(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】スクリーン装置及びヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/04 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
A42B3/04
(21)【出願番号】P 2021006412
(22)【出願日】2021-01-19
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390005429
【氏名又は名称】株式会社SHOEI
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】磯部 栄治
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-100906(JP,A)
【文献】特開2007-092244(JP,A)
【文献】特開2020-101609(JP,A)
【文献】特開2012-107374(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0113268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0284906(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルメットに取り付けられるスクリーン装置であって、
コンバイナを支持するためのレール部を備える支持部と、
前記ヘルメットに取り付けられた投影部から投影された画像を映す投影面と前記レール部に支持される被支持部とを備える前記コンバイナと、を備え、
前記レール部は、前記投影面が前記ヘルメットの着用者の前方に配置される表示位置と、前記投影面が前記着用者の前方から退避した退避位置と、を移動可能に前記被支持部を支持しており、
前記支持部は、前記レール部に支持された前記被支持部を位置決めする位置決め部をさらに備え、
前記位置決め部は、前記表示位置及び前記退避位置のうち少なくとも一方において、前記位置決め部に対する外部操作によって
変位することで、前記被支持部を位置決めする
スクリーン装置。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記表示位置において、前記被支持部を位置決めする
請求項1に記載のスクリーン装置。
【請求項3】
前記位置決め部は、前記被支持部と当接することで、前記被支持部を位置決めする当接部を備える
請求項1または2に記載のスクリーン装置。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記当接部を有したネジの回転によって前記当接部を変位させることで、前記被支持部を位置決めする
請求項3に記載のスクリーン装置。
【請求項5】
スクリーン装置と、前記スクリーン装置に画像を投影する投影部と、を備えるヘルメットであって、
前記スクリーン装置は、
コンバイナを支持するためのレール部を備える支持部と、
前記投影部から投影された前記画像を映す投影面と前記レール部に支持される被支持部とを備える前記コンバイナと、を備え、
前記レール部は、前記投影面が前記ヘルメットの着用者の前方に配置される表示位置と、前記投影面が前記着用者の前方から退避した退避位置と、を移動可能に前記被支持部を支持しており、
前記支持部は、前記レール部に支持された前記被支持部を位置決めする位置決め部をさらに備え、
前記位置決め部は、前記表示位置及び前記退避位置のうち少なくとも一方において、前記位置決め部に対する外部操作によって
変位することで、前記被支持部を位置決めする
ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が投影されるスクリーン装置、及び、当該スクリーン装置が設けられたヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車用ヘルメットに設けられるヘッドマウンテッドディスプレイ(HMD)が知られている。HMDの一例であるスクリーン装置は、ハーフミラー構造のコンバイナを備える。コンバイナは、ヘルメットの内部に設けられた投影部が投影する画像を投影面で反射して虚像として表示する。例えば、特許文献1には、投影面が着用者の視野に入る第1姿勢としての表示位置と、投影面が着用者の視野に入らない第2姿勢としての退避位置とを移動可能なスクリーン装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヘルメット内でのコンバイナが支持される各位置は、運転姿勢などに応じて調整可能な構成が望まれている。例えば、運転中の着用者に高い注意力を維持させる観点では、投影面に表示される情報が着用者の視線上から若干外れていることが好ましい。また、目の疲労の軽減や運転中の安全性を維持する観点では、視線を僅かに動かすだけで、投影面に表示される情報を確認できることが好ましい。しかし、コンバイナに対する着用者の視点位置は、着用者に固有の運転姿勢などによって変わるため、着用者に対して好ましい態様で情報を提供できていないのが実情である。なお、コンバイナが支持される各位置を調整可能とする技術は、コンバイナを好適な位置に退避させる観点からも強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのスクリーン装置は、ヘルメットに取り付けられるスクリーン装置であって、コンバイナを支持するためのレール部を備える支持部と、前記ヘルメットに取り付けられた投影部から投影された画像を映す投影面と前記レール部に支持される被支持部とを備える前記コンバイナと、を備え、前記レール部は、前記投影面が前記ヘルメットの着用者の前方に配置される表示位置と、前記投影面が前記着用者の前方から退避した退避位置と、を移動可能に前記被支持部を支持しており、前記支持部は、前記レール部に支持された前記被支持部を位置決めする位置決め部をさらに備え、前記位置決め部は、前記表示位置及び前記退避位置のうち少なくとも一方において、前記位置決め部に対する外部操作によって、前記被支持部を位置決めする。
【0006】
上記課題を解決するためのヘルメットは、スクリーン装置と、前記スクリーン装置に画像を投影する投影部と、を備えるヘルメットであって、前記スクリーン装置は、コンバイナを支持するためのレール部を備える支持部と、前記投影部から投影された前記画像を映す投影面と前記レール部に支持される被支持部とを備える前記コンバイナと、を備え、前記レール部は、前記投影面が前記ヘルメットの着用者の前方に配置される表示位置と、前記投影面が前記着用者の前方から退避した退避位置と、を移動可能に前記被支持部を支持しており、前記支持部は、前記レール部に支持された前記被支持部を位置決めする位置決め部をさらに備え、前記位置決め部は、前記表示位置及び前記退避位置のうち少なくとも一方において、前記位置決め部に対する外部操作によって、前記被支持部を位置決めする。
【0007】
上記各構成によれば、位置決め部によって被支持部を位置決めすることで、投影面を最適な位置に調整できる。例えば、表示位置において、着用者の運転姿勢などに応じて着用者の前方における最適な位置に投影面を配置できる。これにより、着用者がコンバイナに表示される情報を確認し易くすることができる。また、例えば、退避位置において、投影面を好適な位置に退避させることができる。
【0008】
上記スクリーン装置において、前記位置決め部は、前記表示位置において、前記被支持部を位置決めすることが好ましい。上記構成によれば、位置決め部によって、着用者の運転姿勢などに応じて、着用者の前方における最適な位置に投影面を配置できる。これにより、着用者が投影面に表示される情報を確認し易くすることができる。
【0009】
上記スクリーン装置において、前記位置決め部は、前記被支持部と当接することで、前記被支持部を位置決めする当接部を備えることが好ましい。上記構成によれば、位置決め部が備える当接部によって被支持部を位置決めすることで、例えば、ネジの先端等を当接部とすることで、簡単な構成で投影面を最適な位置に配置できる。
【0010】
上記スクリーン装置において、前記位置決め部は、前記当接部を先端に有したネジの回転によって前記当接部をスラスト方向に変位させることで、前記被支持部を位置決めすることが好ましい。上記構成によれば、当接部を先端に有したネジを回転させて被支持部を位置決めすることで、投影面の位置を微調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
以上のような構成によれば、ヘルメット内でコンバイナが支持される各位置を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】スクリーン装置、及び、投影部の構成を示す斜視図。
【
図6】コンバイナが退避位置に配置された状態を示す図。
【
図7】コンバイナが表示位置に配置された状態を示す図。
【
図8】コンバイナが表示位置に配置された状態における位置決め部の構成を示す要部拡大図。
【
図9】コンバイナが表示位置に配置された状態における位置決め部の構成を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、ヘルメット及びスクリーン装置の一実施形態について
図1~
図9を参照して説明する。なお、
図1~
図9では、ヘルメットの着用者から見た方向である、前、後、左、右、上、下を、ヘルメットに対する前、後、左、右、上、下として示す。
【0014】
[ヘルメット]
図1に示すように、ヘルメット1は、フルフェイス型のヘルメットである。ヘルメット1は、帽体2と、スクリーン装置10とを備える。帽体2は、ヘルメットの外殻を構成する。帽体2は、半球状を有した樹脂部材である。帽体2を構成する材料は、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、及び、強化繊維を含浸させた熱硬化性樹脂などから選択される。
【0015】
帽体2は、前方に向けて開口する開口部2aと、開口部2aの下方に位置するチンガード2bとを備える。開口部2aは、着用者の視界を確保する。開口部2aには、光透過性を有した板部材であるシールド3が設けられる。
【0016】
シールド3は、開位置と閉位置との間で移動可能に構成される。開位置は、シールド3が開口部2aを開放する位置である。閉位置は、
図1の二点鎖線が示すように、シールド3が開口部2aを塞ぐ位置である。シールド3は、閉位置において、前方から飛来する異物、雨、風がヘルメット1内に入ることを防ぎ、着用者の視認性を向上させる。
【0017】
帽体2には、左右で一対の支持機構4が設けられる。一対の支持機構4は、開口部2aの左右両端部に配置される。支持機構4は、シールド3を開位置と閉位置との間を移動可能に支持する。
【0018】
帽体2は、衝撃を吸収するための内装部材であるライナ(非図示)を収容する。ライナは、帽体2の内面に沿った形状を有する。ライナは、例えば、発泡スチロールなどの発泡樹脂で構成される。
【0019】
[スクリーン装置]
スクリーン装置10は、取付部5によって帽体2における開口部2aよりも上方の領域に取り付けられており、開口部2aが区画する空間まで垂下している。取付部5は、帽体2における外表面の一部を構成しており、帽体2の外表面における周囲の表面との間に大きな段差を生じないように構成されている。
【0020】
図2に示すように、取付部5は、外側部材6と内側部材7とによって構成される。外側部材6は、内側部材7よりもヘルメット1の外側に位置する部材であり、帽体2における外表面の一部を構成する。外側部材6は、鉤状の突起である複数の係合部6aを備える。
【0021】
内側部材7は、外側部材6よりもヘルメット1の内側に位置する部材である。内側部材7は、係合部6aと係合する複数の係合孔7dを備える。取付部5は、係合部6aと係合孔7dとが係合することで、外側部材6と内側部材7とが一体となるように連結される。
【0022】
内側部材7は、ヘルメット1の内側に向かって延びる第1突起7a、第2突起7b、及び、第3突起7cを備える。取付部5は、第1突起7a、第2突起7b、及び、第3突起7cを帽体2に貫通させて、帽体2の内側に配置されるスクリーン装置10に連結させる。これにより、スクリーン装置10は、取付部5によって帽体2に固定される。
【0023】
スクリーン装置10は、上下移動機構11と、コンバイナ50とを備える。上下移動機構11は、コンバイナ50を上下移動可能に支持するための機構である。コンバイナ50は、一例として、ハーフミラー構造を有する透過型のスクリーンである。
【0024】
上下移動機構11は、第1部材20と、第2部材30と、支持部40とを備える。第1部材20及び第2部材30は、帽体2とライナとの間に配置される。第1部材20は、帽体2の内面と対向する部材である。第2部材30は、ライナと対向する部材である。
【0025】
第1部材20は、貫通孔21a,21bを備える。第2部材30は、差し込み孔31a,31b,31cを備える。第1突起7aは、差し込み孔31aに差し込まれ、ねじ等で固定される。第2突起7bは、貫通孔21aを介して差し込み孔31bに差し込まれ、ねじ等で固定される。第3突起7cは、貫通孔21bを介して差し込み孔31cに差し込まれ、ねじ等で固定される。
【0026】
支持部40は、第1部材20及び第2部材30の間に配置され、上下移動可能に保持される。支持部40の下端は、第1部材20及び第2部材30から下方に延出している。支持部40の下端には、レール部42が設けられる。レール部42には、コンバイナ50の被支持部53が挿通される。コンバイナ50は、被支持部53の先端に留め具54が取り付けられることで、支持部40に支持される。
【0027】
[上下移動機構]
図3に示すように、第1部材20は、上述した貫通孔21a,21bと、複数の第1連結部22とを備える。第2部材30は、複数の第2連結部32を備える。第1部材20及び第2部材30は、第1連結部22と第2連結部32とがねじ止めされることによって連結される。
【0028】
第1部材20は、ガイド部23と、ガイド部23の両側に位置する二つの収容部24とを備える。ガイド部23は、第2部材30と対向する面に設けられた上下方向に延在する溝である。ガイド部23には、支持部40が配置される。収容部24は、第2部材30と対向する面に設けられた環状壁である。各収容部24には、ガイド部23に向かって貫通する切欠きが設けられる。各収容部24には、係止部材25が収容される。
【0029】
係止部材25は、収容部24と対応する形状を有する環状の部材である。係止部材25は、周面に二つの凸部25aを備える。係止部材25は、凸部25aが収容部24の切欠きを通じてガイド部23に突き出るように配置される。凸部25aは、支持部40における板状部41の側面に設けられた凹凸部41bと係合することで、ガイド部23に配置された支持部40を上下方向における任意の位置で保持する。
【0030】
第2部材30は、第1部材20と対応する形状を有し、かつ、第1部材20よりも上方に延出している。第2部材30は、上述した差し込み孔31a,31b,31c及び複数の第2連結部32を備える。
【0031】
第2部材30は、上下方向に延在するガイド溝33をさらに備える。ガイド溝33は、支持部40が備える案内突起41aと係合することで、上下方向における支持部40の可動域を規定する。
【0032】
支持部40は、板状部41と、レール部42とを備える。板状部41は、支持部40において、ガイド部23に配置される領域である。板状部41は、ガイド部23と対応する形状であって、上下方向が長手となる直方体形状を有する。
【0033】
板状部41は、第2部材30に向かって突出する案内突起41aと、鋸歯状の凹凸部41bとを備える。案内突起41aは、板状部41における第2部材30と対向する面に設けられ、第2部材30が備えるガイド溝33と係合する。
【0034】
凹凸部41bは、板状部41の側面に設けられる。凹凸部41bは、上下方向において、凹部と凸部とが交互に並ぶようにして構成される。凹凸部41bにおける各凹部は、係止部材25が備える凸部25aと係合する。支持部40は、凹凸部41bと凸部25aとが係合することで、第1部材20及び第2部材30に対する上下方向の位置を、凹凸部41bにおける凹部の間隔ごとに切換可能な構成を有する。
【0035】
支持部40が第1部材20及び第2部材30に対して上下移動可能に支持されるため、支持部40に支持されるコンバイナ50を、着用者の視野に対して適切な上下方向の位置に配置できる。また、上下方向におけるコンバイナ50の位置を容易に調整できる。
【0036】
レール部42は、板状部41の下部に設けられる。レール部42は、レール部42の下方に中心を有した中心角θの弧を描くように、前方から後方下方に向かって湾曲する形状を有する。レール部42は、左右方向に貫通し、かつ、レール部42の弧に沿って延在するレール孔43を備える。レール孔43には、コンバイナ50の被支持部53が挿通される。
【0037】
レール部42の前端には、前後方向に貫通するネジ穴44が設けられる。ネジ穴44には、位置決め部としてのネジ45が取り付けられる。ネジ45は、軸線方向に延在する駆動部であって、工具等が係合される駆動部を備える。ネジ45は、駆動部に工具を係合させて回転することで、スラスト方向としての前後方向に駆動する。
【0038】
ネジ45は、工具等による外部操作によって回転されてネジ45の先端45aがレール孔43内に突出することで、レール孔43内における被支持部53の可動域を規定する。すなわち、ネジ45の先端45aは、レール孔43内において、被支持部53を位置決めするための当接部として機能する。
【0039】
図4に示すように、レール部42の下部には、レール部42の弧に沿って延在する貫通孔である2つのスリット46が設けられる。2つのスリット46の間には、レール部42の前端から後端まで延在する弾性部47が設けられる。弾性部47は、レール部42の下部における他の領域の厚さよりも薄く構成されることで、撓みやすくなっている。
【0040】
図3に戻り、弾性部47において、レール孔43の内周面を構成する面のうち前方の領域には、レール孔43に向かって突出する第1係止凸部47aが設けられる。また、弾性部47において、レール孔43の内周面を構成する面のうち後方の領域には、レール孔43に向かって突出する第2係止凸部47bが設けられる。第1係止凸部47a及び第2係止凸部47bは、被支持部53を上方向に押圧し、レール孔43の内周面における上面である係止面48に押し付けることで、コンバイナ50をそれぞれの位置で係止する。
【0041】
[コンバイナ]
図4に示すように、コンバイナ50は、投影面51と、延設部52とを備える。また、コンバイナ50は、被支持部53(
図2参照)を備える。投影面51は、透過型スクリーンであり、チンガード2b内に配置された投影部60(
図5参照)から出力される画像Vが投影される表示領域51aを備える。
【0042】
延設部52は、投影面51から支持部40が位置する方向に延設される。延設部52は、投影面51と、被支持部53とを繋ぐ領域である。被支持部53は、延設部52から支持部40のレール孔43に向かって突出する偏平の領域である。被支持部53は、レール孔43に対して左右方向に挿通される。
【0043】
留め具54は、被支持部53の先端が差し込まれる穴を有する。コンバイナ50は、被支持部53がレール孔43に挿通された状態で、被支持部53の先端に留め具54が取り付けられる。これにより、コンバイナ50は、被支持部53がレール孔43に沿ってスライド可能な状態でレール部42に保持される。
【0044】
具体的に、被支持部53は、先端部に第1固定孔53a(
図2参照)を備える。また、留め具54は、被支持部53の先端に取り付けられた状態で、第1固定孔53aと対応する位置に第2固定孔54aを備える。留め具54は、被支持部53の先端に取り付けられた状態で、第1固定孔53aと第2固定孔54aとがねじ止めされることで、被支持部53の先端に固定される。また、延設部52及び留め具54は、被支持部53に対して垂直な面をレール孔43の開口面に当接させる。これにより、コンバイナ50は、レール部42に対するがたつきなどが抑制される。
【0045】
また、留め具54は、コンバイナ50をレール部42の弧に沿って移動させるための操作部である。すなわち、コンバイナ50は、留め具54を操作することで、被支持部53がレール孔43に沿って移動する。留め具54を操作してコンバイナ50をレール部42の弧に沿って移動させることで、支持部40に対する投影面51の相対角度が変化する。
【0046】
留め具54は、
図1に示すスクリーン装置10がヘルメット1に取り付けられた状態で、開口部2aの外方に向かうように配置される。また、留め具54は、開口部2aの外方に向かう面において、後方部分が前方部分よりも膨らんでおり、着用者の指を当てやすい傾斜を有する。これによって、着用者が自身の指で留め具54を操作してコンバイナ50をレール部42の弧に沿って移動させることが容易になる。
【0047】
[投影部]
図5に示すように、チンガード2b内には、投影部60が設けられる。投影部60は、チンガード2bにおいて、開口部2aを構成する領域に設けられた投影口61から、投影面51に向かって画像Vを投影する。
【0048】
[実施形態の作用]
図6~9を参照して、本実施形態の作用について説明する。なお、
図8及び
図9では、便宜上、留め具54を図示していない。
【0049】
図6に示すように、画像Vが不要でありコンバイナ50を使用しない際には、留め具54を操作して、被支持部53がレール部42の後端部に突き当たる位置までコンバイナ50を移動させる。これにより、コンバイナ50は、投影面51が着用者の視点Eの前方から退避した退避位置に配置される。コンバイナ50は、第2係止凸部47bが被支持部53を係止面48に向かって押圧することで、弾性部47の弾性力によって退避位置に係止される。コンバイナ50が退避位置に配置されたとき、着用者の視点Eでは、コンバイナ50を介さない視線Sであって、画像Vに煩わされない視線Sが確保できる。
【0050】
図7に示すように、コンバイナ50を使用する際には、留め具54を操作して、被支持部53がレール部42の前端部に突き当たる位置までコンバイナ50を移動させる。これにより、コンバイナ50は、投影面51が着用者の視点Eの前方に位置する表示位置に配置される。すなわち、留め具54を操作することで、コンバイナ50が表示位置に配置された状態と、コンバイナ50が退避位置に配置された状態とを切り換えることができる。コンバイナ50は、第1係止凸部47aが被支持部53を係止面48に向かって押圧することで、弾性部47の弾性力によって表示位置に係止される。
【0051】
このとき、投影部60から出力された画像Vは、投影面51に投影されて着用者の視野内に到達する。着用者は、投影面51に投影された画像Vを視線Sの上に配置することが可能となる。すなわち、着用者は、前方を見た状態のまま投影面51に投影された画像Vを視認できる。
【0052】
また、コンバイナ50が表示位置に配置された状態で、支持部40を第1部材20及び第2部材30に対して上下移動させることで、上下方向におけるコンバイナ50の位置を視点Eの高さHに応じて調整できる。
【0053】
図8に示すように、コンバイナ50は、位置決め部としてのネジ45の先端45aがネジ穴44内に位置するとき、被支持部53がレール部42の前端部に当接することで位置決めされる。このとき、コンバイナ50は、弾性部47の弾性力によって第1係止凸部47aが被支持部53を係止面48に向かって押圧することで、被支持部53がレール部42の前端部に当接した状態で係止される。
【0054】
また、位置決め部としてのネジ45を回して先端45aをレール孔43内に突出させることで、表示位置を微調整できる。
図9に示すように、表示位置を微調整する場合、ネジ45を回して先端45aをレール孔43内に突出させる。そうすると、コンバイナ50は、被支持部53が先端45aに当接することで位置決めされる。このとき、コンバイナ50は、第1係止凸部47aが被支持部53を係止面48に向かって押圧することで、弾性部47の弾性力によって被支持部53がネジ45の先端45aに当接した状態で係止される。なお、
図9に示す二点鎖線は、
図8における投影面51の位置を示す。
【0055】
ネジ45の先端45aがレール孔43の内部に突出することで、被支持部53が先端45aに当接した位置が表示位置となる。すなわち、ネジ45をスラスト方向に変位させることで、着用者に固有の運転姿勢等に応じて、視野の中で投影面51が最適な位置に配置されるように表示位置を調整できる。換言すると、表示位置は、被支持部53がネジ45の先端45aに当接することで、コンバイナ50が位置決めされる設定位置である。
【0056】
また、コンバイナ50は、第1部材20及び第2部材30に対する支持部40の上下方向への移動と、支持部40に対するレール孔43に沿った前後方向への移動とをそれぞれ独立して行うことが可能である。すなわち、コンバイナ50は、支持部40が位置決めされる上下方向の各位置において、ネジ45を変位させてレール部42に対する投影面51の角度を調整することで、投影面51に表示される画像Vが視野のなかで最適な位置に配置されるよう表示位置を調整できる。
【0057】
コンバイナ50は、前方車両や路面などの前方対象物と着用者の視点Eとの間において、着用者の視点Eに対して非常に近い位置に配置される。そのため、着用者の視点Eから見て、視線Sに対する投影面51の微小な角度の差異は、前方対象物に対する画像Vの相対位置を大きく変位させる。この観点から、コンバイナ50の位置を表示位置と退避位置とに切り換えるような大きな位置変更の機構とは別に、表示位置における投影面51の角度が微調整可能であることが好ましい。この点、表示位置における投影面51の角度は、レール孔43の内部におけるネジ45の突出量によって規定される。これにより、ネジ45を周方向に数回も回転させる大きな操作量をスラスト方向におけるネジ45の微小な変位に変換することが可能であって、表示位置における投影面51の角度を微調整できる。
【0058】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)位置決め部としてのネジ45におけるスラスト方向の移動によって、着用者に固有の運転姿勢等に応じて、投影面51に表示される画像Vが視野のなかで最適な位置に配置されるようにコンバイナ50の表示位置を調整できる。これにより、着用者が投影面51に表示される画像Vを好適に確認し易くすることができる。
【0059】
(2)被支持部53がネジ45の先端45aに当接することで、被支持部53が第1係止凸部47aによって係止される表示位置を調整できる。したがって、簡単な構成、かつ、ネジ45を回転させて当接部としての先端45aをスラスト方向に変位させる簡単な操作で表示位置を調整できる。
【0060】
(3)位置決め部としてのネジ45における大きな回転操作をネジ45におけるスラスト方向の微小な移動に変換することが可能であって、表示位置におけるレール部42に対する投影面51の角度を微調整できる。これにより、着用者が投影面51に表示される画像Vをより好適に確認し易くすることができる。
【0061】
(4)コンバイナ50は、第1部材20及び第2部材30に対する支持部40の上下方向への移動と、支持部40に対するレール孔43に沿った前後方向への移動とをそれぞれ独立して行うことが可能である。したがって、支持部40が位置決めされる上下方向の各位置において、レール部42に対する投影面51の角度を調整できる。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・位置決め部としてのネジ45を設ける構成を例示したが、位置決め部の構成は、ネジ45に限定されない。例えば、ネジ45に代えて、一つの側面が鋸歯状に構成されたラックギアを設け、ネジ穴44に代えて、ラックギアが挿通される貫通孔を設け、さらに、ラックギアを貫通孔内で駆動するための機構を設ける構成であってもよい。上記構成の場合、表示位置において、ラックギアの先端が被支持部53に当接することでコンバイナ50が位置決めされる。すなわち、ラックギアは、表示位置を調整するための位置決め部であり、ラックギアの先端がコンバイナ50の被支持部53に当接する当接部である。上記構成であっても、レール孔43におけるラックギアの突出量に応じて表示位置を調整できる。
【0063】
・被支持部53がネジ45の先端45aに当接することでコンバイナ50が位置決めされる構成を例示した。表示位置そのものの変更は、被支持部53が当接するネジ45の変位に限定されず、例えば、表示位置の被支持部53と嵌合する嵌合部材の変位でもよいし、表示位置の被支持部53と磁気的に接合する磁気部材の変位でもよい。位置決め部は、レール孔43に挿通された被支持部53を位置決めできる構成であればよい。
【0064】
・レール部42の前端部に位置決め部としてのネジ45を設ける構成を例示したが、これに限定されず、例えば、レール部42の後端部にネジ45を設けてもよい。この場合、レール部42の後端部に設けられたネジ45によって、退避位置におけるコンバイナ50が位置決めされる。すなわち、表示位置及び退避位置の何れもが、位置決め部としてのネジ45における先端45aの位置に応じてコンバイナ50が位置決めされる設定位置である。退避位置が設定位置であることで、着用者の運転姿勢などに応じてコンバイナ50を好適な位置に退避させることが容易となり、また、表示位置と退避位置とを切り換える際の移動量を低減できる。なお、レール部42の後端部のみに位置決め部としてのネジ45を設け、レール部42の前端部にネジ45を設けない構成であってもよい。
【0065】
・被支持部53には、表示位置において第1係止凸部47aと係合し、退避位置において第2係止凸部47bと係合する1つまたは複数の係合凹部が設けられてもよい。例えば、被支持部53に複数の係合凹部が設けられる場合、位置決め部によって表示位置が調整された各位置において、第1係止凸部47aと係合凹部とが係合することでコンバイナ50が好適に支持される。また、第1係止凸部47a及び第2係止凸部47bは、複数設けられてもよい。
【0066】
・スクリーン装置10が帽体2に取り付けられる構成を例示したが、ヘルメット1にスクリーン装置10を適切に配置することができるのであれば、例えば、スクリーン装置10がライナなど帽体2以外の部材に取り付けられてもよい。
【0067】
・投影部60がチンガード2bに設けられる構成を例示したが、投影部60の配置は限定されず、ヘルメット1における何れかの位置から投影面51に対して画像Vを投影できればよい。
【0068】
・ヘルメット1がフルフェイス型ヘルメットである構成を例示したが、これに限定されず、例えば、顎部が上昇可能なフリップアップ型ヘルメット、オープンフェイス型ヘルメット、着脱式の顎部を持つヘルメット、または、顎部を転回させて後頭部に固定可能なコンバーチブル型ヘルメットであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
V…画像
1…ヘルメット
2…帽体
2a…開口部
10…スクリーン装置
11…上下移動機構
40…支持部
42…レール部
45…ネジ
50…コンバイナ
51…投影面
53…被支持部
54…留め具
60…投影部