(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】カッティングローラ
(51)【国際特許分類】
E21C 25/18 20060101AFI20231023BHJP
F16J 15/16 20060101ALI20231023BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20231023BHJP
F16C 19/54 20060101ALI20231023BHJP
F16C 33/76 20060101ALI20231023BHJP
E21D 9/10 20060101ALI20231023BHJP
E21B 10/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
E21C25/18
F16J15/16 B
F16C19/36
F16C19/54
F16C33/76 Z
E21D9/10 K
E21B10/08
(21)【出願番号】P 2021500394
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2019066755
(87)【国際公開番号】W WO2020015958
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】102018005972.4
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591204333
【氏名又は名称】ハイダック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】HYDAC TECHNOLOGY GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ペーター クロフト
(72)【発明者】
【氏名】イェルク マイヤー
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-041889(JP,A)
【文献】米国特許第06131676(US,A)
【文献】特開平07-238784(JP,A)
【文献】米国特許第05904211(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0212034(US,A1)
【文献】特開2005-207069(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012220434(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0252843(US,A1)
【文献】特開平11-022386(JP,A)
【文献】特開平06-317089(JP,A)
【文献】特表2015-535557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21C 25/18
F16J 15/16
F16C 19/36
F16C 19/54
F16C 33/76
E21D 9/10
E21B 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(2)を有するカッティングローラであって、前記軸上で、カッティングリング(4)は、軸受装置(10、12)によって回転可能に案内されており、前記軸受装置は、密封装置(28、30)によって環境に対して密閉されている、カッティングローラにおいて、
補償装置(40)によって、前記軸受装置(10、12)と前記環境との間の任意の圧力差が補償可能であ
り、
前記補償装置は、弾性的に可撓性を有する分離要素(40)を備えており、その内側は、前記環境の圧力で取り外せないように加圧されており、その外側は、加圧された状態で前記軸受装置(10、12)と接続され、
前記分離要素は、エラストマ材料からなるアキュムレータブラダー(40)を有しており、前記アキュムレータブラダー(40)は、前記分離要素(40)の内部と前記環境との間に媒体接続を確立する接続チャネル(44)を有する保持装置(42)によって固定された前記軸(2)に保持され、
前記保持装置は、端部キャップ(42)を有しており、前記接続チャネル(44)は、前記端部キャップ(42)の中央に開口しており、供給チャネル(46)が、前記接続チャネル(44)に接続されており、前記供給チャネル(46)は、溝の形態で前記端部キャップの上部に挿入されている、ことを特徴とするカッティングローラ。
【請求項2】
軸(2)を有するカッティングローラであって、前記軸上で、カッティングリング(4)は、軸受装置(10、12)によって回転可能に案内されており、前記軸受装置は、密封装置(28、30)によって環境に対して密閉されている、カッティングローラにおいて、
補償装置(40)によって、前記軸受装置(10、12)と前記環境との間の任意の圧力差が補償可能であ
り、
前記補償装置は、分離要素(40)を備えており、前記分離要素(40)は、前記軸(2)の空洞部(32)内に収容されており、前記空洞部(32)は、加圧された接続部(38)を介して前記軸受装置(10,12)の少なくとも一部分と接続され、
前記加圧された接続部は、少なくとも1つのクロスチャネル(38)から成り、クロスチャネル(38)の一端は、前記軸(2)の空洞部(32)内に開口し、クロスチャネル(38)の他端は、前記軸(2)からスペーサスリーブ(18)の方向へ開口しており、前記スペーサスリーブは、両側において、前記軸受装置(10、12)の内側リング(14、16)に隣接している、ことを特徴とするカッティングローラ。
【請求項3】
前記軸受装置は、少なくとも2つの転がり軸受、特に、一対で相互作用するテーパ状ローラ軸受(10、12)を有しており、該転がり軸受の隙間及び/又は着座形状は、少なくとも部分的に前記加圧された接続部(38)と接続されている、ことを特徴とする
請求項2に記載のカッティングローラ。
【請求項4】
前記加圧された接続部は、少なくとも1つのクロスチャネル(38)から成り、クロスチャネル(38)の一端は、前記軸(2)の空洞部(32)内に開口し、クロスチャネル(38)の他端は、前記軸(2)からスペーサスリーブ(18)の方向へ開口しており、前記スペーサスリーブは、両側において、前記
軸受装置(10、12)の内側リング(14、16)に隣接している、ことを特徴とする
請求項1に記載のカッティングローラ。
【請求項5】
前記
軸受装置(10、12)対の外側リング(15、17)は、前記軸(2)上で回転可能に、カッティングリング(4)に接続されており、前記カッティングリング(4)の回転軸(6)に平行に、スペーサスリーブ(18)の長さに等しい、又は、好ましくは、前記スペーサスリーブ(18)の長さよりも長い間隔で、互いに軸方向に離間されている、ことを特徴とする請求項1から
請求項4の何れか1項に記載のカッティングローラ。
【請求項6】
前記密封装置は、2つのシールリング(28、30)をそれぞれ有する、2つの対から成り、一方の対は、前記軸受装置(10、12)に面しており、他方の対は前記軸(2)に固定された端部(20、22)に面しており、少なくとも前記環境に対して前記軸受装置を密封する、ことを特徴とする請求項1から
請求項5の何れか1項に記載のカッティングローラ。
【請求項7】
掘削ヘッドを有するトンネル掘削機であって、前記掘削ヘッド上に、請求項1から
請求項6の何れか1項に記載のカッティングローラ(2、4)が配置されている、ことを特徴とするトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸を有するカッティングローラであって、カッティングリングが、軸受装置によって軸上に回転可能に案内されており、軸受装置は、密封装置によって環境に対して密閉されている、カッティングローラに関する。
【背景技術】
【0002】
岩石の採掘に使用されるこの種のカッティングローラは、従来技術であり、特許文献1を参照されたい。特に、この様なカッティングローラは、トンネル掘削機械のドリルヘッドの前端部の切削工具として使用される。作動中、割り当てられた密封装置は、汚れ等の侵入といった有害な環境影響から各カッティングリングの軸受装置を保護する。しかしながら、トンネル掘削において、頻繁に発生する深い掘削深さは、水中で掘削を行う場合、又は、水の浸入が発生した場合には、問題を生じさせる。また、各掘削深さに応じた水圧によって、密封装置の存在にもかかわらず水の浸入があり、これに伴って軸受装置が駄目になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第102012220434号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、このような問題点の観点から、水圧が支配的な場合であっても、岩石の採掘に確実に使用することができる上述した種類のカッティングローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、その全体において請求項1の特徴を有するカッティングローラによって解決される。
【0006】
請求項1の特徴部分によれば、本発明の本質的な特徴は、補償装置によって軸受装置と環境との間に生じる任意の圧力差を補償できることである。水中で作動する場合であっても、密封装置は、補償装置によって提供される圧力補償に基づいて、軸受装置を水の浸入から確実に保護する。このような信頼性の高い作動は、7bar(0.7MPa)又はこれより高い水圧が想定される、深い掘削部においても、フェイルセーフとなる。
【0007】
有利な実施形態例では、補償装置は、弾性的に可撓性を有する分離要素を有しており、その内側は、環境圧力で取り外せないように加圧されており、その外側は、加圧された状態で軸受装置に接続されており、このようにして軸受装置の内部における環境圧力を成立させる。
【0008】
この配置は、分離要素が軸の空洞部内に収容されており、空洞部が、加圧された接続部を介して軸受装置の少なくとも一部分と接続されている場合に、特に有利となり得る。このようにして、本発明によるカッティングローラが、コンパクトな構造を有し、公知のカッティングローラと比較してサイズを増加させることなく製造することができるように、補償装置は、カッティングローラの軸の内部に完全に統合されている。
【0009】
分離要素は、有利には、分離要素の内部と環境との間に媒体を案内する接続を確立する接続チャネルを有する保持装置によって固定軸上に保持される、エラストマ材料からなるアキュムレータブラダー(accumulator bladder)を有することができる。
【0010】
有利な実施形態例では、保持装置は、端部キャップを有しており、端部キャップの内部には、接続チャネルが中央に開口し、接続チャネルには、供給チャネルが接続され、供給チャネルは、溝の形態のカバーの上部に挿入されている。供給チャネルは、環境圧力が、接続チャネルに伝達されると共に、環境の特異点からブラダーに伝達されるだけでなく、供給チャネルによって覆われた、より大きな環境領域からも伝達されることを確実にする。
【0011】
軸受装置は、有利には、少なくとも2つの転がり軸受、特に、一対で相互作用するテーパ状のローラ軸受を有してもよく、その隙間及び/又は着座形状は、加圧された接続部に、少なくとも部分的に接続されている。
【0012】
加圧された接続部が少なくとも1つのクロスチャネルから成るような配置は有利になり得てもよく、各クロスチャネルの一端が、軸の空洞部内に開口すると共に、各クロスチャネルの他端が、両側で各転がり軸受の内側リングによって隣接されているスペーサスリーブ(spacer sleeve)の方向に、軸の外側へ開口している。
【0013】
対の転がり軸受の外側リングは、軸上で回転可能にカッティングリングに接続されてもよく、カッティングリングの回転軸と平行に、スペーサスリーブの長さに等しい、又は、好ましくは、それよりも長い間隔で、互いに軸方向に離間して配置されてもよい。
【0014】
密封装置の形成に関して、密封装置が、2つの対から成り、それぞれが2つのシールリングを有しており、一方の対が軸受装置に面すると共に、他方の対が軸上に固定された端部に面しており、少なくとも環境に対して軸受装置を密封するような配置は有利である。
【0015】
請求項10によれば、本発明の対象は、請求項1から請求項9の何れか1項に記載のカッティングローラが、少なくとも1つ配置されている、掘削ヘッドを有する、トンネル切削機械にも関する。
【0016】
以下、図面に示される実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明に係るカッティングローラの実施例を図式的に簡略化された縦断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1において符号IIで示された領域を
図1に対して拡大した部分断面図を示す。
【
図3】
図3は、実施例の補償装置の弾力性のある分離要素を形成するブラダーの縦断面図を割り当てられた保持装置と共に示す。
【
図4】
図4は、保持装置を有するアキュムレータブラダーを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、アキュムレータブラダーを個別に示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に符号VIで示されたアキュムレータブラダーの部分的に切り取った領域を拡大して示す。
【
図7】
図7は、改良された外径を有する端部を有する、
図6の部分的に切り取った領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示された例示的な実施形態では、カッティングリング4のための回転軸6を画定する固定された軸2を有する。カッティングリング4は、中央に配置されており、半径方向に突出したリングバルジ8を有しており、その径方向外側のテーパ状の端部には、この種のカッティングローラのための通常の方法で、切削挿入部が設けられているが、
図1の図式的に簡略化された図の中では、切削挿入部は省略されている。カッティングリング4のための回転軸受を形成する軸受装置は、第1のテーパ状ローラ軸受10と、第2のテーパ状ローラ軸受12と、から成る一対の転がり軸受によって形成されており、各内側リング14及び/又は16は、スペーサスリーブ18によって、軸方向に互いに離間された状態で保持されて、軸2を取り囲んでいる。軸2上に着座している、軸受カバー20、22は、スペーサスリーブ18と接触した状態の内側リング14、16を保持する。
図1において左側に位置する軸受カバー20の肩部24は、軸2の径方向に突出したカラー部26に固定されている。軸2に着座したねじ式リングとしての反対側の軸受カバー22は、反対側の方向において、軸受装置の軸方向の固定を形成している。カッティングリング4を支持する、テーパ状のローラ軸受10及び/又は12の外側リング15、17は、カッティングリング4の内側カラー部19によって互いに軸方向に離間して保持されており、離間された間隔は、スペーサスリーブ18の軸方向の長さよりもわずかに長くなっている。二対のシールリング28、30が、軸受装置を密封するために設けられており、各軸方向外側シールリング28は、固定された軸受カバー20及び/又は22へ向けてシールを形成し、各軸方向内側シールリング30は、カッティングリング4の周辺へ向けてシールを形成する。
【0019】
軸2は、回転軸6と同軸とされており、
図1の左側の端部34において閉鎖されており、反対側の端部36において、開放されている内側空洞部32を有する。長さ範囲の中央部では、クロスホール38が、軸2の空洞部32を外周へ向けて開放している。このようにして、軸2の空洞部32から軸受装置の内部への媒体接続は、内側リング14、16及びスペーサスリーブ18の領域内で軸の外周に設けられた隙間を介して確立されている。本発明によれば、カッティングローラは、環境と空洞部32、すなわち、軸受装置との間の圧力補償を提供する補償装置を有する。補償装置は、
図5に別個に示されており、エラストマで形成されている、弾性的に曲げやすいアキュムレータブラダー40の形態の移動可能な分離要素を有する。
図1及び
図2が、最も明確に示すように、アキュムレータブラダー40は、アキュムレータブラダー40の外側がクロスホール38を介して加圧された状態で軸受装置に接続されており、その一方で、アキュムレータブラダー40の内側が環境に接続されるように、空洞部32の開放端36から空洞部32の内部に取り付けられている。この接続を形成するために、かつ、アキュムレータブラダー40の支持部として、
図2が最も明確に示すように、空洞部32の開放端36にねじ込むことができると共に、環境とアキュムレータブラダー40の内部との間の接続を提供する同軸接続チャネル44を有する、支持装置としての端部キャップ42が設けられている。
図4に最も明確に示されているように、端部キャップ42の外側には、環境との接続がより広い面積にわたって形成されるように、凹溝の形態で交差する供給チャネル46が形成されている。シールリング48は、空洞部32の内壁に対して端部キャップ42を密封するために使用される。
【0020】
保持装置を形成する端部キャップ42とアキュムレータブラダー40との間の機械的接続は、
図3及び
図5から
図7を参照して最も明確に見ることができる。図示されているように、アキュムレータブラダー40は、開放端において、開口部50を取り囲む端部バルジ52を有する。
図3に示されているように、端部キャップ42は、接続チャネル44の内側端部において、アキュムレータブラダー40の内側へ向けた方向で、端部バルジ52において延在する環状部分58の背後に係合する環状溝のアンダーカットされた壁部分56を備えた拡張部54を有する。
図7は、端部バルジ52の形状についての変形例を示しており、端部バルジ52aは、端部キャップ42の拡張部54に対して環状溝(図示省略)の対応する改良された形態で固定され得る。
【0021】
アキュムレータブラダー40の可撓性のため、アキュムレータブラダー40の内部に隣接する空間とアキュムレータブラダー40の外部に隣接する空間とは、それぞれ同じ圧力レベルを有する。環境において支配的であり、かつ、チャネル44、46を介してアキュムレータブラダー40の内部において効果的な水圧がある場合、アキュムレータブラダー40は、ブラダーの内部とブラダーの外部、すなわち、空洞部32との間の圧力が均衡するまで膨張する。このことは、また、クロスホール38を介した軸受ユニット内部における圧力補償、すなわち、内部軸受圧力が環境圧力に調整される結果をもたらす。この圧力補償は、外部水圧が発生した場合であっても、本発明によるカッティングローラを安全に作動し得るように、シールリング対28,30の形態の密封装置が、環境の影響に対するテーパ状のローラ軸受10、12の信頼性の高い保護を提供することを保証する。上述したアキュムレータブラダー40の機能は、弾性的に曲げやすい発泡材料のアキュムレータブラダー40への取り外せないような挿入による発泡充填によって、さらに補助され得る。