(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ヘンドラウイルス感染症及びニパウイルス感染症に対するワクチン
(51)【国際特許分類】
A61K 39/155 20060101AFI20231023BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231023BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231023BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61K39/155 ZNA
A61K39/39
A61K9/107
A61P31/14
(21)【出願番号】P 2020534362
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 US2018066145
(87)【国際公開番号】W WO2019126110
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】ドミノウスキー,ポール・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ムワンギ,ダンカン・エム
(72)【発明者】
【氏名】フォス,デニス・リー
(72)【発明者】
【氏名】レイ,シャラス・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】ハーダム,ジョン・モーガン
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516955(JP,A)
【文献】特表2016-534977(JP,A)
【文献】特表2013-515748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 9/00- 9/72
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニパウイルス感染症から保護することを、それを必要とするブタ動物において行う方法であって、前記動物に単回投与のワクチンを投与することを含み、前記ワクチンは、
a)ヘンドラ抗原またはニパ抗原を含む抗原成分
であって、ニパ抗原は配列番号11またはそのアミノ酸71~602に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、ヘンドラ抗原は配列番号12またはそのアミノ酸73~604に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、さらに、前記単回投与が100マイクログラムの抗原を含有する、抗原成分と、
b)非代謝性油、DEAEデキストラン及びCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含むアジュバントと、
を含み、前記ワクチンは、W/Oエマルジョンである、前記方法。
【請求項2】
前記ニパ抗原が配列番号11またはそのアミノ酸71~602に対して少なくとも
98%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が、配列番号11またはそのアミノ酸71~602
と同一である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
CpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドが5’TLR活性化ドメイン及び少なくとも2つのパリンドローム領域を含有し、一方のパリンドローム領域は、少なくとも6ヌクレオチド長の5’パリンドローム領域であり、直接的にまたはスペーサーを介して、少なくとも8ヌクレオチド長の3’パリンドローム領域に連結している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
CpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドがホスホロチオエート結合を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非代謝性油が軽質ミネラルオイルである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記動物が、これまで
にニパウイルスに対するワクチン接種を受けていない、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記単回投与のワクチンが、約0.125ml~約2mlの体積を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記単回投与のワクチンが、約0.25ml~約1mlの体積を有する、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ヘンドラウイルス(HeV)及びニパウイルス(NiV)の感染症に対する動物ワクチンの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
HeV及びNiVなどのパラミクソウイルスは、ウイルス粒子のエンベロープ上に2つの主要な膜結合型糖タンパク質を有する。糖タンパク質の1つは、ビリオンが宿主細胞上の受容体に結合するために必要であり、赤血球凝集素-ノイラミニダーゼタンパク質(HN)または赤血球凝集素タンパク質(H)のいずれかで表される。もう一つは、赤血球凝集能もノイラミニダーゼ活性も持たない糖タンパク質(G)である。これらの結合糖タンパク質は、分子のアミノ(N)末端が細胞質側に向いており、タンパク質のカルボキシ(C)末端が細胞外にある、II型膜タンパク質である。他の主要な糖タンパク質は、融合(F)糖タンパク質であり、これは、2つの7残基繰り返し(HR)領域及び疎水性融合ペプチドを含有する、三量体のクラスI膜融合性エンベロープ糖タンパク質である。HeV及びNiVは、受容体結合後、結合G糖タンパク質とF糖タンパク質との協働作用による受け手の宿主細胞へのpHに依存しない膜融合プロセスを介して、細胞に感染する。HeV及びNiVの結合G糖タンパク質の主な機能は、宿主細胞の表面上の適切な受容体に結合することであり、十分に特徴付けられたパラミクソウイルスの大部分では、シアル酸部分である。HeV及びNiVのG糖タンパク質は、宿主細胞のタンパク質受容体エフリンB2及び/またはエフリンB3を利用しており、G糖タンパク質によるウイルス結合を遮断する抗体が開発されている(WO2006137931、Bishop(2008)J.Virol.82:11398-11409)。更に、HeV感染症及びNiV感染症に対する免疫防御応答をもたらす手段としてもG糖タンパク質を使用するワクチンが開発されている(WO2009117035)。
【0003】
現在、ヘンドラウイルスによって引き起こされた感染症または疾患の予防に対して認可され、ウマでの使用が承認されたワクチンは1つ(Equivac(登録商標)HeV;Zoetis)あるが、ニパウイルス感染症の予防に対して認可されたワクチンは存在しない。ニパウイルス及びヘンドラウイルスはいずれも、アメリカ国立アレルギー感染症研究所により、バイオディフェンス問題上優先すべきカテゴリーCに分類される病原体である。更に、これらのウイルスは、人獣共通性感染症のバイオセーフティレベル4の病原体(BSL-4)であるため、ワクチン及び/または診断薬の安全な生産は、非常に費用がかかり、困難である。アメリカ合衆国農務省は、ニパウイルス及びヘンドラウイルスの両方を、重大な影響をもたらす外来動物疾患に分類している。
【発明の概要】
【0004】
第1の態様において、本発明は、ヘンドラウイルス感染症またはニパウイルス感染症から保護することを、それを必要とする動物において行う方法であって、当該動物に単回投与のワクチンを投与することを含み、ワクチンは、ヘンドラ抗原またはニパ抗原を含む抗原成分と、油、ポリカチオン性担体及びCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含むアジュバントと、を含み、ワクチンは、W/Oエマルジョンである、方法を提供する。
【0005】
特定の実施形態において、動物は、ブタ動物であり、ニパ抗原は、配列番号11またはそのアミノ酸71~602に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0006】
特定の実施形態において、動物は、ウマ動物であり、ヘンドラ抗原は、配列番号12またはそのアミノ酸73~604に対して少なくとも95%(例えば、少なくとも98%)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0007】
上記のいずれかの実施形態と組み合わせることができる更なる実施形態において、油は、非代謝性油である。
【0008】
上記のいずれかの実施形態と組み合わせることができる更なる実施形態において、ポリカチオン性担体は、DEAEデキストランである。
【0009】
上記のいずれかの実施形態と組み合わせることができる更なる実施形態において、当該単回投与のワクチンは、約0.125ml~約2mlの体積を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1-1】ニパウイルスG糖タンパク質である配列番号11を示す。
【
図1-2】ニパウイルスG糖タンパク質である配列番号11を示す。
【
図2-1】ヘンドラウイルスG糖タンパク質である配列番号12を示す。
【
図2-2】ヘンドラウイルスG糖タンパク質である配列番号12を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
【0012】
「約」または「およそ」は、測定可能な数値変数に関して使用される場合、その変数が示す値、及びその示された値の実験誤差内(例えば、平均の95%信頼区間内)またはその示された値の10%以内である変数のいずれか大きいほうの全ての値を指す。ただし、約が週単位の時間間隔に関して使用される場合、「約3週」は17~25日であり、約2~約4週は10~40日である。
【0013】
「抗原」または「免疫原」は、動物の免疫系によって認識され、免疫応答を引き起こす任意の物質を指す。この用語には、死滅した、不活性化した、弱毒化した、または改変された生きた細菌、ウイルス、または寄生生物が含まれる。「抗原」という用語にはまた、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、組み換えタンパク質、合成ペプチド、タンパク質抽出物、細胞(腫瘍細胞を含む)、組織、多糖、もしくは脂質、またはその断片が含まれ、単独またはそれらの任意の組み合わせを含む。抗原という用語にはまた、抗イディオタイプ抗体またはその断片などの抗体、及び抗原または抗原決定基(エピトープ)を模倣し得る合成ペプチドミモトープが含まれる。
【0014】
「緩衝液」は、他の化学物質の濃度変化を防ぐ化学系を意味し、例えば、プロトン供与体及び受容体系は、水素イオン濃度(pH)の著しい変化を防ぐ緩衝液として作用する。緩衝液の更なる例は、弱酸とその塩(共役塩基)または弱塩基とその塩(共役酸)の混合物を含有する溶液である。
【0015】
「対象に単回投与のワクチンXを投与することを含む」方法は、複数回投与のワクチンX」が投与される治療レジメンを除外する。
【0016】
アジュバント製剤に適用される「本質的に~からなる」は、列挙されていない追加の免疫賦活剤または免疫調節剤が測定可能な免疫賦活作用または免疫調節作用を発揮するような量でこれらの剤を含有していない製剤を指す。
【0017】
「単回投与ワクチンとして有効な」組成物またはワクチンへの言及は、ニパまたはヘンドラに対して免疫化されていない動物に単回投与したとき、それぞれニパ抗原投与またはヘンドラ抗原投与に対して、少なくとも5ヶ月、例えば、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、または14ヶ月の免疫持続期間を与える、ニパまたはヘンドラワクチンを指す。
【0018】
「乳化剤」という用語は、本開示において広義に使用される。乳化剤は、乳化剤として一般に許容される物質を含み、例えば、TWEEN(登録商標)またはSPAN(登録商標)の製品ラインの様々な製品(それぞれポリエトキシレート化ソルビトールの脂肪酸エステル及び脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤)、及びPEG-40ヒマシ油または別のPEG化硬化油などの様々な可溶性促進剤を含む。
【0019】
抗原の「免疫学的防御量」または「免疫学的に有効な量」または「免疫応答をもたらすのに有効な量」は、レシピエントにおいて、免疫原性応答を誘導するのに有効な量である。免疫原性応答は、診断目的もしくは他の検査に十分なものであり得るか、または病原体の感染によって生じる健康への悪影響もしくはその合併症を含む、疾患の徴候もしくは症状を予防するのに十分なものであり得る。体液性免疫もしくは細胞媒介性免疫のいずれか、または両方が誘導され得る。免疫原性組成物に対する動物の免疫原性応答は、例えば、野生型株による抗原投与後の抗体価の測定、リンパ球増殖アッセイを介して間接的に、または徴候及び症状のモニタリングによって直接的に評価され得、一方、ワクチンによって付与される防御免疫は、例えば、対象者の死亡率、罹患率、体温数、全身状態、ならびに全般的な健康状態及び動作などの臨床徴候の低減を測定することによって評価することができる。免疫応答は、限定するものではないが、細胞性免疫及び/または体液性免疫の誘導を含み得る。
【0020】
「免疫原性」とは、免疫応答または抗原性応答を惹起することを意味する。したがって、免疫原性組成物は、免疫応答を誘導する任意の組成物である。
【0021】
「脂質」は、水には不溶性(またはやや難溶)であるが、非極性有機溶媒には可溶であり、触ると油っぽく、炭水化物及びタンパク質とともに生細胞の主要な構造材料を構成すると通常みなされる、脂肪、油、ワックス、ステロール、及びトリグリセリドを含む、有機化合物群のいずれかを指す。
【0022】
「薬学的に許容される」は、適切な医学的判断の範囲内で、対象の組織との接触に使用するのに好適であり、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などを伴うことなく、妥当な利益/リスク比に見合い、かつ意図される使用に効果的である、物質を指す。
【0023】
本発明は、本明細書に記載されるワクチンの単回投与を動物に投与することによって、ヘンドラ感染症及び/またはニパ感染症に対するワクチン接種を、それを必要とする動物に行う方法を提供する。簡潔に述べれば、ワクチンは、以下に詳述するアジュバントTXOで免疫賦活されたヘンドラ抗原またはニパ抗原を含有する。
【0024】
抗原
【0025】
本発明の実施に有用なヘンドラウイルスG糖タンパク質ポリペプチド、及びその組み換え発現については、そのような情報が明示された公開済みの国際特許出願第WO2012/158643号及び同第WO2006/085979号の開示全体を参照されたい。本明細書で有用な特定のヘンドラウイルスGタンパク質ポリペプチドの好ましい例は、WO2012/158643に開示されており、例えば、全長Gタンパク質(配列番号12)、その可溶性断片(配列番号12のアミノ酸73~604をコードする断片)、及びIg(カッパ)リーダー配列を有する当該開示の更なる断片が挙げられる。例えば、WO2012/158643の配列番号15を参照されたい。一般に、ヘンドラウイルスG糖タンパク質の可溶性形態は、エクトドメインの全てまたは一部を含み、G糖タンパク質の膜貫通ドメインの全てまたは一部、及び細胞質尾部の全てまたは一部を除去することによって生成される。好ましくは、コード遺伝子配列は、発現に対してコドン最適化される。
【0026】
いくつかの実施形態において、ヘンドラG糖タンパク質は、二量体及び/または四量体の形態であり得る。そのような二量体は、G糖タンパク質内のシステイン残基間に形成されるジスルフィド結合の形成に応じて変化する。そのようなジスルフィド結合は、天然G糖タンパク質で形成される結合に相当し得、あるいは、異なるジスルフィド結合が形成されることで、抗原性を増強させる異なるG糖タンパク質二量体及び/または四量体の形態が生じ得る。更に、また、G糖タンパク質が数多くの立体配座依存性エピトープ(すなわち、三次元の三次構造から生じるもの)を生じることと、それゆえ、そのような多数の天然エピトープを維持することが中和抗体応答を付与するために非常に好ましいことを考慮すると、二量体化及び四量体化していない形態もまた本発明の実施に有用である。
【0027】
概して言えば、ヘンドラGタンパク質の発現ベクターの構築は、WO2012/158643の実施例1に記載されているとおりであり、CHO細胞から得られるタンパク質発現は、その実施例2に記載されているとおりであり、あるいは、ワクシニア系(その実施例3参照)または293細胞(その実施例4参照)を使用してもよい。好ましい具体例において、可溶性Gタンパク質は、天然ヘンドラウイルスG糖タンパク質のアミノ酸73~604として記載される(配列番号12と同一であるWO2012/158643の配列番号2参照。その二量体化は、自然に、CHO細胞からの発現と同時に生じ、得られるGタンパク質は、およそ50%が二量体、50%が四量体であり、単量体はほとんど残らない。293F細胞での発現は、約70%が二量体になる。
【0028】
ニパGタンパク質の発現ベクターの構築も記載されている。例えば、WO2012/158643の実施例1及び2を参照されたい。本明細書で有用な特定のニパウイルスGタンパク質ポリペプチドの好ましい例は、WO2012/158643に開示されており、例えば、全長Gタンパク質(配列番号11)、その可溶性断片(配列番号11のアミノ酸71~602をコードする断片)、及びIg(カッパ)リーダー配列を有する当該開示の更なる断片が挙げられる。一般に、ヘンドラウイルスG糖タンパク質の可溶性形態は、エクトドメインの全てまたは一部を含み、G糖タンパク質の膜貫通ドメインの全てまたは一部、及び細胞質尾部の全てまたは一部を除去することによって生成される。好ましくは、コード遺伝子配列は、発現に対してコドン最適化される。
【0029】
ニパG抗原は、ヘンドラG抗原と同様に産生され得、例えば、WO2012/158643の実施例3に記載されているとおりである。
【0030】
大型動物に対する好ましい抗原用量は、約50~約200マイクログラム/用量の範囲内であり、約100マイクログラムが最も好ましい用量である。イヌなどの小型動物の場合、5~50マイクログラム、例えば、約10マイクログラム、約15マイクログラム、約20マイクログラム、約25マイクログラム、約30マイクログラム、約35マイクログラム、約40マイクログラム、約45マイクログラムなど、より少ない量が必要とされる。
【0031】
特定の実施形態において、ニパ抗原及び/またはヘンドラ抗原は、それぞれ配列番号11及び12であり、アミノ酸が最大5%異なる。好ましくは、改変アミノ酸は、保存的に置換される。次の8つの群は、それぞれが互いに保存的に置換されているアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins,W.H.Freeman and Co.,N.Y.(1984)参照)。
【0032】
ヘンドラ抗原またはニパ抗原が配列番号11または12に少なくとも95%同一であるかどうかを決定するために、当該抗原が追加の断片(例えば、精製タグまたはIg(カッパ)リーダー配列)を含む実施形態において、そのような追加の断片は、比較から除外される。
【0033】
更なる実施形態において、抗原成分は、上記アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸配列を含むベクターを含み得る。好適なベクターには、ポックスベクター(例えば、ワクシニアベクターまたはALVACなどのカナリア痘ベクター)、アデノウイルスベクター、SIRNAVAXSMプラットフォームなどが含まれる。
【0034】
アジュバント
【0035】
本発明のワクチンは、油中水型(W/O)エマルジョンである。複数の油及びそれらの組み合わせが本発明の使用に適している。これらの油には、限定するものではないが、動物油、植物油、及び非代謝性油が含まれる。本発明に好適な植物油の非限定的な例は、トウモロコシ油、ピーナッツ油、大豆油、ヤシ油、及びオリーブ油である。動物油の非限定的な例は、スクアランである。非代謝性油の好適な非限定的な例には、軽質ミネラルオイル、直鎖状または分岐状の飽和油などが挙げられる。
【0036】
一連の実施形態において、本発明のアジュバント製剤に使用される油は、軽質ミネラルオイルである。本明細書で使用されるとき、「ミネラルオイル」という用語は、蒸留技術を介してペトロラタムから得られる液体炭化水素の混合物を指す。この用語は、「流動パラフィン」、「流動ワセリン」及び「ホワイトミネラルオイル」と同義である。この用語はまた、「軽質ミネラルオイル」、すなわち、ペトロラタムの蒸留によって同様に得られるが、ホワイトミネラルオイルよりも比重がわずかに低い油を含むことが意図される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1990,pages 788 and 1323)を参照されたい。ミネラルオイルは、様々な商業的供給元、例えば、J.T.Baker(Phillipsburg,Pa.)、USB Corporation(Cleveland,Ohio)から入手することができる。好ましいミネラルオイルは、DRAKEOL(登録商標)の名称で市販されている軽質ミネラルオイルである。
【0037】
典型的に、油相は、ワクチン組成物の50体積%~95体積%の量、好ましくは、50%超~85%v/vの量、より好ましくは、50%超~60%v/vの量、より好ましくは、50超~52%v/vの量で存在する。油相は、任意の乳化剤(例えば、SPAN(登録商標)80、TWEEN(登録商標)80など)が存在する場合、油と、そのような乳化剤とを含む。油相の体積は、油及び乳化剤(複数可)の体積の合計として計算される。したがって、例えば、油の体積が組成物の40%であり、乳化剤(複数可)の体積が12%である場合、油相は、組成物の52%v/vで存在することになる。同様に、油が組成物の約45%の量で存在し、乳化剤(複数可)が約6%の量で存在する場合、油相は、組成物の約51%v/vで存在する。
【0038】
本発明の全てのアジュバント/ワクチンに適用可能な実施形態のサブセットにおいて、油と油溶性乳化剤を合わせた体積パーセンテージは、ワクチン組成物の少なくとも50%、例えば、50体積%~95体積%、好ましくは、50%超~85%v/vの量、より好ましくは、50%~60%v/vの量、より好ましくは、50~52%v/vの量である。したがって、例えば、限定するものではないが、油は、45%の量で存在し得、脂溶性乳化剤は、5%v/vを超える量で存在することになる。したがって、油と油溶性乳化剤を合わせた体積パーセンテージは、少なくとも50%となる。
【0039】
本発明の全てのワクチンに適用可能な更に別のサブセットにおいて、油の体積パーセンテージは、ワクチン組成物の40%超であり、例えば、40体積%~90体積%、40%~85%v/v、43%~60%v/v、44~50%v/vである。
【0040】
本発明のエマルジョンでの使用に好適な乳化剤には、生物学的に適合性のある天然乳化剤及び非天然合成界面活性剤が含まれる。生物学的に適合性のある乳化剤には、リン脂質化合物またはリン脂質の混合物が含まれる。好ましいリン脂質は、大豆レシチンまたは卵レシチンなどのホスファチジルコリン(レシチン)である。レシチンは、粗植物油を水洗し、得られた含水ガムを分離及び乾燥させることによって、ホスファチドとトリグリセリドの混合物として得ることができる。精製された生成物は、アセトン洗浄によってトリグリセリド及び植物油を除去した後に残留する、アセトン不溶性のリン脂質及び糖脂質の混合物を分画することによって得ることができる。あるいは、レシチンは、様々な商業的供給元から入手することができる。他の好適なリン脂質には、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、及びホスファチジルエタノールアミンが含まれる。リン脂質は、天然源から単離されたものであってもよいし、従来とおりに合成されたものであってもよい。
【0041】
追加の実施形態において、本明細書で使用される乳化剤は、レシチンを含まないか、または免疫学的に有効ではない量でレシチンを使用する。
【0042】
本発明のアジュバント製剤での使用に好適な非天然の合成乳化剤には、ソルビタンをベースにした非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸置換ソルビタン界面活性剤(SPAN(登録商標)またはARLACEL(登録商標)の名称で市販されているもの)、ポリエトキシレート化ソルビトールの脂肪酸エステル(TWEEN(登録商標))、ヒマシ油などの供給源から得られる脂肪酸のポリエチレングリコールエステル(EMULFOR(登録商標))、ポリエトキシレート化脂肪酸(例えば、SIMULSOL(登録商標)M-53の名称で入手可能なステアリン酸)、ポリエトキシレート化イソオクチルフェノール/ホルムアルデヒドポリマー(TYLOXAPOL(登録商標))、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル(BRIJ(登録商標))、ポリオキシエチレンノンフェニルエーテル(TRITON(登録商標)N)、ポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X)が含まれる。好ましい合成界面活性剤は、SPAN(登録商標)及びTWEEN(登録商標)、例えば、TWEEN(登録商標)-80(モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン)及びSPAN(登録商標)-80(モノオレイン酸ソルビタン)の名称で入手可能な界面活性剤である。
【0043】
一般的に言えば、乳化剤(複数可)は、ワクチン組成物中に、0.01体積%~40体積%、好ましくは、0.1%~15%、より好ましくは、2%~10%の量で存在し得る。
【0044】
本発明のアジュバント製剤中に存在する追加成分には、カチオン性担体及びCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドが含まれる。免疫刺激性オリゴヌクレオチド及びポリカチオン性担体を含むW/Oワクチン組成物を形成するそのようなアジュバントは、「TXO」と呼ばれる。
【0045】
好適なカチオン性担体には、限定するものではないが、デキストラン、DEAE(ジエチル-アミノエチル)デキストラン(及びその誘導体)、PEG、グアーガム、キトサン誘導体、ポリセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)ポリエチレンイメン(polyethylenimene)、ポリリシンなどのポリアミノなどが含まれる。
【0046】
CpGオリゴヌクレオチドは、特定の塩基配列状態で非メチル化CGジヌクレオチドが存在すること(CpGモチーフ)を特徴とする薬物治療薬の一種類である(Hansel TT,Barnes PJ(eds):New Drugs for Asthma,Allergy and COPD.Prog Respir Res.Basel,Karger,2001,vol 31,pp 229-232;参照により本明細書に援用される)。これらのCpGモチーフは、真核生物DNAにはみられないものであり、真核生物DNAでは、CGジヌクレオチドが抑制され、存在している場合は通常メチル化されているが、細菌DNAには存在し、細菌に免疫刺激性を付与する。
【0047】
選択された実施形態において、本発明のアジュバントは、いわゆるP型免疫刺激性オリゴヌクレオチド、より好ましくは、修飾されたP型免疫刺激性オリゴヌクレオチド、更により好ましくは、E修飾されたP型オリゴヌクレオチドを利用する。P型免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、パリンドロームの存在を特徴とする、一般に6~20ヌクレオチド長のCpGオリゴヌクレオチドである。P型オリゴヌクレオチドは、in vitro及び/またはin vivoのいずれにおいても、コンカテマーに自然に自己会合する能力を有する。これらのオリゴヌクレオチドは、厳密な意味では一本鎖であるが、パリンドロームの存在により、コンカテマー、または場合によりステム・ループ構造、更には二次及び三次構造の形成が可能になる。P型免疫刺激性オリゴヌクレオチドの全長は、19~100ヌクレオチド、例えば、19~30ヌクレオチド、30~40ヌクレオチド、40~50ヌクレオチド、50~60ヌクレオチド、60~70ヌクレオチド、70~80ヌクレオチド、80~90ヌクレオチド、90~100ヌクレオチドである。
【0048】
本発明の一態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、1つの5’TLR活性化ドメイン及び少なくとも2つのパリンドローム領域を含有し、一方のパリンドローム領域は、少なくとも6ヌクレオチド長の5’パリンドローム領域であり、直接的にまたはスペーサーを介して、少なくとも8ヌクレオチド長の3’パリンドローム領域に連結している。
【0049】
P型免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、当該技術分野において知られている技術に従って修飾され得る。例えば、J修飾は、ヨード修飾されたヌクレオチドを指す。E修飾は、エチル修飾されたヌクレオチド(複数可)を指す。したがって、E修飾されたP型免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのヌクレオチド(好ましくは、5’ヌクレオチド)がエチル化されている、P型免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。更なる修飾には、6-ニトロ-ベンゾイミダゾールの結合、O-メチル化、プロイニル-dUでの修飾、イノシン修飾、2-ブロモビニル結合(好ましくは、ウリジンへの結合)が含まれる。
【0050】
P型免疫刺激性オリゴヌクレオチドはまた、限定するものではないが、ホスホジエステル結合及びホスホロチオエート結合を含む、修飾されたヌクレオチド間結合を含有し得る。本発明のオリゴヌクレオチドは、合成されたものであってもよいし、商業的供給元から入手したものであってもよい。
【0051】
P型オリゴヌクレオチド及び修飾されたP型オリゴヌクレオチドは、2008年6月12日に公開された公開済みのPCT出願第WO2008/068638号に更に開示されている。修飾されたP型免疫刺激性オリゴヌクレオチドの好適な非限定的な例は、以下に記載される(配列番号1~10において、「*」は、ホスホロチオエート結合を指し、「_」は、ホスホジエステル結合を指す)。
配列番号1 5’T*C_G*T*C_G*A*C_G*A*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’
配列番号2 5’T*C_G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G3’
配列番号3 5’T*C*G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G*T3’
配列番号4 5’JU*C_G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G3’
配列番号5 5’JU*C_G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G*T3’
配列番号6 5’JU*C*G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G*T3’
配列番号7 5’EU*C_G*A*C*G*T*C*G*A*T*C*G*G*C*G*C*G*C*G*C*C*G3’
配列番号8 5’JU*C_G*T*C*G*A*C*G*A*T*C*G*G*C*G*G*C*C*G*C*C*G*T3’
配列番号9 5’JU*C*G*T*C*G*A*C*G*A*T*C*G*G*C*G*G*C*C*G*C*C*G*T3’
配列番号10 5’T*C_G*T*C_G*A*C_G*A*T*C_G*G*C*G*C_G*C*G*C*C*G3’
【0052】
TXOアジュバントの場合、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、好ましくは、パリンドローム配列を含有し、任意選択により修飾された骨格を含む、好ましくは、ODNは、0.5~400μg/用量の量で存在し得、ポリカチオン性担体は、0.5~400mg/用量の量で存在し得る。投与量は、対象の種に応じて注意が必要である。
【0053】
例えば、成体のブタにとってより好適な特定の実施形態において、TXOの一用量は、約50~400μg(例えば、成体のブタの場合、50~300、または100~250μg、または約50~約100μg)の免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含み、ポリカチオン性担体は、約5~約500mg/用量(例えば、10~500mg、または10~300mg、または50~200mg/用量)の量で存在し得る。子ブタにとってより好適な実施形態において、TXOの一用量は、約5~100μg(例えば、10~80μg、または20~50μg)の免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含み、一方、ポリカチオン性担体は、1~50mg/用量(例えば、1~25mg/用量、または10~25mg/用量)の量で存在し得る。
【0054】
TXOアジュバントは、次のように調製することができる。
a)モノオレイン酸ソルビタンを軽質ミネラルオイルに溶解する。得られた油性溶液を滅菌濾過する。
b)免疫刺激性オリゴヌクレオチド、DEAEデキストラン及びモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンを水相に溶解し、それにより、水溶液を形成する。
c)連続的な均質化の下で水溶液を油性溶液に加え、それにより、アジュバント製剤TXOを形成する。
【0055】
抗原は、水相を調製する工程で、免疫刺激性オリゴヌクレオチドとポリカチオン性担体の混合物中に加えることができる。
【0056】
ワクチンは、限定するものではないが、サポニン(例えば、Quil Aまたはその精製画分)、糖脂質、例えば、BAY(登録商標)R1005(塩または塩基のいずれかの形態)、MPLA、ステロール(例えば、コレステロール)、カチオン化ステロール(例えば、DC-コレステロールとしても知られる、3β-[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール)、リン脂質(例えば、レシチン)、ミョウバン、四級アミン、例えば、DDA(ジメチルジオクタデシルアンモニウム)などを含む、追加の免疫調節分子を更に含み得る。
【0057】
ワクチンは、様々な薬学的に許容される賦形剤、例えば、緩衝液、pH及び/または浸透圧調整剤、及び/または防腐剤を更に含み得る。例えば、クロロクレゾールは、防腐剤として、0.01~0.5%w/v/用量、より好ましくは、0.05~0.2%、最も好ましくは、約0.1%の量で使用され得る。他の好適な賦形剤には、酢酸及び塩(1~2%w/v)、クエン酸及び塩(1~3%w/v)、ホウ酸及び塩(0.5~2.5%w/v)、ならびにリン酸及び塩(0.8~2%w/v)が含まれる。好適な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v)、クロロブタノール(0.3~0.9%w/v)、パラベン(0.01~0.25%w/v)及びチメロサール(0.004~0.02%w/v)、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0058】
非経口製剤は、典型的に、塩、炭水化物及び緩衝剤(好ましくは、約3~約9、または約4~約8、または約5~約7.5、または約6~約7.5、または約7~約7.5のpHにするもの)などの賦形剤を含有し得る水溶液であるが、ある用途については、無菌非水溶液として、または無菌パイロジェンフリー水などの好適なビヒクルとともに使用される乾燥形態として、より好適に製剤化され得る。
【0059】
無菌条件下での非経口製剤の調製、例えば、凍結乾燥による調製は、当業者によく知られている標準的な製薬技術を使用して容易に達成することができる。
【0060】
ワクチンの体積は、変えることができる。一般に、ブタの標準用量は、1回の投与あたり約2mlのワクチンである。異なる実施形態において、その体積は、例えば、0.125ml~約5ml、例えば、2ml、1ml、0.5、ml、0.25mlなどに変えることができる。体積が減少しても、依然として、油中水型エマルジョンであり、好ましくは、50%以上の油相を含有する。抗原、ポリカチオン性担体及びCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は、好ましくは、標準的な2ml用量の場合と同様である。そのようなマイクロドージングは、少なくとも2つの側面で有利である。第1に、動物にとって苦痛が少なく、第2に、特に家畜動物にとって重要であるが、油の量が減少することで、代謝が速くなり、それにより、屠殺保留(すなわち、規制機関によって許可される屠殺とワクチン接種との間の時間)が減少するだろう。
【0061】
現在、ニパ抗原を含有するワクチンは上市されておらず、ヘンドラ抗原を含有するワクチンは1つしかない。EQUIVAC(登録商標)ヘンドラ(Zoetis)は、ヘンドラGタンパク質に由来する抗原を含有し、ISCOM(免疫刺激複合体)で免疫賦活化されている。EQUIVAC(登録商標)ヘンドラは、筋肉内投与される。適切な治療レジメンは、初回投与と追加投与(初回投与から約3週間後の追加投与)の両方と、年1回の再接種を要する。対照的に、本明細書に記載されるワクチンは、1回のみの投与(初回投与及び追加投与とは対照的)と、年1回の再接種である。
【0062】
本明細書において引用される全ての公開物は、特許公報及び非特許公報のいずれも、本発明が属する分野の当業者のレベルを示すものである。これらの公開物は全て、それぞれ個々の公開物が参照により援用されることが具体的かつ個別に示される場合と同様に、参照により本明細書に完全に援用される。
【0063】
本明細書において、本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に対して多数の変更を行うことができ、他の構成が考案され得ることを理解されたい。
非限定的に、本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
ヘンドラウイルス感染症またはニパウイルス感染症から保護することを、それを必要とする動物において行う方法であって、前記動物に単回投与のワクチンを投与することを含み、前記ワクチンは、
a)ヘンドラ抗原またはニパ抗原を含む抗原成分と、
b)油、ポリカチオン性担体及びCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含むアジュバントと、を含み、前記ワクチンは、W/Oエマルジョンである、前記方法。
[態様2]
前記動物がブタ動物であり、前記ニパ抗原が配列番号11またはそのアミノ酸71~602に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記アミノ酸配列が、配列番号11またはそのアミノ酸71~602に対して少なくとも98%同一である、態様2に記載の方法。
[態様4]
前記動物がウマ動物であり、前記ヘンドラ抗原が配列番号12またはそのアミノ酸73~604に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、態様1に記載の方法。
[態様5]
前記アミノ酸配列が、配列番号12またはそのアミノ酸73~604に対して少なくとも98%同一である、態様4に記載の方法。
[態様6]
前記油が非代謝性油である、態様1~5のいずれか1項に記載の方法。
[態様7]
前記非代謝性油が軽質ミネラルオイルである、態様6に記載の方法。
[態様8]
前記ポリカチオン性担体が、デキストラン、DEAEデキストラン、PEG、グアーガム、キトサン誘導体、ポリセルロース誘導体、例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)ポリエチレンイメン(polyethylenimene)、ポリアミノ及びポリリシンから選択される、態様1~7のいずれか1項に記載の方法。
[態様9]
前記ポリカチオン性担体がDEAEデキストランである、態様8に記載の方法。
[態様10]
前記動物が、これまでにヘンドラウイルスまたはニパウイルスに対するワクチン接種を受けていない、態様1~9のいずれか1項に記載の方法。
[態様11]
前記単回投与のワクチンが、約0.125ml~約2mlの体積を有する、態様1~10のいずれか1項に記載の方法。
[態様12]
前記単回投与のワクチンが、約0.25ml~約1mlの体積を有する、態様11に記載の方法。