインは、商標名Tego Betainで市販されているコカミドプロピルベタインである。
【0078】
有利には、界面活性剤は、組成物の約0.005重量%~約20重量%、適切には組成物の約0.1重量%~約10重量%、より適切には組成物の0.1重量%~5重量%の範囲の量で存在する。
【0079】
有利には、本発明による組成物は、イオン性フッ素含有化合物をさらに含むことができ、イオン性フッ素含有化合物には、イオン性フッ化物、例えばアルカリ金属フッ化物、アミンフッ化物及びイオン性モノフルオロリン酸塩、例えばアルカリ金属モノフルオロリン酸塩が含まれてよく、イオン性フッ素含有化合物は、100~3000ppmの間、好ましくは500~2000ppmのフッ化物を提供するように製剤に組み込まれ得る。好ましくは、イオン性フッ化物又はモノフルオロリン酸塩は、それぞれ、アルカリ金属フッ化物又はモノフルオロリン酸塩、例えばフッ化ナトリウム又はモノフルオロリン酸ナトリウムである。さらに、イオン性フッ化物含有化合物が本発明の組成物に組み込まれる場合、研磨剤は、イオン性フッ素含有化合物と適合性を有するように選択されるべきであることが理解されよう。
【0080】
本発明の組成物はさらに、口腔ヘルスケア組成物において従来使用されている1つ以上の活性剤、例えば、脱感作剤、侵食防止剤、歯垢防止剤、歯石防止剤、ホワイトニング剤、息をさわやかにする薬剤及び歯のホワイトニング剤を含むことができる。このような薬剤は、所望の治療効果をもたらすレベルで含まれ得る。
【0081】
本発明の組成物は、象牙質知覚過敏症と戦うための脱感作剤を含むことができる。脱感作剤の例として、例えば国際公開第02/15809号に記載されている通り、細管遮断剤又は神経脱感作剤及びそれらの混合物が挙げられる。適切な脱感作剤には、ストロンチウム塩、例えば塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム若しくは硝酸ストロンチウム、又はカリウム塩、例えばクエン酸カリウム、塩化カリウム、重炭酸カリウム、グルコン酸カリウム、特に硝酸カリウムが含まれる。
【0082】
カリウム塩の脱感作量は、一般に、全組成物の2~8重量%の間であり、例えば、5重量%の硝酸カリウムを使用することができる。
【0083】
本発明の組成物は、侵食防止剤、例えば、国際公開第04/054529号(Procter & Gamble)に記載されているポリマー性ミネラル表面活性剤、又はスズ、亜鉛若しくは銅化合物、或いは国際公開第08/054045号(Glaxo Group Limited)に記載されているナノ微粒子酸化亜鉛、或いはそれらの混合物を含むことができる。
【0084】
本発明による組成物において使用するのに適した歯垢防止剤には、トリクロサン、クロルヘキシジン又は塩化セチルピリジニウム(pyridnium)が含まれる。適切な歯石防止剤には、ピロリン酸塩が含まれる。適切な息をさわやかにする薬剤には、重炭酸ナトリウムが含まれる。適切な歯のホワイトニング剤には、過酸化水素及びトリポリリン酸ナトリウムが含まれる。
【0085】
本発明による組成物はまた、口腔衛生製剤において従来使用されている他の薬剤、例えば、着色剤、防腐剤、フレーバー剤及び甘味剤を含有することができる。
【0086】
一般に、このような薬剤は、組成物の少量又は少ない割合で存在し、通常、組成物の約0.001重量%~約5重量%の範囲の量で存在する。本発明では本発明の成分が組み合わせて使用されるので、不安定であるか又は水系環境と全く不適合である任意の活性成分又は活性剤の組合せを、本発明の組成物に添加することもできる。フレーバー剤は、通常、組成物の約1.0重量%の典型的なレベルで、組成物に添加することができる。
【0087】
適切な甘味剤には、サッカリン、サイクラミン酸及びアセスルファムKが含まれ、組成物の約0.01重量%~約0.5重量%、適切には約0.05重量%~約0.5重量%で存在することができる。助剤である甘味剤、例えばタウマチンも、組成物の約0.001重量%~約0.1重量%、適切には約0.005重量%~約0.05重量%のレベルで含まれ得る。タウマチンの適切なブレンドは、Tate and Lyle plcによって商標名「TALIN」で販売されている。
【0088】
本発明による組成物は、ステイン防止剤を含有することもできる。適切なステイン防止剤には、例えばカルボン酸、例えば米国特許第4,256,731号明細書に開示されているもの、アミノカルボキシレート化合物、例えば米国特許第4,080,441号明細書に開示されているもの、米国特許第4,118,474号明細書に開示されているホスホノ酢酸、又は国際公開第93/16681号に開示されているポリビニルピロリドンが含まれる。ステイン防止剤は、組成物に組み込むことができ、又は本発明の組成物の後に使用するための別個の組成物として提供することができる。
【0089】
製剤のpHは、水で3:1の比に希釈される場合、適切には10.0未満、例えば5.5~9.0であるべきである。
【0090】
適切には、本発明による組成物は、25℃で約80,000~約500,000cpsの粘度を有するが、これは、消費者に受容される従来の口腔ケア組成物と同等の製品を生成するために必要である。口腔ケア組成物の粘度は、TF20スピンドルブルックフィールド粘度計を使用して測定することができる。
【0091】
本発明はまた、それを必要としている個体に、有効量の本明細書で先に定義される組成物を塗布するステップを含む、歯牙酸蝕症及び/又は歯質喪失と戦う方法を提供する。
【0092】
本発明はまた、それを必要としている個体に、有効量の本明細書で先に定義される組成物を塗布するステップを含む、歯及び/又は根面のう蝕と戦う方法を提供する。
【0093】
本発明はまた、それを必要としている個体に、有効量の本明細書で先に定義される組成物を塗布するステップを含む、象牙質知覚過敏症と戦う方法を提供する。
【実施例】
【0094】
以下の実施例により、本発明を例示する。
【0095】
[実施例1]
練り歯磨き粉製剤
【0096】
【0097】
製剤III-比較目的のために使用(本発明の組成物ではない)
製剤IIIは、リンケイ酸ナトリウムカルシウム及びポリアクリル酸を含む、市販の対照製剤である。製剤IIIは、ヒドロキシエチルセルロースポリマー又は焼成シリカを含まないが、それ以外では製剤I及びIIと類似している。
【0098】
先の製剤I及びIIを、以下の方法に従って調製した。
【0099】
適切な容器を使用し、HEC及びグリセリンを一緒に撹拌し、少なくとも80℃、ただし約110℃を超えない温度に加熱して、透明な混合物を形成した。次に、加熱を停止し、混合物を室温に自然冷却した。混合物を冷却するときに、高せん断ミキサー、例えばIKA250 Ultra-Tirrax Disperserホモジナイザーを使用してその混合物にAerosilを分散させ、透明なゲルを形成した。フレーバー油以外の製剤の他のすべての成分を、高せん断でゲルに分散させて、均一なゲル混合物を生成した。混合物を40℃よりも低い温度に冷却したら、フレーバー油構成成分を添加した。製造方法の最後の2つのステップ中に、一部ゲル様特性が喪失して、粘度が一時的に低下したが、混合物のチキソトロピー性質の結果として、数時間以内にゲル構造が再構築された。
【0100】
[実施例2]
改変QCMDを使用する層形成の動態の決定
導入
水晶振動子マイクロバランス(QCM)を使用してカルシウム及びリン酸塩を含有する歯磨剤からの材料の質量堆積(mass deposition)を測定するために、新規な技術を開発した。QCMは、石英結晶の表面上の相対的質量変化を、振動電場の影響下で圧電効果を使用して測定することを可能にするナノグラム感知機器である(Dixon, M. C. Quartz Crystal Microbalance with Dissipation Monitoring: Enabling Real-Time Characterization of Biological Materials and Their Interactions. Journal of Biomolecular Techniques. 19, 2008, Vol. 3)。Biolin Scientific ABによって製造されたDissipationモデルQ-Sense E1を備えたQCMを、本研究で使用した。
【0101】
QCMは、主に液体試料と共に使用するために設計されたモジュラーシステムである。異なるモジュールによって、流動を提供することができ、又はある場合には、流動なしの静的オープンモジュールを使用することができる。流動システムにおいて材料をセンサー上に沈着させるためには、試料をポンプ注入しなければならない。試料はパイプを通って出、次に最終的に潜流して表面上に沈着しなければならないので、これは、材料を沈着させる方法について管理するものではない。
【0102】
この問題を克服するために、
図1に示される通り、取り外し可能な蓋を有する改変流動デバイスを設計した。これにより、材料を、センサーの表面上に、この場合ピペットを用いて正確に沈着させることができた。デバイス上に蓋を戻す必要があり、そうしなければ、センサー上の大気移動をうっかり測定するおそれがあった。
【0103】
人工唾液(AS)の調製
人工唾液を、表2に示される成分を混合することによって調製した。pHを7に低減するためにKOHを使用した。
【0104】
【0105】
試験試料
研究では以下の試験試料を使用した。
1.実施例3-製剤III-(比較用製剤)(1:3(ペースト:AS)スラリー)
2.実施例1-製剤I(1:3(ペースト:AS)スラリー)
3.実施例2-製剤II(1:3(ペースト:AS)スラリー)
4.生体活性ガラス粉末 約5.0ミクロンのD50 人工唾液中1.25重量%の懸濁液
5.生体活性ガラス粉末 約14ミクロンのD50 人工唾液中1.25重量%の懸濁液(先のスラリーと等量の生体活性ガラス)
【0106】
方法論
Biolin Scientific Ab製のQCMヒドロキシアパタイトコーティング石英結晶を、任意の欠損について検査し、空気で清浄にし、次にUV/オゾンクリーナーを用いて、例えばNano Bio Analytics、Max-Planck-Str. 3、12489 Berlin、ドイツから入手可能なUVC-1014クリーナーを用いて、10分間UV/オゾン清浄処理した。次に、結晶を、製造者及び機器の指導ポイントによって指示される通り、QCM機器内に正確な向きで入れ、改変ブロック及び蓋で封止した。人工唾液を、安定なシグナルが達成されるまで、センサー上に300μL/分の速度で流し、試験試料及びASを秤量し、以下の重量:ペースト2g及びAS60mLで調製した。ASをビーカーにピペット注入した後、15分間のベースライン記録中に、各ベースラインを測定した。ベースラインを15分間記録した後、測定を停止し、次に再び再開した。次に、AS流をさらに3分間記録し、次に停止した。次に、カバーをねじって外し、ペースト及びASを、20秒間激しく混合して、試験懸濁液を形成した。混合後すぐに、試験懸濁液400μlをQCMセルにピペット注入した。試験懸濁液を、HA結晶と2分間接触させ、流動は適用しなかった。次にASフラッシュを、セル内の結晶に適用し、すなわちAS速度を、本来の300μL/分から400μL/分に30秒間増大した。フラッシュ後、300μL/分の速度のAS流を2時間記録した。測定の完了後、結晶をQCMセルから取り出し、アセトンで穏やかにすすぎ、アルゴンで乾燥させた。
【0107】
【0108】
生体活性ガラス粉末からの沈殿物の沈着は、すぐに生じ始め、2時間の試験期間中に生じ続けた。2時間の時点で、2つの粉末試料の差異は、2つの試料の粒径の差異に起因している可能性があったが、これは、粒径が小さいほど反応性が高いという現在の理論と合致するはずである。市販のペースト(製剤III)からの沈殿物の沈着が最初に観察されたが、その後、著しい沈着は観察されなかった。市販の練り歯磨き粉からの材料の沈着は、実験中に抑制されたように見えた。それとは対照的に、製剤I及びIIでは著しい量の沈殿物の沈着が観察された。このことは、HA形成のための核形成部位である焼成シリカに少なくとも部分的に起因している可能性があり、Aerosilは、ケイ(sililic)酸から形成される焼成シリカである。生体活性ガラスは、ケイ酸に分解して、このケイ酸上に放出されていたカルシウム及びリン酸塩の再沈殿を可能にする。
【0109】
[実施例3]
通水コンダクタンス
導入
通水コンダクタンス(Hc)は、象牙質細管閉塞の程度を測定するために使用される方法論である(Greenhill, Joel D., and David H. Pashley. "The effects of desensitizing agents on the hydraulic conductance of human dentin in vitro." Journal of Dental Research 60.3 (1981): 686-698)。Hcを、製剤I及びII及び製剤III(生体活性ガラスを含有する市販の歯磨剤製剤(比較用製剤))の3つの歯磨剤製剤で実施した。
【0110】
方法論
う蝕がない健康なヒト大臼歯を薄片処理し、歯冠と歯髄腔の間から象牙質ディスクを抽出した(厚さ約800μm)。次に、これらのディスクを、最初に800グリットのペーパーで、次に2500グリットのペーパーで、両面を研磨して平らにした(厚さ<500μmまで)。研磨後、ディスクを10%w/wクエン酸溶液に入れ、2分間超音波処理した。次に、それらを脱イオン水ですすぎ、その後、脱イオン水に10分間浸した。この実験で、10個の象牙質ディスクを、歯磨剤処理ごとに使用した。
【0111】
通水コンダクタンス装置を、圧縮空気供給装置に接続し、溶媒チャンバを1.0PSIに加圧した。象牙質ディスクをPashleyセルに入れ、Earle溶液を、そのシステムに通した。気泡を、注入ポートを介して毛細管チューブに導入し、規定した出発点からの時間を測定する前に数秒間、毛細管チューブに沿って進行させた。気泡の出発位置を測定し、その後5分間にわたって移動した距離を、1分間隔で測定した。未処置象牙質ディスクについて許容される基準を、流体力学的流量1.0~10.0mm/分を有するディスクと定義する。この範囲外に該当する任意の象牙質ディスクは、Hc実験で使用するのに適していないとみなした。
【0112】
純ペーストを、Bendaブラシを使用して象牙質ディスクに10秒間塗布した。処置後、ディスクを、対応する製剤にさらに2分間浸した。次に、ディスクを脱イオン水ですすぎ、第2の気泡を毛細管チューブに導入した。平衡化するために少し休止した後、5分間にわたって気泡が移動した距離を1分間隔で再び測定した。未処置象牙質及び処置象牙質の間の流動の低減を算出した。次に、Pashleyセルを、通水コンダクタンス装置から取り出し、人工唾液約20mlを含有する60mlのSterilin瓶に入れた。次に、Sterilin瓶を37℃で24時間インキュベートした。
【0113】
人工唾液中で24時間インキュベートした後、セルを通水コンダクタンスチャンバに再び接続し、流体力学的流動を再び測定した。未処置象牙質ディスク及び24時間処置したディスクの間の流動の低減を算出した。次に、歯磨剤を用いる第2の処置を、前述の通り実施した後、人工唾液中でさらに24時間インキュベートした。この第2のインキュベーション期間の後、セル及びディスクを再び取り出し、脱イオン水ですすぎ、次にコカコーラ(Coca Cola)50mlに2分間入れた。最終的な流体流動測定を、上述の通り実施した。この実験の結果を、処置後の流体流動対処置前の初期流体流動の低減百分率として、以下に示す(
図3)。
【0114】
結果
図3は、試験歯磨剤で処置した後の、象牙質細管を介する流体流動の低減%を示す。生体活性ガラスを含有する商業的に利用可能な歯磨剤を用いる処置では、予想通り、あらゆる時点で象牙質細管を介する流体流動が低減している。製剤I及びII歯磨剤を用いる処置では、24及び48時間の処置後に、商業用の歯磨剤(製剤III)よりも統計的に高い程度まで象牙質細管を介する流体流動が低減している。このデータは、本明細書に記載される組成物が、象牙質知覚過敏症の処置に有効であるはずであり、さらに、その処置を潜在的に改善し得ることを示唆している。
本発明は、以下の態様を含む。[項1]
カルシウムイオンの供給源、リン酸イオンの供給源、湿潤剤、ヒドロキシエチルセルロースポリマー及び焼成シリカを含む、非水系口腔ケア組成物。
[項2]
カルシウムイオンの供給源及びリン酸イオンの供給源が、リン酸カルシウム化合物である、項1に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項3]
リン酸カルシウム化合物が、生体活性ガラス、グリセロリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸オクタカルシウム、非晶質リン酸カルシウム、アパタイト、α-リン酸三カルシウム又はそれらの混合物から選択される、項2に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項4]
リン酸カルシウム化合物が、生体活性ガラスである、項3に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項5]
生体活性ガラスが、リンケイ酸ナトリウムカルシウムである、項4に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項6]
40重量%~60重量%の二酸化ケイ素、10重量%~40重量%の酸化カルシウム、10重量%~35重量%の酸化ナトリウム、2%~8%の酸化リン、0重量%~25重量%のフッ化カルシウム、0重量%~10重量%の酸化ホウ素、0重量%~8重量%の酸化カリウム、0%~5%の酸化マグネシウムの組合せから形成される、項5に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項7]
リンケイ酸ナトリウムカルシウムが、約45重量%の二酸化ケイ素、約24.5重量%の酸化ナトリウム、約6重量%の酸化リン、及び約24.5重量%の酸化カルシウムを含む、項5に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項8]
リン酸カルシウム化合物が、組成物の1~20重量%の範囲の量で存在する、項2から7のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項9]
カルシウムイオンの供給源が、塩化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、ギ酸カルシウム、フマル酸カルシウム、乳酸カルシウム、酪酸カルシウム及びイソ酪酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、アルギン酸カルシウム又はそれらの混合物から選択される、項1に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項10]
カルシウムイオンの供給源が、組成物の1~20重量%の範囲の量で存在する、項9に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項11]
リン酸イオンの供給源が、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム又はそれらの混合物から選択される、項1に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項12]
リン酸イオンの供給源が、組成物の1~20重量%の範囲の量で存在する、項11に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項13]
湿潤剤が、グリセリンである、項1から12のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項14]
湿潤剤が、組成物の20~90重量%の範囲の量で存在する、項1から13のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項15]
ヒドロキシエチルセルロースポリマーが、Natrosol MXである、項1から14のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項16]
ヒドロキシエチルセルロースポリマーが、組成物の0.1~7.5重量%の範囲の量で存在する、項1から15のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項17]
焼成シリカが、Aerosil 300である、項1から16のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項18]
焼成シリカが、組成物の1~10重量%の範囲の量で存在する、項1から17のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項19]
イオン性フッ素含有化合物を含む、項1から18のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。
[項20]
象牙質知覚過敏症の処置において使用するための、項1から19のいずれか一項に記載の非水系口腔ケア組成物。