(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
A61B 1/07 20060101AFI20231023BHJP
A61B 1/06 20060101ALI20231023BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61B1/07 734
A61B1/06 531
A61B1/00 C
A61B1/06 611
(21)【出願番号】P 2022545924
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 IB2020061726
(87)【国際公開番号】W WO2021152382
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】102020101853.3
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】尾登 邦彦
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502493(JP,A)
【文献】特表2016-531432(JP,A)
【文献】特表2017-501580(JP,A)
【文献】特開2011-003594(JP,A)
【文献】特開2016-195684(JP,A)
【文献】特開2016-059402(JP,A)
【文献】特開2011-167442(JP,A)
【文献】特開2019-162165(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光のスペクトルを切り替え可能な照明装置であって、
下面および前記下面の反対側の上面を備えており、リン光体が配置されている出口層と、
各々がそれぞれの発光面から第1の発光スペクトルの第1の光を発するように構成されている複数の第1の光源と、
各々がそれぞれの発光面から前記第1の発光スペクトルとは異なる第2の発光スペクトルの第2の光を発するように構成されている複数の第2の光源と
を備え、
前記第1の光源および前記第2の光源は、複数の単位セルに配置され、
前記単位セルの各々は、前記第1の光源のうちの少なくとも1つと、前記第2の光源のうちの少なくとも1つとを備え、
前記単位セルの各々
内における、前記第1の光源のうちの少なくとも1つと、前記第2の光源のうちの少なくとも1つとの配置は、すべての前記単位セルにおいて同じであり、
前記複数の単位セルは、ベース領域内に第1の周期で周期的に配置され、
前記複数の第1の光源は、前記複数の第2の光源とは別に
前記照明装置の使用中に制御可能であり、
前記第1および第2の光源は、前記第1および第2の光源が前記第1および第2の光をそれぞれ発する場合に、前記下面の各位置が前記単位セルのうちの少なくとも2つの単位セルの第1の光源からの第1の光および前記単位セルのうちの少なくとも2つの単位セルの第2の光源からの第2の光によって照明されるように、前記出口層から離して配置され、
前記リン光体は、前記第1および第2の光源が前記第1および第2の光を発する場合に、合成光が前記出口層の前記上面から出るように、前記第1の光の少なくとも一部分を第1の変換光に変換するように構成され、
前記リン光体が、前記第2の光の少なくとも一部分を第2の変換光に変換するように構成される場合に、前記合成光は、前記第1の光のうちの残りの部分、前記第2の光のうちの残りの部分、前記第1の変換光、および前記第2の変換光を含み、前記第1の変換光のスペクトルは、前記第2の変換光のスペクトルとは異なり、
前記リン光体が、前記第2の光の少なくとも一部分を第2の変換光に変換するようには構成されない場合に、前記合成光は、前記第1の光のうちの残りの部分、前記第2の光、および前記第1の変換光を含み、
前記第1および第2の光源が前記第1および第2の光をそれぞれ発する場合に、前記下面へと投影された前記複数の単位セルのうちの2つの隣接する単位セルの対応する位置同士を結ぶ線上で、前記第1の光の総強度の変動が20%未満であり、前記第2の光の総強度の変動が20%未満である、照明装置。
【請求項2】
前記単位セルの各々において、
それぞれの単位セルの全ての前記第1の光源の前記発光面および全ての前記第2の光源の前記発光面が、前記ベース領域内に配置され、あるいは
それぞれの単位セルの前記第1の光源および前記第2の光源のうちの少なくとも1つの前記発光面が、前記ベース領域とは異なる高められた領域に配置され、それぞれの単位セルの残りの第1の光源の前記発光面および残りの第2の光源の前記発光面が、前記ベース領域内に配置されている、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記ベース領域に対して垂直な方向における前記リン光体の量が、前記下面上の位置に依存せず、あるいは前記下面上の位置に応じて前記第1の周期で変化する、
請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第1および第2の光源が前記第1および第2の光をそれぞれ発する場合に、前記下面の全体における前記第1の光の総強度の変動が20%未満であり、前記下面の全体における前記第2の光の総強度の変動が20%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
・前記第1の光源の各々が、それぞれのLEDであるか、あるいは前記第1の光源の各々が、入力端が
第1の光を発する発光光源に接続されたそれぞれの光ファイバの出射端である、および
・前記第2の光源の各々が、それぞれのLEDであるか、あるいは前記第2の光源の各々が、入力端が
第2の光を発する発光光源に接続されたそれぞれの光ファイバの出射端である、
の少なくとも一方である、請求項1~4のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1の光源による前記第1の光の発光および前記第2の光源による前記第2の光の発光を別々に制御するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記単位セルが、前記第1の周期で一次元的に前記ベース領域内に配置されるか、あるいは前記単位セルが、前記第1の周期を有する第1の次元および第2の周期を有する第2の次元にて前記ベース領域内に配置される、
請求項1~6のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記単位セルは、円にて一次元的に配置され、前記第1の周期は、角度周期である、請求項7に記載の照明装置。
【請求項9】
前記出口層は、前記合成光が前記円の中心の周りの180°を超える角度にて前記出口層を出るように、光拡散器として作用する、請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
人体の管腔へと挿入され、対物レンズと、前記対物レンズの周りに配置された請求項8または9に記載の照明装置とを備える内視鏡の堅固な先端またはカプセル型内視鏡。
【請求項11】
請求項10に記載の堅固な先端と、前記人体の前記管腔へと挿入される可撓管とを備え、前記堅固な先端は、前記可撓管に接続されている内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なるスペクトルで被写体を照明するための照明装置に関する。とくには、本発明は、内視鏡、とりわけ広視野対物レンズを備える内視鏡の先端部に有用な照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる色の光による撮像が、当技術分野で知られている。例えば、白色光撮像(WLI)および「スペクトル撮像」が存在する。WLIにおいて、被写体(結腸など)は白色光で照明される。対照的に、スペクトル撮像において、被写体は、白色光のスペクトル分布とは異なるスペクトル分布を有する光で照明される。例えば、実質的に紫色および緑色の光のみを含むスペクトルを使用したスペクトル撮像が知られている。
【0003】
図1が、WLIおよびスペクトル撮像の両方を可能にする先行技術による内視鏡用の照明システムを示している。この照明システムは、白色LED(ここでは、黄色リン光体で覆われた青色LEDとして示されている)と、白色LEDから分離された紫色LEDおよび緑色LEDとを備えている。スペクトル撮像においては、紫色および緑色LEDのみが光を発する。したがって、発せられる光は、左側の紫色から緑紫色を経て右側の緑色へと至る勾配を有する。WLIにおいては、白色LEDのみが光を発する。
【0004】
このような照明システムは、いくつかの欠点を有し、紫色光および緑色光の相対強度が、被写体上の位置によって変動する。さらに、白色光による照明が、被写体において、紫色および緑色LEDによる照明と異なる位置に位置する。したがって、先行技術の内視鏡を使用する医師は、同じ位置を異なる照明下で容易に観察することができない。またさらに、内視鏡の先端部に3つのLEDを収容するために、かなりのスペースが必要である。
【0005】
先行技術による別の照明システムにおいては、
図2に示されるように、複数のLED(白色LEDなど)が対物レンズの周囲に配置される。このような構成において、対物レンズの直前のスペースは、対物レンズの影によって死角となる。さらに、対物レンズが180°程度またはさらに大きい広視野を有する場合、照明システムが視野の外側部分を照明しない。したがって、照明システムの外側にさらなる死角が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術を改善することである。すなわち、本発明の一態様によれば、独立請求項に記載の照明システムが提供される。本発明のさらなる態様は、内視鏡の堅固な先端、および照明システムを備える内視鏡を提供する。さらなる詳細が、それぞれの従属請求項に記載される。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態によれば、以下の利点のうちの少なくとも1つを達成することができる。
【0008】
・WLIおよびスペクトル照明の両方を可能にする照明装置に必要な空間が少なくて済む。
・死角が減少し、あるいは完全に回避することさえ可能である。
・容易に実施できる構成である。
・必要に応じて、光源がLEDおよび/または光ファイバの出射端であってよい。
・色分布が、先行技術によるよりも均一である。
・医師が異なる照明下で位置を容易に観察することができる。
【0009】
さらなる利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【0010】
上記の修正および以下で説明される例のいずれも、代案を除外すると明確に述べられていない限り、それらが言及するそれぞれの態様に単独または組合せにて適用可能であることを理解されたい。
【0011】
さらなる詳細、特徴、目的、および利点が、添付の図面と併せて検討されるべき本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】スペクトル照明に使用される本発明のいくつかの実施形態による照明装置の単位セルの断面図を示している。
【
図4】
図3の照明装置をスペクトル照明に使用した場合の発光スペクトルを示している。
【
図5】WLIに使用される
図3による照明装置の単位セルを示している。
【
図6】
図5の照明装置をWLIに使用した場合の発光のスペクトルを示している。
【
図7】スペクトル照明に使用される本発明のいくつかの実施形態による別の照明装置の単位セルを示している。
【
図8】スペクトル照明に使用される
図7の照明装置の発光スペクトルを示している。
【
図9】WLIに使用される
図7の照明装置を示している。
【
図10】WLIに使用される
図9の照明装置の発光スペクトルを示している。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している。
【
図12】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している。
【
図14】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している。
【
図15】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している。
【
図16】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している。
【
図18】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している。
【
図19】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している。
【
図20】光源と出口層との間の最小距離をどのように計算できるかを示している。
【
図21】本発明のいくつかの実施形態によって死角がどのように減少するかを示している。
【
図22】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の動作のタイミング図を示している。
【
図23】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の動作の別のタイミング図を示している。
【
図24】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の動作のタイミング図を示している。
【
図25】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の動作の別のタイミング図を示している。
【
図26】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の動作の別のタイミング図を示している。
【
図27】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の動作の別のタイミング図を示している。
【
図28】WLIに使用される本発明のいくつかの実施形態による照明装置の発光スペクトルを示している。
【
図29】近赤外照明に使用される本発明のいくつかの実施形態による照明装置の発光スペクトルを示している。
【
図30】本発明のいくつかの実施形態による照明装置の平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で、本発明の特定の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明するが、実施形態の特徴は、とくに記載のない限り、互いに自由に組み合わせることが可能である。しかしながら、特定の実施形態の説明が、例として与えられているにすぎず、本発明を開示された詳細に限定するものとして理解されることを決して意図していないことを、明確に理解すべきである。
【0014】
図面において、同じ数字は、類似する構成要素を指し示しており、それらは異なるアルファベットによって区別される。図面は概略図にすぎない。とくには、サイズは一定の縮尺ではない。例えば、光源(LEDまたは光ファイバの出射端)は、実質的に点であってよい。
【0015】
図3が、本発明のいくつかの実施形態による照明装置の単位セルを示している。単位セルは、第1の種類の第1のLED2a(UV光を発するLEDなど)と、白色LEDなどの異なるスペクトルを発する第2のLED3aとを備える。これらのLEDの各々は、光源の一例である。単位のLEDは、出口層1aを照明する。リン光体が、出口層に配置される。リン光体は、第1のLEDからの光(第1の光)の少なくとも一部分を第1の変換光に変換する。さらに、リン光体は、第2のLEDからの光(第2の光)の少なくとも一部分を第2の変換光に変換することができる。第1の変換光は、第1の光とは異なるスペクトルを有する。第2の変換光は、第2の光とは異なるスペクトルを有する。
【0016】
例えば、
図4に示されるように、スペクトル照明の場合、UV LED2aのみが出口層を照明する一方で、白色LEDは消灯する。この場合、発光スペクトルは、波長(ピーク波長)λ3付近(例えば、400~430nm)のLED2aからの紫色または深青色光(UV光と呼ばれることもある)と、出口層1aのリン光体による変換からの緑色光(例えば、λ2:520~580nmの付近の波長)とを含む。
【0017】
白色光照明においては、第2のLED3aのみが出口層1aを照明する一方で、第1のLED2aは光を発しない。この場合、白色LEDは、
図6に破線で示されるような発光スペクトルを有するリン光体で覆われた青色LEDである。すなわち、青色領域(約440~460nmの付近のλ1)に高いピークを有し、λ2の付近の緑色領域に広い極大値を有する。出口層1aのリン光体による変換により、λ1の付近の青色光の強度が低下し、λ2の付近の広い極大値が強められ、広げられる。このようにして、白色光照明が行われる。
【0018】
図4および
図6に示したスペクトルは、あくまでも例にすぎない。異なる種類のリン光体と組み合わせられた異なる種類のLEDの他の組合せも、本発明の範囲に含まれる。1種類のリン光体ではなく、複数の種類のリン光体を出口層に用いてもよい。これらの異なる種類のリン光体は、混合されても、異なる層に配置されてもよい。
【0019】
図7~
図10が、
図3および
図5の白色LED3aが440~460nmの範囲の光を発する青色LED3bによって置き換えられている点を除いて
図3~
図6に対応する本発明のいくつかの実施形態による単位の別の例を示している。この例において、第1のLED2bおよび出口層1b内のリン光体は
図3および
図5と同じであるため、
図8に示されるスペクトル照明の場合のスペクトルは、
図4に示したものと同じである。
【0020】
しかしながら、白色光照明の場合、青色LED3bは、
図3および
図5の白色LED3aよりもさらにリン光体を励起する。したがって、白色光照明の場合の発光スペクトルは、
図10に示されるように、λ2の付近のより大きくてより広いピークを有する。
【0021】
図11が、本発明のいくつかの実施形態による照明装置を示している。
図11の照明装置においては、下面および上面を有する出口層1cが存在する。LED2cおよび3cからの光が下面を照らし、出口層に配置されたリン光体によって変換され、LED2cおよび3cから発せられた光の残りの部分と変換光との合成光が、出口層の上面から発せられる。
【0022】
照明装置は、第1の種類の複数のLED2c(第1のLED)と、第2の種類の複数のLED3c(第2のLED)とを備える。第1および第2の種類のLEDは、異なる発光スペクトルを有する。LEDは、単位セル23内に配置され、各々の単位セルは、少なくとも1つの第1のLEDと、少なくとも1つの第2のLEDとを含む。
図11の例において、各々の単位セル23は、1つの第1のLED2cおよび1つの第2のLED3cを備える。それぞれの第1および第2のLEDの配置は、全ての単位セルにおいて同じである。説明のために、いくつかのLEDの円錐状の照明が
図11に示されている。
【0023】
照明装置は、複数の単位セルを備える。単位セルは、ベース面21cに周期的に配置されている。ベース面21cは、単位セルの対応する点同士を結んだ平面である。
図11の例において、ベース面2c1は、LED2cおよび3cの発光面を含む。
【0024】
全ての第1のLED2cおよび第2のLED3cは、出口層1cから離されている。したがって、これらのLEDの各々は、リン光体を含む出口層1cのかなり大きな部分を照らすことができる。とくに、出口層1cの下面の領域33において、下面の各位置が少なくとも2つのLED3cによって照明される。これに対応して、下層の領域22において、下層の各位置が少なくとも2つの第1のLED2cによって照明される。したがって、領域22および33において、それぞれの光による照明に関して、出口層内のリン光体の比較的均一な照明を達成することができる。領域22および33の重複領域2233においては、第1のLEDおよび第2のLEDの両方による照明が、比較的均一である。
【0025】
「比較的均一」という用語は、出口層の下面を照明するそれぞれの光の総強度が、20%を超えて変動しないことを意味する。変動は10%未満、さらには5%未満であることが好ましい。出口層の下面の照明は、表面全体にわたって実質的に均一であることが好ましい。しかしながら、いくつかの実施形態によれば、照明強度は、2つの隣接する単位セル内の対応する点を下面上に投影することによって得られる下面上の線上で実質的に均一であれば充分である。投影は、ベース層が平面である場合、ベース面(ベース層)に対して垂直であってよい。
【0026】
出口層1cは、少なくとも重複領域2233において、ベース面に垂直な方向におけるリン光体の量が、下面上の位置に依存しなくてよい。あるいは、ベース面に垂直な方向におけるリン光体の量が、単位セルの配置の周期にて変動してもよい。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態は、LEDを制御するためにコントローラを備える。第1のLED2cおよび第2のLED3cは、別々に制御されてよい。すなわち、例えば、スペクトル照明の場合に、全ての単位セルの第1のLED2cのみが出口層1cの下面を照明する一方で、白色光照明においては、第2のLED3cのみが出口層の下面を照明する。随意による第3のモードにおいて、第1のLED2cおよび第3のLED3cの両方が、出口層の下面を照明することができる。制御は、オンおよびオフを含むことができるが、光強度を変動させるなどの他の動作も含むことができる。さらに、いくつかの例において、第1のLED2cのうちの特定のいくつか、および/または第2のLED3cのうちの特定のいくつかを、別々に制御してもよい。
【0028】
図12~
図18が、
図11に示した基本概念の変形例を示している。別段の記載がない限り、
図11の基本概念に関して説明した特性は、
図12~
図18にも相応に当てはまる。実質的に、
図11の概念との違いのみを、以下で説明する。
【0029】
図12は、本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示しており、
図13は、対応する平面図を示している。
図13の断面図から見て取れるとおり、1つの単位セルを構成するLED2dおよび3dが、円に配置されている。概念という点で見ると、
図13において、単位セル23cの左端と右端とが接合されている。これに対応して、出口層1dは、LED2dおよび3dが配置された仮想の円と同じ中心を有する環状である。
【0030】
図14の変形例において、
図12および
図13と同様に、出口層1eは環状であるが、断面において、下面および上面の少なくとも一方が湾曲している。
図14の例においては、上面および下面の両方が湾曲している。したがって、出口層は、LED2eおよび3eからの光ならびにそれぞれの変換光を所望の方向に向けるために、レンズのように作用することができる。
図14の照明装置についての平面図は、
図13の平面図に一致する。
【0031】
出口層をレンズ形状に形成することは、内視鏡の対物レンズが
図14の照明装置によって取り囲まれるように配置される場合にとくに有利である。好ましくは、対物レンズの光軸は、照明装置の中心線と一致する。対物レンズが広い視野(180°程度またはそれ以上、例えば225°以上、など)を有する場合に、出口層のレンズ形状は、広い立体角での照明を可能にする。さらに、出口層中のリン光体が、散乱中心として作用する。したがって、出口層は、180°を超える視野であっても対物レンズを取り囲む照明装置によって充分な照明が可能であるように、光拡散器として作用することができる。したがって、
図2に示した内視鏡の先端以外の死角を低減でき、あるいは排除することさえ可能である。同じ光拡散の効果により、
図2に示した対物レンズの前方の死角も減少させることができる。これが、
図21に示されており、
図21は、
図2の先行技術の構成を左側に繰り返し、対物レンズの周りに配置された本発明のいくつかの実施形態による照明装置を右側に示している。
【0032】
図15は、
図11、
図12、および
図14の照明装置のさらに別の変形例を示している。
図15による照明装置においては、第1のLED2fと第2のLED3fとが、ベース面に対して異なる高さに配置されている。
図15の例において、ベース面は、第1のLED2fの発光面によって定められ、第2のLED3fの発光面は、この面から距離d>0だけ離れている。
図15の照明装置についての平面図は、
図13の平面図に一致する。
【0033】
図16は、
図11、
図12、
図14、および
図15の照明装置のさらに別の修正例を示している。
図16の実施形態において、各々の単位セルの第1のLED2gおよび第2のLED3gは、異なる半径を有する円上に配置されている。第1のLED2gは、中心線を中心とする半径r1の円上に配置され、第2のLED3gは、中心線を中心とする半径r2の円上に配置され、r1とr2とは互いに異なる。出口層1gは、第1のLEDおよび第2のLEDの配置円と同じ中心線を有する環の形態に配置されている。
図16の照明装置の平面図が、
図17に示されている。
【0034】
図12、
図14、
図15、および
図16に示された変形例を、任意に組み合わせることが可能である。そのような組合せの例が、本発明のいくつかの実施形態による照明装置の断面図を示している
図18に示されている。この実施形態において、出口層1hは、中心線を中心とする環状の形状を有し、断面において、出口層1hの上面および/または下面は、
図14と同様に湾曲している。さらに、第1のLED2hと第2のLED3hとが、中心線を中心とする異なる半径r1およびr2を有する円上に配置されている。
図18の例において、単位セルは、3つ以上のLEDを備える。第1のLED2hおよび第2のLED3hに加えて、第3のLED3h’を備える。第3のLED3h’は、第2の種類の(第2のLED3hと同じ種類の)LEDであってよく、あるいは第1の種類および第2の種類の両方とは異なるスペクトルを発する別の種類のLEDであってもよい。
【0035】
この第3のLED3h’は、中心線を中心とする半径R2’を有する第3の円上に配置される。さらに、第3のLED3h’は、ベースライン21hと比較して高い高さに配置される。この例において、ベースライン21hは、第1および第2のLED2hおよび3hの発光面によって定められている。
【0036】
図18は、
図12~
図17に示した種々の変形例の組合せの一例を示しているにすぎない。このような変形例の他の組合せも、本発明の範囲に含まれる。
【0037】
図19は、
図11の実施形態のさらに別の変形例である本発明の別の実施形態を示している。
図11~
図18において、単位セルは、ベース面に沿って配置されている。ベース面は、ベース領域の一例である。一般に、ベース領域は湾曲していてもよい。
図19の例においては、単位セル23iが湾曲した支持層4i上に配置されているため、ベース領域が湾曲している。ベース領域21iは、各々の単位セル23iの上端の対応する位置を結ぶように定められる。しかしながら、他の対応する点を結ぶことによって定められてもよい。したがって、支持層4iをベース領域と考えることも可能である。単位セル23iの各々は、少なくとも1つの第1のLEDおよび少なくとも1つの第2のLEDを備える。
【0038】
好ましくは、ベース層が湾曲している場合、出口層は、
図19に示されるように、ベース層に対応して湾曲している(湾曲した出口層1i)。
【0039】
図30および
図31が、ベース層21kが平面であり、出口層1kが湾曲した断面を有している本発明の一実施形態を示している。
図30は、ベース層21kについての平面図を示し、
図31は、ベース層21kおよび出口層1kの断面図を示している。
【0040】
詳細には、LEDの種類を無視すれば、第1および第2のLED2kおよび3kは、中心線の両側に対称に配置されている。中心線の各側において、第1および第2のLED2kおよび3kは交互である。各々の第1のLED2kは、中心線を介してそれぞれの第2のLED3kと対向する。このようにして、2つの第1のLED2kおよび2つの第2のLED3kが、単位セル23kを構成している。
【0041】
リン光体を含む出口層1kは、ベース層21kの上方で弧状(例えば、円弧状)に成形される。出口層1kの弧の頂点は、平面図において中心線と一致するように配置される。出口層1kは、中心線の方向に延びている。出口層1kは、出口層1kの中心線および頂点を含む対称面の周りで対称である。
【0042】
ベース層と、対称面に交差する出口層1kの下面の中心線との距離が充分に大きい場合、第1のLED2kおよび第2のLED3kは、出口層1kの下面の中心線を実質的に均一に照明することができる。例えば、第1のLED2kからの第1の光の総強度の変動が、20%未満であってよく、第2のLED3kからの第2の光の総強度の変動が、20%未満であってよい。
【0043】
図30および
図31は、単位セル23kが中心線に沿って直線的に配置され、出口層が同じ方向に直線的に延びている照明単位を示している。この直線状の配置に代えて、本発明のいくつかの実施形態においては、単位セル23kが曲線状(例えば、円状)に配置され、出口層は対応する曲線(例えば、円)にて延びる。
【0044】
「比較的均一」な照明を保証するために、出口層の下面上の特定の線(中心線など)の各位置が、少なくとも1つの単位セルの全てのLEDによって照明されるべきである。単位セルの定義は、出口層の下面の特定の線上の位置に依存し得る。さらに、下面上の特定の線の各位置は、少なくとも2つの単位セルの対応するLEDによって照明されるべきである。
【0045】
図20は、LEDの発光面が出口層の特定の線の下方に線状に配置される場合に、出口層が有するべきLEDの発光面からの最小距離を示している。すなわち、
図20は、
図11の断面に対応する。異なる種類のLED2jおよびLED3jを各々が備えている2つの隣接する単位セル23jが、
図20に示されている。
【0046】
図20において、LED2jについての最小距離が導出される。出口層1jの下面の特定の線上の各位置が、少なくとも1つのLED2jによって、その最大放射パワーの半分で照明されることを保証するために、最小距離t1は、
【0047】
【0048】
であり、式中、r1は、それぞれの単位セル23j1の対応するLED間の距離を指し、θ1は、各々のLED2jの放射パターン特性における最大放射パワーの半分の角度を指す。囲み23j2は、単位セル23j1の定義と同等の単位セルの別の可能な定義を示している。例示的な放射パターンが、
図20の下部に示されている。
【0049】
しかしながら、LED2jおよびLED3jは単位セル23j内に配置され、各々の単位セル23jにおいてLEDの配置が同じであるため、LED3jについても同じ考察が当てはまる。LEDが(
図15および
図18などのように)出口層の下面の特定の線に対して異なる距離にある場合、LEDの種類ごとに対応して最小距離を導出することができ、これらの最小距離のうちの最大のものが適用されるべきである。
【0050】
好ましくは、出口層の下面上の各位置が、少なくとも1つの単位セルのLEDによって、それぞれの最大放射パワーの半分で照明される。さらに、出口層の下面上の各位置が、好ましくは、少なくとも2つの単位セルの対応するLEDによって照明される。
【0051】
典型的な配置において、LEDと出口層の下面との間の距離は、1mmと10mmとの間、好ましくは3mmと8mmとの間であってよい。
【0052】
一種類のLED(第1のLED、第2のLED)は、同じスペクトルを有する。それらが異なる最大放射パワーを有する場合、上述した最大放射パワーの半分を、最大放射パワーが最も小さいLEDの最大放射パワーよりも小さい固定値で置き換えてよい。
【0053】
図22~
図27が、本発明のいくつかの実施形態による照明装置を、照明装置によって照明されたシーンの画像を取り込むための撮像素子と共に、どのように動作させることができるのかについての例を示している。
【0054】
図22によれば、第1および第2の光源(例えば、異なる発光波長のLED)が、基本的に撮像素子の露光時間に同期して、交互にオンに切り替えられる。
図23によれば、光源のうちの一方のみが、撮像素子の露光時間に基本的に同期してオンに切り替えられる一方で、他方の光源はオフのままである。或る時間の後に、第1および第2の光源は、それぞれの役割を交換することができる。
図24によれば、光源のうちの一方が恒久的に(すなわち、撮像素子の読み出し時間の間も)オンにされる。他方の光源は、恒久的にオフにされる。
図23と同様に、或る時間の後に、第1および第2の光源は、それぞれの役割を交換することができる。
図25は、
図24に対応するが、ここでは、両方の光源が恒久的にオンにされる。したがって、シーンを、
図22~
図24に従って得られるスペクトルとは異なるスペクトルで照明することができる。
【0055】
図26および
図27の例においては、撮像素子がローリングシャッタによって露光され、一度に撮像素子の一部分のみが露光され、この部分が、センサ領域の全体にわたって移動(ロール)する。
図26によれば、ローリングシャッタの1回の掃引毎に、2つの光源のうちの一方が出口層を照明する一方で、他方の光源は光を発しない。光源は、交互にオンおよびオフに切り替えられる。したがって、いずれの光源もオンになっていない暗掃引が、異なる光源による2つの照明の間に挿入されている
図27と比べ、より高速に画像を取得することができる。
図27の照明方式は、
図22の照明方式に対応する。ローリングシャッタは、
図23~
図25の照明シーケンスにも適用可能である。
【0056】
図28および
図29は、出口層内のリン光体が混合リン光体(例えば、チッ化物および/またはCaAlSiN
3(CASN)、および/または(Sr,Ca)AlSiN
3(SCASN))である場合の例示的な照明スペクトルを示している。
図28に、白色光照明用の照明スペクトルが示されており、λ1およびλ2(白色LEDの発光波長)にピークを有し、より長い波長λ4(例えば、675nm)に追加の広い極大値を有している。例えば、近赤外撮像および/または近赤外光免疫療法において、λ4のピーク波長で発光する光源(LED)を選択することができる。したがって、スペクトルは、λ4の付近のほぼ唯一の広いピーク(さらには、光源からの何らかのスペクトルに起因するより高い波長におけるλ3の別のより小さなピーク)を含む。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態は、スペクトル撮像におけるさらなる問題も解決する。従来からの内視鏡において、先端部は、赤外線LEDおよび白色LEDを備えることができ、白色LEDは、紫色(UV)LEDと、紫色LEDからの光によって励起されるリン光体とを含む。リン光体は、紫色LEDを覆っている。そのような従来からの先端部において、白色LEDのリン光体が、赤外線LEDによって発せられ、内視鏡の部材によって反射された紫色光成分によって励起される可能性がある。白色LEDのリン光体からのこのスペクトル部分が、スペクトル撮像においてノイズとして受光される可能性がある。この問題は、紫色光について高い効率を有するリン光体(CASNまたはSCASNなど)が白色LEDに使用される場合に、とくに関連する。
【0058】
従来からの内視鏡とは対照的に、本発明のいくつかの実施形態において、出口層は、白色LEDと照明される被写体との間に配置される。出口層内のリン光体が紫色光を生成する場合、白色LEDに到達するのはごく小さな部分であり、このリン光体からの光のさらに小さな部分が出口層を通過する。したがって、ノイズが低減される。別の選択肢として、本発明のいくつかの実施形態において、白色光を生成するリン光体は、紫色LEDを覆わなくてよく、出口層のみに存在してよい。このリン光体が出口層のLEDへと向いた側に設けられる場合、被写体の照明への寄与をやはり低減することができる。
【0059】
当然ながら、この効果は、上記の赤外線LEDと白色LEDとの組合せに限定されず、一方のLEDのリン光体が内視鏡の部材から反射された他方のLEDからの光によって励起される可能性がある他の組合せにおいても、達成可能である。
【0060】
本発明は、LEDを光源として説明されている。しかしながら、LEDの代わりに、光ファイバの出射端を使用してもよい。この場合、光ファイバの入力端が、それぞれの光を発する発光光源に接続される。より詳細には、光ファイバが光ファイバを通過する光のスペクトルを変化させる場合、発光光源は、このスペクトルの変化を補償しなければならない。同じ種類の光源の光ファイバを、単一の発光光源に接続してもよく、あるいは一部を別々の発光光源に接続してもよい。発光光源の例は、LEDおよびレーザである。光ファイバの場合に、第1の光および第2の光の発光を制御するコントローラは、発光光源の発光を制御しても、発光光源から光ファイバの出射端への光の伝送を有効または無効にするシャッタを制御してもよい。
【0061】
図11~
図19において、単位セルは、例えば線または円にて一次元的に配置されている。しかしながら、本発明のいくつかの例示的な実施形態において、単位セルは、例えば、矩形の格子、正方形の格子、または六角形の格子など、二次元的に配置されてもよい。
【0062】
出口層の形状は、好ましくは単位セルの配置に対応してよいが、この配置とは異なってもよい。
【0063】
上述したように、照明装置は、好ましくは、人体の管腔へと挿入される内視鏡の堅固な先端に配置される。そのような堅固な先端は、対物レンズを備えることができ、照明装置は、対物レンズの周りに配置されてよい。さらに、堅固な先端は、撮像素子、作業チャネル、などを備えることができる。堅固な先端は、本発明の実施形態が内視鏡も包含するように可撓管と接続されてよい。いくつかの実施形態において、堅固な先端は、単独で(すなわち、内視鏡の可撓管に接続されることなく)使用されてもよい。したがって、照明装置を、いわゆる「カプセル型内視鏡検査」に使用することが可能である。