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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】車両用エネルギー吸収構成部材
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/12 20060101AFI20231023BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F16F7/12
B62D21/15 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021047021
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146187
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 晴照
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-105818(JP,A)
【文献】特開2015-028348(JP,A)
【文献】特開2016-094945(JP,A)
【文献】特開2014-141977(JP,A)
【文献】特開平11-351304(JP,A)
【文献】特開2007-112356(JP,A)
【文献】特開2021-024350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 7/00- 7/14
B62D 21/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に及ぼされる衝撃の外力を吸収するために車両に装備される車両用エネルギー吸収構成部材であって、
一つの平面形状の平行四辺形体における隣接する辺部に他の2つの平面形状の平行四辺形体の辺部を接続させて、立方体形状で見て六角形形成体における三面が形成されて基本構成体が形成されて成り、
前記基本構成体の開口辺の一辺同士が接続されて前記基本構成体が連結構成されて基本構成体群が構成されて成り、
前記基本構成体群が、一方側の面から見た場合に、前記基本構成体における三つの平行四辺形体が重なった第1頂点が凸部となり、該第1頂点の凸部を囲んで前記基本構成体が他の基本構成体と重なり合うことにより形成される周囲の六つの第2頂点のうち半分が凹部、残り半分が前記凸部と前記凹部との中間高さとなる中間部が交互に配設されて、連続した六方格子状に配置されて成る、車両用エネルギー吸収構成部材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用エネルギー吸収構成部材であって、
隣接する前記平行四辺形体同士、及び隣接する前記基本構成体同士が接続される稜線個所が面取り形状で接続されている、車両用エネルギー吸収構成部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両用エネルギー吸収構成部材であって、
前記平面形状の平行四辺形体の形成面には貫通孔が形成されている、車両用エネルギー吸収構成部材。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用エネルギー吸収構成部材であって、
前記平行四辺形体の形成面に形成される貫通孔は円形孔である、車両用エネルギー吸収構成部材。
【請求項5】
請求項1~請求項4の何れかの請求項に記載の車両用エネルギー吸収構成部材であって、
当該車両用エネルギー吸収構成部材を形成するエネルギー吸収形成体は鋼板とされており、当該車両用エネルギー吸収構成部材はプレス成形で形成されて成る、車両用エネルギー吸収構成部材。
【請求項6】
請求項1~請求項5の何れかの請求項に記載の車両用エネルギー吸収構成部材は、電気自動車のロッカー内部に装備される、車両用エネルギー吸収構成部材。
【請求項7】
請求項1~請求項5の何れかの請求項に記載の車両用エネルギー吸収構成部材は、車両に搭載されるバッテリーケースの側面に配置される、車両用エネルギー吸収構成部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エネルギー吸収構成部材に関する。特に、車両に及ぼされる衝突荷重等の衝撃外力を吸収するために車両に装備される車両用エネルギー吸収構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両には、衝突荷重等の衝撃外力が加わる。この衝撃外力を吸収するために車両骨格構造の各種部位には車両用エネルギー吸収構成部材が装備されて、衝撃外力の衝撃エネルギーを吸収するようになっている。車両用エネルギー吸収構成部材が装備される部位としては、例えば、電気自動車のロッカー内部や、車両に搭載されるバッテリーケースの側面部位がある。
【0003】
下記特許文献1は一般的なエネルギー吸収構成部材の一例を示す。このエネルギー吸収構成部材は、圧縮方向に、多数の貫通穴ないし中空穴が形成された構成である。これにより、小型・軽量でかつ簡単な構造でありながら、エネルギー吸収能に優れた衝撃吸収体を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-351304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したエネルギー吸収構成部材は、プレス成形できない形状であるので、コストがかかるという問題がある。すなわち、プレス成形できない形状の場合には、アルミの押出しや、CRFP(炭素繊維強化プラスチック)等を用いた成形となるが、かかる成形においては一般的に材料費が高く、コストがかかるという問題がある。
【0006】
而して、本発明は上述した点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、エネルギー吸収構成部材におけるプレス成形方向から見た立方体形状を負角のないプレス成形できる形状として、安価に形成できることを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用エネルギー吸収構成部材は、次の手段をとる。
【0008】
本発明の第1の発明は、車両に及ぼされる衝撃の外力を吸収するために車両に装備される車両用エネルギー吸収構成部材であって、一つの平面形状の平行四辺形体における隣接する辺部に他の2つの平面形状の平行四辺形体の辺部を接続させて、立方体形状で見て六角形形成体における三面が形成されて基本構成体が形成されて成り、前記基本構成体の開口辺の一辺同士が接続されて前記基本構成体が連結構成されて基本構成体群が構成されて成り、前記基本構成体群が、一方側の面から見た場合に、前記基本構成体における三つの平行四辺形体が重なった第1頂点が凸部となり、該第1頂点の凸部を囲んで前記基本構成体が他の基本構成体と重なり合うことにより形成される周囲の六つの第2頂点のうち半分が凹部、残り半分が前記凸部と前記凹部との中間高さとなる中間部が交互に配設されて、連続した六方格子状に配置されて成る、車両用エネルギー吸収構成部材である。
【0009】
本発明の第2の発明は、上述した第1の発明の車両用エネルギー吸収構成部材であって、隣接する前記平行四辺形体同士、及び隣接する前記基本構成体同士が接続される稜線個所が面取り形状で接続されている、車両用エネルギー吸収構成部材である。
【0010】
本発明の第3の発明は、上述した第1の発明又は第2の発明の車両用エネルギー吸収構成部材であって、前記平面形状の平行四辺形体の形成面には貫通孔が形成されている、車両用エネルギー吸収構成部材車両骨格構造である。
【0011】
本発明の第4の発明は、上述した第3の発明の車両用エネルギー吸収構成部材であって、前記平行四辺形体の形成面に形成される貫通孔は円形孔である、車両用エネルギー吸収構成部材である。
【0012】
本発明の第5の発明は、上述した第1の発明~第4の発明の何れかの車両用エネルギー吸収構成部材であって、当該車両用エネルギー吸収構成部材を形成するエネルギー吸収形成体は鋼板とされており、当該車両用エネルギー吸収構成部材はプレス成形で形成されて成る、車両用エネルギー吸収構成部材である。
【0013】
本発明の第6の発明は、上述した第1の発明~第5の発明の何れかの車両用エネルギー吸収構成部材は、電気自動車のロッカー内部に装備されている、車両用エネルギー吸収構成部材である。
【0014】
本発明の第7の発明は、上述した第1の発明~第5の発明の何れかの車両用エネルギー吸収構成部材は、車両に搭載されるバッテリーケースの側面に配置される、車両用エネルギー吸収構成部材である。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明の手段によれば、エネルギー吸収構成部材におけるプレス成形方向から見た立方体形状を負角のないプレス成形できる形状として、安価に形成できることを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】平行四辺形体の単体形状を示す平面図である。
図2】平行四辺形体の3体を集合させて形成した一つの基本形成体を示す立方体図である。
図3】基本形成体を集合させて構成した基本構成体群を一方側の面から見た全体図である。
図4図3に示す基本構成体群を左方側から見たIV矢視図である。
図5図3に示す基本構成体群を下方側から見たV矢視図である。
図6図3のVI-VI線矢視断面図である。
図7図3のVII-VII線矢視断面図である。
図8図3のVIII-VIII線矢視断面図である。
図9】本実施形態の基本構成体群における凸部形状、凹部形状、中間部形状の位置を示す図である。
図10】本実施形態の基本構成体群における六方格子状の配置関係の一例を説明するための説明図である。
図11】第1の変形形態例を一方側の面の表側から見た図である。
図12】第1の変形形態例を他方側の面の裏側から見た図である。
図13】第2の変形形態例を一方側の面の表側から見た図である。
図14】第3の変形形態例を一方側の面の表側から見た図である。
図15】第4の変形形態例を一方側の面の表側から見た図である。
図16】第4の変形形態例を他方側の面の裏側から見た図である。
図17】電気自動車のロッカーに車両用エネルギー吸収構成部材を装備した構成を示す斜視図である。
図18図17に示す構成において、車両用エネルギー吸収構成部材が2段に配置された構成を示す斜視図である。
図19】車両用エネルギー吸収構成部材が車両のバッテリーケースの側面に配置された構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車両に及ぼされる衝突荷重等の衝撃の外力を吸収するために車両のエネルギー吸収経路に装備される車両用エネルギー吸収構成部材である。なお、図の説明における左右、上下、前後等の方向表示説明は、特に指定しない限り、当該図における方向を示す。
【0018】
本実施形態の車両用エネルギー吸収構成部材10は、平行四辺形体12が集合して基本構成体14が構成され、基本構成体14が集合して基本構成体群16が構成されて、車両に装備されるものである。なお、以後の実施形態の説明においては、車両用エネルギー吸収構成部材10は、単に「EA構成部材10」と略称する。
【0019】
<平行四辺形体12>
先ず、基本構成体14を構成するための平行四辺形体12について説明する。本実施形態の平行四辺形体12の単体形状が図1に示される。図1に示すように、平行四辺形体12は、一つの平面形状で形成されており、対角線mを一点鎖線で示す2つの三角形体12a、12bが隣り合って配設され、重ね合わされた状態として形成されている。なお、一点鎖線で示される対角線mは仮想の線を示すものであり、実際の平行四辺形体12は、2つの三角形体12a、12bが一体として、一つの平面形状で形成されている。なお、本実施形態の三角形体12a、12bは直角の2等辺三角形である。
【0020】
そして、本実施形態の平行四辺形体12には、2つの三角形体12a、12bの対角線mの稜線の中央部に貫通孔18が形成されている。本実施形態の貫通孔18は円形孔18であり、この円形孔18は三角形体12a、12bの対角線mの稜線を跨いだ位置の中央部位置に対称形状に配置されて形成されている。
【0021】
<基本構成体14>
図2は上述した平行四辺形体12の3体が集合形成されて、一つの基本構成体14を構成した立方体形状構成を示す。図2に示すように、一つの基本構成体14は図1に示す平行四辺形体12の3体が集合して構成されている。図2では集合形成される3体を、第1の平行四辺形体12A、第2の平行四辺形体12B、第3の平行四辺形体12Cとして示した。
【0022】
本実施形態の基本構成体14は、一つの平行四辺形体12における隣接する辺部hに他の2つの平行四辺形体12の辺部hが接続されて、立方体形状で見て六角形形成体を形成する三面を形成する構成体14として形成されている。
【0023】
これを図2に基づいて説明すると、第1の平行四辺形体12Aにおける下方位置で隣接する辺部h1、h2において、第2の平行四辺形体12Bと第3の平行四辺形体12Cの上辺部h1、h2が一体的に接続された状態として形成される。
【0024】
詳細には、第1の平行四辺形体12Aと第2の平行四辺形体12Bとは辺部h1で接続され、第1の平行四辺形体12Aと第3の平行四辺形体12Cとは辺部h2で接続されて一体形成されている。そして、第2の平行四辺形体12Bと第3の平行四辺形体12Cとは辺部h3で接続されて一体形成されている。
【0025】
なお、以下に示す各図においては、理解の便宜上、平行四辺形体12同士を接続して基本構成体14を形成する稜線個所、及び後述する基本構成体14同士を接続する稜線個所には実線で示されており、前述もしたように平行四辺形体12を形成する2つの三角形体12a、12bが重なり合う対称線の稜線は一点鎖線で示している。
【0026】
<基本構成体群16>
図3図2に示された基本構成体14の複数個が集合して構成される基本構成体群16示す。図3に示すように、基本構成体群16は上述した基本構成体14の開口辺の一辺同士が接続されて群として一体的に構成される。図3に示す基本構成体群16は、図3の上方位置からから見て、一列目に1個の基本構成体14が配置され、2列目に2個の基本構成体14が配置され、3列目に3個の基本構成体14が配置され、4列目に4個の基本構成体14が配列されて一体的に接続構成されている。したがって、本実施形態に示す図3に示す基本構成体群16は、10個の基本構成体14が集合して一体的に構成されており、全体形状としては3角形の集合体として形成されている。この3角形の集合体の基本構成体群16がEA構成部材10となる。
【0027】
図3に示す10個の基本構成体14には、図3で見て、上から順に、14-1、14-2、14-3・・・14-10の区別符号を付して示した。
【0028】
図4図3における基本構成体群16を図3で見て右方側から見たIV矢視図を示す。図5は同様に図3で見て下方側から見たV矢視図を示す。また、図6図3におけるVI-VI線矢視断面を示す。図7図3におけるVII-VII線矢視断面を示す。図8図3におけるVIII-VIII線矢視断面を示す。これらの各図から分かるように、本実施形態のEA吸収構成部材10を構成する基本構成体群16は、一方側の面又は他方側の面から見た場合に、平行四辺形体12同士を接続する稜線の接続点個所が凹凸形状を形成する構成となっている。
【0029】
なお、図3に示される本実施形態のEA吸収構成部材10では、一方側の面が上面側(図3で見て表面側)であり、他方側の面が下面側(図3で見て裏面側)となっている。図4では左側が上面側の一方側の面、右側が下面側の他方側の面となっている。同様に、図5では上側が一方側の面、下側が下面側の他方側の面となっている。図6では左側が上面側の一方側の面、右側が下面側の他方側の面となっている。図7では上方側が下面側の他方側の面、下方側が上面側の一方側の面となっている。図8では上方側が上面側の一方側の面、下方側が下面側の他方側の面となっている。なお、図6から図8にC矢印で示す位置は、基本構成体群16の中央位置を示している。
【0030】
<基本構成体群16の凹凸形状による六方格子状の配置>
図9は本実施形態の基本構成体群16における凹凸形状の位置を示す。図9では、凸部位置を●印で示し、凹部位置を〇印で示し、その凸部位置と凹部位置の中間高さ位置を△印で示した。本実施形態では、図9に示す基本構成体群16を一方側の面から見た場合に、基本構成体14を形成する三つの平行四辺形体12の稜線が重なった交点が第1頂点の位置(●印で示した位置)となっており、凸部形状となっている。そして、この凸部形状の第1頂点の位置を囲んで、基本構成体14が他の基本構成体14と重なり合うことにより形成される稜線の交点が第2頂点の位置(〇印及び△印で示した位置)とされており、六つある。この六つの第2頂点のうち、半分が凹部形状、残り半分が凸部と凹部との中間高さとなる中間部形状となっており、交互に配設されている。なお、この六つの第2頂点の位置は連続した六方格子状に配置されて構成される。
【0031】
上記の六方格子状の配置関係の一例を図10により説明する。図10図9と同様に図示した基本構成体群16を示す。図10において、3列目の中央部位置に配設される基本構成体14-5の凸部位置に第1頂点kが設定される。この第1頂点kは図6から図8にC矢印で示す位置である。この基本構成体14-5の第1頂点kを囲んだ周りに第2頂点sが六つ設定される。図10には六つの第2頂点はs1-s6で示される。第1頂点kは一方側の面から見て凸部形状の配置となっており、六つの第2頂点s1-s6は凹部形状と中間部形状となっている。本実施形態では、第2頂点のs1、s3、s5が凹部形状の位置となっており、第2頂点のs2、s4、s6が中間部形状となっている。この第1頂点kと六つの第2頂点sとの配置関係は、6方格子状の配置となっている。そして、第2頂点の凹部形状s1、s3、s5と中間部形状s2、s4、s6は交互に連続して配置されている。
【0032】
なお、本実施形態の基本構成体群16の一方側及び他方側から見た凹凸形状は負角のない形状として形成されている。すなわち、基本構成体群16をプレス成形する際のプレス成形方向から見た立方体形状が負角のない形状として形成されている。これは図6図8に示される断面形状から理解することができる。
【0033】
上述した本実施形態のEA構成部材10は、車両用に装備する部材としては、通常は、鋼板製とされており、プレス成形で形成される。このプレス成形される際、前述したように、本実施形態では負角のない形状とされていることから、その成形を容易に行うことが可能となっている。また、負角のない形状であることから、プレス成形型の成形もなっている。
【0034】
<上記実施形態の作用効果>
次に、上記実施形態の作用効果を説明する。上記実施形態によれば、基本構成体群16の形成体は連続した凹凸の曲面を有し、その凹凸の中心が六方格子状に配置される。EA吸収構成部材10に衝突荷重等の衝撃外力が加わると、凹凸形状に形成された基本構成体群16の一方側の面と他方側の面とを圧縮変形する座屈変形作用が生じる。この圧縮変形作用は、1カ所の第1頂点の凸部形状への入力が隣接する6カ所の第2頂点の凹部形状および中間部形状個所に分散して行われる。これにより、面全体が変形してエネルギー吸収作用が行われる。このため、エネルギー吸収効率が高い。
【0035】
また、本実施形態によれば、基本構成体群16に形成される凸部形状(●)、凹部形状(○)、及び中間部形状(△)による凹凸形状は負角なく形成される。これにより、プレス成形によりEA構成部材10を製作することが可能となり、製作コストが安価となる。また、これにより、プレス成形する際のプレス金型の製作も容易となり、低コストで金型の製作をすることができる。これは、金型の製作のために特殊な切削工具が不要となることによる。
【0036】
また、本実施形態によれば、基本構成体群16の形状に負角がないことから、鉄、アルミ、CRFP(炭素繊維強化プラスチック)等のシートを材料とすることができ、低コストで製作することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、平行四辺形体の形成面には貫通孔18が形成され、この貫通孔は円形孔とされている。これにより、貫通孔の位置と数により、エネルギー吸収のための座屈変形タイミングと、それに伴いエネルギー吸収量を調整できる。また、円形孔18は角部のない形状であり、滑らかな形状であることから、エネルギー吸収作用時において応力集中を避けることができる。
【0038】
<基本構成体群16のその他の形態例>
次に、基本構成体群16のその他の変形形態例を説明する。
【0039】
<基本構成体群16の第1の変形形態例>
先ず、図11及び図12に示す第1の変形形態例について説明する。図11は第1の変形形態例を一方側の面の表側から見た図であり、図12は第1の変形形態例を他方側の面の裏側から見た図である。この第1の変形形態例は、上述した図3に示す基本構成体群16を構成する平行四辺形体12同士を接続する稜線個所部位を丸みをつけた形状とした形成した形態である。なお、この第1の変形形態例における上述した基本構成体群16と実質的に同じ構成部位には、同じ符号を付して示してあり、これにより詳細説明を省略した。以下に示す変形形態例の場合も同様である。
【0040】
上記第1の変形形態例においても、上述した基本構成体群16の場合と、同様の作用効果を成す。
【0041】
<基本構成体群16の第2の変形形態例>
次に、図13に示す第2の変形形態例について説明する。図13は上述した図3に対比して図示したものであり、図3と同様に一方側の面の表側から見た図である。この第2の変形形態例は隣接する平行四辺形体12同士、及び隣接する基本構成体14同士が接続される稜線個所を面取り形状36、38で接続した構成の形態である。
【0042】
図13においては、この面取り形状36、38の符号は上方から1列目と2列目の基本構成体14-1~14-3のみに付して示した。それ以後の基本構成体14-4~14-10には都合により省略した。面取り形状36は平行四辺形体12同士の接続稜線における面取り形状の場合を示し、面取り形状38は基本構成体14同士の接続稜線における面取り形状の場合を示している。
【0043】
この第2の変形形態例によっても、上述した基本構成体群16の場合、及び図11図12に示す第1の変形形態例の場合と同様の作用効果を成す。そして、面取り形状36、38によりできた隣り合う2つの角部(屈曲線部)が座屈変形時の抵抗となり、エネルギー吸収機能に寄与する。隣り合う2つの角部(屈曲線部)とは、代表的に、図13の基本構成体14-1に符号39、40で示す面取り形状36により形成される部位である。
【0044】
なお、図13の形態例の場合は、貫通孔18がない構成の場合であるが、貫通孔18を形成しても良い。
【0045】
<基本構成体群16の第3の変形形態例>
次に、図14に示す第3の変形形態例について説明する。図14は上述した図13に対比して図示したものであり、図13と同様に一方側の面の表側から見た図である。この第3の変形形態例は、隣接する基本構成体14同士が接続される稜線個所を面取り形状で接続した構成の形態である。すなわち、上述した第2の変形形態例における隣接する平行四辺形体12同士が接続される稜線個所を面取り形状で接続する構成を無くした構成のものである。なお、図14の形態例の場合は、貫通孔18が形成されている形態例の場合である。この第3の変形形態例の構成によっても、第2の変形形態例の構成の場合と同様の作用効果を成す。
【0046】
<基本構成体群16の第4の変形形態例>
次に、図15及び図16に示す第4の変形形態例について説明する。図15は第4の変形形態例を一方側の面の表側から見た図であり、図16は第4の変形形態例を他方側の面の裏側から見た図である。この第4の変形形態例は、凹凸形状の配置が六方格子状に配置された形態となっているものである。図示構成からその内容は理解可能と考えるので、詳細な説明は省略する。
【0047】
<本実施形態の電気自動車のロッカー内部への適用例>
次に、本実施形態のEA構成部材10の基本構成体群16を、電気自動車のロッカー20の内部に適用した構成について説明する。図17はロッカー20のインナー部材22とアウター部材24との間にEA構成部材10を装備した斜視図を示す。図17はインナー部材22とアウター部材24との間に倒れ防止板26が配置され、この倒れ防止板26とインナー部材22とアウター部材24との空間部にEA構成部材10が装備された構成例を示す。
【0048】
図18図17に示す構成例と同様の構成例であるが、倒れ防止板26とインナー部材22とアウター部材24との空間部に装備されているEA構成部材10の基本構成体群16が2段の配置となっている構成例である。符号12Aが一段目の部材であり、符号12Bが2段目の部材である。これによりエネルギー吸収量の増大を図ったものである。
【0049】
なお、上記の構成例において、次に示すような変形構成をとることもできる。先ず、アウター部材24を省略する構成、この場合にはインナー部材22と倒れ防止板26によりロッカー20が構成される。次に、倒れ防止板26が省略された構成、この場合にはインナー部材22とアウター部材24によりロッカー20が構成される。
【0050】
なお、図17及び図18に符号28で示す部位は、EA構成部材10の基本構成体群16の凸部形状及び凹部形状がロッカー20のアウター部材24に接合された接合部位箇所を示す。この実施形態では、中間部位の接合はされていない構成となっている。
【0051】
上記のように電気自動車のロッカー20の内部にEA構成部材10が装備されることにより、側面衝突(側突)等の衝撃荷重がロッカー20の内部に加わった場合、ロッカー20の内部でその衝突荷重のエネルギー吸収作用が確実に行われる。これにより、電気自動車のロッカー20の内側位置に配置されるバッテリー等の保護を図ることができる。
【0052】
<本実施形態の車両のバッテリーケース30の側面への適用例>
次に、本実施形態のEA構成部材10を、車両に搭載されるバッテリーケース30の側面に配置される場合の構成について説明する。図19はバッテリーケース30の側面と車両のロッカー20との間にEA構成部材10が装備された構成例を示す。バッテリーケース30は内部にバッテリー32を備える。バッテリー32は車両の電源となる機器であり、車両の重要部品である。このため、車両の衝突荷重による損傷からの保護を図ることが必要とされる。本適用例もそのための構成である。
【0053】
本適用例では、バッテリー32に側面衝突の衝突荷重が作用する側のバッテリーケース30の側面にEA構成部材10の基本構成体群16が配置されている。この位置は、車両のロッカー20との間の空間部位置となっている。この空間部位置に配置された基本構成体群16はロッカー20に接合されて固定されている。図19ではその固定のための接合個所が符号34で示されている。
【0054】
この適用例では、バッテリーケース30の側面にEA構成部材10の基本構成体群16が配置される。これにより、車両のバッテリーケース30に側突荷重等の衝撃外力が加わる場合に、EA構成部材10により衝突荷重のエネルギー吸収作用が確実に行われるため、バッテリー32の保護を図ることができる。
【0055】
<その他の実施形態>
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、その他各種の形態でも実施できる。
【0056】
例えば、上記実施形態の車両用エネルギー吸収構成部材は、電気自動車のロッカー内部に配置するか、バッテリーケースの側面に配置される構成であったが、その他の部位に配置する構成であっても良い。
【0057】
また、上述した実施形態においては、平行四辺形体の形成面に貫通孔を形成したが、貫通孔を形成しなく、形成面全体を平面形状とする構成であっても良い。
【0058】
また、上述した実施形態においては、貫通孔を形成する場合には、円形孔であったが、貫通孔は円形孔に限らずその他の角形の貫通孔であっても良い。
【0059】
また、上述した実施形態においては、車両用エネルギー吸収構成部材は鋼鈑製であったが、プレス成形できる材質であればよい。
【0060】
<「課題を解決するための手段」に記載した各発明の作用効果>
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0061】
先ず、第1の発明によれば、立方体形状で見て六角形形成体における三面で形成された基本構成体が連結構成されて基本構成体群が構成される。この基本構成体群が、一方側の面から見た場合に、基本構成体における三つの平行四辺形体が重なった第1頂点が凸部となり、第1頂点の凸部を囲んで前記基本構成体が他の基本構成体と重なり合うことにより形成される周囲の六つの第2頂点のうち半分が凹部、残り半分が前記凸部と前記凹部との中間の高さとなる中間部が交互に配設されて、連続した六方格子状に配置される。この構成によれば、一つの凸部から複数の凹部へ衝撃外力のエネルギーの伝達が行われて、凹凸が座屈変形することにより、高い効率のエネルギー吸収作用が行われる。
【0062】
また、第1の発明によれば、基本構成体群に形成される凸部、凹部、及び中間部の一方側の面から見た高さ方向の配置形状は、負角のない構成で、プレス成形が可能な構成とされる。これにより、本発明の車両用エネルギー吸収構成部材は、プレス成形により安価に形成することが可能となる。
【0063】
次に、第2の発明によれば、隣接する平行四辺形体同士、及び隣接する基本構成体同士が接続される稜線個所が面取り形状で接続される。これにより、面取り形状によりできた隣り合う2つの角部(屈曲線部)が座屈変形時の抵抗となり、エネルギー吸収機能に寄与する。
【0064】
次に、第3の発明によれば、平行四辺形体の形成面には貫通孔が形成される。これにより、貫通孔の位置と数により、エネルギー吸収のための座屈変形タイミングと、それに伴いエネルギー吸収量を調整できる。
【0065】
次に、第4の発明によれば、貫通孔は円形孔である。円形孔は角部のない形状であり、滑らかな形状であることから、エネルギー吸収作用時において応力集中を避けることができる。
【0066】
次に、第5の発明によれば、車両用エネルギー吸収構成部材を形成するエネルギー吸収形成体は鋼板とされており、プレス成形で形成される。これにより、材料が比較的安価な鋼板が用いられて、プレス成形により形成されることから、安価に製作することができる。
【0067】
次に、第6の発明によれば、車両用エネルギー吸収構成部材は、電気自動車のロッカー内部に装備される、したがって、衝撃外力が加わった場合に、電気自動車のロッカー内部のエネルギー吸収作用が良好に行われる。
【0068】
次に、第7の発明によれば、車両用エネルギー吸収構成部材は、車両に搭載されるバッテリーケースの側面に配置される。これにより、車両のバッテリーケースに衝撃外力が加わる場合に、バッテリーケースの側面に配置されるエネルギー吸収構成部材によりエネルギー吸収作用が行われて、バッテリーケースの保護が図られる。
【符号の説明】
【0069】
10 車両用エネルギー吸収構成部材(EA構成部材)
12 平行四辺形体
12a 三角形体
12b 三角形体
12A 第1の平行四辺形体
12B 第2の平行四辺形体
12C 第3の平行四辺形体
14 基本構成体
16 基本構成体群
18 貫通孔(円形孔)
20 ロッカー
22 インナー部材
24 アウター部材
26 倒れ防止板
28 接合部位
30 バッテリーケース
32 バッテリー
34 接合個所
36 面取り形状
38 面取り形状
39 角部(屈曲線部)
40 角部(屈曲線部)
m 対角線
h 辺部
● 凸部形状
○ 凹部形状
△ 中間部形状
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図19