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特許7371031置換されたアルコキシピリジニルインドールスルホンアミド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】置換されたアルコキシピリジニルインドールスルホンアミド
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20231023BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61K31/4439
A61P25/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020570978
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2019066148
(87)【国際公開番号】W WO2019243398
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】18178773.0
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500102697
【氏名又は名称】ウーツェーベー ファルマ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペグリエール、セシール
(72)【発明者】
【氏名】プロバン、ローラン
(72)【発明者】
【氏名】イシン、アムレ エム.
(72)【発明者】
【氏名】レデック、マリー
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】特許第6946436(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/057989(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0338374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/00-401/14
A61K 31/00- 31/80
A61P 25/00- 25/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iを有する化合物
【化1】

式中、
R6は、クロロ、フルオロ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R7は、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8は、フルオロ又はメトキシであり、
R11は、水素、フルオロ又はメトキシであり、
Lは、結合であるか、又は、-CH2-及び-CH2-CH2-O-から選択されるリンカーであり、
X1及びX2は、水素及びフルオロから独立に選択される、
並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び同位体
【請求項2】
R6がクロロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R6が、フルオロメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R7が、フルオロメチル、シクロプロピルオキシ、フルオロ及びクロロから選択される、請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
X1が水素である、請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
R8が、フルオロであり、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択され、式IIa、IIb又はIIcによる構造を有する、請求項1から5のいずれかに記載の化合物:
【化2】

式中、他の全ての置換基は、請求項1から5のいずれかに記載の通りである。
【請求項7】
R6が、クロロ及びフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R11が、水素、メトキシ及びフルオロから選択され、
X1及びX2が、水素及びフルオロから独立に選択される、
請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
R8及びR11がともにフルオロであり、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択され、式IIIa、IIIb又はIIIcによる構造を有する、請求項1から5のいずれかに記載の化合物:
【化3】

式中、他の全ての置換基は、請求項1から5のいずれかに記載の通りである。
【請求項9】
R11がメトキシであり、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択され、式Va、Vb又はVcによる構造を有する、請求項1から5のいずれかに記載の化合物:
【化4】

式中、他の全ての置換基は、請求項1から8のいずれかに記載の通りである。
【請求項10】
R6が、フルオロ、クロロ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8が、フルオロであり、
X1及びX2が、水素及びフルオロから独立に選択される、
請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
R6及びR7が、クロロ及びジフルオロメチルから独立に選択され、X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
請求項1、4、及び6から10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
X1が水素であり、X2がフルオロである、請求項1から11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
6,7-ジクロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
7-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-[2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ]-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6,7-ジクロロ-N-[5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
7-クロロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-7-(ジフルオロメチル)-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6,7-ジクロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6,7-ジクロロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-7-シクロプロピル-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-7-シクロプロピルオキシ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
から選択される化合物、
並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、及び同位体
【請求項14】
治療において使用するための、請求項1から13のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
脱髄障害の処置又は緩和において使用するための、請求項1から14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】
多発性硬化症の処置又は緩和において使用するための、請求項1から15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む治療用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、細胞における膜受容体のうち最大のファミリーを構成している。GPCRは、細胞外シグナルを細胞内エフェクター系に伝達し多種多様な生理現象に関与していることから、医療薬(pharmaceutical drug)の最も一般的な標的であるが、現在の治療ではごく一部のGPCRが標的化されているのみである。
【0002】
GPCRは、広範なリガンドに応答する。ヒトゲノム配列決定の進展により、これまでに同定された400を超えるGPCR(嗅覚GPCRを含めない)のうち約25%については、生理学的に関連のあるリガンドの特定が追いついていない。これらの受容体は、「オーファンGPCR」として知られている。新規な調節機序を明らかにし、ひいては新規な創薬標的を開示するために、「脱オーファン化」、及び、オーファンGPCRのin vivoにおける役割の同定が期待される。GPR17がそのようなオーファン受容体であるかどうかは依然として議論の対象となっている。系統発生学的には、GPR17はヌクレオチドP2Y受容体及びシステイニルロイコトリエン(CysLT1、CysLT2)受容体と近縁であり、アミノ酸配列同一性はそれぞれ約30%から約35%の間である。
【0003】
Multiple-tissue Northern blot及びRT-PCR分析により、GPR17は、中枢神経系(CNS)において(Ciana et al.、2006、EMBO J 25(19):4615;Blasius et al.、1998、J Neurochem 70(4):1357)、更には、心臓及び腎臓、すなわち、虚血性損傷が典型的に生じる器官において主に発現することが示されている。N末端の長さのみが異なる2つのヒトGPR17アイソフォームが同定されている。短いGPR17アイソフォームは、典型的なロドプシン型7回膜貫通モチーフを有する、339個のアミノ酸残基から構成されるタンパク質をコードする。長いアイソフォームは、N末端がアミノ酸28個分長い受容体をコードする(Blasius et al.、1998)。GPR17は脊椎動物種間で高度に保存されており(マウスとラット双方のオーソログのアミノ酸配列の同一性は約90%である)、このことは、創薬における小分子リガンド及び動物モデルの開発に有利な特徴となり得る。
【0004】
最初の脱オーファン化の報告では、GPR17は、ウラシルヌクレオチド並びにシステイニル-ロイコトリエン(cysLT)LTC4及びLTD4に対する二重受容体として、それぞれ35SGTPγS結合及びcAMP阻害アッセイ並びに単一細胞カルシウムイメージングに基づいて同定された(Ciana et al.、2006、同上書)。GPR17の機能性についての証拠は、1321N1、COS7、CHO及びHEK293細胞等の異なる細胞バックグラウンドにおいて示された(Ciana et al.、2006、同上書)。その後、別の研究によって、ウラシルヌクレオチドによるGPR17の活性化が確認されたが、CysLTによる活性化の再現はできなかった(Benned-Jensen and Rosenkilde、2010、Br J Pharmacol、159(5):1092)。更に最近の別の報告(Maekawa et al.、2009、PNAS 106(28)、11685;Qi et al.、2013、J Pharmacol Ther 347、1、38;Hennen et al.、2013、Sci Signal 6、298)によって、GPR17を安定に発現する異なる細胞バックグラウンド(1321N1、CHO、HEK293細胞)全てについて、ウラシルヌクレオチド及びCysLTのどちらに対してもGPR17応答性はないことが示唆された。GPR17が果たす新規な調節的役割についても提唱されている。すなわち、GPR17は、CysLT1受容体と共発現した場合に、CysLT1受容体をその内因性脂質メディエーターであるLTC4及びLTD4に対して無応答にした、というものである。GPR17の薬理及び機能をより詳細に調べるために、追加の検討が必要とされる。
【0005】
GPR17活性を調節する薬物は、神経保護的、抗炎症性及び抗虚血性効果を有することがあり、したがって、脳、心臓、及び腎臓の虚血、並びに脳卒中の処置に(WO2006/045476)、及び/又はこれらの事象からの回復の改善に(Bonfanti et al、Cell Death and Disease、2017、8、e2871)、有用であり得る。
【0006】
GPR17調節剤は、摂食、インスリン及びレプチン応答に関与するとも考えられており、したがって肥満処置に役立つと主張されている(WO2011/113032)。
【0007】
更に、GPR17は髄鞘形成プロセスに関与しており、GPR17の負の調節剤(拮抗薬又は逆作動薬)は多発性硬化症又は脊髄損傷等の髄鞘形成障害の処置又は緩和のための価値ある薬物であり得るという強力な証拠がある(Chen et al、Nature neuroscience 2009、12(11):1398~1406;Ceruti et al、Brain:a journal of neurology 2009 132(Pt 8):2206~18;Hennen et al、Sci Signal、6、2013、298;Simon et al J Biol Chem 291、2016、705;Fumagalli et al、Neuropharmacology 104、2016、82)。より最近では、2つのグループによって、LPCで脊髄(Lu et al.、Scientific Reports、2018、8:4502)又は脳梁(Ou et al.、J.Neurosci.、2016、36(41):10560)に脱髄(demyelination)を誘導した場合、成体のGPR17-/-ノックアウトマウスは同腹仔の野生型マウスより髄鞘再形成の速度が速いことが示された。このことから、髄鞘再形成プロセスにおいてGPR17が果たす決定的に重要な潜在的役割が再確認された。一方、GPR17が活性化されると、希突起膠細胞前駆体細胞(OPC)成熟が阻害され、ひいては有効な髄鞘形成が阻止されることが示されている(Simon et al、前掲書)。したがって、強力且つ選択的なGPR17拮抗薬又は逆作動薬の同定は、髄鞘形成障害の処置において大いに意義のあることとなろう。
【0008】
いくつかの重篤な髄鞘形成疾患は、ミエリンが失われること(通常、脱髄と呼ばれる)、及び/又は、身体がミエリンを正しく形成できないこと(髄鞘形成不全と呼ばれることもある)のいずれかにより髄鞘形成が妨げられるのが原因であることが知られている。髄鞘形成疾患は、例えば外傷性脳損傷又はウイルス性感染症のような一定のトリガーイベントに対する突発性又は二次性のものであり得る。髄鞘形成疾患は、中枢神経系(CNS)に主に影響し得るが、末梢神経系に関係することもある。髄鞘形成疾患としては、とりわけ、多発性硬化症、視神経脊髄炎(デビック病としても知られる)、白質ジストロフィー、ギラン・バレー症候群、及び、以下で更に詳述するようなその他多数の疾患がある(例えば、Love、J Clin Pathol、59、2006、1151、Fumagalli et al、前掲書も参照のこと)。アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び多系統萎縮症(MSA)等の神経変性疾患も、最近では髄鞘形成の低下と強く関連付けられるようになっている(例えば、Ettle et al、Mol Neurobiol 53、2016、3046;Jellinger and Welling、Movement Disorders、31、2016;1767;Kang et al、Nature Neurosci 6、2013、571;Bartzokis、Neurochem Res(2007)32:1655を参照のこと)。
【0009】
多発性硬化症(MS)は、慢性進行性の障害である。MSは、希突起膠細胞損傷、脱髄、最終的には軸索喪失を引き起こし、ひいては、例えば疲労感、眩暈、運動及び歩行問題、発話及び嚥下困難、疼痛その他といった重度の神経学的疾患の広範な徴候及び症状に至る炎症性自己免疫疾患である。MSにはいくつかの型があり、新たな症状は、単発的な発作として生じる(再発型)か、又は、経時的に蓄積する(進行型)。ある種の症状は単発的な発作と発作との間では完全に消失していることがある一方、重度の神経学的問題は、特に疾患がより進行性の型に進むにつれて残ることが多い。米国多発性硬化症協会(Multiple Sclerosis Association of America)によれば、米国ではおよそ400,000人、世界的には250万人もの人がMSと診断されており、米国においては年間で推定10,000件の新規症例が診断されている。多発性硬化症は、男性よりも女性に2~3倍多く認められる。
【0010】
多発性硬化症又はその他の多くの髄鞘形成疾患には、既知の原因療法も治癒法も存在しない。処置は、大抵は対症的なものであり、疾患の炎症要素に対処することにより、発作後の機能を改善し新たな発作を予防しようとするものである。このような免疫調節薬は、特に、疾患が進行している場合にはあまり効果的でないことが多いにもかかわらず、副作用を有し忍容性に乏しい可能性がある。更に、β-インターフェロン、酢酸グラチラマー又は処置用抗体等の利用可能な薬物の大半は、注射剤形態でのみ利用可能であり、及び/又は疾患の炎症要素に対処するのみであり、脱髄に直接対処するものではない。コルチコステロイド等の他の薬物は、むしろ非特異的な抗炎症及び免疫抑制効果を示し、したがって、例えばクッシング症候群で認められるような慢性副作用を引き起こす可能性がある。
【0011】
したがって、MS等の髄鞘形成疾患を処置するための安全且つ効果的な薬物、好ましくは、経口投与に好適な薬物が強く望まれている。理想は、そのような薬物が、脱髄を減少させることにより、及び/又は影響の及んだニューロンの髄鞘再形成を促進することにより、脱髄過程を逆行させることであろう。GPR17受容体活性を効果的に低下させる化学化合物であれば、これらの必須要件を満たすことができよう。
【0012】
しかしながら、GPR17活性を効果的に調節することが知られている化学化合物はほとんどない。
【0013】
WO2005/103291では、内因性分子である5アミノレブリン酸(5-ALA)及びポルホビリノゲン(PBG)はGPR17に対する活性化リガンドであることが示唆され、GPR17作動薬の鎮痛効果が開示されており、神経障害性疼痛を処置するための、及び、GPR17スクリーニングアッセイにおけるツールとしてのGPR17作動薬の使用が提唱されている。しかし、5-ALA及びPBGについて報告された親和性は極めて低く、アッセイに必要な量が大量であること、すなわち、5-ALAの場合は3桁のマイクロモル範囲、又はPBGの場合はmM範囲にもなることから、両化合物は日常的なスクリーニングアッセイにおける使用にも、ましてや治療にも、あまり適していない。更に、PBGは、空気及び光に曝露されると急速に分解する化学的に不安定な反応性化合物であることから、日常的に扱うには実用的でない。したがって、これらの化合物は、処置上有効なGPR17の負の調節剤を開発するための有望な出発点にはならない。
【0014】
モンテルカスト及びプランルカストは、最初はロイコトリエン受容体拮抗薬として開発されたが、同様にGPR17受容体にも作用することが最近見出された(Ciana et al、EMBO J.2006、25、4615~4627)。しかし、後に機能アッセイにおいて得られた結果は、モンテクラスト(montekulast)に関しては矛盾するものであった(Hennen et al、2013、同上書)が、プランルカストを用いてGPR17を薬理学的に阻害すると、初代マウス(Hennen et al.、2013、同上書)及びラット(Ou et al.、J.Neurosci.36、2016、10560~10573)の希突起膠細胞の分化が促進される。プランルカストは、局所脱髄のリゾレシチンモデルにおいて、GPR17の機能低下がもたらす効果の表現型模写までも生じさせる。その根拠は、GPR17ノックアウトマウス及びプランルカスト処置した野生型マウスはともに、より早期の髄鞘再形成開始を示すことである(Ou、同上書)。これらの結果は、GPR17阻害剤は動物/ヒトの脱髄性疾患の処置に用いることができる可能性があるという仮説を強く支持する。
【0015】
しかしながら、モンテクラスト及びプランクラスト(prankulast)のGPR17に対する親和性が見られるのは、高マイクロモル範囲においてのみである(Kose et al、ACS Med.Chem.Lett.2014、5、326~330)。両化合物ともタンパク質結合力が高く脳透過性が低いことを考慮すると、これらがヒト治療に適した量でGPR17受容体に結合するための十分高い遊離濃度に到達できる可能性は低い。更に、これらの化合物を用いてin vivoで得られた結果は、CYSLT1受容体に対するその親和性の高さが交絡していることから解釈は困難である。
【0016】
US8,623,593では、GPR17作動薬としての一定のインドール-2-カルボン酸、及び、スクリーニングアッセイにおけるその使用が開示されている。しかしながら、これらの誘導体は全て強力な作動薬であり、MS等の髄鞘形成障害の処置において必要に応じてGPR17活性を下方制御することには適していない。更に、このクラスのGPR17活性化因子は、イオン化しやすいカルボキシル基を有することから血液脳関門を十分には通過せず、そのため、GPR17の負の調節剤を開発するための好適なリード化合物ではなかった。Baqi et al、Med.Chem.Commun.、2014、5、86、及び、Kose et al、2014、同上書も参照のこと。
【0017】
WO2013/167177では、GPR17拮抗薬としての一定のフェニルトリアゾール及びベンゾジアゼピン化合物が提案されている。しかしながら、開示された化合物はin-silicoスクリーニング結果にのみ基づいて選択されたものであり、生物学的データは全く提供されていなかった。本出願の発明者らは、これまでのところ、この先行特許出願の著者によって提案されたリガンドとされるもののうちいずれについても、GPR17拮抗薬としての調節活性を確認することはできなかった。
【0018】
したがって、GPR17の強力な調節剤、好ましくは負の調節剤(negative modulator)、最も好ましくは逆作動薬であり、GPR17活性を好ましくは経口投与で効果的に低下させる能力を有するものを同定する必要がある。
【0019】
発明の説明
本発明は、GPR17受容体の負の調節剤として作用する化合物に関する。好ましい態様において、本化合物は、GPR17受容体の負の作動薬(negative agonist)として作用し、したがって、構造的に活性なGPR17を阻害する。
【0020】
本出願の発明者らは、本明細書において具体的に定義する通りの、ピリジルのパラ位に一定のフルオロアルコキシ置換基を有するピリジン-2-イルインドールスルホンアミドであって、「R7」位に特定の置換基を、及び、インドールピリジルスルホンアミドコア分子における他の2つの位置に少なくとも2つの追加の置換を有する、ピリジン-2-イルインドールスルホンアミドは、きわめて良好なGPR17阻害活性をもたらすと共に特性が改善されていることを今回見出した。例えば、本明細書に開示の「R7」における特定の置換基の付加は、この特定のサブクラスの化合物に伴うことの多いCYP450-1A2誘導を効果的に低減する。R7が水素でありピリジルのパラ位にフルオロアルコキシ置換基がある場合は、他の置換基、例えばハロゲン等と比較して血漿タンパク質結合が少ない等、一定の薬物動態学的な利点がもたらされる。
【0021】
したがって、本発明は、式Iを有する化合物
【化1】

(式中、
R6は、フルオロ、クロロ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R7は、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル、フルオロエチル、フルオロメトキシ及びフルオロエトキシから選択され、
R8は、フルオロ又はメトキシであり、
R11は、水素、フルオロ又はメトキシであり、
Lは、結合であるか、又は、-CH2-及び-CH2-CH2-O-から選択されるリンカーであり、
X1及びX2は、水素及びフルオロから独立に選択される)
並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶
に関する。
【0022】
1つの態様は、
R6が、クロロ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル、及びフルオロメトキシから選択され、
R8が、フルオロ又はメトキシであり、
R11が、水素、フルオロ又はメトキシであり、
Lが、結合であるか、又は、-CH2-及び-CH2-CH2-O-から選択されるリンカーであり、
X1及びX2が、水素及びフルオロから独立に選択される、
式Iの化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶
に関する。
【0023】
1つの態様は、
R6が、クロロ、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル及びトリフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8が、フルオロ又はメトキシであり、
R11が、水素、フルオロ又はメトキシであり、
Lが、結合であるか、又は、-CH2-及び-CH2-CH2-O-から選択されるリンカーであり、
X1及びX2が、水素及びフルオロから独立に選択される、
式Iの化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶
に関する。
【0024】
1つの態様は、R6がクロロである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R6がフルオロである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R6が、フルオロメチル、好ましくはジフルオロメチルである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R7が、フルオロメチル、シクロプロピルオキシ、フルオロ及びクロロから選択される、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R7が、フルオロメチル、好ましくはジフルオロメチルである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R7が、フルオロメトキシ、好ましくはジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R7がクロロである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R7がフルオロである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R7がシクロプロピルオキシである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R7がシクロプロピルである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R11がフルオロ又は水素である、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、R11がメトキシである、式Iの化合物に関する。
1つの態様は、X1が水素である、式Iの化合物に関する。
【0025】
1つの態様は、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択される、したがって式Ia、Ib又はIcによる構造を有する、式Iの化合物(式中、あらゆる置換基は、先に式Iについて記載した通りの意味を有する)に関する。
【化2】
【0026】
1つの態様は、
R6が、クロロ及びフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R11が、水素、メトキシ及びフルオロから選択され、
X1及びX2が、水素及びフルオロから独立に選択される、
式Ia、Ib又はIcのうちの1つを有する化合物に関する。
【0027】
1つの態様は、R8が、フルオロであり、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択される、したがって式IIa、IIb又はIIcによる構造を有する、先に記載の式Iの化合物
【化3】

(式中、他の全ての置換基は、先に記載の通りである)
に関する。
【0028】
1つの態様は、
R6が、フルオロ、クロロ及びフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R11が、水素、メトキシ又はフルオロ、好ましくはメトキシ又はフルオロであり、
X1及びX2は水素及びフルオロから独立に選択されるが、ここで好ましくは、X1が水素であり、X2がフルオロである、
式IIa、IIb又はIIcのうちの1つを有する、式Iの化合物に関する。
【0029】
1つの態様は、R8及びR11がともにフルオロであり、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択される、したがって式IIIa、IIIb又はIIIcによる構造を有する、先に記載の式Iの化合物
【化4】

(式中、他の全ての置換基は、先に記載の通りである)
に関する。
【0030】
1つの態様は、
R6が、フルオロ、クロロ及びフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
X1及びX2が、水素及びフルオロから独立に選択される、
式IIIa、IIIb又はIIIcの化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶
に関する。
【0031】
1つの態様は、R8が、フルオロであり、R11が水素であり、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択される、したがって式IVa、IVb又はIVcによる構造を有する、式Iの化合物
【化5】

(式中、他の全ての置換基は、先に記載の通りである)
に関する。
【0032】
1つの態様は、
R6が、フルオロ、クロロ及びフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
X1及びX2が、水素及びフルオロから独立に選択される、
式IVa、IVb又はIVcの化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶
に関する。
【0033】
1つの態様は、R11がメトキシであり、Lが(a)結合、(b)-CH2-及び(c)-CH2-CH2-O-から選択される、したがって式Va、Vb又はVcによる構造を有する、先に記載の式Iの化合物
【化6】

(式中、他の全ての置換基は、先に記載の通りである)
に関する。
【0034】
1つの態様では、式Va、Vb及びVcの化合物において、
R6は、フルオロ、クロロ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R7は、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8は、フルオロ又はメトキシ、好ましくはフルオロであり、
X1及びX2は、水素及びフルオロから独立に選択される。
【0035】
1つの態様では、式Va、Vb及びVcの化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶において、
R6は、クロロ、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル及びトリフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7は、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8は、フルオロ又はメトキシ、好ましくはフルオロであり、
X1及びX2は、水素及びフルオロから独立に選択されるが、1つの態様においては、X2は好ましくは水素である。
【0036】
1つの好ましい態様では、式Va、Vb及びVcの化合物、並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶において、
R6は、クロロ、モノフルオロメチル、ジフルオロメチル及びトリフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7は、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ及びフルオロメチルから選択され、
R8は、フルオロであり、
X1及びX2は、水素及びフルオロから独立に選択されるが、1つの態様においては、X2は好ましくは水素である。
【0037】
1つの好ましい態様は、Lが-CH2-である、したがって式Ibによる構造を有する、式Iの化合物
【化7】

(式中、
R6は、フルオロ、クロロ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R7は、フルオロ、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8は、フルオロ又はメトキシであり、
R11は、水素、フルオロ又はメトキシであり、
X1及びX2は、水素及びフルオロから独立に選択される)
並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶
に関する。
【0038】
1つの好ましい態様は、
R6が、クロロ及びフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8が、フルオロ又はメトキシであり、
R11が、水素、メトキシ及びフルオロから選択され、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式Ibの化合物に関する。
【0039】
1つの好ましい態様は、
R6が、クロロ及びフルオロメチルから、好ましくはクロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、クロロ、シクロプロピル、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8が、フルオロであり、
R11が、水素及びフルオロから選択され、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式Ibの化合物に関する。
【0040】
1つの好ましい態様は、
R6が、クロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、クロロ、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8が、フルオロであり、
R11が、水素及びフルオロから選択され、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式Ibの化合物に関する。
【0041】
1つの好ましい態様は、
R6が、フルオロ、クロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピルオキシ及びフルオロメチルから選択され、
R8が、フルオロであり、
R11が、メトキシ及びフルオロから選択され、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式Ibの化合物に関する。
【0042】
1つの好ましい態様は、
R6が、クロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、クロロ、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、
R8が、フルオロであり、
R11が、メトキシであり、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式Ibの化合物に関する。
【0043】
1つの好ましい態様は、
R6が、クロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、クロロ、シクロプロピルオキシ及びジフルオロメチルから選択され、
R8が、フルオロであり、
R11が、水素、メトキシ及びフルオロから選択され、好ましくはメトキシであり、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式Ibの化合物に関する。
【0044】
1つの態様は、
R6が、クロロ及びジフルオロメチルから選択され、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピルオキシ、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ及びトリフルオロメトキシから選択され、
R8が、メトキシであり、
R11が、水素及びフルオロから選択され、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式Ibの化合物に関する。
【0045】
1つの好ましい態様は、R6がジフルオロメチルである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R7がクロロである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R7がフルオロである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R7がジフルオロメチルである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R8がフルオロである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R8がフルオロであり、R11がメトキシである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R8がフルオロであり、R11が水素である、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R8及びR11がともにフルオロである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R8がメトキシである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R8がメトキシであり、R11がフルオロである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R8がメトキシであり、R11が水素である、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R11がフルオロである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R11が水素である、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、R11がメトキシである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、X1及びX2がともに水素である、先に記載の式Ibの化合物に関する。
1つの好ましい態様は、X1が水素であり、X2がフルオロである、先に記載の式Ibの化合物に関する。
【0046】
1つの好ましい態様は、
R6が、クロロであり、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、好ましくは、クロロ、シクロプロピルオキシ及びジフルオロメチルから選択され、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式I、Ia、Ib、Ic、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIc、IVa、IVb、IVc、Va、VB又はVcの化合物に関する。
【0047】
1つの好ましい態様は、
R6が、ジフルオロメチルであり、
R7が、フルオロ、クロロ、シクロプロピルオキシ、フルオロメチル及びフルオロメトキシから選択され、好ましくは、クロロ、シクロプロピルオキシ及びジフルオロメチルから選択され、
X1が水素であり、X2が水素又はフルオロである、
式I、Ia、Ib、Ic、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIc、IVa、IVb、IVc、Va、VB又はVcの化合物に関する。
【0048】
1つの態様は、X1が水素であり、X2がフルオロである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの態様は、X1及びX2がともに水素である、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの好ましい態様は、R6がクロロである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの好ましい態様は、R6がジフルオロメチルである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの好ましい態様は、R7がクロロである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの好ましい態様は、R7がフルオロである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの好ましい態様は、R7がジフルオロメチルである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの態様は、R7がモノフルオロメチルである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの態様は、R7がトリフルオロメチルである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの態様は、R7がシクロプロピルオキシである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの態様は、R7がモノフルオロメトキシである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの態様は、R7がジフルオロメトキシである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
1つの態様は、R7がトリフルオロメトキシである、先に記載の化合物のいずれかに関する。
【0049】
好ましい態様は、
6,7-ジクロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
7-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-[2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ]-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6,7-ジクロロ-N-[5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
7-クロロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-7-(ジフルオロメチル)-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6,7-ジクロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6,7-ジクロロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-7-シクロプロピル-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド
6-クロロ-7-シクロプロピルオキシ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
から選択される化合物、
並びにその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶
に関する。
【0050】
明確にするために記すと、先に記載の化合物のあらゆる定義は、あらゆるその薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶も包含する。
1つの態様は、治療において使用するための、本発明の化合物に関する。
1つの態様は、脱髄障害の処置又は緩和において使用するための、本発明の化合物に関する。
1つの態様は、多発性硬化症の処置又は緩和において使用するための、本発明の化合物に関する。
1つの態様は、脱髄障害、例えば限定されないが多発性硬化症等を処置する方法であって、処置有効量の本明細書で定義された化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む上記方法に関する。
1つの態様は、少なくとも1つの本発明の化合物と薬学的に許容される担体とを含む治療用組成物に関する。
【0051】
別の好ましい態様は、少なくとも1つの18F同位体を、好ましくは、本明細書に開示する化合物のうちの1つにおいて示す通りのフッ素原子の位置に含む、本発明の化合物に関する。非限定的な例の目的で、本明細書に開示する化合物6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミドにおいて、4つのフッ素のうちの少なくとも1つは、18F同位体によって表されることがある。このことは、本明細書に記載する他のフッ素含有化合物にも同様に適用される。これらの18F含有化合物は、PETトレーサーとして好ましくは使用することができる。
別の好ましい態様は、少なくとも1つの11C同位体を、好ましくは、本明細書において示す通りの炭素原子の位置に含む、本発明の化合物に関する。これらの11C含有化合物は、PETトレーサーとして好ましくは使用することができる。
別の好ましい態様は、少なくとも1つの123I、125I又は131I同位体を、好ましくは、本明細書において示す通りのハロゲン原子の位置に含む、本発明の化合物に関する。123I、125I又は131I含有化合物は、SPECTトレーサーとして好ましくは使用することができる。
【0052】
処置的及び診断的適用
1つの側面において、本発明は、治療又は診断における、特に、動物、とりわけヒトの治療において使用するための、本明細書に記載の化合物のうちのいずれかに関する。
GPR17調節特性を有することから、本発明の化合物は、医薬(medicine)として使用することができ、CNS系の多様な疾患の処置及び/又は予防のために使用し得る。
したがって、本開示の1つの態様は、医薬として使用するための、特に、GPR17関連性の疾患の処置及び/又は予防のための医薬として使用するための、本明細書に記載の化合物である。
【0053】
GPR17関連性の疾患又は障害とは、GPR17シグナル伝達系の機能不全と関連する疾患、例えば、GPR17受容体の過剰発現及び/又は過活性等である。いかなる理論に束縛されることも望まないが、GPR17の活性は、一定の組織において、例えば希突起膠細胞前駆細胞(OPC)において、又は、オリゴンデンドロサイト(oligondendrocyte)の成熟期中に、増加、拡張又は他の形で変質していることがあり、おそらくその原因は、内因性刺激、例えば炎症因子等が活性化することにある。GPR17の活性亢進は、希突起膠細胞の分化及び効率的な髄鞘形成を妨げ、ひいては髄鞘形成疾患の出現又は更なる増悪を促進する可能性がある(Chen et al、前掲書を参照のこと)。したがって、GPR17の負の調節剤は、GPR17活性を低下させる又は停止することにより、及び、OPCが成熟してミエリン産生細胞であるオリゴンデンドロサイトになるのを支持することにより、髄鞘形成を促進することができる(例えば、Simon et al、前掲書を参照のこと)。
【0054】
1つの好ましい側面において、本発明は、髄鞘形成障害、特に、例えば中枢神経系等の脱髄障害から選択される及び/又はこれらに関連する障害又は症候群の予防又は処置に用いるための治療又は診断において使用するための、本明細書に記載の化合物のうちのいずれかに関する。1つの態様において、本発明の化合物は、それを必要とする動物における髄鞘再形成の促進、刺激及び/又は加速において使用するためのものである。1つの態様において、本発明の化合物の投与に伴う髄鞘再形成は、脱髄疾患、例えば限定されないが多発性硬化症等を予防又は処置することになろう。
本発明の化合物は、脳組織損傷、脳血管障害及び一定の神経変性疾患に関連する障害又は症候群の処置又は予防においても有用である可能性がある。
【0055】
神経変性障害は、最近、髄鞘形成の喪失と強く関連付けられてきている。したがって、希突起神経膠細胞(oligodendroglial)及びミエリンの機能性が保存されることは、軸索及びニューロンの変性予防にとって決定的に重要な要件であると考えられている(例えば、Ettle et al、前掲書を参照のこと)。そのため、GPR17の負の調節剤は、脱髄及び/又は髄鞘形成への影響を伴うあらゆる神経変性疾患、例えばALS、MSA、アルツハイマー病、ハンチントン病又はパーキンソン病等にとって優れた処置選択肢となり得る。
【0056】
したがって、特定の好ましい側面において、本発明の化合物は、末梢性又は中枢性の髄鞘形成障害、特に中枢神経系の髄鞘形成障害の予防及び/又は処置に使用することができる。1つの側面において、本発明の化合物は、髄鞘形成障害の処置及び/又は予防及び/又は診断において、経口投与により使用される。好ましい態様において、本発明の化合物での処置の対象となる髄鞘形成障害は、脱髄障害である。
【0057】
本発明で開示する化合物による処置及び/又は予防の対象となるそのような髄鞘形成障害の例は、特に、
- さまざまなサブフォームを包含する多発性硬化症(MS)、
- 視神経脊髄炎(デビック病としても知られる)、
- 慢性再発性炎症性視神経炎(chronic relapsing inflammatory optic neuritis)、急性播種性脳脊髄炎、
- 急性出血性白質脳炎(AHL)、
- 脳室周囲白質軟化症
- ウイルス性感染症を原因とする脱髄であり、例えばHIV又は進行性多巣性白質脳症によるもの、
- 橋中心及び橋外髄鞘崩壊症、
- 外傷性の脳組織損傷を原因とする脱髄であり、例えば腫瘍による圧迫誘発性の脱髄を包含する、
- 低酸素症、脳卒中又は虚血又は他の心血管疾患の影響による脱髄、
- 二酸化炭素、シアン化物又は他のCNS毒素への曝露を原因とする脱髄、
- シルダー病、
- バロー同心円性硬化症、
- 周産期脳症、並びに
- 特に以下のものを包含する神経変性疾患、
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・アルツハイマー病(AD)
・多系統萎縮症
・パーキンソン病
・脊髄小脳萎縮症としても知られる脊髄小脳失調(SCA)
・ハンチントン病
- 統合失調症及び双極性障害等の精神障害(例えば、Fields、Trends Neurosci 31、2008、361;Tkachev et al、Lancet 362、2003、798を参照のこと)
- 末梢性の髄鞘形成疾患であり、白質ジストロフィー、末梢性脱髄性神経障害、デジュリーヌ・ソッタス症候群又はシャルコー・マリー・トゥース病等
である。
【0058】
脱髄疾患等のCNS疾患の処置又は予防には、当該疾患と関連する徴候及び症状の処置も包含される。
【0059】
例えば、MSの処置及び/又は予防のための本発明の化合物の使用には、視神経(視力喪失、複視)、後索(感覚喪失)、皮質脊髄路(痙性脱力)、小脳路(協調運動障害、構音障害、回転性眩暈、認知障害)、内側縦束(側方注視における複視)、三叉神経脊髄路(顔面しびれ感又は疼痛)、筋力低下(嚥下障害、膀胱又は消化管のコントロール、痙攣)に対する負の影響、又は、基礎疾患に関連する心理的効果、例えば抑うつ、不安若しくは他の気分障害、全身の脱力、又は不眠等の、MSに関連する徴候及び症状の処置及び/又は予防も包含される。
【0060】
したがって、本発明の化合物は、髄鞘形成疾患、特に、多発性硬化症等の髄鞘形成疾患の徴候及び症状の処置において使用するためのものであり、MSのそのような徴候及び症状としては、視力喪失、視覚障害、複視、感覚の喪失又は障害、痙性脱力等の脱力、運動協調障害、回転性眩暈、認知障害、顔面しびれ感、顔面疼痛、嚥下障害、発語障害、膀胱及び/又は消化管のコントロール障害、痙攣、抑うつ、不安、気分障害、不眠並びに疲労感からなる群があるが、これらに限定されない。
【0061】
1つの好ましい態様において、本発明の化合物は、多発性硬化症の処置に使用するためのものである。MSは、多様な髄鞘形成疾患であり、さまざまな異なる形態及び段階で現れる場合があり、それぞれ活性及び疾患進行によって、再発寛解型MS、二次性進行型MS、原発性進行型MS、進行再発型MSがあるが、これらに限定されない。したがって、1つの態様において、本発明の化合物は、本明細書に記載する通り多様な段階及び形態の多発性硬化症の処置に使用するためのものである。
【0062】
1つの側面において、本発明の化合物は、視神経脊髄炎(デビック病又はデビック症候群としても知られる)の処置/又は予防に使用するためのものである。視神経脊髄炎は、視神経及び脊髄の炎症及び脱髄によって特徴付けられる複雑な障害である。随伴症状の多くはMSと類似しており、そのような症状には、特に手足の筋力低下、感覚の低下、及び膀胱コントロールの喪失がある。
【0063】
1つの側面において、本発明の化合物は、ALSの予防及び/又は処置に使用するためのものである。ALSは、希突起膠細胞の変性及び脱髄の増加と最近になって関連付けられるようになり、GPR17の負の調節剤の標的疾患としてALSが示唆されている(Kang et al、前掲書;Fumagalli et al、Neuropharmacology 104、2016、82)。
【0064】
1つの側面において、本発明の化合物は、ハンチントン病の予防及び/又は処置に使用するためのものである。ハンチントンについては、影響の及んだ髄鞘形成に関連するとの十分な記載がある(Bartzokis et al、前掲書;Huang et al、Neuron 85、2015、1212)。
1つの側面において、本発明の化合物は、多系統委縮症の予防及び/又は処置に使用するためのものである。MSAは、最近になって脱髄と強く関連付けられ(Ettle 前掲書、Jellinger 前掲書)、MSAを処置又は予防するための髄鞘再形成戦略が示唆された。
1つの側面において、本発明の化合物は、アルツハイマー病の予防及び/又は処置に使用するためのものである。ADは、オリゴデンドロンサイト(oligodendronecyte)の細胞死及び局所脱髄の増加と関連しており、そのことがADにおける病理学的プロセスを表していることが最近になって観測された(Mitew et al、Acta Neuropathol 119、2010、567)。
【0065】
本発明の1つの側面は、処置有効量の本発明の化合物を、ヒト患者を包含するそれを必要とする対象に投与することにより、本明細書に記載する疾患又は障害のうちのいずれかを、特に、例えば、MS、視神経脊髄炎、ALS、ハンチントン舞踏病、アルツハイマー病他の髄鞘形成疾患を処置する方法に関する。
別の側面において、本発明の化合物は、脊髄損傷、周産期脳症、脳卒中、虚血又は脳血管性障害の予防及び処置において使用してよい。
【0066】
1つの側面において、本発明は、髄鞘形成障害と関連する症候群若しくは障害、又は脳組織損傷と関連する障害若しくは症候群を予防及び/又は処置するための方法であって、処置有効量の本明細書に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む上記方法に関する。そのような処置を必要とする患者は、機械的、化学的、ウイルス性又は他の外傷による等の脳組織損傷に罹患したあらゆる患者である可能性がある。
1つの側面において、本発明は、髄鞘形成障害と関連する症候群若しくは障害、又は脳卒中若しくは他の脳虚血と関連する障害若しくは症候群を予防及び/又は処置するための方法であって、処置有効量の本明細書に記載の化合物を、それを必要とする患者に投与することを含む上記方法に関する。それを必要とする患者は、例えば、塞栓又は局所的な血栓症のいずれかによる脳動脈の閉塞によってすでに生じていた可能性がある脳虚血/脳卒中を最近になって発症した任意の患者であってよい。
【0067】
GPR17は、最近では、摂食、インスリンコントロール及び肥満にも関連付けられるようになっている。種々の報告によれば、GPR17の負の調節剤は、摂食のコントロール及び肥満の処置に役立つ場合がある(例えば、Ren et al、Diabetes 64、2015、3670を参照のこと)。したがって、本発明の1つの態様は、肥満を予防及び/又は処置するための本明細書に記載の化合物の使用、並びに肥満を処置する方法に関する。
【0068】
更に、本発明の化合物は、GPR17が発現している組織、例えば心臓、肺又は腎臓等を処置又は予防するために使用してよい。1つの態様において、本発明の化合物は、腎臓及び/又は心臓の虚血性障害を処置又は予防するために使用することができる。
GPR17は、例えば、ハウスダストに含まれるダニにより誘発されるような肺の炎症及び喘息にも関連が認められるようになっている(Maekawa、J Immunol 2010、185(3)、1846~1854)。そのため、本発明の化合物は、喘息又は他の肺の炎症を処置するために使用してよい。
本発明による処置は、本発明で開示する化合物のうちの1つの投与を、CNS疾患の、特に、MS又はALS等の髄鞘形成疾患又は障害の「単独」処置として含むことができる。或いは、本明細書に開示する化合物は、他の有用な薬物と共に組合せ療法で投与してよい。
【0069】
非限定的な例において、本発明による化合物は、MS等の髄鞘形成疾患を処置するための、異なる作用様式を有する別の医薬品(medicament)、例えば抗炎症薬又は免疫抑制薬等と組み合わせる。そのような化合物としては、(i)コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン又はデキサメタゾン、(ii)β-インターフェロン、例えば、インターフェロンβ-1a、インターフェロンβ-1b又はペグインターフェロンβ-1a、(iii)抗CD20抗体、例えば、オクレリズマブ、リツキシマブ及びオファツムマブ、(iv)グラチラマー塩、例えば酢酸グラチラマー、(v)フマル酸ジメチル、(vi)フィンゴリモド及び他のスフィンゴシン-1-リン酸受容体調節剤、例えば、ポネシモド、シポニモド、オザニモド又はラキニモド、(vii)ジヒドロオロタートデヒドロゲナーゼ阻害薬、例えば、テリフルノミド又はレフルノミド、(viii)抗インテグリン-α4抗体、例えばナタリズマブ、(ix)抗CD52抗体、例えばアレムツズマブ、(x)ミトキサントロン、(xi)抗Lingo1抗体、例えばオピシヌマブ、又は(xii)他の免疫調節療法剤、例えばマシチニブがあるが、これらに限定されない。
【0070】
同様に、本発明の化合物は、痛みを伴う髄鞘形成病態を処置しようとする場合には、鎮痛薬と組み合わせることができる。また、本開示の化合物は、処置しようとする基礎的な髄鞘形成疾患と関連する心理的影響を同時処置するために、抗うつ薬と組み合わせて使用してよい。
【0071】
組合せ療法においては、2つ以上の活性成分(active principle)が、同一の「製剤」を介して、又は「キットオブパーツ」として、すなわち、個別のガレノス単位(galenic unit)で提供され得る。また、本発明の化合物を包含する2つ以上の活性成分は、同時に、又は続けて、例えばインターバル療法で、患者に投与してよい。追加の薬物は、同じ投与様式又は異なる投与様式によって投与してよい。例えば、本発明のGPR17調節剤は経口投与するが第2の医薬品は皮下注射によって投与する、ということが可能である。
【0072】
1つの側面において、本発明の化合物は、本明細書に更に記載するGPR17関連疾患を、特に、本明細書に開示する脱髄疾患を診断及び/又はモニタリングするために、好ましくは多発性硬化症の診断及びモニタリングにおいて使用してよい。
【0073】
1つの側面において、本発明の化合物は、GPR17受容体の発現、分布及び/又は活性化をin-vivo又はin-vitroのいずれかで、診断及び/又はモニタリングするために使用することができる。診断及び/又はモニタリングは、in-vivoでは、例えば、分子イメージング技術を用いる等により対象において直接的に、in-vitroでは、例えば、対象から採取した体液又は組織等の任意の試料を検査すること等により行う。GPR17の活性、発現及び/又は分布の任意のそのような測定法は、(a)本明細書において記載するGPR17関連性の疾患、特に、例えば多発性硬化症を包含するがこれに限定されない髄鞘形成疾患の状態及び進行、並びに(b)任意のそのようなGPR17関連性の疾患と関連する処置の有効性及び/又は適用可能性及び/又は適正な投与量を、予測、診断及び/又はモニタリングするために使用してよい。
【0074】
1つの側面において、本発明の化合物は、in-vivo診断及び/又は疾患モニタリングを行う目的で、本明細書において更に開示するPET又はSPECTトレーサーとして使用してよい。これにより、GPR17受容体の発現、活性化及び/又は分布を、例えば、本発明のGPR17PET又はSPECTトレーサーを投与した後にヒト患者をイメージングすることによって、対象において直接的に測定することができる。本発明のPET又はSPECTトレーサーは、疾患の正確な診断を容易にすることができ、適用可能な処置選択肢の決定を助けることができ、並びに/又は、疾患の進行をモニタリングするために、及び/若しくは、処置薬の選択及び適正な投与法及び/若しくは投与量を包含する医学的介在の成功をモニタリング若しくは予測するために使用することができる。
【0075】
1つの態様において、本発明のPET又はSPECTトレーサーは、特定の対象における処置薬の有効性及び/若しくは安全性をモニタリング及び/若しくは予測する目的で、又は薬物の適正な投薬量を推定する目的で、前記処置薬と組み合わせて、すなわちコンパニオン診断薬として使用してよい。
【0076】
1つの態様は、処置薬と組み合わせた、コンパニオン薬として使用するための本発明のPET又はSPECTトレーサーに関する。本発明のPET又はSPECTトレーサーと共に使用することになる処置薬は、本明細書に更に記載するように、(a)本発明の非標識化合物、(b)本発明の化合物とは異なるGPR17調節化合物、及び(c)GPR17調節剤ではない、多発性硬化症処置で使用するための薬物を包含するがこれらに限定されない、髄鞘形成疾患を処置するための薬物からなる群から選択してよい。
【0077】
1つの態様は、
(a)第1の構成成分として、本発明のPET又はSPECTトレーサー、特に、本発明の化合物をベースにしたPET又はPETトレーサーであるがPET又はSPECTイメージングに好適である少なくとも1つの放射性核種、好ましくは、18F、11C、123I、125I及び131Iから選択される放射性核種が組み込まれているもの、
(b)第2の構成成分として、
i.本明細書において更に定義された、放射性核種が組み込まれていない、本発明の化合物、
ii.本発明の化合物とは異なるGPR17調節化合物、及び
iii.髄鞘形成疾患を処置するための薬物、例えば限定されないが、多発性硬化症の処置において使用するための薬物であるがGPR17調節活性をもたない薬物。このような化合物は、より詳細に先述したそれらの例を含め、当業者には公知である
の中から選択される処置薬
を含むキットに関する。
【0078】
或いは、本発明の化合物は、in-vitro診断アッセイにおいて使用してよく、そのようなアッセイには、例えば、血液、血漿、尿、唾液又は脳脊髄液等、対象の好適な体液の、GPR17の発現、活性及び/又は分布レベルのいずれかに関する検査を行うためのものがある。
【0079】
1つの態様は、GPR17関連性の疾患、特に、多発性硬化症を包含するがこれに限定されない髄鞘形成疾患を処置する方法であって、(a)対象のGPR17受容体の発現、活性及び/又は分布を決定するステップ、(b)前記対象におけるGPR17受容体の発現、活性及び/又は分布を、1名又は2名以上の健常対象又は母集団におけるGPR17受容体の発現、活性及び/又は分布と比較するステップ、(c)前記対象の医学的処置又は予防法の必要性を、前記対象のGPR17の発現、活性及び/又は分布の、健常対象又は母集団からの偏差に基づいて決定するステップ、並びに(d)GPR17受容体の発現、活性及び/又は分布の偏差を有する対象を、GPR17関連性の疾患又は障害の処置に好適な処置薬を前記個体に投与することによって、特にGPR17調節剤を投与することによって、好ましくは本発明の化合物のうちの1つ又は2つ以上を投与することによって処置するステップを包含する上記方法に関する。1つの態様において、GPR17の発現、活性及び/又は分布の決定(a)は、本発明の化合物のうちの1つを使用して、特に、PET若しくはSPECTトレーサーを用いて、又は、本発明のPET若しくはSPECTトレーサーを使用して前記対象の体液又は組織のin vitro検査を行うことによって、実施されることになる。
1つの好ましい側面において、本発明は、本明細書に記載の化合物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0080】
医用薬(medicinal drug)としての投与に関しては、本化合物は、本開示の化合物と、本明細書において更に定義する通りの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物において使用してよい。このような医薬組成物は、例えば、経口、静脈内、筋肉内、皮下、経鼻、経直腸、経頭蓋、経頬又は経皮投与向けに構成することができ、薬学的に許容される担体、アジュバント、希釈剤、安定化剤等を含んでよい。
【0081】
例えば、本発明の化合物は、油、プロピレングリコール、又は、注射剤を作製するために通常使用される他の溶媒に溶解してよい。担体の好適な例としては、生理的食塩水、ポリエチレングリコール、エタノール、植物油、ミリスチン酸イソプロピル等があるが、これらに限定されない。本発明の化合物は、生理食塩水及び5%デキストロース等の水溶性溶媒中に、又は、植物油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸エステル及びプロピレングリコール等の非水溶性溶媒中に、溶解、懸濁又は乳化することによって注射剤に製剤化してよい。本発明の製剤には、溶解剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤及び防腐剤等の従来の添加物のうちのいずれが含まれていてもよい。
【0082】
1つの態様において、本発明の化合物は、非限定的な例として、経口的に、例えば、錠剤、カプセル剤、糖衣錠剤、散剤、顆粒剤の形態で、又は、例えば、シロップ剤、懸濁剤、乳剤若しくは液剤を包含する液体若しくは半固体の形態で投与してよい。
【0083】
経口製剤は、持続放出剤、崩壊剤、増量剤、滑沢剤、安定化剤、酸化防止剤、香味料、分散剤、電解質、緩衝液、染料、又は品質保持剤(conservation agent)を含有してよいが、限定するものではない。好適な賦形剤及び製剤は、当業者には公知であり、Remington[「薬学の科学と実践(The science and practice of pharmacy)」、Lippincott、Williams&Wilkins、2000]等の一般的なモノグラフに開示されており、又は、当業者に周知の他の情報源に開示されている。
【0084】
錠剤は、例えば、少なくとも1つの本発明の化合物を、例えば、結合剤、増量剤/希釈剤、崩壊化剤(disintegrant agent)、可塑剤(plastisizer)等の少なくとも1つの非毒性の薬学的に許容される賦形剤等、及び、任意の溶媒(水性又は非水性)と混合することにより、続いて、乾式圧縮、乾式造粒、湿式造粒、スプレードライ又は溶融押出を包含するがこれらに限定されない工程で混合物を錠剤に加工することによって、調製することができる。錠剤は、コーティングしなくても、又は、不快な味の薬物のまずさをマスキングする、若しくは胃腸管において有効成分(active ingredient)の崩壊及び吸収を遅延させる既知の技術によってコーティングしても、いずれでもよい。錠剤は、本発明の化合物を即時放出又は持続放出させ得る。
【0085】
典型的な持続放出剤は、例えば、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、その他のセルロースエーテル、デンプン、アルファ化デンプン、ポリメタクリラート、ポリ酢酸ビニル、結晶セルロース、デキストラン、及びこれらの混合物等の、水と接触すると膨潤するものである。崩壊剤(disintegrant)の非限定的な例としては、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)、架橋CMC-Na及び低置換ヒドロキシプロピルセルロース、並びにこれらの混合物がある。好適な増量剤及び結合剤としては、限定されないが、結晶セルロース、粉末セルロース、ラクトース(無水物又は一水和物)、圧縮糖、デンプン(例えばトウモロコシデンプン又はバレイショデンプン)、アルファ化デンプン、フルクトース、スクロース、デキストロース、デキストラン、その他の糖、例えば、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、ラクチトール及びサッカロース等、シリコーン処理された結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、乳酸カルシウム、又はこれらの混合物がある。滑沢剤、付着防止剤(antiadherent)及び/又は流動促進剤には、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、硬化植物油、硬化ヒマシ油、フマル酸ステアリルナトリウム、マクロゴール、グリセロールジベヘナート、タルク、トウモロコシデンプン、二酸化ケイ素等があり、混合物が包含される。
【0086】
本発明の化合物は、注射による、例えばボーラス注射又は注入による非経口投与用に製剤化することもできる。注射用の組成物は、調製済みの状態で提供されてよく、また、懸濁剤、液剤、又は、油性若しくは水性ビヒクル中の乳剤等の形態をとっていてよく、また、懸濁化剤、安定化剤、保存剤(preserving agent)及び/又は分散剤等の賦形剤を含有してよい。或いは、有効成分は、好適なビヒクル、例えば、使用前に滅菌済パイロジェンフリー水又は生理食塩水で構成するための粉末形態であってよい。
【0087】
経鼻投与又は吸入による投与に関しては、本発明による化合物は、加圧パック用のエアゾールスプレー形式又はネブライザーの形態で、好適な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、フルオロトリクロロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の好適な気体若しくは気体混合物を使用して好都合に送達し得る。
【0088】
眼投与に関しては、本発明における使用の化合物は、pH調整された等張性の滅菌生理食塩水中の微粉懸濁液(micronized suspension)として好都合に製剤化でき、殺菌剤又は殺真菌剤、例えば、硝酸フェニル水銀、塩化ベンジルアルコニウム又は酢酸クロルヘキシジン等の防腐剤を含んでも含まなくてもよい。或いは、眼投与に関しては、化合物は、ワセリン等の軟膏の形態で製剤化してよい。
直腸投与に関しては、本発明における使用の化合物は、坐剤として好都合に製剤化してよい。これらは、活性構成成分(active component)を、室温では固体であるが直腸温度では液体であることから、直腸で融解して活性構成成分を放出することになる好適な非刺激性の賦形剤と混合することにより調製することができる。このような材料としては、例えば、ココアバター、蜜蝋及びポリエチレングリコールがある。
【0089】
1つの態様において、本化合物は、経皮的に投与してよい。この投与様式は、経口投与のいわゆる一次通過効果を回避し、更に、場合によっては特別な利点となる、より一定の血漿レベルをもたらすことを可能にする。軟膏剤又はクリーム剤、又は他の経皮システム、例えばパッチ剤若しくは電気泳動デバイス等の経皮形態のデザインは、当技術分野では公知である。例えば、Venkatraman and Gale、Biomaterials 1998、Vol 19、p1119;Prausnitz and Langer、Nat Biotechnology 2008、Vol 26.11 p1261;WO2001/47503;WO2009/000262;WO99/49852;WO07/094876を参照のこと。
【0090】
本発明による化合物の好ましい用量レベルは、患者の病態及び体重、特定の疾患の重症度、剤形、並びに投与経路及び期間を包含するさまざまな因子に依存するが、当業者が適切に選んでよい。さまざまな態様において、本化合物は、1日当たり体重1kgにつき0.001~10mg、又は、1日当たり体重1kgにつき0.03~1mgの範囲の量で投与される。個々の用量は、有効成分として1日当たり約0.1~1000mg、約0.2~750mg/日、約0.3~500mg/日、0.5~300mg/日、又は1~100mg/日の範囲であってよい。用量は、1日1回又は1日数回、それぞれ1回分ずつ分かれた形で投与してよい。
本発明の別の側面は、本明細書に記載の医薬又は医薬組成物、及びその使用のための取扱説明書を含む「キット」である。
【0091】
定義
本発明の化合物は、本明細書において更に記載の式I、Ia、Ib、Ic、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIc、IVa、IVb及びIVcにより包括される化合物、並びに、説明及び実験の項に開示する個々の最終化合物を包含する。
本発明による化合物についてのあらゆる言及は、別段の明示的な指示がない限り、当該化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、同位体及び共結晶も包含する。
【0092】
本発明によれば、「薬学的に許容される塩」という用語は、本化合物が形成し得る、対象、特にヒト対象への投与に好適な、あらゆる塩に関する。このような塩としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸で形成された、又は、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンフアースルホン酸、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸及びムコン酸等の有機酸で形成された酸付加塩があるが、これらに限定されない。他の塩としては、2,2-ジクロロアセタート、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、2-アセトアミドベンゾアート、カプロン酸塩、カプリン酸塩、樟脳酸塩、シクラミン酸塩、ラウリル硫酸塩、エジシラート(edisilate)、エシラート(esylate)、イセチオン酸塩、ギ酸塩、ガラクタル酸塩、ゲンチシン酸塩、グルセプト酸塩、グルクロン酸塩、オキソグルタル酸塩、馬尿酸塩、ラクトビオン酸塩、ナパジシル酸塩、キシナホ酸塩、ニコチン酸塩、オレイン酸塩、オロト酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、エンボン酸塩、ピドロ酸塩、p-アミノサリチル酸塩、セバシン酸塩、タンニン酸塩、チオシアン酸塩(rhodanide)、ウンデシレン酸塩等;又は、親化合物に存在する酸性プロトンが、アンモニア、アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン、グリシン、ヒドラバミン、イミダゾール、リシン、マグネシウム、ヒドロキシエチルモルホリン、ピペラジン、カリウム、エポラミン、ナトリウム、トロラミン、トロメタミン又は亜鉛等で置き換えられたときに形成される塩がある。
【0093】
本発明は、本明細書で定義された化合物の溶媒和物をその範囲内に包含する。「溶媒和物」は、活性化合物及び第2の構成成分(溶媒)によって形成された結晶であり、単離された形態では、室温において液体である。このような溶媒和物は、一般的な有機溶媒、例えば、ベンゼン若しくはトルエン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム若しくはジクロロメタン等の塩素系溶媒;メタノール、エタノール若しくはイソプロパノール等のアルコール系溶媒;ジエチルエーテル若しくはテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;又は酢酸エチル等のエステル系溶媒で形成してよい。或いは、本発明の化合物の溶媒和物は、水で形成してよく、その場合には、溶媒和物は水和物であることになる。
【0094】
本発明は、その範囲内に共結晶も包含する。「共結晶」という用語は、中性分子構成成分が結晶化合物内に一定の化学量論比で存在する状況を記載するために使用する。医薬品共結晶(pharmaceutical co-crystal)を調製すると、医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient)の結晶形態を修飾させることが可能になり、その意図する生物学的活性を損なうことなく、その物理化学的特性を変化させることができる。医薬品有効成分と一緒に共結晶中に存在し得る共結晶子の例としては、L-アスコルビン酸、クエン酸、グルタル酸、ケイ皮酸、マンデル酸、尿素及びニコチンアミドがある。
【0095】
本発明は、本発明の化合物の全ての好適な同位体バリエーションも包含する。本発明の化合物の「同位体バリエーション」又は簡単に「同位体」は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を有するが原子質量は自然界において通常認められる原子質量とは異なる原子によって置き換えられているものと定義され、量が最も豊富な同位体(単数又は複数)が好ましい。本発明の化合物中に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えばそれぞれ、H、H、11C、13C、14C、15N、17O、18O、35S、18F及び36Clが挙げられる。本発明の一定の同位体バリエーション、例えば、H又は14C等の放射性同位体が組み込まれているものは、薬物及び/又は基質の組織分布試験において有用である。トリチウム、すなわちH、及び、炭素-14、すなわち14C同位体は、その調製の容易さ及び検出能の点で特に好ましい。更に、重水素、すなわちH等の同位体での置換は、代謝安定性が増すことによる一定の処置的利点、例えばin vivoでの半減期の長期化、必要用量の低減等をもたらす可能性があり、そのため、状況によっては好ましい可能性がある。本発明の化合物の同位体バリエーションは、好適な試薬の適切な同位体バリエーションを用いて従来の手順により一般に調製することができる。
【0096】
また、本発明の一部は、そのような化合物のうち、少なくとも1つの原子が、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)又は陽電子放射型断層撮影法(PET)等のin vivoイメージング技術で使用することができる同一の又は異なる原子の放射性同位体(ラジオアイソトープ)によって置き換えられている化合物である。
【0097】
SPECT試験で使用可能なGPR17調節剤のそのような同位体バリエーション(本明細書ではそのような化合物を「SPECTトレーサー」という)の例は、99mTc、111In、82Rb、137Cs、123I、125I、131I、67Ga、192Ir又は201Tl、好ましくは123Iが導入されている化合物である。例えば、本発明の化合物をSPECTトレーサーとして使用する目的で、123I同位体を本明細書に開示のGPR17調節剤中に導入してよい。非限定的な例として、化合物をSPECTトレーサーとして使用する目的で、123I、125I及び131Iから選択される放射性核種を、本発明の化合物中に導入してよい。1つの態様において、本発明のSPECTトレーサーは、放射性核種123I、125I及び131Iのうちの1つが、ハロゲン、好ましくはヨウ素原子の位置に導入されている、本明細書に開示のハロゲン含有GPR17調節剤の構造に基づいていてよい。
【0098】
したがって、「本発明のSPECTトレーサー」という用語は、本特許出願に記載の化合物であり本明細書で更に定義された本発明の化合物のうちのいずれかによる構造を有する化合物であって、SPECTイメージングに好適な少なくとも1つの放射性同位体が導入されている上記化合物に関する。この化合物としては、99mTc、111In、82Rb、137Cs、123I、125I、131I、67Ga、192Ir又は201Tlがあるが、これらに限定されない。
【0099】
PET用途において使用可能なGPR17調節剤誘導体(本明細書における「PETトレーサー」)の例は、11C、13N、15O、18F、76Br又は124Iが導入されている化合物である。例えば、化合物をPETトレーサーとして使用する目的で、18F同位体を本発明の化合物中に導入してよい。1つの態様において、PETトレーサーは、それぞれ対応する放射性核種18Fがフッ素原子の位置に導入されている、本明細書に開示のフッ素含有GPR17調節剤の構造に基づいていてよい。このことは、「非標識」炭素、窒素、酸素、臭素又はヨウ素原子の代わりにそれぞれ、少なくとも1つの11C、13N、15O、76Br又は124Iを導入することにも同様に適用される。(例えば、Pimlott and Sutherland、Chem Soc Rev 2011、40、149;van der Born et al、Chem Soc Rev 2017、46、4709を参照のこと)。
したがって、「本発明のPETトレーサー」という用語は、本明細書で更に定義された本発明の化合物であって、PETイメージングに好適な少なくとも1つの放射性同位体が導入されている上記化合物に関する。この化合物としては、11C、13N、15O、18F、76Br又は124Iがあるが、これらに限定されない。
【0100】
本発明は、本発明の化合物のプロドラッグをその範囲内に包含する。一般的に、そのようなプロドラッグは、例えば消化管又は血液中の内因性酵素によって本明細書に記載の望ましいGPR17調節化合物にin vivoで容易に変換可能な、本明細書に記載の化合物の機能性誘導体であろう。好適なプロドラッグ誘導体を選択及び調製するための従来の手順は、例えば、「プロドラッグのデザイン(Design of Prodrugs)」、ed.H. Bundgaard、Elsevier、1985に記載されている。
【0101】
本発明の化合物は、その置換パターンによるが、1つ又は2つ以上の光学的立体中心(optical stereocenter)を有することも有さないこともあり、異なるエナンチオマー又はジアステレオマーとして存在することもしないこともある。そのようなあらゆるエナンチオマー、ジアステレオマー又は他の光学異性体も、本発明の範囲に包含される。
本発明の化合物は、さまざまな結晶形態で、すなわち多形として存在することもでき、これらは全て、本発明に包含される。
【0102】
本発明の化合物は、医薬組成物中に包含されてよく、この医薬組成物は、薬学的に許容される担体も包含してよい。「薬学的に許容される担体」は、希釈剤、アジュバント、賦形剤若しくは担体、又は、本発明の化合物と共に投与され、薬学的に許容されるものであることを当業者には理解されるであろうその他の成分を指す。
本発明の化合物は、本明細書に記載の通り、動物における、特にヒトにおける一定の疾患又は障害の予防及び/又は処置において有用である。
【0103】
「予防(preventing又はprevention)」は、疾患又は障害に罹るリスクが低下すること(すなわち、その疾患に対して無防備である又は罹患しやすい素因を有する可能性があるものの、疾患の症状をまだ呈していない又は示していない対象、特にヒト対象において、疾患の臨床症状のうちの少なくとも1つを発症させないようにすること)を指す。
【0104】
任意の疾患又は障害の「処置(treating又はtreatment)」は、1つの態様においては、その疾患又は障害を改善すること(すなわち、疾患の発症を抑止する若しくは低減させるか、又は疾患の臨床症状のうちの1つを少なくとも低減させること)を包含する。別の態様においては、「処置(treating又はtreatment)」は、対象、特にヒト対象によって認識可能な場合もそうでない場合もあり得るが、処置されるべき疾患又は障害に基づく又はそれと関連する少なくとも1つの身体的パラメーターを改善することを指す。また別の態様においては、「処置(treating又はtreatment)」は、身体的に(例えば、認識可能な又は認識不可能な症状の安定化)若しくは生理学的に(例えば、生理学的パラメーターの安定化)又はその両方で、疾患又は障害を調節又は緩和することを指す。また別の態様において「処置(treating又はtreatment)」は、疾患又は障害の発病又は進行を遅延させることを指す。したがって、「処置(treating又はtreatment)」は、基礎疾患又は障害のあらゆる原因処置(すなわち疾患修飾)、並びに、疾患又は障害の徴候及び症状のあらゆる処置(疾患修飾を伴うか否かを問わない)、並びに、疾患若しくは障害又はその徴候及び症状のあらゆる緩和又は向上を包含する。
【0105】
疾患又は障害の「診断(diagnosis、diagnoses又はdiagnosing)」は、1つの態様においては、前記疾患と関連する徴候及び症状の同定及び測定を包含する。「診断(diagnosis、diagnoses又はdiagnosing)」としては、健常対象と比較した、GPR17関連の疾患又は障害の指標としてのGPR17受容体の減少、増加、又は、それ以外の形での誤った(例えば、時間若しくは場所に関して)発現、活性若しくは分布の検出及び/又は測定があるが、これらに限定されない。一例では、GPR17リガンドは、髄鞘形成疾患の診断を含め、そのような診断用のPET又はSPECTトレーサーの形態で使用してよい。
「疾患(単数又は複数)」及び「障害(単数又は複数)」という用語は、本明細書においてほぼ互換的に使用する。
「モニタリング」は、疾患、病態、又は少なくとも1つの医学的パラメーターを、一定の時間にわたって観察することを指す。「モニタリング」は、「コンパニオン薬」の補助がある場合の処置薬の効果の観察も包含する。
【0106】
本明細書において使用する「コンパニオン診断薬」は、特定の患者への処置薬の適用可能性(例えば、安全性及び有効性に関して)を決定することを目的として前記処置薬と組み合わせて使用できる化合物を指す。「コンパニオン診断薬」の用途は、診断及びモニタリングのステップを包含し得る。
「動物(単数又は複数)」及び「対象(単数又は複数)」という用語は、ヒトを包含する。「ヒト」、「患者」、及び「ヒト対象」という用語は、明確な指示がない限り、本明細書において典型的には互換的に使用する。
本発明は、本明細書においてより詳細に記載する通り、動物疾患又は障害、特にヒト疾患又は障害を処置する方法であって、本発明の化合物を処置有効量で投与することを包含する上記方法にも関する。
【0107】
「処置有効量」は、疾患を処置するために対象、特にヒト対象に投与したときに、疾患に対して当該処置をもたらすのに十分な、化合物の量を意味する。「処置有効量」は、化合物、疾患及びその重症度、並びに、処置される対象、特にヒト対象の病態、年齢、体重、性別等によって変化させることができる。
本明細書において使用する「多発性硬化症」という用語は、2018年米国版のICD-10-CM診断コードのG35項に分類されている疾患を指す。
【0108】
本明細書において使用する「GPR17調節剤」という用語は、GPR17受容体の活性を調節する能力がある化合物、特に、GPR17活性を低下させる能力がある化合物を記載することを意図したものである。このような「GPR17の負の調節剤」としては、GPR17作動薬の効果をブロックする能力があるGPR17拮抗薬、並びに、構成的に活性なGPR17受容体又は受容体バリアントを阻害する能力もあるGPR17逆作動薬がある。本発明の好ましいGPR17調節剤は、GPR17逆作動薬である。
【0109】
使用する「フルオロメチル」という用語は、メチル基であって、フッ素原子1つで(「モノフルオロメチル」)、2つで(「ジフルオロメチル」)又は3つで(「トリフルオロメチル」)置換されているものを指す。特に好ましいフルオロアルキル基は、ジフルオロメチル:-CHFである。
使用する「フルオロメトキシ」という用語は、メトキシ基であって、フッ素原子1つで(「モノフルオロメトキシ」)、2つで(「ジフルオロメトキシ」)又は3つで(「トリフルオロメトキシ」)置換されているものを指す。フルオロアルコキシ基の例は、トリフルオロメトキシ-OCHFである。
【0110】
本明細書において使用する「シクロプロピル」という用語は、3つの環形成炭素原子を有する環状飽和炭化水素から誘導された一価基を指し、この基は、置換されていなくてもよく、又は、本明細書において更に示す通りの1つ又は2つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0111】
実験の部:
A.化学
本発明の化合物及びその合成経路を、以下で更に詳細に記載する。
【0112】
A-I 化合物を作製する一般的な方法
本発明による式Iの化合物は、合成有機化学の当業者により理解される通りの従来の方法と同様にして調製することができる。
A-I 化合物を作製する一般的な方法
本発明による式Iの化合物は、合成有機化学の当業者により理解される通りの従来の方法と同様にして調製することができる。
本明細書における一般式Iの化合物の合成についてのあらゆる言及は、下位一般式(subgeneric Formula)Ia、Ib、Ic、IIa、IIb、IIc、IIIa、IIIb、IIIc、IVa、IVb及びIVcの応用化合物(applicable compound)、並びに、本明細書において開示する具体的な例示化合物にも同様に適用される。
【0113】
1つの態様によれば、いくつかの一般式Iの化合物は、次式に従って式XIIのスルホニルクロリドと式Xのアニリンとの反応を行うことにより調製してよい。
【化8】
【0114】
この反応は、溶媒として使用するピリジン等の塩基の存在下、室温で、又は60~100℃の範囲の温度で加熱することにより行ってよく、場合により、触媒量のジメチルアミノピリジンの存在下で行う。
代替的には、いくつかの一般式Iの化合物は、次式に従って式I-Pの化合物[式中、Pは、フェニルスルホニル(PhSO)等の保護基である]のin situ脱保護を行うことにより調製してよい。
【化9】

式I-Pの化合物は、式XII-Pのスルホニルクロリドと式Xのアニリンとの反応を行うことにより調製してよい。この反応は、溶媒として使用するピリジン等の塩基の存在下、室温で、又は60~100℃の範囲の温度で加熱することにより行ってよい。
いくつかの式Xの化合物は、純粋なトリフルオロ酢酸等の酸性条件を使用するか、又は、ジクロロメタン等の溶媒を用いて、式X-Pの化合物[式中、Pは、p-メトキシベンジル(PMB)等の保護基である]の脱保護を行うことにより調製してよい。その他の脱保護条件としては、触媒の存在下、例えば、パラジウム又は水酸化パラジウムを場合によりメタノール等の溶媒中の炭素上で活性化させた触媒の存在下で、水素等の還元剤を使用してもよい。
【化10】
【0115】
いくつかの式X-Pの化合物は、DMF又はACN等の極性溶媒中のKCO又はKOH等の塩基の存在下、式X-OHのアニリンと式Y-LGの分子(式中、LGは、臭素等の脱離基である)との反応を行うことにより調製してよい。
【化11】
【0116】
代替的には、いくつかの式X-Pの化合物は、活性化剤、又は、トルエン若しくはTHF等の溶媒中のシアノメチレントリブチルホスホラン(CMBP)若しくはトリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)等の混合物の存在下、60℃~120℃の範囲の温度での加熱下において式X-OHのアニリンと式Y-OHの分子との光延型反応を行うことにより調製してよい。
【化12】

式X-OHのアニリンは、当業者に公知の任意の方法に従って、又は、文献に記載されている手順を使用して、調製してよい。
【0117】
式XIIの化合物は、次式に従って式XIの化合物のクロロスルホニル化を行うことにより調製してよい。
【化13】

この反応は、室温で、アセトニトリル等の極性溶媒中、クロロスルホン酸等のスルホニル化剤の存在下で行ってよい。
【0118】
同様に、式XII-Pの化合物(式中、Pは、フェニルスルホニル等の保護基である)は、次式に従って式XI-Pの化合物のクロロスルホニル化を行うことにより調製してよい。
【化14】

この反応は、室温で、アセトニトリル等の極性溶媒中、クロロスルホン酸の存在下で行ってよい。
【0119】
式XI-Pの化合物(式中、Pは、フェニルスルホニル等の保護基である)は、次式に従って式XIの化合物の保護を行うことにより調製してよい。
【化15】

この反応は、当業者に公知の任意の方法に従って行ってよい。
式XIの化合物は、当業者に周知の適切な方法により調製してよい。
代替的には、いくつかの式XIの化合物は、次式に従って、オルト置換ニトロアレーンXIIとビニルグリニャール試薬XIIIとの反応(Bartoliインドール合成)を行うことにより調製してよい。
【化16】

この反応は、-20℃~-78℃の範囲の低温で、テトラヒドロフラン等の極性溶媒中、ビニルマグネシウムブロミド等のビニルグリニャール試薬を使用して行ってよい。
【0120】
代替的には、一般式Iを有する化合物のいくつかは、文献に記載されている又は当業者に公知の手順を使用して、既に構築された一般式Iを有する化合物の類似体に対し官能基変換を行うことにより調製してよい。
【0121】
特に、R7がシクロプロピル基である式Iの化合物のいくつかは、当業者に公知の方法に従って、トルエン等の溶媒中、対応するボロン酸、酢酸パラジウム等のパラジウム塩、トリシクロヘキシルホスフィン等のホスフィン、及びリン酸三カリウム等の塩基の存在下で、R7がハロゲン原子、優先的には臭素である式Iの化合物から出発する鈴木型カップリングを行うことにより調製してよい。
【0122】
A-II.略語/繰り返し出現する試薬
Ac:アセチル
ACN:アセトニトリル
ブライン:飽和塩化ナトリウム水溶液
nBu:n-ブチル
tBu:tert-ブチル
CMBP:シアノメチレントリブチルホスホラン
Cy:シクロヘキシル
DAST:フッ化ジエチルアミノ硫黄
DCM:ジクロロメタン
DIAD:ジイソプロピルアゾジカルボキシラート
DMAC:N,N-ジメチルアセトアミド
DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
dppf:1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン
ES:エレクトロスプレー陽イオン化
ES:エレクトロスプレー陰イオン化
ESI:エレクトロスプレーイオン化
EtOAc:酢酸エチル
h:時間(hour)
LC:液体クロマトグラフィー
LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析
Me:メチル
MeOH:メタノール
min.:分
mw:マイクロ波オーブン
NBS:N-ブロモスクシンイミド
NMR:核磁気共鳴
Pin:ピナコラト
PMB:パラ-メトキシベンジル
rt:室温
TBAHSA:硫酸水素テトラブチルアンモニウム
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
TLC:薄層クロマトグラフィー
【0123】
A-III.分析方法
市販の溶媒及び試薬は、適切な場合は無水溶媒を含め、更に精製することなく一般に使用した(一般に、Aldrich Chemical Company製のSure-Seal(商標)製品、又は、ACROS Organics製のAcroSeal(商標))。一般に、反応に続いて、薄層クロマトグラフィー又は液体クロマトグラフィー質量分析を行った。LCMSモードにおける質量分析測定は、以下の通り異なる方法及び機器を使用して行う。
【0124】
- 塩基性LCMS方法1:
QDA Waters単一四重極質量分析計をLCMS分析に使用する。この分析計は、ESI源、及び、ダイオードアレイ検出器(200~400nm)付きのUPLC Acquity Hクラスを備える。データは、塩基性溶出での陽/陰イオンモードにおいてm/z70~800のフルMSスキャンで取得する。逆相分離は、塩基性溶出用のWaters Acquity UPLC BEH C18 1.7μm(2.1×50mm)カラムを用いて45℃で行う。勾配溶出は、表1に従って、水/ACN/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)(溶媒A)、及び、ACN/水/ギ酸アンモニウム(95/5/63mg/L)(溶媒B)で行う。
注入量:1μL。MSにおける全開流量。
【表1】
【0125】
- 塩基性LCMS方法2:
質量分析(MS)スペクトルは、Xbridge C18 - 2.1×30mm、2.5μm(Waters)カラムを使用して、HPLCモジュラーのProminence(Shimadzu)に連結した、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を用いるLCMS-2010EV質量分析計(Shimadzu)で記録した。およそ1mg/mLの濃度の試料溶液を3μLの量で注入した。塩基性条件のための移動相は、A)水中の5mMギ酸アンモニウム+0.1%アンモニアとB)アセトニトリル中の5%移動相A+0.1%アンモニアとの混合物とした。使用した勾配は次の通りであった - 4分間で5:95(B/A)から95:5(B/A)へ、次の1分間は95:5(B/A)を保持。
【0126】
- 中性LCMS方法3:
質量分析(MS)スペクトルは、以下の手順を使用してLCMS機器(Applied Biosystems API 2000 LC/MS/MS、HPLC Agilent 1100)で記録した:化合物をACN(溶媒A)又は水(2mM酢酸アンモニウムを含有する):MeOH 90:10(溶媒B)に1.0mg mL-1の濃度で溶解し、必要であれば完全に溶解するまで超音波処理する。次いで、この溶液10μLをPhenomenex Luna C18 HPLCカラム(50×2.00mm、粒径3μm)に注入し、溶出は、水:ACN(勾配A)又は水:MeOH(勾配B)を10分で90:10から0:100にする勾配を用いて行った。勾配は1分後に開始し、続いて300μL分-1の流速で10分間、純粋な有機溶媒中での溶出を行った。UV吸収は、ダイオードアレイ検出器(DAD)を使用して220~400nmで検出した。
【0127】
- 酸性LCMS方法4:
HPLC-MSは、Agilent1200-6120 LC-MSシステムをUV Detection(230~400nm及び215nm)及びMass Spec Detection Agilent6120 Mass Spectrometer(ES)m/z120~800に連結させたものを用い、X-Bridge C-18 Waters 2.1×20mm、2.5μMカラムを使用して行った。溶出は、表2に示す勾配の移動相A(水中の10mMギ酸アンモニウム+0.1%ギ酸)及び移動相B(アセトニトリル+5%水+0.1%ギ酸)を用い、流速1mL/分で行った。
【表2】
【0128】
粗物質は順相クロマトグラフィー(酸性若しくは塩基性)、逆相クロマトグラフィー又は再結晶により精製することができた。
【0129】
順相クロマトグラフィーは、シリカゲルカラム(Biotage(登録商標)製のIsolera(商標)Four、又はTeledyne Isco CombiFlash(登録商標)等のフラッシュクロマトグラフィーシステム用の100:200メッシュのシリカゲル又はカートリッジ)を使用して行った。
分取逆相クロマトグラフィーは、2つの異なる機器を用い、以下の通りの方法に従って行った。
【0130】
- 塩基性分取LCMS方法1:
LCMS精製は、MS検出のためのSQD又はQM Watersシングル四重極質量分析計を使用する。この分析計は、ESI源と、2767sample Manager及びダイオードアレイ検出器(210~400nm)と連結されたWaters 2525バイナリーポンプとを備える。
MSパラメーター:ESIキャピラリー電圧3kV。コーン及び引出し電圧10。イオン源ブロック温度120℃。脱溶媒温度300℃。コーンガス流量30L/h(窒素)、脱溶媒ガス流量650L/h。データは、陽/陰イオンモードにおいてm/z100~850のフルMSスキャンで取得する。
【0131】
LCパラメーター:逆相分離は、XBridge分取OBD C18カラム(5μm、30×50mm)を用い、室温で行う。勾配溶出は、溶媒A1(HO+NHHCO 10mM+50μl/L NHOH)、及び溶媒B1(100% ACN)(pH約8.5)で行う。HPLC流速:35ml/分~45ml/分、注入量:990μl。分割比は、MSに+/-1/6000でセットする(表3)。
【表3】
【0132】
- 中性RP-HPLC方法2:
最終生成物のHPLC精製は、RP-HPLCカラム(Knauer 20mm i.d.、Eurospher-100 C18)を使用して、Knauer Smartline1050 HPLCシステムで行った。生成物をメタノールに溶解し(8mL当たり20mg)、メタノール/水の勾配(24分間かけて70:30から100:0へ)を適用する逆相HPLCに付した。
【0133】
NMRスペクトルは、異なる機器で記録した:
- Topspin3.2ソフトウェアを実行するWindows(登録商標)7 Professionalワークステーション及び5mm Double Resonance Broadband Probe(PABBI 1H/19F-BB Z-GRD Z82021/0075)又は1mm Triple Resonance Probe(PATXI 1H/D-13C/15N Z-GRD Z868301/004)を取り付けたBRUKER AVANCEIII 400MHz-Ultrashield NMR分光計。
- 取得時間(at)=2.0秒、緩和遅延(d1)=2.0秒及び線幅拡大(lb)=0.5HzのVarian 400MHz NMR分光計。
- Bruker Avance DRX 500MHz NMR分光計
- Bruker Avance III 600MHz NMR分光計
【0134】
化学シフトは、重水素化溶媒(DMSO-d、ベンゼン-d又はCDCl)の残留プロトンに由来するシグナルを基準とする。化学シフトは百万分率(ppm)で、結合定数(J)はヘルツ(Hz)で示す。スピン多重度は、幅広線(br)、一重線(s)、二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)及び多重線(m)として示す。
生成物は、一般には、真空下で乾燥させた後、最終分析を行い、生物学的試験に付した。
【0135】
A-IV:例示化合物及び合成
以下の化合物の名称は、式X、XI、XIIの中間体についてはBiovia Draw Version16.1により、また、式Iの例示化合物についてはOpenEye oemetachem バージョン1.4.5を使用しPipeline Pilot 2018により生成されたIUPAC名である。
【0136】
中間体
市販されているものの場合、出発物質は、そのCAS登録番号により同定する。
【0137】
A.式Xの中間体の合成
A.1. 3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-1の合成:
【化17】

ステップ-1: 5-クロロ-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1aの合成
DMSO(10mL)中の3-クロロ-2,5,6-トリフルオロピリジン(0.50g、2.98mmol)の溶液に、25%NH水溶液(4mL)を添加し、反応混合物をスチールボンベ内で100℃にて12時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をHO(200mL)で希釈し、EtOAc(400mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、5-クロロ-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1a(0.41gの粗製物)を黄色の固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.85 (s, 2H), 7.80-7.85 (m, 1H).
【0138】
ステップ-2: 3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1bの合成
MeOH(100mL)中の5-クロロ-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1a(0.50g、3.03mmol)の溶液に、トリエチルアミン(5mL)及びPd/C(0.40g)を添加し、反応混合物を水素圧下、parrシェーカーで室温にて10時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteに通して濾過し、濾液を真空下で濃縮した。残留物をHO(200mL)で希釈し、DCM(200mL)中10%MeOHで抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1b(0.21gの粗製物)をオフホワイト色の固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 130 (M)+, 純度91%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.09-6.11 (m, 1H) 6.57 (brs, 2H) 7.44-7.50 (m, 1H).
【0139】
ステップ-3: 5-ブロモ-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1cの合成
CHCN(40mL)中の3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1b(0.60g、4.19mmol)の溶液にNBS(0.52g、2.93mmol)を添加し、反応混合物を光の非存在下、室温で30分間撹拌した。CHCN(10mL)中のNBS(0.52g、2.93mmol)溶液を添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をHO(100mL)で希釈し、EtOAc(160mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中5~10%EtOAc)により精製して、5-ブロモ-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1c(0.70g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:79%
塩基性LC-MS方法2 (ES-): 207 (M-H)-, 純度98%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.86 (brs, 2H) 7.82-7.91 (m, 1H).
【0140】
ステップ-4: 5-ブロモ-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-1dの合成
DMAC(40mL)中の5-ブロモ-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-1c(4.00g、19.0mmol)の溶液に、NaH(2.29g、57.1mmol)を0℃で少量ずつ添加し、反応物を同じ温度で30分間撹拌した。パラ-メトキシベンジルクロリド(5.19mL、38.1mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を0℃に冷却し、飽和NHCl(20mL)でクエンチし、HO(60mL)に注ぎ入れ、EtOAc(3×60mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×80mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中4%EtOAc)により精製して、5-ブロモ-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-1d(8.2g、96%)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:96%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.72 (s, 6H) 4.57 (s, 4H) 6.87-6.89 (m, 4H) 7.16-7.18 (m, 4H) 7.99 -8.07 (m, 1H).
【0141】
ステップ-5: 3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-1eの合成:
ジオキサン(160mL)中の5-ブロモ-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-1d(4.00g、8.90mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(4.52g、17.8mmol)及びKOAc(3.06g、31.2mmol)を室温で添加し、反応混合物をアルゴンで20分間パージし、続いてPdCl(dppf)(0.65g、0.89mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンで10分間パージし、100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を冷却し、celiteパッドに通して濾過し、EtOAc(2×80mL)で洗浄した。濾液を真空下で濃縮し、残留物をHO(100mL)で希釈し、EtOAc(2×80mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中8%EtOAc)により精製して、3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-1e(2.60g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:59%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.26 (s, 12H) 3.73 (s, 6H) 4.64 (s, 4H) 6.89 (d, J=8.31 Hz, 4H) 7.17 (d, J=8.80 Hz, 4H) 7.51-7.56 (m, 1H).
【0142】
ステップ-6: 6-[ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]アミノ]-2,5-ジフルオロピリジン-3-オール X-1fの合成:
THF(30mL)中の3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-1e(2.50g、5.04mmol)の溶液に、HO(10mL)中の30%H溶液を0℃で添加し、反応混合物を同じ温度で15分間撹拌した。反応混合物を室温で1.5時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。反応混合物を冷HO(250mL)中の5%Na溶液に0℃で注ぎ入れ、HO(100mL)で希釈し、EtOAc(2×100mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、6-[ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]アミノ]-2,5-ジフルオロピリジン-3-オール X-1f(1.74gの粗製物)を黄色の半固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 387 (M+H)+, 純度93%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.71 (s, 6H) 4.32 (s, 4H) 6.86 (d, J=8.80 Hz, 4H) 7.14 (d, J=8.31 Hz, 4H) 7.22-7.27 (m, 1H) 9.84 (s, 1H).
【0143】
ステップ-7: 3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-1gの合成:
DMF(13mL)中の6-[ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]アミノ]-2,5-ジフルオロピリジン-3-オール X-1f(0.70g、1.68mmol)の溶液に、KCO(0.70g、5.04mmol)及び1-ブロモ-2-フルオロエタン(0.43g、3.36mmol)を室温で添加した。反応混合物をマイクロ波で80℃にて15分間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、HO(30mL)に注ぎ入れ、EtOAc(3×25mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中25%EtOAc)により精製して、3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-1g(0.52g)を褐色の液体として得た。
収率:71%。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 433 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.72 (s, 6H) 4.21-4.25 (m, 1H) 4.29-4.32 (m, 1H) 4.42 (s, 4H) 4.63 - 4.66 (m, 1H) 4.75-4.78 (m, 1H) 6.87 (d, J=8.86 Hz, 4H) 7.15 (d, J=8.37 Hz, 4H) 7.69-7.76 (m, 1H).
【0144】
ステップ-5: 3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-1の合成:
3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-1g(0.50g、1.15mmol)に、TFA(5mL)を0℃で添加し、反応混合物を同じ温度で30分間撹拌した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物をHO(25mL)で希釈し、NaHCO水溶液(10mL)で塩基性化し、EtOAc(2×25mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×40mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物を、EtO(10mL)で摩砕することにより精製し、真空下で乾燥させて、3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-1(0.258g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:80%。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 193 (M+H)+, 純度69%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.13-4.17 (m, 1H) 4.20-4.25 (m, 1H) 4.59-4.64 (m, 1H) 4.71-4.76 (m, 1 H) 6.10 (s, 2H) 7.57-7.62 (m, 1H).
【0145】
A.2. 3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-2の合成:
【化18】

ステップ-1: 5-ブロモ-3-フルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-2aの合成:
DMAC(30mL)中の5-ブロモ-3-フルオロピリジン-2-アミン(2.00g、10.5mmol)の溶液に、NaH(1.26g、31.4mmol)を0℃で一度に添加し、反応混合物を同じ温度で30分間撹拌した。p-メトキシベンジルクロリド(2.85mL、20.9mmol)を0℃で添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を0℃で冷却し、飽和NHCl溶液(200mL)でクエンチし、氷HO(400mL)に注ぎ入れ、EtOAc(2×300mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中3%EtOAc)により精製して、5-ブロモ-3-フルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-2a(4.10g)を淡黄色の半固体として得た。
収率:87%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 431 (M+H)+, 純度95%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.72 (s, 6H), 4.57 (s, 4H), 6.87 (d, J=8.31 Hz, 4H), 7.15 (d, J=8.80 Hz, 4H), 7.81 (dd, J=12.96, 1.71 Hz, 1H), 8.06 (s, 1H).
【0146】
ステップ-2: 3-フルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-2bの合成:
ジオキサン(60mL)中の5-ブロモ-3-フルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-2a(2.00g、4.43mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(2.25g、8.86mmol)及びKOAc(1.52g、15.5mmol)を室温で添加し、反応混合物をアルゴンで20分間パージし、続いてPdCl(dppf)(0.32g、0.44mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンで10分間パージし、100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、celiteパッドに通して濾過し、EtOAc(2×300mL)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中5~10%EtOAc)により精製した。得られた生成物をペンタン(10mL)中で撹拌し、デカントし、真空下で乾燥させて、3-フルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-2b(1.31g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:56%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 479 (M+H)+, 純度90%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.27 (s, 12H), 3.72 (s, 6H), 4.65 (s, 4H), 6.87 (d, J=8.80 Hz, 4H), 7.15 (d, J=8.31Hz, 4H), 7.44 (d, J=15.16 Hz, 1H), 8.15 (s, 1H).
【0147】
ステップ-3: 6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-フルオロピリジン-3-オール X-2cの合成:
THF(20mL)中のX-2b(1.31g、2.46mmol)の溶液に、HO(7mL)中の30%H溶液を0℃で添加し、反応混合物を同じ温度で15分間撹拌した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。反応混合物をHO(350mL)中の冷5%Na溶液に0℃で注ぎ入れ、HO(100mL)で希釈し、EtO(2×200mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下(低温)で濃縮して、6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-フルオロピリジン-3-オール X-2c(0.90gの粗製物)を淡黄色の半固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 369 (M+H)+, 純度94%.
【0148】
ステップ-4: 3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-2dの合成:
DMF(10mL)中の6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-フルオロピリジン-3-オール X-2c(1.70g、4.43mmol)の溶液に、KCO(0.77g、5.56mmol)及び1-ブロモ-2-フルオロエタン(0.67g、5.31mmol)を室温で添加した。反応混合物をマイクロ波で70℃にて終夜加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、HO(100mL)に注ぎ入れ、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機層を分離し、氷冷水(2×25mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中5~8%EtOAc)により精製して、3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-2d(0.80g)を褐色の液体として得た。
収率:43%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 415 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.71 (s, 6 H), 4.14 - 4.22 (m, 1 H), 4.25 - 4.29 (m, 1 H), 4.40 (s, 4 H), 4.63 - 4.68 (m, 1 H), 4.74 - 4.80 (m, 1 H), 6.85 (d, J=8.80 Hz, 4 H), 7.14 (d, J=8.31 Hz, 4 H), 7.39 (dd, J=14.18, 2.45 Hz, 1 H), 7.78 (d, J=1.96 Hz, 1 H).
【0149】
ステップ-5: 3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-2の合成:
MeOH(3mL)中のX-2d(800mg、1.92mmol)の溶液に、水酸化パラジウム(160mg)を添加し、反応混合物を水素圧下、室温で6時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteに通して濾過し、MeOH(2×25mL)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中10~15%EtOAc)により精製して、3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-2(100mg)を褐色の固体として得た。
収率:29%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 175 (M+H)+, 純度97%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.11 - 4.16 (m, 1 H), 4.19 - 4.23 (m, 1 H), 4.60 - 4.64 (m, 1 H), 4.72 - 4.77 (m, 1 H), 5.72 (s, 2 H), 7.27 (dd, J=12.23, 2.45 Hz, 1 H), 7.59 (d, J=2.45 Hz, 1 H).
【0150】
A.3. 3-フルオロ-5-(2,2-ジフルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-3の合成:
【化19】

ステップ-1: 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-3aの合成:
トルエン(25mL)中の6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-フルオロピリジン-3-オール X-2c(1.40g、3.69mmol)及び2,2-ジフルオロエタノール(0.66g、8.11mmol)の溶液に、(シアノメチレン)トリブチルホスホラン(1.96g、8.11mmol)を室温でゆっくり添加した。反応混合物を100℃で4時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、HO(80mL)に注ぎ入れ、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中10%EtOAc)により精製して、5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-3a(1.22g)を淡黄色の液体として得た。
収率:59%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 433 (M+H)+, 純度77%.
【0151】
ステップ-2: 3-フルオロ-5-(2,2-ジフルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-3の合成:
MeOH(30mL)中のX-3a(1.20g、2.19mmol)の溶液に、炭素担持水酸化パラジウム(500mg)を添加し、反応混合物を水素圧下、室温で6時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteに通して濾過し、MeOH(2×50mL)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮して、3-フルオロ-5-(2,2-ジフルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-3(590mg)を淡黄色の半固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:77%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 193 (M+H)+, 純度55%.
【0152】
A.4. 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-4の合成:
【化20】

ステップ-1: 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-4aの合成
THF(5ml)中の6-[ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]アミノ]-2,5-ジフルオロピリジン-3-オール X-1f(100mg、0.16mmol)、2,2-ジフルオロエタノール(27mg、0.33mmol)及びトリフェニルホスフィン(218mg、0.83mmol)の溶液に、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(168mg、0.829mmol)を室温でゆっくり添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物をHO(20mL)で希釈し、EtOAc(20mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]ピリジン-2-アミン X-4a(20mg)を半固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:27%
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.72 (s, 6 H), 4.44 (s, 4H), 4.79-4.85 (m, 2 H), 6.01- 6.31 (m, 1 H), 6.87 (d, J=8.31 Hz, 4 H), 7.15 (d, J=8.31 Hz, 4 H), 7.76-7.81 (m, 1 H).
【0153】
ステップ-2: 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-4の合成:
MeOH(10mL)中のX-4a(540mg、1.20mmol)の溶液に、炭素担持水酸化パラジウム(54mg)を添加し、反応混合物を水素圧下、室温で1時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteに通して濾過し、MeOH(2×50mL)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮して、5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-4(300mg)を褐色の固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:71%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 211 (M+H)+, 純度60%.
【0154】
A.5. 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-アミン X-5の合成:
【化21】

MeOH(14mL)中の5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-4(0.39g、1.74mmol)の溶液に、NaOMe(0.48g、8.79mmol)を添加し、反応混合物を100℃で30時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物をHO(500mL)で希釈し、EtOAc(600mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-アミン X-5(0.37g)を褐色の固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:67%
塩基性LC-MS方法2 (ES-): 221 (M-H)-, 純度70%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.78 (s, 3H) 4.13 (td, J=14.67, 3.42 Hz, 2H) 5.72 (brs, 2H) 6.13-6.45 (m, 1H) 7.34 (d, J=10.76 Hz, 1H).
【0155】
A.6. 5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-アミン X-6の合成:
【化22】

ステップ-1: 5-ブロモ-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-6aの合成:
DMF(75mL)中の5-ブロモ-3-メトキシピリジン-2-アミン(5.00g、24.6mmol)の溶液に、NaH(2.95g、73.9mmol)を0℃で一度に添加し、反応混合物を同じ温度で30分間撹拌した。p-メトキシベンジルクロリド(6.71mL、49.3mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を0℃で冷却し、冷HO(250mL)及び飽和NHCl溶液(250mL)でクエンチし、EtOAc(2×500mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中25%EtOAc)により精製して、5-ブロモ-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-6a(9.65g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:75%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 443 (M+H)+, 純度85%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.69 (s, 6H) 3.82 (s, 3H) 4.42 (s, 4H) 6.79-6.85 (m, 4H) 7.11 (d, J=8.31Hz, 4H) 7.39 (d, J=1.96 Hz, 1H) 7.76 (d, J=1.96 Hz, 1H).
【0156】
ステップ-2: 3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-6bの合成:
ジオキサン(300mL)中の5-ブロモ-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-6a(9.60g、18.3mmol)の溶液に、ビス(ピナコラト)ジボロン(9.31g、36.7mmol)及びKOAc(6.30g、64.1mmol)を室温で添加し、反応混合物をアルゴンで20分間パージし、続いてPdCl(dppf)(1.34g、1.83mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンで10分間パージし、100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、celiteパッドに通して濾過し、EtOAc(2×300mL)で洗浄し、濾液を真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中5~10%EtOAc)により精製した。得られた生成物をペンタン(50mL)と共に撹拌し、デカントし、真空下で乾燥させて、3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-6b(5.10g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:47%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 491 (M+H)+, 純度83%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 1.26 (s, 12H) 3.69 (s, 6H) 3.77 (s, 3H) 4.55 (s, 4H) 6.82 (d, J=8.80 Hz, 4H) 7.11 (d, J=8.31 Hz, 4H) 7.21 (s, 1H) 7.94 (s, 1H).
【0157】
ステップ-3: 6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-メトキシピリジン-3-オール X-6cの合成:
THF(100mL)中の3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン X-6b(5.00g、8.49mmol)の溶液に、HO(40mL)中の30%H溶液を0℃でゆっくり添加した。15分後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をHO(600mL)中の冷6%Na溶液に0℃で注ぎ入れ、HO(500mL)で希釈し、EtO(2×400mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で(20~25℃の低温にて)濃縮した。残留物をペンタン(15mL)で洗浄して、6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-メトキシピリジン-3-オール X-6c(3.50gの粗製物)を淡黄色の固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 381 (M+H)+, 純度84%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.69 (s, 6H) 3.81 (s, 3H) 4.18 (s, 4H) 6.77 (d, J=2.45 Hz, 1H) 6.80 (d, J=8.31 Hz, 4H) 7.12 (d, J=8.80 Hz, 4H) 7.28 (d, J=2.45 Hz, 1H) 9.21 (s, 1H).
【0158】
ステップ-4: 5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-6dの合成:
CHCN(60mL)中の6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-メトキシピリジン-3-オール X-6c(3.30g、7.31mmol)の溶液に、HO(20mL)中のKOH(2.26g、40.2mmol)溶液を0℃で滴下添加し、続いて、ブロモジフルオロメチルジエチルホスホナート(10.7g、40.2mmol)を0℃で添加した。15分後、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をHO(200mL)でクエンチし、EtOAc(2×250mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中5%EtOAc)により精製して、5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-6d(3.21g)を淡黄色の半固体として得た。
収率:92%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 431 (M+H)+, 純度90%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.70 (s, 6H) 3.85 (s, 3H) 4.39 (s, 4H) 6.83 (d, J=8.80 Hz, 4H) 7.11-7.16 (m, 4H) 7.14 (t, J=74 Hz, 1H) 7.19 (d, J=2.45 Hz, 1H) 7.62 (d, J=1.96 Hz, 1H).
【0159】
ステップ-5: 5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-アミン X-6の合成:
5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-6d(2.50g、5.26mmol)に、TFA(15mL)を0℃で添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物をHO(400mL)及びNaHCO飽和溶液(250mL)で希釈し、EtOAc(2×300mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中40%EtOAc)により精製して、5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-アミン X-6(0.52g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:52%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 191 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.79 (s, 3H) 5.77 (s, 2H) 6.98 (d, J=1.96 Hz, 1H) 7.01 (t, J= 74 Hz, 1H) 7.42 (d, J=1.96 Hz, 1H).
【0160】
A.7. 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシピリジン-2-アミン X-7の合成:
【化23】

ステップ-1: 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-7aの合成:
トルエン(30mL)中の6-(ビス(4-メトキシベンジル)アミノ)-5-メトキシピリジン-3-オール X-6c(2.80g、7.01mmol)及び2,2-ジフルオロエタノール(0.89mL、14.0mmol)の溶液に、シアノメチレントリブチルホスホラン(3.67mL、14.0mmol)を室温でゆっくり添加し、反応混合物を100℃で2時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をHO(30mL)で希釈し、EtOAc(3×40mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中30%EtOAc)により精製して、5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-7a(2.10g)を淡黄色の油状物として得た。
収率:67%。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 445 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.68 (s, 6H) 3.85 (s, 3H) 4.24-4.34 (m, 6H) 6.19-6.49 (m, 1H) 6.80 (d, J=8.80Hz, 4H) 7.03 (d, J=1.96 Hz, 1H) 7.11 (d, J=8.31 Hz, 4H) 7.48 (d, J=2.45 Hz, 1H).
【0161】
ステップ-2: 5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシピリジン-2-アミン X-7の合成:
DCM(15ml)中の5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-7a(1.70g、3.82mmol)に、TFA(10mL)を0℃で滴下添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物をHO(20mL)、飽和NaHCO(20mL)で希釈し、EtOAc(2×30mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中30%EtOAc)により精製して、5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシピリジン-2-アミン X-7(0.605g)を淡黄色の固体として得た。
収率:74%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 205 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.77 (s, 3H) 4.23 (td, J=14.80, 3.67 Hz, 2H) 5.33 (s, 2H) 6.18-6.50 (m, 1H) 6.88 (d, J=2.45 Hz, 1H) 7.31 (d, J=2.45 Hz, 1H).
【0162】
A.8. 5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-アミン X-8の合成:
【化24】

ステップ-1: 5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-8aの合成:
DMF(10mL)中の6-[ビス[(4-メトキシフェニル)メチル]アミノ]-2,5-ジフルオロピリジン-3-オール X-1f(0.80g、1.52mmol)の溶液に、KCO(0.63g、4.56mmol)及び1-ブロモ-2-(ジフルオロメトキシ)エタン(0.29g、1.67mmol)を室温で添加した。反応混合物をマイクロ波で85℃にて1.2時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を室温に冷却し、HO(60mL)に注ぎ入れ、EtOAc(3×40mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。反応を0.70g及び2×0.80gで繰り返し、4回の反応から得られた粗製物をDCM(200mL)中に集め、カラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中8%EtOAc)により精製して、5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-8a(1.31g)を褐色の液体として得た。
収率:34%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 481 (M+H)+, 純度99%.
【0163】
ステップ-2: 5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-8bの合成:
MeOH(25mL)中の5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3,6-ジフルオロ-N,N-ビス(4-メトキシベンジル)ピリジン-2-アミン X-8a(1.30g、2.36mmol)の溶液に、20%Pd/C(0.13g)を室温で添加し、反応混合物を水素圧下、室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteパッドに通して濾過し、MeOH(2×30mL)で洗浄した。濾液を真空下で濃縮した。得られた粗製物をペンタン(2×20mL)で洗浄することにより精製して、5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-8b(0.525g)を淡褐色の固体として得た。
収率:92%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 241 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.03-4.07 (m, 2H) 4.08-4.10 (m, 2H) 6.07 (s, 2H) 6.68 (t, J=76 Hz 1H) 7.53-7.57 (m, 1H).
【0164】
ステップ-3: 5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-アミン X-8の合成
MeOH(15mL)中の5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-8b(0.70g、2.91mmol)の溶液に、NaOMe(MeOH中25%、1.57mL、7.29mmol)を0℃で添加し、反応混合物を70℃で24時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物をHO(20mL)で希釈し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をcombi-flashクロマトグラフィー(ヘキサン中10%EtOAc)により精製して、5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-アミン X-8(0.45g)を淡黄色の固体として得た。
収率:59%
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 253 (M+H)+, 純度94%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.77 (s, 3H) 4.03-4.06 (m, 4H) 5.61 (s, 2H) 6.72 (t, J=76 Hz, 1H) 7.26 (d, J=11.25 Hz, 1H).
【0165】
B.式XIの中間体の合成
B.1. 6,7-ジクロロ-1H-インドール XI-1の合成:
【化25】

THF(60mL)中の1,2-ジクロロ-3-ニトロベンゼン(4.00g、20.8mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミド(1M、83.3mL、83.3mmol)を-78℃で添加し、反応混合物を同じ温度で3時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を飽和NHCl(80mL)でクエンチし、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中2%EtOAc)により精製して、6,7-ジクロロ-1H-インドール XI-1(1.50g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:37%。
塩基性LCMS方法2 (ES+): 186 (M+H)+, 純度95%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.56-6.57 (m, 1H), 7.30 (d, J=8.4 Hz, 1H), 7.43 (t, J=2.4 Hz, 1H), 7.48 (d, J=8.4 Hz, 1H), 11.62 (brs, 1H).
【0166】
B.2. 6-クロロ-7-シクロプロポキシ-1H-インドール XI-2の合成:
【化26】

ステップ-1: 1-クロロ-2-シクロプロポキシ-3-ニトロベンゼン XI-2aの合成:
THF(30mL)中のNaH(0.91g、22.8mmol)の撹拌懸濁液に、シクロプロパノール(1.08mL、17.1mmol)を不活性雰囲気中、0℃で添加し、反応混合物を同じ温度で30分間撹拌した。THF(10mL)中の1-クロロ-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン(2.00g、11.4mmol)の溶液を0℃で滴下添加し、反応混合物を75℃で3時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を室温で冷却し、砕氷に注ぎ入れ、EtOAc(2×80mL)で抽出した。有機層を分離し、HO(60mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中10%EtOAc)により精製して、1-クロロ-2-シクロプロポキシ-3-ニトロベンゼン XI-2a(1.20g)を淡黄色の油状物として得た。
収率:49%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.60-0.66 (m, 2H), 0.72-0.77 (m, 2H), 4.28-4.33 (m, 1H), 7.35-7.39 (m, 1H), 7.85-7.92 (m, 2H).
【0167】
ステップ-2: 6-クロロ-7-シクロプロポキシ-1H-インドール XI-2の合成:
THF(22mL)中の1-クロロ-2-シクロプロポキシ-3-ニトロベンゼン XI-2a(1.15g、5.38mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミド(1M、21.5mL、21.5mmol)を-78℃で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で2時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を飽和NHCl(70mL)でクエンチし、EtOAc(3×40mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。反応を0.92gで繰り返し、2回の反応から得られた粗製物を集め、カラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中10%EtOAc)により精製して、6-クロロ-7-シクロプロポキシ-1H-インドール XI-2(0.69g)を淡黄色の液体として得た。
収率:41%。
塩基性LCMS方法2 (ES+): 208 (M+H)+, 純度91%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.52-0.61 (m, 2H), 0.87-0.95 (m, 2H), 4.39-4.43 (m, 1H), 6.46-6.49 (m, 1H), 6.99 (d, J=8.31 Hz, 1H), 7.30 (d, J=8.31 Hz, 1H), 7.34-7.37 (m, 1H), 11.35 (brs, 1H).
【0168】
B.3. 6-クロロ-7-(ジフルオロメチル)-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-3の合成:
【化27】

ステップ-1: 7-ブロモ-6-クロロ-1H-インドール XI-3aの合成
THF(90mL)中の2-ブロモ-1-クロロ-3-ニトロベンゼン(4.50g、19.0mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミド(9.99g、76.1mmol)を-78℃で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。反応を4.5gスケールで繰り返し、2回の反応の粗混合物を集めた。完了後、反応混合物を飽和NHCl(500mL)でクエンチし、HO(500mL)で希釈し、EtOAc(1000mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中2%EtOAc)により精製して、7-ブロモ-6-クロロ-1H-インドール XI-3a(3.05g)を黄色の固体として得た。
収率:33%
塩基性LCMS方法2 (ES-): 228 (M-H)-, 純度96%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.59 (d, J=1.96 Hz, 1H) 7.18 (d, J=8.31 Hz, 1H) 7.41-7.45 (m, 1H) 7.57 (d, J=8.31 Hz, 1H) 11.48 (brs, 1H)
【0169】
ステップ-2: 7-ブロモ-6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-3bの合成:
乾燥THF(30mL)中のNaH(2.42g、60.5mmol)の撹拌懸濁液に、7-ブロモ-6-クロロ-1H-インドール XI-3a(7.00g、30.2mmol)を0℃で少量ずつ添加し、反応混合物を20分間撹拌した。THF(10mL)中のフェニルスルホニルクロリド(5.79mL、45.4mmol)の溶液を滴下添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をEtOAc(30mL)で希釈し、飽和NaHCO溶液(25mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた有機粗製物(organic crude)をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中20%EtOAc)により精製して、7-ブロモ-6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-3b(7.50g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:54%
塩基性LCMS方法2 (ES+): 370 (M+H)+, 純度81%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.88 (d, J=3.42 Hz, 1H), 7.44 (d, J=8.80 Hz, 1H), 7.58-7.64 (m, 3H), 7.70-7.75 (m, 1H), 7.87 (d, J=3.42 Hz, 1H), 8.01 (d, J=7.82 Hz, 2H).
【0170】
ステップ-3: 6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-7-ビニル-1H-インドール XI-3cの合成:
DMF(15mL)中の7-ブロモ-6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-3b(4.00g、8.72mmol)の溶液に、トリブチル(ビニル)スタンナン(3.07mL、10.5mmol)、トリフェニルホスフィン(0.11g、0.44mmol)及びLiCl(1.11g、26.2mmol)を添加し、反応混合物をアルゴンで10分間パージした。PdCl(PPh(0.31g、0.44mmol)を添加し、反応混合物を封管内で100℃にて16時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteパッドに通して濾過し、EtOAc(2×40mL)で洗浄した。濾液をブライン(20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中20%EtOAc)により精製して、6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-7-ビニル-1H-インドール XI-3c(2.80g)を淡黄色の固体として得た。
収率:98%
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.88 (d, J=18.10 Hz, 1H), 5.29 (d, J=12.23 Hz, 1H), 6.81-6.89 (m, 1H), 6.93 (d, J=3.91 Hz, 1H), 7.39 (d, J=8.31 Hz, 1H), 7.54-7.63 (m, 3H), 7.70 (d, J=7.34 Hz, 1H), 7.74 (d, J=7.83 Hz, 2H), 7.93 (d, J=3.42 Hz, 1H).
【0171】
ステップ-4: 6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール-7-カルバルデヒド XI-3dの合成:
THF(20mL)及びHO(5mL)中の6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-7-ビニル-1H-インドール XI-3c(2.50g、7.63mmol)の溶液に、OsO(水中0.04M、3.77mL、0.15mmol)を0℃で添加し、反応混合物を30分間撹拌した。NaIO(4.08g、19.1mmol)を0℃で添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteパッドに通して濾過し、EtOAc(2×20mL)で洗浄した。濾液をブライン(20mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中20%EtOAc)により精製して、6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール-7-カルバルデヒド XI-3d(0.60g)を淡黄色の固体として得た。
収率:24%
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.01 (d, J=3.91 Hz, 1H), 7.48 (d, J=8.31 Hz, 1H), 7.56-7.62 (m, 2H), 7.68-7.75 (m, 3H), 7.78 (d, J=8.80 Hz, 1H), 7.93 (d, J=3.91 Hz, 1H), 10.43 (s, 1H).
【0172】
ステップ-5: 6-クロロ-7-(ジフルオロメチル)-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-3の合成:
DCM(15mL)中の6-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール-7-カルバルデヒド XI-3d(0.60g、1.84mmol)の溶液に、フッ化ジエチルアミノ硫黄(1.06mL、7.36mmol)を0℃で添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を氷HO(15mL)に注ぎ入れ、飽和NaHCO溶液(15mL)で塩基性化し、EtOAc(2×20mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(15mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中20%EtOAc)により精製して、6-クロロ-7-(ジフルオロメチル)-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-3(0.55g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:81%
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.67 (d, J=3.91 Hz, 1H), 7.35-7.44 (m, 4H), 7.50-7.55 (m, 1H), 7.58 (d, J=8.31 Hz, 2H), 7.62 (d, J=3.42 Hz, 1H), 7.86 (t, J=52 Hz, 1H).
【0173】
B.4. 6-クロロ-7-フルオロ-1H-インドール XI-4の合成:
【化28】

THF(50mL)中の1-クロロ-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン(2.50g、14.2mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミド(5.61g、42.7mmol)を-78℃で添加し、反応混合物を同じ温度で1時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を飽和NHCl(100mL)でクエンチし、HO(400mL)で希釈し、EtOAc(500mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中5%EtOAc)により精製して、6-クロロ-7-フルオロ-1H-インドール XI-4(0.60g)を赤色の液体として得た。
収率:17%
塩基性LCMS方法2 (ES-): 168 (M-H)-, 純度66%.
【0174】
B.5. 6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-1H-インドール XI-5の合成:
【化29】

ステップ-1: 1-(ジフルオロメチル)-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン XI-5aの合成:
DCM(20mL)中の2-フルオロ-3-ニトロベンズアルデヒド(2.0g、11.8mmol)の溶液に、フッ化ジエチルアミノ硫黄(7.63g、47.3mmol)を0℃で添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を氷冷飽和NaHCO溶液(50mL)に注ぎ入れ、DCM(2×200mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(15mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、1-(ジフルオロメチル)-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン XI-5a(2.23g)を淡褐色の液体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:96%
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.35 (t, J=52 Hz, 1 H), 7.60 (t, J=8.07 Hz, 1 H), 8.05 (t, J=6.85 Hz, 1 H), 8.35 (t, J=7.82 Hz, 1 H).
【0175】
ステップ-2: 6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-1H-インドール XI-5の合成:
THF(20mL)中の1-(ジフルオロメチル)-2-フルオロ-3-ニトロベンゼン XI-5a(2.21g、11.2mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミド(THF中の1M溶液、45mL、45mmol)を0℃で添加し、反応混合物を同じ温度で3時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を飽和NHCl(40mL)で0℃にてクエンチし、EtOAc(2×200mL)で抽出した。有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中10%EtOAc)により精製して、6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-1H-インドール XI-5(0.54g)を褐色の油状物として得た。
収率:25%
塩基性LCMS方法2 (ES-): 184 (M-H)-, 純度95%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.57 - 6.62 (m, 1 H), 7.14-7.17 (m, 1 H), 7.29 (t, J=56 Hz 1 H), 7.48 (d, J=8.19 Hz, 1 H), 7.56 (t, J=2.69 Hz, 1 H), 11.94 (br s, 1 H).
【0176】
B.6. 1-(ベンゼンスルホニル)-7-クロロ-6-(ジフルオロメチル)インドール XI-6の合成:
【化30】

ステップ-1: 6-ブロモ-7-クロロ-1H-インドール XI-6aの合成
THF(80mL)中の1-ブロモ-2-クロロ-3-ニトロベンゼン(5.0g、21.1mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミド(THF中の1M溶液、84.6mL、84.6mmol)を-78℃で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で3時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を飽和NHCl(30mL)でクエンチし、EtOAc(3×100mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(70mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中3~5%EtOAc)により精製して、6-ブロモ-7-クロロ-1H-インドール XI-6a(2.5g)を黄色の固体として得た。
収率:49%
塩基性LCMS方法2 (ES-): 228 (M-H)-, 純度96%.
【0177】
ステップ-2: 6-ブロモ-7-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-6bの合成:
乾燥THF(30mL)中のNaH(0.87g、21.7mmol)の撹拌懸濁液に、6-ブロモ-7-クロロ-1H-インドール XI-6a(2.5g、10.8mmol)を0℃で少量ずつ添加し、反応混合物を10分間撹拌した。フェニルスルホニルクロリド(2.3g、13mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を氷冷水(100mL)に注ぎ入れ、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、6-ブロモ-7-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-6b(3.0g)を淡褐色の固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:71%
塩基性LCMS方法2 (ES-): 368 (M-H)-, 純度95%.
【0178】
ステップ-3: 7-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-6-ビニル-1H-インドール XI-6cの合成:
DMF(10mL)中の6-ブロモ-7-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-1H-インドール XI-6b(1.5g、3.86mmol)の溶液に、トリブチル(ビニル)スタンナン(1.47g、4.63mmol)、トリフェニルホスフィン(50mg、0.19mmol)及びLiCl(0.49g、11.6mmol)を添加し、反応混合物をアルゴンで10分間パージした。PdCl(PPh(0.13g、0.19mmol)を添加し、反応混合物を封管内で100℃にて16時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteパッドに通して濾過し、EtOAc(2×100mL)で洗浄した。濾液をブライン(100mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中20%EtOAc)により精製して、7-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-6-ビニル-1H-インドール XI-6c(0.80g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:64%
塩基性LCMS方法2 (ES+): 318 (M+H)+, 純度98%.
【0179】
ステップ-4: 1-(ベンゼンスルホニル)-7-クロロインドール-6-カルバルデヒド XI-6dの合成:
THF(70mL)及びHO(15mL)中の7-クロロ-1-(フェニルスルホニル)-6-ビニル-1H-インドール XI-6c(1.40g、4.19mmol)の溶液に、OsO(水中0.04M、2.07mL、0.08mmol)を0℃で添加し、反応混合物を3時間撹拌した。NaIO(2.69g、12.6mmol)を0℃で添加し、反応混合物を室温で8時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を水(100mL)で希釈した。沈殿物を濾過し、真空下で乾燥させて、1-(ベンゼンスルホニル)-7-クロロインドール-6-カルバルデヒド XI-6d(1.30g)を褐色の固体として得た。
この化合物を更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:82%
塩基性LCMS方法2 (ES+): 320 (M+H)+, 純度82%.
【0180】
ステップ-5: 1-(ベンゼンスルホニル)-7-クロロ-6-(ジフルオロメチル)インドール XI-6の合成:
DCM(30mL)中の1-(ベンゼンスルホニル)-7-クロロインドール-6-カルバルデヒド XI-6d(1.20g、3.1mmol)の溶液に、フッ化ジエチルアミノ硫黄(1.78mL、12.4mmol)を0℃で添加し、反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を氷HO(50mL)に注ぎ入れ、飽和NaHCO溶液(40mL)で塩基性化し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中20%EtOAc)により精製して、1-(ベンゼンスルホニル)-7-クロロ-6-(ジフルオロメチル)インドール XI-6(0.65g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:60%
塩基性LCMS方法2 (ES-): 340 (M-H)-, 純度97%.
【0181】
B.7. 6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール XI-7の合成:
【化31】

THF(30mL)中の1-クロロ-3-ニトロ-2-(トリフルオロメトキシ)ベンゼン(2.10g、8.69mmol)の溶液に、ビニルマグネシウムブロミド(THF中1M、34.8mL、34.8mmol)を-78℃で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で3時間撹拌した。反応混合物を室温で16時間更に撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を飽和NHCl(100mL)でクエンチし、EtOAc(3×80mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中2~4%EtOAc)により精製して、6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール XI-7(1.10g)を淡黄色の液体として得た。
収率:49%。
塩基性LCMS方法2 (ES-): 234 (M-H)-, 純度92%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.61 (t, J=2.4 Hz, 1H) 7.15 (d, J=8.0 Hz, 1H) 7.54 (t, J=2.4 Hz, 1H) 7.62 (d, J=8.8 Hz, 1H) 11.8 (brs, 1H).
【0182】
C.式XIIの中間体の合成
C.1.方法A. 6,7-ジクロロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-1の合成
【化32】

CHCN(15mL)中の6,7-ジクロロ-1H-インドール XI-1(1.35g、6.89mmol)の溶液に、クロロスルホン酸(1.60mL、24.1mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を同じ温度で1時間撹拌した。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を氷冷HO(50mL)に注ぎ入れ、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、6,7-ジクロロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-1(0.80g)を褐色の固体として得た。
この化合物を更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
収率:39%。
塩基性LCMS方法2 (ES-): 282 (M-H)-, 純度50%.
【0183】
表4中の以下の中間体は、方法Aと同様の方法に従って合成することができる。
【表4】
【0184】
6-クロロ-7-シクロプロポキシ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-2
【化33】

塩基性LCMS方法2 (ES-): 304 (M-H)-, 純度16%.
【0185】
6-クロロ-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-3
【化34】

1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 7.33 (t, J=54 Hz, 1H), 7.44-7.50 (m, 1H), 8.08 (d, J=2.93 Hz, 1H), 8.11 (d, J=8.31 Hz, 1H), 9.51 (brs, 1H).
7-ブロモ-6-クロロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-4
【化35】

1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.23 (d, J=8.37 Hz, 1H), 7.41 (d, J=2.46 Hz, 1H), 7.73 (d, J=8.37 Hz, 1H), 11.50 (brs, 1H).
6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-5
【化36】

1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.17-7.21 (m, 1 H), 7.29 (t, J=54 Hz 1 H), 7.52 (d, J=2.45 Hz, 1 H), 7.66 (d, J=8.31 Hz, 1 H), 11.92 (br s, 1 H).
7-クロロ-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-6
【化37】
【0186】
C.2. 1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール-3-スルホニルクロリド XII-7の合成
【化38】

ステップ-1: 1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール XII-7aの合成
氷浴の上で予め冷却しておいたジクロロメタン(60mL)中の微粉末水酸化ナトリウム(3.54g、0.088mol)の撹拌懸濁液に、6-クロロ-7-フルオロ-1H-インドール XI-4(5g、0.029mol)を一回で添加し、続いて硫酸水素テトラブチルアンモニウム(0.501g、0.001mol)を添加した。撹拌を更に10分間続け、次いで、ジクロロメタン(15mL)中のベンゼンスルホニルクロリド(4.2mL、0.033mol)の溶液を20分間かけて滴下添加し、反応混合物を0℃で1時間撹拌した。氷浴を取り外し、混合物を周囲温度で更に1時間撹拌した。反応混合物を珪藻土パッドで濾過し、濾過ケーキをジクロロメタン(2×50mL)ですすいだ。濾液を水(4×50mL)及びブライン(50mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、溶媒を真空下で濃縮して、1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール XII-7a(8.57g)を濃ベージュ色の固体として得た。
収率:90%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.95 (dd, J = 3.7, 2.3 Hz, 1H), 7.37 (dd, J = 8.4, 6.2 Hz, 1H), 7.48 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.66 (tt, J = 6.9, 1.9 Hz, 2H), 7.80 - 7.71 (m, 1H), 7.98 - 7.91 (m, 2H), 7.99 (d, J = 3.7 Hz, 1H).
【0187】
ステップ-2: 1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール-3-スルホニルクロリド XII-7の合成
氷浴の上で予め冷却しておいたアセトニトリル(85mL)中の1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール XII-7a(8.50g、0.027mol)の撹拌溶液に、クロロスルホン酸(9.12mL、0.137mol)を20分間かけて滴下添加し、反応混合物を周囲温度で16時間撹拌した。反応混合物を、撹拌しながら氷水(340mL)に20分間かけてゆっくり注ぎ入れた。沈殿した固体を濾過により回収し、濾過ケーキを氷入りの水(3×50mL)及びシクロヘキサン(50mL)ですすいだ。次いで、濾過ケーキを窒素流下で2時間、次いで真空オーブンで40℃にて16時間乾燥させて、1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール-3-スルホニルクロリド XII-7(7.82g)を薄桃色の固体として得た。
収率:66%。
酸性LCMS方法4 (ES+): 388 (M+H)+, 純度95%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.44 (dd, J = 8.5, 6.3 Hz, 1H), 7.72 - 7.61 (m, 3H), 7.80 - 7.72 (m, 1H), 7.81 (s, 1H), 8.05 - 7.98 (m, 2H).
【0188】
C.3. 6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-8の合成
【化39】

ステップ-1: 6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホン酸 XII-8aの合成:
CHCN(3mL)中の6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール XI-7(0.10g、0.39mmol)の溶液に、ClSOH(0.10mL)を0℃で滴下添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を氷冷HO(25mL)に注ぎ入れ、EtOAc(2×20mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホン酸 XII-8a(0.11g、粗製物)を淡褐色の液体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
塩基性LCMS方法2 (ES-): 314 (M-H)-, 純度91%.
【0189】
ステップ-2: 6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-8の合成:
CHCN(3mL)中の6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホン酸 XII-8a(0.11g、0.28mmol)の溶液に、POCl(0.1mL、1.12mmol)を0℃で添加し、反応混合物を60℃で16時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物を氷冷HO(50mL)で希釈し、EtOAc(3×40mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物(0.1g、0.3mmol)をCHCN(6mL)に溶解し、POCl(0.11mL、1.22mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を60℃で16時間加熱した。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物を氷冷HO(60mL)で希釈し、EtOAc(3×50mL)で抽出した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、6-クロロ-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-8(0.13g、粗製物)を褐色の液体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
塩基性LCMS方法2 (ES-): 332 (M-H)-
【0190】
例示化合物
D.一般式Iの化合物の合成
本明細書に具体的に開示する本発明の全ての化合物は「I-x」で表され、いずれの「x」も、個々の化合物を同定する数を指す。したがって、例示化合物はI-1、I-2、I-3等で表される。このことは、任意の化合物が本明細書における任意の下位一般式によって、例えば式II、III又はIV等によっても記載することができるかどうかには関係ない。
【0191】
D.1.方法B. 6,7-ジクロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-1の合成
【化40】

ピリジン(5mL)中の3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-1(0.10g、0.44mmol)の溶液に、6,7-ジクロロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド XII-1(0.33g、1.10mmol)を0℃で20分間かけて少量ずつ添加し、続いて、DMAP(0.01g、0.09mmol)を同じ温度で添加した。反応混合物を100℃で30時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮した。残留物を2N HCl(10mL)で摩砕し、HO(20mL)で希釈し、EtOAc(3×25mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(2×30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中30%EtOAc)により精製して、6,7-ジクロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-1(0.065g)を白色の固体として得た。
収率:34%。
塩基性LCMS方法2 (ES+): 440 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.22-4.25 (m, 1H), 4.31-4.34 (m, 1H), 4.62-4.65 (m, 1H), 4.75-4.79 (m, 1H), 7.39 (d, J=8.80 Hz, 1H), 7.70-7.76 (m, 2H), 7.97 (s, 1H), 10.64 (brs, 1H), 12.52 (brs, 1H).
【0192】
表5中の以下の化合物は、方法Bと同様の方法に従って合成することができる。
【表5-1】

【表5-2】
【0193】
6-クロロ-7-シクロプロピルオキシ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-2
【化41】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 462 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.54-0.56 (m, 2H), 0.86-0.88 (m, 2H), 4.25-4.27 (m, 1H), 4.32-4.37 (m, 1H), 4.40-4.43 (m, 1H), 4.63-4.65 (m, 1H), 4.75-4.78 (m, 1H), 7.20 (d, J=8.31 Hz, 1H), 7.48 (d, J=8.80 Hz, 1H), 7.79 (s, 1H), 7.92 (s, 1H), 10.56 (brs, 1H), 12.31 (brs, 1H).
【0194】
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-3
【化42】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 456 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.27-4.32 (m, 1H), 4.35-4.41 (m, 1H), 4.64-4.69 (m, 1H), 4.74-4.80 (m, 1H), 7.38 (d, J=8.86 Hz, 1H), 7.53 (t, J=56 Hz, 1H), 7.83 (t, J=9.11 Hz, 1H), 7.90-7.96 (m, 2H), 10.65 (s, 1H), 12.28 (brs, 1H).
【0195】
7-ブロモ-6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)-2-ピリジル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-4
【化43】

1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.27-4.30 (m, 1H), 4.34-4.39 (m, 1H), 4.64-4.67 (m, 1H), 4.76-4.80 (m, 1H), 7.41 (d, J=8.31 Hz, 1H), 7.75 (d, J=8.80 Hz, 1H), 7.80-7.86 (m, 1H), 7.97 (d, J=2.93 Hz, 1H), 10.64 (s, 1H), 12.47 (brs, 1H).
6,7-ジクロロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-5
【化44】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 422 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.21 - 4.26 (m, 1H), 4.30 - 4.34 (m, 1H), 4.62 - 4.67 (m, 1H), 4.74 - 4.79 (m, 1H), 7.40 (d, J=8.67 Hz, 1H), 7.52 (dd, J=11.27, 2.60 Hz, 1H), 7.71 (d, J=8.67 Hz, 1H), 7.83 (d, J=2.60 Hz, 1H), 7.97 (s, 1H), 10.43 (s, 1H), 12.60 (br s, 1H).
【0196】
6,7-ジクロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-6
【化45】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 440 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.37 (td, J=14.74, 3.47 Hz, 2 H), 6.22 - 6.52 (m, 1 H), 7.40 (d, J=8.24 Hz, 1 H), 7.58 (dd, J=11.27, 2.60 Hz, 1 H), 7.73 (d, J=8.67 Hz, 1 H), 7.86 (d, J=2.17 Hz, 1 H), 7.98 (s, 1 H), 10.52 (br s, 1 H), 12.61 (br s, 1 H).
【0197】
6-クロロ-7-(ジフルオロメチル)-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-7
【化46】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 438 (M+H)+, 純度98%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.20 - 4.26 (m, 1 H), 4.28 - 4.35 (m, 1 H), 4.60 - 4.66 (m, 1 H), 4.71 - 4.79 (m, 1 H), 7.35 (d, J=8.80 Hz, 1 H), 7.48-7.50 (m, 1 H), 7.52 (t, J=52 Hz, 1 H), 7.82 (d, J=1.96 Hz, 1 H), 7.87 - 7.93 (m, 2 H), 10.43 (s, 1 H), 12.21 (br s, 1 H).
6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-8
【化47】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 422 (M+H)+, 純度98%.
【0198】
7-クロロ-N-[3-フルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-9
【化48】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 456 (M+H)+, 純度98%.
【0199】
6,7-ジクロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-13
【化49】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 470 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.43 (s, 3H) 4.28 (td, J=14.43, 3.42 Hz, 2H) 6.19-6.50 (m, 1H) 7.39 (d, J=8.80 Hz, 1H) 7.53 (d, J=10.27 Hz, 1H) 7.71 (d, J=8.31 Hz, 1H) 8.00 (d, J=1.96 Hz, 1H) 10.36 (brs, 1H) 12.58 (brs, 1H).
【0200】
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-14
【化50】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 456 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.37 (td, J=14.67, 3.42 Hz, 2H) 6.22-6.52 (m, 1H) 7.37 (d, J=8.80 Hz, 1H) 7.53 (t, J=54 Hz, 1H) 7.56-7.62 (m, 1H) 7.87 (d, J=1.96 Hz, 1H) 7.89-7.96 (m, 2H) 10.54 (s, 1H) 12.24 (brs, 1H).
【0201】
6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-15
【化51】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 486 (M+H)+, 純度97%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.41 (s, 3H) 4.29 (td, J=14.43, 3.42 Hz, 2H) 6.19-6.50 (m, 1H) 7.37 (d, J=8.31Hz, 1H) 7.52-7.57 (m, 1H) 7.53 (t, J=54 Hz, 1H) 7.90-7.95 (m, 2H) 10.35 (s, 1H) 12.21 (brs, 1H).
【0202】
6,7-ジクロロ-N-[5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-16
【化52】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 438 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.78 (s, 3H) 7.16 (t, J=74 Hz, 1H) 7.25 (d, J=2.45 Hz, 1H) 7.41 (d, J=8.80 Hz, 1H) 7.62 (d, J=1.96 Hz, 1H) 7.92 (d, J=8.80 Hz, 1H) 8.09 (s, 1H) 10.28 (brs, 1H) 12.59 (brs, 1H).
【0203】
6-クロロ-N-[5-(ジフルオロメトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-7-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-17
【化53】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 454 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.78 (s, 3H) 7.16 (t, J=74 Hz, 1H) 7.25 (d, J=1.47 Hz, 1H) 7.39 (s, 1H) 7.52 (t, J=54 Hz, 1H) 7.62 (d, J=1.47 Hz, 1H) 8.02 (s, 1H) 8.13 (d, J=8.31 Hz, 1H) 10.30 (brs, 1H) 12.21 (brs, 1H).
【0204】
6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-(トリフルオロメトキシ)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-18
【化54】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 490 (M+H)+, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.23-4.25 (m, 1H) 4.31-4.33 (m, 1H) 4.61-4.67 (m, 1H) 4.73-4.79 (m, 1H) 7.36 (d, J=8.31Hz, 1H) 7.71-7.79 (m, 1H) 7.83 (d, J=8.80 Hz, 1H) 8.05 (brs, 1H) 10.69 (s, 1H) 12.70 (brs, 1H).
【0205】
N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-19
【化55】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 440 (M+H)+, 純度82%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.36 (td, J=14.68, 3.47 Hz, 2H) 6.22-6.51 (m, 1H) 7.33 (t, J=54 Hz, 1H) 7.33-7.38 (m, 1H) 7.58 (dd, J=11.10, 2.31 Hz, 1H) 7.69 (d, J=8.32 Hz, 1H) 7.86 (d, J=2.31 Hz, 1H) 8.11 (s, 1H) 10.54 (brs, 1H) 12.92 (brs, 1H).
【0206】
7-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-20
【化56】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 486 (M+H)+, 純度98%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.41 (s, 3H) 4.28 (td, J=14.55, 3.18 Hz, 2H) 6.19-6.49 (m, 1H) 7.33 (t, J=56 Hz, 1H) 7.48 (d, J=8.80 Hz, 1H) 7.54 (d, J=10.27 Hz, 1H) 7.86 (d, J=8.31 Hz, 1H) 8.12 (s, 1H) 10.40 (brs, 1H) 12.73 (brs, 1H).
【0207】
6,7-ジクロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-メトキシピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-21
【化57】

塩基性LCMS方法2 (ES+): 452 (M+H)+, 純度98%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.67 (s, 3 H) 4.29 (td, J=14.67, 2.93 Hz, 2 H) 6.15 - 6.46 (m, 1 H) 7.04 (d, J=1.47 Hz, 1 H) 7.36 (d, J=8.80 Hz, 1 H) 7.48 (s, 1 H) 7.83 (d, J=8.31 Hz, 1 H) 7.96 (s, 1 H) 9.89 (br s, 1 H) 12.48 (brs, 1 H)
【0208】
D.2. 6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-10の合成
【化58】

ピリジン(1mL)中の3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-1(50mg、0.26mmol)の溶液に、1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール-3-スルホニルクロリド XII-7(106mg、0.26mmol)を添加し、次いで、室温で3時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、次いで水に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出した(2回)。有機相をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、DCM中0~10%MeOH)、続いて塩基性分取LCMS方法1により精製して、6mgの6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-10を淡黄色の固体として得た。
収率:5%。
塩基性LCMS方法1 (ES-): 422 (M-H)-, 純度97%.
【0209】
D.3. 6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-11の合成
【化59】

ピリジン(1mL)中の5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-アミン X-4(154mg、0.37mmol)の溶液に、1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール-3-スルホニルクロリド XII-7(150mg、0.37mmol)を添加し、次いで、70℃で2時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、次いで水に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出した(2回)。有機相をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、DCM中0~5%MeOH)、続いて塩基性分取LCMS方法1により精製して、32mgの6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3,6-ジフルオロピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-11を淡黄色の固体として得た。
収率:20%。
塩基性LCMS方法1 (ES-): 440 (M-H)-, 純度97%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.41 (td, J = 14.6, 3.5 Hz, 2H), 6.38 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 7.31 (dd, J = 8.6, 6.5 Hz, 1H), 7.58 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.89 (t, J = 9.1 Hz, 1H), 8.06 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 10.72 (s, 1H), 12.84 (s, 1H).
【0210】
D.4. 6-クロロ-7-シクロプロピル-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-12の合成
【化60】

トルエン(8mL)及びHO(0.8mL)中の7-ブロモ-6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)-2-ピリジル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-4(0.25g、0.51mmol)の溶液に、KPO(0.22g、1.01mmol)、シクロプロピルボロン酸(0.07g、0.76mmol)及びトリシクロヘキシルホスフィン(0.03g、0.10mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンで15分間パージし、続いてPd(OAc)(0.01g、0.05mmol)を添加した。反応混合物をアルゴンで5分間パージし、100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をceliteパッドに通して濾過し、EtOAc(100mL)で洗浄した。濾液をHO(50mL)で洗浄した。有機層を分離し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中20%EtOAc)により精製して、6-クロロ-7-シクロプロピル-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド I-12(0.04g)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:17%。
塩基性LCMS方法2 (ES+): 446 (M+H)+, 純度95%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 0.68-0.70 (m, 2H), 1.09-1.17 (m, 2H), 1.93-2.00 (m, 1H), 4.25-4.29 (m, 1H), 4.32- 4.37 (m, 1H), 4.62-4.67 (m, 1H), 4.74-4.79 (m, 1H), 7.19 (d, J=8.80 Hz, 1H), 7.60 (d, J=8.31 Hz, 1H), 7.77-7.84 (m, 1H), 7.87 (d, J=2.93 Hz, 1H), 10.55 (s, 1H), 11.90 (brs, 1H).
【0211】
D.5. 6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-22の合成
【化61】

ステップ-1: 1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシ-2-ピリジル]-7-フルオロインドール-3-スルホンアミド I-22aの合成
密封バイアル中で、5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-アミン X-5(54mg、0.24mmol)をアルゴン下でピリジン(2mL)に溶解した。1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール-3-スルホニルクロリド XII-7(100mg、0.24mmol)を0℃で添加し、次いで、70℃で終夜撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させた。残留物をフラッシュクロマトグラフィーによりシリカで精製して(DCM及びメタノールの100/0から98/2への勾配で溶出する)、96mgの1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシ-2-ピリジル]-7-フルオロインドール-3-スルホンアミド I-22aを褐色の油状物として得た。
収率:66%。
塩基性LCMS方法1 (ES-): 592 (M-H)-
【0212】
ステップ-2: N-[6-(ジフルオロメトキシ)-5-フルオロ-2-メトキシピリジン-3-イル]-6-(ジフルオロメチル)-1H-インドール-3-スルホンアミド I-16の合成
封管中で、1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシ-2-ピリジル]-7-フルオロインドール-3-スルホンアミド I-22a(96mg、0.16mmol)をTHF(1mL)に溶解した。フッ化テトラブチルアンモニウム(430mg、0.48mmol)を添加し、反応混合物を70℃で3日間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させた。残留物をAcOEtに溶解し、水で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、蒸発させた。残留物を塩基性分取HPLC(方法1)により精製して、27mgの6-クロロ-N-[5-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-22を白色の固体として得た。
収率:37%。
塩基性LCMS方法1 (ES-): 452 (M-H)-, 純度96%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.45 (s, 3H), 4.30 (t, J = 14.8 Hz, 2H), 6.36 (s, 1H), 7.30 (t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.56 (t, J = 11.5 Hz, 2H), 8.06 (s, 1H), 10.36 (s, 1H), 12.78 (s, 1H).
【0213】
D.6. 6-クロロ-N-[5-[2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ]-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-23の合成
【化62】

ピリジン(2mL)中の5-(2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ)-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-アミン X-8(74mg、0.29mmol)の溶液に、1-(ベンゼンスルホニル)-6-クロロ-7-フルオロインドール-3-スルホニルクロリド XII-7(100mg、0.24mmol)を添加し、次いで、70℃で2時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させ、次いで、残留物を塩基性分取LCMS方法1により精製して、54mgの6-クロロ-N-[5-[2-(ジフルオロメトキシ)エトキシ]-3-フルオロ-6-メトキシピリジン-2-イル]-7-フルオロ-1H-インドール-3-スルホンアミド I-23を淡桃色の固体として得た。
収率:45%。
塩基性LCMS方法1 (ES-) 482 (M-H)-, 純度99%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 3.40 (s, 3H), 4.21 - 4.03 (m, 4H), 6.71 (s, 1H), 7.29 (dd, J = 8.6, 6.5 Hz, 1H), 7.56 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.45 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 8.03 (s, 1H), NHプロトンは見えない.
【0214】
比較例1の合成
比較例1: 6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド
【化63】

ステップ-1: 6-クロロ-1H-インドール-3-スルホン酸の合成:
ピリジン(10mL)中の6-クロロインドール(1.00g、6.62mmol)の溶液に、ピリジン-三酸化硫黄錯体(1.57g、9.93mmol)を添加し、反応混合物を16時間加熱還流した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物をHO(100mL)で希釈し、EtO(250mL)で抽出した。水層を分離し、真空下で濃縮した。得られた粗製物をトルエンと共に共蒸発させて、6-クロロ-1H-インドール-3-スルホン酸(2.30gの粗製物)を褐色の半固体として得た。
この化合物を、更に精製することなく次の反応にそのまま使用した。
塩基性LCMS方法2 (ES-): 230 (M-H)-, 純度98%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 6.98-7.04 (m, 1H), 7.12 - 7.26 (m, 1H), 7.44 (s, 1H), 7.69 - 7.75 (m, 1H), 11.13 (brs, 1H).
【0215】
ステップ-2: 6-クロロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリドの合成:
スルホラン(5mL)及びCHCN(5mL)中の6-クロロ-1H-インドール-3-スルホン酸(2.00g、6.45mmol)の溶液に、POCl(1.30mL、14.2mmol)を0℃で滴下添加し、反応混合物を70℃で3時間加熱した。反応の進行をTLC及びLCMSによりモニタリングした。完了後、反応混合物を氷冷HO(100mL)でクエンチし、EtOAc(2×50mL)で抽出した。有機層を分離し、ブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、真空下で濃縮した。得られた粗混合物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中30%EtOAc)により精製して、6-クロロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド(1.00g)を薄桃色の固体として得た。
収率:62%。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.32 (dd, J=8.56, 1.22 Hz, 1H), 7.71 (s, 1H), 8.03 (d, J=8.80 Hz, 1H), 8.45 (d, J=2.93 Hz, 1H), 12.38 (brs, 1H).
【0216】
ステップ-3: 6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミドの合成
ピリジン(10.00ml)中の3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-アミン X-1(250mg、0.893mmol)の撹拌溶液に、6-クロロ-1H-インドール-3-スルホニルクロリド(558mg、2.23mmol)を0℃で少量ずつ添加し、次いで、DMAP(5mg、0.04mmol)を同じ温度で添加した。反応混合物を100℃で16時間加熱した。反応の進行をTLCによりモニタリングした。完了後、反応混合物を真空下で濃縮し、残留物を2N HCl(10mL)で摩砕し、水(20mL)で希釈し、水層をEtOAc(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(2×30mL)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、100~200メッシュ、ヘキサン中35%EtOAc)により精製して、比較例1の6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド(57mg)をオフホワイト色の固体として得た。
収率:11%。
塩基性LC-MS方法2 (ES+): 406 (M+H)+, 純度97%.
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 4.24-4.29 (m, 1H) 4.31-4.36 (m, 1H) 4.60-4.65 (m, 1H) 4.72-4.77 (m, 1H) 7.18 (dd, J=8.61, 1.72 Hz, 1H) 7.51 (d, J=1.48 Hz, 1H) 7.70 (d, J=8.86 Hz, 1H) 7.78 (dd, J=9.84, 8.37 Hz, 1H) 7.95 (d, J=2.95 Hz, 1H) 10.49 (s, 1H) 12.06 (brs, 1H).
【0217】
B.生物学/薬理学:
B-I.細胞培養物
GPR17組換え細胞系:
Evi Kostenis’ lab(Bonn University、Germany)から入手した、ヒトGPR17受容体(CHO hGPR17)を安定発現するFlp-In T-REx CHO細胞を、5%COの加湿雰囲気中、37℃で培養した。細胞を、Nutrient Mixture F-12を含みハイグロマイシンB(500μg/ml)及びブラストサイジン(30μg/ml)が添加されたDMEMで増殖させた。Flp-In遺伝子座からの発現をドキシサイクリン(1μg/ml)で16~20時間処理することにより誘導してから、アッセイを行った。
【0218】
初代希突起膠細胞:
初代の希突起膠細胞前駆細胞(OPC)を、生後0~2日のWistar系仔ラットの前脳から単離した。大脳を、注射器及び2種類の異なる中空針(最初に1.2×40、次いで0.60×30)を用いて機械的に切り離した。凝集塊のない細胞懸濁液を、70μm細胞ストレーナーに通して濾過し、ポリ-D-リシンで被覆された75cm培養フラスコ中の、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎仔血清、ペニシリン(100単位/ml)及びストレプトマイシン(0.1mg/ml)が添加されたDMEMに播き、培地を1日おきに交換した。5%COの加湿雰囲気中、37℃で8~11日経た後に、混合培養物を、240rpmで14~24時間振とうして、OPCを、星状膠細胞及びミクログリアから剥離した。OPCを更に増やすために、懸濁液を非被覆ペトリ皿上に45分間播いておいた。次いで、OPCをポリ-L-オルニチン被覆プレート中に播種し、2%(v/v)B27、2mM GlutaMAX、100単位/mlのペニシリン、0.1mg/mlのストレプトマイシン、10ng/mlのPDGF-AA及び10ng/mlの塩基性FGFが添加された増殖用Neurobasal培地において、5%COの加湿雰囲気中、37℃で維持し、培地を1日おきに取り換えた。
【0219】
B-II:in vitroでのGPR17機能アッセイ
B-II-A:カルシウム動員機能アッセイ
GPR17は、Gタンパク質共役受容体である。GPR17が活性化すると、Gq型Gタンパク質シグナル伝達が誘発され、その結果、小胞体カルシウム(Ca2)貯蔵物が細胞質ゾルに放出され、それを、細胞質ゾルのCa2レベルの蛍光指示染料であるCalcium5染料を使用して測定することができる。本発明の化合物を、以下に詳述するCa2アッセイ又はGPR17 cAMPアッセイのいずれかにより評価した。いくつかの代表的な例については、以下の表5に示すように両方の活性試験を用いて測定した。
【0220】
Ca2アッセイの説明:
CHO hGPR17を解凍し、底部が透明な黒色384ウェルプレート中に1ウェル当たり20,000細胞の密度で播種した。細胞を、5%COの加湿雰囲気中、37℃で終夜インキュベートした。播種の16~20時間後、CHO hGPR17に、細胞質ゾルのCa2指示蛍光染料であるCalcium5染料を、製造業者の取扱説明書に従って60分間ローディングした。細胞質ゾルのCa2濃度に対する蛍光シグナルを、FLIPR Tetraリーダーを用い室温にて経時的に記録した。細胞は、最初、漸増濃度の被験化合物(典型的には、10-11M~10-6M)を含有するpH7.4のHBSS Hepes緩衝液中で室温にて30分間インキュベートした。次いで、GPR17作動薬である50nM MDL29,951を細胞に添加した。さまざまな濃度の被験化合物の阻害効果を測定し、そこから導かれるpIC50を決定した。全てのインキュベーションを2回繰り返して行い、結果を、参照化合物であるGPR17作動薬及び拮抗薬の濃度反応曲線と比較した。解析及びカーブフィッテイングは、ActivityBase XEで、XLfit 4-パラメーターロジスティック式y=A+((B-A)/(1+((C/x)^D)))(式中、A、B、C及びDは、yの最小値、yの最大値、IC50及び傾きをそれぞれ表す)を使用して行った。
【0221】
Ca2アッセイの結果:
Ca2動員アッセイで試験すると、例示化合物は、典型的には6.5以上、より好ましくは7.5以上、更により好ましくは8.5以上のpIC50値を呈する。試験に付した例示化合物の活性を、以下のB2B項中の表に示す。活性範囲A、B及びCは、Ca2アッセイにおけるpIC50値を、「A」:pIC50<7.5、「B」:pIC50 7.5≦X<8.5、「C」:8.5≦pIC50として表したものである。
【0222】
B-IIB.cAMP蓄積機能アッセイ
GPR17が活性化するとGi型Gタンパク質シグナル伝達も誘導されることがあり、その結果、細胞内サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)が減少する。細胞内cAMPの変化は、CisBio(Codolet、France)製のHTRF cAMP動的アッセイキットを使用して測定することができる。均一時間分解蛍光法(HTRF)を使用するこのアッセイは、細胞によって産生される天然cAMPと染料d2で標識されたcAMPとの間の競合に基づいている。トレーサー結合は、クリプタートで標識された抗cAMP抗体によって決定した。
【0223】
cAMPアッセイの説明
CHO hGPR17を、EDTAを含有するPBSを用いて剥がし、1ウェル当たり5,000細胞を黒色384ウェルプレートに手早く移した。細胞は、最初、ビヒクル又はさまざまな濃度の被検GPR17拮抗/逆作動化合物を含有するHBSS Hepes(pH7.4)中で、室温にて30分間インキュベートした。次いで、MDL29,951 GPR17作動薬の用量反応曲線(典型的には、10-5M~10-10M)を、ビヒクルについて、及び、1%DMSO、5μMホルスコリン及び0.1mM IBMXを含有する最終体積が20μLのHBSS Hepes緩衝液(pH7.4)中の各被検GPR17拮抗/逆作動化合物濃度について、書き加えた。室温で60分インキュベートした後、反応を停止し、d2検出試薬、及び、10μL溶解緩衝液中のクリプタート試薬を、それぞれ製造業者の取扱説明書に従って添加することにより、細胞を溶解した。60分インキュベートした後、cAMP濃度の変化を、レーザー励起を備えたEnvisionプレートリーダーを使用し、製造業者の取扱説明書に従って測定する。全てのインキュベートを2回繰り返して行った。データは、GraphPad Prismソフトウェアを使用し、GPR17拮抗/逆作動被験化合物の非存在下及び存在下におけるMDL29,951のpEC50を測定する4-パラメーターロジスティック式を用いて解析した。用量比(DR)を拮抗薬濃度に対してプロットし、Schild解析によって、GPR17拮抗/逆作動被験化合物の親和性推定値pAを得た。
【0224】
cAMPアッセイの結果:
cAMPアッセイで試験すると、例示化合物は、典型的には、6.5以上;好ましくは7.5以上;より好ましくは8.5以上のpA値を呈する。試験に付した例示化合物の活性を以下の表に示す。活性範囲A、B及びCは、cAMPアッセイにおけるpA値を、「A」:pA<7.5、「B」:pA 7.5≦X<8.5、「C」:8.5≦pAとして表したものである。
【0225】
以下の表6は、Ca2+及びcAMPアッセイで試験した例示化合物のpIC50及びpA値を示したものである。pA列における空白は、それぞれ対応する化合物がまだ試験されていなかったこと、又は結果がまだ得られていなかったことを示す。
【表6】
【0226】
B-IIC:希突起膠細胞成熟/髄鞘形成アッセイ
初代希突起膠細胞の成熟/髄鞘形成に対するGPR17の負の調節剤の効果は、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)に対する抗体を成熟希突起膠細胞のマーカーとして使用した免疫測定法によって、in vitroで評価することができる。
【0227】
MBPウエスタンブロット/希突起膠細胞/髄鞘形成アッセイの説明
増殖培地中で3~4日を経た後、ラット初代OPCを12ウェルの組織培養プレートに1cm当たり25,000細胞で播種し、成長因子不含のNeurobasal培地に切り替えて、自発的なin vitro分化、及び、GPR17タンパク質発現を誘導した。最終分化及びタンパク質発現の定量化解析を行うために、24~48時間後に、成長因子不含の培地に、0.20ng/mLトリヨードサイロニン(T3)及び10ng/mL毛様体神経栄養因子を、1μM GPR17拮抗/逆作動被験化合物又はビヒクルと共に添加し更に3日間おいた。化合物処理に続き、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、プロテアーゼ阻害剤混合物が添加された氷冷溶解緩衝液(25mMトリス、pH7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、1% Triton X-100、1% IGEPAL)に溶解した。溶解物を4℃で20分回転させ、15,000×g、4℃で10分間遠心分離した。タンパク質濃度は、製造業者の取扱説明書に従って、Pierce BCA Protein Assayを使用して決定した。タンパク質7.5~15μgを、10%SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、電気ブロッティング法によってニトロセルロース膜に転写した。膜は、洗浄後、Roti-Blockを用いて室温で1時間ブロックし、Roti-Block中、4℃で、MBP抗体(1:5000、LifeSpan BioSciences)と共に終夜インキュベートした。膜を、0.1%Tweenを含有するPBSで3回洗浄し、次いで、Roti-Block中のホースラディッシュペルオキシダーゼをコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG抗体と共に室温で1時間インキュベートした。免疫反応性タンパク質を、Amersham Biosciences ECL Primeウエスタンブロッティング検出試薬を使用した化学ルミネセンスによって可視化し、Gelscanソフトウェアを使用したデンシトメトリーによって定量化した。等しいローディング及びタンパク質転写について正規化するために、膜を、β-アクチン(1:2500、BioLegend;二次抗体ヤギ抗ウサギIgG抗体HRP(ABIN))に対する抗体を用いてリプロービングした。被験化合物存在下でのMBP発現レベルの変化を、対照条件におけるMBP発現と比較した。
【0228】
MBP繊維プレート/希突起膠細胞成熟/髄鞘形成アッセイの説明
OPCを、Mimetix Aligned 96ウェル繊維プレート(Electrospining company)に1cm当たり16,000~22,000細胞で播種した。増殖培地中で2日、及び、成長因子不含のNeurobasal培地中で2日を経て自発的in vitro分化及びGPR17タンパク質発現を誘導した後に、ビヒクル又は1μM拮抗/逆作動被験化合物を、0.20ng/mLトリヨードサイロニン及び10ng/mL毛様体神経栄養因子が添加されている最終分化培地に入れて6日間おき、その間、培地は、3日が経過した時点で取り換えた。次いで、4%パラホルムアルデヒド中で細胞を固定し、続いてPBSで洗浄し、PBS中の0.1% TritonX-100を浸透させ、リン酸緩衝生理食塩水中の10%ヤギ血清及び1%ウシ血清アルブミンでブロッキングした。MBP抗体を、ブロッキング緩衝液(1:2000)で希釈し、37℃で1時間インキュベートした。細胞をPBS中で再び洗浄し、マウスIgGに対するCy2コンジュゲート二次抗体(Millipore、1:500)と共に1時間インキュベートした。PBS洗浄後、細胞を0.2μg/mL DAPIで染色し、再び洗浄し、Mowiolを用いてマウントした。蛍光画像は、ApoTome Imaging System及びPlan-Apochromat 20×/0.8対物レンズを備えるZeiss AxioObserver.Z1顕微鏡を、eGFPフィルター(励起470/40nm;発光525/50nm)及びDAPIフィルター(励起365nm;発光445/50nm)と共に使用することによって取得した。対照(0.1%DMSOを含有する最終分化培地)及び被験化合物について少なくとも15カ所の無作為領域を、同じ設定を使用して画像化し、画像処理にはZeiss ZEN2.3ソフトウェアを用いた。有髄線維数の変化は、GPR17の負の調節剤の非存在下又は存在下での繊維長をグループ化したもの(0~40μm、41~60μm、61~80、81~100、101~120及び>120μm))によって報告した。
【0229】
CYP450-1A2誘導アッセイ
単独ドナー由来の凍結保存されたヒト肝細胞を、最終播種密度が1ウェル当たり0.1×106細胞になるように、96ウェルのコラーゲンコートプレートに播種する(最終体積は1ウェル当たり0.1mL)。次いで、細胞を37℃、95%湿度、5%COの播種培地でインキュベートして、細胞を接着させる。4時間後、播種培地を、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、10μg/mLインスリン、2mM L-グルタミン及び0.1μMヒドロコルチゾンを含有する無血清のWilliams E培地を予め温めておいたもの0.1mLに置き換える。
【0230】
翌日、細胞に、アッセイ培地中の被験化合物を与える(最終の被験化合物濃度は10μM;最終のDMSO濃度は0.1%)。陽性対照誘導剤、すなわち、CYP1A2の誘導用にオメプラゾール(50μM)、CYP2B6の誘導用にフェノバルビタール(500μM)、及び、CYP3A4の誘導用にリファンピシン(10μM)を、被験化合物と一緒にインキュベートする。陰性対照ウェルは、被験化合物がビヒクル溶媒(アッセイ培地中の0.1%DMSO)に置き換えられているウェルに含まれる。各被験化合物は、3回繰り返して与えた。細胞を溶液に72時間曝露させ、新鮮な溶液を24時間ごとに追加する。
【0231】
触媒活性決定用に、プローブ基質、フェナセチン(最終濃度25μM)、ブプロピオン(最終濃度100μM)及びミダゾラム(最終濃度2.5μM)の溶液を、予め温めておいたアッセイ培地中で調製する。72時間の曝露期間の終了時に、培地をプローブ基質のカクテルに置き換える。肝細胞を30分間インキュベートする。インキュベーション期間の終了時に一定分量を取り出し、内部標準を含有するメタノール中に1:2の比率で入れる。試料を2500rpm、4℃で20分間、遠心分離する。一定分量の上清を脱イオン水で希釈し、CyprotexジェネリックLC MS/MS法を用いてアセトアミノフェン、ヒドロキシブプロピオン及び1-ヒドロキシミダゾラムのレベルを定量化する。
【0232】
肝細胞を室温で0.1M水酸化ナトリウムに可溶化し、各ウェルにおけるタンパク質含有量を、Pierce(商標)BCA Protein Assay Kit(Thermo Scientific)を使用し、ウシ血清アルブミンを標準として用いて決定する。
【0233】
触媒活性決定のために、被験化合物の投与を繰り返すごとに形成される代謝産物の濃度をCYP活性に変換し、タンパク質に対して正規化する。倍率変化は、ビヒクル対照ウェルと比較することにより決定する。被験化合物の各濃度で観察された倍率変化を、各P450アイソフォームについて陽性対照化合物の百分率として表す。
【0234】
本発明の化合物は、CYP 1A2の誘導について、まったく認められないか、又は、R7の位置が水素である比較化合物より少なくとも有意に少ないことを典型的に示す。
【0235】
例を挙げると、R7が塩素、シクロプロピルオキシ、ジフルオロメチル及びシクロプロピルである例示化合物I-1、I-2、I-3及びI-12は、ビヒクル対照との比較ではそれぞれCYP1A2誘導はまったく示されず、一方、R7が水素である対応する比較例1(6-クロロ-N-[3,6-ジフルオロ-5-(2-フルオロエトキシ)ピリジン-2-イル]-1H-インドール-3-スルホンアミド)は、16倍のCYP1A2誘導を示した。