(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】電池の電解液用添加剤、リチウムイオン電池の電解液及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231023BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231023BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20231023BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20231023BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231023BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231023BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231023BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231023BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20231023BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M4/36 A
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/587
H01M10/052
H01M10/0569
(21)【出願番号】P 2022522353
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(86)【国際出願番号】 CN2020091053
(87)【国際公開番号】W WO2021093296
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】201911101375.6
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520274356
【氏名又は名称】深▲セン▼市比克▲動▼力▲電▼池有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】林 建
(72)【発明者】
【氏名】占 孝云
(72)【発明者】
【氏名】安 ▲偉▼峰
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-181772(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0567
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/485
H01M 4/505
H01M 4/525
H01M 4/587
H01M 10/052
H01M 10/0569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含むリチウムイオン電池の電解液であって、
前記添加剤は、以下の構造式
(2)及び(5)~(7):
【化1】
で表される化合物から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、リチウムイオン電池の電解液。
【請求項2】
前記構造式
(2)及び(5)~(7)で表される化合物から選択される少なくとも1つを第1類の添加剤とし、且つ前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記第1類の添加剤の含有量の質量百分率が0.05%~2%であることを特徴とする、請求項1に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項3】
前記添加剤が、フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、及び硫酸プロピレンからなる群から選択される少なくとも1つの第2類の添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項4】
前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記添加剤の含有量の質量百分率の合計が15%以下であることを特徴とする、請求項3に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項5】
前記非水有機溶媒が、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンから選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項6】
前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記非水有機溶媒の含有量の質量百分率の合計が55%~75%であることを特徴とする、請求項5に記載のリチウムイオン電池の電解液。
【請求項7】
リチウムイオン電池であって、
前記リチウムイオン電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、且つ、
前記電解液が、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウムイオン電池の電解液であることを特徴とする、リチウムイオン電池。
【請求項8】
前記正極は、遷移金属酸化物である正極活物質を含み、前記負極は、黒鉛及びSiを含む複合材料またはチタン酸リチウムである負極活物質を含むことを特徴とする、請求項7に記載のリチウムイオン電池。
【請求項9】
前記遷移金属酸化物が、LiNi
xCo
yMn
zL
(1-x-y-z)O
2であり、
Lが、Al、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、及びFeから選択される1つであり、
x、y、及びzが、0≦x<1、0<y≦1、0≦z<1であり、且つ0<x+y+z≦1であることを特徴とする、請求項8に記載のリチウムイオン電池。
【請求項10】
以下の構造式
(2)及び(5)~(7):
【化2】
で表される化合物から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、電池の電解液用添加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に属し、特に電池の電解液用添加剤、リチウムイオン電池の電解液及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、新世代で最も競争力のある電池であり、「グリーンなエコエネルギー」と呼ばれ、現代の環境汚染問題とエネルギー問題を解決するための最優先技術である。近年、高エネルギー電池分野においてリチウムイオン二次電池は大きな成功を収めいるが、消費者は依然として総合性能がより高い電池を望んでいる所、これは新規な電極材料及び電解質システムの研究と開発に依存する。現在、スマートフォン、タブレットパソコンなどの電子デジタル製品は電池のエネルギー密度に対する要求がますます高くなり、市販のリチウムイオン二次電池がこの要求を満たすことは難しい。電池のエネルギー密度を高めるには、2つの方法があり、1つは高容量と高圧密の正負極材を選択することであり、もう1つは電池の動作電圧を上げることである。
【0003】
純シリコン負極の理論上のグラム容量は4200mAh/gと高く、リチウムイオン二次電池の理想的な高容量負極材料である。しかしながら、純シリコンをリチウムイオン二次電池の負極として使用するときに、体積効果による電池の膨らみ及び電極シートの粉体化が深刻であり、サイクル性能が悪い。また、シリコン材料の導電性が悪いことにより、電池の低温性能が低下する。シリコン材料と炭素材料とを複合化し、シリコン炭素複合材料を形成することが考えられ、これにより、材料の比容量と導電性が大幅に高まり、一定の程度でシリコン材料の体積効果を低減することができる。シリコン炭素複合材料を高容量の高ニッケル正極と組み合わせると、エネルギー密度は300Wh/Kg以上に達することができ、これに適用する電解液も生まれて、リチウムイオン二次電池の電解液に関する研究のホットスポットになっている。
【0004】
フルオロエチレンカーボネートは、シリコン炭素負極の表面に均一で安定的なSEI膜を形成可能であるが、(電池の膨らみと電極シートの粉体化が深刻である)シリコン炭素負極材料の特殊性のため、その電解液システムには、往々にして黒鉛負極システムよりも多くの成膜添加剤が必要となり、通常はフルオロエチレンカーボネートを大量に使用することが必要とされる。しかし、フルオロエチレンカーボネートは、高温環境や高ニッケルの正極の電池システムで分解しやすく、電池の高温での使用要件を満たすことができないことなど、フルオロエチレンカーボネートを単独で使用することには様々なデメリットがある。フルオロエチレンカーボネートを含むリチウムイオン二次電池の高温貯蔵過程における膨らみ問題を解決するために、中国特許出願公開第201110157665号では、電解液に有機ジニトリル類物質(NC-(CH2)n-CN、ここで、n=2~4)を添加することにより、膨らみを抑制している。米国特許出願公開第2008/0311481号は、2つのニトリル基を含むエーテル/アリール基化合物を公開しており、電池の高電圧及び高温条件下での膨らみが改善され、高温貯蔵性能が改善されている。しかし、ニトリル類化合物は三元系高ニッケル正極システムに応用されると、電池の分極を促進し、サイクル性能及び低温特性を大幅に劣化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第201110157665号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0311481号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のリチウムイオン電池では高温条件で電解液が酸化分解することにより、電池の高温貯蔵性能と低温放電性能を両立させることができないという問題を解決することを目的とすし、そのための電池の電解液用添加剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のもう1つの目的は、上述した電池の電解液用添加剤を含むリチウムイオン電池の電解液、及びリチウムイオン電池を提供することである。
上記の発明の目的を実現するために、本発明で採用された技術的解決策は下記のとおりである。
【0008】
本発明の第1の態様は、電池の電解液用添加剤であって、前記添加剤が、以下の構造式(1)~(7):
【化1】
で表される化合物から選択される少なくとも1つを含む、電池の電解液用添加剤の提供である。
【0009】
本発明の第2の態様は、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含むリチウムイオン電池の電解液であって、前記添加剤が、以下の構造式(1)~(7):
【化2】
で表される化合物から選択される少なくとも1つを含む、リチウムイオン電池の電解液の提供である。
【0010】
好ましくは、前記構造式(1)~(7)で表される化合物から選択される少なくとも1つを第1類の添加剤とし、且つ前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記第1類の添加剤の含有量の質量百分率は0.05%~2%である。
【0011】
好ましくは、前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、及び硫酸プロピレンからなる群から選択される少なくとも1つの第2類の添加剤をさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記添加剤の含有量の質量百分率の合計は15%以下である。
【0013】
好ましくは、前記非水有機溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、及びδ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンから選択される少なくとも1つを含む。
【0014】
好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記非水有機溶媒の含有量の質量百分率の合計は55%~75%である。
【0015】
本発明の第3の態様は、リチウムイオン電池であって、前記リチウムイオン電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、且つ前記電解液は、前記のリチウムイオン電池の電解液である、リチウムイオン電池の提供である。
【0016】
好ましくは、前記正極活物質は遷移金属酸化物であり、前記負極活物質は黒鉛及びSiを含む複合材料またはチタン酸リチウムである。
【0017】
好ましくは、前記遷移金属酸化物はLiNixCoyMnzL(1-x-y-z)O2であり、LはAl、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、及びFeから選択される1つであり、ここで、x、y、zは、0≦x<1、0<y≦1、0≦z<1であり、且つ0<x+y+z≦1である。
【0018】
本発明により提供される電池の電解液用添加剤は、以下の構造式(1)~(7)で表される化合物から選択される少なくとも1つを含む。構造式(1)~(7)で表される化合物のいずれにも硫酸エチレン(DTD)構造が含まれ、その上で、硫酸エチレン環の少なくとも1つの炭素原子が、硫酸エチレン基、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサニル基、エステル基、シロキサン基、フッ素置換フェニレンエーテル基のうちの1つに結合しており、電解液の添加剤として最初の充電過程において電極表面に保護膜を成形させ、電池の出力性能を向上させる。具体的には以下のとおりである。
【0019】
DTD構造の炭素原子に少なくとも1つのDTD構造が結合した化合物(例えば、式(1)の構造で表される化合物、式(4)の構造で表される化合物、式(6)の構造で表される化合物)は、単一のDTD構造の化合物と比較して、2つの分子が共重合されたDTD構造が、分子構造の安定性を向上させ、反応活性を低下させて、小電流でプリチャージすると、より薄く、より高密度で、より安定したSEIを形成し、電池の出力性能を総合的に改善する。
【0020】
DTD構造の炭素原子に-CO2CH3含有基が結合した化合物(例えば、式(3)の構造で表される化合物)は、-CO2CH3基がDTD環構造のC-Oに結合された「エチルオキシセグメント」を形成し、小電流でプリチャージすることにより形成されたSEI膜の成分の中のエチルオキシセグメントを増加させ、リチウム伝導性を向上させ、これにより電池の抵抗を低下させ、電池の電力特性を向上させる。
【0021】
DTD構造の炭素原子に-CHCH2O2C(CH3)2が結合された化合物(例えば、式(2)の構造で表される化合物、式(5)の構造で表される化合物、式(6)の構造で表される化合物、式(7)の構造で表される化合物)は、その[CHCH2O2C(CH3)2]基自体がエチルオキシセグメントを含み、分子構造におけるエチルオキシセグメントの増加により、形成されたSEI膜の成分の中のエチルオキシセグメントを増加させ、リチウム伝導性を向上させ、これにより電池の抵抗を低下させ、電池の電力特性を向上させる。
【0022】
特に、DTD構造の炭素原子に結合した基が、式(5)の構造で表される化合物のようなアルキルシリコン基をさらに含有する化合物の場合、前記ケイ素含有基は、電解液中の活性プロトン水素を含有するHFやH2Oを効果的に除去することができ、同時に、電極表面の皮膜形成に関与し、これにより単一の添加剤の多機能効果が実現され、電池の出力性能を全面的に向上させる。
【0023】
また、構造式(1)~(7)で表される化合物は、硫酸エチレン環の少なくとも1つの炭素原子が、硫酸エチレン基、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサニル基、エステル基、シロキサン基、フッ素置換フェニレンエーテル基のうちの1つに結合しており、硫酸エチレン(DTD)構造の小員環の張力が緩和が、分子活性が低下されている。単一のDTDと比較して、構造式(1)~(7)で表される化合物の活性が低下するため、電解液に添加したときに変色しにくい。
【0024】
本発明により提供されるリチウムイオン電池の電解液は、本発明に記載の電池の電解液用添加剤を含み、電極(正極および負極)の表面に低抵抗の保護膜を形成し、電極と電解液との間の副反応を抑制し、界面抵抗を低減し、高温及び低温性能(優れた低温放電性能、及び優れたサイクル性能及び高温貯蔵性能を有すること)を両立させ、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明により提供されるリチウムイオン電池は、本発明に記載のリチウムイオン電池の電解液を含むため、リチウムイオン電池のサイクル性能及び低温放電性能を著しく向上させ、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させることができる。
【0026】
本発明の実施形態に係る技術的解決策をより明らかに説明するために、以下、実施例または従来技術の説明に使用する必要がある図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な工夫をせずに、他の図面もまた、これらの図面から得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の実施例6、比較例1、比較例2の容量微分曲線図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例6、比較例1、比較例2の異なるSOC(充電状態)におけるDCR(直流内部抵抗)の結果図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例により提供される電解液が室温(25℃±3)で30日間保存された結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明が解決しようとする技術的課題、技術的解決策および発明の効果をより分かりやすくするために、以下に実施例を参照しながら、さらに本発明を詳細に説明する。ここで説明される具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明を限定するためのものではないことを理解すべきである。
【0029】
本発明の説明おいて、「第1」、「第2」という用語は、説明の目的だけに用いられ、相対的な重要性を示すまたは示唆するか、あるいは示された技術的特徴の数を黙示的に示すためのものと理解してはいけない。したがって、「第1」、「第2」と限定された特徴は、1つまたは複数の該特徴を明示的または暗黙的に含むことができる。本発明の説明において、明確的かつ具体的に限定されない限り、「複数」とは、二つ以上を意味する。
【0030】
本発明の実施例明細書に言及された関連成分の重量は、各成分の特定の含有量を示すだけでなく、成分の重量間の比例関係を表すこともでき、したがって、本発明の実施例明細書に従って関連成分の含有量が比例的にスケールアップまたはスケールダウンされたものはすべて本発明の実施例明細書が開示した範囲内である。具体的には、本発明の実施例明細書に言及された重量は、化学分野で公知のμg、mg、g、kgなどの質量単位であり得る。
【0031】
本発明の実施例の第1の態様は、電池の電解液用添加剤であって、前記添加剤は以下の構造式(1)~(7)で表される化合物の少なくとも1つを含む電池の電解液用添加剤を提供する。
【化3】
【0032】
本発明の実施例により提供される電池の電解液用添加剤は、以下の構造式(1)~(7)で表される化合物の少なくとも1つを含む。構造式(1)~(7)で表される化合物のいずれにも硫酸エチレン(DTD)構造が含まれ、その上で、硫酸エチレン環の少なくとも1つの炭素原子が、硫酸エチレン基、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサニル基、エステル基、シロキサン基、フッ素置換フェニレンエーテル基のうちの1つに結合しており、電解液の添加剤として最初の充電過程において電極表面に保護膜を成形させ、電池の出力性能を向上させる。具体的には以下のとおりである。
【0033】
DTD構造の炭素原子には少なくとも1つのDTD構造(例えば、式(1)の構造で表される化合物、式(4)の構造で表される化合物、式(6)の構造で表される化合物)が結合され、単一のDTD構造と比較して、2つの分子が共重合されたDTD構造が、分子構造の安定性を向上させ、反応活性を低下させ、小電流でプリチャージすると、より薄く、より高密度で、より安定したSEIが形成され、電池の出力性能が総合的に改善される。
【0034】
DTD構造の炭素原子には-CO2CH3含有基(例えば、式(3)の構造で表される化合物)が結合され、-CO2CH3基がDTD環構造のC-Oに結合された「エトキシセグメント」が形成され、小電流でプリチャージすることにより形成されたSEI膜の成分の中のエトキシセグメントを増加させ、リチウム伝導性を向上させ、これにより電池の抵抗を低下させ、電池の電力特性を向上させる。
【0035】
DTD構造の炭素原子には-CHCH2O2C(CH3)2(例えば、式(2)の構造で表される化合物、式(5)の構造で表される化合物、式(6)の構造で表される化合物、式(7)の構造で表される化合物)が結合され、この[CHCH2O2C(CH3)2]基の自体はエトキシセグメントを含み、分子構造におけるエトキシセグメントの増加は、形成されたSEI膜の成分の中のエトキシセグメントを増加させることができ、リチウム伝導性を向上させ、これにより電池の抵抗を低下させ、電池の電力特性を向上させる。
【0036】
特に、DTD構造の炭素原子に結合した基が、式(5)の構造で表される化合物のようなアルキルケイ素基をさらに含有する場合、前記ケイ素含有基は、電解液中の活性プロトン水素を含有するHFやH2Oを効果的に除去することができ、同時に、電極表面の皮膜形成に関与し、これにより単一の添加剤の多機能効果を実現し、電池の出力性能を全面的に向上させる。
【0037】
また、構造式(1)~(7)で表される化合物は、硫酸エチレン環の少なくとも1つの炭素原子が、硫酸エチレン基、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサニル基、エステル基、シロキサン基、フッ素置換フェニレンエーテル基のうちの1つに結合しており、硫酸エチレン(DTD)構造の小員環の張力を緩和し、分子活性を低下させることができる。単一のDTDと比較して、構造式(1)~(7)で表される化合物の活性が低下するため、電解液に添加したときに変色しにくい。
【0038】
本発明の実施例の第2の態様は、非水有機溶媒、リチウム塩及び添加剤を含むリチウムイオン電池の電解液であって、前記添加剤は、以下の構造式(1)~(7)で表される化合物の少なくとも1つを含むリチウムイオン電池の電解液を提供する。
【化4】
【0039】
本発明の実施例により提供されるリチウムイオン電池の電解液は、本発明に記載の電池の電解液用添加剤を含み、電極(正極および負極)の表面に低抵抗の保護膜を形成し、電極と電解液との間の副反応を抑制し、界面抵抗を低減し、高温及び低温性能(優れた低温放電性能、並びに優れたサイクル性能及び高温貯蔵性能を有すること)を両立させ、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上することができる。
【0040】
以下、前記のリチウムイオン電池の電解液の各成分について、それぞれ詳細に説明する。
【0041】
非水有機溶媒
水はリチウムイオン電池SEIの形成及び電池性能に一定の影響を与え、具体的には電池容量が小さくなったり、放電時間が短くなったり、内部抵抗が増加したり、サイクル容量が減衰したり、電池が膨らんだりし得る。本発明の実施例では、非水有機溶媒を電解液の溶媒成分として採用する。
【0042】
好ましくは、前記非水有機溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、炭酸メチルプロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、及びε-カプロラクトンから選択される少なくとも1つを含む。
【0043】
さらに好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記非水有機溶媒の含有量の質量百分率の合計は55%~75%である。
【0044】
リチウム塩
本発明の実施例において、前記リチウム塩は、リチウムイオン電池でよく使用されるリチウム塩から選択されてよく、ヘキサフルオロリン酸リチウム、過塩素酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドから選択される一つまたは複数を含むが、これらに限定されない。さらに、前記リチウム塩の含有量は、リチウムイオン二次電池の電解液中の質量百分率の10%~18%を占める。
【0045】
添加剤
本発明の実施例において、前記添加剤は主に最初の充放電の時の成膜性能を向上させるために用いられる。
【0046】
本発明の実施例に記載の添加剤は、構造式(1)~(7)で表される化合物の少なくとも1つを含む。構造式(1)~(7)で表される化合物のいずれにも硫酸エチレン(DTD)構造が含まれ、その上で、硫酸エチレン環の少なくとも1つの炭素原子が、硫酸エチレン基、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサニル基、エステル基、シロキサン基、フッ素置換フェニレンエーテル基から選択される1つの基に結合しており、電解液の添加剤として最初の充電過程において電極表面に保護膜を成形させ、電池の出力性能を向上させる。具体的には以下のとおりである。
【0047】
DTD構造の炭素原子に少なくとも1つのDTD構造が結合した化合物(例えば、式(1)の構造で表される化合物、式(4)の構造で表される化合物、式(6)の構造で表される化合物)は、単一のDTD構造と比較して、2つの分子が共重合されたDTD構造により、分子構造の安定性が向上し、反応活性が低下されており、小電流でプリチャージすると、より薄く、より高密度で、より安定したSEIを形成し、電池の出力性能を総合的に改善する。
【0048】
DTD構造の炭素原子に-CO2CH3含有基が結合した化合物(例えば、式(3)の構造で表される化合物)は、-CO2CH3基がDTD環構造のC-Oに結合されて「エチルオキシセグメント」が形成されており、小電流でプリチャージすることにより形成されたSEI膜の成分の中のエチルオキシセグメントを増加させ、リチウム伝導性を向上させ、これにより電池の抵抗を低下させ、電池の電力特性を向上させる。
【0049】
DTD構造の炭素原子に-CHCH2O2C(CH3)2が結合した化合物(例えば、式(2)の構造で表される化合物、式(5)の構造で表される化合物、式(6)の構造で表される化合物、式(7)の構造で表される化合物)は、この[CHCH2O2C(CH3)2]基自体がエチルオキシセグメントを含み、分子構造におけるエチルオキシセグメントの増加により、形成されたSEI膜の成分の中のエトキシセグメントを増加させることができ、リチウム伝導性を向上させ、これにより電池の抵抗を低下させ、電池の電力特性を向上させる。
【0050】
特に、DTD構造の炭素原子に結合した基が、式(5)の構造で表される化合物のようなアルキルケイ素基をさらに含有する化合物の場合、前記ケイ素含有基は、電解液中の活性プロトン水素を含有するHFやH2Oを効果的に除去することができ、同時に、電極表面の皮膜形成に関与し、これにより単一の添加剤の多機能効果を実現し、電池の出力性能を全面的に向上させる。
【0051】
また、構造式(1)~(7)で表される化合物は、硫酸エチレン環の少なくとも1つの炭素原子が、硫酸エチレン基、2,2-ジメチル-1,3-ジオキサニル基、エステル基、シロキサン基、及びフッ素置換フェニレンエーテル基から選択される1つの基に結合しており、硫酸エチレン(DTD)構造の小員環の張力が緩和され、分子活性が低下されている。単一のDTDと比較して、構造式(1)~(7)で表される化合物の活性が低下しているため、電解液に添加したときに変色しにくい。
【0052】
好ましくは、前記構造式(1)~(7)で表される化合物から選択される少なくとも1つを第1類の添加剤とし、且つ前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記第1類の添加剤の含有量の質量百分率は0.05%~2%である。前記第1類の添加剤の含有量の質量百分率が0.05%未満である場合、電極表面に安定した保護膜を形成できず、「電極と電解液との間の副反応を抑制し、界面のインターダンスを低減し、電池の出力性能を全面的に向上させる」という改善効果に達することができず、さらに、高ニッケルとシリコン炭素とを組み合わせるシステムの電池の出力性能を改善できない。前記第1類の添加剤の含有量の質量百分率が2%より高い場合、電極表面に形成される保護膜が厚すぎ、電池の分極が促進され、電池性能が劣化する。
【0053】
本発明の実施例において、前記構造式(1)~(7)で表される化合物の少なくとも1つを添加剤とすることに加えて、他の添加剤をさらに添加することによって、リチウムイオン電池の性能を最適化させることができる。好ましくは、前記添加剤は、フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、及び硫酸プロピレンからなる群から選択される少なくとも1つの第2類の添加剤をさらに含む。
【0054】
さらに好ましくは、前記電解液の全質量を100%として計算すると、前記添加剤の含有量の質量百分率の合計は15%以下である。これに加えて、いずれかの好ましい添加剤(フルオロエチレンカーボネート、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-プロペンスルトン、硫酸エチレン、又は硫酸プロピレン)の含有量の質量百分率は単独で前記電解液の全質量の0.1%~10%を占める。
【0055】
また、本発明の実施例の第3の態様は、リチウムイオン電池であって、前記リチウムイオン電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、且つ前記電解液は、前記のリチウムイオン電池の電解液である、リチウムイオン電池の提供である。
【0056】
本発明の実施例により提供されるリチウムイオン電池は、本発明によるリチウムイオン電池の電解液を含むため、リチウムイオン電池のサイクル性能及び低温放電性能を著しく向上させ、リチウムイオン電池の全体的な出力性能を向上させることができる。
【0057】
本発明の実施例において、前記電解液の構成、各構成成分の選択、含有量、好ましい種類及びその選択の根拠は、上記したとおりであり、ここでは、スペースを節約するために繰り返さないことにする。
【0058】
前記正極は正極活物質を含み、本発明の実施例では、リチウムイオン電池に従来から使用されている正極活物質のいずれも使用することができる。しかし、好ましくは、前記正極活物質は遷移金属酸化物を選択する。
【0059】
具体的に好ましくは、前記遷移金属酸化物はLiNixCoyMnzL(1-x-y-z)O2であり、LはAl、Sr、Mg、Ti、Ca、Zr、Zn、Si、及びFeから選択される1つであり、ここで、x、y、zは、0≦x<1、0<y≦1、0≦z<1であり、且つ0<x+y+z≦1である。
【0060】
前記負極は負極活物質を含み、本発明の実施例では、リチウムイオン電池に従来から使用されている負極活物質のいずれも使用することができる。好ましくは、前記負極活物質は黒鉛及びSiを含む複合材料またはチタン酸リチウムである。
【0061】
前記セパレータの選択は、単層ポリエチレン(PE)、単層ポリプロピレン(PP)、二層PP/PE、三層PP/PE/PP、又はセラミックのセパレータを含むが、これらに限定されない。
【0062】
以下、具体的な実施例と併せて説明する。
【実施例】
【0063】
各実施例において、英語の略語の説明は以下のとおりである。
EC:炭酸エチレン
EMC:炭酸エチルメチル
DMC:炭酸ジメチル
LiPF6:ヘキサフルオロリン酸リチウム
P1:リン酸アリル
【0064】
各実施例において、使用される添加剤の構造及びそれに対応するアルファベット番号を、以下の表1に示す。
【表1】
【0065】
実施例1
リチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、電解液と、を含み、ここで、正極活物質はニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM811)材料であり、負極活物質はシリコンカーボン複合材料(Si/C)であり、前記リチウムイオン二次電池の製造方法は以下のステップを含む。
【0066】
正極活性材料NCM811、導電性カーボンブラック、及び接着剤であるポリフッ化ビニリデンを、96.8:2.0:1.2の質量比で混合し、N-メチル2-ピロリドンに分散させ、正極スラリーを得た。この正極スラリーをアルミ箔の両面に均一に塗布し、バッキングドライ、圧延および真空乾燥をを施し、そしてアルミニウムリード線を超音波溶着機によって溶接した後、正極板(正極シート)を得た。極板の厚さは135~160μmの間である。
【0067】
シリコン炭素複合材料、導電性カーボンブラック、接着剤であるスチレンブタジエンゴム及びカルボキシメチルセルロースを、96:1:1.2:1.8の質量比で混合し、脱イオン水に分散させ、負極スラリーを得た。この負極スラリーを銅箔の両面に塗布し、バッキングドライ、圧延および真空乾燥を施し、そしてニッケルリード線を超音波溶着機によって溶接した後、負極板(負極シート)を得た。極板の厚さは135~160μmの間である。
【0068】
炭酸エチレン(EC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ジメチル(DMC)を、2:1:7の質量比で混合し、混合後、電解液の全質量に基づいて12.5%のヘキサフルオロリン酸リチウムを加え、電解液の全質量に基づいて1%のD1を加え、電解液を調製する。
【0069】
厚さが14μmのPPであるベースフィルムを使用し、2μmのAl2O3が片面に塗布されて得られたセラミックのセパレータを採用する。
【0070】
得られた正極シート、セパレータ、負極シートを自動捲取機に置き、巻き取ってベアセルを得る。ベアセルを円筒状の鋼製のケースに入れ、負極タブ及びキャップタブを溶接し、上記で調製した電解液が乾燥された後のベアセルに注入し、封止、静置、予備充電、エージング及び容量ランク選別を行って、リチウムイオン二次電池(21700-4.8Ah)の製造を完成させる。
【0071】
実施例2~実施例10
実施例2~実施例10において、電解液の成分が異なる以外、正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオン二次電池の製造は、実施例1と同じであり、各実施例における第1類の添加剤(化合物(1)~(7)から選択される少なくとも1つ)の選択及びその含有量は表2に示すとおりである。
【0072】
比較例
比較例1及び比較例2において、電解液中の添加剤の種類及び(電解液の全質量に基づく)含有量が異なる以外、正極、負極、セパレータ、及びリチウムイオン二次電池の製造は、実施例1と同じであり、比較例1及び比較例2における非水有機溶媒、並びに添加剤の種類及び含有量は表2に示すとおりである。
【0073】
実施例1~実施例10、比較例1及び比較例2で製造されたリチウムイオン二次電池について、評価・試験の方法は以下のとおりである。
1)容量微分曲線
電池を充填して封止し、48h放置した後、電池をAbinテストベンチ内で0.1Cの定電流で4.2Vまでプリチャージし、その後、2.75Vまで放電し、容量-電圧曲線を導き出した後、スクリーニング及び微分処理を行い、dQ/d V~V曲線を得る。
【0074】
2)サイクル性能試験:25±2℃/45℃±2℃で、容量ランク選別を行った後の電池を0.5Cの定電流、定電圧で4.2V(遮断電流0.01C)まで充電し、その後、1Cの定電流で2.75Vまで放電させる。充/放電をN回サイクル行った後、第N回サイクルの容量維持率を計算する。計算式は以下のとおりである。
第N回サイクルの容量維持率(%)=(第N回サイクルの放電容量/第1回サイクルの放電容量)×100%
【0075】
3)高温貯蔵性能:容量ランク選別を行った後の電池を室温で0.5Cの定電流、定電圧で4.2V(遮断電流0.01C)まで充電し、電池の初期の放電容量を測定し、そして60℃で7日間貯蔵した後、0.5Cで2.75Vまで放電させ、電池の維持容量及び回復容量を測定する。計算式は以下のとおりである。
電池容量維持率(%)=維持容量/初期容量×100%
電池容量回復率(%)=回復容量/初期容量×100%
【0076】
4)低温放電:室温で0.5Cの定電流、定電圧で4.2Vまで充電し、5分間放置し、0.2Cで2.75Vまで放電させ、電池の初期容量を検出する。5分間放置し、0.5Cの定電流、定電圧で4.2V(遮断電流0.01C)まで充電する。電池を‐20℃の低温槽で6時間放置し、そしてこの条件で0.2Cで2.75Vまで放電させ、低温での放電容量を検出する。
低温放電維持率(%)=低温放電容量/初期容量×100%
【0077】
【0078】
電池システムがNCM811とシリコンカーボン複合材料とを組み合わせたものである、実施例1~10と、比較例1及び比較例2とを比較分析する。表2から、本発明の技術的解決策を採用した実施例1から実施例10は、良好なサイクル性能、高温貯蔵性能及び低温放電性能を有すること、それに対して、比較例1及び比較例2の電解液を採用したリチウムイオン電池は、出力性能が悪く、高温性能及び低温性能と、サイクル性能とを両立させることができないことが分かる。
【0079】
具体的には、各実施例と比較例1とを比較すると、上述した構造の化合物を含有する実施例1から実施例10は、各実施例の低温放電性能、高温サイクル、常温サイクル、及び高温貯蔵性能がすべて比較例1よりも大幅に優れている。これは、D1、D2、D4、D4、D5、D6、D7、D1+D7の存在が、電池の総合的な出力性能を効果的に改善できることを示している。
【0080】
比較例1及び比較例2並びに実施例6の電池の最初の充電時の容量微分曲線図をプロットした
図1に示されているとおり、比較例2では、2.7Vと2.9Vの2つの還元ピークが現れ、2.7Vは負極での添加剤P1の還元ピークであり、2.9Vの還元ピークは溶媒ECの還元に起因し、P1は、溶媒ECより優先的に還元され、そしてECの還元をある程度抑制する。P1の構造には活性の高い二重結合が3つ含まれ、X軸が同じである積分面積が大きいため、その皮膜形成抵抗が大きいと推測される;実施例6では、2.4Vと2.9Vの2つの還元ピークが現れ、2.4Vの還元ピークはDTDと同様であり、2.9Vの還元ピークは溶媒ECの還元に起因し、EC還元ピークの強度は比較例1と比較例2よりも大幅に低くなっており、それはD6の存在が、溶媒ECより優先的に還元され、溶媒ECの還元と分解を抑制し、SEI膜の成分には、より多くのエチルオキシセグメントが含まれ、リチウム伝導性が向上し、抵抗が低く、X軸が同じである対応する積分面積が小さくなる;一方、比較例1では、3.0V付近にECの還元に起因する還元ピークが現れる。
【0081】
実施例6、比較例1及び比較例2のDCRと、電池が同じであるSOCとの対応する結果図をプロットした
図2(横軸は電池の充電状態であるSOCを表し、縦軸は直流抵抗であるDCRを表す)に示されているとおり、電池が10%~100%のSOCである時に、実施例6(D6)のDCR<比較例1のDCR<比較例2(P1)のDCRである。D6皮膜形成成分にはPEO基セグメントが含まれていることにより、リチウム伝導性が向上するため、電池の抵抗が低下する。
【0082】
実施例6、比較例1、比較例2により提供された電解液を25℃±3で30日間保存した結果を
図3に示すが、比較例1、比較例2により提供された電解液がいずれも著しく変色したが、実施例6により提供された電解液は大きく変色することはなかった。これは、D6添加剤が、安定性が高く、常温で放置しても酸化や変色しにくいことを示している。
【0083】
上記の説明は、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、本発明の精神および原則の範疇においてなされたあらゆる修正、等価置換及び改良などは、本発明の保護範囲に含まれるべきである。