(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】GI症候群及び移植片対宿主病の治療方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20231023BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231023BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20231023BHJP
【FI】
C07K16/18
C12N15/13
A61K39/395 N ZNA
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022008032
(22)【出願日】2022-01-21
(62)【分割の表示】P 2019075155の分割
【原出願日】2013-05-28
【審査請求日】2022-02-17
(32)【優先日】2012-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509307934
【氏名又は名称】スローン ケタリング インスティテュート フォア キャンサー リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】カルスニック、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ロトロ、ジミー
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-526153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00- 39/44
A61K 45/00- 45/08
A61K 31/00- 31/80
C07K 16/00- 16/46
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変重鎖(V
H
)及び可変軽鎖(V
L
)を含む、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片であって、
ここで、該V
H
が、V
H
-CDR1配列であるNYWMH、V
H
-CDR2配列であるAIYPGDSDTSYNQKFKG及びV
H
-CDR3配列であるLYYGYDを含み、且つ、
ここで、該V
L
が、V
L
-CDR1配列であるKSSQSLIDSDGKTFLNW、V
L
-CDR2配列であるLVSKLDS、及びV
L
-CDR3配列であるWQGTHFPYTを含み;
ここで、該V
H
が、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWMHWVRQAPGQGLEWMGAIYPGDSDTSYNQKFKGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARLYYGYDWGQGTTVTVSSを含む、
抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
V
L
が、DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCKSSQSLIDSDGKTFLNWFQQRPGQSPRRLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPYTFGQGTKLEIKを含む、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
抗体が、IgG抗体である、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
抗体が、IgG1抗体である、請求項3記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
抗体が、IgM抗体である、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項6】
抗原結合断片がscFvである、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
重鎖が、QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTNYWMHWVRQAPGQGLEWMGAIYPGDSDTSYNQKFKGRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARLYYGYDWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGを含む、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項8】
軽鎖が、DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCKSSQSLIDSDGKTFLNWFQQRPGQSPRRLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPYTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGECを含む、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
重鎖が、配列番号:6である、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項10】
軽鎖が、配列番号:8である、請求項1記載の抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【請求項11】
可変重鎖(V
H
)及び可変軽鎖(V
L
)を含む、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片であって、
ここで、該V
H
が、V
H
-CDR1配列であるNYWMH、V
H
-CDR2配列であるAIYPGDSDTSYNQKFKG及びV
H
-CDR3配列であるLYYGYDを含み、且つ、
ここで、該V
L
が、V
L
-CDR1配列であるKSSQSLIDSDGKTFLNW、V
L
-CDR2配列であるLVSKLDS、及びV
L
-CDR3配列であるWQGTHFPYTを含み;
ここで、該V
L
が、DVVMTQSPLSLPVTLGQPASISCKSSQSLIDSDGKTFLNWFQQRPGQSPRRLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPYTFGQGTKLEIKを含む、抗セラミド抗体又はその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2012年5月25日に出願された仮出願番号61/651,729号の利益を主張し、35 U.S.C. § 119(e)の下、参照により、本明細書中に全体が明記されているかのように、その全内容が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府の利益の陳述)
本発明は、国立衛生研究所により授与された契約番号CA85704の下、政府の支援により
行われた。政府は本発明について一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
放射線は、依然として幅広い種類の悪性細胞に対する最も有効である治療の一つである。しかしながら、骨髄、毛包、表皮及び胃腸管の正常細胞は、放射線細胞死に極めて敏感であり、がんの治療のためのこの療法の効果的な使用が制限されている。放射線胃腸(GI)症候群は、放射線疾患がもたらす典型的な結果であり、それは放射線/核事故後に起こ
るかもしれない深刻な致死毒性である。核爆発又は核事故を介した放射性物質災害の可能性は長く存在し続けており、しかしながら、放射線散布機器を用いた攻撃の脅威により、安全かつ効果的な医学的放射線対策(MRC)の緊急性が増している。バイオシールド計画
(The Project BioShield Act)及び保健社会福祉省は、有効なMRC緩和剤は、核災害24時間(これは、都市人口のかなりの部分に対して治療を動員するのに必要である最短時間を意味する)後に投与される場合でさえ、効果的であるべきだと推定する。放射線胃腸(GI)症候群(RGS)は、陰窩/絨毛ユニット内の腸幹細胞区画の破壊を伴う深刻な致死毒性であり、結果として粘膜露出、栄養素吸収の喪失及び常在細菌叢に対する脆弱性を生じる。臨床的には、RGSは、食欲不振、嘔吐、下痢、脱水症、全身性感染症、並びに極端な場合
には敗血性ショック及び死を呈する。正常組織への放射線の効果の大規模な研究にもかかわらず、第一応答者、軍人又は汚染地区に入る修復労働者に対し使用可能な、放射線GI症候群に有効な予防用又は治療用緩和剤がない。
【0004】
造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞の提供及び臍帯血からの幹細胞を含む)は、進行がんを治療するもう一つの方法である。しかしながら、組織移植は、しばしば宿主において様々な免疫応答を惹起し、結果として、移植片の拒絶及び移植片対宿主病(「GvHD」)を生じる。GvHDは、T細胞媒介性自己免疫疾患の一種である。造血幹細胞移植、特に
骨髄移植は、現在のところ、急性及び慢性白血病、骨髄腫、固形腫瘍(R. J. Jones, Curr Opin Oncol 3 (2), 234 (1991); G. L. Phillips, Prog Clin Biol Res 354B, 171
(1990))、再生不良性貧血並びに深刻な免疫不全 (R. P. Gale, R. E. Champlin, S.
A. Feig et al., Ann Intern Med 95 (4), 477 (1981); G. M. Silber, J. A. Winkelstein, R. C. Moen et al., Clin Immunol Immunopathol 44 (3), 317 (1987))を含む、多数の悪性及び非悪性疾患の治療に用いられている。移植に先立ち必要である前処置レジメンは、患者の免疫系を抑制する又は除去するように意図されており、患者は腫瘍性の再発又は感染の影響を受けやすい状態になる。
【0005】
近年の親族でない及びHLA非同一ドナーの使用により、残念ながらGvHDの発生率は増し
ている。ドナー骨髄移植片からのT細胞の除去はGvHDを改善する一方で、この戦略により
生着不全率が増し、かつ治療的に有益な移植片対腫瘍効果が著しく減少する。そのため全生存は改善しない。さらには、強力な前臨床データにもかかわらず、急性GvHDの標準治療であるコルチコステロイドにTNF拮抗薬を加えることにより炎症性サイトカイン作用を減
少させGvHD転帰を改善する試みは、限られた治療効果を提供している。
【0006】
従って、放射線疾患、GI症候群、GvHD、及びGI損傷が動物の敗血症から罹患率/死亡率
をもたらす他の自己免疫疾患、並びに高レベルの内皮のアポトーシスを特徴とする状態の発生率及び重症度を減じる、代替戦略に対する緊急のニーズがある。
【発明の概要】
【0007】
(本発明の概要)
GI症候群、GvHD、放射線疾患、及びGI損傷と関連している特定の自己免疫疾患、並びに高レベルの内皮のアポトーシスを特徴とする状態、及びセラミドリッチプラットフォーム(CRP)の形成と関連している疾患などの動物の疾患(以下「列挙された疾患」)の予防
及び治療に対する効率の良い手段が欠乏していることを含む、1以上の不足に先行技術が
陥っていることを、我々は見出した。方法の多くは、列挙された疾患を治療する(「緩和する」を含む)ために使用されるであろうが、例えば対象への放射線照射前又は対象が移植を受ける前など十分に早く処置が行われる場合、対応する疾患(それぞれGI症候群又はGvHD)が予防されることがある。
【0008】
最初の一連の実施態様としては、抗セラミド抗体又はその生物学的に活性な断片と共に、グラム陰性細菌を標的とする少なくとも1の抗生物質を予防上又は治療上有効量を投与することによる、動物の列挙された疾患の予防又は治療のための方法を提供する。本実施態様において使用する抗生物質は、治療上有効量の任意の抗セラミド抗体と共に、キノロン剤(バイトリル(Baytril)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin))、セファロスポリン(セフェピム(cefepime)、セフタジジン(ceftazidine))又はアミノグリコシド
(ゲンタマイシン(gentamicin)、アミカシン(amikacin))を含むグラム陽性及びグラム陰性生物のいずれをも対象とする広域スペクトル抗菌物質を含む。抗セラミド抗体は、h2A2などのヒト化抗セラミド抗体又は完全ヒト抗セラミド抗体を含むがこれらに限定されない。本発明の実施態様において有用である他の抗体は、抗セラミドモノクローナル抗体(例、1H4、15D9、5H9、並びに2A2及びそのヒト化型、及びh2A2、及び2A2 IgM)、ポリクローナル抗体もしくは遺伝子組み換え抗体、又はそれらの生物学的に活性な断片、又はそれらの変異体を含む。特定の実施態様においてモノクローナル抗体は、セラミドと交差反応し得る。マウス2A2抗体は、ATCCに寄託されている。該抗体は、Balb/c mouseの脾臓細
胞と融合させた骨髄腫細胞の寄託者による識別参照:2A2.1.1.1.1.、及びATCC(登録商標
)特許寄託指定PTA-13418を有する。
【0009】
予防上及び治療上有効量の抗セラミド抗体は、約0.1 mg/kgから約100 mg/kg、及び約100 mg/kgから約1000 mg/kgである。抗セラミド抗体と投与される1以上の抗生物質の予防上及び治療上有効量は、抗生物質、製剤、投与経路などに応じて大きく変化するが、約0.1mg/kgから約100mg/kg、約100 mg/kgから約1000 mg/kgの範囲にわたり得る。抗生物質及び
抗体は、例えば単一の医薬製剤として同時に、又は順次投与され得る。本明細書中「治療剤」とは、抗セラミド抗体及びミモトープ、並びにグラム陰性細菌を標的とする抗生物質を指す。
【0010】
多様な実施態様において使用されるキノロン剤抗生物質は、エンロフロキサシン(すなわち、バイトリル)、シプロフロキサシン(すなわち、シプロ(Cipro)及びプロキン(Proquin))、エノキサシン(すなわち、ペネトレックス(Penetrex))、ガチフロキサシン、すなわち、ガチフロ(Gatiflo)、テキン(Tequin)及びザイマール(Zymar))、ゲミフロキサシン(すなわち、ファクティブ(Factive))、レボフロキサシン(すなわち
、レバキン(Levaquin))、ロメフロキサシン(すなわち、マキサキン(Maxaquin))、モキシフロキサシン(すなわち、アベロックス(Avelox))、ノルフロキサシン(すなわち、ノロキシン(Noroxin))、オフロキサシン(すなわち、フロキシン(Floxin))、
プルリフロキサシン、スパルフロキサシン(すなわち、ザガム(Zagam))、トロバフロ
キサシン/アルトロフロキサシン(Altrofloxacin)(すなわち、トロバン(Trovan))、ダノフロキサシン(すなわち、A180)、ジフロキサシン(すなわち、ジクラール(Dicural))、マルボフロキサシン(すなわち、オーバックス(Orbax))、オルビフロキサシン(すなわち、ゼニクイン(Zeniquin))、ナリジクス酸(Naldixic acid)(すなわち、
ネググラム(NegGram))、シノキサシン(すなわち、シノバック(Cinobac))、フルメキン、ナリジクス酸、オキソリン酸、ピペミド酸、ピロミド酸、ロソキサシン、フレロキサシン、ペフロキサシン、ルフロキサシン、バロフロキサシン、グレパフロキサシン、パズフロキサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、ベシフロキサシン、クリナフロキサシン、ガレノキサシン、シタフロキサシン、イバフロキサシン、プラドフロキサシン及びサラフロキサシンを含む群から選択される。
【0011】
抗体に加えて又は抗体の代わりに、1以上のセラミドエピトープのミモトープ、又はミ
モトープと本質的に同一の結合を用いる化合物(すなわちケミカルバックボーンライブラリースクリーニングに由来する)が、治療上有効量投与され得る。
【0012】
列挙された疾患の1以上を緩和するため、治療剤は、疾患の症状が現れる前に(GvHD及
び特定の明確な自己免疫疾患の場合など)、又は放射線被ばく後に(放射線疾患又はGI症候群の場合)、投与される。特定の列挙された疾患を緩和する際には、治療剤は、放射線照射の前もしくは後に、又は移植(例、造血幹細胞移植)前又は後に、投与される。該方法の多くは、列挙された疾患を治療する(「緩和する」を含む)ために使用されるであろうが、例えば対象の放射線照射前、又は対象が移植を受ける前など十分に早く処置が行われる場合対応する疾患(それぞれGI症候群又はGvHD)は予防され得る。
【0013】
二つ目の一連の実施態様としては、医薬上許容される担体中に、1H4、15D9、5H9、及び2A2及びそのヒト化型、及びh2A2、及び2A2 IgMなどのモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、遺伝子組み換え抗体若しくは完全ヒト抗体又はそれらの生物学的に活性な断片若しくは変異体を含むh2A2などの抗セラミド抗体、又はスタチン、又はイミプラミンを予防上若しくは治療上有効量含み、かつ広域ベースの抗生物質を含むグラム陰性細菌の感染を治療又は予防する本明細書中に記載の列挙された抗生物質を1以上含む、動物において列
挙された疾患の1つを予防又は治療に有用な医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明のさらに他の側面、特徴及び利点は、本発明の実行を考慮する最良の態様を含むいくつかの特定の実施態様及び実施を説明することによるだけで、以下の詳細な説明から容易に明らかである。本発明は、他の実施態様及び異なる実施態様もまた可能であり、その複数の詳細は、さまざまな明確な点において、本発明の精神及び範囲を逸脱しない全てに変更され得る。従って、図面及び説明は、例示的性質であり制限的でなものでないと見なされるものである。
【0015】
本発明を、限定の目的ではなく例示を目的として、添付図の図により説明し、図面内の参照番号は図面内の類似の要素を指す:
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】15.5 Gy亜全身放射線照射(SBI)の24時間後の精製モノクローナル2A2 Abの投与により、マウスの生存が改善する。
【
図2】15.5 Gy SBIの24時間後のエンロフロキサシン(バイトリル)投与により、マウスの生存が改善する。(A)被ばくの24時間後から、放射線照射したC57BL/6マウスにおよそ3 mg/日のバイトリルを飲水投与した。動物の生存を、積極限カプラン・マイヤー方法により算出した。この研究において死亡した全動物の剖検により、放射線GI症候群を示すGI粘膜の露出が明らかになった。
【
図3】精製モノクローナル2A2 Ab及びバイトリルは、15.5 Gy SBI後のGI症候群を緩和するするために相乗的に作用する。(A)放射線照射の24時間後に、静脈内尾部静脈注射により精製2A2 IgM(1000 mg)を投与し、およそ3 mg/日のバイトリルを飲水投与した。動物の生存を、積極限カプラン・マイヤー方法により算出した。この研究において死亡した全動物の剖検により、放射線GI症候群を示すGI粘膜の露出が明らかとなった。
【
図4】強力なin vivo活性を有する新規抗セラミド抗体を作製するために用いた戦略の図。
【
図5】h2A2はセラミドに選択的に結合する。Maxisorp ELISAプレートを、C
16 カルボキシセラミドと共役したBSA又はBSA単独で、一晩4℃でコーティングした。2mg/ml 無脂肪乳溶液を用いたブロッキングの後に、ビオチン化h2A2を表示の濃度で、プレートに室温で2時間加えた。HRP共役ストレプトアビジンを用いた検出及びプレートリーダーによるシグナルの定量化の後に、結合を判定した。
【
図6】h2A2は、セラミドに対して、m2A2よりも優れた結合を示す。
図1に記載のとおりELISAを行った。ヒト化IgG又はマウスIgMの結合を、抗ヒトHRP又は抗マウスHRP二次抗体を用いて検出した。
【
図7】h2A2は、Jurkat細胞のアポトーシスを阻害する。10% FBS含有RPMI培地中1x10
6細胞/mlに調節したJurkat細胞に、h2A2又はm2A2抗セラミド抗体を投与し、10 Gyガンマ放射線照射に曝露した。細胞を16時間後に固定し、Hoeschstビスベンズイミド染色によってアポトーシスを定量化した。データを、Mabを受けていない細胞のアポトーシスの阻害パーセントとして示す。
【
図8】h2A2は、致死的な放射線被ばくの後の、陰窩幹細胞の生存を改善する。雄6-10週齢 C57Bl/6マウスに、15 Gy全身放射線照射の15分前にh2A2モノクローナル抗体を投与した。動物を、放射線照射3.5日後に屠殺し、陰窩ミクロコロニーアッセイのため組織を処理した。近位空腸の切片をセクショニングのため採取した。腸の切片をH&Eを用いて染色し、Withers及びElkundの方法に従って、生存する陰窩を定量化した。少なくとも3匹のマウスからの複数の切片を、データ点ごとに採点した。
【
図9】h2A2は、m2A2と同様に陰窩幹細胞を防護する。15 Gy全身放射線照射の15分前に、h2A2又はm2A2モノクローナル抗体をマウスに投与し、記載のとおりミクロコロニーアッセイを行った。
【
図10】h2A2は、陰窩幹細胞死を緩和する。15 Gy全身放射線照射15分前又は15 Gy全身放射線照射後48時間までに、マウスにh2A2を投与し、記載のとおりミクロコロニーアッセイを行った。
【
図11】腹腔内注射を経て投与される場合、h2A2は有効な放射線防護剤又は緩和剤である。15 Gy全身放射線照射15分前又は15 Gy全身放射線照射後48時間までに、マウスにh2A2を投与し、記載のとおりミクロコロニーアッセイを行った。
【
図12】h2A2は、致死的なRGSから動物を防護する。15 Gy被ばくの15分前に、h2A2をマウスに投与した。動物の生存を監視し、瀕死の際に屠殺した。カプラン・マイヤー生命表法による生存解析を行った。各群に、少なくとも5匹のマウスを含めた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
グラム陰性細菌を標的とする抗生物質と共に抗セラミド抗体を投与することは、GvHD、放射線疾患、GI症候群、動物においてGI損傷が敗血症からの罹患率/死亡率をもたらす自
己免疫疾患、並びに細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘発性殺傷を介した疾患及び/又は内皮の微小血管系に対する損傷を介した疾患を含むCRP生成と関連している他の疾患(「列挙
された疾患」)の予防、緩和及び治療において予期しない相乗効果をもたらすことがここで見出された。該抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、遺伝子組み換え抗体、ヒト化抗体若しくは完全ヒト抗体、又はFv断片若しくは単一ドメイン抗体などそれらの生物学的に活性な断片若しくは変異体であり得る。抗体に加えて又は抗体の代わりに、セラミドと結合するミモトープ又はミモトープと本質的に同一の結合を有する化合物が、治療上有効量投与され得る。従って特定の実施態様は、予防上又は治療上有効量のグラム
陰性細菌を標的とする抗生物質と共に、治療又は予防用の量の抗セラミド抗体又はその生物学的に活性な断片若しくは変異体又はミモトープを投与することによる、列挙された疾患の治療、緩和又は予防の方法を対象にする。有用な抗生物質は、例えばキノロン剤(バイトリル、シプロフロキサシン)、セファロスポリン(セフェピム、セフタジジン(ceftazidine))及びアミノグリコシド(ゲンタマイシン、アミカシン)などのグラム陽性及
びグラム陰性生物のいずれをも対象とする広域スペクトル抗菌物質を含む。抗体及び抗生物質及びミモトープ(本明細書中「治療剤」)は、放射線照射若しくは組織移植の前又は後に、又はGI症候群、GvHD、消化管に対する損傷が関わる自己免疫疾患、若しくはCRP形
成と関連している他の疾患の診断に基づいて、投与され得る。治療剤は、同時に、又は異なる時にかつ異なる経路から投与され得る。
【0018】
他の実施態様は、広域スペクトル抗生物質を含むグラム陰性細菌を標的とする抗生物質と共に、治療又は予防用の量の抗セラミド抗体又はその生物学的に活性な断片若しくは変異体又はセラミド結合ミモトープを含む、列挙された疾患を予防又は治療するために投与され得る医薬組成物を対象にする。
【0019】
以下の説明において、説明を目的として、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が明記される。しかしながら、これらの具体的な詳細なしに本発明が実施されるかもしれないことは当業者にとって明らかであるだろう。
【0020】
本発明は、具体的な実施態様に関して説明される。しかしながら、広範な本発明の精神及びの範囲を逸脱しない範囲で、これに対し多様な変更(modification)及び変更(change)を行ってもよいことは明白であるだろう。結果的に明細書及び図は、制限的な意味合いよりもむしろ例示としてみなされる。本明細書中、限定するように解釈されるべきでない上記に説明する実験及び以下の実施例により、本発明は説明される。本出願全体を通して引用された全ての参考文献、係属中の特許出願及び公開された特許の内容は、参照により本明細書中に明確に組み込まれる。具体的な用語を使用するが、それらは、別段表示しない限り当技術分野で用いられるように使用される。
【0021】
本明細書中で使用する以下の用語は、ここで与えられた対応する意味を有する。
【0022】
1. 定義
一般に、本明細書中記載された、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、タンパク質及び核酸、化学、及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名並びにそれらの技術は、当技術分野において周知かつ通常使用されるものである。別段表示しない限り、本発明の方法及び技術は、おおむね、本明細書全体を通して引用し論じた、さまざまな一般的参考文献及びより具体的な参考文献に記載のとおり、当技術分野で周知の従来の方法に従って、行われる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring
Harbor, N.Y. (1989); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992,及びSupplements to 2002); Harlow and Lan, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990); Principles of Neural Science, 第4版., 編者Eric R. Kandel, James H. Schwart, Thomas M. Jessell. McGraw-Hill/Appleton & Lange: New York, N. Y. (2000).を参照。別段明確にしない限り、本明細書使用する全ての技術及び科
学用語は、当業者によって通常理解されるのと同一の意味を有する。
【0023】
本明細書中使用される「本発明において使用するための抗生物質」は、グラム陽性及びグラム陰性生物のいずれをも対象とする広域スペクトル抗菌物質を含む、グラム陰性細菌に対して有効である任意の抗生物質を意味する。これらは、キノロン剤(バイトリル、シ
プロフロキサシン)、セファロスポリン(セフェピム、セフタジジン(ceftazidine))
又はアミノグリコシド(ゲンタマイシン、アミカシン)を含む。最近の実験において、バイトリルはGI症候群からの生存を改善し、一方サルファトリム(スルホンアミド及びトリメトプリム)は効果を有さないことが示された。これは、グラム陰性生物を対象とする広域スペクトル抗菌物質が、グラム陰性細菌を特異的に標的とする抗生物質よりも、より有効であるかもしれないことを示す。
【0024】
本明細書中使用される列挙された疾患の範囲内である「自己免疫疾患」は、GvHD及びGI損傷に付随して起こる自己免疫疾患を意味するがこれらに限定されない。
【0025】
本明細書中使用される「有効量」は、望ましい効果を生み出す治療剤の量を意味する。
【0026】
本明細書中使用される「列挙された疾患」は、本発明の実施態様に従って処置が行われることにより、治療(緩和を含む)又は予防され得る任意の疾患を意味する。列挙された疾患は、放射線疾患、GvHD、GI症候群及びGI損傷と関連している自己免疫疾患、又は関節リウマチ及び多発性硬化症を含む高レベルの内皮のアポトーシスを特徴とする疾患及び状態を含む。CRP形成と関連している疾患、並びに細胞傷害性Tリンパ球(CTL)誘発性殺傷
を介する疾患、及び/又は内皮の微小血管系に対する損傷を介する疾患も含まれる。
【0027】
本明細書中使用される「胃腸(GI)症候群」とは、いくつかの症状は6 Gy又は600 rad
程度で起こるかもしれないが、およそ10 Gy(1000 rads)を越える線量によって通常起こるであろう完全な症候群を意味する。
【0028】
本明細書中使用される「ミモトープ」は、エピトープの構造を模倣する、多くの場合ペプチドである高分子を意味する。この特性のため、エピトープによって引き起こされるものと類似した抗体応答を起こす。特定のエピトープ抗原に対する抗体は、エピトープを模倣するミモトープを認識するであろう。ミモトープは、通常バイオパニングを介してファージディスプレイライブラリーから得られる。ミモトープ(Mimotoptes)は、列挙された疾患を治療し得る内因性の抗セラミド抗体産生をひき起こす対象の免疫応答を起こすために有用である。
【0029】
本明細書中使用される「疾患を緩和」は、疾患又は疾患の症状を弱める又は改善することを意味する。例えば、放射線疾患は、被ばく後しかし疾患の表現型の発現の前(すなわち、疾患の症状の出現の前)の治療剤投与により緩和され得る。緩和は、疾患又は疾患の症状を弱める又は取り除くことを含む、予防によって疾患をより深刻でないものにする効果をもたらすことを含む。列挙された疾患の緩和は、本明細書記載のとおり、列挙された疾患の症状が起こる前の「治療」の定義内にある。疾患を緩和する治療剤の量は、本明細書中「治療上有効量」を指す。
【0030】
本明細書中使用される「予防上有効量」は、対象に投与される時、意図した予防効果(例、疾患若しくは1以上の症状群の発病(又は再発)を予防する又は遅らせること、又は
疾患若しくは1以上の症状群の発病(又は再発)の可能性を弱めること)を有するであろ
う治療剤の量を意味する。完全な予防効果は、単回投与によって必ずしも起こるわけではなく、一連の投与後にのみ起こるかもしれない。従って、予防上有効量は、1回以上の投
与によって投与してもよい。
【0031】
本明細書中使用される「予防剤、緩和剤及び治療剤」は、任意の抗セラミド抗体、及び例えばキノロン剤(バイトリル、シプロフロキサシン)、セファロスポリン(セフェピム、セフタジジン(ceftazidine))又はアミノグリコシド(ゲンタマイシン、アミカシン
)などのグラム陰性生物を対象とする広域スペクトル抗菌物質を意味する。
【0032】
本明細書中使用される「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、カンガルー、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット及びトランスジェニック非ヒト動物を含む、方法又は物質の対象となる生物を意味する。本明細書中使用する同義語は、「患者」及び「動物」を含む。
【0033】
本明細書中使用される「治療上有効量」は、例えば、疾患又は1以上の症状群の重症度
を除去する又は弱める又は緩和するなど、対象において意図した治療効果を達成する治療剤の量を意味する。完全な治療効果は、単回投与によって必ずしも起こるわけではなく、一連の投与後にのみ起こるかもしれない。従って、治療上有効量は、1回以上の投与によ
って投与してもよい。
【0034】
本明細書中使用される「治療する」は、1以上の疾患の症状を緩和、軽減又は改善する
こと;疾患の程度を減少させること;疾患の進行を遅らせる又は遅くすること;疾患の計量(統計量)を改善する及び和らげる又は安定させることを含む、臨床結果を含む有益な又は望ましい結果を得るため、手段を講じることを意味する。該効果は、状態若しくは疾患又はそれらの症状を完全に又は部分的に予防することに関して予防のためでもよく、及び/又は、状態若しくは疾患及び/又は状態若しくは疾患に起因する悪影響に対する、部分的又は完全な治療に関して治療のためでもよい。「治療」は手段を講じることを指す。治療は、哺乳動物、特にヒトにおける状態又は疾患の任意の治療を含み得、(a)状態又
は疾患を有するとはまだ診断されていないが、状態又は疾患に掛かりやすくなっているかもしれない対象において、状態若しくは疾患又はそれらの症状が起こることの予防;(b
)例えばその進行を止めることなどの、状態又は疾患又はそれらの症状を阻害すること;及び(c)例えば状態若しくは疾患又はそれらの症状の退縮をひき起こすなど、状態若し
くは疾患又はそれらの症状を和らげる、軽減する又は改善することを含む。
【0035】
2. 概略
細胞外細胞表面セラミドは、放射線アポトーシスに必要である。
胃腸(GI)粘膜のクロノゲン区画は、放射線誘発性GI損傷の特異的及び直接の標的であると、長く受け入れられてきた。食欲不振、嘔吐、下痢、脱水症、全身性感染症、極端な場合は敗血性ショック及び死によって臨床的に特徴づけられる放射線胃腸(GI)症候群は、陰窩/絨毛ユニットの破壊、粘膜構造の喪失及び常在細菌叢による感染を伴う。(Hendry, J.H., Potten C.S., Roberts N.P. The gastrointestinal syndrome and mucosal clonogenic cells: relationships between target cell sensitivities, LD50 and cell survival, and their modification by antibiotics. Radiat Res. 1983; 96 (1): 100-112; Hendry, J.H., Roberts S.A., Potten C.S. The clonogen content of murine intestinal crypts: dependence on radiation dose used in its determination. Radiat Res. 1992; 132 (1): 115-119; Potten C.S., A comprehensive study of the radiobiological response of the murine (BDF1) small intestine. Int. J. Radiat Biol. 1990; 58 (6): 925-973.を参照)。従来の放射線生物学は、幹細胞クロノゲン(SCC)中の修復されない又は誤って修復されたDNA二本鎖切断を、不可逆的な組織損傷をもたらす
自発性病変とみなしているが、我々の最近の研究はこのパラダイムに挑み、急性の内皮損傷もGI管損傷において重要な役割を果たすという遺伝的な証拠を示した(Paris F., et al., Endothelial apoptosis as the primary lesion initiating intestinal radiation damage in mice. Science. 2001; 293 (5528): 293-297; Rotolo J.A., Kolesnick R., Fuks Z. Timing of lethality from gastrointestinal syndrome in mice revisited.
Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2009; 73 (1): 6-8; Rotolo J.A., et al., Bax and Bak do not exhibit functional redundancy in mediating radiation-induced endothelial apoptosis in the intestinal mucosa. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008; 70 (3): 804-815)。放射線被ばくの数分以内に、内皮の酸性スフィンゴミエリナーゼ(
ASMase)は活性化し、マウス及びヒト内皮の外側の細胞膜上でのセラミド生成を触媒してアポトーシスシグナル伝達を起こす(Stancevic B., Kolesnick R., Ceramide-rich platforms in transmembrane signaling. FEBS Lett. 2010; 584 (9): 1728-1740; Truman J.P., et al. Endothelial membrane remodeling is obligate for anti-angiogenic radio sensitization during tumor radiosurgery. PLoS One. 2010; 5 (9))。内皮は、
他の哺乳動物細胞よりも20倍多くほぼ分泌型のみであるASMaseを提示し、そのため特にセラミド誘発性アポトーシスに対して弱い。(Marathe S., et al. Human vascular endothelial cells are a rich and regulatable source of secretory sphingomyelinase. Implications for early atherogenesis and ceramide-mediated cell signaling. J. Biol. Chem. 1998; 273 (7): 4081-4088; Santana P., et al., Acid sphingomyelinase-deficient human lymphoblasts and mice are defective in radiation-induced apoptosis. Cell. 1996; 86 (2): 189-199.)初期証拠は、内皮細胞のアポトーシスの結果生じ
る血管の障害により、放射線により傷害を受けたSCCのDNA損傷修復が損なわれ、SCCの死
がもたらされることを示す。いくつかのマウス系統において、亜致死的(≦14 Gy)及び
致死的(≧15 Gy)GI管損傷(5)のどちらも引き起こす線量を包含する8から15Gyの間で
、内皮のアポトーシスは起こり、放射線照射後1時間で始まり、放射線照射後4から6時間
で最大になる。(Maj J.G., Paris F., Haimovitz-Friedman A, Venkatraman E., Kolesnick R., Fuks, Z. Microvascular function regulates intestinal crypt response to radiation. Cancer Res. 2003; 63 (15): 4338-4341.)ASMase媒介性セラミド生成の
遺伝的不活性化による腸の内皮のアポトーシスの軽減は、SCCの生存を高め、陰窩損傷の
修復及びGI致死性から動物を救うことを促進する。(Paris, F., et al. Endothelial apoptosis as the primary lesion initiating intestinal radiation damage in mice. Science. 2001; 293 (5528): 293-297); Rotolo, J.A., et al. Bax and Bak do not exhibit functional redundancy in mediating radiation-induced endothelial apoptosis in the intestinal mucosa. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2008; 70 (3): 804-815.)これらの所見は、中和抗セラミドモノクローナル抗体を潜在的な放射線対策として開発する根拠を提供する。放射線は、胃腸微小血管系及び増殖している陰窩幹細胞の両方を標的とする。絨毛中の微小血管内皮のアポトーシスは、放射線の約4時間後に起こる、GI症候群の重要な病変である。内皮のアポトーシスにより、病変が陰窩クロノゲンに対し
て亜致死的から致死的なものに変わり、再生陰窩の喪失をもたらし、GI毒性を促進する。また、血管の機能障害と結びつく幹細胞クロノゲンへの直接の損傷がもたらす統合的な事象である、GI致死性をうむ幹細胞区画のDNA損傷の修復と内皮損傷が結びつくことも見出
した。
【0036】
放射線胃腸(GI)症候群(RGS)とも呼ばれるGI症候群の病態生理は、損傷後の消化管
上皮の再生に必要不可欠であるリーベルキューン(Lieberkuhn)陰窩中の幹細胞クロノゲン(SCC)の枯渇を必要とする。しかしながら、SCC増殖死は、DNA損傷の結果だけに限ら
ず、粘膜の微小血管網中のセラミド誘発性内皮細胞アポトーシスと強く結びついている。内皮表面上で生成されたセラミドは、集合して、アポトーシスシグナルを伝達するセラミドリッチプラットフォーム(CRP)を形成する(Stancevic B., Kolesnick R. Ceramide-rich platforms in transmembrane signaling. FEBS Lett. 2010; 584 (9): 1728-1740; Haimovitz-Friedman A., et al. Ionizing radiation acts on cellular membranes to generate ceramide and initiate apoptosis. J Exp Med. 1994; 180 (2): 525-535; Verheij M., et al. Requirement for ceramide-initiated SAPK/JNK signaling in stress-induced apoptosis. Nature. 1996; 380 (6569): 75-79; Liao W.C., et al. Ataxia telangiectasia-mutated gene product inhibits DNA damage-induced apoptosis
via ceramide synthase. J Biol Chem. 1999: 274 (25): 17908-17917)。我々は、CRPが薬理学的な不活性化の影響を受けやすく、特にセラミドに対する抗体を用いたCRP形
成の薬理学的な阻害は、致死的放射線線量の後でさえ、内皮の損傷を軽減させ、陰窩幹細胞クロノゲンの生存を高め、それによって組織再生が増すことを示した。Rotolo, et al.
, Anti-ceramide antibody prevents the radiation gastrointestinal syndrome in mice, J Clin Invest. 2012; 122(5):1786-1790,及びRotoloら、米国特許出願第12/599,280
号を参照。
【0037】
最初の研究において、電離放射線(10 Gy)により、BAEC中でASMase酵素活性の急速な
増加が誘導され、付随して刺激の1分以内に細胞のセラミドが増加した。中性スフィンゴ
ミエリナーゼ又はセラミド合成酵素活性の同時増加は検出されず、放射線誘発性セラミド生成はASMase媒介性であることを確かめられた。セラミドリッチプラットフォーム(CRP
)の形成は、放射線照射後30秒程度の早さで検出され、1分で線量依存的であり、11 Gy(P < 0.001)で最大値に到達し、ED50はおよそ5 Gyであった。他の細胞型において、細胞
表面セラミドを中和し、セラミド誘発性集合を阻害することが知られている戦略である、MID 15B4(市販されている抗セラミド抗体)とBAECの前培養(Rotolo J.A., Zhang J., Donepudi M., Lee H., Fuks Z., Kolesnick R. Caspase-dependent and -independent activation of acid sphingomyelinase signaling. J Biol Chem. 2005; 280 (28): 26425-26434; Grassme H., et al. CD95 signaling via ceramide-rich membrane rafts. J Biol Chem. 2001; 276 (23): 20589-20596; Grassme H., et al. Host defense against Pseudomonas aeruginosa requires ceramide-rich membrane rafts. Nat Med. 2003; 9 (3): 322-330; Goggel R., et al. PAF-mediated pulmonary edema: a new role for
acid sphingomyelinase and ceramide. Nat Med. 2004; 10 (2): 155-160)は、BAECの放射線誘発性アポトーシスの誘導について公開された線量と事実上同じ線量範囲において、放射線誘発性CRP形成を阻害した。(Fuks Z., et al. Basic fibroblast growth factor protects endothelial cells against radiation-induced programmed cell death in vitro and in vivo. Cancer Res. 1994; 54 (10): 2582-2590.)表面セラミドの中
和及びCRP阻害は、刺激後8時間までに、10 Gy誘発性アポトーシスを71%軽減させた。
【0038】
我々は、10 Gy IRの15分前にJurkat T細胞と抗セラミドMID15B4(1 マイクログラム/ml)を前培養したJurkat Tリンパ球において、抗セラミド抗体による放射線誘発性(5-20 Gy)CRP形成及びアポトーシスの同様の阻害により、プラットフォーム生成が軽減したこともまた報告した。セラミドの捕捉は、放射線誘発性微小血管内皮アポトーシス、陰窩幹細胞死、及び致死的GI毒性からC57BL/6の腸粘膜を防護することもまた示した。米国特許出
願第12/599,280号。
【0039】
我々のマウスモノクローナル抗セラミドIgM、言い換えれば2A2は、セラミドに対して特異的な親和性を有する。2A2は、CRP形成及びセラミド媒介性アポトーシスを阻害し、in vivoで用量依存的に内皮細胞アポトーシスを阻害する。LD100である15 Gy全身放射線照射
(WBI)の15分前の、C57BL/6マウスに対する静脈内2A2投与(1,000 μg/25 gマウス)は
、基底膜微小血管系内における内皮アポトーシスのピークを83%に弱めた。このように、2A2は、ASMase-/-マウスにおいてASMase欠損により与えられる、放射線誘発性腸内皮アポ
トーシスの遺伝的阻害を表現型模写する。ほんの50 μg 2A2抗体/25 gマウスにより、生
存する陰窩(P < 0.05)の数は増え、一方、40mg/kgである、1,000 μg 2A2抗体/25 gマ
ウスにより、最大限の防護が達成された。2A2の投与は毒性がなかった。2A2を受けた動物の100%は、15 Gy全身放射線照射において放射線GI症候群の致死性から救われた。反対に
、無関係のIgM(アイソタイプコントロール)を受けた又は抗体を受けなかった(ビヒク
ルのみ)動物の100%は、一貫して、露出した腸粘膜及び放射線GI症候群致死性の臨床上の証拠を伴って死んだ。LD50線量である14 Gy全身放射線照射において、造血幹細胞移植(HSCT)及び2A2により、照射された動物の100%が救われた。17 Gy全身放射線照射の非常に
高い放射線線量においてでさえ、2A2はGI管の50%を防護した。2A2前処置マウスの25%が際限なく生存し、死んだものの33%が無傷のGI管を伴って死んだ。さらなる研究は、HSCTは
、2A2の防護効果に寄与しなかったことを示した。
【0040】
従って、2A2モノクローナル抗体は、致死的放射線GI症候群に対する有効な対策として
使用され得る、抗セラミド治療の新しい種類の原型である。(Rotolo J.A., Kolesnick R., Pasqualini R., Arap W., inventors: Sloan Kettering Institute For Cancer research, assignee. Methods for treating and preventing GI syndrome and graft versus host disease. 米国特許出願第12/599,280号 May 6, 2008)
【0041】
最近、我々は、元々のマウス2A2抗体よりも、セラミドに対する高い結合親和性を有す
る、新しいヒト化2A2抗体を同定した。この抗体の作成及びその配列の詳細は、下記実施
例に明記されている。
【0042】
3. 背景
セラミドシグナル伝達は、多くの種間で重要である
セラミド媒介性ラフトクラスタリングは、細菌及び病原体の内在化のシグナル伝達のための場所となる(D. A. Brown及びE. London, Annu Rev Cell Dev Biol 14, 111 (1998);
J. C. Fanzo, M. P. Lynch, H. Phee et al., Cancer Biol Ther 2 (4), 392 (2003); S. Lacour, A. Hammann, S. Grazide et al., Cancer Res 64 (10), 3593 (2004); Semac,
C. Palomba, K. Kulangara et al., Cancer Res 63 (2), 534 (2003); A. B. Abdel Shakor, K. Kwiatkowska, and 及びA. Sobota, J Biol Chem 279 (35), 36778 (2004); H. Grassme, V. Jendrossek, J. Bock et al., J Immunol 168 (1), 298 (2002); M. S. Cragg, S. M. Morgan, H. T. Chan et al., Blood 101 (3), 1045 (2003); D. Scheel-Toellner, K. Wang, L. K. Assi et al., Biochem Soc Trans 32 (Pt 5), 679 (2004); D. Delmas, C. Rebe, S. Lacour et al., J Biol Chem 278 (42), 41482 (2003); 及びC. Bezombes, S. Grazide, C. Garret et al., Blood 104 (4), 1166 (2004))。セラミド固有の生物物理学の特性により、セラミドは、様々な刺激に対するシグナル伝達において一般的な機能を持つセラミドリッチプラットフォーム(CRP)と称するシグナル伝達ドメインの形
成に長けている。この理論は、様々な幾分無関係な細胞の刺激に対し応答して、CRPが形
成されるという事実によっても支持されている(表1を参照)。
【0043】
【0044】
【0045】
グラム陰性細菌を標的とする抗生物質及び抗セラミド抗体の組み合わせは、相乗的な治療の効果を有する。
【0046】
CRPは、多様な疾患病変を媒介する。広域ベースの抗生物質又はグラム陰性細菌を標的
とする抗生物質と共に(しかしながら必ずしも同時でない)2A2又はヒト化2A2などの抗セラミド抗体の投与することは、列挙された疾患の治療において、抗セラミド抗体単独の投与と比較して、著しく改善された結果を達成することを見出した。
この新しい治療の方法は、高レベルの内皮のアポトーシス及び/又はセラミドリッチプラットフォーム(CRP)の形成を特徴とする他の状態と同様に、GI症候群、GvHD、放射線
疾患、及びGI損傷と関連している特定の自己免疫疾患の治療において、特に有効である。そのような疾患は、表2に一覧表とした。これらの疾患の全てをまとめて列挙された疾患
と呼ぶ。
【0047】
【0048】
異なる区画においてセラミドを作る、細胞内の複数の経路があると強調することは重要である。米国特許出願第12/599,280号に対応する以前の公報PCT/US08/62789において、ASMaseが生成する細胞表面セラミドは、内皮微小血管系に対する損傷(GI症候群の特徴)を介した放射線GI症候群をひき起こす原因であると示された。関連するin vivoでの研究は
、致死的15 Gyを用いた致死的放射線の後に、抗セラミド抗体を注入することによるASMaseが生成する細胞表面セラミドの捕捉又は阻害は、セラミド媒介性ラフトクラスタリング
を阻害し、それによって内皮のアポトーシスを無効にし、陰窩生存を高めることを示した。これによって、GI幹細胞致死性が弱められ、動物の全生存が高められた。
【0049】
PCT/US08/62789は、ASMaseが生成するセラミドが急性GvHDに必要であることを初めて示す結果も開示した。造血幹細胞移植の一次合併症であるGvHDは免疫除去した宿主に注入したアロ反応性ドナーT細胞の分化及び活性化により起こる固有の自己免疫様障害である。
急性のGvHDにおいて、ドナーT細胞による、宿主のアロ抗原(主又は副不適合)の認識は
、宿主組織に対する初期損傷及びI型サイトカイン(IFNガンマ及びIL-2)の産生を含む適応免疫応答を起こす。これは、炎症性サイトカイン(TNF-α及びIL-1β)を含むマクロフ
ァージ依存的「サイトカインストーム」の発達と共に、標的細胞の選択された群におけるアポトーシスを誘導し、結果として生じる関連標的臓器(肝臓、腸及び皮膚)に対する損傷を誘導する、CTLクローンの増殖及び活性化をもたらす。(D. A. Wall、上記; G. F. Murphy、 D. Whitaker、 J. Sprent et al.、Am J Pathol 138 (4)、 983 (1991); D.
A. Walland K. C. Sheehan、 Transplantation 57 (2)、 273 (1994); G. R. Hill
、 W. Krenger、及びJ. L. Ferrara, Cytokines Cell Mol Ther 3 (4), 257 (1997); J. L. Ferrara, Bone Marrow Transplant 21 Suppl 3, S13 (1998); A. C. Gilliam, D. Whitaker-Menezes, R. Korngold et al., J Invest Dermatol 107 (3), 377 (1996))。
【0050】
白血病及びリンパ腫の多くの型の治療において使用される高投与量の化学療法及び高線量の放射線はさらに、急速に分裂する骨髄幹細胞を殺傷し、免疫除去をもたらし造血要素再構成を必要とする。GvHDは、がん患者における造血幹細胞移植と関連する深刻な合併症である。PCT/US08/62789も、ASMaseが生成するセラミドは、本明細書中に記載する方法及び組成物によってもまた治療され得る疾患である、急性GvHD、及び炎症促進性サイトカインの増加と関連する他のT細胞媒介性自己免疫疾患に必要であることも説明する。
【0051】
放射線誘発性致死性、GI症候群、急性のGvHD及び他のT細胞媒介性自己免疫疾患にはASMaseが生成するセラミドの必要性という共通の特徴がある。本明細書中記載された研究に
おいて、これらの疾患の全ての治療のためのモデルとして放射線致死性を使用した。放射線GI症候群は、急速で高い再現性があるため、最も明確なGI病変であり、損傷に対する幹細胞クロノゲンの応答を詳細に明らかにする予測的なin vivoアッセイ、Withers及びElkindのクロノゲンアッセイを有する。GvHD及び放射線GI症候群は、上皮区画と結合する内皮区画に対するASMase媒介性損傷に関わる疾患過程を示す(しかしながら、二つの間でASMase活性化機構は異なる)。
図1~3に記載した放射線実験の全てにおいて、雄C57Bl/6マウ
スを15.5 Gy亜全身放射線照射(SBI)の致死的線量で照射した。
図5~11に記載した実験
において、動物を15 Gy全身放射線照射で照射し、
図12において、動物を16 Gy SBIで照射した。材料と方法の詳細は、実施例1に明記する。
【0052】
4.
本発明の結果及び特別な実施態様の概要
図1に示すとおり、放射線照射の24時間後に精製したモノクローナル2A2抗セラミド抗体を単独で投与した時、マウスの生存は著しく改善した。抗体療法は、すぐに又はできるだけ早く、好ましくは放射線照射に先立ち2時間以内に、供給された場合、最も良く働く。
もう一つの実験において、細菌複製の静止期及び増殖期のいずれにおいても、グラム陰性及びグラム陽性細菌のいずれに対しても有効性を実証されたフルオロキノロン、キノロン剤抗生物質エンロフロキサシン(以下「バイトリル」ともいう)で、照射されたマウスを治療した。マウスは、放射線照射の24時間後に0.57 mg/mlバイトリル含有飲水を自由に利用できるようにした。25 g C57BL/6マウスが飲水を約6ml日々消費するという概算量に基
づき、日々消費したバイトリルの量は、1日あたり約3mg/動物であった。未治療のマウスは9日目までに死亡した一方で、エンロフロキサシンで治療したマウスの約25%は、80日間の研究の期間生存した。
図2。
【0053】
3番目の実験において、単離及び精製したモノクローナル2A2 Ab並びにバイトリル(1日あたり3 mg/動物)のいずれも、放射線照射の24時間後に投与した。この結果は、この
抗セラミド抗体/抗生物質の組み合わせの治療は、照射されたマウスにおいて、GI症候群
を緩和/治療する相乗的な効果を有することを示した。治療しない場合、放射線照射後の6日目までに未治療のマウスの100%が死亡した。しかしながら、2A2 Ab及びバイトリルの組み合わせ療法で治療したマウスの75%は、研究の期間中生存し、3倍以上の生存の増加が2A2又は抗生物質のいずれか単独で達成された。
図3。すぐに治療を行う場合、さらに良い結果でさえ予期される。
【0054】
これらの結果に基づいて、本発明の特定の実施態様は、治療上有効量の、抗セラミド抗体、及びバイトリル(又は他のキノロン剤抗生物質)又は表1から選択される抗生物質又
はグラム陰性抗生物質に対して有効である任意の広域スペクトル抗生物質の組み合わせのいずれかの投与によって、動物における列挙された疾患(GvHD、放射線疾患、GI症候群及び特定の自己免疫疾患)を予防又は治療又は予防する方法を、対象にする。本明細書中記載した組み合わせ療法のための予防及び治療剤は、同一又は連続した日に投与され得、放射線又は移植片の移植の前又は後に投与され得る。治療を放射線又は移植の前に始めない場合、例えば、療法は列挙された疾患を疑われ又は診断された後できるだけ早く始められるべきである。放射線疾患、GI症候群又はGvHDの緩和のため、放射線もしくは移植の前又は放射線被ばくもしくは移植の最初の24時間後以内のいずれかに、治療剤を提供するべきである。
【0055】
キノロン剤以外の抗生物質もまた、抗セラミド抗体と共に投与される場合、相乗的な効果を有することが予期され、これは、通常の実験を用いて試験され得る。本発明の実施態様において使用され得る抗生物質は、GI症候群のような放射線疾患の緩和において治療上有効である、キノロン剤(バイトリル、シプロフロキサシン)、セファロスポリン(セフェピム、セフタジジン(ceftazidine))又はアミノグリコシド(ゲンタマイシン、アミ
カシン)を含む。Brook I, Elliot T B, Ledney GD, Shomaker MO, Knudson GB. Management of post-irradiation infection: lessons learned from animal models. Mil Med. 2004; 169:194-7。
【0056】
通常の実験により、抗生物質及び抗セラミド抗体の使用に最適な治療上有効量が決定されるであろう。抗セラミド抗体及び抗生物質のいずれも予防上及び治療上有効量は、約0.1 mg/kgから約100 mg/kg及び約100 mg/kgから約1000 mg/kgである。
【0057】
完全ヒト抗体又はヒト化抗体は、ヒト対象のためであることが好ましい。抗体のため、治療上又は予防上の量は、典型的には様々であり、血清治療剤レベルを達成されるのに十分な量、対象において、典型的には1ミリリットルごとに約1マイクログラムから1ミリ
リットルごとに約10マイクログラムの間であり得る。下記に示すように、2A2モノクロー
ナル抗セラミド抗体(25-100マイクログラム/mL)とJurkat細胞の前培養は、8 Gy誘発性
アポトーシスを阻害する。本発明に関して、抗セラミド抗体は、セラミド誘発性アポトーシスを予防する中和抗体型である。モノクローナル抗セラミド抗体2A2に加えて、我々は
、IgM,κである15D9 mAb;並びにIgG3,κ抗体である1H4及び5H9 mAbsを含む、3つの他のモノクローナル抗セラミド抗体(公開された米国出願12/599280号;2010/0239572に詳細
に記載した)のアイソタイプを以前に報告した。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体並びにそれらの生物学的に活性な断片又は変異体を含む任意の抗セラミド抗体が、本発明に使用され得る。
【0058】
抗生物質の最適な治療用の投与量は、放射線疾患、GvHD及び関連する症状の治療に関する文献からの手引きにより、通常の実験で決定され得る。放射線に対する被ばくの後罹患している又は疑われる感染(好中球減少症及び発熱を特徴とする)の管理が記載されている。放射線後に好中球減少症を発症する患者は、胃腸管、肺及び中枢神経系などの他の組織に対する放射線照射損傷の影響を受けやすい。これらの患者は少なくとも一度発熱が検出されるが症状の発現前できるだけ早くに、列挙された抗生物質の1以上を高い投与量で
用いる、実験に基づいた広域スペクトルの療法により、通常、治療される。放射線後GI損傷を治療又は予防するために投与される、予防及び治療用の抗生物質の量は、当技術分野で周知であり、本方法の実施態様に適用され得る。Donnelly EH, Nemhauser JB, Smith JM, et al. (June 2010). "Acute radiation syndrome: assessment and management" South. Med. J. 103(6): 541-PMID2071013; Baranov AE、 Rozhdestvenskii LM、 Radiats Biol Radioecol. PMID: 18689253, 2008 May-Jun; 48(3):287-302, The analytical revie
w of the schemes of the acute radiation disease treatment used in experiment and
in clinic; Brook I, Ledney D (1992). "Quinolone therapy in the management of infection after irradiation” Crit Rev Microbiol: 18235-46。上記に記載する抗菌物質は、敗血症をひき起こす分離株の四分の三以上を占めるグラム陰性好気性生物(すなわち腸内細菌、シュードモナス)を標的とするものを含む。好気性及び通性グラム陽性細菌(主にアルファ溶血性連鎖球菌)は、被感染者の約四分の一において敗血症をひきおこす。
【0059】
キノロン剤抗生物質は、シプロフロキサシン(シプロ、プロキンほか)エノキサシン(ペネトレックスほか)ガチフロキサシン(ガチフロ、テキン、ザイマール(Zymar)ほか
)ゲミフロキサシン(ファクティブほか)レボフロキサシン(レバキンほか)ロメフロキサシン(マキサキンほか)モキシフロキサシン(アベロックスほか)ノルフロキサシン(ノロキシンほか)オフロキサシン(フロキシン(Floxin)ほか)プルリフロキサシン ス
パルフロキサシン(ザガムほか)トロバフロキサシン/アルトロフロキサシン(トロバン
ほか)ダノフロキサシン(A180ほか)ジフロキサシン(ジクラールほか)マルボフロキサシン(オーバックスほか)オルビフロキサシン(ゼニクインほか)キノロン剤(より古い「親」クラス) ナリジクス酸(Naldixic acid)(ネググラムほか)シノキサシン(シノバック(Cinobac)ほか)を含む。
【0060】
以前の研究は、スタチン(例、ナイスタチン)が、GvHDのin vitroモデルにおいてアポトーシスを低減することに有益な効果を有することも示した。従って、本発明の特定の他の実施態様は、1以上のスタチンと共に、抗セラミド抗体及び抗生物質の組み合わせ療法
を対象にする。アポトーシス治療のためのスタチンの説明は、米国特許出願第12/599,280号に明記されている。スタチンとしては、アルファベット順に以下が挙げられる(異なる国においてはブランド名は変化する
【0061】
【0062】
さらに他の実施態様において、ASMase阻害剤イミプラミンは、組み合わせ療法に含まれる。米国特許出願第12/599,280号において、ASMaseが生成するセラミドは、内皮微小血管系損傷及びT細胞媒介性殺傷のいずれにも必要であることが示された。抗セラミド抗体の
投与によって、in vivoでASMaseにより生成されたセラミドを阻害する又は捕捉すること
は、放射線誘発性損傷を弱め、GI症候群及びGvHDの治療又は予防に使用され得る。ASMaseは、イミプラミンで阻止され得る。もう一つの実施態様において、抗生物質及び抗セラミド抗体と共に、アンチセンス核酸が投与される。イミプラミン又はアンチセンス核酸を用いたASMaseの阻害を支持するデータは、The Journal of Biological Chemistry (2005), 280, 26425-26434に発表された。
【0063】
h2A2抗体
マウス2A2抗体のヒト化は、下記の実施例に記載されている。ELISA実験は、h2A2が選択的にセラミドに結合し(
図5)、セラミドに対するh2A2の結合は、親m2A2抗体の結合を著
しく上回り
図6、かつ本発明の実施態様に使用され得る抗体でもある市販の抗セラミドモ
ノクローナル IgM MID15B4(Enzo Life Sciences)で観察される結合に相当することを明らかにした。h2A2 IgG1のin vitroでの生物学的活性を、h2A2 IgG1の存在下又は非存在下で10 Gy電離放射線で曝露したヒトJurkat Tリンパ球を用いて決定した。m2A2 IgMは、こ
れらの実験において、陽性コントロールとして使用した。結果は、h2A2が用量依存的にJurkat細胞の放射線誘発性アポトーシスを阻害したことを示した。重要なことに、アポトーシスの阻害は、親マウス2A2 IgMと比較して、左にシフトされており、h2A2組み換え抗体
がより強力であることを示す。これらのデータは、h2A2は生物学的に活性であることを実証し、組み換えヒト化IgG1はin vivoで有効であろうことを示唆する。
図7。
【0064】
増加したh2A2の投与量(50-1000マイクログラム/マウス)が、15 Gy全身放射線照射の15分前に、C57BL/6マウスに投与された。生存する陰窩に関するm2A2に対するh2A2の有効性の直接の比較は、RGSの予防にh2A2がm2A2と同等に有効であることを示す。
図8-9。h2A2は、15 Gy後30時間で投与された場合でさえも有効性を示し(
図10)、IV投与した場合と同
様にIP投与した場合にも有効である(
図11)、陰窩致死性の非常に有効な緩和剤であることが報告された。薬剤を静脈内に投与するために必要な熟練した医療労働者が、容易に利用可能でないかもしれないため、IP注射は、災害状況において好ましいことがある。
【0065】
16 Gy亜全身放射線照射に曝露されたC57BL/6マウスは、放射線被ばくの15分前にh2A2を投与され、生存が追跡された。h2A2で治療された動物の100%は、少なくとも15日生存したが、未治療の動物の100%は、被ばく後8日目までに死亡し、それぞれの死は、剖検によりGI粘膜の露出及び陰窩絨毛ユニットの崩壊を確かめた。
図12。従って、h2A2抗体又はその
断片は、本発明の実施態様において使用に適している。他の実施態様は、h2A2抗体単独又はその断片もしくは変異体を対象にする。
【0066】
医薬製剤
特定の実施態様は、対象において列挙された疾患を予防又は治療するのに十分な治療上又は予防上有効量の列挙された抗生物質及び抗体の医薬製剤を対象にする。これらの医薬組成物は、予防法又は治療法を必要としている対象に対する投与に適している。対象は、好ましくはヒトであるが、非ヒトでもあり得る。適した対象は、列挙された疾患の1つを有すると疑われる、有すると診断された又は発症する危険性がある個体であり得る。疾患の予防又は治療のため、抗体及び抗生物質の適切な用量は、治療される疾患の種類、重症度及び疾患の経過、予防又は治療の目的で薬剤が投与されるか否か、以前の治療法、投与経路、剤の薬物動態、患者の臨床履歴及び新しい薬剤(2A2抗体、など)への応答及び主
治医の裁量に依存するであろう。
【0067】
上記に言及したように、投与される抗セラミド抗体の量は、約0.1 mg/kgから約1000 mg/kgに及び、抗生物質の量は、通常、約0.1mg/kgから1000 mg /kgに及ぶ。この量は、通常変化し、各治療剤用の血清治療剤レベルを達成するのに十分な量であり得る。対象において、通常、1ミリリットルごとに約1マイクログラムから1ミリリットルごとに約10マイ
クログラムの間である。しかしながら、望ましい応答を引き起こす血清レベルは、変化するであろう。本発明の治療剤は、1回以上の個別投与又は連続的注入により、投与され得
る。数日間又はそれ以上の繰り返し投与には、状態に応じて、治療は症状が十分に弱まる又は除去されるまで継続される。この療法の進捗は、従来の技術及びアッセイにより容易に監視され、治療効果を達成するため、用量を調節するために使用されることがある。
【0068】
治療の組成物は、例えば、結合剤、充填材、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、及び例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような賦形剤などの通常使用される添加物を含有してもよい。これらの組成物は、通常には、1%-95%の活性成分、好ましくは2%-70%の活性成分を含有する。製剤は、治療下の特定の適応症に必要である、好ましくは互いに不利に影響を及ぼさない補完的な活性をもつ、1以上の活性化合物も含有してもよい。そのような分子は、意図する目的のため有効である量で組み合わせて適切に含まれる。例えば、2A2抗体及び抗生物質の組み合わせは、スタチン又はイミプラミ
ンをさらに含むよう調合され得る。
【0069】
徐放性製剤も、調製されてもよい。徐放性製剤の適した例としては、マトリックスが形状物、例えば、フィルム又はマイクロカプセル、の形である、抗体もしくは断片、ナイスタチン、イミプラミン又はそれらの組み合わせを含有する固体疎水性重合体の半透性マトリックスが挙げられる。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール
))、ポリラクチド、L-グルタミン酸の共重合体及びy エチル-L-グルタミン酸、非分解
性エチレン酢酸ビニル、ルプロンデポ(LUPRON DEPOT)(乳酸-グリコール酸共重合体及
び酢酸リュープロリドから成る注射用マイクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール
酸共重合体、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられるがこれらに限定されない。
エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などの重合体は100日間以上の分子の放出を
可能とする一方、特定のハイドロゲルはタンパク質をより短い期間放出する。
【0070】
治療剤は、医薬上許容される酸との塩の形で、もしくは塩基類の形で、又は非晶形、もしくは水和物及び溶媒和物を含む結晶形で医薬組成物中に含まれてもよい。本明細書に記載の治療剤の医薬上許容される塩は、医薬上許容される無機酸及び有機酸及び塩基に由来する塩を含む。適した酸との塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩(glucoheptanoate)、グリセロリン酸塩、グリコール酸、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩
、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモエート(palmoate)、ペクチネート(pectinate)、
過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバレート塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシラート塩、ウンデカン酸塩が挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それら自体は医薬上許容されないが、医薬上許容される酸付加塩を得る中で中間体として有用である塩の調整時に使用してもよい。適切な塩基に由来する塩は、アルカリ金属(例、ナトリウム及びカリウム)、アルカリ土類金属(例、マグネシウム)、アンモニウム及びN+(C1-4アルキル)4塩
を含む。いくつかの実施態様は、本明細書中開示される治療剤の任意の塩基性窒素含有基の四級化を含むことが予測される。水溶性又は油溶性又は分散性の産物は、そのような四級化によって得られてもよい。
【0071】
治療剤は、治療剤の全ての立体化学的形態(すなわち、各不斉中心のR及びS配置)を含む。従って、治療剤の単一鏡像異性体、ラセミ混合物及びジアステレオマーは、本発明の範囲内である。治療剤の立体異性体及び位置異性体もまた、本発明の範囲内である。いくつかの実施態様の治療剤もまた、1以上の同位体濃縮原子の存在のみが異なる化合物を含
むことを意図されている。例えば、治療剤中の1つ以上の水素が重水素もしくはトリチウ
ムに置き換えられている治療剤又は13C-もしくは14C-濃縮炭素による1以上の炭素の置換
は、本発明の範囲内である。
【0072】
いくつかの実施態様の治療剤は、医薬上許容される担体、アジュバント又はビヒクルを含む医薬組成物として投与される。用語「医薬上許容される担体、アジュバント又はビヒクル」は、調合する治療剤の薬理学的活性を損なわないもしくは著しく減少させない、非毒性の担体、アジュバント又はビヒクルを指す。医薬上許容される担体、アジュバント又はビヒクルは、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水などの標準的な医薬上許容された液体担体のいずれか及び油/水乳化剤又はトリグリセリド乳化剤などの乳化剤を包含する。固体担
体は、デンプン、乳、糖類、特定の型のクレイ、ステアリン酸、タルク、粘性物質、グリ
コール又は他の公知の賦形剤などの賦形剤を含んでもよい。担体は、香味用及び着色用添加物又は他の成分も含んでもよい。いくつかの実施態様の組み合わせの製剤を、医薬の技術分野において周知の方法及び本明細書に記載の方法によって調製してもよい。例示される許容される医薬上担体は、上記に論じられている。
【0073】
医薬組成物は、好ましくはIV、筋肉内又は皮下の投与のために調合される。抗体と別に抗生物質を投与する場合、抗生物質を、経口投与を含む当技術分野で公知である抗生物質を投与するための任意の経路によって、投与してもよい。
【0074】
これらの懸濁液は、適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を用いて、当技術分野で公知の技術に従って、調合してもよい。滅菌注射用製剤は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液としてなど、非毒性で非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の、滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。水、リンガー液及び等張塩化ナトリウム溶液は、使用してもよい許容されるビヒクル及び溶媒に含まれる。加えて、滅菌の固定油は、溶媒又は懸濁媒として従来使用されている。
【0075】
経口的に許容される剤形(抗体と別に投与されるのに適した抗生物質)としては、カプセル及び錠剤などの固形剤が挙げられる。医薬上相溶性のある結合剤及び/又はアジュバント材料が組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、以下の成分又は類似の性質の化合物のいずれかを含有し得る:微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムもしくはステロート(sterote)などの潤滑剤;コロイド状2酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;又ははっか油、メチルサリチル酸塩もしくはオレンジ香味料などの香味剤。
【0076】
非経口の、皮内の、IV、IM又は皮下の適用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用水、生理食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの浸透圧調節剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの、酸又は塩基を用いて調節され得る。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラスもしくはプラスチック製の複数回投与量のバイアルに封入され得る。
【0077】
注射に適した医薬組成物は、滅菌水性溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び滅菌注射用溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末を含む。静脈内投与用に適した担体は、生理食塩液、静菌性水、Cremophor EL.TM(BASF、Parsippany、N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩
水(PBS)を含む。すべての場合において、組成物は滅菌的であるべきであり、容易に注
入可能である程度に流体であるべきである。製造及び保管の状態下で安定であるべきであり、細菌及び真菌などの微生物の混入作用に対して保護されるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール(polyetheylene glycol)、など)及び適したそれらの混合物を含む、溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用により、分散液の場合選択された粒径の維持により、界面活性剤の使用により、維持され得る。微生物の作用の防止は、多様な抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどにより達成され得る。場合によっては、等張剤、例えば、糖類、マンニトール(manitol)、ソルビトールなどの
ポリアルコール、又は塩化ナトリウムが、組成物中に含まれる。注射用組成物の長期の吸
収は、組成物中に吸収を遅らせる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを含むことによって、達成され得る。
【0078】
滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中、上記列挙された成分の1つ又は組み合わせと、特定の量の活性化合物とを組み合わせ、必要に応じ、続いて濾過滅菌することによって、調製され得る。一般に、分散液は、基礎分散媒及び当技術分野で公知である上記又はその他の列挙された成分から選択される他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、活性化合物を組み込むことにより、調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、調製の方法は、任意のさらなる望ましい成分を加えた活性成分の粉末を、あらかじめ濾過滅菌したそれらの溶液から生み出す、真空乾燥及び凍結乾燥を含む。
【0079】
化合物は、坐薬の形(例、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐薬基剤と共に)、又は直腸への送達のため停留かん腸の形でも調製され得る。
【0080】
生物学的に活性な断片及び変異体
本明細書中使用される、抗セラミド抗体の「生物学的に活性な断片」は、セラミドに対する結合親和性を保持する任意の断片を意味する。該断片は、元となる抗体からの1以上
のCDR領域を保持する。CDRは、抗原(すなわち、本出願の場合はセラミド)と結合する、抗体の部位であり、多くの場合において、その抗体特有である。断片が抗原との結合を保持するために、これらのCDRの少なくとも1つを有することが必要であろう。変異が、ア
ミノ酸配列において、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%及び最も好ましくは99%の配列同一性を維持し、セラミドとの結合親和性を保持するならば、生物
学的に活性な断片は、微小な変異も含有してもよい。
【0081】
抗セラミド抗体又はその断片の「変異体」は、例えば、列挙された疾患の治療又は緩和という意図した目的のため、抗体の結合親和性及び/又はその他の生物学的特性を改善するかもしれない本明細書中記載された抗体のアミノ酸配列の変更を含む。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列への適切な変更を導入することにより、又はペプチド合成により、調製してもよい。そのような変更は、例えば、抗体のアミノ酸配列中の残基の欠失及び/又は挿入及び/又は置換を含む。最終構築物がセラミドに対する望ましい親和性を保有するならば、最終構築物に到達するために、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが行われ得る。アミノ酸の変更は、配列が作られる時に対象の抗体のアミノ酸配列に導入してもよい。
【0082】
抗体
「抗体」は、完全な免疫グロブリン、又は特異的な結合に対して完全な抗体と競合するその抗原結合部分を指す。抗原結合部分は、組み換えDNA技術により、又は完全な抗体の
酵素切断もしくは化学開裂により、うみだされてもよい。本明細書中使用される用語「組み換えヒト抗体」は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニックである動物
(例、マウス)から単離した抗体、(b)宿主細胞にトランスフェクトされた組み換え発
現ベクターを用いて発現させた抗体、(c)組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラ
リーから単離した抗体、及び(c)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列につぎ合わせることを伴う他の任意の手法により、調製、発現、作製又は単離した抗体などの、組み換え手法により、調製、発現、作製又は単離される全てのヒト抗体を含むことを意図する。そのような組み換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。特定の実施態様において、しかしながら、そのような組み換えヒト抗体に、in vitro変異誘発(または、ヒトIg配列のトランスジェニックである動物が使用された場合、in vivo体細胞変異誘発)をさせ得、従って組み換え抗体のVH及びVL領
域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来する及び関連する一方、in vivo
でヒト抗体生殖系列レパートリー中に天然に存在しないかもしれない配列である。抗原結
合部分は、特にFab、Fab'、F(ab')2、Fv、dAb及び相補性決定領域(CDR)断片、単鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二重特異性抗体、並びに標的セラミドに対する特異的な抗原結合を授けるのに十分である、免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチドを含む。T15ペプチドに対して化学的に共役した又はヒトIgG1骨格に遺伝子組み換えされ
たスーパー抗体を含むスーパー抗体も、抗体の定義に含まれる。(Y. Zhao, D. Lou, J. Burkett and H. Kohler. Enhanced Anti-B-cell Tumor Effects with Anti-CD20 SuperAntibody. J Immunotherapy, 25: 57-62, 2002.を参照。免疫グロブリンサブタイプは、任
意のサブタイプであり得る。通常IgG及びIgMを使用するが、IgA、IgEなどが効果的であることがある。
【0083】
「免疫グロブリン」は、四量体分子である。天然に存在する免疫グロブリンにおいて、各四量体は、各対が1つの「軽」鎖(約25 kDa)及び1つの「重」鎖(約50-70 kDa)を
有する、二つの同一のポリペプチド鎖対からなる。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識の原因となる、約100から110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクター機能の原因となる定常領域を特徴づける。ヒト軽鎖は、κ及びλ軽鎖に分類される。重鎖は、Μ、δ、γ、α又はεに分類されており、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEそれぞれの抗体のアイソタイプを特徴づける。
【0084】
各軽鎖/重鎖対の可変領域は、全長の免疫グロブリンが二つの結合部位を有するように
、抗体結合部位を形成する。免疫グロブリン鎖は、3つの、相補性決定領域又はCDRとも
呼ばれる超可変領域により結合された、比較的保存されているフレームワーク領域(FR)と同一の一般的な構造を示す。各対の二つの鎖からのCDRは、フレームワーク領域によっ
て配置され、特異的なエピトープに対する結合を可能とする。一般に、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W.編., 第2版. Raven Press, N.Y. (1989)) を参照。用語「エピトープ」は、抗体に対して特異的に結合する能力がある決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基群からなり、通常は、特異的な三次元構造上の特性や特異的な電荷特性を有する。立体配座エピトープ及び非立体配座エピトープは、後者でなく前者に対するエピトープ中の結合が、変性溶媒の存在下で失われることで区別される。N末端からC末端までに、軽鎖及び重鎖のいずれも、FR1、CDR1
、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4ドメインを含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては
、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest (国立衛生研究所、 Bethesda、 Md. (1987及び1991)、又はChothia & Lesk J. Mol. Biol. 196:901 917(1987); Chothia et al.、 Nature 342:878 883 (1989))の定義に従う。
【0085】
本明細書中使用される用語「ヒト抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含んでもよい(例、ランダムもしくは部位特異的なin vitroの変異誘発又はin vivo体細胞変異によって導入
した変異)。しかしながら、本明細書中使用される用語「ヒト抗体」は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている
抗体を含むことを意図しない。本明細書中使用される用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成物の抗体分子の製剤を指す。モノクローナル抗体組成物は、単一の結合特異性及び特定のエピトープに対する親和性を示す。結果的に、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を指す。一実施態様において、ヒトモノクローナル抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウス、から得て不死化細胞と融合させたB細胞を含むハイブリドーマにより産生される。本発明の実施態様にお
いて使用するモノクローナル抗体を下記に記載する。
【0086】
Fab断片は、VL、VH、CL及びCH Iドメインからなる一価の断片である。F(ab')2 断片
は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した二つのFab断片を含む二価の断片であ
る。Fd断片は、VH及びCH1ドメインからなる。Fv断片は、抗体の単一の腕のVL及びVHドメ
インからなる。dAb断片(Ward et al., Nature 341:544 546, 1989)は、VHドメインからなる。単鎖抗体(scFv)は、抗体中のVL及びVH領域が、単一タンパク質鎖として作られることを可能にする合成リンカーを介した一価の分子を形成するため結合している抗体である(Bird et al.、 Science 242:423 426, 1988及びHuston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879 5883, 1988)。二重特異性抗体は、抗体中VH及びVLドメインが、同一
鎖上の二つのドメイン間で対になるのを許すには短すぎるリンカーを用いているが、単一ポリペプチド鎖上で発現し、それによって、該ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対にさせ、二つの抗原結合部位を作る、二価、二重特異性抗体である。(例、 Holliger, P.,
et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444 6448, 1993,及びPoljak, R. J., et al., Structure 2:1121 1123, 1994)を参照)。二重特異性にするため、1以上のCDRを、共有結合的に又は非共有結合的に、分子に組み込んでもよい。抗セラミド抗体からの一つの結合部位、及びT細胞などへの標的指向化を改善する二つ目の抗原を対象とする二つ目の部
位を有する二重特異性抗体を、使用してもよい。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部分としてCDR(1又は複数)を組み込んでもよく、CDR(1又は複数)を共有結合で別のポリペプチド鎖と結合させてもよく、非共有結合的にCDRを組み込んでもよ
い。CDRは、イムノアドヘシンを関心のある特定の抗原と特異的に結合することを可能に
する。
【0087】
抗体は、1以上の結合部位を有してもよい。1より多い結合部位がある場合、結合部位
は、互いに同一でもよく、異なっていてもよい。例えば、天然に存在する免疫グロブリンは、二つの同質の結合部位を有し、単鎖抗体又はFab断片は、一つの結合部位を有し、一
方、「二重特異性」抗体又は「二重機能性」抗体は、二つの異なる結合部位を有する。
【0088】
「単離した抗体」は、(1)天然に結合する他の抗体を含む、天然状態でそれに随伴し
ている天然に結合する成分と結合していない抗体、(2)同一種からの他のタンパク質を
含まない、(3)異なる種からの細胞により発現される、(4)天然に存在しない
抗体である。本明細書中使用される「単離した抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことを意図する。さらに、単離した抗体は、他の細胞の材料及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。本発明の1つの実施態様において、異なる特異性を有する「単離した」抗セラミド抗体の組み合わせは、詳細に明らかにされた組成物中で、組み合わせられる。本発明の実施態様は、単離した抗体を使用する。
【0089】
用語「ヒト抗体」又は「ヒト化抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1以上の
可変領域及び定常領域を有する全ての抗体を含む。ヒト化抗体は、ヒトの治療のために好ましい。ヒト化抗体は、非ヒト種に由来し、ヒトでの免疫応答を防ぐ又は無効にするように、フレームワーク並びに重鎖及び軽鎖の定常ドメインの特定のアミノ酸を変異させた抗体である。あるいは、ヒト抗体からの定常ドメインを非ヒト種の可変ドメインと融合することによりヒト化抗体を生み出してもよい。ヒト化抗体の作り方の例は、米国特許6,054,297号、5,886,152号及び5,877,293号を参照してもよい。h2A2抗体をつくる方法は、実施
例に参照される。
【0090】
用語「キメラ抗体」は、1つの抗体からの1以上の領域、及び1以上の他の抗体からの1
以上の領域を含有する抗体を指す。
【0091】
本明細書の教示に従って、当業者は、抗体の断片又は類似体を、容易に調製することができる。断片又は類似体の好ましいアミノ末端及びカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に存在する。構造的及び機能的ドメインは、ヌクレオチド及び/又はアミノ酸配
列データを、公開又はプロプライエタリ配列データベースと比較することにより同定され得る。好ましくは、公知の構造及び/又は機能の他のタンパク質に存在する、配列モチーフ又は予測されたタンパク質構造ドメインを同定するため、コンピューターによる比較方法を使用する。公知の3次元構造におり畳むタンパク質配列を同定する方法は公知である。Bowie et al. Science 253:164 (1991)。
【0092】
抗セラミドモノクローナルIgM抗体
強力なin vivo活性をもつ新規抗セラミド抗体を作製するために用いられる戦略の流れ
図を、
図4に示す。2A2を含むモノクローナル抗体は、当技術分野で公知であり、PCT/US08/62789にさらに詳細に記載した方法を用いて作った。該抗体を作るために、接種された
宿主から強力な抗体応答を生み出すのに十分な免疫原性である、セラミド抗原を開発した。スフィンゴイド塩基上にBSA共役C
16脂肪酸を合成することにより、BSA共役セラミドを
作製した。抗原の量を減少させ、プレートに固定して、抗体スクリーニングのための抗原の検証をELISAアッセイにより行った。各ウェルをブロッキング後、Axxora LLC、San Diego、Californiaから市販されている抗セラミドMID15B4抗体(1:100)と共にプレートをインキュベートし、続いて西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)共役抗マウスIgMと共にインキュベートした。HRP基質の投与後に、650 nmでODを評価した。BSAセラミドELISAにより
、カポジ肉腫細胞でマウスに免疫付与した後の上清#3673中に、増強された結合活性を同
定した。結合活性は、抗セラミド結合活性をもつモノクローナル2A2 IgMの単離を可能と
する、抗体を産生するB細胞の不死化の後にも残存した(図示せず)。カポジ肉腫細胞で
の免疫付与は、抗体を産生するB細胞のパネルの作製をもたらす強力な免疫応答を生み出
すことを意図する。その後、これらのB細胞から生み出されたハイブリドーマからの抗体
含有上清を、BSAセラミドELISAに対して、スクリーニングした。アッセイにおいて検査で陽性であった上清を単離し、最終的にクローン2A2の精製がもたらされた。
【0093】
精製したモノクローナル2A2抗体を上清#3673から単離した。ELISAにより、2A2マウスモノクローナルIgMはBSAセラミドと結合することが明らかになった。ELISAは、コントロー
ルIgMに対して、2A2の著しく高い結合能力を示した。抗体などのヒト化の方法は、実施例1に明記されている。
【0094】
特定の他の実施態様は、抗セラミド抗体、好ましくはh2A2などのヒト化されたもの、及びキノロン剤抗生物質などの列挙された抗生物質を含む組成物を対象にする。他の実施態様において、抗体/抗生物質組成物は、(1)血中コレステロールレベルを減少させ、それによって抗セラミド抗体の有効性を増加させる量のスタチン、及び/又は(2)抗鬱剤と
して現在使用されているASMase阻害剤であるイミプラミンを含んでもよい。いくつかの方法及び組成物において、対象に免疫応答を引き起こし対象に抗セラミド抗体を形成させるミモトープが、抗セラミド抗体と共に又は抗セラミド抗体の代わりに使用され得る。
【0095】
BSAセラミドで免疫されたマウスで作られた他のモノクローナル抗体は、Jurkat細胞ア
ポトーシス阻害アッセイにおいてスクリーニングした際、2A2に匹敵する用量依存的な防
護効果を示した。これらは、IgM, κである15D9、並びにIgG3, κである1H4及び5H9 mAb
を含む。
【0096】
宿主マウスをカポジ肉腫細胞で免疫することにより、例えば2A2抗体でみられるような
劇的な治療効果をもつ有効な抗セラミドモノクローナル抗体が生み出された。
【実施例】
【0097】
5. 実施例
実施例1: 材料及び方法
【0098】
GI幹細胞クロノゲンの致死性は、放射線被ばく後3.5日目に生存する陰窩の数により最
も良く評価され、線量が増すにつれ指数関数的に減少する。(C. S. Potten及びM. Loeffler、Development 110 (4)、 1001 (1990)、 H. R. Withers、 Cancer 28 (1)、 75 (1971)、及びJ. G. Maj、 F. Paris、 A. Haimovitz-Friedman et al.、 Cancer Res
63、 4338 (2003))。生存する幹細胞を含有する陰窩は、腸粘膜が正常な構造を回復
するまで、加速度的に増殖し、出芽又は分裂して新しい陰窩を生成する典型的な再生陰窩を産生する。いくつかのマウスモデルにおいて、全身放射線照射(TBI)実験により、8-12Gyへの被ばく後に生存する陰窩幹細胞の数は、通常、粘膜の完全な回復を支援するのに
十分であることが実証されている。より高い線量において、しかしながら、重度の幹細胞クロノゲン喪失は、GI症候群から、陰窩絨毛系のほぼ完全な崩壊、粘膜露出及び動物の死をひきおこすことがある。TBIに曝露したC57BL/6マウスの剖検研究により、14 Gyで曝露
されたマウスの25%、及び15 Gyで曝露されたマウスの100%は、6.8.+/-.0.99日目にGI症候群で死亡し、GI死に対するLD50は、14及び15 Gyの間であることが予測されることが明ら
かになった。本明細書中に記載する実験において15 Gyの線量が使用された。次の段落に
記載するように、生存研究のために亜全身を使用した。
【0099】
雄C57BL/6マウス(6~8週齢)を、頭/前足及び後肢/尾部を鉛遮蔽体により覆い、換気
したプレキシグラス保定器に入れ、15.5Gy又は16 Gy亜全身放射線照射(SBI)(Philips MG-324 X線ユニット線量率118.3 cGy/min、ソースから肌までの距離50cm)で曝露した。
精製した2A2 IgM(1000 mg)を、放射線照射の24時間後に静脈内尾部静脈注射により投与した。細菌複製の静止期及び増殖期のいずれにおいてもグラム陰性及びグラム陽性細菌のいずれに対しても有効性が実証されているフルオロキノロンであるバイトリルを0.57mg/ml含有する飲水を、被ばくの24時間後から、マウスに、自由に利用させた。25gのC57BL/6
マウスが日々6mlの飲水を消費するという概算量に基づき、日々のバイトリル消費量は、
およそ3 mg/日であった。
【0100】
放射線及び組織調製
TBI(全身放射線照射)は防護研究のためのみに用い、緩和研究用のSBIは、137Csソー
スを操作するShepherd Mark-Iユニット(モデル68、SN643)を用いて提供された。線量率は、2.12Gy/分であった。小腸の試料を採取するため、高炭酸ガス窒息によりマウスを屠
殺し、近位空腸の2.5cmの断片を、トライツ靱帯から2cmにおいて採取した。組織試料を、4%中性緩衝ホルムアルデヒド中での一晩のインキュベーションにより固定し、パラフィンブロックに包埋した。腸組織の放射線に対する応答を評価するため、完全な空腸周囲の横断切片(厚さ5マイクロメートル)を、ミクロトーム法によって、パラフィンブロックか
ら得て、ポリリジン処理したスライドに付着させ、摂氏90度で10分間及び摂氏60度で5分
間加熱することにより脱パラフィンさせ、続いて5分間のキシレン洗浄を2回行い、標準
プロトコルに従って、ヘマトキシリン及びエオシンを用いて染色した。TBI後に死因を決
定するために、動物の死亡から60分以内、又は末期呼吸パターンを示す末期症状の動物を高炭酸ガス窒息により屠殺した時に、剖検を行った。全ての動物から組織標本を採取し、ホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリンを用いて染色した。
【0101】
放射線照射後のマウスの生存及び剖検結果の表示
生命表法による動物の生存を、積極限カプラン・マイヤー方法により算出した。末期呼吸パターンを示す末期症状の動物は、高炭酸ガス窒息により屠殺し、死因を決定するため剖検により評価した。腸の標本をホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリンを用いて染色した。小腸が一見すると絨毛(villae)又は陰窩がほとんどない露出粘膜を示す場合、又は粘膜が限られた粘膜修復を示す場合、GI損傷が死因として診断され得る。Kaplan, E.L. and P. Meier, Nonparametic estimation from incomplete observations. J of the American Statistical Association, 1958. 53: p. 457-48; Rotolo, J.A., et al., Bax and Bak do not exhibit functional redundancy in mediating radiation endotheli
al apoptosis in the intestinal mucosa. Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2008. 70(3): p. 804-15。
【0102】
実施例 2:
ヒト化2A2抗体の作製方法
モノクローナルマウス2A2抗体の作製方法は、PCT/US08/62789に記載されている。
【0103】
ヒト化2A2(h2A2)モノクローナル抗体を作製するために、CDR移植法によって、2A2の
ヒト化を行った。通常、齧歯動物抗体は、ヒトに対して免疫原性であり得、HAMA(ヒト抗マウス抗体)応答又はアナフィラキシーショックを含む非常に深刻な副作用をひきおこし得る。このCDR移植アプローチで、マウスMabの抗原結合部位を作り出すCDRループは、対
応するヒトフレームワーク領域に移植される。最初に、m2A2の可変軽鎖及び可変重鎖配列を決定した。そのため、m2A2ハイブリドーマ細胞を、遠心分離によって採取し、全RNAを
細胞から抽出した。全RNAをcDNA合成のために使用し、標準プライマーセットを用いて、2A2のV領域遺伝子を単離した。
【0104】
2A2のものと相同のヒトVL及びVHを同定するため、VBASEオンラインデータベースを用いて、2A2の可変領域をヒト生殖系列配列の可変領域と比較した。結果として、二つのヒト
生殖系列VL及びVH配列が発見された。以下の配列は、マウス2A2の可変重鎖(VH)及び可
変軽鎖(VL)、ヒト生殖系列配列、及びこれらのマウス及びヒト配列の相同領域である:
【0105】
配列番号 1: マウス2A2可変重鎖(VH)
【0106】
【0107】
配列番号 2: 2A2抗体のヒト生殖系列2A2可変重鎖
【0108】
【0109】
2A2抗体のマウス2A2可変重鎖、及びヒト生殖系列2A2超重鎖(very heavy chain)の相同
領域
【0110】
【0111】
** 「+」は、その場所のアミノ酸は同一ではないが、いくつかの類似の特性を有することを意味するということを特筆する。
【0112】
配列番号 3: マウス2A2可変軽鎖(VL)
【0113】
【0114】
配列番号 4: ヒト生殖系列2A2可変軽(VL)
【0115】
【0116】
2A2抗体のマウス2A2可変軽鎖及びヒト生殖系列2A2超重鎖の相同領域
【0117】
【0118】
** 「+」は、その場所のアミノ酸は同一ではないが、いくつかの類似の特性を有することを意味するということを特筆する。
【0119】
選択した2A2 VH配列は、VH1ファミリーのヒトV遺伝子 1-46及びヒトJ遺伝子JH6に対し
て、最も相同であることがわかった。選択した2A2 VL配列は、Vk2ファミリーのヒトV遺伝子A1及びヒトJ遺伝子Jk2に対して、最も相同であることがわかった。合成した配列のぞれぞれが、選択したヒトフレームワーク配列中に3つのマウスCDRを含有するように、これ
らのVL及びVHにm2A2 CDR配列を接合した。2A2 Mabは、そもそもマウスIgMであるため、h2A2 MabをIgG1構成に変えた。IgG1 Mabは、IgG1は血清中最も豊富(9 mg/ml)なMabであること、その半減期(21日)は他のどの抗体より長いこと、現在のところ多くの商用の治療用抗体はIgG1構成であることを含む、IgMより多くの恩恵を有する。哺乳動物発現ベクタ
ー中にヒト化2A2 IgG1を構築するため、pOptiVEC及びpcDNA 3.3(Invitrogen)ベクター
を使用した。以下は、簡単なベクター地図である。
【0120】
【0121】
ベクターは、幅広い哺乳動物細胞における組み換えタンパク質の高レベル発現のため、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター/エンハンサーを含有する。マウス2A2のCDRを3つ含有するヒト可変軽鎖及び重鎖を合成し、PCRによってヒト定常軽鎖及び
重鎖と結合させた。ヒト化2A2軽鎖を、pcDNA3.3 TOPOにクローニングし、ヒト化2A2重鎖
をpOptiVEC TOPO抗体発現ベクターにクローニングした。ヒト2A2 IgG1の配列は、下記に
示した。ヒト化軽鎖全体を作成中に、ヒト定常軽鎖の最初のアミノ酸(アルギニン、赤色影)を欠失させた。これらのヒト2A2 Ab発現ベクターの作成後、2A2 hIgG1抗体を産生す
る安定細胞株を作製するために、CHO由来DHFR陰性DG44細胞にDNAプラスミドを共トランスフェクトした。
【0122】
配列番号 5: ヒト化2A2重鎖DNA配列
【0123】
【0124】
一番目の下線: リーダー配列
一番目のイタリック体:: 可変重鎖配列
二番目の下線: CH1配列
二番目のイタリック体: ヒンジ配列
三番目の下線: CH2及びCH3配列
【0125】
配列番号 6ヒト化2A2重鎖のアミノ酸配列
【0126】
【0127】
一番目の下線: リーダー配列
角括弧配列=可変重鎖配列
NYWMH=CDR
LYYGYD=CDR
二番目の下線: CH1配列
二番目のイタリック体: ヒンジ配列
三番目の下線: CH2及びCH3配列
【0128】
配列番号 7: ヒト化2A2軽鎖dna配列
【0129】
【0130】
一番目の下線: リーダー配列
一番目のイタリック体: 可変軽鎖配列
二番目の下線: 欠失したアミノ酸
二番目のイタリック体: 定常kappa軽鎖配列
【0131】
配列番号 8:ヒト化2A2軽鎖のアミノ酸配列
【0132】
【0133】
一番目の下線を引いた配列=リーダー配列
角括弧=可変軽鎖配列
KSSQSLIDSDGKTFLNW=CDR配列
LVSKLDS = CDR配列
WQGTHFPYT =CDR配列
二番目の下線を引いた配列 = 欠失したアミノ酸
一番目のイタリック体: 定常kappa軽鎖配列
【0134】
高レベルの抗体を産生する細胞株を得るため、CD OptiCHO培地及び500 μg/mlのジェネ
ティシンを有するCD OptiCHO培地を用いて2回の選択を行い、続いて、96ウエルプレートで半固形培地中、MTXゲノムの増幅選択及び2回の単一細胞クローンの選択を行って、安
定にトランスフェクトされた細胞のプールを選択した。抗体の発現レベルを、ELISAアッ
セイの定量化によりスクリーニングし、選択したh2A2IgG1-CHO細胞(G3A10、C5G6及びD5F11)株を、徐々にスケールアップさせた。
【0135】
中空糸バイオリアクターを用いて、OptiCHO無血清培地中、h2A2 IgG1組み換え抗体のIn
vitro産生を行った。このクローンの増殖は中空糸システム中でのh2A2 IgG1の大量産生
及び精製を可能にする。高濃度の採取物から標準タンパク質A/G親和性クロマトグラフィ
ーを用いて、組み換えIgGの精製を行った。抗体を溶出し、緩衝液交換を行い、さらなる
解析のため、リン酸緩衝生理食塩水中の抗体を3mg/mlの濃度で一定分量凍結した。これまで、我々は、in vitro及びin vivoでの評価のため、組み換えh2A2の50ミリグラム以上を
精製してきた。
【0136】
h2A2のセラミドに対する結合親和性を確かめるため、行った一連のELISAアッセイは、
ウシ血清アルブミン(BSA)又はオボアルブミン(OVA)のいずれかと、セラミドの脂肪酸サブユニットの終末端での結合を介して共有結合したC16セラミドを用いて行った。手短
に、h2A2をビオチン化し、BSA又はOVA共役C16セラミドでコーティングしたマイクロプレ
ートに対する抗体結合を、西洋ワサビペルオキシダーゼで標識したストレプトアビジンを用いて決定した。実験によって、h2A2はC16セラミドと用量依存的に結合することが明ら
かになった。
【配列表】