(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20231023BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
(21)【出願番号】P 2022146678
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2021100955の分割
【原出願日】2011-12-14
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2010286139
(32)【優先日】2010-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】三輪 美沙子
(72)【発明者】
【氏名】前田 修平
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-239769(JP,A)
【文献】特開2010-063245(JP,A)
【文献】特開2010-268665(JP,A)
【文献】特開2010-252446(JP,A)
【文献】国際公開第2010/085703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置と、受電装置と、を有し、
前記給電装置は、方向性結合器と、交流電源と、第1の電磁結合コイルと、第1の共鳴コイルと、スイッチと、第1のコンデンサと、制御回路と、アナログデジタルコンバータと、を有し、
前記第1の電磁結合コイルは、前記第1の共鳴コイルと電磁結合し、
前記第1の電磁結合コイルの一方の端子は、前記方向性結合器と電気的に接続され、
前記方向性結合器は、前記アナログデジタルコンバータの一方の端子と電気的に接続され、
前記方向性結合器は、前記交流電源の一方の端子と電気的に接続され、
前記第1の電磁結合コイルの他方の端子は、前記交流電源の他方の端子と電気的に接続され、
前記アナログデジタルコンバータの他方の端子は、前記制御回路と電気的に接続され、
前記第1の共鳴コイルの一方の端子は、前記第1のコンデンサの一方の端子と電気的に接続され、
前記第1の共鳴コイルの一方の端子は、前記スイッチの一方の端子と電気的に接続され、
前記第1の共鳴コイルの他方の端子は、前記第1のコンデンサの他方の端子と電気的に接続され、
前記第1の共鳴コイルの
他方の端子は、前記スイッチの他方の端子と電気的に接続され、
前記方向性結合器が検知した反射波の大きさを示すパラメータが、前記アナログデジタルコンバータを介して前記制御回路に入力され、
前記制御回路は、
前記パラメータに基づいて前記スイッチのオンオフを制御する機能を有し、
前記受電装置は、第2の電磁結合コイルと、第2の共鳴コイルと、第2のコンデンサと、負荷と、を有し、
前記第2の電磁結合コイルは、前記第2の共鳴コイルと電磁結合し、
前記第2の電磁結合コイルの一方の端子は、前記負荷の一方の端子と電気的に接続され、
前記第2の電磁結合コイルの他方の端子は、前記負荷の他方の端子と電気的に接続され、
前記第2の共鳴コイルの一方の端子は、前記第2のコンデンサの一方の端子と電気的に接続され、
前記第2の共鳴コイルの他方の端子は、前記第2のコンデンサの他方の端子と電気的に接続される、非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される発明の一態様は、給電装置、受電装置、及び非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電子機器の普及が進み、多種多様な製品が市場に出荷されている。近年では、携帯
電話及びデジタルビデオカメラ等の携帯型の電子機器の普及が顕著である。また電力を基
に動力を得る電気自動車等の電気推進移動体も製品として市場に登場しつつある。
【0003】
携帯電話、デジタルビデオカメラまたは電気推進移動体には、蓄電手段であるバッテリ(
蓄電池ともいう)が内蔵されている。当該バッテリの充電は、殆どが給電手段である家庭
用交流電源に直接的に接触させて行われているのが現状である。またバッテリを具備しな
い構成またはバッテリに充電された電力を用いない構成では、家庭用交流電源より配線等
を介して直接給電し動作させているのが現状である。
【0004】
一方で非接触によりバッテリの充電または負荷への給電を行う方式についての研究開発も
進んでおり、代表的な方式として、電磁結合方式(電磁誘導方式ともいう)(特許文献1
参照)、電波方式(マイクロ波方式ともいう)、共鳴方式(共振方式ともいう)(特許文
献2乃至特許文献4参照)が挙げられる。
【0005】
特許文献2乃至特許文献4に示されるように、共鳴方式の非接触給電技術においては、電
力を受ける側の装置(以下、受電装置という)及び電力を供給する側の装置(以下、給電
装置という)それぞれが、共鳴コイルを有している。また受電装置及び給電装置には、そ
れぞれ電磁結合コイルが設けられている。給電装置における電源から共鳴コイルへの給電
、並びに、受電装置における共鳴コイルから負荷への給電は、電磁結合コイルを介して行
われる。
【0006】
給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴コイルは、同一の周波数で共鳴(LC共振)現
象が発現するよう調整されている。
【0007】
これら給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴コイルが対向し、共鳴(共振)現象を起
こすことにより、当該共鳴コイル間距離が離れている状態でも、効率の良い電力伝送が実
現できる(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-101578号公報
【文献】特開2010-193598号公報
【文献】特開2010-239690号公報
【文献】特開2010-252468号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】「ワイヤレス給電2010 非接触充電と無線電力伝送のすべて」日経エレクトロニクス、2010年3月、pp.66-81
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら共鳴方式の非接触給電技術では、当該給電装置の共鳴コイル及び受電装置の
共鳴コイルが適切な位置関係を維持していない場合には、電力伝送の効率が低減してしま
う。
【0011】
つまり給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴コイルが遠すぎる場合には、電力伝送の
効率が低減してしまう。また、給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴コイルが近すぎ
る場合にも、電力伝送の効率が低減する現象が生じる。
【0012】
共鳴方式の非接触給電システムの斜視図、及び給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴
コイルの距離と電力の伝送効率との関係を、それぞれ
図3(A)及び
図3(B)に示す。
【0013】
図3(A)に示す共鳴方式の非接触給電システムは、給電装置1100及び受電装置11
10を有している。給電装置1100は、交流電源1101、電磁結合コイル1103、
共鳴コイル1104を有している。また受電装置1110は、負荷1111、電磁結合コ
イル1112、共鳴コイル1113を有している。ただし
図3(A)及び
図3(B)にお
いて、給電装置1100の共鳴コイル1104及び受電装置1110の共鳴コイル111
3の距離Dを、給電装置1100及び受電装置1110の距離とする。
【0014】
給電装置1100の交流電源1101から共鳴コイル1104への給電は、電磁結合コイ
ル1103を介して電磁結合方式にて行われる。給電装置1100から受電装置1110
への給電は、共鳴コイル1104及び共鳴コイル1113が電磁共鳴をすることにより行
われる。また共鳴コイル1113から負荷1111への給電は、電磁結合コイル1112
を介して電磁結合方式にて行われる。
【0015】
図3(B)に示すように、共鳴方式の非接触給電システムにおいて、給電装置1100の
共鳴コイル1104及び受電装置1110の共鳴コイル1113の距離が、最適の距離D
1のときに伝送効率は最大となる。つまり共鳴方式の非接触給電技術における伝送効率は
、給電装置1100の共鳴コイル1104及び受電装置1110の共鳴コイル1113の
距離が、距離D1より小さい場合においても大きい場合においても低減してしまう。
【0016】
以上を鑑みて、開示される発明の一態様では、電力の伝送効率が高い非接触給電システム
を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
開示される発明の一態様では、給電装置と受電装置の距離が遠い場合は、共鳴方式の給電
を行い、給電装置と受電装置の距離が近すぎる場合は、電磁結合方式の給電を行う非接触
給電システムを提供する。
【0018】
開示される発明の一態様の非接触給電システムにおいて、給電装置または受電装置いずれ
か一方において、電磁結合コイルと共鳴用コイルの配置を入れ替える。つまり、給電装置
の共鳴コイルと受電装置の共鳴コイルとの間に、給電装置の電磁結合コイル又は受電装置
の電磁結合コイルを設ける。より具体的には、給電装置の共鳴コイル、給電装置の電磁結
合コイル、受電装置の共鳴コイル、受電装置の電磁結合コイルという順の配置、或いは、
給電装置の電磁結合コイル、給電装置の共鳴コイル、受電装置の電磁結合コイル、受電装
置の共鳴コイルという順の配置の非接触給電システムを作製する。
【0019】
給電装置の電磁結合コイルと共鳴コイルの配置を入れ替えた非接触給電システムでは、給
電装置の共鳴コイル、給電装置の電磁結合コイル、受電装置の共鳴コイル、受電装置の電
磁結合コイルが並んで配置される。
【0020】
開示される発明の一態様における給電装置の共鳴コイルには、両端にスイッチが設けられ
ている。給電装置と受電装置の距離が遠い場合及び距離が最適な場合は、給電装置の共鳴
コイルのスイッチをオフにする。これにより、給電装置及び受電装置それぞれの共鳴コイ
ルにて共鳴方式の給電を行うことができる。
【0021】
共鳴方式の給電において、上述のように給電装置及び受電装置の共鳴コイル間の距離が最
適な距離のときに伝送効率は最大となる。しかしながら、当該共鳴コイルの距離が最適な
距離よりも近づくと、伝送効率は減少してしまう。
【0022】
給電装置と受電装置の距離が近すぎる場合は、給電装置の共鳴コイルのスイッチをオンに
し、当該給電装置の共鳴コイルを短絡させてしまう。これにより、当該給電装置の共鳴コ
イルは、電気的に存在しないものとみなせる。
【0023】
給電装置の共鳴コイルを短絡した場合、給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴コイル
との間では電磁共鳴は起こらない。ここで、上記のように給電装置の電磁結合コイルと共
鳴コイルの配置を入れ替えたことにより、給電装置の電磁結合コイルと受電装置の共鳴コ
イルは隣接している。ここで隣接する給電装置の電磁結合コイルと受電装置の共鳴コイル
との間で、電磁結合方式の給電を行う。これにより、給電装置及び受電装置との距離が近
い場合でも、高い伝送効率を維持したまま給電を行うことができる。
【0024】
また、給電装置の電磁結合コイル、給電装置の共鳴コイル、受電装置の電磁結合コイル、
受電装置の共鳴コイルを並べて配置した非接触給電システムにおいては、受電装置の共鳴
コイルの両端にスイッチを設ける。給電装置と受電装置の距離が遠い場合及び距離が最適
な場合は、受電装置の共鳴コイルのスイッチをオフにし、共鳴方式の給電を行う。給電装
置と受電装置の距離が近い場合は、受電装置の共鳴コイルのスイッチをオンにし、電磁結
合方式の給電を行う。これにより、高い伝送効率を維持したまま給電を行うことができる
。
【0025】
以上により、給電装置と受電装置の距離が変化した場合においても、電力の伝送効率が高
い非接触給電システムを提供することができる。
【0026】
開示される発明の一様態は、方向性結合器を介して交流電源に接続された電磁結合コイル
と、当該電磁結合コイルと電磁結合する共鳴コイルと、当該共鳴コイルの一方の端子に、
一方の端子が電気的に接続され、当該共鳴コイルの他方の端子に、他方の端子が電気的に
接続されたスイッチと、当該方向性結合器が検知した反射波の大きさを示すパラメータが
入力され、当該パラメータに基づいて当該スイッチのオン及びオフを切り替える制御回路
と、当該電磁結合コイルと当該制御回路との間に設けられたアナログ/デジタルコンバー
タとを有することを特徴とする給電装置に関する。
【0027】
開示される発明の一様態は、共鳴コイルと、当該共鳴コイルの一方の端子に、一方の端子
が電気的に接続され、当該共鳴コイルの他方の端子に、他方の端子が電気的に接続された
スイッチと、当該共鳴コイルと電磁結合をする電磁結合コイルと、当該電磁結合コイルと
電気的に接続されている整流器と、当該整流器により整流された電力が送られることによ
り、両端に直流電圧が印加される負荷と、当該直流電圧、及び当該負荷に印加された直流
電圧により発生する直流電流を検知するアナログ/デジタルコンバータと、当該アナログ
/デジタルコンバータが検知した直流電圧及び直流電流の大きさを示すパラメータが入力
され、当該パラメータに基づいて当該スイッチのオン及びオフを切り替える制御回路とを
有することを特徴とする受電装置に関する。
【0028】
開示される発明の一様態において、当該共鳴コイルには、コンデンサが接続されているこ
とを特徴とする。
【0029】
開示される発明の一様態において、当該コンデンサは、浮遊容量であることを特徴とする
。
【0030】
開示される発明の一様態は、方向性結合器を介して交流電源に接続された第1の電磁結合
コイルと、当該第1の電磁結合コイルと電磁結合する第1の共鳴コイルと、当該第1の共
鳴コイルの一方の端子に、一方の端子が電気的に接続され、当該第1の共鳴コイルの他方
の端子に、他方の端子が電気的に接続されたスイッチと、当該方向性結合器が検知した反
射波の大きさを示すパラメータが入力され、当該パラメータに基づいて当該スイッチのオ
ン及びオフを切り替える制御回路と、当該第1の電磁結合コイルと当該制御回路との間に
設けられたアナログ/デジタルコンバータとを有する給電装置と、当該第1の共鳴コイル
と電磁共鳴をする第2の共鳴コイルと、当該第2の共鳴コイルと電磁結合をする第2の電
磁結合コイルとを有する受電装置と、を有する非接触給電システムであり、当該第1の電
磁結合コイルは、当該第1の共鳴コイル及び第2の共鳴コイルとの間に配置されることを
特徴とする非接触給電システムに関する。
【0031】
開示される発明の一様態は、交流電源に接続された第1の電磁結合コイルと、当該第1の
電磁結合コイルと電磁結合をする第1の共鳴コイルとを有する給電装置と、当該第1の共
鳴コイルと電磁共鳴する第2の共鳴コイルと、当該第2の共鳴コイルの一方の端子に、一
方の端子が電気的に接続され、当該第2の共鳴コイルの他方の端子に、他方の端子が電気
的に接続されたスイッチと、当該第2の共鳴コイルと電磁結合をする第2の電磁結合コイ
ルと、当該第2の電磁結合コイルと電気的に接続されている整流器と、当該整流器により
整流された電力が送られことにより、両端に直流電圧が印加される負荷と、当該直流電圧
、及び当該負荷に印加された直流電圧により発生する直流電流を検知するアナログ/デジ
タルコンバータと、当該アナログ/デジタルコンバータが検知した直流電圧及び直流電流
の大きさを示すパラメータが入力され、当該パラメータに基づいて当該スイッチのオン及
びオフを切り替える制御回路とを有する受電装置と、を有する非接触給電システムであり
、当該第2の電磁結合コイルは、当該第1の共鳴コイル及び第2の共鳴コイルとの間に配
置されることを特徴とする非接触給電システムに関する。
【0032】
開示される発明の一様態において、当該スイッチをオフにすることにより、当該第1の共
鳴コイルと当該第2の共鳴コイルを電磁共鳴させ、当該スイッチをオンにすることにより
、当該第2の電磁結合コイル及び当該第1の共鳴コイルを電磁結合させることを特徴とす
る。
【0033】
開示される発明の一様態において、当該第1の共鳴コイル及び当該第2の共鳴コイルのそ
れぞれには、コンデンサが接続されていることを特徴とする。
【0034】
開示される発明の一様態において、当該コンデンサは、浮遊容量であることを特徴とする
。
【0035】
開示される発明の一態様において、当該方向性結合器及び当該制御回路との間に、アナロ
グ/デジタルコンバータが設けられていることを特徴とする。
【0036】
開示される発明の一態様において、当該第1の共鳴コイル及び当該第2の共鳴コイルのそ
れぞれには、コンデンサが接続されていることを特徴とする。
【0037】
開示される発明の一態様において、当該コンデンサは、浮遊容量であることを特徴とする
。
【0038】
なお、第1、第2、又は第3として付される序数詞は便宜上用いるものであり、工程順又
は積層順を示すものではない。また、本明細書において発明を特定するための事項として
固有の名称を示すものではない。
【発明の効果】
【0039】
開示される発明の一態様により、電力の伝送効率が高い非接触給電システムを提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】非接触給電システムの処理手段を示すフローチャート。
【
図3】非接触給電システムの斜視図、及び共鳴コイル間距離と伝送効率との関係を示す図。
【
図4】給電装置及び受電装置の距離と伝送効率との関係を示す図。
【
図5】非接触給電システムを有する電子機器の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本明細書に開示された発明の実施の態様について、図面を参照して説明する。但し
、本明細書に開示された発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本明細書
に開示された発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変
更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限
定して解釈されるものではない。なお、以下に示す図面において、同一部分又は同様な機
能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0042】
[実施の形態1]
本実施の形態の非接触給電システムを、
図1(A)及び
図1(B)に示す。
図1(A)は
当該非接触給電システムの回路図、
図1(B)は当該非接触給電システムの一部を抜き出
した斜視図である。
【0043】
図1(A)及び
図1(B)に示す非接触給電システムは、給電装置100及び受電装置1
10を有している。なお本実施の形態において、給電装置100及び受電装置110との
距離を距離Wとする。
【0044】
給電装置100は、交流電源101、方向性結合器102、電磁結合コイル103、共鳴
コイル104、コンデンサ105、スイッチ106、アナログ/デジタルコンバータ(A
/Dコンバータ)107、制御回路108を有している。また受電装置110は、負荷1
11、電磁結合コイル112、共鳴コイル113、及びコンデンサ114を有している。
【0045】
交流電源101は高周波電力を出力する電源である。交流電源101の一方の端子は、方
向性結合器102の第1の端子に電気的に接続されている。交流電源101の他方の端子
は、電磁結合コイル103の一方の端子に電気的に接続され、かつ接地されている。
【0046】
方向性結合器102の第1の端子は、交流電源101の一方の端子に電気的に接続されて
いる。方向性結合器102の第2の端子は、A/Dコンバータ107の一方の端子に接続
されている。方向性結合器102の第3の端子は、電磁結合コイル103の他方の端子に
電気的に接続されている。
【0047】
方向性結合器102(「カプラ」ともいう)は、順方向に伝搬する電力(進行波)又は逆
方向に伝搬する電力(反射波)、或いはその両方に対応する信号を取り出すことができる
。
【0048】
電力の伝送効率は反射波の大小を表す係数である反射係数(反射波の大きさ/入射波の大
きさ)と密接な関わりがあり、伝送効率が大きい周波数の電力信号程、その反射係数は他
の周波数の電力信号と比べて小さく、伝送効率が最大となる共鳴周波数の電力信号は、そ
の反射係数が他の周波数の電力と比べて最小となる。方向性結合器102により反射波の
大きさを検知することで、電力の伝送効率が最大となる、給電装置100及び受電装置1
10の距離(
図3(B)の距離D1に相当)を検知することができる。
【0049】
電磁結合コイル103の一方の端子は、交流電源101の他方の端子に電気的に接続され
ており、かつ接地されている。電磁結合コイル103の他方の端子は、方向性結合器10
2の第3の端子に電気的に接続されている。
【0050】
共鳴コイル104の一方の端子は、コンデンサ105の一方の端子及びスイッチ106の
一方の端子に電気的に接続されている。共鳴コイル104の他方の端子は、コンデンサ1
05の他方の端子及びスイッチ106の他方の端子に電気的に接続されている。
【0051】
交流電源101から共鳴コイル104への給電は、電磁結合コイル103を介して電磁結
合方式を用いて行われる。
【0052】
本実施の形態の非接触給電システムにおいて、給電装置100の共鳴コイル104と受電
装置110の共鳴コイル113との間に、給電装置100の電磁結合コイル103が設け
られている。なお本実施の形態の非接触給電システムでは、給電装置100の共鳴コイル
104と受電装置110の共鳴コイル113との間に、電磁結合コイルが設けられていれ
ばよいので、給電装置100の電磁結合コイル103に代えて、受電装置110の電磁結
合コイル112を設けてもよい。この構成については、
図6(A)及び
図6(B)を用い
て後述する。
【0053】
給電装置100の電磁結合コイル103及び受電装置110の電磁結合コイル112は、
例えば1ループ程度に巻かれたコイルであり、給電装置100の共鳴コイル104と受電
装置110の共鳴コイル113は、例えば数ループ程度に巻かれたコイルである。
【0054】
給電装置100の共鳴コイル104と受電装置110の共鳴コイル113は、両端が開放
されたコイルである。当該共鳴コイル104及び共鳴コイル113は、浮遊容量によるコ
ンデンサ(
図1(A)及び
図1(B)のコンデンサ105及びコンデンサ114に相当)
を有する。これによって、当該共鳴コイル104及び共鳴コイル113は、LC共振回路
となる。なお、コンデンサは浮遊容量方式に限らず、コイルの両端にコンデンサを接続し
てLC共振回路を実現してもよい。
【0055】
なおコイルを用いた電力伝送技術において、高い伝送効率を示す指標となるパラメータと
してk×Qがある(kは結合係数、Qは共鳴コイルのQ値)。結合係数kは、給電側の共
鳴コイルと受電側の共鳴コイルとの結合の度合いを示す係数である。またQ値は、共振回
路の共振のピークの鋭さを表す値である。共鳴型非接触給電技術では、高い伝送効率を実
現するため、当該共鳴コイル104及び共鳴コイル113として、Q値が非常に高く設定
された共鳴コイル(例えば、Qは100より大きい(k×Qが1より大きい))を用いる
ことが好ましい。
【0056】
図1(B)に示されるように、給電装置100の電磁結合コイル103を受電装置110
の近傍に配置する。これにより、給電装置100と受電装置110の距離が近い場合にお
いて、給電装置100の電磁結合コイル103と受電装置110の共鳴コイル113を直
接電磁結合させることができる。
【0057】
ただしこの場合、給電装置100の共鳴コイル104と受電装置110の共鳴コイル11
3も密結合となってしまい、電力の伝送効率が上がらない。
【0058】
そこで、給電装置100の共鳴コイル104に設けられたスイッチ106をオンにする。
これにより共鳴コイル104の両端が短絡され、共鳴コイル104としての機能が消失す
る。
【0059】
スイッチ106は、給電装置100の共鳴コイル104の両端に設けられており、給電装
置100と受電装置110の位置が遠い場合か適切な位置にある場合にはオフとなり、近
い場合はオンとなる。スイッチ106のオン及びオフの切り替えは、上述の方向性結合器
102によって得られた反射波の大きさの情報を基に行われる。
【0060】
A/Dコンバータ107の一方の端子は、方向性結合器102の第2の端子に電気的に接
続されている。A/Dコンバータ107の他方の端子は、制御回路108に電気的に接続
されている。
【0061】
A/Dコンバータ107を介して、方向性結合器102によって得られた反射波の大きさ
の情報が制御回路108に入力される。入力された情報を基に、制御回路108がスイッ
チ106のオン及びオフの切り替えを行う。例えば当該制御回路108は、所定の時間毎
(例えば1分毎)にスイッチ106のオン状態又はオフ状態における反射波の大きさを検
出し、反射波の大きさが少ない状態の方を選択する。なお
図1(A)及び
図1(B)では
A/Dコンバータ107のみ示しているが、A/Dコンバータ107の出力を増幅するア
ンプや、A/Dコンバータ107の出力を整流する整流器を設けてもよい。
【0062】
また受電装置110においては、電磁結合コイル112の一方の端子は、負荷111の一
方の端子に電気的に接続されている。電磁結合コイル112の他方の端子は、負荷111
の他方の端子に電気的に接続されており、かつ接地されている。なお負荷111とは、受
電装置110に接続される他の回路や装置等に相当する。負荷111として、例えば二次
電池のような蓄電装置が挙げられる。
【0063】
共鳴コイル113の一方の端子は、コンデンサ114の一方の端子に電気的に接続されて
いる。共鳴コイル113の他方の端子は、コンデンサ114の他方の端子に電気的に接続
されている。なお上述したように、コンデンサ114は、共鳴コイル113の両端が開放
されることにより形成される浮遊容量を用いてもよいし、共鳴コイル113にコンデンサ
を接続してもよい。
【0064】
共鳴コイル113から負荷111への給電は、電磁結合コイル112を介して電磁結合方
式を用いて行われる。
【0065】
以下に、制御回路108によって行われる具体的な処理手順とそのフローチャートの例を
、
図2を用いて説明する。
【0066】
初期状態として、給電装置100の共鳴コイル104の両端に設けられたスイッチ106
はオフ(開放されている状態)である。
【0067】
交流電源101は、認識手段(図示しない)にて受電装置110の存在を認識する(S1
01)と、周波数f0にて高周波電力を出力し、給電を開始する(S102)。
【0068】
なお、当該認識手段とは、給電装置100及び受電装置110に設けられるものであり、
給電装置100及び受電装置110の情報を交換するための無線通信手段等である。当該
無線通信手段の無線通信に用いるキャリア周波数およびエアインターフェイスは、給電用
に設けられたインターフェイス(コイル)とは別に改めて設けるのが望ましいが、給電用
インターフェイス(コイル)を介し、給電に用いる電磁波をキャリアとして用いて通信を
行っても構わない。当該通信手段を利用して、給電装置100は受電装置110の存在を
確認することや、充電の経過を把握することが可能である。
【0069】
給電が開始された直後は、当然充電は継続される(S103)。充電が継続されない場合
とは、給電が完了した場合である(後述)。給電が開始されると、給電装置100内に設
置された方向性結合器102が反射波の大きさを検知し、検知された反射波の大きさがど
の程度かを示すパラメータが、A/Dコンバータ107を介して制御回路108に入力さ
れる。制御回路108は入力されたパラメータを記憶する(S104)。
【0070】
次に当該パラメータに基づいて、スイッチ106のオン及びオフを切り替える(オンであ
った場合はオフ、オフであった場合はオンに切り替える)(S105)。
【0071】
切り替える前と比較して、反射波の大きさが小さくなった場合(S106)は切り替え後
の状態を維持(S107)。また反射波の大きさが大きくなった場合(S106)は元の
状態へ戻す(S109)。
【0072】
切り替え後の状態を所定の時間維持、或いは、切り替える前の状態に戻して所定の時間(
例えば1分)維持する(S108)。以降、給電が完了するまでは充電を継続し(S10
3)、これを一定時間毎(上述であれば1分毎)に繰り返す。給電を完了した時点で交流
電源101からの高周波電力の出力を停止する(S111)。
【0073】
上記の処理が行われる非接触給電システムにおける、給電装置100及び受電装置110
との距離Wと、電力の伝送効率との関係を
図4に示す。
【0074】
給電装置100と受電装置110の距離Wが遠い場合及び適切な距離にある場合(WがW
1以上の場合)は、スイッチがオフの状態のほうが伝送効率が高い(反射成分が小さい)
ため、共鳴コイル104が有効な状態が維持される。共鳴コイル104が有効な状態とは
、共鳴方式の給電が行われるということである。
図4において、共鳴方式の給電における
距離Wと伝送効率との関係は、曲線201で示される。
【0075】
一方、給電装置100と受電装置110の距離Wが近い場合(WがW1未満の場合)、ス
イッチがオンの状態であるほうが伝送効率が高いため、共鳴コイル104が無効となる状
態が維持される。共鳴コイル104が無効となる状態とは、電磁結合方式の給電が用いら
れるということである。
図4において、電磁結合方式の給電における距離Wと伝送効率と
の関係は、曲線202で示される。
【0076】
すなわち、本実施の形態の非接触給電システムは、給電装置100と受電装置110との
距離Wに応じて、共鳴方式と電磁結合方式を切り替えることによって、電力の伝送効率を
高い状態とすることができる。
【0077】
なお、本実施の形態の非接触給電システムでは、一定期間(例えば1分)毎にスイッチ1
06のオン及びオフを見直し、必要であれば切り替えている。そのため充電中に受電装置
110の位置が変化して、給電装置100及び受電装置110との距離Wが変化した場合
でも、その都度伝送効率が最適となる状態が選ばれる。
【0078】
なお
図1(A)及び
図1(B)では、給電装置100の共鳴コイル104及び受電装置1
10の共鳴コイル113との間に、給電装置100の電磁結合コイル103を配置した非
接触給電システムについて説明したが、開示される発明の一態様はこれに限定されない。
開示される発明の一態様では、給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴コイルとの間に
、受電装置の電磁結合コイルを配置してもよい。このような非接触給電システムでは、受
電装置の共鳴コイルにスイッチを設ける。
【0079】
図6(A)及び
図6(B)に給電装置の共鳴コイル及び受電装置の共鳴コイルとの間に、
受電装置の電磁結合コイルを配置した非接触給電システムを示す。
【0080】
図6(A)及び
図6(B)に示す非接触給電システムは、給電装置120及び受電装置1
30を有している。給電装置120は、交流電源101、電磁結合コイル103、共鳴コ
イル104、コンデンサ105を有している。
【0081】
また受電装置130は、負荷111、電磁結合コイル112、共鳴コイル113、コンデ
ンサ114、整流器132、スイッチ136、A/Dコンバータ137、制御回路138
を有している。
【0082】
電磁結合コイル103の一方の端子は、交流電源101の一方の端子に電気的に接続され
ている。電磁結合コイル103の他方の端子は、交流電源101の他方の端子に電気的に
接続され、かつ接地されている。
【0083】
共鳴コイル104の一方の端子は、コンデンサ105の一方の端子に電気的に接続されて
いる。共鳴コイル104の他方の端子は、コンデンサ105の他方の端子に電気的に接続
されている。
【0084】
整流器132の第1の端子は、負荷111の一方の端子に電気的に接続されている。整流
器132の第2の端子は、A/Dコンバータ137の第1の端子に電気的に接続されてい
る。整流器132の第3の端子は、電磁結合コイル112の一方の端子に電気的に接続さ
れている。整流器132は、交流/直流変換器(AC/DCコンバータ)であり、受け取
った電力を整流する機能を有する。整流器132によって整流された電力は負荷111に
送られる。
【0085】
A/Dコンバータ137の第1の端子は、整流器132の第2の端子の電気的に接続され
ている。A/Dコンバータの第2の端子は、電磁結合コイル112の他方の端子に電気的
に接続されている。A/Dコンバータの第3の端子は、制御回路138に電気的に接続さ
れている。A/Dコンバータ137は、負荷111の両端に印加される直流電圧、及び当
該直流電圧が負荷111に流れることにより発生する直流電流をモニターする。A/Dコ
ンバータ137がモニターして得られた直流電圧の大きさ及び直流電流の大きさを示すパ
ラメータが、制御回路138に入力される。当該パラメータに基づいて、共鳴コイル11
3に設けられたスイッチのオン及びオフが制御される。
【0086】
電磁結合コイル112の一方の端子は、整流器132の第3の端子に電気的に接続されて
いる。電磁結合コイル112の他方の端子は、負荷111の他方の端子に電気的に接続さ
れており、かつ接地されている。
【0087】
共鳴コイル113の一方の端子は、コンデンサ114の一方の端子及びスイッチ136の
一方の端子に電気的に接続されている。共鳴コイル113の他方の端子は、コンデンサ1
14の他方の端子及びスイッチ136の他方の端子に電気的に接続されている。
【0088】
上述したように
図6(A)及び
図6(B)に示す非接触給電システムでは、受け取った電
力が整流器132により整流される。整流された電力は負荷111に送られ、これにより
負荷111の両端に直流電圧が印加される。負荷111の両端に印加される直流電圧の情
報及び負荷111に流れる直流電流の情報が、制御回路138に入力される。入力された
情報を基に、制御回路138がスイッチ136のオン及びオフの切り替えを行う。
【0089】
以上本実施の形態により、電力の伝送効率が高い非接触給電システムを提供することがで
きる。
【0090】
[実施の形態2]
本実施の形態では、実施の形態1で説明した非接触給電システムを適用できる用途につい
て説明する。なお開示される発明の一態様における非接触給電システムを適用できる用途
としては、例えば携帯型の電子機器である、携帯電話、デジタルビデオカメラ、コンピュ
ータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機又は電子書籍等
)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile
Disc(DVD)などが挙げられる。また電力を基に動力を得る電気自動車等の電気推
進移動体が挙げられる。以下、一例について図面を用いて説明する。
【0091】
図5(A)は携帯電話及び携帯情報端末を非接触給電システムの用途とする一例であり、
給電装置701、受電装置703Aを有する携帯電話702A、受電装置703Bを有す
る携帯情報端末702Bによって構成されている。上記実施の形態で説明した非接触給電
システムは、給電装置701と受電装置703Aとの間、及び給電装置701と受電装置
703Bとの間で適用することができる。
【0092】
本実施の形態により、電力の伝送効率が高い非接触給電システムを有する携帯電話及び携
帯情報端末を提供することができる。
【0093】
図5(B)は電気推進移動体である電気自動車を非接触給電システムの用途とする一例で
あり、給電装置711、受電装置713を有する電気自動車712によって構成されてい
る。上記実施の形態で説明した非接触給電システムは、給電装置711と受電装置713
との間で適用することができる。
【0094】
本実施の形態により、電力の伝送効率が高い非接触給電システムを有する電気推進移動体
を提供することができる。
【0095】
以上、上記実施の形態で説明した非接触給電システムは電力をもって駆動させる物品であ
ればどのようなものにでも設けて使用することができる。
【0096】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能
である。
【符号の説明】
【0097】
100 給電装置
101 交流電源
102 方向性結合器
103 電磁結合コイル
104 共鳴コイル
105 コンデンサ
106 スイッチ
107 A/Dコンバータ
108 制御回路
110 受電装置
111 負荷
112 電磁結合コイル
113 共鳴コイル
114 コンデンサ
120 給電装置
130 受電装置
132 整流器
136 スイッチ
137 A/Dコンバータ
138 制御回路
201 曲線
202 曲線
701 給電装置
702A 携帯電話
702B 携帯情報端末
703A 受電装置
703B 受電装置
711 給電装置
712 電気自動車
713 受電装置
1100 給電装置
1101 交流電源
1103 電磁結合コイル
1104 共鳴コイル
1110 受電装置
1111 負荷
1112 電磁結合コイル
1113 共鳴コイル