(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】半透膜支持体
(51)【国際特許分類】
B01D 69/10 20060101AFI20231023BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20231023BHJP
B01D 71/26 20060101ALI20231023BHJP
D01F 8/06 20060101ALI20231023BHJP
D21H 13/14 20060101ALI20231023BHJP
D21H 15/10 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/26
D01F8/06
D21H13/14
D21H15/10
(21)【出願番号】P 2021072981
(22)【出願日】2021-04-23
(62)【分割の表示】P 2019507008の分割
【原出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-04-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2017058938
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017068286
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017253974
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018001565
(32)【優先日】2018-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018010982
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 圭介
(72)【発明者】
【氏名】志水 祐介
(72)【発明者】
【氏名】落合 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】増田 敬生
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】金 公彦
【審判官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/049231(WO,A1)
【文献】特開平7-227941(JP,A)
【文献】特開2012-106177(JP,A)
【文献】特開2012-250223(JP,A)
【文献】特開2014-128769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
D01F 8/06
D04H 1/541
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質性樹脂から構成される半透膜を設けて用いられる半透膜支持体において、該半透膜支持体が、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする
、繊維径が1~30μmの芯鞘型複合繊維を含有してなる湿式不織布であり、該半透膜支持体の半透膜を設ける塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度が、逆側の面である非塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度に比べ、いずれも、高く、該半透膜支持体の半透膜を設ける塗布面のベック平滑度が1.0~51.0sec.であり、且つ塗布面:非塗布面とのベック平滑度の比が1.3:1.0~1.1:1.0であり、該半透膜支持体の塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度が10~30%であり、CD方向の75度鏡面光沢度が8~25%であり、塗布面:非塗布面とのMD方向の光沢度の比が1.0:0.9~1.0:0.7であ
り、半透膜支持体の坪量は20~150g/m
2
であることを特徴とする半透膜支持体。
【請求項2】
該芯鞘型複合繊維として、平均繊維径9μm超11μm以下の芯鞘型複合繊維Aを含有し、その含有量が100質量%であることを特徴とする請求項1記載の半透膜支持体。
【請求項3】
前記半透膜が、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂の何れかで構成されている請求項1又は2記載の半透膜支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半透膜支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造等の分野で、半透膜が広く用いられている。半透膜の分離機能層としては、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂等の多孔質性樹脂で構成されている。しかし、これら多孔質性樹脂単体では機械的強度に劣るため、不織布や織布などの繊維基材からなる半透膜支持体の片面に半透膜が設けられた複合体の形態である「濾過膜」が使用されている。半透膜支持体において、半透膜が設けられる面を「塗布面」と称し、半透膜が設けられない面を「非塗布面」と称する。
【0003】
半透膜支持体に半透膜が設けられた形態である「濾過膜」は、上述したポリスルホン系樹脂等の合成樹脂を有機溶媒に溶解して、半透膜溶液を調製した後、この半透膜溶液を半透膜支持体上に塗布する方法が広く用いられている。また、濾過膜はモジュール化されて使用される。シート状の濾過膜における代表的なモジュールは、スパイラル型モジュールと平膜型モジュールである。管状の濾過膜における代表的なモジュールは、管型/チューブラー型モジュールである(非特許文献1参照)。スパイラル型モジュールは、原水供給側流路材と濾過膜と処理水透過側流路材とを一緒に巻き上げた構造を有している(特許文献1参照)。また、平膜型モジュールでは、ポリプロピレンやアクリロニトリル(Acrylonitrile)・ブタジエン(Butadiene)・スチレン(Styrene)共重合合成樹脂(ABS樹脂)等の樹脂からなるフレーム材に、濾過膜を接着・固定して用いられる。フレーム材への接着・固定には加熱融着処理、超音波融着処理等が行われるのが一般的である。
【0004】
半透膜支持体としては、一般に、パルプ繊維を抄紙して得られる紙、ポリエステル繊維から形成した不織布が用いられる。しかし、濾過膜は様々な条件下で用いられ、原水がアルカリ性液の場合や濾過膜を繰り返し洗浄した場合やアルカリ性液で逆洗浄した場合、上記のパルプ繊維、ポリエステル繊維を使用した半透膜支持体はアルカリ性液によって劣化し易く、濾過膜の性能低下、破損、損傷等を起こすことがある(特許文献1~5参照)。
【0005】
耐アルカリ性を改良した半透膜支持体として、ポリオレフィン系繊維によって構成される半透膜支持体が開示されている。例えば、ポリプロピレン不織布からなる半透膜支持体(特許文献6参照)、ポリプロピレンを芯材とし、ポリエチレンを鞘材として複合したオレフィン繊維を熱処理することで製造された半透膜支持体(特許文献7及び11参照)が提案されている。また、ポリオレフィン系主体繊維及びポリオレフィン系バインダー繊維を含む半透膜支持体であり、ポリオレフィン系主体繊維がポリプロピレン繊維であり、ポリオレフィン系バインダー繊維がポリプロピレン系樹脂を芯材とし、ポリエチレン系樹脂を鞘材とする芯鞘型複合繊維である半透膜支持体(特許文献8参照)が提案されている。
【0006】
これらのオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体を使用した濾過膜においても、繰り返しの洗浄や逆洗浄を実施することによって、半透膜の性能が劣化していく場合があった。半透膜の性能が劣化していくことによって、洗浄回数が更に増加することや装置を停止させてメンテナンスをすることが必要になり、時間が多く取られることによって、運転効率の低下が問題となる。
【0007】
また、これらのオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体を使用した濾過膜を樹脂フレームに接着する際も、非塗布面と樹脂フレームが接着はするものの、接着性は十分ではなかった。また、半透膜を設ける工程において、裏抜けが発生する問題が生じる場合があった。さらに、ポリプロピレン繊維を含有している場合、半透膜支持体の表面上に毛羽が立ちやすく、半透膜溶液塗工時に、膜欠陥を生じ易いという問題が生じる場合があった。
【0008】
また、バインダー繊維としてエチレンビニルアルコール系繊維を用いた不織布からなる半透膜支持体(特許文献9参照)が提案されている。特許文献9の半透膜支持体は、地合、強度、耐アルカリ性に優れるが、耐熱性に劣るために、半透膜支持体に半透膜を設ける製造工程において皺やカールが発生するといった問題が生じている。
【0009】
ところで、特許文献8では、半透膜支持体の平滑度、通気度、引張強度、坪量を調整することで、塗布面と半透膜との接着性に優れた半透膜支持体が得られることが開示されている。また、半透膜と塗布面との接着性などを改良することを目的に、塗布面と非塗布面の平滑度の比を調整する方法も提案されている(特許文献10参照)。特許文献8及び10では、JIS P8119に準拠したベック平滑度を測定している。しかし、ベック平滑度は、ガラス製の標準面を半透膜支持体表面に所定の圧力で押し当て、その間を所定の圧力差で一定の空気量が抜けるのに要する時間を測定する方法であり、熱処理により軟化又は溶融を生じるオレフィン系繊維によって構成される半透膜支持体の接着性を評価するには、ベック平滑度だけでは、十分では無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特公平04-21526公報
【文献】特許第3153487号公報
【文献】特開2002-95937号公報
【文献】特開2010-194478号公報
【文献】特開2012-101213号公報
【文献】特開昭56-152705号公報
【文献】特開2001-17842号公報
【文献】特開2014-128769号公報
【文献】特開2012-250223号公報
【文献】国際公開第2011/049231号パンフレット
【文献】特開2012-106177号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】下水道膜処理技術会議編、「下水道への膜処理技術導入のためのガイドライン」、第2版、[online]、平成23年3月、[平成28年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.mlit.go.jp/common/000146906.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、上記実情を鑑みたものであって、ポリオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体において、半透膜成分が浸透しやすいが、裏抜けしにくく、半透膜支持体と半透膜との接着性に優れ、非塗布面と樹脂フレームとの接着性にも優れた半透膜支持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、下記<2>及び<7>、並びに<9>に記載のとおりである。
【0014】
<2>
多孔質性樹脂から構成される半透膜を設けて用いられる半透膜支持体において、該半透膜支持体が、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする、繊維径が1~30μmの芯鞘型複合繊維を含有してなる湿式不織布であり、該半透膜支持体の半透膜を設ける塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度が、逆側の面である非塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度に比べ、いずれも、高く、該半透膜支持体の半透膜を設ける塗布面のベック平滑度が1.0~51.0sec.であり、且つ塗布面:非塗布面とのベック平滑度の比が1.3:1.0~1.1:1.0であり、該半透膜支持体の塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度が10~30%であり、CD方向の75度鏡面光沢度が8~25%であり、塗布面:非塗布面とのMD方向の光沢度の比が1.0:0.9~1.0:0.7であり、半透膜支持体の坪量は20~150g/m
2
であることを特徴とする半透膜支持体。
【0015】
<7>
該芯鞘型複合繊維として、平均繊維径9μm超11μm以下の芯鞘型複合繊維Aを含有し、その含有量が100質量%であることを特徴とする<2>記載の半透膜支持体。
<9>
前記半透膜が、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂の何れかで構成されている<2>又は<7>記載の半透膜支持体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ポリオレフィン系繊維を含有する半透膜支持体において、半透膜成分が浸透しやすいが、裏抜けしにくく、半透膜支持体と半透膜との接着性に優れ、非塗布面と樹脂フレームとの接着性にも優れた半透膜支持体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明において、熱圧加工装置で使用されるロールの組合せ及び配置並びにシートの通紙状態を表した概略図である。
【
図2】本発明において、熱圧加工装置で使用されるロールの組合せ及び配置並びにシートの他の通紙状態を表した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、「ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維」を「PP/PE芯鞘繊維」と略記する場合がある。
【0019】
本発明に使用されるPP/PE芯鞘繊維は、溶融紡糸機を用い、芯鞘型複合紡糸用口金を用いて溶融紡糸される。紡糸温度は、鞘成分であるポリエチレンが変質しない温度で実施され、紡糸温度200℃以上300℃以下で重合体を押し出し、所定の繊度の紡糸フィラメントを作製する。紡糸フィラメントには、必要に応じて延伸処理を実施する。延伸処理は、鞘成分であるポリエチレンが融着しない温度で実施され、例えば、延伸温度50℃以上100℃以下の範囲で、延伸倍率2倍以上で処理すると、繊維強度が向上して好ましい。得られたフィラメントには、必要に応じて繊維処理剤を付与し、親水性や分散性を制御した後、所定の長さに切断して、不織布製造用の芯鞘型複合繊維として使用される。
【0020】
PP/PE芯鞘繊維を構成する芯成分はポリプロピレンであるが、繊維物性を調整するため、必要に応じてポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、芯成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加する場合の添加量は、好ましくは樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲である。
【0021】
次に、PP/PE芯鞘繊維を構成する鞘成分はポリエチレンであるが、例えば、HDPE、LDPE、LLDPE等のポリエチレンが挙げられる。繊維物性を調節するため、必要に応じてポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィンを混合することができる。前記ポリオレフィンの混合比率としては、鞘成分の10質量%以下であることが好ましい。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに用いられる樹脂添加剤を添加することができる。樹脂添加剤としては、各種酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。添加する場合の添加量は、好ましくは樹脂に対して0.01質量%以上1.0質量%以下の範囲である。
【0022】
本発明において、PP/PE芯鞘繊維は、バインダー繊維として機能する。バインダー繊維は、乾燥工程又は熱圧工程での熱により軟化・溶融することによって、接着性を発現し、繊維間の接着に関与し、半透膜支持体の機械的強度を向上させる。PP/PE芯鞘繊維は皮膜を形成しにくいので、半透膜支持体の空間を保持したまま、機械的強度を向上させることができる。
【0023】
本発明において、ポリオレフィン系繊維とは、1つ以上の二重結合を分子内に有し、炭素と水素を構成元素とする一種類以上の単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸して繊維化したものであり、ポリビニルアルコール繊維(ビニロン繊維)やエチレン-ビニルアルコール共重合体繊維等のように、炭素と水素以外の構成元素を含有する単量体を重合した単一樹脂又は共重合樹脂を溶融紡糸した繊維は含まない。前記PP/PE芯鞘繊維と併用して使用することのできるポリオレフィン系繊維としては、例えばポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等の単一成分からなる繊維、2種類以上の異なるポリオレフィンの混合物からなる混合ポリオレフィン系繊維、2種類以上の異なるオレフィンの共重合体からなる共重合ポリオレフィン系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリオレフィン等の樹脂を適宜組み合わせた、芯鞘型、サイドバイサイド型、偏芯型あるいは分割性複合繊維等が挙げられる。
【0024】
本発明における繊維の平均繊維径は、湿式不織布断面をマイクロスコープにて観察し、無作為に選んだ50本以上の繊維の断面積を求め、その繊維断面を同じ面積の円形とした場合の当該円の繊維直径の値である。
【0025】
本発明<2>の半透膜支持体は、一方の面に半透膜を設けて用いられる半透膜支持体であり、該半透膜支持体が、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有してなる湿式不織布であり、該半透膜支持体の半透膜を設ける塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度が、逆側の面である非塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度に比べ、いずれも、高いことを特徴とする。
【0026】
本発明<2>において、好ましくは、塗布面のベック平滑度が1.0~51.0sec.であり、且つ塗布面:非塗布面のベック平滑度の比が1.3:1.0~1.1:1.0である半透膜支持体である。また、好ましくは、塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度が10~30%であり、CD方向の75度鏡面光沢度が8~25%であり、塗布面:非塗布面のMD方向の光沢度の比が1.0:0.9~1.0:0.7である半透膜支持体である。
【0027】
本発明<2>の検討の結果、ポリプロピレンを芯成分とし、ポリエチレンを鞘成分とする芯鞘型複合繊維を含有してなる湿式不織布において、塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度の両方が、逆側の面である非塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度に比べ高いことにより、均一な半透膜の形成を促し、且つ濾過膜を加工する際の加工性に優れた半透膜支持体を得ることが可能となった。75度鏡面光沢度を用いることで、熱加工処理において溶融を起こした繊維の度合いを簡便に判断することができる。溶融を起こした繊維が過度に多い場合又は少ない場合、濾過膜を加工する際の加工性が低下する。
【0028】
本発明<2>において、半透膜支持体の塗布面のベック平滑度が1.0~51.0sec.であることが好ましい。この範囲である場合、半透膜溶液を塗布する際に、半透膜溶液を均一に塗布することができ易くなり、均一な半透膜が形成され易くなる。半透膜の塗布面のベック平滑度は、より好ましくは10.0~40.0sec.であり、更に好ましくは20.0~25.0sec.である。
【0029】
本発明<2>において、半透膜支持体の塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度は10~30%であることが好ましい。この範囲である場合、塗布面の繊維間接着力が強くなり、毛羽立ちが生じ難く、半透膜を形成する際に欠陥を生じ難く、均一な半透膜が形成され易くなる。また、半透膜溶液を塗布した際に、半透膜支持体内部へ半透膜溶液が適度に浸透し、塗布面と半透膜との良好な接着性が得られ易くなる。半透膜支持体の塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度は、より好ましくは15~25%であり、更に好ましくは18~23%である。
【0030】
本発明<2>において、半透膜支持体の塗布面のCD方向の75度鏡面光沢度は8~25%であることが好ましい。この範囲である場合、塗布面の繊維間接着力が強くなり、毛羽立ちが生じ難く、半透膜を形成する際に欠陥を生じ難い。また、半透膜溶液を塗布した際に、半透膜支持体内部へ半透膜溶液が適度に浸透し、塗布面と半透膜との良好な接着性が得られ易くなる。半透膜支持体の塗布面のCD方向の75度鏡面光沢度は、より好ましくは10~22%であり、更に好ましくは17~20%である。
【0031】
本発明<2>において、半透膜支持体の塗布面:非塗布面のベック平滑度の比が1.3:1.0~1.1:1.0であることが好ましい。ベック平滑度は、JIS P8119に準じ、ベック平滑度試験機を用いて測定することができる。塗布面:非塗布面のベック平滑度の比がこの範囲である場合、半透膜溶液の塗布工程でカールや皺が発生し難く、半透膜と半透膜支持体との接着性が低下し難い。また、半透膜と半透膜支持体との接着性及び非塗布面と樹脂フレームとの接着性の両方が得られ易い。半透膜支持体の塗布面:非塗布面のベック平滑度の比は、より好ましくは1.2:1.0~1.1:1.0である。
【0032】
本発明<2>において、半透膜支持体の塗布面:非塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度の比が1.0:0.9~1.0:0.7であることが好ましい。75度鏡面光沢度は、JIS P8142に準じ、光沢度試験機を用いてMD方向及びCD方向の75度鏡面光沢度を測定することができる。塗布面:非塗布面の75度鏡面光沢度の比がこの範囲である場合、半透膜溶液の塗布工程で溶液の裏抜けが生じ難い。また、半透膜支持体がカールし難く、半透膜溶液の塗布工程や濾過膜の加工工程で皺等の不具合が生じ難い。半透膜支持体の塗布面:非塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度の比は、より好ましくは1.0:0.8~1.0:0.7である。
【0033】
本発明<2>において、塗布面のベック平滑度、75度鏡面光沢度、ベック平滑度の比及び75度鏡面光沢度の比は、下記の方法を適宜組み合わせることによって、調整することができる。
a)半透膜支持体を構成する繊維の繊維径を調節する。
b)半透膜支持体の坪量を調節する。
c)半透膜支持体の熱処理温度を調整する。
d)半透膜支持体の繊維配向を調整する。
【0034】
本発明<2>の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維の含有率は、全繊維に対し、30質量%以上であることが好ましい。より好ましくは50質量%以上であり、更に好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。PP/PE芯鞘繊維の含有量が30質量%以上である場合、不織布製造時に割れや皺等が発生し難くなり、地合の均一性や製造安定性が向上する。また、半透膜溶液の塗布工程で、皺・カールが発生し難く、半透膜支持体と半透膜との接着性も向上する。
【0035】
本発明<2>では、半透膜支持体のPP/PE芯鞘繊維の含有率が30質量%以上であることが好ましいが、PP/PE芯鞘繊維を含めたすべてのポリオレフィン系繊維の含有率は、全繊維に対し、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、98質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。ポリオレフィン系繊維の含有率が90質量%以上の場合、優れた耐アルカリ性を示す。
【0036】
本発明の半透膜支持体<2>で使用される繊維の繊維径は、不織布強度と製造性等の点から、また、本発明<2>においては、ベック平滑度及び光沢度を調整する点から、繊維径は、1μm以上30μm以下が好ましく、より好ましくは3μm以上25μm以下、特に好ましくは5μm以上20μm以下である。本発明<2>の半透膜支持体では、PP/PE芯鞘繊維として、平均繊維径9μm超11μm以下のPP/PE芯鞘繊維を含有することが好ましく、また、その含有率が100質量%であることが好ましい。
【0037】
本発明の半透膜支持体<2>で使用される繊維の繊維長は、特に限定されないが、1mm以上20mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以上12mm以下、特に好ましくは3mm以上10mm以下である。繊維の断面形状は円形が好ましいが、T型、Y型、三角等の異形断面を有する繊維も、裏抜け防止、表面平滑性のために、繊維分散性等の他の特性を阻害しない範囲内で含有できる。また、分割性複合繊維を水流交絡やリファイナーにより細分化して使用することもできる。
【0038】
本発明の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維を含有する不織布である。不織布原布(シート)は、湿式抄造法という、公知の方法によって製造することができる。
【0039】
例えば、カード法、クロスレイヤー法は、繊維長の長い繊維を用いることができるが、均一な原反化が困難で、地合が悪く、透過光で観測すると、斑点模様が見られる。このため、半透膜の裏抜けを防ぐような空隙径を得るには、高目付にしなければならないという問題がある。一方、湿式抄造法は、生産速度が上記方法に比べて速く、同一装置で繊維径の異なる繊維や複数の種類の繊維を任意の割合で混合できる利点がある。即ち、繊維の形態もステープル状、パルプ状等と選択の幅は広く、使用可能な繊維径も、極細繊維から太い繊維まで使用可能で、他の方法に比べ、極めて良好な地合の原布が得られる方法である。さらに、分割型複合繊維を用いた場合、該繊維を分割するに当たり、パルパーや高速ミキサーやビーター等の離解機での離解工程、及び分散工程で分割型複合繊維をほぼ完全に分割させることができる。このようなことから、極めて応用範囲が広い原布形成法である。そこで、本発明の半透膜支持体に用いる不織布原布の製造方法としては、湿式抄造法が最適である。
【0040】
湿式抄造法では、まず、繊維を均一に水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.01~0.50質量%に調成されたスラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙が得られる。工程中で分散剤、消泡剤、親水剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
【0041】
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網が単独で設置されている抄紙機、同種又は異種の2種以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。本発明の半透膜支持体が多層不織布である場合、その製造方法としては、各抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する「抄き合わせ法」や、先に形成した一層上に繊維を分散したスラリーを流延して、他の層を形成して積層していく「流延法」等が挙げられる。流延法において、先に形成した一層は湿紙状態であっても良いし、乾燥状態であっても良い。また、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて、多層不織布とすることもできる。
【0042】
本発明<2>において、繊維配向の調整としては、例えば、抄紙機を用いて抄造する際に、抄造速度を速くすることで、繊維が抄紙機の流れ方向に対して平行に並び易くなり、抄造速度を遅くすることで、繊維が流れ方向に対して直角に近い角度で並び易くなる。また、抄紙網上に繊維を含むスラリーを投入する際、投入速度を遅くすることで、繊維が抄紙機の流れ方向に対して平行に並び易くなり、投入速度を速くすることで、繊維が流れ方向に対して直角に近い角度で並び易くなる。また、抄紙網上に繊維を含むスラリーを投入後、抄紙網を振動させて、振動方向、振動速度、振幅を調整することで、異なる繊維配向を得ることができる。これらの方法を単独で又は組み合わせて使用することで、半透膜支持体の繊維配向を調整することができる。また、これら以外の方法を用いて繊維配向を調整しても良い。
【0043】
抄紙網で製造された湿紙を、ドライヤーで乾燥する乾燥工程を経て、シート(不織布原布)を得る。湿式抄造法の乾燥工程において、バインダー繊維の熱融着によるバインダー接着法により不織布が形成される。乾燥工程におけるドライヤーの加熱乾燥方式としては、ヤンキードライヤーに代表される熱板圧着方式、バンド式スルードライヤー、エアスルードライヤーに代表される熱風通気方式等が挙げられるが、本発明においては熱板圧着方式による加熱乾燥がより好ましい。熱板圧着方式では、PP/PE芯鞘繊維の熱融着効率が高く、地合の均一性が高く、強度が向上した不織布を得ることができる。
【0044】
ヤンキードライヤー等の熱ロールに繊維ウェブを接着させて乾燥を行う場合、
本発明<2>においては、熱ロールの表面温度は、100~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましく、110~135℃が更に好ましい。熱ロールの表面温度が100℃を下回る場合、抄紙機で製造された湿紙の水分が十分に蒸発せず、シートの厚み均一性が悪くなる場合があり、熱ロールの表面温度が180℃を超える場合、抄紙機で製造された湿紙が熱ロールに貼り付いて、シートの地合が悪くなる場合がある。圧力は、好ましくは5~100kN/mであり、より好ましくは10~80kN/mである。圧力が5kN/mを下回る場合、抄紙機で製造された湿紙の水分が十分に抜けず、シートの厚み均一性が悪くなる場合があり、100kN/mを超える場合、抄紙機で製造された湿紙が熱ロールに貼り付いて、シートの地合が悪くなる場合がある。
【0045】
本発明の半透膜支持体において、不織布原布製造後、熱ロールによる熱圧工程を経ることがさらに好ましい。熱圧工程では、熱圧加工装置(カレンダー装置)のロール間をニップしながら、湿式抄造法で製造されたシートを通過させて熱圧加工を行う。ロールの組み合わせとしては、2本の金属ロール、金属ロールと樹脂ロール、金属ロールとコットンロール等が挙げられる。2本のロールのうち、一方又は両方を加熱して熱ロールとする。一般的には、金属ロールが加熱される。そして、熱ロールの表面温度、ロール間のニップ圧力、加工速度を制御することによって、所望の半透膜支持体を得る。
【0046】
図1及び
図2は、本発明<2>において、熱圧加工装置で使用されるロールの組合せ及び配置並びにシートの通紙状態を表した概略図である。
図1及び
図2は、一例であり、これらに限定されるものではない。
図1及び
図2において、金属ロールは横縞模様、コットン又は弾性ロールは点模様である。金属ロール、弾性ロール、コットンロールのいずれも熱ロールとして使用できるが、好ましくは、金属ロール、弾性ロールを熱ロールとして使用する。より好ましくは、金属ロールを熱ロールとして使用する。
【0047】
本発明<2>において、熱圧加工処理に用いるロールの表面温度は、示差熱分析によって測定した繊維の融点又は軟化点に対して-50℃~+10℃(50℃低い温度から10℃高い温度の範囲)であることが好ましく、-30℃~±0℃がより好ましい。ロール温度の表面温度を、シートに含まれる繊維の融点又は軟化温度より50℃を超えて低くすると、毛羽立ちが発生しやすくなる場合があり、均一な厚みの半透膜が得難くなる。一方、ロールの表面温度を、10℃を超えて高くすると、金属ロールに繊維の溶融分が付着して、半透膜支持体が不均一になる場合があり、均一な厚みの半透膜が得難くなる。
【0048】
本発明<2>において、熱圧加工処理に用いる熱ロールのニップ圧力は、好ましくは50~250kN/mであり、より好ましくは70~180kN/mである。加工速度は、好ましくは5~100m/minであり、より好ましくは10~50m/minである。
【0049】
本発明<2>において、ロールニップを構成する2本のロールの半径は同一でも、異なっていても良い。ロール半径は50~2000mmが好ましく、より好ましくは100~1500mmである。ロール半径が50mm未満の場合、所望の厚みが得られにくくなり、一方、ロール半径が2000mmを超えると、表面温度のコントロールが困難になる。
【0050】
本発明<2>において、ロールの弾性率は、4kN/cm2~22000kN/cm2が好ましく、200kN/cm2~21000kN/cm2がより好ましい。ロールの弾性率が4kN/cm2未満だと、ロール表面が変形して所望の厚みが得られにくくなり、一方、弾性率が22000kN/cm2を超えると、ロール表面が硬すぎて、シートに皺が発生する場合がある。
【0051】
半透膜支持体の坪量は特に限定しないが、20~150g/m2が好ましく、より好ましくは30~110g/m2、特に好ましくは40~80g/m2である。20g/m2未満の場合は、十分な引張強度が得られない場合がある。また、半透膜溶液が裏抜けしてしまい、半透膜の接着性が弱くなる場合がある。また、150g/m2を超えた場合、通液抵抗が高くなる場合や厚みが増してユニットやモジュール内に規定量の濾過膜を収納できない場合がある。また、製造工程で乾燥負荷が大きくなり、製造安定性が低下し易くなる。
【0052】
本発明の半透膜支持体は、2枚以上の不織布を該熱加工処理と同様の方法を用いて張り合わせてなる多層不織布であっても良い。各不織布の坪量は同一であっても良いし、異なっていても良い。この場合、製造工程での乾燥負荷を抑えつつ、150~300g/m2の半透膜支持体を得ることができる。300g/m2を超えた場合、張り合わせる工程での負荷が大きくなり、製造安定性が低下し易くなる。
【0053】
また、半透膜支持体の密度は0.25~0.90g/cm3であることが好ましく、より好ましくは0.30~0.80g/cm3、特に好ましくは0.35~0.75g/cm3である。半透膜支持体の密度が0.25g/cm3未満の場合は、厚みが厚くなるため、ユニットに組み込める濾過膜の面積が小さくなってしまい、結果として、半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方0.90g/cm3を超える場合は、通液性が低くなることがあり、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
【0054】
半透膜支持体の厚みは50~300μmであることが好ましく、70~250μmであることがより好ましく、90~200μmであることがさらに好ましい。半透膜支持体の厚みが300μmを超えると、ユニットに組み込める濾過膜の面積が小さくなってしまい、結果として半透膜の寿命が短くなってしまうことがある。一方、50μm未満の場合、十分な引張強度が得られない場合や通液性が低くなって、半透膜の寿命が短くなる場合がある。
【実施例】
【0055】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが本発明は実施例に限定されるものではない。以下、特に断りのない限り、実施例に記載される部及び比率は質量を基準とする。
【0056】
本発明<2>
実施例2-1
PP/PE芯鞘繊維(繊度0.8dtex、繊維長5mm)100質量部を、パルパーの水中で離解、分散させ、撹拌することで均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを傾斜ワイヤーと円網とのコンビネーションマシンを用いて、乾燥質量で各面とも30g/m2の抄合わせ湿紙を形成した後、半透膜塗布面が表面温度135℃のヤンキードライヤーに接触するように熱圧乾燥し、抄合わせ坪量60g/m2のシートを得た。
【0057】
得られたシートに、
図1に示すような、2本の金属ロール(半径450mm、弾性率21000kN/cm
2)からなる第一ロールニップ及び1本の金属ロール(半径450mm、弾性率21000kN/cm
2)と1本の弾性ロールからなる第二ロールニップが連続して設置されている熱圧加工処理装置を用いて、熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。なお、第二ロールニップにおいて、上部の金属ロールに触れる面を傾斜ワイヤー抄紙機にて抄造された面とし、この面を非塗布面とした。
【0058】
熱圧加工の条件
第一ロールニップ
2本の金属ロールの表面温度 125℃
ニップ圧力 80kN/m
第二ロールニップ
金属ロールの表面温度 125℃
ニップ圧力 100kN/m
加工速度 30m/min
【0059】
実施例2-2
実施例2-1で湿式抄造したシートを、
図2に示すような、1本の金属ロール(半径450mm、弾性率21000kN/cm
2)と1本の弾性ロールからなる第一ロールニップ及び1本の金属ロール(半径450mm、弾性率21000kN/cm
2)と1本の弾性ロールからなる第二ロールニップが連続して設置されている熱圧加工処理装置を用いて、熱圧加工を施し、半透膜支持体を得た。なお、第一ロールニップにおいて、上部の金属ロールに触れる面を傾斜ワイヤー抄紙機にて抄造された面とし、この面を塗布面とした。
【0060】
第一ロールニップ
金属ロールの表面温度 125℃
ニップ圧力 100kN/m
第二ロールニップ
金属ロールの表面温度 125℃
ニップ圧力 100kN/m
加工速度 30m/min
【0061】
実施例2-3(参考例)
実施例2-2において、加工速度を25m/minに変更し、且つ第一及び第二ロールニップのニップ圧力を110kN/mに変更し、且つ熱圧加工を2回行った以外は、実施例2-2と同様の手法で、半透膜支持体を得た。
【0062】
実施例2-4
実施例2-1において、湿式抄造したシートを得る際の各面の乾燥質量を40g/m2に変更したことで抄合わせ坪量80g/m2のシートを得た。
【0063】
得られたシートを、実施例2-2と同様の手法で熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0064】
実施例2-5
実施例2-1において、湿式抄造したシートを得る際の各面の乾燥質量を45g/m2に変更したことで抄合わせ坪量90g/m2のシートを得た。
【0065】
得られたシートを、実施例2-2と同様の手法で熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0066】
実施例2-6
実施例2-5において、加工速度を35m/minに変更し、且つ第一及び第二ロールニップの金属ロールの表面温度を120℃に変更した以外は、実施例2-5と同様の手法で、シートを熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0067】
実施例2-7
実施例2-5において、第一及び第二ロールニップの金属ロールの表面温度を110℃に変更し、且つニップ圧力を80kN/mに変更した以外は、実施例2-5と同様の手法で、シートを熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0068】
実施例2-8(参考例)
実施例2-7において、加工速度を40m/minに変更した以外は、実施例2-7と同様の手法で、シートを熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0069】
実施例2-9(参考例)
実施例2-2において、加工速度を35m/minに変更した以外は、実施例2-2と同様の手法で、シートを熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0070】
実施例2-10
実施例2-4において、熱圧加工処理を2回行った以外、実施例2-4と同様の手法で、半透膜支持体を得た。
【0071】
実施例2-11
実施例2-4において、加工速度を25m/minに変更し、且つ第一及び第二ロールニップのニップ圧力を110kN/mに変更した以外は、実施例2-4と同様の手法で、シートを熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0072】
実施例2-12
実施例2-4において、加工速度を33m/minに変更した以外は、実施例2-4と同様の手法で、シートを熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0073】
実施例2-13
実施例2-12において、加工速度を40m/minに変更した以外は、実施例2-12と同様の手法で、シートを熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0074】
実施例2-14
実施例2-4において、加工速度を27m/minに変更し、且つ第一及び第二ロールニップのニップ圧力を110kN/mに変更した以外は、実施例2-4と同様の手法で熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0075】
実施例2-15
実施例2-1において、湿式抄造したシートを得る際の各面の乾燥質量を27.5g/m2に変更したことで抄合わせ坪量55g/m2のシートを得た。
【0076】
得られたシートを、実施例2-2と同様の手法で熱圧加工することによって、半透膜支持体を得た。
【0077】
実施例2-16(参考例)
実施例2-4において、実施例2-4の熱圧加工方法から実施例2-1の熱圧加工方法に変更し、且つ熱圧加工処理を2回行った以外は、実施例2-4と同様の手法で、半透膜支持体を得た。
【0078】
比較例2-1
実施例2-1において、熱圧加工処理装置を用いて、湿式抄造したシートを処理する際、第二ロールニップにおいて、上部の金属ロールに触れる面を傾斜ワイヤー抄紙機にて抄造された面とし、この面を塗布面として、半透膜支持体を得た。
【0079】
比較例2-2
実施例2-2において、熱圧加工処理装置を用いて、湿式抄造したシートを処理する際、第一ロールニップにおいて、上部の金属ロールに触れる面を傾斜ワイヤー抄紙機にて抄造された面とし、この面を塗布面として、半透膜支持体を得た。
【0080】
比較例2-3
実施例2-4において、熱圧加工処理装置を用いて、湿式抄造したシートを処理する際、比較例2-2と同様の手法を用いることで、半透膜支持体を得た。
【0081】
比較例2-4
実施例2-16において、熱圧加工処理装置を用いて、湿式抄造したシートを処理する際、第二ロールニップにおいて、上部の金属ロールに触れる面を傾斜ワイヤー抄紙機にて抄造された面とし、この面を塗布面として、半透膜支持体を得た。
【0082】
実施例及び比較例で得られた半透膜支持体に対して、以下の測定及び評価を行い、結果を表2に示した。
【0083】
測定2-1(ベック平滑度)
JIS P8119に準じ、ベック平滑度試験機を用いて、塗布面及び非塗布面を測定した。
【0084】
測定2-2(75度鏡面光沢度)
JIS P8142に準じ、光沢度試験機(日本電色工業株式会社製、GlossMeter VC7000)を用いて、75度鏡面光沢度を測定した。本測定では、試験片の塗布面のMD方向と測定光の入射方向を一致させて測定し、次いで試験片を180度回転して測定し、少なくとも5枚以上の試験片について同様の測定をしたものの平均値を、JIS Z8401に規定する方法で有効数字2桁にしたものを塗布面のMD方向の光沢度とする。また、試験片の非塗布面に対して同様の測定を行ったものを非塗布面のMD方向の光沢度とする。また、試験片の塗布面のCD方向と測定光の入射光を一致させて測定し、次いで試験片を180度回転して測定し、少なくとも5枚以上の試験片について同様の測定をしたものの平均値を、JIS Z8401に規定する方法で有効数字2桁にしたものを塗布面のMD方向の光沢度とする。本測定において、MD方向とは、抄紙機を用いて抄造した際の流れ方向に対して平行な方向を言い、CD方向とは、流れ方向に対して直角な方向を言う。
【0085】
測定2-3(坪量)
JIS P8124に準拠して、坪量を測定した。
【0086】
測定2-4(厚さ)
JIS P8118に準じ、厚さを測定した。
【0087】
測定2-5(通気度)
通気性試験機(カトーテック株式会社製、商品名:KES-F8-AP1)を使用して、JIS L1096に示す方法で測定した。
【0088】
評価2-1(半透膜滲み込み)
一定のクリアランスを有するコンマコーターを用いて、半透膜支持体の塗布面にポリスルホン樹脂(SOLVAY社製、商品名:ユーデル Udel(登録商標)P-3500 LCD MB3、分子量78000~84000g/mol)のDMF溶液(濃度:21%)を塗布し、水洗、乾燥を行い、半透膜支持体の表面にポリスルホン膜(半透膜)を形成させ濾過膜を作製し、濾過膜の断面SEM写真を撮影して、ポリスルホン樹脂の半透膜支持体への滲み込み度合いを評価した。
【0089】
◎:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の中心付近までしか滲み込んでいない。非常に良好なレベル。
○:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の非塗布面に滲み出ていない。良好なレベル。
△:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の非塗布面に一部滲み出ている。実用上、使用可能レベル。
×:ポリスルホン樹脂が半透膜支持体の非塗布面に滲み出ている。実用上、使用不可レベル。
【0090】
評価2-2(半透膜接着性)
評価2-1で作製した半透膜について、作製1日後、半透膜と半透膜支持体とをその界面で剥がれるようにゆっくりと引き剥がし、剥離するときの抵抗度合いで判断した。
【0091】
◎:半透膜と半透膜支持体の接着性が非常に高く、剥離できない。非常に良好なレベル。
○:部分的に剥離しやすい所が存在する。良好なレベル。
△:半透膜と半透膜支持体とが接着はしているが、全体的に剥離しやすい。実用上、下限レベル。
×:半透膜塗布後の水洗又は乾燥工程で剥離が発生する。使用不可レベル。
【0092】
評価2-3(樹脂フレーム接着性)
評価2-1で得られた半透膜が塗布された半透膜支持体をABS樹脂からなる樹脂フレームに、非塗布面が対向するように載せ、200℃に加熱したヒートシーラーを半透膜が塗布された半透膜支持体側から2秒間接触させ、加熱接着した。加熱接着1日後、半透膜支持体と樹脂フレームとをその界面で剥がれるようにゆっくりと引き剥がし、剥離するときの抵抗度合いで判断した。
【0093】
◎:半透膜支持体と樹脂フレームとの接着性が非常に高く、剥離できない。非常に良好なレベル。
○:部分的に剥離しやすい所が存在する。良好なレベル。
△:半透膜支持体と樹脂フレームとの接着は問題無いが、半透膜のひび割れ、半透膜支持体からの脱落が認められる。
△×:半透膜支持体と樹脂フレームとの接着が弱く、全体的に剥離しやすい。実用上、下限レベル。
×:簡単に剥離する。あるいは半透膜支持体と樹脂フレームとの接着はするが、半透膜のひび割れ、半透膜支持体からの脱落が酷く、使用不可レベル。
【0094】
【0095】
実施例2-1~2-16の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維を含有してなる湿式不織布であり、塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度が、非塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度に比べ高い半透膜支持体であり、半透膜滲み込み、半透膜接着性、樹脂フレーム接着性の評価において、良好なレベルを達成した。
【0096】
これに対して、比較例2-1~2-3の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維を含有してなる湿式不織布であり、塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度が、非塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度に比べ低い半透膜支持体であり、半透膜接着性は良好なものの、半透膜滲み込み及び樹脂フレーム接着性が使用不可レベル又は実用上下限レベルであった。
【0097】
また、比較例2-4の半透膜支持体は、PP/PE芯鞘繊維を含有してなる湿式不織布であり、塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度が、非塗布面のベック平滑度及び75度鏡面光沢度に比べ低い半透膜支持体であり、半透膜接着性及び樹脂フレーム接着性が使用不可レベルであった。
【0098】
塗布面のベック平滑度が1.0~51.0sec.であり、且つ塗布面:非塗布面とのベック平滑度の比が1.3:1.0~1.1:1.0である実施例2-1、2-2、2-4~2-7、2-9~2-15の半透膜支持体は、塗布面:非塗布面とのベック平滑度の比が1.4:1.0である実施例2-3の半透膜支持体、塗布面のベック平滑度が0.9sec.である実施例2-8の半透膜支持体、及び、塗布面のベック平滑度が120sec.であり、且つ塗布面:非塗布面とのベック平滑度の比が2.4である実施例2-16の半透膜支持体と比較して、半透膜接着性及び樹脂フレーム接着性の少なくとも一方が良かった。
【0099】
塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度が10~30%であり、CD方向の75度鏡面光沢度が8~25%であり、塗布面:非塗布面とのMD方向の光沢度の比が1.0:0.9~1.0:0.7である実施例2-1~2-7、2-10~2-15の半透膜支持体は、塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度が8%であり、CD方向の75度鏡面光沢度が7%である実施例2-8、塗布面:非塗布面とのMD方向の光沢度の比が1.0:0.6である実施例2-9、及び、塗布面のMD方向の75度鏡面光沢度が34%であり、CD方向の75度鏡面光沢度が32%である実施例2-16と比較して、樹脂フレーム接着性が良かった。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の半透膜支持体は海水の淡水化、浄水器、食品の濃縮、廃水処理、血液濾過に代表される医療用、半導体洗浄用の超純水製造、膜分離活性汚泥処理等の分野で利用することができる。特に膜分離活性汚泥処理法で好ましく利用することができる。