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特許7371073少なくとも3つの重ね合わせた金属薄板層を接合した金属薄板積層体を有するアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】少なくとも3つの重ね合わせた金属薄板層を接合した金属薄板積層体を有するアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/01 20060101AFI20231023BHJP
   B21D 39/03 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B32B15/01 K
B21D39/03 Z
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021173569
(22)【出願日】2021-10-25
(65)【公開番号】P2022071848
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】10 2020 128 367.9
(32)【優先日】2020-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】アイケ リュリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】カール マルク・アンドレアス ベルガー
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-125519(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0072710(KR,A)
【文献】特開2004-023964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/01
B21D 39/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直接重なり合う少なくとも3つの金属薄板層(2、2a、2b)を接合した金属薄板積層体(4)を含むアセンブリ(1)であって、

互いに直接重なり合う前記金属薄板積層体(4)に含まれるすべての前記金属薄板層(2、2a、2b)は各々、少なくとも1つのクリンチ接合部(28)によって接合され、

それぞれの前記クリンチ接合部(28)によって接合された前記金属薄板層(2、2a、2b)と前記金属薄板積層体(4)の少なくとも1つの外面(6)との間に配置されている前記少なくとも1つの金属薄板層(2)は、それぞれの前記クリンチ接合部(28)に位置合わせされている少なくとも1つのアクセス開口部(8)を含むとともに、

複数の前記クリンチ接合部(28)によって前記少なくとも3つの金属薄板層(2、2a、2b)が接合されており

前記少なくとも1つのアクセス開口部(8)のそれぞれは、前記金属薄板積層体(4)の前記少なくとも1つの外面(6)を貫通し、前記クリンチ接合部(28)に至る全ての前記金属薄板層においても位置合わせされている、
アセンブリ(1)。
【請求項2】
前記アクセス開口部(8)の数が、少なくとも2つである、
請求項1に記載のアセンブリ(1)。
【請求項3】
異なるクリンチ接合部(28)が、前記金属薄板積層体(4)の積層方向(S)を横断する方向に互いに離間している、
請求項1または2に記載のアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのアクセス開口部のうちの少なくとも1つ(8a)が、前記クリンチ接合部(28)の内幅(24)よりも小さい内幅(22)を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクセス開口部のうちの少なくとも1つ(8b)が、前記クリンチ接合部(28)の内幅(24)よりも大きい内幅(22)を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項6】
少なくとも2つのアクセス開口部(8a、8b)が互いに異なる内幅(22)を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項7】
前記金属薄板積層体(4)は、異なる材料厚さ(M)の少なくとも2つの金属薄板層(2、2a、2b)を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアクセス開口部(8)のうちの少なくとも1つが、前記金属薄板層の対(3)のうちのより大きい材料厚さ(M)の金属薄板層(2、2a、2b)に向かって開き、前記クリンチ接合部(28)の前記内幅(24)よりも小さい内幅(22)を有する、
請求項7に記載のアセンブリ(1)。
【請求項9】
2つの金属薄板層(2、2a、2b)の間に配置されている中央金属薄板(20)が、前記中央金属薄板(20)に直接当接する前記2つの金属薄板層(2、2a、2b)のうちの少なくとも一方よりも大きい材料厚さ(M)を有する、
請求項7または8に記載のアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記金属薄板積層体(4)は3つの金属薄板層(2)を含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項11】
前記外面(6)を向き、少なくとも1つの中央金属薄板(20)を少なくとも部分的に囲む、前記金属薄板積層体(4)の2つの外側金属薄板(16)が、一体部品(40)として一体に形成されている、
請求項1から10のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)。
【請求項12】
前記一体部品(40)が略U字形である、
請求項11に記載のアセンブリ(1)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載のアセンブリ(1)を備え、
前記少なくとも3つの金属薄板層(2、2a、2b)のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの電気コンタクト要素(36)を備える、
電気コンタクト(30)。
【請求項14】
前記外面(6)を向く前記金属薄板積層体(4)の2つの外側金属薄板(16)が各々、少なくとも1つの電気コンタクト要素(36)を備える、
請求項13に記載の電気コンタクト(30)。
【請求項15】
互いに重なり合う少なくとも3つの金属薄板層(2、2a、2b)を有する金属薄板積層体(4)をクリンチするための方法であって、

互いに直接重なり合う2つの金属薄板層(2、2a、2b)が、クリンチパンチ(10)およびクリンチダイ(12)を用いたクリンチによって形成された少なくとも1つのクリンチ接合部(28)で接合され、前記クリンチパンチ(10)が、接合される前記金属薄板層(2、2a、2b)と前記金属薄板積層体(4)の少なくとも1つの外面(6)との間に配置されている前記少なくとも1つの金属薄板層(2)の少なくとも1つのアクセス開口部(8)を通して動かされるとともに、

前記少なくとも1つのアクセス開口部(8)のそれぞれは、前記金属薄板積層体(4)の前記少なくとも1つの外面(6)を貫通してそれぞれの前記クリンチ接合部(28)に位置合わせされている、
方法。
【請求項16】
互いに直接重なり合う3つの金属薄板層(2、2a、2b)を接合した金属薄板積層体(4)を含むアセンブリ(1)であって、
前記3つの金属薄板層(2、2a、2b)は、前記金属薄板積層体(4)の外面(6)をそれぞれ構成する第1の外側金属薄板層(16)と第2の外側金属薄板層(16)と、前記第1の外側金属薄板層(16)と前記第2の外側金属薄板層(16)との間に配置される中央金属薄板層(20)であり、

前記第1の外側金属薄板層(16)と前記中央金属薄板層(20)は、第1のクリンチ接合部(28)によって接合され、
前記第2の外側金属薄板層(16)と前記中央金属薄板層(20)は、第2のクリンチ接合部(28)によって接合され、

前記金属薄板積層体(4)の前記外面(6)の一つを構成する前記第1の外側金属薄板層(16)は、前記金属薄板積層体(4)の前記外面(6)を貫通して前記第1のクリンチ接合部(28)に位置合わせされている第1のアクセス開口部(8)を含み、
前記金属薄板積層体(4)の前記外面(6)の一つを構成する前記第2の外側金属薄板層(16)は、前記金属薄板積層体(4)の前記外面(6)を貫通して前記第2のクリンチ接合部(28)に位置合わせされている第2のアクセス開口部(8)を含み、

前記金属薄板積層体(4)は、前記第1のクリンチ接合部(28)および前記第2のクリンチ接合部(28)によって接合されている、
アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも3つの重ね合わせた金属薄板層を接合した金属薄板積層体を有するアセンブリに関する。本発明はさらに、金属薄板積層体を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの金属薄板層を接合するための様々な選択肢が存在する。例えば、確実な材料ポジティブフィット連結を溶接によって生じさせることができる。しかしながら、その場合の欠点は、溶接中の高い熱負荷が金属薄板層の感熱部品に損傷を与えるおそれがあることである。複数の金属薄板層を接合するための単に機械的な解決策は、例えば、ねじ留めであるが、これはアセンブリの重量および大きさを増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高い結合強度に接合された(joined to a high degree of bonding strength)少なくとも3つの金属薄板層からなる、小型の金属薄板積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、第1に、冒頭で述べたアセンブリであって、互いに直接重なり合う金属薄板積層体の金属薄板層が各々、少なくとも1つのクリンチ接合部によって対で接合され、それぞれのクリンチ接合部によって接合された金属薄板層と金属薄板積層体の少なくとも1つの外面との間に配置されている少なくとも1つの金属薄板層は、それぞれのクリンチ接合部に位置合わせされている少なくとも1つのアクセス開口部を含む、アセンブリによって、本発明により解決される。
【0005】
第2に、この目的は、互いに重なり合う少なくとも3つの金属薄板層を有する金属薄板積層体を接合するための方法であって、互いに直接重なり合う金属薄板積層体の金属薄板層は、少なくとも1つのクリンチ接合部によって対で接合され、クリンチパンチおよび/またはクリンチダイが、金属薄板積層体の少なくとも1つの外面と接合される金属薄板層との間に配置されている少なくとも1つの金属薄板層の少なくとも1つのアクセス開口部を通して動かされる、方法によって、本発明により解決される。
【0006】
クリンチするために、クリンチパンチは、金属薄板層を、その上に直接載っている金属薄板層に接合方向に押圧する。重ね合わせた金属薄板層は、クリンチダイに載って、両方の金属薄板層が塑性変形するようになっている。塑性変形により、金属薄板層は互いにポジティブフィットおよび圧力嵌めで接合される。追加の材料を使用することなく、弾性力のある(resilient)機械的接続が生じる。
【0007】
溶接に優る利点は、クリンチが、異なる材料から形成された金属薄板層および/または被覆された金属薄板層の感熱部品にも適していることである。アクセス開口部により、金属薄板層のそれぞれの1対のみをクリンチ接合部によって接合することができ、他の金属薄板層の材料が応力を受けたり変形したりすることがない。金属薄板層を対で接合することは、金属薄板積層体の特に安定した接続につながる。これは、特に剪断引張の場合に接続の耐力挙動に悪影響を与えるおそれのある、クリンチ接合部の首部領域のアイアニングの増加(increased ironing)を防ぐからである。
【0008】
以下で、デバイスおよび方法のさらなる有利な構成について例として説明する。個々の構成を互いに独立して組み合わせることができ、互いに独立して入れ替えることができる。
【0009】
例示的な構成によれば、互いに直接重なり合う金属薄板積層体のすべての金属薄板層を各々、少なくとも1つのクリンチ接合部によって対で接合することができる。これにより、金属薄板積層体の各金属薄板層を少なくとも1つの接合部によって確実に固定することができる。ここでは、金属薄板層のそれぞれの2対が重なることができる。これは、金属薄板層が、互いに各々接合された金属薄板層の異なる2対の一部であってよいことを意味する。そのようなアセンブリでは、金属薄板層の対の互いに離れた方を向く金属薄板層が、金属薄板層の対の共通の金属薄板層によって、互いに対して固定される。
【0010】
いくつかのクリンチ接合部が存在する場合、異なるクリンチ接合部を積層方向に対して垂直にかつ/または積層方向を横断する方向(transverse to)に互いに離間させて、1つのクリンチ接合部の塑性変形によって他のクリンチ接合部を傷つけることがないようにすることができる。
【0011】
クリンチ接合部は、金属薄板積層体から接合方向に突出する突起を形成することができる。ここでは、クリンチ接合部または突起の大きさ、特に直径、および形状を、方法で使用されるクリンチダイによって、特にその形状および/または内幅によって予め定めることができる。アセンブリの異なるクリンチ接合部を、形状および大きさに関して互いに異なって構成することができるが、これには、異なるクリンチダイおよび/またはパンチが必要となり得る。これは、金属薄板層が異なる材料厚さおよび/または材料組成を有する場合に特に有用である。この構成では、クリンチ接合部を、材料組成および/または材料厚さに応じて、金属薄板層のそれぞれの対に向けて最適化することができる。異なるクリンチツールを異なるクリンチ接合部に使用することができる。
【0012】
接合方向、すなわち、クリンチ中にクリンチパンチを動かす方向、およびクリンチ接合部が突出する方向は、積層方向、すなわち、金属薄板層が重なり合う方向に略平行に延びることができる。金属薄板層の異なる対および/または金属薄板層の1つの同じ対のクリンチ接合部の接合方向を、互いに平行に向けても逆平行(antiparallel to)に向けてもよい。
【0013】
いくつかの金属薄板層が、接合する金属薄板の対と金属薄板積層体の少なくとも1つの外面との間に配置される場合、これらの金属薄板層のすべてを少なくとも1つのアクセス開口部が貫通して、少なくとも1つの外面から金属薄板層の対のうちの最も近い金属薄板層へ、端から端までのアクセス開口部が生じるようにすることができる。
【0014】
製造中の誤りを防ぐために、特定のクリンチプロセス毎に特定の接合方向を、例えば識別化によって指定することができる。ここでは、クリンチ接合部の少なくとも2つの異なるアクセス開口部が、互いに異なる内幅を有することが特に有利である。識別化は、追加の処理ステップを必要とすることなく、アクセス開口部の内幅によって既に可能となっている。
【0015】
アクセス開口部の内幅は、例えば、塑性変形領域または突起のそれぞれの直径によって決定され得るクリンチ接合部の直径またはクリンチダイの内幅よりも大きくてよい。塑性変形領域の直径は、クリンチダイの直径、特に内幅によって決まる。クリンチダイを、このアクセス開口部に通して動かすことができるようにすべきである。これは、アクセス開口部の内幅がクリンチダイの外径よりも大きい場合に当てはまる。そして、そのような大きさのアクセス開口部は、クリンチダイに提供される金属薄板積層体の面を指定することができる。
【0016】
少なくとも1つのアクセス開口部の内幅がクリンチ接合部の直径および/またはクリンチダイの内幅よりも小さい場合、クリンチダイは、少なくとも1つのアクセス開口部に通して動かすことができない。しかしながら、クリンチパンチは、そのようなアクセス開口部に通して動かすことができる。したがって、アクセス開口部の異なる内幅は、接合方向の指定を可能にする識別化となる。
【0017】
少なくとも1つの金属薄板層によって金属薄板積層体の各外面から分離された金属薄板層の対の場合、金属薄板積層体の中央領域のアクセス開口部を、金属薄板層の対の対向配置面に互いに同軸に配置することができる。互いに同軸に配置されているこれらのアクセス開口部は、特に異なる内幅を有しているため、接合プロセス中に接合方向が直ちに明らかになる。
【0018】
接合方向は、異なる材料特性または幾何形状を有する金属薄板層を接合する際に特に重要であり得る。例えば、金属薄板積層体は、異なる材料厚さおよび/または異なる材料組成の少なくとも2つの金属薄板層を有することができる。異なる材料厚さの金属薄板層の対をクリンチする場合、より大きい材料厚さを有する金属薄板層をより小さい材料厚さの金属薄板層に押圧することが特に有利である。これを確実にするために、より大きい材料厚さの金属薄板層の面におけるアクセス開口部が、クリンチ接合部または対向配置されたアクセス開口部のそれぞれよりも小さい内幅を有して、クリンチパンチをより厚い金属薄板層へ動かすことができるが、クリンチダイをより厚い金属薄板層へ動かすことはできないようにすることができる。
【0019】
より大きい材料厚さの金属薄板層を、特に金属薄板積層体の中央領域に配置することができ、各面に載っている少なくとも1つの金属薄板層は、より小さい材料厚さを有する。
【0020】
金属薄板積層体の外側を向く外側金属薄板層が、中央金属薄板層を少なくとも部分的に囲むことができる。ここでは、外側金属薄板層を、一体に接合される一体部品として形成することができる。そのような部品は、1つまたは複数の中央金属薄板層を少なくとも3面で囲むことができる。
【0021】
例えば、金属薄板片を略U字形に曲げることができ、U字形の各脚部が外側金属薄板層を形成することが好ましい。このようにして、外側金属薄板層の製造プロセスを簡略化することができ、特に、大量に製造するときにより効率的に構成することができる。
【0022】
さらなる有利な構成によれば、金属薄板積層体は、互いに重なり合う正確に3つの金属薄板層を有することができる。ここでは、1つの中央金属薄板層が、2つの外側金属薄板層の間に少なくとも部分的に配置されている。そのような構成では、各外側金属薄板層が中央金属薄板層に少なくとも1つのクリンチ接合部によって接合され、これにより、特に小型の金属薄板積層体を形成することができる。
【0023】
各外側金属薄板層は少なくとも1つのアクセス開口部を備えることができ、それぞれの外側金属薄板層のアクセス開口部は、対向配置された外側金属薄板層に対して、特に積層方向に対して垂直にずれて配置されている。そうすると、アクセス開口部により、それぞれの金属薄板層がどの点で中央金属薄板層に対で接合されるかを直接かつ明確に指定することができる。
【0024】
本発明は、上記の実施形態のうちの1つによるアセンブリを備える電気コンタクトにさらに関する。クリンチによって接合された金属薄板層を有する金属薄板積層体を使用することによって、特に小型の電気コンタクトを形成することができる。
【0025】
例えば、中央金属薄板層は、外側金属薄板層を介して接触されるバスバーであってよい。少なくとも1つの金属薄板層、好ましくは両方の外側金属薄板層が、相手側コネクタの相手側コンタクトに接触するように構成されている少なくとも1つの電気コンタクト要素を備えることができる。コンタクト要素を、例えば、プラグコンタクト、ピンコンタクト、はんだコンタクト、コンタクトソケット、または圧入コンタクトとして構成することができる。相手側コネクタがプリント回路基板である場合、相手側コンタクトを、コンタクト要素を挿入できる貫通孔として構成することができる。代替としてまたはそれに加えて、プリント回路基板は、コンタクト要素をはんだ付けできるはんだ付け点を有することができる。両方の外側金属薄板層が各々、少なくとも1つのコンタクト要素またはさらにはコンタクト要素の列を有して構成されると特に有利である。
これは、1列の長いコンタクト要素の代わりに、互いに平行に配置されている2列のより短いコンタクト要素を設けることができるため、高電圧または高電流の適用において特に有利である。4つ以上の金属薄板層がある場合、3列以上の平行なコンタクト要素を設けることもできる。
【0026】
少なくとも1つのコンタクト要素およびそれぞれの金属薄板層を、特に一体部品として一体に形成することができる。これにより、金属薄板層をできるだけ効率的かつ安価に製造することができる。金属薄板層を、打抜きおよび曲げプロセスによってコンタクト要素と共に製造することができる。金属薄板層は、打抜き片の一部であってよく、その残りの部分から少なくとも1つのコンタクト要素またはコンタクト要素の列を形成することができる。
【0027】
以下で、本発明を、実施形態を使用して、例としてより詳細に説明する。上記の説明によれば、実施形態の特徴に関連する技術的効果が特定の適用に重要でない場合には、それらの特徴を省略することができる。逆に、さらなる特徴の技術的効果が特定の適用に重要である場合には、それらの特徴を実施形態に追加することもできる。
【0028】
以下で、機能ならびに/または空間的構成および物理的構成に関して互いに対応する特徴については同一の参照符号を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】クリンチ前の本発明によるアセンブリの第1の例示的な構成の概略断面図である。
図2】クリンチ前の本発明によるアセンブリの第2の例示的な構成の概略断面図である。
図3】クリンチ後の図2に示す例示的な構成の概略断面図である。
図4】クリンチ前の本発明によるアセンブリの第3の例示的な構成の概略断面図である。
図5】クリンチ前の本発明によるアセンブリの第4の例示的な構成の概略断面図である。
図6】本発明によるアセンブリを備える電気コンタクトの例示的な構成の概略斜視図である。
図7】電気コンタクトの外側金属薄板の例示的な構成の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明によるアセンブリ1の第1の例示的な構成の概略断面図である。
【0031】
アセンブリ1は、互いに直接重なり合う少なくとも3つの金属薄板層2を接合した金属薄板積層体4を含み、互いに直接重なり合う金属薄板層2a、2bは各々、少なくとも1つのクリンチ接合部28によって対で接合されている。このために、それぞれのクリンチ接合部によって接合された金属薄板層2a、2bと金属薄板積層体4の少なくとも1つの外面6との間に配置されている金属薄板層2は、それぞれのクリンチのために、それぞれのクリンチ接合部に位置合わせされている少なくとも1つのアクセス開口部8を備える。
【0032】
図1は、クリンチ前のアセンブリ1を示す。ここでは、金属薄板積層体4の金属薄板層の対3ごとにそれぞれのクリンチ接合部が設けられており、金属薄板層の各対3は金属薄板層のさらなる対3に重なっている。これは、金属薄板層の各対3が少なくとも1つの金属薄板層2a、2bを含み、この金属薄板層2a、2bが同時に金属薄板層の別の対3の金属薄板層2a、2bであることを意味する。
【0033】
ここでは、金属薄板層2が、材料厚さMに平行な積層方向Sで互いに積層されている。特に、金属薄板積層体4のすべての金属薄板層2を少なくとも部分的に重ねることができるので、金属薄板層2は、規則正しく配置されている金属薄板積層体4において接合される。
【0034】
クリンチ中、クリンチパンチ10を用いて、金属薄板層2aが他の金属薄板層2bに接合方向Fに押圧され、接合方向Fにおいて金属薄板層2aから離れた金属薄板層2bの面に、クリンチダイ12が位置決めされる。このために、図1に破線で概略的に示すクリンチパンチ10は軸14を含み、この軸14は、アクセス開口部8に押し通すことができ、金属薄板層2aに当たる。金属薄板層2aに作用するパンチ10の力によって、金属薄板層2a、2bが押圧されて、クリンチダイ12により予め定められた形状になり、したがって塑性変形する。その結果、形成されたクリンチ接合部は、接合方向Fに突出する突起を含む。
【0035】
図1による構成では、金属薄板積層体4は、互いに重なり合う、同じ材料厚さMの5つの金属薄板層2を含む。しかしながら、金属薄板積層体4の金属薄板層2の材料厚さMは異なっていてもよい。各クリンチ接合部の接合方向Fを同じ方向に向けて、個々のクリンチ接合を1つのプロセスステップで一緒に実行できるようにすることができる。
【0036】
金属薄板積層体4は2つの外側金属薄板16を含み、この外側金属薄板16は各々、外面6を向く金属薄板積層体4の端部を形成し、中央金属薄板20を含む中央領域18が外側金属薄板16の間に配置されている。外側金属薄板16は、すぐ下に位置する中央金属薄板20に接合されているという点で、金属薄板層の対3の単なる一部であってよい。一方、中央金属薄板20は、2つの金属薄板層2の各々が直接載っている金属薄板層の対3を形成することができる。そのため、金属薄板積層体4は、各クリンチ中に、外側金属薄板16から離れた方を向く金属薄板層の対3の面にアクセス開口部8を含み、外側金属薄板16のうちの一方が金属薄板層の対3の接合先を形成する。
2つの中央金属薄板20が接合される場合、2つのアクセス開口部8が設けられ、アクセス開口部8の各々が少なくとも1つの外側金属薄板を通って延びる。以下で、アクセス開口部8の内幅22を、全体的に参照符号22で示す。
【0037】
接合方向Fを指定し、製造中の誤りを避けるために、アクセス開口部8aは、クリンチダイ12の内幅によって決定される、クリンチ接合部の直径24よりも小さい内幅22aを有することができる。したがって、軸14を有するクリンチパンチ10のみをアクセス開口部8aに通して動かすことができるが、クリンチダイ12をアクセス開口部8aに通して動かすことはできない。
【0038】
クリンチパンチ10は肩部26を含むことができる。肩部26は、軸14がアクセス開口部8に挿入されたときに金属薄板積層体4に当たって、クリンチの深さを制限し、それにより、金属薄板層2が裂けることを防ぐように機能することができる。
【0039】
代替としてまたはそれに加えて、クリンチ接合部の直径24よりも大きく、特にクリンチダイ12の外径27よりも大きい内幅22、22bを有する少なくとも1つのアクセス開口部8bが存在してもよい。その場合、クリンチダイ12をアクセス開口部8bに挿入することができる。
【0040】
少なくとも2つの中央金属薄板20が金属薄板層の対3を形成する場合、金属薄板層の対3に対して互いに対向配置され、特に互いに対して同軸に配置されているアクセス開口部8、8a、8bを、それぞれのクリンチのために設けることができる。これらのアクセス開口部8、8a、8bは、接合方向Fを明瞭かつ明確に指定するために、異なる内幅22a、22bを有することができる。
【0041】
異なるクリンチ接合部が互いに影響を与える、またはさらには互いに傷つけることを防ぐために、特に、隣接するクリンチ接合部を、積層方向に対して略垂直に互いに離間させることが有利である。特に、それぞれのアクセス開口部8を互いに離間させて、製造中に個々のクリンチ接合部を互いに分離することもできる。
【0042】
さらなる有利な構成によれば、金属薄板積層体4は、互いに重なり合う正確に3つの金属薄板層2を含むことができる。以下で、図2および図3を参照しながら、そのような構成についてより詳細に説明する。
【0043】
正確に3つの金属薄板層2では、各外側金属薄板16と中央金属薄板20とが、クリンチ接合部によって接合された金属薄板層の対3を形成する。互いに接合された金属薄板層の異なる対3により、金属薄板積層体4が確実に1つにまとまる。
【0044】
図3に、金属薄板2のパッケージから接合方向Fに突出する、直径25を持つ突起29を有するクリンチ接合部28を示す。直径25は、クリンチダイ12の内幅24によって実質的に決定される。
【0045】
上記の構成とは対照的に、異なるアクセス開口部8が同じ内幅22を有していることから、例えば、アクセス開口部8を開けるまたは打ち抜くなど、アクセス開口部8を形成するには1つのツールで十分である。
【0046】
アクセス開口部8の内幅22は、クリンチ接合部28の直径25またはクリンチダイ12の外径27のそれぞれよりも小さいことが好ましく、これにより、接合方向Fを指定することができる。異なるクリンチ接合部28の接合方向Fは、互いに略逆平行に配置されている。
【0047】
当然、3つの金属薄板層2を含むアセンブリを、異なるクリンチ接合部28の接合方向Fが互いに略平行で同じ方向であるように構成してもよい。このために、図4による例示的な構成に示すように、少なくとも1つの外側金属薄板16は、クリンチダイ12を受け入れるように構成されているアクセス開口部8、8bを含むことができる。
【0048】
金属薄板層2の材料厚さMが異なる場合、より大きい材料厚さMを有する金属薄板層2をより小さい材料厚さMを有する金属薄板層2に接合方向Fに押圧することが特に有利である。これを確実にするために、金属薄板層の対のうちのより大きい材料厚さを有する金属薄板層2で終端するアクセス開口部8、8aが各々、クリンチ接合部28の直径25またはクリンチダイ12の内幅よりも小さい内幅22aを有することができる。これにより、図5の例示的な構成に見られるように、接合方向Fを指定する。より大きい材料厚さMの金属薄板層2が、3層の金属薄板積層体の外側金属薄板16の間に位置する場合、金属薄板層の異なる対3の接合方向Fを互いに略逆平行にすることができる。
【0049】
特に小型の電気コンタクト30を本発明によるアセンブリ1によって製造することができ、このような電気コンタクト30は高電圧範囲または高電流範囲において特に有利である。図6を参照しながら、このような電気コンタクト30の例示的な構成についてより詳細に説明する。
【0050】
電気コンタクト30は、互いに積層された3つの金属薄板層2を含むことができる。中央金属薄板20は、例えば、プリント回路基板34などに接触するように意図されたバスバー32の一部であってよい。外側金属薄板16が、バスバー32の対向配置された平坦面に置かれると、バスバー32と外側金属薄板16とが金属薄板積層体4を少なくとも部分的に形成し、この金属薄板積層体4では、バスバーと外側金属薄板とが互いに重なり合っている。
【0051】
プリント回路基板34に接触するために、1つの、好ましくは各々の外側金属薄板16が、少なくとも1つの電気コンタクト要素36、特に1列または数列のコンタクト要素36を備えることができる。コンタクト要素36とそれぞれの外側金属薄板16とを、例えば、打抜きおよび曲げプロセスで、一体部品37として一体に形成することができると好ましい。
【0052】
この例示的な構成において、コンタクト要素36は、圧入コンタクト38として構成されているが、プラグインコンタクト、ピンコンタクト、コンタクトソケット、はんだ付けコンタクトなどとして構成されていてもよい。
【0053】
例えば、1つのコンタクト要素36に認められているのが10アンペアのみである場合、400アンペアの電流をコンタクト30に送るには少なくとも40のコンタクト要素36が必要である。1つの金属薄板層2しかバスバー32に取り付けることがでない場合、金属薄板層2は、対応する数のコンタクト要素36を形成するために、これに対応してより大きい長さを有していなければならない。
【0054】
本発明による解決策では、電気接続を確立するためにバスバーの両面を使用することができる。第3の金属薄板層にもコンタクト要素が設けられ、この第3の金属薄板層は、2層構造と比べて1つの外側金属薄板の長さを略半分にすることができる。より多くの層を追加することにより、長さをさらに短くすることができる。
【0055】
クリンチ接合部28の強度は、接合される金属薄板層の数が増加するにつれて大幅に低下する。3層接続では、クリンチによる確実な接続が既に保証できない。これを避けるために、1対の金属薄板層のみを1つのクリンチ接合部によって互いに直接接続する。このために、接合に関与しない各金属薄板層2が、クリンチ接合部28に位置合わせされているアクセス開口部8を含む。これにより、接合プロセス中に、クリンチダイ12および/またはクリンチパンチ10をアクセス開口部8、8a、8bに通して動かし、2つの金属薄板層を互いに接合することができる。
【0056】
金属薄板層の対の接続強度をさらに高めたい場合、金属薄板層を、積層方向Sに対して垂直に離間したいくつかのクリンチ接合部によって互いに接続することができる。このために、図6および図7に示すように、外側金属薄板16は、積層方向Sに対して垂直に互いにずれたいくつかのアクセス開口部8を含むことができる。
【0057】
図6において、2つの別個の外側金属薄板16が、中央金属薄板20の対向配置面に各々固定されている。しかしながら、図7に示すように、2つの外側金属薄板16が、一体に形成された一体部品40を形成してもよい。
【0058】
一体部品40を、2つの脚部42を有する略U字形に構成することができ、各脚部42が外側金属薄板16を形成する。脚部42はウエブ44によって接続され、脚部42間のウエブ44の長さは中央金属薄板20の材料厚さMに略対応することが好ましい。これにより、一体部品40は中央金属薄板20の周りに係合することができ、接合状態で脚部42が中央金属薄板20に略平行に配置される。
【0059】
図7に見られるように、各外側金属薄板16は、積層方向Sに対して垂直に互いにずれたアクセス開口部8を含み、一方の外側金属薄板16のアクセス開口部8bの内幅22bが、他方の外側金属薄板16のアクセス開口部8aの内幅22aよりも大きい。
【符号の説明】
【0060】
1 アセンブリ
2、2a、2b 金属薄板層
3 金属薄板層の対
4 金属薄板積層体
6 外面
8、8a、8b アクセス開口部
10 クリンチパンチ
12 クリンチダイ
14 軸
16 外側金属薄板
18 中央領域
20 中央金属薄板
22、22a、22b アクセス開口部の内幅
24 クリンチ接合部の直径
25 クリンチダイの直径
26 肩部
27 クリンチダイの外径
28 クリンチ接合部
29 突起
30 電気コンタクト
32 バスバー
34 プリント回路基板
36 コンタクト要素
37 一体部品
38 圧入コンタクト
40 一体部品
42 脚部
44 ウエブ
F 接合方向
M 材料厚さ
S 積層方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7