(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】コントラスト撮像
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
A61B8/06
(21)【出願番号】P 2021537103
(86)(22)【出願日】2020-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2020050113
(87)【国際公開番号】W WO2020141229
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】シー ウィリアム タオ
(72)【発明者】
【氏名】シエ フア
(72)【発明者】
【氏名】ワン シーイン
(72)【発明者】
【氏名】トレムブレイ-ダルヴォー チャールス
(72)【発明者】
【氏名】シーラン ポール
(72)【発明者】
【氏名】シャムダサニ ヴィジャイ タクール
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-222610(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0197916(US,A1)
【文献】特開2004-180784(JP,A)
【文献】特開2007-090075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0073146(US,A1)
【文献】特開2008-206724(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0208054(US,A1)
【文献】特開2002-153462(JP,A)
【文献】特開2014-147619(JP,A)
【文献】Jerome M.G. Borsboom, et al.,Pulse Subtraction Time Delay Imaging Method for Ultrasound Contrast Agent Detection,IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control,米国,IEEE,2009年06月16日,Volume:56, Issue: 6,1151 - 1158
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波撮像システムであって、
マイクロバブルを含む標的領域に向けて送信される一連の超音波パルスに応答するエコー信号を取得するように構成される超音波トランスデューサアレイと、
前記マイクロバブルを活性化して共鳴させるように構成される開始パルス、
及び
前記開始パルス及び検出パルスから構成される加算パルスであって、前記検出パルスは前記開始パルスの後に送信され、前記マイクロバブルの非線形発振信号を検出するように構成される、加算パルス
を含むシーケンスに従って前記一連の超音波パルスを送信するように前記超音波トランスデューサアレイを制御するように構成されるコントローラと、
前記超音波トランスデューサアレイと通信し、
前記エコー信号によって示される位相シフトを決定することによって、前記開始パルスに応答して生成される前記非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスクするように構成される一つ又はそれより多くの信号プロセッサと
を有する、超音波撮像システム。
【請求項2】
前記エコー信号によって示される前記位相シフトを決定することは、前記開始パルスに応答して生成される開始信号と、第2の検出パルスに応答して生成される検出信号とを、前記加算パルスに応答して生成される加算信号と比較することを含み、前記第2の検出パルスは、前記開始パルスの約1乃至2マイクロ秒後に送信される、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記エコー信号によって示される前記位相シフトに位相シフト閾値を適用すること、及び
前記閾値よりも低い位相シフトを示すエコー信号をマスクすること
によって前記非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスクするように構成される、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項4】
前記位相シフト閾値は約10度である、請求項3に記載の超音波撮像システム。
【請求項5】
前記開始パルスは、前記超音波トランスデューサアレイの素子の第1のサブセットから送信される、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項6】
前記第2の検出パルスは、素子の前記第1のサブセットと重ならない前記超音波トランスデューサアレイの素子の第2のサブセットからのみ送信される、請求項5に記載の超音波撮像システム。
【請求項7】
前記加算信号は、前記超音波トランスデューサアレイの素子の前記第1及び第2のサブセットから送信される、請求項6に記載の超音波撮像システム。
【請求項8】
前記超音波トランスデューサアレイによって取得される前記エコー信号に基づいて、前記標的領域の超音波画像を生成するように構成される画像プロセッサを有する、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項9】
前記標的領域の前記超音波画像を表示するように構成されるグラフィカルユーザインターフェースをさらに有する、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項10】
前記エコー信号は、前記超音波トランスデューサアレイの非重複素子の間の不完全な結合によって形成される残留エコー信号を含む、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項11】
超音波撮像の方法であって、前記方法は、
超音波トランスデューサアレイからマイクロバブルを含む標的領域に向かって一連の超音波パルスを送信するステップと、
前記マイクロバブルを活性化して共鳴させるように構成される開始パルス、及び
前記開始パルス及び検出パルスから構成される加算パルスであって、前記検出パルスは前記開始パルスの後に送信され、前記マイクロバブルの非線形発振信号を検出するように構成される、加算パルス
を含むシーケンスに従って前記一連の超音波パルスを送信するように前記超音波トランスデューサアレイを制御するステップと、
前記一連の超音波パルスに応答してエコー信号を取得するステップと、
前記エコー信号によって示される位相シフトを決定することによって、前記開始パルスに応答して生成される非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスクするステップと
を有する、方法。
【請求項12】
前記エコー信号によって示される前記位相シフトを決定するステップは、前記開始パルスに応答して生成される開始信号と、第2の検出パルスに応答して生成される検出信号とを、前記加算パルスに応答して生成される加算信号と比較するステップであって、前記第2の検出パルスは、前記開始パルスの約1乃至2マイクロ秒後に送信される、ステップを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスキングするステップは、
前記エコー信号によって示される前記位相シフトに位相シフト閾値を適用するステップと、
前記閾値より低い位相シフトを示すエコー信号をマスクするステップと
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記開始パルスは、前記超音波トランスデューサアレイの素子の第1のサブセットから送信される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の検出パルスは、前記第1のサブセットと重ならない前記超音波トランスデューサアレイの素子の第2のサブセットから送信される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスキングした後に、前記超音波トランスデューサアレイによって取得される前記エコー信号に基づいて、前記標的領域の超音波画像を生成するステップをさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
実行可能な命令を有する非一時的なコンピュータ可読媒体であって、実行されるとき、医用撮像システムのプロセッサに、請求項11乃至16の何れか一項に記載の方法を実行させる、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コントラスト画像のための超音波システム及び方法に関する。特定の実現は微小気泡由来の信号から組織由来の信号を識別し、組織由来の信号をマスクして、造影強調される解剖学的構造に関連する信号対雑音比を改善するように構成されるシステムを含む。
【背景技術】
【0002】
コントラスト撮像はしばしば、造影剤(例えば、微小気泡)を患者の静脈内に注入し、そして超音波を使用して、身体内の標的化される領域の近くの薬剤を検出することを包含する。マイクロバブルベースの造影剤の独特の特徴は、特定の共振周波数付近での共振である。共振が誘起されると、各マイクロバブルは超音波励起に応じて振動し始める。振動振幅は強い、散乱した非線形信号を生成する比較的一定の、高い振動振幅を有する定常共振段階に到達する前に、非調和の最初の数サイクルの間に急激に増加し得る。しかしながら、既存の造影画像方法及び/又は超音波撮像システムの重大な欠点は、周囲の組織から受信される散乱信号又は反射信号の抑制が不十分であることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、組織から導出される線形散乱又は反射信号を識別し、除去し、それによって、造影マイクロバブルによって生成される残りの非線形信号の明瞭性を高めるための新しい技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は高非線形散乱体、例えば、微小気泡から導出されるエコー信号を最大化し、一方、主に線形散乱体、例えば、組織などの非微小気泡源から導出されるエコー信号を抑制する超音波コントラスト撮像のためのシステム及び方法を記載する。開示されるシステムは、個々の素子のアレイを備えた超音波トランスデューサを含むことができる。アレイは、マイクロバブルなどの造影剤を含む関心領域(ROI)に一連の超音波パルスを送信するように構成することができる。説明を容易にするために、マイクロバブルは、本明細書に記載される実施例の各々に従って言及される。一連の超音波パルスは、それぞれ個別に送信することができる開始パルス及び検出パルスと、それらの間に小さい遅延を伴って送信される開始パルス及び検出パルスの組み合わせを含むことができる第3のパルス(本明細書では加算パルスと呼ぶ)とを含むことができる。開始パルスはマイクロバブルを共振などの非線形振動に開始するように構成することができ、開始パルスの直後に伝達される検出パルスは引き続き励起するように構成することができ、また、開始パルスによって引き起こされる共振マイクロバブルの非線形振動を検出するように構成することができる。いくつかの実施形態では、開始パルスが検出パルスとは別個のアレイ素子から送信されてもよい。開始信号、検出信号、及び加算信号を具現化する超音波エコーがそれぞれ取得されるように、パルスのそれぞれを撮像することができる。それから、超音波トランスデューサと通信可能に結合される信号プロセッサは超音波エコーによって示される位相シフトを検出することができ、位相シフトが指定されるしきい値を下回るエコーを選択的にマスクすることができる。位相シフトは組織から導出される主に線形の信号と比較して、マイクロバブルから導出される非線形の信号に対して著しく大きくなり得るので、信号プロセッサはしたがって、検出される位相シフトを利用して、組織から導出される信号とマイクロバブルから導出される信号との間の識別を強調するように構成され得る。組織形成の信号の形態の雑音又はクラッタを除去した後、残りのマイクロバブル形成の信号の信号対雑音比(SNR)を高めることができ、それによって、既存のシステムと比較して、本明細書のシステムによって実行されるコントラスト画像の感度を改善することができる。
【0005】
本開示のいくつかの例によれば、超音波撮像システムは、マイクロバブルを含む標的領域に向けて送信される一連の超音波パルスに応答してエコー信号を取得するように構成される超音波トランスデューサアレイを含むことができる。また、システムは、超音波トランスデューサアレイを制御して、一連の超音波パルスを一連のシーケンスに従って送信するように構成されるコントローラを含んでもよい。シーケンスは、マイクロバブルを活性化して共鳴させるように構成される開始パルスを含むことができる。また、シーケンスは開始パルス及び検出パルスを含む加算パルスを含んでもよく、ここで、検出パルスは開始パルスの後に伝達され、マイクロバブルの非線形振動信号を検出するように構成される。シーケンスは、単独で送信される第2の検出パルスをさらに含むことができる。また、システムは超音波トランスデューサアレイと通信し、開始パルスに応答して生成される非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスクするように構成される一つ又はそれより多くの信号プロセッサを含むことができる。
【0006】
いくつかの例では、プロセッサがエコー信号によって示される位相シフトを決定することによって、非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスクするように構成される。いくつかの実施形態では、エコー信号によって示される位相シフトを決定することは開始パルスに応答して生成される開始信号と、第2の検出パルスに応答して生成される検出信号とを、加算パルスに応答して生成される加算信号と比較することを含む。いくつかの例では、プロセッサがエコー信号によって示される位相シフトに位相シフト閾値を適用し、閾値以下の位相シフトを示すエコー信号をマスクすることによって、非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスクするように構成される。いくつかの実施形態では、位相シフト閾値は約10度である。
【0007】
いくつかの実施形態では開始パルスが超音波トランスデューサアレイの素子の第1のサブセットから送信され、いくつかの実施形態では第2の検出パルスが素子の第1のサブセットと重ならない超音波トランスデューサアレイの素子の第2のサブセットからのみ送信される。
いくつかの実施形態では、加算信号が超音波トランスデューサアレイの素子の第1及び第2のサブセットから送信される。
【0008】
いくつかの例では、第2の検出パルスが開始パルスの約1乃至2マイクロ秒後に送信される。いくつかの実施形態では、システムはまた、超音波トランスデューサアレイによって取得されるエコー信号に基づいて標的領域の超音波画像を生成するように構成される画像プロセッサを含む。いくつかの例では、システムはまた、標的領域の超音波画像を表示するように構成されるグラフィカルユーザインターフェースを含む。様々な実施形態では、エコー信号が超音波トランスデューサアレイの重複ない要素間の不完全な結合によって形成される残留エコー信号を含んでもよい。
【0009】
本開示のいくつかの例によれば、超音波撮像の方法は、超音波トランスデューサアレイからマイクロバブルを含む標的領域に向けて一連の超音波パルスを送信することと、一連の超音波パルスをシーケンスに従って送信するように超音波トランスデューサアレイを制御することとを含む。シーケンスは、マイクロバブルを共振状態に活性化するように構成される開始パルスを含むことができる。また、シーケンスは開始パルスと検出パルスとを含む加算パルスを含むことができ、ここで、検出パルスは、開始パルスの後に送信され、マイクロバブルの非線形振動信号を検出するように構成される。シーケンスは、単独で送信される第2の検出パルスをさらに含むことができる。この方法はまた、一連の超音波パルスに応答してエコー信号を取得するステップと、開始パルスに応答して生成される非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスキングするステップとを含むことができる。
【0010】
いくつかの例では、非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスキングすることはエコー信号によって示される位相シフトを決定することを含む。いくつかの実施形態では、エコー信号によって示される位相シフトを決定することは開始パルスに応答して生成される開始信号と、第2の検出パルスに応答して生成される検出信号とを、加算パルスに応答して生成される加算信号と比較することを含む。いくつかの例では、非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスクすることはエコー信号によって示される位相シフトに位相シフト閾値を適用することと、閾値未満の位相シフトを示すエコー信号をマスクすることとを含む。いくつかの実施形態では開始パルスが超音波トランスデューサアレイの素子の第1のサブセットから送信され、いくつかの実施形態では第2の検出パルスが第1のサブセットと重ならない超音波トランスデューサアレイの素子の第2のサブセットから送信される。様々な例では、本方法が非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスキングした後に、超音波トランスデューサアレイによって取得されるエコー信号に基づいて、標的領域の超音波画像を生成することをさらに含むことができる。
【0011】
本明細書で説明される方法のいずれか、又はそのステップは実行可能命令を備える非一時的なコンピュータ可読媒体で実施されてもよく、実行されると、医用撮像システムのプロセッサに、本明細書で実施される一つ又はそれより多くの方法又はステップを実行させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態による超音波システムのブロック図である。
【
図2A】本開示の実施形態に従って送信される開始パルスのグラフ表示である。
【
図2B】本開示の実施形態に従って送信される加算パルスのグラフ表示である。
【
図2C】本開示の実施形態に従って送信される検出パルスのグラフ表現である。
【
図3A】本開示の実施形態による、主に線形散乱体から取得される開始信号のグラフ表示である。
【
図3B】本開示の実施形態による、主に線形散乱体から取得される加算信号のグラフ表示である。
【
図3C】本開示の一実施形態による、主に線形散乱体から取得される検出信号のグラフ表示である。
【
図3D】本開示の実施形態による、主に線形散乱体から取得される残留信号のグラフ表現である。
【
図4A】本開示の実施形態による、非線形散乱体から取得される開始信号のグラフ表示である。
【
図4B】本開示の実施形態による、非線形散乱体から取得される加算信号のグラフ表現である。
【
図4C】本開示の実施形態による、非線形散乱体から取得される検出信号のグラフ表示である。
【
図4D】本開示の実施形態による、非線形散乱体から取得される残留信号のグラフ表現である。
【
図5A】本開示の実施形態による、線形信号内で検出される位相シフトのグラフ表示である。
【
図5B】本開示の実施形態による、位相マスクの適用後の
図5Aの位相シフトのグラフ表示である。
【
図5C】本開示の実施形態による、位相マスクのアプリケーションの前後の
図3Dの残留信号のグラフ表現である。
【
図6A】本開示の一実施形態による、非線形信号内で検出される位相変化のグラフ表示である。
【
図6B】本開示の実施形態による、位相マスクの適用後の
図6Aの位相シフトのグラフ表示である。
【
図6C】本開示の実施形態による、位相マスクの適用の前後の
図4Dの残留信号のグラフ表示である。
【
図7】本開示の実施形態による、
図1の信号プロセッサの動作アーキテクチャを示すフロー図である。
【
図8】本開示の実施形態に従って実行されるコントラスト画像の方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
特定の実施形態の以下の説明は本質的に単に例示的なものであり、本発明又はその用途又は使用を限定することを決して意図するものではない。本システム及び方法の実施形態の以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成し、説明されるシステム及び方法を実施することができる特定の実施形態を例として示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は当業者が発明開示されているシステム及び方法を実施することを可能にするのに十分に詳細に記載されており、他の実施形態が利用されてもよく、構造的及び論理的な変更が、本システムの精神及び範囲から逸脱することなくなされてもよいことが理解されるべきである。さらに、明確にするために、特定の特徴の詳細な説明は本システムの説明を不明瞭にしないように、当業者に明らかである場合には論じない。したがって、以下の詳細な説明は限定的な意味で解釈されるべきではなく、本システムの範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0014】
本明細書のシステム及び方法は、患者内の様々な標的領域のマイクロバブルベースの非破壊コントラスト画像を含む。開示されるシステムは造影強調される解剖学的構造がより高い解像度及び感度で撮像されるように、非マイクロバブル源、例えば、組織から受信される信号を抑制しながら、マイクロバブルから受信される信号を最大化するように構成される。システムは超音波照射に応答して別個のエコーシグネチャを形成させる微小気泡の特徴を検出し、利用することによって、この機能を実行することができる。そのような特徴は、共鳴マイクロバブルの高いコントラスト振幅、及びマイクロバブルが超音波パルスに応答して非線形振動に開始されるときに起こり得る顕著な位相シフトを含む。これらの特徴を観察するために、開示されるシステムは、マイクロバブル造影剤を含む身体の領域に向けて、トランスデューサアレイ上の選択素子から開始パルスを送信するように構成されてもよい。開始パルスは、マイクロバブルを共鳴振動に開始させることができる。続いて、検出パルスが、トランスデューサアレイ上の選択される素子から送信され、マイクロバブルの共振振動を検出する。共振を達成する際に生じ得る有意な位相シフトはまた、開始パルス及び検出パルスの別個の送信を介して検出され得る。マイクロバブルによって示される位相シフトは典型的には他の特徴、例えば、組織によって示される位相シフトよりもはるかに大きいので、マイクロバブルベースの信号を他の信号から識別することは、それに関連する位相シフトに基づいて受信信号を分類することによって改善され得る。位相マスクを適用して、組織由来の信号を除去又は抑制し、さらなる処理のためにマイクロバブルベースの信号のみを残すことができる。
【0015】
本開示の原理による超音波システムは媒体、例えば、人体又はその特定の部分に向けて超音波パルスを送信し、超音波パルスに応答してエコー信号を生成するように構成される超音波トランスデューサを含むか、又は超音波トランスデューサに動作可能に結合されてもよい。超音波システムは伝送及び/又は受信ビーム成形を行うように構成されるビーム成形器と、ビーム成形器の伝送及び受信を方向付けるように構成されるビーム成形コントローラと、幾つかの例ではBモード及び/又はドップラーモードで超音波撮像システムによって生成される超音波画像を表示するように構成されるディスプレイとを含んでもよい。超音波撮像システムは、ハードウェア及び/又はソフトウェアコンポーネントで実施することができる一つ又はそれより多くのプロセッサを含むことができる。超音波システムは超音波画像(2D、3D、4Dなど)及び/又は追加のグラフィック情報を配置するように動作可能なディスプレイ又はグラフィックプロセッサを含むことができ、ディスプレイ又はグラフィックプロセッサは、注釈、信頼度メトリック、ユーザ命令、組織情報、患者情報、インジケータ、カラーコーディング、ハイライト、及び他のグラフィックコンポーネントを、超音波システムのユーザインターフェース上に表示するためのディスプレイウィンドウ内に含むことができる。いくつかの実施形態では、超音波画像及び関連する測定値が検査後のレビュー及び報告目的のために、画像保管及び通信システム(PACS)などの記憶装置及び/又はメモリデバイスに提供されてもよい。
【0016】
図1は、本開示の実施形態による例示的な超音波システムを示す。超音波システム100は超音波送信ビームを用いて、超音波造影剤、例えば、マイクロバブルを含む身体の2次元又は3次元領域をスキャンするように構成される超音波データ取得ユニット110を含むことができる。各ビームがそのステアリングされる経路に沿って身体を伝送されると、ビームは、伝送される周波数成分に対応する基本波成分及び(サブ及び超)高調波成分を有するエコー信号を戻す。送信信号に応答して戻されるエコーは、ビームが遭遇するマイクロバブルの非線形応答によって変調され得、それによって、非線形基本成分及び高調波成分を有するエコー信号を生成し得る。
【0017】
図示の実施形態では、超音波データ取得ユニット110がコントローラ113によって制御される超音波センサアレイ112を備えた超音波プローブを含む。コントローラ113の指示の下で、アレイ112はシーケンスに従って、選択される変調特性を有する一連の超音波パルス114を、静脈内に注入されるマイクロバブル117を含む関心領域(ROI)116に送信し、送信されるパルスに応答して超音波エコー118を受信するように構成することができる。コントローラ113は、パルスの周波数成分、パルス強度及び/又は振幅、パルスの位相及び/又は極性、及び/又はパルスの波形プロファイルを含む、送信ビーム又はパルス114の特性を決定するいくつかの制御パラメータに応答することができる。コントローラ113はまた、送信波形メモリ115を含むことができる。所望の特性を有する送信波形を設計し、ディジタル化し、ディジタルサンプリングを送信波形メモリ115に記憶することができる。それから、制御パラメータは所望の送信波形を選択するためにメモリ115をアドレス指定することができ、それから、この送信波形は、アナログ波形を生成するデジタル/アナログ変換器を介してメモリから再生することができる。アナログ波形は、増幅され、アレイ112の素子に適用され得る。
【0018】
マイクロバブル117の特定の特性は、様々であってよい。いくつかの実施形態では、マイクロバブル117が約1μm乃至約5μm、約2μm乃至約3μm、又は約2.65μmの範囲の直径を有する可能性がある。マイクロバブル117の厚さ及び剪断粘度も変化し得る。例えば、マイクロバブルの厚さは、約1乃至約8nm、約2乃至約6nm、又は約4nmの範囲であってもよい。剪断粘度は、約0.2乃至約1.4 Pas、約0.4乃至約1.2 Pas、約0.6乃至約1.0 Pas、又は約0.8 Pasの範囲であり得る。図示のように、いくつかの例では、ROI 116が血管119の一部を含むことができる。アレイ112の設定はコントラスト画像を実行するためにプリセットすることができ、調整可能であってもよい。様々なトランスデューサアレイ、例えばKoninklijke Philips N.V.が販売しているC51広帯域湾曲アレイを含む凸型アレイ又はフェーズドアレイを使用することができる。センサアレイ112に含まれるトランスデューサ素子の数及び配置は、異なる例で変化してもよい。
【0019】
さらに示されるように、超音波データ取得ユニット110はマイクロビーム形成器、又はマイクロビーム形成器とメインビーム形成器との組み合わせを含むことができるビーム形成器120を含むことができ、これらのビーム形成器は、センサアレイ112に結合される。ビーム形成器120は、異なるトランスデューサ素子からのエコー信号を適切に遅延させ、それらを組み合わせて、浅い深度から深い深度までのビーム形態に沿ったコヒーレントエコー信号のシーケンスを形成することができる。ビーム形成器120の機能は、異なる超音波プローブの種類で変化し得る。例えば、ビーム形成器120は2つの別個のビーム形成器、すなわち、被検体への伝送のための超音波エネルギのパルスシーケンスを受信して処理するように構成される伝送ビーム形成器と、受信した超音波エコー信号を増幅し、遅延し、及び/又は和らげるように構成される別個の受信ビーム形成器とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ビーム形成器120が送信ビーム形成と受信ビーム形成の両方のために、それぞれ、送信ビーム形成と受信ビーム形成の両方のためにグループ入力と出力上で作動するメインビーム形成器に結合される、送信ビーム形成と受信ビーム形成の両方のために、センサ素子のグループ上で作動するマイクロビーム形成器を含んでもよい。特定の実施形態において、マイクロビーム伝送は、アレイ内のトランスデューサ素子による信号の送受信を制御してもよい。異なる変調技術を用いてアレイ112から各ビーム方向に複数のパルス114を送信することができ、その結果、画像フィールド内の各スキャン点に対して複数のエコーが受信される。共通の空間的位置に対応するエコーは、エコーのアンサンブルと呼ばれてもよく、アンサンブルメモリ121に記憶されてもよく、アンサンブルメモリから一緒に取り出して処理することができる。
【0020】
データ取得ユニット110はまた、信号プロセッサ122を含んでもよく、これはアレイ112において受信される線形信号(組織から導出される)からの非線形信号(マイクロバブルから導出される)を解読するように構成され得る。信号プロセッサ122は、センサアレイ112及び/又はビーム形成器120と通信可能、動作可能及び/又は物理的に結合することができる。
図1に示す例では信号プロセッサ122がデータ収集ユニット110の一体構成要素として含まれているが、他の例では信号プロセッサ122が別個の構成要素であってもよい。いくつかの例では受信信号がクラッタフィルタ又は位相マスク124によって選択的にマスクすることができ、これは信号プロセッサ122のサブコンポーネント又はモジュールを構成することができ、その結果、線形の組織由来信号が抑制され、マイクロバブルから導出される非線形信号のみが残される。組織由来のノイズを除去することによって、マイクロバブルベースの信号のSNRをさらに高めることができる。実施形態はまた、マスクされていない、すなわちマイクロバブルベースの信号をさらに強化するように構成されるポストマスキングプロセッサ126を含むことができる。
【0021】
マイクロバブル由来のエコーは画像プロセッサ128によって、二次元、三次元、スペクトル、パラメトリック、他の所望の画像タイプを形成するために、さらに処理され得る。得られた画像130は、その後、グラフィカルユーザインタフェース132上に表示することができる。画像プロセッサ128は関心領域116の生の超音波画像を形成するために、Bモード及び/又はドップラー画像データを編成し、表示するように構成することができる。いくつかの例では、画像プロセッサ128がパルス送信中又はパルス送信後に検出される位相シフトの大きさ(複数可)の画像を生成するように構成することができる。グラフィカルユーザインタフェース132は、ユーザによって選択可能な1つ以上のユーザ通知及び/又は素子134を表示するように構成することができる。いくつかの例では素子134が「コントラスト強調」グラフィック136を含むことができ、これはユーザによる選択時に、本明細書で説明される実施による非マイクロバブルベースの信号の選択的抑制を呼び出すことができる。
【0022】
図2は、単独で送信される開始パルス202、単独で送信される検出パルス204、及び一緒に送信される開始パルス及び検出パルスから構成される加算パルス206の例を示す。これらのパルスは、トランスデューサアレイによって送信されて、本明細書に記載されるコントラスト撮像技術を実装することができる。
図2Aに示すように、開始パルス202は約2MHzの周波数を有する比較的短い、例えば約4周期の正弦波形を含んでもよい。開始パルス202が標的マイクロバブルを共鳴振動に開始させるように構成される場合、特定のパルスパラメータは変化してもよい。いくつかの実施形態では、開始パルス202がアレイ素子のサブセットのみから送信されてもよい。例えば、開始パルス202はトランスデューサアレイの奇数素子のみから、又はアレイの偶数素子のみから、又はマトリックスアレイプローブの場合には、1つ以上の特定の素子パッチから送信されてもよい。
図2Cに示すように、検出パルス204は開始パルス202の送信後約2サイクル(又は1乃至2マイクロ秒)で、偶数素子のみ、奇数素子のみ、又は素子の非オーバーラップパッチなど、トランスデューサアレイ素子の別個のサブセットから送信することができるが、2つのパルス間の時間遅延は変わり得る。検出パルス204を放出するように活性化されるアレイ素子は、開始パルス202を放出するように活性化されていない素子から構成されてもよい。
【0023】
図2Bは、開始パルス202及び検出パルス204を送信するために使用されるアレイ素子のサブセットの両方から放出され得る第3のパルス、加算パルス206の例を示す。上述の例を続けると、組み合わされるアレイサブセットは、アレイの奇数及び偶数要素を含むことができる。様々な実施形態では、組み合わされるサブセットがオーバーラップしないサブセット、相補的なアパーチャ、又は直交するサブアパーチャを含むことができる。加算パルス206内の開始パルス202の送信直後に、検出パルス204を送信して、開始パルスによって引き起こされるマイクロバブルの共振振動を検出することができる。例えば、開始パルス202がアレイの奇数のみの素子から放射される場合、検出パルス204は、時間遅延の後、アレイの偶数のみの素子から別個に放射され得る。加算パルス206は、アレイからほぼ同時に送信される開始パルス及び検出パルスを含むことができる。したがって、例示的な方法はトランスデューサアレイからの3つの異なるパルス、すなわち、開始パルス、検出パルス、及び加算パルスの伝送を含むことができる。いくつかの例では、パルスの送信シーケンスが開始パルスと、それに続く加算パルスと、それに続く検出パルスとすることができる。既存のシステムとは異なり、3つのパルスタイプすべてに対する振幅は類似することができるので、各アレイ素子からより高い振幅のパルスを伝送することができ、これはマイクロバブルベースの信号に関連して獲得されるSNRを改善する可能性がある。このようなパルスの特定の特性、例えば、振幅、周波数、長さなどは、変化し得る。
【0024】
図2Bにさらに示されるように、加算パルス206は、送信回路構成の不注意性、及びトランスデューサアレイを構成する素子のサブセット間の機械的及び/又は電気的結合などの撮像システムの制限に起因して、振幅が歪んでもよい。その結果、歪んだ加算パルス208が、トランスデューサアレイから放射され得る。歪みの程度は、使用される特定のトランスデューサ及び/又は異なるパルスを生成するために活性化される特定のアレイ素子に応じて変化し得る。いくつかの例では、奇数要素からの振動振幅の減少、及び偶数要素からの振動振幅の付随する増加は両方のアレイサブセット、例えば、奇数要素及び偶数要素の同時起動の結果として生じ得る。加算パルスの振幅歪みは、(
図3Dに示されるように)組織由来信号の不完全な抑制をもたらし得る。
【0025】
図2A乃至2Cのパルスに応答して生成される、組織などの大部分が線形の散乱体からの反射信号及び/又は散乱信号は
図3A乃至3Cに示されており、その各々は、トランスデューサアレイからの送信される撮像パルスによって取得することができる。開始パルスから導出される開始信号302は
図3Aに示され、別々に送信される検出パルスから導出される検出信号304は
図3Cに示され、加算パルスから導出される加算信号306は歪んだ加算パルスから導出される歪んだ加算信号308として、
図3Bに示される。示されるように、線形組織由来信号302乃至306は、送信されるパルス202乃至206とほぼ同一であり得る。その結果、加算信号306から開始信号302及び検出信号304を減算することによって形成される残留信号310は
図3Dに示されるように、組織由来信号について完全に抑制され得る。しかしながら、特に、歪んだ加算信号308から開始信号302及び検出信号304を差し引くことによって形成される残留信号312はトランスデューサアレイの素子の重複のないサブセット間の不完全な結合のような撮像システムの制限のために、組織に対してさえ、不完全に抑制され得る。
【0026】
対照的に、
図2A乃至
図2Cのパルスに応答して生成されるマイクロバブルなどの非線形散乱体からの反射及び/又は散乱信号は、
図4A乃至
図4Dに示される。基本波及び高調波含有量を呈し得る開始パルスから導出される開始信号402は
図4Aに示され、検出パルスから導出される検出信号404は
図4Cに示され、加算パルスから導出される加算信号406は歪んだ加算パルスから導出される歪んだ加算信号408と同様に、
図4Bに示される。示されるように、マイクロバブル由来シグナル402乃至406は、共鳴におけるマイクロバブルによって引き起こされる非線形シグナル散乱のため、透過パルス202乃至206と著しく異なる。加算信号406から開始信号402及び検出信号404を減算することによって形成される残留信号410は抑制されず、歪んだ加算信号408を使用して形成される残留信号412も抑制されない。元のパルスに対するマイクロバブル由来の信号において具現化される振幅変化は組織由来の信号からマイクロバブル由来の信号を識別するために利用され得るが、このような技術は単独では完全に有効ではないかもしれない。例えば、組織及び微小気泡に基づく信号の重複振幅は、微小気泡に基づく信号から組織由来の信号をフィルタリングする努力を妨害し得る。さらに、別個のトランスデューサ素子間の不完全な結合のために残っている組織ベースの残留信号312は、マイクロバブルベースの残留信号410、412からもつれを解くことが困難であり得る。
【0027】
組織由来の信号をマイクロバブル由来の信号からより効果的に識別するために、本明細書のシステムは開始パルスによって引き起こされる、すなわち、共鳴マイクロバブルが非線形振動に開始される後の位相シフトを検出するように構成される。いくつかの例では、位相シフト検出が例えば、
図5A乃至5C及び
図6A乃至6Cに示されるように、(それらの間の小さな遅延で送信される開始パルス及び検出パルスによって形成される加算パルスから導出される)加算信号に対して、位相における開始信号及び検出信号(別々に送信される開始パルス及び検出パルスから導出される)の加算を比較することを含むことができる。
【0028】
図5Aは開始信号302を検出信号304と加算し、その結果得られる位相の加算を歪んだ加算信号308と比較することによって識別される組織由来信号によって示される位相差502を示す。図示されているように、位相差502は組織由来の信号に対して約0.01度程度にすぎず、これはほぼ検出不可能であり得る。このような有意でない位相変化を有する信号を除去し、それによって受信信号の集合全体から組織由来信号を効果的にフィルタリングするために、本明細書のシステムは、
図1に示す位相マスク124などの位相マスクを含むことができる。位相マスクは、ある閾値以下の検出される位相シフトを有する全ての信号をマスク又は除去するように構成することができる。例えば、
図5Bは、10度の閾値でプログラムされる位相マスクを適用した後の残りの位相シフト504を示す。図示されるように、
図5Aに示されるわずかな位相シフトは、完全にマスクされる。このようにして組織由来の信号を識別し、マスキングすることによって、組織ベースの信号に関連する歪み誘導残留信号506もマスキングすることができ、
図5Cに示すように、完全に抑制される残留信号508を残す。位相マスクによって適用される閾値の特定の大きさは、様々な実施形態において約1度から約50度の範囲で変化し得る。これに加えて、又はこれに代えて、検出される位相シフトの大きさ及び/又は位相差を、ユーザが見直すために表示することができる。
【0029】
図6Aは開始信号402を検出信号404と加算し、結果として生じる位相の加算を歪んだ加算信号408と比較することによって識別されるマイクロバブル由来の信号によって示される位相差602を示す。図示のように、マイクロバブルから導出される信号についてほぼ50度の位相差602を検出することができ、各信号は、
図6Bのプログラムされる10度しきい値を有する同じ位相マスクを適用した後、フィルタリングされる信号604の集合に残る。マイクロバブルベースの残留信号606はまた、
図6Cに示されるフィルタリングされるマイクロバブルベースの残留信号608によって示されるように、保存されてもよく、すなわち、マスクされなくてもよく、改善される分解能を示してもよい。
図6Cにさらに示されるように、フィルタリング済みのマイクロバブルベースの残留信号608はプレフィルタリング済み信号606と同じ振幅を有する可能性があるが、特に信号の開始及び終了付近において、より小さな位相シフトを示す信号のマスキングのために、位相マスクによって長さが減少されてもよい。分解能は検出パルスの有効長によって決定することができ、動きアーチファクトは散乱開始パルス(SP1)を式1.1に、散乱検出パルス(SP3)をそれぞれ式1.1及び式1.2に置き換えることによって最小化することができる。
0.5×SP1(t)+0.5×SP3(t-2T)
(式1.1)
0.5×SP1(t+2T)+0.5×SP3(t)
(式1.2)
ここで、tは時間を表し、Tは期間を表す。
【0030】
図7は、
図1に含まれる信号プロセッサ122のような、本明細書で説明される信号プロセッサの動作アーキテクチャを示すフロー図である。ボックス702では、信号プロセッサが超音波トランスデューサアレイによって最初に検出され、ビーム形成器によって形成されるビームによって、散乱及び/又は反射されるエコー信号を受信してもよい。受信信号は1つ以上のエコーアンサンブルを含み得、各アンサンブルは開始信号、検出信号、加算信号、及び/又は幾つかの例ではROI内の共通の空間位置から導出される歪んだ加算信号を含む。信号は、組織又はマイクロバブルを含む様々な特徴から導出されてもよい。ボックス704に示されるように、信号プロセッサの仕分けモジュールは開始、検出及び加算エコーシグナルが識別され、加算モジュールに出力されるように、シグナルタイプに基づいて各アンサンブル内のシグナルを仕分けしてもよい。ボックス706に示されるように、信号プロセッサの加算モジュールは開始信号と検出信号とを一緒に結合し、結合される開始信号と検出信号のアンサンブルを、位相シフト検出モジュールなどの信号プロセッサのさらなる処理ブロックに出力することができる。ボックス708では、位相シフト検出モジュールが加算エコー信号アンサンブルに対して位相の合わされる開始信号及び検出信号アンサンブルの組み合わせを比較することができ、それによって、別個に送信されるパルスから導出される信号と加算パルスから導出される信号との間の位相シフトの存在及び/又は程度を決定することができる。位相シフト検出以外の技術が使用される実施形態では、マスクが振幅決定ブロック又はその他のような異なる処理ブロックに仕分けられた信号を結合することによって計算されてもよい。ボックス710において、マスキングモジュール、例えば位相マスク124は、信号に関連する検出される位相シフトの大きさに基づいて信号を除去又はマスクすることができる。いくつかの例では、マスキングモジュールがマスキング閾値を適用し、閾値以下の位相シフトを有するすべての信号を除去又はマスキングすることができる。マイクロバブルベースの信号のみから成る残りの信号はその後、補足的なフィルタリング及び表示のために、ポストマスキングプロセッサ126及び/又は画像プロセッサ128などの一つ又はそれより多くの追加のプロセッサに送信され得る。
図8は、本開示の原理に従って実行されるコントラスト画像の方法のフロー図である。例示的な方法800はマイクロバブル造影剤を含む関心領域を撮像し、マイクロバブルベースの信号から非マイクロバブルベースの信号をフィルタリングするために、本明細書で説明されるシステム及び/又は装置によって任意の順序で利用され得るステップを示す。方法800はシステム100のような超音波撮像システム、又は、例えば、Koninklijke Philips N.V.(「Philips」)によるLUMIFYのようなモバイルシステムを含む他のシステムによって実行されてもよい。追加の例示的なシステムは、やはりフィリップスによって製造されるSPARQ及び/又はEPIQを含むことができる。図示の実施形態では、本方法がブロック802において、「超音波トランスデューサアレイからマイクロバブルを含む標的領域に向けて一連の超音波パルスを送信する」ことによって開始する。
【0031】
ブロック804において、この方法は、「マイクロバブルを共振状態に活性化するように構成される開始パルスと、開始パルス及び検出パルスから構成され、開始パルスの後に送信され、マイクロバブルの非線形振動信号を検出するように構成される加算パルスと、単独で送信される第2の検出パルスとを含むシーケンスに従って、超音波トランスデューサアレイを制御して一連の超音波パルスを送信する」ことを含む。
【0032】
ブロック806において、本方法は、「一連の超音波パルスに応答するエコー信号を取得すること」を含む。
【0033】
ブロック808において、この方法は、「開始パルスに応答して生成される非マイクロバブルベースの信号を選択的にマスキングする」ことを含む。
【0034】
コンポーネント、システム、及び/又は方法がコンピュータベースのシステム又はプログラマブルロジックなどのプログラマブルデバイスを使用して実装される様々な実施形態では、上述のシステム及び方法が「C」、「C++」、「FORTRAN」、「パスカル」、「VHDL」などの様々な既知の又は後に開発されるプログラミング言語のいずれかを使用して実装できることを理解される。したがって、上述のシステム及び/又は方法を実施するようにコンピュータなどのデバイスに指示することができる情報を含むことができる、磁気コンピュータディスク、光ディスク、電子メモリなどの様々な記憶媒体を準備することができる。適切な装置が記憶媒体に含まれる情報及びプログラムにアクセスできると、記憶媒体は情報及びプログラムを装置に提供することができ、したがって、装置は、本明細書に記載するシステム及び/又は方法の機能を実行することができる。例えば、ソースファイル、オブジェクトファイル、実行可能ファイルなどの適切な材料を含むコンピュータディスクがコンピュータに提供される場合、コンピュータは情報を受け取り、それ自体を適切に構成し、様々な機能を実行するために、上記の図及びフローチャートに概説される様々なシステム及び方法の機能を実行することができる。すなわち、コンピュータは上述のシステム及び/又は方法の異なる要素に関連する情報の様々な部分をディスクから受信し、個々のシステム及び/又は方法を実装し、上述の個々のシステム及び/又は方法の機能を調整することができる。
【0035】
本開示を考慮して、本明細書で説明される様々な方法及びデバイスは、ハードウェア、ソフトウェア、及びファームウェアで実装され得ることに留意される。さらに、様々な方法及びパラメータは、例としてのみ含まれ、いかなる限定的な意味においても含まれない。この開示を考慮して、当業者は本発明の範囲内に留まりながら、それら自体の技術及びこれらの技術に影響を及ぼすために必要とされる機器を決定する際に、本教示を実施することができる。本明細書で説明されるプロセッサのうちの一つ又はそれより多くの関数はより少ない数又は単一の処理ユニット(例えば、CPU)に組み込まれてもよく、本明細書で説明される関数を実行するために実行可能命令に応答してプログラムされる特定用途向け集積回路(ASIC)又は汎用処理回路を使用して実装されてもよい。
【0036】
本システムは超音波撮像システムを特に参照して説明されてきたが、本システムは一つ又はそれより多くの画像が系統的な方法で得られる他の医療用撮像システムに拡張することができることも想定される。したがって、本システムは腎臓、精巣、乳房、卵巣、子宮、甲状腺、肝臓、肺、筋骨格、脾臓、心臓、動脈血及び血管系、ならびに超音波誘導介入に関連する他の画像応用に限定されるものではないが、画像情報を取得及び/又は記録するために使用され得る。さらに、本システムは本システムの特徴及び利点を提供することができるように、従来の撮像システムと共に使用することができる一つ又はそれより多くのプログラムを含むこともできる。本開示の特定の追加の利点及び特徴は、本開示を検討することにより当業者に明らかであり得るか、又は本開示の新規なシステム及び方法を採用する当業者によって経験され得る。本システム及び方法の別の利点は、従来の医療画像システムを容易にアップグレードして、本システム、装置、及び方法の特徴及び利点を組み込むことができることであり得る。
【0037】
当然のことながら、本明細書で説明される例、実施形態、又はプロセスのうちの任意の1つは、一つ又はそれより多くの他の例、実施形態、及び/又はプロセスと組み合わせることができ、又は本システム、デバイス、及び方法による別個の装置又はデバイス部分の間で分離及び/又は実行することができることを理解される。
【0038】
最後に、上記の議論は単に本システムを例示することを意図しており、添付の特許請求の範囲を任意の特定の実施形態又は実施形態のグループに限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、本システムは例示的な実施形態を参照して特に詳細に発明されてきたが、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載される本システムのより広く意図される精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び代替実施形態を考案することができることも理解される。したがって、本明細書及び図面は例示的な方法で見なされるべきであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。