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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】電気流体力学システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20231023BHJP
   F28F 13/16 20060101ALI20231023BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28F13/16
H01L23/46 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022525077
(86)(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2020081239
(87)【国際公開番号】W WO2021089757
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】1951280-5
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518251479
【氏名又は名称】エイピーアール、テクノロジーズ、アクチボラグ
【氏名又は名称原語表記】APR TECHNOLOGIES AB
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】ミーケル、アンテリユス
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク、レーフグレーン
(72)【発明者】
【氏名】アル、ビョルネクレット
(72)【発明者】
【氏名】ペーテル、ニルソン
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、トーシュルンド
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-506123(JP,A)
【文献】特表2000-515911(JP,A)
【文献】特開2000-222072(JP,A)
【文献】米国特許第04396055(US,A)
【文献】英国特許出願公告第01274875(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0166360(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0138901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00 - 15/06
F28F 11/00 - 19/06
H01L 23/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EHD(Electrohydrodynamics:電気流体力学)熱管理システム(100)において使われる、誘電性流体の1つ以上の性質を変える方法であって、
前記システムは、放射源と、前記誘電性流体をポンプする少なくとも2つの電極を含む、少なくとも1つのEHDポンプ装置(110)と、前記システム内の前記流体を収容する、少なくとも1つの囲い(120)とを備え、
前記方法は、
前記誘電性流体を放射源からのイオン化照射(122)に曝すことであって、前記イオン化照射は誘電性流体をイオン化するように構成されていることと、
前記囲いの中で曝した前記流体を循環するようにポンプ装置を駆動することと、
を含み、
前記誘電性流体は、
前記囲いの壁部が前記イオン化照射に曝される、前記囲いの一部と、
前記囲いの中に位置する物質(130)により前記誘電性流体がイオン化照射に曝される、前記囲いの中と、
の少なくとも1つで、放射源からのイオン化照射に曝される、方法。
【請求項2】
前記イオン化照射は、放射性同位元素と電気的に生成されたX線放射の少なくとも1つから生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘電性流体は、フッ素化流体(fluorinated fluid)と炭化水素流体(hydrocarbon fluid)からなるグループから選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記誘電性流体は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記囲いは、前記流体の循環流を搬送する囲まれた導管として形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ポンプ装置は、導管の断面全体を覆うように配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの電極は、グリッド構造として形成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
放射源と、誘電性流体をポンプするための少なくとも2つの電極を含む、少なくとも1つのポンプ装置(110)と、前記流体を収容するための少なくとも1つの囲い(120)を備えるEHD(Electrohydrodynamics:電気流体力学)熱管理システム(100)であって、
前記EHD熱管理システムは、前記誘電性流体を放射源からのイオン化照射(122)に曝してイオン化させるように構成され、
前記誘電性流体は、
前記囲いの壁部が前記イオン化照射に曝される、前記囲いの一部と、
前記囲いの中に位置する物質(130)により誘電性流体がイオン化照射に曝される、前記囲いの中と、
の少なくとも1つで、放射源からのイオン化照射に曝される、EHD熱管理システム。
【請求項9】
前記イオン化照射は、放射性同位元素と電気的に生成されたX線放射の少なくとも1つから生成される、請求項8に記載のEHD熱管理システム。
【請求項10】
前記誘電性流体は、フッ素化流体(fluorinated fluid)と炭化水素流体(hydrocarbon fluid)からなるグループから選択される、請求項8~9のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
【請求項11】
前記誘電性流体は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
【請求項12】
前記囲いは、前記流体の循環流を搬送する囲まれた導管として形成される、請求項8~11のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
【請求項13】
前記ポンプ装置は、導管の断面全体を覆うように配置される、請求項12に記載のEHD熱管理システム。
【請求項14】
前記少なくとも2つの電極は、グリッド構造として形成されている、請求項8~13のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気流体力学(EHD:Electrohydrodynamics)に関連し、詳しくは、発熱部品の熱管理に対するEHD使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばコンピューティングシステム、電気自動車、衛星、電子機器などにおいて、電子部品はサイズと性能面で常に改善されている。しかしながら、電子システムの性能は利用可能な熱管理方法のため制限されることが多い。部品が小さくなって、消費電力が高くなることは、より小さな領域により大きい発熱が生ずることを意味する。その結果、部品を適切な温度範囲内に保つために、より効率的な熱管理が必要となる。言い換えると、体積要件とエネルギーの両面において、より効率を上げる必要性が高まっている。
【0003】
この問題を解決するための1つの試みは、EHD熱管理システムを使い、電界を利用して誘電性流体内に流れを作ることである。これは、例えば、従来のファン冷却より効率的であるかもしれない。しかしながら、今のEHDシステムが、熱管理流体を循環させることにより比較的エネルギー効率の良い熱管理を提供していても、EHD熱管理システムにおいて、効率を上げる必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の1つの目的は、EHD熱管理システムにおいて使われる、誘電性流体の1つ以上の性質を変える方法を提供することである。システムは、誘電性流体をポンプする少なくとも2つの電極を含む、少なくとも1つのEHDポンプ装置と、システム内の流体を収容する少なくとも1つの囲いを備えてもよい。方法は、誘電性流体をイオン化するように構成されたイオン化プロセスに誘電性流体を曝すステップと、曝された流体をEHDシステム内で循環するように、若しくは少なくとも流れるようにポンプ装置を駆動するステップを含んでもよい。例えば、イオン化プロセスは誘電性流体のイオン化照射を含んでもよい。
【0005】
誘電性流体は、囲いの壁部がイオン化プロセスに曝される囲いの一部と、曝した後にEHD熱管理システムに流体が加えられるEHD熱管理システムから離れた位置と、囲いの中に位置する物質によって誘電性流体がイオン化プロセスに曝される囲いの中と、の少なくとも1つでイオン化プロセスに曝される。
【0006】
本発明は、誘電性流体をイオン化するように構成されたイオン化プロセスに曝すことによりポンプ効率が向上する可能性に対する発見に基づいている。これで、イオン化していない液体と比べて、向上した流量及び高い冷却効果を期待できる。
【0007】
提案されるEHDシステムは、誘電性流体が保持された囲いとの中に配置された又は接続された、少なくとも1つのポンプ装置を有してもよい。冷却を必要とする部品又は領域から、熱エネルギーを移送するために誘電性流体を流すことにより、冷却効果が得られる。同様に、加熱を必要とする部品又は領域に、熱エネルギーを移送するために誘電性流体を流すことにより、加熱効果が得られる。1つの例では、例えば熱交換器や放熱板等を備えて、誘電性流体が熱生成側と冷却側との間を循環し得るように、EHDシステムを構成してもよい。
【0008】
ポンプ装置は、流体内に流れを作るように構成されてもよい。ポンプ装置は少なくとも2つの電極で構成されてもよく、これらの電極のうち第2の電極が、これらのうち第1の電極からみて下流方向に位置するように、お互い離れていてもよい。2つの電極は、誘電性流体に影響を与える界を生成して、流れを作るように電圧源に接続可能とされてもよい。流量は電極に与えられる電圧の変化をもって変えてもよい。電圧を下げると、流体は勢いを失い、流れは弱まる。従って、電圧を制御することでシステムの冷却効果を制御することができる。
【0009】
好ましくは、エミッタ電極等の少なくとも1つの電極(複数可能)を、流れの方向からみた高さが、流れの方向から見て直交する幅より広く伸びるようにしてもよい。この構成は、電極の間の流体を加速させる根本的なメカニズムだと信じられるコロナ放電に関して、電界性質を向上することができる。
【0010】
ここで、「イオン化プロセス」とは、誘電性流体をイオン化するように構成されたプロセスを意味する。より詳しくは、イオン化プロセスは、十分なエネルギーを運ぶ放射プロセスに誘電性流体を曝すことを含んでもよく、若しくは原子や分子から電子を引き離してもよい。イオン化プロセスは誘電性流体のイオン化照射を含んでもよい。あるいは、イオン化プロセスは、又は照射(放射)と組み合わせて、誘電性流体を1つ以上のイオン化添加剤の添加対象とすることを含んでもよい。従って、特定の物理モデルを黙認せずに、誘電性流体をイオン化プロセスに曝すことは、流体をイオン化させ、もっと簡単にイオン化可能な分子の鎖に分解することと信じられる。EHDシステムにおいて、この誘電性流体の性質の変化を利用すると、EHD装置の電界で誘導されたポンプ効果が向上し、誘電性流体がイオン化プロセスに曝されなかった場合と比べて流体は高い速度で流れるようになる。熱管理システムにおいて、増加した流量は、より大きい冷却効果と向上した電力効率を意味する。
【0011】
EHDシステムの寿命において誘電性流体は様々なステップでイオン化されてもよいことを理解されたい。さらに、イオン化はまたEHDシステム内外の様々な位置で行われてもよい。例えば、誘電性流体はシステム内に位置しながら、システム全体、又は囲いなどの一部が外からの放射に曝されてもよい。他の例では、誘電性流体は、囲いから離れた位置で放射やイオン化添加剤に曝されて、後にシステムに加えられてもよい。また他の例では、システムに少量の放射性物質又はイオン化添加剤を、好ましくは囲いの中に加えて、システム内で流れる誘電性流体をイオン化に曝してもよい。これはシステムの寿命において誘電性流体を連続的に曝すことを可能とする。
【0012】
発明の第二の態様において、少なくとも1つのポンプを有して、上述したように構成されたEHD熱管理システムが提供される。このシステムは誘電性流体を含んでもよい。このEHD熱管理システムは誘電性流体をポンプする少なくとも2つの電極と、誘電性流体を受容する少なくとも1つの囲いを備える。EHD熱管理システムは、誘電性流体をイオン化するように構成されたイオン化プロセスに誘電性流体を曝すように構成されている。
【0013】
EHDシステムは、イオン化プロセスに曝された誘電性流体の性質を利用する。これはEHD装置の電界で誘導されたポンプ効果を向上し、誘電性流体がイオン化プロセスに曝されなかった場合と比べて流体が高い速度で流れることを可能とする。従って、提案されたEHD熱管理システムは、より大きい冷却効果と向上した電力効率を特徴とすることができる。EHDシステムのイオン化プロセスは、上述したイオン化のどのステップを含んでもよい。
【0014】
したがって、本発明の第一と第二の様態は、誘電性流体がイオン化プロセスに曝された、共通する発明の概念又は理念を共有する。
【0015】
ここで、「誘電性流体」とは、液体又は流体状の誘電物質を意味する。発明の実施形態の手段でポンプされ得る誘電性流体の例は、3MTMNovecTM(7000、7100、7200、7500、7700、72DE、71DA)、Galden(R)HT(70、110、135、72DE、71DA)、フッ素化流体(fluorinated fluid)、炭化水素流体(hydrocarbon fluid)など、又はその組み合わせを含んでもよい。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、誘電性流体は少なくとも1つの添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は液体又は固体状態であってもよい。例えば、添加剤は誘電性流体に添加、そして好ましくは中で溶解する、塩又は他の形態のイオンを含んでもよい。これにより、誘電性流体のイオン化プロセスをさらに向上することが期待できる。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、イオン化プロセスは、誘電性流体のイオン化照射を含む。本実施形態において、誘電性流体は効率的に及び/又は比較的長期間イオン化されてもよいことを理解されたい。これは、例えばイオン化プロセスに連続的に曝すことが望ましい場合において有利である。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、イオン化照射は少なくとも1つの放射性同位元素から生成される。放射性同位元素は、例えば、コボルト60又はアメリシウムを含んでもよいが、これに限定されない。イオン化照射(放射)は電気的に生成されたX線放射からさらに生成されてもよい。これは使用目的、可溶性、及び/又はコスト効率に応じてイオン化放射を選択できるので有利である。また、異なる放射性同位元素は異なるレベルのイオン化放射を提供するので、異なるシステムにも利用可能である。これにより、さらに特定の前提条件のためにカスタマイズできる、使いやすくてコスト効率の高いシステムを実現し得る。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、誘電性流体はフッ素化流体と炭化水素流体からなるグループから選択される。あるいは、誘電性流体は例示された誘電性流体と、他の分子又は添加剤の組み合わせを含んでもよい。この組む合わせによってEHD熱管理システム内の誘電性流体の効率がさらに向上する可能性を理解されたい。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、囲いは、例えば、流体の循環流を運ぶ、閉ループとして定義された囲まれた導管の形態を取ってもよい。囲いのこの特定の構成は、囲いの中の全流体を同じ方向に動かすため、より効率的な流れを作るのに有利である。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、ポンプ装置は、閉ループに構成された囲いの導管の断面全体を覆うように配置される。これは、断面において誘電性流体の最大量がポンプ装置のポンプ対象になるから有利であって、言い換えると、全流体は循環のためにはポンプ装置を通る必要がある。結果として誘電性流体の循環、そして冷却効果の向上した効率を達成することができる。また、ポンプ装置は誘電性流体内に流れを誘導することだけでなく、流れを妨害又は防ぐこともできる。言い換えると、流れの向上した制御のため、導管を開閉するスイッチとして駆動するようにポンプ装置を構成してもよい。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、ポンプの少なくとも2つの電極は、グリッド構造に配置されている。例えば、電極は共通の平面又は異なるレイヤに配置されてもよい。グリッド構造を利用することはポンプ装置の効率及び熱管理システムの制御の更なる向上を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0023】
例示のため、本発明のいくつかの実施形態について以下に説明する。
【0024】
図1は、ポンプ装置110及び囲い120を備えるEHD熱管理システム100を示す。囲い120の両端には熱源Hと冷却領域Cも表示されている。この実施形態においては、誘電性流体が保持された、囲い120の中に位置してもよいポンプ装置110によって、流れFが作られる。流れFは、熱い側Hから冷却領域Cに熱エネルギーを運ぶように、誘電性流体が熱い側Hと冷却領域Cとの間を循環する。
【0025】
図2は、1つの実施形態に係るEHD熱管理システム100を示す。ここで、ポンプ装置110、及び、誘電性流体をイオン化プロセスに曝す又はイオン化対象とする、放射源130として例示された装置が、囲い120の中に位置する。囲い120は図1に示された囲いと同様に単一のチャンバーとして形成されている。ポンプ装置110は流れFを誘導するように配置されてもよく、好ましくは囲いの壁部に比較的近い又は隣接した位置で、流体の動き又は流れFを壁部に沿った方向に誘導するように構成されてもよい。流れる誘電性流体は囲い120の中に位置する放射源130によってイオン化放射122に曝されてもよい。放射源130は、例えば、コボルト60又はアメリシウム等の放射性同位元素を含んでもよい。他の実施形態ではイオン化の手段として電気的に生成されたX線放射を利用してもよい。囲いの中に放射源130を位置させる設定は、システムの寿命において誘電性流体を連続的に曝すことを可能とする。これは誘電性流体への照射効果の寿命を延ばし、非常に長い寿命を持つEHDシステムの提供を可能とする。
【0026】
添付された図に関して説明された例は単なる例示であり、誘電性流体は異なる時間、位置、量、異なる放射源物質や誘電性流体をもって放射に曝されてもよいことに注意されたい。発明のいくつかの実施形態によると、流体はEHDシステムと離れた位置で放射に曝され、後の段階でシステムに加えられてもよい。全流体が放射に曝される必要もないことを理解されたい。いくつかの例では、システム内の流体の全体量に放射添加剤を添加する形で、曝された流体がEHDシステム内の流体に加えられてもよい。また、放射は囲いの中、若しくは囲い及び/又は全システムの外に位置する源から提供されてもよいことを理解されたい。その構成例の1つは図3に示されている。
【0027】
図3は囲い120が閉ループを介して流体を運ぶように形成された実施形態を示す。囲い120は、閉ループ内での誘電性流体の連続的で反復的な流れを可能とするように、例えば、入口と出口が繋がれた管や経路として形成されてもよい。
【0028】
図3に示されたように、ポンプ装置110は囲い120の断面全体を覆うように配置されてもよい。あるいは、ポンプ装置110は断面の一部だけを覆って、流体がポンプ装置110の側面を通るようにしてもよい。ポンプ装置110が導管120の断面全体を覆うように配置することで、全流体は循環するためにはポンプ装置を通る必要がある。その結果、ポンプ装置110は誘電性流体内に流れFを誘導するだけでなく、流れFを妨害又は防ぐこともできる。言い換えると、流れの向上した制御のため、導管120を開閉するスイッチとして駆動するようにポンプ装置110を構成してもよい。
【0029】
すでに述べたように、この例では、流体への照射122はシステムの外から提供されてもよい。図で説明されたように、囲いの一部はイオン化放射122のイオン化対象になってもよく、イオン化放射122は、囲いの壁を浸透して誘電性流体に届くようにしてもよい。他の実施形態では、放射122に囲い120が全体的に曝されるようにしてもよい。放射源130は、システムに直接位置してもよく、システムから離れていてもよい。
【0030】
〔実施形態の一覧〕
1. 電気流体力学、EHD(Electrohydrodynamics)、熱管理システム(100)において使われる、誘電性流体の1つ以上の性質を変える方法であって、
前記システムは、前記誘電性流体をポンプする少なくとも2つの電極を含む、少なくとも1つのEHDポンプ装置(110)と、前記システム内の前記流体を収容する、少なくとも1つの囲い(120)とを備え、
前記方法は、
前記誘電性流体をイオン化するように構成されたイオン化プロセス(122)に前記誘電性流体を曝すことと、
前記囲いの中で曝した前記流体を循環するようにポンプ装置を駆動することと、
を含み、
前記誘電性流体は、
前記囲いの壁部が前記イオン化プロセスに曝される、前記囲いの一部と、
曝した後に、前記EHD熱管理システムに前記流体が加えられる、EHD熱管理システムから離れた位置と、
前記囲いの中に位置する物質(130)により前記誘電性流体がイオン化プロセスに曝される、前記囲いの中と、
の少なくとも1つでイオン化プロセスに曝される、方法。
2. イオン化プロセスは、誘電性流体のイオン化照射を含む、実施形態1に記載の方法。
3. イオン化照射は、放射性同位元素と電気的に生成されたX線放射の少なくとも1つから生成される、実施形態2に記載の方法。
4. 誘電性流体は、フッ素化流体(fluorinated fluid)と炭化水素流体(hydrocarbon fluid)からなるグループから選択される、実施形態1~3のいずれか一項に記載の方法。
5. 誘電性流体は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
6. 囲いは、流体の循環流を運ぶ囲まれた導管として形成される、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
7. ポンプ装置は、導管の断面全体を覆うように配置される、実施形態6に記載の方法。
8. 少なくとも2つの電極は、グリッド構造として形成される、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
9. 誘電性流体をポンプするための少なくとも2つの電極を含む、少なくとも1つのポンプ装置(110)と、流体を収容するための少なくとも1つの囲い(120)を備える電気流体力学、EHD、熱管理システム(100)であって、
EHD熱管理システムは、誘電性流体をイオン化プロセス(122)に曝してイオン化させるように構成される、EHD熱管理システム。
10.前記誘電性流体は、
前記囲いの壁部が前記イオン化プロセスに曝される、前記囲いの一部と、
曝された後に、EHD熱管理システムに流体が加えられる、EHD熱管理システムから離れた位置と、
前記囲いの中に位置する物質(130)により誘電性流体がイオン化プロセスに曝される、前記囲いの中と、
の少なくとも1つでイオン化プロセスに曝される、実施形態9に記載のEHD熱管理システム。
11. イオン化プロセスは、誘電性流体のイオン化照射を含む、実施形態9又は10のいずれか一項に記載の方法。
12. イオン化照射は、放射性同位元素と電気的に生成されたX線放射の少なくとも1つから生成される、実施形態11に記載のEHD熱管理システム。
13. 誘電性流体は、フッ素化流体(fluorinated fluid)と炭化水素流体(hydrocarbon fluid)からなるグループから選択される、実施形態9~12のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
14. 前記誘電性流体は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、実施形態9~13のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
15. 前記囲いは、前記流体の循環流を搬送する囲まれた導管として形成される、実施形態9~14のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
16. 前記ポンプ装置は、導管の断面全体を覆うように配置される、実施形態15に記載のEHD熱管理システム。
17. 前記少なくとも2つの電極は、グリッド構造として形成されている、実施形態8~16のいずれか一項に記載のEHD熱管理システム。
図1
図2
図3