(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20231023BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231023BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20231023BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 A
G06F1/20 B
H05K7/20 G
H05K7/20 H
H05K7/20 F
H05K7/20 Q
H01L23/46 C
H01L23/46 B
(21)【出願番号】P 2022102184
(22)【出願日】2022-06-24
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋場 惇輝
(72)【発明者】
【氏名】北村 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 肇
(72)【発明者】
【氏名】内野 顕範
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓郎
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-059833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0084490(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
H01L 23/467
H01L 23/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器であって、
外壁に第1開口部及び第2開口部を有する筐体と、
前記筐体内に設けられ、発熱体を実装する基板と、
前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、
を備え、
前記冷却モジュールは、
吸気口、第1排気口、及び第2排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、
前記第1排気口と前記第1開口部との間に配置されるフィンと、
前記基板と対向するように配置され、前記発熱体が発生する熱を吸熱するプレート型の熱拡散部材と、
を有し、
前記基板と前記熱拡散部材との間には、前記第2開口部に連通し、前記発熱体が配置されるダクト空間が形成され、
前記第2排気口は、前記ダクト空間に臨んで開口して
おり、
前記熱拡散部材は、2枚の金属プレートの間に密閉空間を形成し、該密閉空間に作動流体を封入したベーパーチャンバであり、
前記発熱体として、前記基板上で異なる位置に実装される第1及び第2の発熱体を備え、
前記ファンとして、相互間で前記ベーパーチャンバと前記第1及び第2の発熱体とを跨ぐように配置される第1及び第2のファンを備え、
前記第1及び第2のファンのそれぞれの前記ファン筐体が、前記ダクト空間の側壁の一部を形成しており、
さらに、前記基板と前記熱拡散部材との間で起立することで、前記ダクト空間を前記第1の発熱体が配置される第1空間と、前記第2の発熱体が配置される第2空間とに仕切る仕切り部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器であって、
さらに、前記基板と前記熱拡散部材との間で起立して前記ダクト空間の側壁の一部を形成すると共に、前記第2排気口から排出される空気を前記第2開口部に導く側壁部材を備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記側壁部材は、前記基板及び前記熱拡散部材の一方に固定され、他方に当接する柔軟性を有するスポンジ又はゴムで形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却モジュールを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPUやGPU等の発熱体を搭載している。このような電子機器は、筐体内に冷却モジュールを搭載し、発熱体が発生する熱を吸熱して外部に放熱する。特許文献1には、筐体に形成された開口部とファンの排気口との間にフィンを設け、プレート型のベーパーチャンバ及びヒートパイプを発熱体に接続した構成の冷却モジュールを備えた電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電子機器は、CPU及びGPUの他、これらの電源となる電源コンポーネント等の多数の発熱体を実装している。CPUやGPUは、大きな発熱を伴うため、ヒートパイプを用いてフィンまで熱を輸送する構成が一般的である。一方、他の電源コンポーネントは、ヒートパイプを接続するスペースがなく、実質的にベーパーチャンバによる吸熱のみで冷却している。
【0005】
ところが、ベーパーチャンバは、CPU及びGPUの吸熱も担うため、電源コンポーネントを十分に冷却できず、結果として冷却モジュール全体の冷却能力が不足する場合もある。電子機器は、冷却能力不足を生じると、CPU等のパフォーマンス低下を生じ、また発熱体の直上及び直下で筐体表面に高温部を生じる場合があった。他方、このような電子機器は、筐体の薄型化に対する要望が強いため、ファンやベーパーチャンバを大型化して冷却能力を高めることは難しいという事情もある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、冷却能力を向上することができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、外壁に第1開口部及び第2開口部を有する筐体と、前記筐体内に設けられ、発熱体を実装する基板と、前記筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備え、前記冷却モジュールは、吸気口、第1排気口、及び第2排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、前記第1排気口と前記第1開口部との間に配置されるフィンと、前記基板と対向するように配置され、前記発熱体が発生する熱を吸熱するプレート型の熱拡散部材と、を有し、前記基板と前記熱拡散部材との間には、前記第2開口部に連通し、前記発熱体が配置されるダクト空間が形成され、前記第2排気口は、前記ダクト空間に臨んで開口している。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、冷却能力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした模式的な平面図である。
【
図2】
図2は、筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す筐体14内にベーパーチャンバ等を搭載した状態での底面図である。
【
図4】
図4は、一方のファンとベーパーチャンバの隣接部及びその周辺部を拡大した模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3中のV-V線に沿う筐体の模式的な側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。
図1に示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体12と筐体14とをヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。本発明に係る電子機器は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、スマートフォン、又はゲーム機等でもよい。
【0012】
ディスプレイ筐体12は、薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体12には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。
【0013】
以下、筐体14及びこれに搭載された各要素について、筐体12,14間を
図1に示すように開いた状態とし、ディスプレイ18を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、高さ方向(筐体14の厚み方向)を上下、と呼んで説明する。
【0014】
筐体14は、薄い扁平な箱体である。筐体14は、上面及び四周側面を形成するカバー部材14Aと、下面を形成するカバー部材14Bとで構成されている。上側のカバー部材14Aは、下面が開口した略バスタブ形状を有する。下側のカバー部材14Bは、略平板形状を有し、カバー部材14Aの下面開口を閉じる蓋体となる。カバー部材14A,14Bは、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。筐体14の上面には、キーボード20及びタッチパッド21が設けられている。筐体14は、後端部がヒンジ16を用いてディスプレイ筐体12と連結されている。
【0015】
図2は、筐体14の内部構造を模式的に示す底面図であり、後述するベーパーチャンバ36、ヒートパイプ38、及びフィン40,41を省略した図である。
【0016】
図2に示すように、筐体14の内部には、冷却モジュール22と、マザーボード24と、バッテリ装置26とが設けられている。筐体14の内部には、さらに各種の電子部品や機械部品等が設けられる。
【0017】
マザーボード24は、電子機器10のメインボードである。マザーボード24は、筐体14の後方寄りに配置され、左右方向に沿って延在している。マザーボード24は、CPU30、GPU31、DCDCコンバータ32,33の他、メモリ(DIMM)、通信モジュール、及び接続端子等の各種電子部品が実装されたプリント基板である。マザーボード24は、キーボード20の下に配置され、キーボード20の裏面やカバー部材14Aの内面にねじ止めされている。本実施形態の場合、マザーボード24は、上面がカバー部材14Aに対する取付面となり、下面がCPU30等の実装面24aとなる(
図5参照)。
【0018】
CPU30は、マザーボード24の実装面24aの左右中央の左寄りに配置されている。CPU30は、電子機器10の主たる制御や処理に関する演算を行う。GPU31は、実装面24aでCPU30の右側に並んで配置されている。GPU31は、3Dグラフィックス等の画像描写に必要な演算を行う。
図2中の参照符号30aは、CPU(ダイ)30が実装されるパッケージ基板である。同様に、GPU31もパッケージ基板31a上にダイが実装されている。
【0019】
DCDCコンバータ32は、CPU30の電源となる電源コンポーネントであり、例えばCPU30の直後で並んだ複数の半導体チップで構成される。DCDCコンバータ33は、GPU31の電源となる電源コンポーネントであり、例えばGPU31の直前で並んだ複数の半導体チップで構成される。
【0020】
バッテリ装置26は、電子機器10の電源となる充電池である。バッテリ装置26は、マザーボード24の前方に配置され、筐体14の前端部に沿って左右に延在している。
【0021】
次に、冷却モジュール22の構成を説明する。
【0022】
CPU30及びGPU31は、筐体14内に搭載された電子部品中で最大級の発熱量の発熱体であり、DCDCコンバータ32,33は、CPU30及びGPU31に次ぐ発熱量の発熱体である。そこで、冷却モジュール22は、CPU30、GPU31及びDCDCコンバータ32,33が発生する熱を吸熱及び拡散し、さらに筐体14外へと排出することができる。冷却モジュール22は、マザーボード24の実装面24aの一部、具体的にはCPU30やGPU31が実装された範囲を覆うように積層される。
【0023】
図3は、
図2に示す筐体14内にベーパーチャンバ36等を搭載した状態での底面図である。
【0024】
図2及び
図3に示すように、冷却モジュール22は、ベーパーチャンバ36と、ヒートパイプ38と、左右一対のフィン40,41と、左右一対のファン42,43と、熱伝導プレート44と、を備える。
【0025】
ベーパーチャンバ36は、プレート型の熱輸送デバイスである。ベーパーチャンバ36は、2枚の薄い金属プレート36a,36bの間に密閉空間36cを形成し(
図5参照)、この密閉空間36cに作動流体を封入したものである。金属プレート36a,36bは、アルミニウム、銅、又はステンレスのような熱伝導率が高い金属で形成されている。密閉空間36cは、封入された作動流体が相変化を生じながら流通する流路となる。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。密閉空間36c内には、凝縮した作動流体を毛細管現象で送液するウィック36dが配設される(
図5参照)。ウィック36dは、例えば金属製の細線を綿状に編んだメッシュや微細流路等の多孔質体で形成される。
【0026】
ベーパーチャンバ36は、CPU30、GPU31、及びDCDCコンバータ32,33の熱を吸熱及び拡散すると共に、この熱を下面36eに接続されたヒートパイプ38に伝達することができる。ベーパーチャンバ36は、マザーボード24と略平行に対面配置され、その上面36fがCPU30、GPU31、及びDCDCコンバータ32,33の頂面に直接的に又は間接的に接触する。このため、平面視でのベーパーチャンバ36の表面積は、少なくともCPU30、GPU31、及びDCDCコンバータ32,33を覆う隠すことができる大きさを有することが好ましい。ベーパーチャンバ36は、例えば2枚を互いに隣接して配置し、これによりCPU30及びGPU31等を覆うように構成してもよい。
【0027】
ヒートパイプ38は、パイプ型の熱輸送デバイスである。ヒートパイプ38は、CPU30及びGPU31と上下方向にオーバーラップする位置でベーパーチャンバ36の下面36eに接続されている。本実施形態では、2本のヒートパイプ38a,38bを前後に2本1組で並列し、これらの両端部を左右のフィン40,41に接続した構成を例示している。ヒートパイプ38は、1本や3本以上で用いてもよい。ヒートパイプ38は、例えば2本1組のものを2組設け、一方の組をフィン40に接続し、他方の組をフィン41に接続した構成等としてもよい。ヒートパイプ38a,38bは、金属パイプを薄く扁平に潰して断面楕円形状に形成し、金属パイプ内に形成された密閉空間に作動流体を封入した構成である。作動流体としては、例えば水、代替フロン、アセトン又はブタン等を例示できる。
【0028】
左側のフィン40は、複数の金属プレートを左右方向に等間隔に並べた構造である。各金属プレートは、上下方向に起立し、前後方向に延在している。隣接する金属プレートの間には、ファン42から送られた空気が通過する隙間が形成されている。フィン40は、アルミニウムや銅のような高い熱伝導率を有する金属で形成されている。右側のフィン41は、大きさ等は多少異なるが、基本的な構成は左側のフィン40と左右対称であるため、詳細な説明を省略する。フィン40,41には、ヒートパイプ38以外の他の熱輸送デバイス、例えばベーパーチャンバ36或いはその代替となるヒートスプレッダ等が接続されてもよい。又はフィン40,41は、CPU30やCPU31以外の発熱体と直接的に接続されてもよい。
【0029】
図2及び
図3に示すように、筐体14は、その後縁部を形成する外壁46に左右一対の第1開口部46a,46bが貫通形成されている。フィン40,41は、それぞれ第1開口部46a,46bと対向する。
【0030】
熱伝導プレート44は、ベーパーチャンバ36の前縁部に連結され、前方に突出している。熱伝導プレート44は、アルミニウムや銅等の金属やグラファイト等の熱伝導率が高い材質で形成された薄いプレートである。熱伝導プレート44は、例えばマザーボード24に実装されたパワーコンポーネントを覆うように設けられている。熱伝導プレート44は省略されてもよい。
【0031】
図4は、一方のファン42とベーパーチャンバ36の隣接部及びその周辺部を拡大した模式的な斜視図である。
図5は、
図3中のV-V線に沿う筐体14の模式的な側面断面図である。
【0032】
図2~
図5に示すように、左側のファン42は、フィン40の直前に配置される。ファン42は、第1排気口42a及び第2排気口42bが形成されたファン筐体42cと、ファン筐体42cに収容されたインペラ42dとを有する。第1排気口42aは、ファン42の後面に形成され、後方を向いて開口している。第2排気口42bは、ファン42のベーパーチャンバ36側を向いた側面42c1に形成され、ベーパーチャンバ36側を向いて開口している。ファン42は、インペラ42dをモータによって回転させる遠心ファンであり、ファン筐体42cの上下面でそれぞれ開口した吸気口42eから吸い込んだ空気を排気口42a,42bから排出する。
【0033】
右側のファン43は、大きさ等は多少異なるが、基本的な構成は左側のファン42と左右対称であるため、詳細な説明を省略する。すなわちファン43は、フィン41の直前に配置され、第1排気口43a及び第2排気口43bが形成されたファン筐体43cと、インペラ43dと、吸気口43eとを有する。第1排気口43aは、ファン43の後面に形成され、後方を向いて開口している。第2排気口42bは、ファン43のベーパーチャンバ36側を向いた側面43c1に形成され、ベーパーチャンバ36側を向いて開口している。
【0034】
このような冷却モジュール22は、CPU30等が発生する熱がベーパーチャンバ36によって吸熱及び拡散されると共に、ヒートパイプ38に伝達されてフィン40,41に輸送される。そして、冷却モジュール22は、ファン42,43の第1排気口42a,43aから排出された空気A1がフィン40,41を通過すると共にこれを冷却した後、第1開口部46a,46bを通して筐体14外に排出される。これにより電子機器10は、CPU30及びGPU31の熱がフィン40,41を介して筐体14外に排出される。
図2中の1点鎖線で示す矢印A1は、第1排気口42a,43aから排出された空気の流れを模式的に示したものであある。
【0035】
一方、ファン42,43の第2排気口42b,43bは、それぞれマザーボード24の実装面24aとベーパーチャンバ36の上面36fとの間の隙間Gを臨んで開口している(
図2~
図5参照)。このため、第2排気口42b,43bから排出された空気は、上面36fと実装面24aとの間に形成された空間(ダクト空間DS)を通過することになる。
【0036】
そこで、次に、ファン42,43の第2排気口42b,43b及びダクト空間Sの構成及びその作用効果について説明する。
【0037】
図4及び
図5に示すように、ベーパーチャンバ36は、マザーボード24と略平行に配置され、その上面36fが実装面24aとの間にCPU30等の高さ分の隙間Gを設けて対向配置される。この隙間Gは、プレート状のマザーボード24とベーパーチャンバ36とが上壁及び下壁を形成することで、空気が前後左右方向に沿って流通可能なダクト空間DSとなる。ファン42,43の第2排気口42b,43bは、ダクト空間DSに臨んで開口している。
【0038】
一方、筐体14は、後縁部を形成する外壁46の略中央部に第2開口部46cが貫通形成されている(
図2及び
図3参照)。第2開口部46cは、ダクト空間DSの後部開口と対向する。
【0039】
従って、冷却モジュール22は、ファン42,43の第2排気口42b,43bから排出された空気A2がダクト空間DSに流入する。空気A2は、ダクト空間DS内を流通しながらCPU30、GPU31、及びDCDCコンバータ32,33の側部を通過してこれらを冷却し、同時にベーパーチャンバ36の上面36fも冷却する。その後、空気A2は、ダクト空間DSの後部開口から第2開口部46cを通して筐体14外に排出される。
図2~
図5中の1点鎖線で示す矢印A2は、第2排気口42b,43bから排出された空気の流れを模式的に示したものであある。
【0040】
図4及び
図5では、ファン42の第2排気口42b及びその周辺部の構成を代表的に図示しているが、ファン43の第2排気口43b及びその周辺部の構成もこれと形状や配置が多少異なる以外は同一又は同様な構成でよい(
図2及び
図3参照)。ファン42,43及びフィン40,41は、左右一対ではなく、一方のみで構成されてもよく、この場合は一方のファンの第2排気口のみがダクト空間DSに通風することになる。
【0041】
図2に示すように、本実施形態の場合、DCDCコンバータ33がGPU31の前方にあり、これらは左側のファン43の側面43c1のうち、前端部で円弧状に湾曲した部分に面している。そこで、ファン43は、側面43c1の円弧状に湾曲した部分に第2排気口43bを形成し、その空気A2をDCDCコンバータ33の周囲に確実に届けることを可能としている。ファン43の第2排気口43bは、GPU31及びDCDCコンバータ33との位置関係によっては、ファン42の第2排気口42bと同様、側面43c1の前後方向に沿った直線部分等に設けられてもよい。また、ファン42の第2排気口42bも、CPU30及びDCDCコンバータ32との位置関係によっては、側面42c1の直線部分ではなく、円弧状に湾曲した部分等に設けてもよい。
【0042】
以上のように、電子機器10は、CPU30及びGPU31だけでなく、DCDCコンバータ32,33が空気A2で冷却される。同時に、空気A2は、ベーパーチャンバ36の上面36fに広い面積で接触し、これを効率よく冷却する。その結果、電子機器10は、冷却モジュール22での冷却性能が向上することで、CPU30及びGPU31のパフォーマンス低下を抑制できる。さらに、電子機器10は、CPU30等の発熱体が効率よく冷却されることで、その直上及び直下にあるカバー部材14A,14Bが高温になることも抑制できる。
【0043】
このように、ダクト空間DSは、少なくともマザーボード24とベーパーチャンバ36とが対向配置され、ここに第2排気口42b,43bが臨んでいれば、十分な冷却効果が得られる。但し、ダクト空間DSは、上下面だけでなく、その前後左右の外周側面も塞ぐと、第2排気口42b,43bから第2開口部46cへの空気の流れが整流され、一層高い冷却効果が得られる。
【0044】
ここで、第2排気口42b,43bをダクト空間DSに向けて形成したファン42,43を備える実施例の電子機器10と、第2排気口を持たないファンを用いた比較例の電子機器との冷却性能を比較した実験結果を説明する。
【0045】
表1は、第2排気口42b,43bを形成したファン42,43を備える実施例の電子機器10と、第2排気口42b,43bを設けない従来構造のファンを備える電子機器との各部温度を比較した実験結果を示している。
【0046】
表1において、「第2排気口なし」は第2排気口42b,43bを設けない比較例の実験結果を示し、「第2排気口あり」は第2排気口42b,43bを設けた実施例の実験結果を示す。「表面温度(℃)」の欄において、「筐体下面」は筐体14の下面温度、「キーボード表面」はキーボード20の表面温度、「筐体上面後部」は筐体14の上面後部、つまりフィン40、41及びDCDCコンバータ32等の直上部分の温度の測定結果を示す。「各部センサ温度(℃)」の欄において、「CPU」はCPU30の表面温度、「CPU DCDC」はDCDCコンバータ32の表面温度、「GPU」はGPU31の表面温度、「GPU DCDC」はDCDCコンバータ33の表面温度、「DIMM」はマザーボード24に実装されたメモリの表面温度の測定結果を示す。
【0047】
表1に示すように、本実験の結果、実施例の「第2排気口あり」は、比較例の「第2排気口なし」と比べて、CPU30、GPU31、及びDCDCコンバータ32,33の温度が大幅に低下することが分かった。従って、本実施形態の電子機器10は、ダクト空間DS及びこれに空気を流通させる第2排気口42b,43bを備えたことで、CPU30等の冷却性能が向上することが確認された。
【0048】
なお、表1では、筐体14の「表面温度(℃)」は、「第2排気口あり」が「第2排気口なし」よりも僅かながら温度が上昇した結果となった。その理由の1つとして、本実験は、第2排気口を持たない既存製品のファンに対し、試験的に第2排気口42b,43bを形成した試作機を用いて行ったことが考えられる。すなわち、実施例と比較例のファンは、同一のものであり、実施例のもののみ第2排気口42b,43bを形成した試作機を用いた。このため、「第2排気口あり」は「第2排気口なし」に比べて、フィン40,41を通過する第1排気口42a,43aからの空気流量が低下し、フィン40,41での冷却効率が低下した結果、フィン40,41の直上及び直下で筐体14の表面温度が上昇したものと推定できる。
【0049】
但し、表1の実験結果から明らかなように、第2排気口42b,43bを設け、ベーパーチャンバ36とマザーボード24との間のダクト空間DSに空気A2を流通させることで、CPU30等の冷却性能が向上することは確認できている。従って、実施例の構成では、ファン42,43の風量、第2排気口42b,43bの大きさ、又は第2排気口42b,43bと第1排気口42a,43aとの排気量のバランス等を最適化することで、筐体14の表面温度を比較例よりも低下させることは十分に可能である。特に、各例の2台のファンの合計風量は、比較例では5.7(CFM)であったのに対し、実施例は6.0(CFM)に上昇した。このため、さらに実験を重ねて上記したファン42,43の風量やバランスを最適化することで、筐体14の表面温度も下げることは十分に可能であると言えよう。
【0050】
【0051】
本実施形態の電子機器10は、ベーパーチャンバ36に代えて、熱伝導プレート44と同様な銅等の金属プレートで形成されたヒートスプレッダを備えた構成としてもよい。この場合もプレート状のヒートスプレッダとマザーボード24との間にダクト空間DSを形成することで、冷却性能が向上する。
【0052】
但し、ベーパーチャンバ36は、単なる銅プレート等のヒートスプレッダと比べて、熱伝導率が顕著に高いという利点がある。しかも上記したように、ベーパーチャンバ36でダクト空間DSを形成すると、ダクト空間DSを流れる空気A2によって密閉空間36c内を流通する受熱後の気相の作動流体を効率的に冷却でき、その凝縮を促進し、ベーパーチャンバ36の熱伝導効率を一層向上させることができる。その結果、電子機器10は、ヒートスプレッダではなく、ベーパーチャンバ36を用いることで、両者の熱伝導率の差異以上の冷却能力の向上効果を得ることを可能としている。
【0053】
次に、ダクト空間DSでの空気A2を整流するための構成例を説明する。
【0054】
図2~
図5に示すように、電子機器10は、第2開口部46cと対向するダクト空間DSの後部開口とは逆側、つまりバッテリ装置26側を向いたダクト空間DSの前部開口を側壁部材50で塞いだ構成としてもよい。側壁部材50は、ダクト空間DSを第2開口部46c側と逆側で塞ぐ側壁の一部を形成する。側壁部材50は、ダクト空間DS内で空気A2を第2排気口42b,43bから第2開口部46cまで円滑に導くための整流用部材である。
【0055】
側壁部材50は、例えば帯状に延在し、柔軟性を有するスポンジ又はゴムであり、ベーパーチャンバ36の上面36fとマザーボード24の実装面24aとの間で起立し、両面36f,24aに密着する。なお、メンテナンス等で冷却モジュール22を取り外す際、側壁部材50は、円滑に上面36f又は実装面24aから離れる必要がある。そこで、側壁部材50は、上面36f又は実装面24aの一方のみに粘着固定しておき、他方にはその柔軟性を活かして密着する構成とすることが好ましい。
【0056】
図2に示すように、側壁部材50は、ファン43の第2排気口43bの前縁部に近接する第1端部50aから、ファン42の第2排気口42bの前縁部に近接する第2端部50bまで左右に延在している。側壁部材50は、CPU30、GPU31、及びDCDCコンバータ32,33の前方に配置される。本実施形態の側壁部材50は、ベーパーチャンバ36の形状やマザーボード24に実装された部品との関係で、多少クランクしながら左右に延在している。
【0057】
以上により、ダクト空間DSは、側壁部材50と第2開口部46cとの間にCPU30、GPU31、及びDCDCコンバータ32,33を収容した構成となる。その結果、空気A2は、CPU30等の各発熱体の側部を通過しながら、第2排気口42b,43bから第2開口部46cまで一層円滑に流通する。側壁部材50の形状や配置は限定されないが、少なくとも第2開口部46cとの間にダクト空間DSでの冷却対象となる発熱体であるCPU30等と、ファン42,43の第2排気口42b,43bとを挟み込むように配置されることが望ましい。
【0058】
図5中の参照符号52a,52bは、ファン筐体42cの上下面の外周縁部を囲むように設けられ、吸気口42eへの排気の逆流を防止するための気密材であり、例えばスポンジである。気密材52a,52bは、ファン筐体43cにも同様に設置される。また、
図5中の参照符号53は、CPU30の頂面とベーパーチャンバ36の上面36fとの密着性を高めるために設けられた受熱板であり、例えば銅ブロックである。受熱板53は、GPU31とベーパーチャンバ36との間にも同様に設けられる。
【0059】
上記では、ファン42,43は、左右一対ではなく、一方のみで構成されてもよいと述べた。しかしながら、
図2及び
図3に示すように、電子機器10は、ベーパーチャンバ36の左右側部にそれぞれファン42,43を備えることが好ましい。そうすると、左右のファン42,43は、それぞれのファン筐体42c,43cの側面42c1,43c1がダクト空間DSの左右の側部開口を塞ぐ側壁の一部を形成する。つまり左右のファン筐体42c,43cが、ダクト空間DSを流れる空気A2を第2排気口42b,43bから第2開口部46cまで一層円滑に導く整流用部材として機能する。その結果、ダクト空間DSは、その側部開口に沿って多量の側壁部材50を取り付ける必要がなくなり、製造効率が向上する。
【0060】
図2~
図4に示すように、冷却モジュール22は、ファン42,43の第1排気口42a,43aの直後にフィン40,41を備える。そして、このフィン40,41の側面も、ファン筐体42c,43cの後方に連続することで、ダクト空間DSの左右開口を塞ぐ側壁の一部を形成する。
【0061】
図2に示すように、電子機器10は、ダクト空間DSの左右にそれぞれファン42,43を備えた構成では、さらにダクト空間DS内を左右に仕切る仕切り部材54を備えてもよい。仕切り部材54は、側壁部材50と同一又は同様な材質で形成される。仕切り部材54は、側壁部材50の左右略中央から第2開口部46cに向かって前後方向に帯状に延在する。仕切り部材54は、ベーパーチャンバ36の上面36fとマザーボード24の実装面24aとの間で起立し、両面36f,24aに密着する。
【0062】
仕切り部材54は、ダクト空間DSをCPU30及びDCDCコンバータ32が配置された第1空間S1と、GPU31及びDCDCコンバータ33が配置された第2空間S1とに仕切ることができる。その結果、ダクト空間DSは、左右のファン42,43の第2排気口42b,43bから排出された空気A2が、互いに衝突して流れが乱れ、或いは高温のGPU31を冷却した高温の空気A2によってCPU30が温度上昇するような不都合の発生を抑制できる。
【0063】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10 電子機器
14 筐体
22 冷却モジュール
24 マザーボード
30 CPU
31 GPU
32,33 DCDCコンバータ
36 ベーパーチャンバ
42,43 ファン
42a,43a 第1排気口
42b,43b 第2排気口
46 外壁
46a,46b 第1開口部
46c 第2開口部
50 側壁部材
54 仕切り部材
DS ダクト空間
【要約】
【課題】冷却能力を向上することができる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、外壁に第1開口部及び第2開口部を有する筐体と、筐体内に設けられ、発熱体を実装する基板と、筐体内に設けられ、前記発熱体が発生する熱を吸熱する冷却モジュールと、を備える。冷却モジュールは、吸気口、第1排気口、及び第2排気口が形成されたファン筐体を有するファンと、第1排気口と第1開口部との間に配置されるフィンと、基板と対向するように配置され、発熱体が発生する熱を吸熱するプレート型の熱拡散部材と、を有する。基板と熱拡散部材との間には、第2開口部に連通し、発熱体が配置されるダクト空間が形成され、第2排気口は、ダクト空間に臨んで開口している。
【選択図】
図2