(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】架空電気ケーブルおよび該架空電気ケーブルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
H01B 9/04 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
H01B9/04
(21)【出願番号】P 2020545331
(86)(22)【出願日】2019-03-05
(86)【国際出願番号】 US2019020855
(87)【国際公開番号】W WO2019173414
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-10-19
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506217391
【氏名又は名称】シーティシー グローバル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】CTC GLOBAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ボーズ、エリック ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェブ、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ピリング、ダグラス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウォン、クリストファー
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507758(JP,A)
【文献】特開2010-062029(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0091322(KR,A)
【文献】特開2004-327254(JP,A)
【文献】特開昭63-010407(JP,A)
【文献】特開平10-295017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空電気ケーブルであって、
2000MPa以上の極限引張強度(UTS)を有する繊維補強複合強度部材と、
前記繊維補強複合強度部材を包囲する第1伝導層であって、第1アルミニウム材料のストランドを備える第1伝導層
であって、前記第1アルミニウム材料は完全アニーリングされたアルミニウム合金である、第1伝導層と、
前記第1伝導層を包囲する第2伝導層であって、第2アルミニウム材料のストランドを備える第2伝導層
であって、前記第2アルミニウム材料は硬化アルミニウム合金である、第2伝導層と、を備え、
前記第2アルミニウム材料の硬度は、前記第1アルミニウム材料の硬度よりも大きく、
前記第1アルミニウム材料の前記ストランドと前記第2アルミニウム材料の前記ストランドとの両方が、台形ストランドである、架空電気ケーブル。
【請求項2】
前記第1アルミニウム材料の電気伝導率は、前記第2アルミニウム材料の前記電気伝導率よりも大きい、請求項1に記載の架空電気ケーブル。
【請求項3】
前記第1アルミニウム材料は、60%IACS以上の電気伝導率を有する、請求項2に記載の架空電気ケーブル。
【請求項4】
前記第1アルミニウム材料は、62%IACS以上の伝導率を有する、請求項2に記載の架空電気ケーブル。
【請求項5】
前記第1アルミニウム材料は1350-O
完全アニーリングアルミニウム合金である、請求項1~4のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項6】
前記第2アルミニウム材料は、アルミニウム-ジルコニウム(AlZr)合金および1350-H19アルミニウム合金から選択される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項7】
前記第1伝導層と前記第2伝導層との間に配置された第3伝導層をさらに備える、請求項1~
6のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項8】
前記第3伝導層は、前記第1アルミニウム材料と異なり前記第2アルミニウム材料と異なる、第3アルミニウム材料のストランドを備える、請求項
7に記載の架空電気ケーブル。
【請求項9】
前記第3伝導層は、前記第1アルミニウム材料のストランドを備える、請求項
7または8に記載の架空電気ケーブル。
【請求項10】
前記第3伝導層は、前記第2アルミニウム材料のストランドを備える、請求項
7~9のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項11】
前記繊維補強複合強度部材は、結合マトリクス中に配置されたほぼ連続した補強カーボン繊維を含む、請求項1~
10のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項12】
前記繊維補強複合強度部材は、30mm以下の直径を有する、請求項1~
11のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項13】
前記繊維補強複合強度部材は、3mm以上の直径を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項14】
前記繊維補強複合強度部材は、3700MPa以下の極限引張強度(UTS)を有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の架空電気ケーブル。
【請求項15】
架空電気ケーブルの製造のための方法であって、
第1伝導層を形成するように、第1アルミニウム材料の複数の第1台形ストランドを2000MPa以上の極限引張強度(UTS)を有する繊維補強複合強度部材に対し巻く工程
であって、前記第1アルミニウム材料は完全アニーリングされたアルミニウム合金である、工程と、
第2伝導層を形成するように、第2アルミニウム材料の複数の第2台形ストランドを前記第1伝導層の周りに巻く工程
であって、前記第2アルミニウム材料は硬化アルミニウム合金である、工程と、を備え、
前記第2アルミニウム材料の硬度は、前記第1アルミニウム材料の硬度よりも大きい、方法。
【請求項16】
前記複数の第2台形ストランドの前記第1伝導層の周りの巻付けの前に、第3アルミニウム材料の複数の第3
台形ストランドを前記第1伝導層の周りに巻く工程をさらに備える、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
電気伝送ラインの設置のための方法であって、
架空電気ケーブルを2つ以上の支持構造間に張る工程と、
前記架空電気ケーブルに張力を加える工程と、
前記架空電気ケーブルが前記張力を加えられている状態において、前記架空電気ケーブルが前記2つの支持構造により少なくとも部分的には支持されるとともに、ある挟み込み張力にて張られるように、前記架空電気ケーブルの第1端および第2端を挟む工程と、を備え、
前記架空電気ケーブルは、
2000MPa以上の極限引張強度(UTS)を有する繊維補強複合強度部材と、
前記繊維補強複合強度部材を包囲する第1伝導層であって、第1アルミニウム材料のストランドを備え
る第1伝導層
であって、前記第1アルミニウム材料は1350-O完全アニーリングアルミニウムである、第1伝導層と、
前記第1伝導層を包囲する第2伝導層であって、前記第1アルミニウム材料とは異なる第2アルミニウム材料の伝導ストランドを備え
る第2伝導層と、を備え、
前記第2アルミニウム材料は、アルミニウム-ジルコニウム(AlZr)合金および1350-H19アルミニウム合金から選択される硬化アルミニウム材料であり、
前記第2アルミニウム材料の硬度は、前記第1アルミニウム材料の硬度よりも大きく、
前記第1アルミニウム材料の前記ストランドと前記第2アルミニウム材料の前記ストランドとの両方が、台形ストランドである、方法。
【請求項18】
架空電気伝送線であって、
2つ以上の支持構造と、
少なくとも、前記支持構造により支持された第1電気ケーブルと、を備え、前記第1電気ケーブルは請求項1~
14のいずれか一項に記載の第1電気ケーブルである、架空電気伝送ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気の伝送および分配用の架空電気ケーブルの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電気の伝送および分配用の架空電気ケーブルは、典型的には、高電圧の電気を安全に伝送するのに充分な直径(例えば、断面積)を有する、むき出しの電気伝導体を備える。アルミニウムは、質量に対して高い比率の伝導率を有するが、いくつかのアルミニウム合金は、支持構造間(例えば、タワー間)に張られるときに自己支持するにはあまりに弱く、大きい弛みを生じ、アルミニウム伝導体を支持するように中央強度部材を用いる必要がある。典型的な構成では、別個の金属(例えば、アルミニウム)伝導ストランドは、中央強度部材の周りに螺旋状に巻かれ、中央強度部材により支持される。設置されるとき、強度部材は、機械的(例えば、引張)荷重の大部分を支え、高い引張荷重の下にて設置される。従来は、強度部材は、巻き合わせられた複数の鋼ストランドからなり、ケーブル構成は鋼心補強アルミニウム導体(ACSR)と呼ばれる。最近では、高い引張強度、低い熱膨張係数(CTE)および他の所望の熱特性および機械特性を有する、進歩した繊維補強複合材料などの、他の材料が強度部材に利用されている。
【0003】
そうした複合強度部材を有する架空電気ケーブルの1つの例は、アメリカ合衆国カリフォルニア州アーバインのCTCグローバル社から入手可能であるACCC(登録商標)架空電気ケーブルである。例えば、ヒエル(Hiel)らによる特許文献1を参照されたい。特許文献1は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。そうした複合強度部材の使用は、有利には、外側導電ストランドについて、高い導電率の、完全アニーリングされたアルミニウムの使用を可能とする。ACCC(登録商標)複合強度部材に用いられるカーボン繊維の弾性率は、鋼の率よりも高い(カーボン繊維について約235GPa対鋼について約200GPa)。しかしながら、ACCC(登録商標)強度部材では、カーボンを包囲するガラス繊維(約45.6GPaの弾性率)の外側層は、鋼よりも低い、約GPaのACCC(登録商標)複合強度部材の組み合わされた率となる。ガラス繊維のこの外側層は、衝撃抵抗を向上させるように、また伝導体のフレキシビリティを増加させるように用いられ、さらに、ガルバニック腐食を防止するべく、カーボン繊維をアルミニウムストランドから絶縁するように機能する。
【0004】
多数の設計基準によって架空電気ケーブルの構成が検討されており、それらの設計基準は、電気ケーブルがデプロイされる場所における局所気候に依存することが多い。例えば、電気ケーブルが、降雪および氷雪イベントが一般的である寒冷気候エリアに設置されるとき、氷雪は、規則的な動作状態下において通常存在する熱の不足に起因して、むき出しの架空電気ケーブルを通じてわずかな電流しか流れないか電流が流れないとき、低荷重またはラインオフ状態下にて外側伝導体の表面に蓄積し得る。氷雪が非常に重いエリアにおける電気の利用は、氷が付着した伝導体の重さを計算するのに、2インチ(50mm)と同程度の氷雪厚さを使用する。氷雪蓄積の追加された重量は、ケーブル上の張力を増加させ、ケーブルの指示点と最下点との間において、ケーブルの弛みの大幅な増加(すなわち、垂直方向の増加)を生じ得る。高電圧のむき出しの架空電気ケーブルは、道路、木および/または低電圧架空電気分配ケーブルを横切ることが多い。これらの高電圧伝送ケーブルが氷雪による荷重を受け、弛みがこれらの対象物に非常に近接しすぎると、高電圧伝送ケーブルは、非常に危険となり、故障に至り、停電を生じ得る。
【0005】
同時に、架空電気ケーブルは電気の需要が最高である温暖な夏の数ヵ月中に、増加した電気荷重(例えば、増加した電圧)を安全に伝送できる必要もある。そうした増加した荷重は、ケーブルの温度を上昇させ得(抵抗加熱に起因して)、ケーブルを熱膨張させ(長くし)、弛みが地表に向かい、氷雪荷重に起因して経験され得るのと同一の問題を生じる。
【0006】
これらの問題の1つの解決策は、ケーブルを支持するためにより高いタワーを利用することである。しかしながら、この解決策は、コストの増加を伴う。氷雪荷重の問題に対する別の解決策は、繊維補強複合材の強度部材などの非常に高い引張強度を有する強度部材を利用すること、また支持構造間に非常に高い張力にてケーブルを設置することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
重い氷雪荷重は、架空電気ケーブルの永久的な伸長を生じ得る。氷雪の追加された重さに起因するケーブルの張力の増加の結果として、ケーブルは、その初期の降伏点を超えて延びる場合があり、それによって、氷雪が減少した後に、ケーブルがその初期の弛みまたは張力状態に戻ることを妨げ得る。ACCC(登録商標)強度部材などの繊維補強複合強度部材の向上した弾性は、氷雪荷重が散逸した後に、ケーブルがその初期の弛みおよび張力状態に戻ることを可能とする。
【0009】
重い氷雪荷重状態下と非常に高い電流の状態下との両方において使用できる複合強度部材を有し、一方で複合強度部材の使用に関連する他の利益を提供する、架空電気ケーブルの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの実施形態では、そうした架空電気ケーブルが開示される。架空電気ケーブルは、強度部材と、前記強度部材を包囲する第1伝導層であって、第1アルミニウム材料のストランドを備える第1伝導層と、を備える。第2伝導層は、前記第1伝導層を包囲し、第2伝導層は、第2アルミニウム材料のストランドを備える。前記第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、前記第1アルミニウム材料の該材料特性とは異なる。
【0011】
上述の架空電気ケーブルは、単独または任意の組合せにより実装され得る、フィーチャの改良および/または追加のフィーチャを有することを特徴としてよい。1つの特定の特徴では、第1アルミニウム材料と第2アルミニウム材料との間の異なる材料特性は、降伏応力、弾性率、硬度、電気伝導率、および引張強度からなる特性の群から選択される。1つの特定の特徴では、1つの異なる材料特性は、降伏応力である。1つの改良では、前記第2アルミニウム材料の降伏応力は、前記第1アルミニウム材料の前記降伏応力よりも大きい。別の特定の特徴では、前記第1アルミニウム材料と前記第2アルミニウム材料との間の異なる材料特性は、引張強度である。1つの改良では、前記第2アルミニウム材料の引張強度は、前記第1アルミニウム材料の引張強度未満である。さらに別の特徴では、前記第1アルミニウム材料と前記第2アルミニウム材料との間の異なる材料特性は、電気伝導率である。1つの改良では、前記第2アルミニウム材料の電気伝導率は、前記第1アルミニウム材料の前記電気伝導率よりも大きい。
【0012】
別の特徴では、前記第1アルミニウム材料と前記第2アルミニウム材料とのうちの少なくとも一方は、約60%IACS(国際軟銅規格)以上の電気伝導率を有する。さらなる改良では、前記第1アルミニウム材料と前記第2アルミニウム材料とのうちの少なくとも一方は、約62%IACS以上の伝導率を有する。またさらなる改良では、前記第2アルミニウム材料は、約62%IACS以上の電気伝導率を有する。別の特徴では、前記第2アルミニウム材料は1350-Oアニーリングアルミニウム合金である。さらに別の特徴では、前記第1アルミニウム材料は、アルミニウム-ジルコニウム(AlZr)アルミニウム合金および1350-H19アルミニウム合金から選択される。
【0013】
伝導ストランドは、円形、楕円形、多角形を含む様々な断面を有してよい。1つの特徴では、前記第1アルミニウム材料ストランドと前記第2アルミニウム材料ストランドとのうちの少なくとも一方は、台形ストランドである。さらなる改良では、前記第1アルミニウム材料ストランドと前記第2アルミニウム材料ストランドとの両方が、台形ストランドである。架空電気ケーブルは、伝導ストランドの2つ以上の層を備えてよい。1つの特徴では、架空電気ケーブルは、前記第1伝導層と前記第2伝導層との間に配置された第3伝導層を備える。1つの改良では、前記第3伝導層は、前記第1アルミニウム材料と異なり前記第2アルミニウム材料と異なる、第3アルミニウム材料のストランドを備える。別の改良では、前記第3伝導層は、前記第1アルミニウム材料のストランドを備える。さらに別の改良では、前記第3伝導層は、前記第2アルミニウム材料のストランドを備える。さらに別の特徴では、前記架空電気ケーブルは、前記第3伝導層と前記第2伝導層との間に配置された少なくとも第4伝導層を備える。
【0014】
別の特徴では、前記強度部材は繊維補強複合強度要素を備える。1つの改良では、前記繊維補強複合強度要素は、結合マトリクス中に配置されたほぼ連続した補強カーボン繊維を含む。別の改良では、前記強度部材は、約30mm以下の直径を有する。さらなる改良では、前記強度部材は、約3mm以上の直径を有する。別の特徴では、前記強度部材は、約1700MPa以上の極限引張強度(UTS)を有する。
【0015】
別の実施形態では、架空電気ケーブルの製造のための方法が開示される。前記方法は、第1伝導層を形成するように、第1アルミニウム材料の複数の第1ストランドを強度部材に対し巻く工程と、第2伝導層を形成するように、第2アルミニウム材料の複数の第2ストランドを前記第1伝導層の周りに巻く工程と、を備える。前記第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、前記第1アルミニウム材料の該材料特性の値とは異なる値を有する。
【0016】
上述の方法は、単独または任意の組合せにより実装され得る、改良および/または追加の工程を有することを特徴としてよい。1つの特徴では、前記第1アルミニウム材料の前記複数の第1ストランドは、台形の断面を有する。1つの改良では、前記第2アルミニウム材料の前記複数の第2ストランドは、台形の断面を有する。
【0017】
別の特徴では、前記第2伝導ストランドの前記第1伝導層の周りの巻付けの前に、第3アルミニウム材料の複数の第3ストランドを前記第1伝導層の周りに巻く工程を備える。さらなる改良では、前記方法は、前記第3伝導ストランドの前記第1伝導層の周りの巻付けの前に、第4アルミニウム材料の複数の第4ストランドを前記第1伝導層の周りに巻く工程を備える。
【0018】
別の実施形態では、電気伝送ラインの設置のための方法が開示される。前記方法は、架空電気ケーブルを2つ以上の支持構造間に張る工程と、前記架空電気ケーブルに張力を加える工程と、を備える。前記架空電気ケーブルが加えられた前記張力下にありながら、前記架空電気ケーブルが前記2つの支持構造により少なくとも部分的には支持され、挟み込み張力にて張られるように、前記架空電気ケーブルの第1端および第2端が挟まれる。前記架空電気ケーブルは、強度部材と、前記強度部材を包囲する第1伝導層であって、第1アルミニウム材料のストランドを備える、第1伝導層と、前記第1伝導層を包囲する第2伝導層であって、前記第1アルミニウム材料とは異なる第2アルミニウム材料の伝導ストランドを備える、第2伝導層と、を備え、前記第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、前記第1アルミニウム材料の該材料特性とは異なる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の一実施形態に係る架空電気ケーブルの概略図。
【
図2】本開示の一実施形態に係る架空電気ケーブルの概略図。
【
図3】本開示の一実施形態に係る架空電気ケーブルの概略図。
【
図4】本開示の一実施形態に係る架空電気ケーブルの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1つの実施形態では、むき出しの架空電気ケーブルが開示される。架空電気ケーブルは、強度部材と、強度部材を包囲する第1伝導層と、第1伝導層を包囲する第2伝導層とを備える。第1伝導層は、第1伝導材料のストランドを備え、第2伝導層は、第2伝導材料のストランドを備える。第2伝導材料の1つ以上の材料特性は、第1伝導材料の該材料特性とは異なる(例えば、異なる値を有する)。
【0021】
図1は、本開示の一実施形態に係る架空電気ケーブル100の概略的な断面を示す。
図1に示されるように、強度部材110は、強度部材110を形成するように組み合わされる(例えば、螺旋状に巻かれる)7つの別個の強度要素112(例えば、ロッド)を備える。強度要素112は鋼から製造されてよく、その場合、電気ケーブル100はACSR(鋼心補強アルミニウム導体)伝導体と呼ばれる。これに代えて、強度要素112は、結合マトリクス(すなわち、複合材料を形成するように、マトリクスが構造繊維とともに結合するところ)中に配置された構造(例えば、補強する)繊維を含む複合材料などの、複合材料から製造されてよい。そうした複合材料の例は、以下に詳細に説明される。
【0022】
第1伝導ストランド126および第2伝導ストランド128は、電気伝導材料(特に、銅またはアルミニウムなどの金属)から製造される。むき出しの架空電気ケーブルでは、アルミニウムが、その優れた伝導率および低密度(例えば、軽量)に起因して、一般に好まれる。以下においてより詳細に説明されるように、1つの実施形態によれば、第1伝導層120は第1アルミニウム材料のストランド126を備え、第2伝導層122は第2アルミニウム材料のストランド128を備え、ここで、第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、第1アルミニウム材料の該材料特性とは異なる(例えば、異なる値を有する)。
【0023】
図2は、架空電気ケーブル200についての別の構成を概略的に示す。
図2に示されるように、強度部材210も、
図1の実施形態と同様にして、強度部材210を形成するように組み合わされる(例えば、螺旋状に巻かれる)7つの別個の強度要素212を備える。強度要素212は、例えば、
図1に関して説明されたように、鋼または補強複合材から製造されてよい。第1伝導ストランド226および第2伝導ストランド228も、
図1に関して説明されたように、電気伝導材料から製造される。以下においてより詳細に説明されるように、1つの実施形態によれば、第1伝導層220は第1アルミニウム材料のストランド226を備え、第2伝導層222は第2アルミニウム材料のストランド228を備え、第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、第1アルミニウム材料の該材料特性とは異なる。
図2に示される実施形態は、伝導ストランド226/228が多角形の(例えば、台形の)断面を有する点において、
図1における実施形態とは異なる。そうした多角形の断面の使用は、高密度の伝導層220/222が形成されることを可能とする。すなわち、同一の伝導層にあるか伝導層同士の間における、隣接する伝導ストランド同士の間に、空隙がほぼ存在しない。これによって、同一の実効量のアルミニウムについて、丸形の伝導ストランドが用いられる場合(
図1)よりも、架空電気ケーブル200の外径が減少する(例えば、より小さくなる)ことが可能となる。より小さい外径は、氷雪荷重イベント中の架空ケーブル上の氷雪の重量を減少させてよい。すなわち、直径が2.54cm(1インチ)であるケーブルに対して、直径が2.03cm(0.8インチ)である架空ケーブル上の氷雪の同一の厚さは、架空ケーブルに対して、より小さい氷雪重量とより小さい張力としか生成しない。
【0024】
図3は、架空電気ケーブル300についてのさらに別の構成を概略的に示す。
図3に示されるように、第1伝導層320の第1伝導ストランド326および第2伝導層322の第2伝導ストランド328も、
図1に関して説明されたように、電気伝導材料(特に、アルミニウム)から製造される。ストランド326/328は、
図2に関して説明されたように、台形の断面を有する。同様に、第1伝導層320は第1アルミニウム材料のストランド326を備え、第2伝導層322は第2アルミニウム材料のストランド328を備える。
【0025】
図3に示されるように、強度部材310は、単一の強度要素312を備える。単一の強度要素312は、例えば、
図1に関して説明されたように、補強された複合材料から製造されてよい。
図3に示される実施形態は、内側コア314とその内側コア314を包囲する外側層316とを有する単一の強度要素312を特に備える。そうした強度要素は、例えば、高強度カーボン繊維を含む内側コアとガラス繊維を含む外側層とを、すなわち、ACCC(登録商標)と呼ばれておりアメリカ合衆国カリフォルニア州アーバインのCTCグローバル社から入手可能である構成を備えてよい。上記のヒエルらによる特許文献1を参照されたい。
【0026】
図4は、架空電気ケーブル400についてのさらに別の構成を概略的に示す。
図4に示されるように、第1伝導層420の第1伝導ストランド426および第2伝導層422の第2伝導ストランド428も、
図1に関して説明されたように、電気伝導材料(特に、アルミニウム)から製造され、
図2に関して説明されたように、台形の断面を有する。同様に、第1伝導層420は第1アルミニウム材料のストランド426を備え、第2伝導層422は、第1アルミニウム材料とは異なる第2アルミニウム材料のストランド428を備える。補強部材410は、
図3に関して説明されたように、単一の強度要素412を備える。
【0027】
図4に示されるように、架空電気ケーブル400は、伝導ストランド430(例えば、第3伝導ストランド)を備える第3伝導層424を備える。第3伝導層424は、強度部材410を包囲し、また第1伝導層420を包囲する。別の方法による特徴では、第3伝導層424は、第1伝導層420と第2伝導層422との間に配置されている。第3伝導層424は、例えば、追加の伝導体断面を提供することによる高電圧伝送のために(例えば、
図3に示される実施形態と比較して)、架空電気ケーブルの電流容量を有利に増加させてよい。第3伝導ストランド430は、第1伝導ストランド426と同一の伝導材料から製造されてよく、第2伝導ストランド428と同一の伝導材料から製造されてよく、または1つ以上の材料特性が第1伝導ストランド426および第2伝導ストランド428の該材料特性とは異なる(例えば、異なる値を有する)伝導材料から製造されてよい。
【0028】
図1~
図4に示される架空電気ケーブルについての構成は、例示のためであり、本開示の架空電気ケーブルは、それらの特定の構成に限定されない。例えば、別の構成は、
図1に示される丸形の伝導ストランドを有する、
図3に示されるような単一要素の強度部材を備えてよい。他の構成が、当業者に明らかである。
【0029】
本開示によれば、1つの伝導層における伝導ストランドの1つ以上の材料特性は、別の伝導層における伝導ストランドの該材料特性とは異なる(例えば、異なる値を有する)。すなわち、それぞれの伝導ストランドを形成する伝導(例えば、金属の)材料は、異なる化学組成を有してよく(例えば、異なる合金であってよく)、および/または異なる材料特性を生じるように処理されていてよい。例えば、いくつかの金属材料の加熱処理(例えば、アニーリング)によって、加熱処理されていない同一の材料(同一の化学組成)の伝導ストランドと比較して異なる特性を有する伝導ストランドを生成してよい。同様に、同一の化学組成を有する合金の加工硬化によって、異なる機械特性が生じてよい。
【0030】
例として、複数の伝導ストランド間において異なる材料特性は、降伏応力、弾性率、硬度、引張強度および電気伝導率のうちの1つまたは複数であってよい。1つの特定の実施形態では、複数の伝導ストランド間において異なる1つ以上の材料特性は、降伏応力である。弾性率(すなわち、ヤング率)は、伝導ストランドの引張弾性(すなわち、引張ひずみに対する引張応力の比)である。材料が引張応力を受けると、材料は、いくつかの引張応力にて降伏(塑性変形)し始め、この点が降伏応力と呼ばれる。異なるアルミニウム合金および同様の複数の合金間の異なる調質(テンパー)は、異なる降伏応力を有してよい。1つの特定の特徴では、外側伝導層の(例えば、外側層ストランドの)降伏応力は、内側伝導層の降伏応力よりも(例えば、内側層ストランドよりも)大きい。すなわち、引張応力が伝導層に加えられるとき、内側伝導層は、外側伝導層の塑性変形の前に塑性変形(降伏)する。例えば、
図1を参照すると、(外側)伝導ストランド128は、(内側)伝導ストランド126よりも高い降伏応力を有してよい。同様に、
図2および
図3では、伝導ストランド228/328は、伝導ストランド226/326よりも高い降伏応力を有してよい。
図4の実施形態では、第1伝導層420の伝導ストランド426は、第2伝導層422の伝導ストランド428よりも低い降伏応力を有してよい。間にある第3伝導層424は、ほぼ第1伝導層420のストランド426以上の降伏応力を有する材料のストランド430を備えてよい。さらに、間にある第3伝導層424は、第2伝導層422における伝導ストランド428の降伏応力以下の降伏応力を有する材料のストランド430を備えてよい。
【0031】
別の特徴では、特定の複数の伝導ストランド間において異なる1つの材料特性は、引張強度である。1つの特定の特徴では、最も外側の伝導層は、内側伝導層の引張強度よりも大きい引張強度を有する。例えば、
図1を参照すると、(外側)伝導ストランド128は、(内側)伝導ストランド126よりも高い引張強度を有してよい。同様に、
図2および
図3では、伝導ストランド228/328は、ほぼ伝導ストランド226/326以上の引張強度を有してよい。
図4の実施形態では、第1伝導層420の伝導ストランド426は、第2伝導層422の伝導ストランド428よりも低い引張強度を有してよい。間にある第3伝導層424は、第1伝導層420のストランド426の引張強度よりも高い引張強度を有する材料のストランド430を備えてよい。さらに、間にある第3伝導層424は、第2伝導層422における伝導ストランド428の引張強度以下の引張強度を有する材料のストランド430を備えてよい。より高い引張強度を有する伝導ストランドには、例えば、6201-T81および6101などのアルミニウム合金が用いられてよい。
【0032】
表1は、いくつかのアルミニウム材料についての伝導率、引張強度、降伏応力および最大(連続)動作温度を示す。
【0033】
【表1】
別の特徴では、特定の複数の伝導ストランド間において異なる1つの材料特性は、硬度である。硬度は、塑性変形に対する(例えば、機械的な凹みまたは摩耗からの)局所抵抗の測度である。1つの特定の特徴では、最も外側の伝導層は、内側伝導層の硬度よりも大きい硬度を有する。例えば、
図1を参照すると、(外側)伝導ストランド128は、(内側)伝導ストランド126よりも高い硬度を有してよい。同様に、
図2および
図3では、伝導ストランド228/328は、ほぼ伝導ストランド226/326以上の硬度を有してよい。
図4の実施形態では、第1伝導層420の伝導ストランド426は、第2伝導層422の伝導ストランド428よりも低い硬度を有してよい。間にある第3伝導層424は、第1伝導層420のストランド426の硬度よりも高い硬度を有する材料のストランド430を備えてよい。さらに、間にある第3伝導層424は、第2伝導層422における伝導ストランド428の硬度以下の硬度を有する材料のストランド430を備えてよい。より高い硬度を有する伝導ストランドには、アルミニウム-ジルコニウム(AlZr)合金または1350-H19アルミニウム合金などの硬化アルミニウム合金が用いられてよい。
【0034】
別の特徴では、特定の複数の伝導ストランド間において異なる1つの材料特性は、電気伝導率である。1つの特定の特徴では、最も外側の伝導層は、内側の伝導層の電気伝導率よりも大きい電気伝導率を有する。例えば、
図1を参照すると、(外側)伝導ストランド128は、(内側)伝導ストランド126よりも高い電気伝導率を有してよい。同様に、
図2および
図3では、伝導ストランド228/328は、ほぼ伝導ストランド226/326以上の電気伝導率を有してよい。
図4の実施形態では、第1伝導層420の伝導ストランド426は、第2伝導層422の伝導ストランド428よりも低い電気伝導率を有してよい。間にある第3伝導層424は、第1伝導層420のストランド426の電気伝導率よりも高い電気伝導率を有する材料のストランド430を備えてよい。さらに、間にある第3伝導層424は、第2伝導層422における伝導ストランド428の電気伝導率以下の電気伝導率を有する材料のストランド430を備えてよい。上述の構成のいずれにおいても、より高い電気伝導率を有する伝導ストランドは、約62%IACS以上などの、約60%IACS以上の伝導率を有するアルミニウムから製造されてよい。1つの特定の特徴では、より高い電気伝導率を有する伝導ストランドは、1350-Oアニーリングアルミニウム合金などの、アニーリングされたアルミニウム合金から製造されてよい。別の特徴では、より低い伝導率のストランド(例えば、
図3における伝導ストランド326)は、表1に載っている耐熱AlZr合金などの、AlZr合金から製造されてよい。
【0035】
図に関して上に説明されたように、架空電気ケーブルは、伝導層が巻かれる強度部材を備える。強度部材は、複数の強度要素を含んでよく(例えば、
図1および
図2)、または単一の強度要素を備えてよい(例えば、
図3および
図4)。強度要素は、鋼などの金属からなってよく、または繊維補強複合材などの他の材料からなってよい。そうした複合材は、結合マトリクス中に配置された補強繊維を含んでよい。補強繊維は、強度部材の長さに沿って延びる、ほぼ連続した補強繊維であってよく、および/または結合マトリクスを通じて分散した短い補強繊維(例えば、繊維ウィスカまたは切断された繊維(チョップド・ファイバ))を含んでよい。繊維は、カーボン、ガラス、ホウ素、金属酸化物、金属炭化物、アラミド繊維またはフルオロポリマー繊維などの高強度ポリマー、バサルト繊維などを含むがこれらに限定されない、広範囲の材料から選択されてよい。マトリクス材料は、例えば、熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーなどのプラスチック(例えば、ポリマー)を含んでよい。マトリクスは、アルミニウムマトリクスなどの金属マトリクスであってもよい。アルミニウムマトリクスの複合強度部材の1つの例は、マクロウ(McCullough)らによる米国特許第6,245,425号明細書に示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
そうした繊維補強複合強度部材の1つの特定の例は、アメリカ合衆国カリフォルニア州アーバインのCTCグローバル社により製造されるACCC(登録商標)架空電気ケーブルにおいて用いられる。そうした架空電気ケーブルは、例えば、ヒエルらによる特許文献1に示される。この高度部材は、向上したフレキシビリティを提供するように、またカーボン繊維をアルミニウムから遮蔽することによるアルミニウム伝導体のガルバニック腐食に対する耐性を提供するように、ガラス繊維層によって包囲された高強度カーボン繊維の内側コアを備える。
図3および
図4は、単一要素の強度部材としてのそうした複合材料の使用を示す。単一要素の強度部材の使用(
図3および
図4)は、例えば、同一の引張特性について(例えば、同一の引張強度について)複数要素の強度部材(
図1および
図2)と比較して、強度部材が減少した直径を有することを可能としてよい。
【0037】
1つの特徴では、強度部材は、約5mm以上などの、約3mm以上の直径を有する。そうした強度部材は、有利には、例えば、高強度カーボン繊維を用いて製造されるとき、高い引張強度を有することが可能である。例えば、強度部材は、約1800MPa以上など、約1900MPa以上、または約2000MPa以上もの、約1700MPa以上の極限引張強度(UTS)を有してよい。別の特徴では、強度部材は、約125kN以上など、または約150kN以上もの、約100kN以上の定格破壊強度を有する。
【0038】
本明細書に開示される伝導(例えば、アルミニウム)ストランドの構成は、重い氷雪荷重を経験する地域では、特に有用であり得る。この点について、氷雪荷重の効果をさらに減少させるように、架空電気ケーブルは、大きい直径および/または非常に高い引張強度を有する強度部材を利用してよい。1つの特徴では、強度部材は、約9mm以上などの、または約10mm以上もの、約8mm以上の直径を有する。実際には、例えば、貯蔵および輸送用に、強度部材の直径は、約20mm以下など、約30mm以下である。別の特徴では、強度部材は、約2300MPa以上など、約2400MPa以上など、または約2500MPa以上もの、約2200MPa以上の極限引張強度(UTS)を有する。任意の特定の最大UTSに限定されないが、UTSは、典型的には約3700MPa以下である。別の特徴では、強度部材は、約160kN以上など、約170kN以上、または約180kNもの、約150kN以上の定格破壊強度を有する。
【0039】
繊維補強複合強度部材を用いる架空ケーブルは、熱的ニーポイントを有する。初期は、設置されたケーブルの引張荷重は、強度部材と伝導ストランドとにより共有される。増加した電流に伴ってケーブルの温度が上昇すると、伝導ストランドの熱膨張係数(CTE)によって、伝導ストランドがより低いCTEの強度部材よりも素早く伸長する。温度が上昇すると、伝導ストランドは緩和し、伝導ストランドの引張荷重を強度部材に対し移送する。この移送の頂点は、熱的ニーポイントと呼ばれる。強度部材のCTEは伝導ストランドのCTEよりも低いため、熱的ニーポイントの上では伝導体の弛みは減少する。ACCC伝導体のより低いCTEおよびより低い熱的ニーポイントは、熱的弛み(例えば、ケーブルの熱膨張に起因する弛み)を減少させてよい。
【0040】
ACCC(登録商標)構成におけるものなど、非常に高い引張強度を有する強度部材は、完全アニーリングされたアルミニウムの伝導ストランドの使用を可能とする。完全アニーリングされたアルミニウムは、アニーリングされていないアルミニウムよりも高い伝導率を有し、したがって、電流容量を増加させ、ライン損失を減少させることが可能である。しかしながら、完全アニーリングされたアルミニウムは、いくつかの物理特性を欠いている。例えば、完全アニーリングされたアルミニウムの使用は、比較的小さい引張ひずみでしかアルミニウムを塑性変形させず、導体における張力を減少させるため、静的荷重(例えば、氷雪荷重)下における増加したラインの弛みを生じ得る。1つの構成では、架空電気ケーブルは、アニーリングされたアルミニウムの内側伝導層と、Al-Zr合金などのより硬質のアルミニウムの外側伝導層とを備える。例えば、
図3を参照すると、第1伝導層320のストランド326は、完全アニーリングされたアルミニウムから形成されてよく、第2伝導層322のストランド328は、Al-Zr合金などのより硬質のアルミニウムから製造されてよい。高伝導率アルミニウムの内側層およびより高い硬度のアルミニウムの外側層の使用は、有利には、氷雪荷重からなどの機械的弛みを減少させながら、高い全伝導率(高い電流容量)を提供してよい。これは、より硬質のアルミニウムのより大きいひずみ範囲に起因し、より硬質のアルミニウムはその範囲内において弾性変形する。これに代えて、電気ケーブルは、内側伝導層に高い硬度の層を、また外側伝導層に高伝導率のアニーリングされたアルミニウムを備えてよい。しかしながら、より硬質のアルミニウムの外側層における配置は、より高い摩耗抵抗の追加の利益を提供してよい。
【0041】
本開示は、架空電気ケーブルの製造のための(例えば、上の実施形態のいずれかに記載される架空電気ケーブルの製造のための)方法にも関する。1つの例では、架空電気ケーブルの製造のための方法が開示され、第1伝導層を形成するように、第1アルミニウム材料の複数の伝導ストランドを強度部材に対し第1に巻く工程と、第2伝導層を形成するように、第2アルミニウム材料の複数の伝導ストランドを前記第1伝導層に対し第2に巻く工程と、を備える。前記第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、前記第1アルミニウム材料の該材料特性の特性値とは異なる特性値を有する。
【0042】
本開示は、電気伝送ラインの設置のための方法にも関する。1つの実施形態では、前記方法は、架空電気ケーブルを2つ以上の支持構造間に張る工程と、前記架空電気ケーブルに張力を加える工程と、を備え、前記架空電気ケーブルが加えられた前記張力下にありながら、前記架空電気ケーブルが前記2つの支持構造により少なくとも部分的には支持されるように、前記架空電気ケーブルの第1端および第2端を挟む。
前記架空電気ケーブルは、強度部材と、前記強度部材を包囲する第1伝導層であって、第1アルミニウム材料の伝導ストランドを備える、第1伝導層と、前記第1伝導層を包囲する第2伝導層であって、前記第1アルミニウム材料とは異なる第2アルミニウム材料の伝導ストランドを備える、第2伝導層と、を備える。前記第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、前記第1アルミニウム材料の該材料特性とは異なる。
【0043】
本開示は、架空電気ケーブルを備える架空電気伝送ラインにも関する。架空電気伝送線は、2つ以上の支持構造に対し高い張力で張られる。架空電気ケーブルは、強度部材と、前記強度部材を包囲する第1伝導層であって、第1アルミニウム材料の伝導ストランドを備える第1伝導層と、前記第1伝導層を包囲する第2伝導層であって、前記第2アルミニウム材料とは異なる第2アルミニウム材料の導電ストランドを備える、第2伝導層と、を備える。前記第2アルミニウム材料の1つ以上の材料特性は、前記第1アルミニウム材料の該材料特性とは異なる。
【0044】
架空電気ケーブル、架空電気ケーブルを作る方法、電気伝送ラインの設置のための方法および架空電気伝送ラインの様々な実施形態が詳細に記載されているが、それらの実施形態の修正および改造が当業者に想到されることが明らかである。しかしながら、そうした修正および改造が本開示の趣旨および範囲内であることが明確に理解される。