(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】裁断機
(51)【国際特許分類】
B26D 1/14 20060101AFI20231024BHJP
B26D 1/18 20060101ALI20231024BHJP
B26D 7/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B26D1/14 G
B26D1/18
B26D7/02 D
(21)【出願番号】P 2019226072
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】本間 愛彩
(72)【発明者】
【氏名】菅原 英剛
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196053(JP,A)
【文献】特開2019-098446(JP,A)
【文献】特開2006-130573(JP,A)
【文献】特開2019-084631(JP,A)
【文献】特開昭63-169286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0132522(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/14
B26D 1/18
B26D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象であるシート体が配設される載置面を有したベースと、このベースに対して最も近接した下限位置とこの下限位置よりも離れた上位置との間で前記載置面に対して略平行姿勢で上下動するように支持され付勢手段により上方に付勢されたレールと、このレールに対してスライド移動可能に支持され前記シート体を裁断し得る回転刃を設けたスライダーと、前記ベースと前記レールとの間に設けられ前記レールを前記上位置よりも下に設定されたロック位置において少なくとも前記上位置方向に移動しないようにロックし得るレールロック機構とを備えてなる裁断機であって、
前記レールロック機構が、前記上位置から降下された前記レールを前記ロック位置において自動的にロックし得る
ものであり、
前記レールロック機構が、前記ベースに設けられ当該ベースに対して相対移動可能に設けられたロック部材と、前記レールに一体的に設けられ前記ロック位置において前記ロック部材が係合し得る係合部材とを備えたものであり、
前記ロック部材が、前記係合部材と係合することにより前記レールの上動を禁止し得るロック姿勢と当該ロック姿勢よりも前記係合部材から退避した非ロック姿勢とを採り得るものであり、付勢手段により前記ロック姿勢方向に付勢されているものであり、
前記ロック姿勢にある前記ロック部材を前記非ロック姿勢の方向に操作することにより、前記レールが前記ロック位置にロックされた状態を解除し得るロック解除手段を備えているものであり、
前記ロック部材が、前記ベースに対して回転可能に支持されたものであり、
前記ロック解除手段が、前記ベースに対して回転可能に支持された回転部材により構成されている裁断機。
【請求項2】
切断対象であるシート体が配設される載置面を有したベースと、このベースに対して最も近接した下限位置とこの下限位置よりも離れた上位置との間で前記載置面に対して略平行姿勢で上下動するように支持され付勢手段により上方に付勢されたレールと、このレールに対してスライド移動可能に支持され前記シート体を裁断し得る回転刃を設けたスライダーと、前記ベースと前記レールとの間に設けられ前記レールを前記上位置よりも下に設定されたロック位置において少なくとも前記上位置方向に移動しないようにロックし得るレールロック機構とを備えてなる裁断機であって、
前記レールロック機構が、前記上位置から降下された前記レールを前記ロック位置において自動的にロックし得る
ものであり、
前記レールロック機構が、前記ベースに設けられ当該ベースに対して相対移動可能に設けられたロック部材と、前記レールに一体的に設けられ前記ロック位置において前記ロック部材が係合し得る係合部材とを備えたものであり、
前記ロック部材が、前記係合部材と係合することにより前記レールの上動を禁止し得るロック姿勢と当該ロック姿勢よりも前記係合部材から退避した非ロック姿勢とを採り得るものであり、付勢手段により前記ロック姿勢方向に付勢されているものであり、
前記ロック部材と連動し、前記レールが前記上位置にある場合の表示態様と前記ロック位置にある場合の表示態様とを異ならせる表示手段を備えている裁断機。
【請求項3】
切断対象であるシート体が配設される載置面を有したベースと、このベースに対して最も近接した下限位置とこの下限位置よりも離れた上位置との間で前記載置面に対して略平行姿勢で上下動するように支持され付勢手段により上方に付勢されたレールと、このレールに対してスライド移動可能に支持され前記シート体を裁断し得る回転刃を設けたスライダーと、前記ベースと前記レールとの間に設けられ前記レールを前記上位置よりも下に設定されたロック位置において少なくとも前記上位置方向に移動しないようにロックし得るレールロック機構とを備えてなる裁断機であって、
前記レールロック機構が、前記上位置から降下された前記レールを前記ロック位置において自動的にロックし得る
ものであり、
前記レールロック機構が、前記ベースに設けられ当該ベースに対して相対移動可能に設けられたロック部材と、前記レールに一体的に設けられ前記ロック位置において前記ロック部材が係合し得る係合部材とを備えたものであり、
前記ロック部材が、前記係合部材と係合することにより前記レールの上動を禁止し得るロック姿勢と当該ロック姿勢よりも前記係合部材から退避した非ロック姿勢とを採り得るものであり、付勢手段により前記ロック姿勢方向に付勢されているものであり、
前記係合部材が、前記ロック部材の一端部が挿入され得る窓孔を有したものであり、前記ロック姿勢は前記窓孔に前記一端部が挿入された状態のものである裁断機。
【請求項4】
前記ロック位置が、前記下限位置よりも上に設定されたものである請求項1
、2又は3記載の裁断機。
【請求項5】
前記シート体を上から押さえ得る紙押さえを備えたものであり、
前記レールが、前記ロック位置において、前記紙押さえを介して前記シート体を上から押さえ得る請求項1、2
、3又は
4記載の裁断機。
【請求項6】
前記ロック部材が、前記ベースに対して回転可能に支持されたものであり、
前記表示手段が、前記ベースに対して回転可能に支持された回転部材により構成されている請求項
2記載の裁断機。
【請求項7】
前記回転部材が、第一表示部分を有した第一壁部と、この第一壁部と隣り合う位置に設けられ第二表示部分を有した第二壁部とを備えたものであり、
前記レールが前記上位置にある場合には、前記第一表示部分が前記ベース部により隠される姿勢をなすとともに、前記レールが前記ロック位置にある場合には、前記第一表示部分が前記ベース部に隠れない姿勢をなす請求項
1又は
6記載の裁断機。
【請求項8】
前記ベースが、前記載置面を有したベース本体と、このベース本体の前端部に設けられた前ベース部と、ベース本体の後端部に設けられた後ベース部とを備えたものであり、
前記レールロック機構が、前記前ベース部と前記レールとの間に設けられている請求項1~
7の何れか1項に記載の裁断機。
【請求項9】
前記窓孔における上下方向の内法寸法が、前記一端部の上下寸法よりも大きく設定されている請求項
3記載の裁断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等のシート体を裁断するための裁断機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上位置と、この上位置よりもベースに対して近接した下位置とを採り得るレールを有し、当該下位置においてロックされたレールに対して回転刃を保持したスライダーを進退動作(前進動作・後退動作)させることにより、ベース上に配された用紙を回転刃とベースとの協働により裁断し得るように構成された裁断機が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の裁断機は、レールを下位置にロックするために、上位置にあるレールの一端部及び他端部の両方を同時に又は順番に下位置方向に押圧するという操作が求められていた。そのため、かかる裁断機は、使用者に対して、レールを下位置にロックさせるための操作を煩わしく感じさせるものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、レールを上位置よりも下の位置に好適にロックさせ得る構成を有した裁断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0007】
請求項1に記載の発明は、切断対象であるシート体が配設される載置面を有したベースと、このベースに対して最も近接した下限位置とこの下限位置よりも離れた上位置との間で前記載置面に対して略平行姿勢で上下動するように支持され付勢手段により上方に付勢されたレールと、このレールに対してスライド移動可能に支持され前記シート体を裁断し得る回転刃を設けたスライダーと、前記ベースと前記レールとの間に設けられ前記レールを前記上位置よりも下に設定されたロック位置において少なくとも前記上位置方向に移動しないようにロックし得るレールロック機構とを備えてなる裁断機であって、前記レールロック機構が、前記上位置から降下された前記レールを前記ロック位置において自動的にロックし得るものであり、前記レールロック機構が、前記ベースに設けられ当該ベースに対して相対移動可能に設けられたロック部材と、前記レールに一体的に設けられ前記ロック位置において前記ロック部材が係合し得る係合部材とを備えたものであり、前記ロック部材が、前記係合部材と係合することにより前記レールの上動を禁止し得るロック姿勢と当該ロック姿勢よりも前記係合部材から退避した非ロック姿勢とを採り得るものであり、付勢手段により前記ロック姿勢方向に付勢されているものであり、前記ロック姿勢にある前記ロック部材を前記非ロック姿勢の方向に操作することにより、前記レールが前記ロック位置にロックされた状態を解除し得るロック解除手段を備えているものであり、前記ロック部材が、前記ベースに対して回転可能に支持されたものであり、前記ロック解除手段が、前記ベースに対して回転可能に支持された回転部材により構成されている裁断機である。
請求項2に記載の発明は、切断対象であるシート体が配設される載置面を有したベースと、このベースに対して最も近接した下限位置とこの下限位置よりも離れた上位置との間で前記載置面に対して略平行姿勢で上下動するように支持され付勢手段により上方に付勢されたレールと、このレールに対してスライド移動可能に支持され前記シート体を裁断し得る回転刃を設けたスライダーと、前記ベースと前記レールとの間に設けられ前記レールを前記上位置よりも下に設定されたロック位置において少なくとも前記上位置方向に移動しないようにロックし得るレールロック機構とを備えてなる裁断機であって、前記レールロック機構が、前記上位置から降下された前記レールを前記ロック位置において自動的にロックし得るものであり、前記レールロック機構が、前記ベースに設けられ当該ベースに対して相対移動可能に設けられたロック部材と、前記レールに一体的に設けられ前記ロック位置において前記ロック部材が係合し得る係合部材とを備えたものであり、前記ロック部材が、前記係合部材と係合することにより前記レールの上動を禁止し得るロック姿勢と当該ロック姿勢よりも前記係合部材から退避した非ロック姿勢とを採り得るものであり、付勢手段により前記ロック姿勢方向に付勢されているものであり、前記ロック部材と連動し、前記レールが前記上位置にある場合の表示態様と前記ロック位置にある場合の表示態様とを異ならせる表示手段を備えている裁断機である。
請求項3に記載の発明は、切断対象であるシート体が配設される載置面を有したベースと、このベースに対して最も近接した下限位置とこの下限位置よりも離れた上位置との間で前記載置面に対して略平行姿勢で上下動するように支持され付勢手段により上方に付勢されたレールと、このレールに対してスライド移動可能に支持され前記シート体を裁断し得る回転刃を設けたスライダーと、前記ベースと前記レールとの間に設けられ前記レールを前記上位置よりも下に設定されたロック位置において少なくとも前記上位置方向に移動しないようにロックし得るレールロック機構とを備えてなる裁断機であって、前記レールロック機構が、前記上位置から降下された前記レールを前記ロック位置において自動的にロックし得るものであり、前記レールロック機構が、前記ベースに設けられ当該ベースに対して相対移動可能に設けられたロック部材と、前記レールに一体的に設けられ前記ロック位置において前記ロック部材が係合し得る係合部材とを備えたものであり、前記ロック部材が、前記係合部材と係合することにより前記レールの上動を禁止し得るロック姿勢と当該ロック姿勢よりも前記係合部材から退避した非ロック姿勢とを採り得るものであり、付勢手段により前記ロック姿勢方向に付勢されているものであり、前記係合部材が、前記ロック部材の一端部が挿入され得る窓孔を有したものであり、前記ロック姿勢は前記窓孔に前記一端部が挿入された状態のものである裁断機である。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記ロック位置が、前記下限位置よりも上に設定されたものである請求項1、2又は3記載の裁断機である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、前記シート体を上から押さえ得る紙押さえを備えたものであり、前記レールが、前記ロック位置において、前記紙押さえを介して前記シート体を上から押さえ得る請求項1、2、3又は4記載の裁断機である。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記ロック部材が、前記ベースに対して回転可能に支持されたものであり、前記表示手段が、前記ベースに対して回転可能に支持された回転部材により構成されている請求項2記載の裁断機である。
【0015】
請求項7に記載の発明は、前記回転部材が、第一表示部分を有した第一壁部と、この第一壁部と隣り合う位置に設けられ第二表示部分を有した第二壁部とを備えたものであり、
前記レールが前記上位置にある場合には、前記第一表示部分が前記ベース部により隠される姿勢をなすとともに、前記レールが前記ロック位置にある場合には、前記第一表示部分が前記ベース部に隠れない姿勢をなす請求項1又は6記載の裁断機である。
【0016】
請求項8に記載の発明は、前記ベースが、前記載置面を有したベース本体と、このベース本体の前端部に設けられた前ベース部と、ベース本体の後端部に設けられた後ベース部とを備えたものであり、前記レールロック機構が、前記前ベース部と前記レールとの間に設けられている請求項1~7の何れか1項に記載の裁断機である。
【0018】
請求項9に記載の発明は、前記窓孔における上下方向の内法寸法が、前記一端部の上下寸法よりも大きく設定されている請求項3記載の裁断機である。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、少なくとも、レールを上位置よりも下の位置に好適にロックさせ得る構成を有した裁断機を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図12】同実施形態における斜め下方からみた部分拡大斜視図。
【
図13】同実施形態における斜め下方からみた部分拡大斜視図。
【
図14】同実施形態における斜め下方からみた部分拡大斜視図。
【
図15】同実施形態におけるレールロック機構の要部の斜視図。
【
図16】同実施形態におけるレールロック機構の要部の斜視図。
【
図20】同実施形態におけるレールロック機構の要部の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~20を参照して説明する。
【0022】
なお、
図1、2、5、6<a>、7<a>、8<a>、9<a>、10、12、15、及び、17は、レールBが上位置(L)にある状態のものを示している。
図3、6<b>、7<b>、8<b>、9<b>、11、13、16、及び、18は、レールBがロック位置(K)にある状態のものを示している。
図4、14、19、及び、20は、レールBが下限位置(J)にある状態のものを示している。用紙Pについては、
図1においてのみ想像線を用いて明示しているが、その他の図では省略している。また、図面を見えやすくするための便宜上、紙押さえDについては色を付している。
【0023】
裁断機は、切断対象であるシート体たる用紙Pが配設される載置面m、及び、当該載置面mと略同じ高さになるように設けられた刃受けhを有したベースAと、ベースAに対して最も近接した下限位置(J)と下限位置(J)よりも上側に最も離れた上位置(L)との間で載置面mに対して略平行に上下方向に移動するように支持され付勢手段たるバネs1により上方に付勢されたレールBと、レールBに対して相対移動可能に支持されレールBが上位置(L)から降下する過程において用紙Pを上からベースA方向に押さえ得る紙押さえDと、レールBに対してスライド移動可能に支持され用紙Pを裁断し得る回転刃KHを設けたスライダーEを備えたものである。
【0024】
裁断機は、ベースAとレールBとの間にレールロック機構Fが設けられている。レールロック機構は、レールBを上位置(L)よりも下に設定されたロック位置(K)において上位置(L)方向に移動しないように自動的にロックし得るものである。すなわち、レールロック機構Fは、使用者によって実施されるレールBを押下する操作により、上位置(L)から降下されたレールBをロック位置(K)において自動的にロックし得る構成を備えている。この実施形態では、レールBのロック位置(K)は、レールBの上位置(L)よりも下であり、且つ、下限位置(J)よりも上に設定されている。
【0025】
さらに、裁断機は、レールロック機構Fに関連させて、レールBがロック位置(K)にロックされた状態をレールBとは異なる位置においてワンタッチで解除し得るロック解除手段Gを備えている。
【0026】
また、裁断機は、レールロック機構Fに関連させて、レールBとは異なる位置において、レールBが上位置(L)にある場合のベースAに支持された部材の表示態様とロック位置(K)にある場合のベースAに支持された部材の表示態様とを異ならせて使用者に対してレールBが上位置(L)にある状態又はロック位置(K)にある状態を判別し易くする表示手段Hを備えている。
【0027】
裁断機は、レールロック機構Fによりロック位置(K)において上位置(L)方向に移動しないように自動的にロックされたレールBに支持されたスライダーEを下方に押圧しつつ進退動作(すなわち、前進動作、及び、後退動作)させることにより、ベースAの載置面m上に配された単数又は複数枚の用紙PをスライダーEに備えた回転刃KHとベースAとの協働により裁断し得るものである。
【0028】
より具体的に言えば、使用者が、レールBにおける任意の箇所を押し下げる操作を行うと、レールBは上位置(L)からロック位置(K)に移動し、ロック位置(K)において上動が自動的に規制される。この操作により、裁断するべき用紙Pは、レールBに対して進退可能に支持された紙押さえDにより、ベースA方向に押さえ付けられる。その後、用紙Pは、ロック位置(K)と下限位置(J)との間で略平行に上下動し得るレールBに支持されたスライダーEの回転刃KHとベースAに設けた刃受けhとの協働により裁断される。裁断時における回転刃KHの用紙Pに対する押圧力は、スライダーEを介してレールBの上下位置を操作し得る使用者により調整されるものとなっている。
【0029】
以下、裁断機の構成について詳述する。
【0030】
<<ベースA>>
ベースAは、用紙Pが配設される上向きの載置面m及び回転刃KHの直下に配された刃受けhを有したベース本体1と、ベース本体1の前端部に設けられレールBを上下動可能に支持し得る前ベース部2と、ベース本体1の後端部に設けられレールBを上下動可能に支持し得る後ベース部3とを備えている。
【0031】
<ベース本体1>
ベース本体1は、スライダーEの回転刃KHにおける直下に図示しない溝が設けられている。ベース本体1の溝には、上面が載置面mと略面一となるように合成樹脂製の刃受けhが配されている。
【0032】
<前ベース部2>
前ベース部2は、前ベース部本体2aと、前ベース部本体2aの下に着脱可能に取り付けられた底カバー2bとを備えたものである。
【0033】
前ベース部本体2aは、上壁21と、上壁21の前端縁から下方に延設された前壁22と、上壁21の後端縁から下方に延設された後壁23と、上壁21における左右の側端縁から下方に延設された側壁24とを備えている。
【0034】
前ベース部本体2aには、レールBの下に対応する位置に下方に凹んでなる凹陥部分aが設けられている。凹陥部分aは、レールBを構成する前のレール受け部材5の前後方向及び左右方向の位置決めをするとともに前のレール受け部材5の上下方向の移動を許容し得るものである。凹陥部分aは、前のレール受け部材5の下部を収容し得る形態をなしている。
【0035】
凹陥部分aは、上壁21よりも下に配設された水平姿勢をなす底壁25と、底壁25の周縁部から上方に延出し前のレール受け部材5における下部の周囲を取り囲む周壁26とを備えている。
【0036】
底壁25は、レールBの上方に付勢するバネs1の下端部を支持し得るバネ支持部a1と、レールBに設けられた左右一対の姿勢保持リンクCの下端部を枢支するリンク支持部a2を備えている。
【0037】
<後ベース部3>
後ベース部3は、前ベース部2と略同様の構成のものであるため、図中においては前ベース部2で用いた符号と同様の符号を付して詳細な説明を省略する。なお、後ベース部3には、前ベース部2に設けられていない構成として、スライダーEに用いられる図示しない予備の回転刃を収容し得る回転刃収容室Iが設けられている。
【0038】
<<レールB>>
レールBは、スライダーEを前後方向にスライド移動可能に支持し得るものである。レールBは、ベースAに対して上位置(L)と下限位置(J)との間でベースAの載置面mに対して略平行に上下動可能に支持されている。
【0039】
すなわち、レールBは、載置面m上に複数枚の用紙Pを載置可能な上位置(L)と、載置面m上に載置された複数枚の用紙Pを紙押さえDを介して間接的に押さえつつスライダーEの回転刃KHにより用紙Pを切断し得る下限位置(J)との間で上下方向に平行移動可能に構成されている。
【0040】
レールBが上位置(L)にあるときは、当該レールBに対して上下動可能に支持された紙押さえDの下面とベースAの載置面mとの間に裁断すべき用紙Pを挿入し得る用紙挿入用の隙間skが形成され得るようになっている。
【0041】
レールBは、ベースAとの間に設けられたレールロック機構Fにより、下限位置(J)よりも上に設定されたロック位置(K)において、使用者の押下操作による下限位置(J)方向への移動は許容しつつ上位置(L)方向に移動しないようにロックされるものとなっている。
【0042】
レールBは、中空構造をなし前後方向に直線状に延びた略四角筒状のレール本体4と、レール本体4の前端部及び後端部に取り付けられた前後のレール受け部材5、6とを備えている。レール本体4、及び、前後のレール受け部材5、6は、一体的に上下方向に動作し得るものとなっている。
【0043】
レールBは、ベースAとの間に配されたバネs1により、常時、上位置(L)の方向に付勢されている。すなわち、レールBは、レールBを構成する前のレール受け部材5とベースAを構成する前ベース部2との間に介設されたバネs1により上方に付勢されているとともに、レールBを構成する後のレール受け部材6とベースAを構成する後ベース部3との間に介設されたバネs1により上方に付勢されている。
【0044】
<レール本体4>
レール本体4は、底壁部41及び当該底壁部41の両側端縁から立設された側壁部42を一体に有したチャンネル状をなす金属製の下レール部材4aと、天壁部43及び当該天壁部43の両側端縁から下方に延設された垂下壁部44を一体に有したチャンネル状をなす合成樹脂製の上レール部材4bとを備えている。
【0045】
上レール部材4bの垂下壁部44は、下レール部材4aの側壁部42よりも外側に位置している。つまり、下レール部材4aは、上レール部材4bにより外側からカバーされている。上レール部材4b、下レール部材4a、及び、前後のレール受け部材5、6は、ねじv1により共締めされている。
【0046】
下レール部材4aの底壁部41には、紙押さえDに立設されたボス部d1が上下動可能に挿通し得る挿通孔b1が形成されている。
【0047】
上レール部材4bの天壁部43には、上面側にスライダーEを位置決めするためのガイド溝b2が設けられている。ガイド溝b2には、スライダーEに突設された図示しない位置決め凸部が係合し得るようになっている。
【0048】
上レール部材4bの天壁部43には、下端部を下レール部材4aの挿通孔b1内に位置させた下向きのボス部b3が形成されている。下向きのボス部b3は、紙押さえDに突設された上向きのボス部d1の貫通孔d2内に挿入されている。そして、下向きのボス部b3の先端には、紙押さえDの抜け止め部材たるねじv2が取り付けられている。
【0049】
レールBと紙押さえDとの間、すなわち、上レール部材4bにおける天壁部43の内面と紙押さえDにおけるボス部d1との間には紙押さえ用の付勢部材たる紙押さえ用バネs2が配設されている。
【0050】
<前のレール受け部材5>
前のレール受け部材5は、レール本体4を構成する下レール部材4aの底壁部41にねじv3により取り付けられている。前のレール受け部材5は、合成樹脂製のものである。
【0051】
前のレール受け部材5は、下方に開口した箱形をなし上面側に下レール部材4aの底壁部41がねじ止めされるレール接続壁51を有した前レール受け部材本体5aと、前レール受け部材本体5aの前端部に立設され、レール本体4の前端部を覆うカバー壁5bとを備えたものである。
【0052】
前レール受け部材本体5aは、水平姿勢をなし上面がレール本体4に接続する略矩形状のレール接続壁51と、レール接続壁51の周縁部から下方に延出しベースAにおける周壁26の内側に位置する内側周壁52とを備えている。
【0053】
レール接続壁51の下面には、レールBを上方に付勢するバネs1の上端部を支持し得るバネ支持部b4を備えている。内側周壁52の外面には、前ベース部2における凹陥部分aの周壁26に形成された図示しない位置決め突起と係わり合う上下方向に延びた位置決め用の溝b6が設けられている。
【0054】
カバー壁5bは、レール接続壁51の前端縁から立設されている。
【0055】
なお、この実施形態では、前のレール受け部材5には、レールロック機構Fを構成する係合部材Uが一体的に設けられている。係合部材Uは、前のレール受け部材5に対して嵌合した状態で、前のレール受け部材5に対してねじ止めされたレール本体4によって嵌合状態からの移動が規制されており、前のレール受け部材5と一体的に上下動し得るように構成されている。
【0056】
<後のレール受け部材6>
後のレール受け部材6は、レール本体4を構成する下レール部材4aの底壁部41にねじv3により取り付けられている。後のレール受け部材6は、合成樹脂製のものである。
【0057】
後のレール受け部材6は、下方に開口した箱形をなし上面側に下レール部材4aの底壁部41がねじ止めされるレール接続壁61を有した後レール受け部材本体6aと、後レール受け部材本体6aの後端部に立設され、レール本体4の後端部を覆うカバー壁6bとを備えたものである。
【0058】
後レール受け部材本体6aは、水平姿勢をなし上面がレール本体4に接続する略矩形状のレール接続壁61と、レール接続壁61の周縁部から下方に延出しベースAにおける周壁26の内側に位置する内側周壁62とを備えている。
【0059】
レール接続壁61の下面には、レールBを上方に付勢するバネs1の上端部を支持し得るバネ支持部b7を備えている。内側周壁62の外面には、後ベース部3における凹陥部分aの周壁26に形成された図示しない位置決め突起と係わり合う上下方向に延びた位置決め用の溝b8が設けられている。
【0060】
カバー壁6bは、レール接続壁61の後端縁から立設されている。
【0061】
<一対の姿勢保持リンクC>
一対の姿勢保持リンクCは、ベースAに対して上下動し得るレールBの姿勢を略水平な姿勢に保持するものである。換言すれば、レールBは、左右に配された一対の姿勢保持リンクCにより水平姿勢が保持されることにより、ベースAに対して上位置(L)と下限位置(J)との間で略平行に上下動し得るものとなっている。
【0062】
一対の姿勢保持リンクCは、レール本体4の内部に配設されレール本体4と係り合う水平リンク要素c1と、上端部が水平リンク要素c1の前端部及び後端部に枢着されるとともに下端部が前ベース部2及び後ベース部3における各底壁25のリンク支持部a2に枢支された前後の端部リンク要素c2とを備えた既知の構成のものである。
【0063】
なお、この実施形態におけるレールBの上位置(L)は、バネs1の付勢力に抗してレール本体4の上方向への移動を水平リンク要素c1により規制し得る位置になっている。
【0064】
<<紙押さえD>>
紙押さえDは、載置面mに載置された用紙Pを上から押さえ得るものである。紙押さえDは、レールBに対して進退動作可能に支持されている。紙押さえDは、レールBに沿うように前後方向に延びてなり下面が用紙Pの上面に添接し得る平板状の部材を主体に構成されている。紙押さえDは、レールBに対して上下動可能に支持されている。
【0065】
紙押さえDは、ロック位置(K)において、ベースA上に載置された用紙Pを上から押さえ得るものとなっている。この実施形態では、レールBは、ロック位置(K)から下限位置(J)の間で上下動可能に構成されており、当該レールBに対して上下動可能に支持された紙押さえDは、ロック位置(K)と下限位置(J)の間において裁断するべき用紙Pを載置面mに対して押さえ得るものとなっている。
【0066】
紙押さえDは、レールBに支持されている。紙押さえDは、レール本体4内に配した紙押さえ用バネs2により下方すなわちベースA方向に付勢されている。
【0067】
<<スライダーE>>
スライダーEは、用紙Pを裁断するための交換可能な回転刃KHを支持してなるものである。スライダーEは、用紙Pを裁断し得る回転刃KHをレールBの一側縁である右側縁よりも外側の位置において保持している。スライダーEは、レールBに対してスライド移動可能に支持されている。
【0068】
スライダーEは、上側に操作ハンドルe11を有しレールBに対してスライド可能に装着されたスライダー本体e1と、回転刃KHを保持しスライダー本体e1に対して上下動可能に支持されるとともにスライダー本体e1を足場にした図示しないバネにより下方に付勢された刃ホルダーe2とを備えたものである。
【0069】
しかして、本実施形態の裁断機は、ベースAとレールBとの間にレールロック機構Fが設けられている。また、裁断機は、レールロック機構Fに関連させて、ロック解除手段G及び表示手段Hが設けられている。
【0070】
<<レールロック機構F>>
レールロック機構Fは、ベースAに対して相対移動可能に設けられたロック部材Tと、レールBに一体的に設けられロック位置(K)においてロック部材Tが係合し得る係合部材Uとを主体に構成されたものである。
【0071】
レールロック機構Fは、ロック部材Tが、レールBと一体に上下動し得る係合部材Uと係合することによりレールBの上動を禁止し得るロック姿勢(M)と当該ロック姿勢(M)よりも係合部材Uから退避しレールBの上位置(L)への移動を許容し得る非ロック姿勢(N)とを採り得るものである。ロック部材Tは、ベースAを足場とした付勢手段たるロック部材付勢バネs3によりロック姿勢(M)方向に付勢されている。
【0072】
ロック部材Tは、左右方向に長手をなし長手方向中間部が前ベース部2に固定された上下方向に延びる軸j1を介して前ベース部2に対して水平回転可能に支持されたものである。
【0073】
ロック部材Tは、レールB側の回動端部に設けられロック姿勢(M)において係合部材Uの窓孔u2に挿入される一端部たるL字状の先端係合部t1と、反対側の端部に設けられ後述する回転部材Vと係り合う他端部たる棒状の回転部材係合部t2とを備えている。
【0074】
さらに、ロック部材Tは、先端係合部t1と回転部材係合部t2との間すなわち長手方向中間部に設けられた軸j1が挿通するように上下方向に貫通した図示しない軸孔を有した軸支持部t3と、軸支持部t3と回転部材係合部t2との間に突設され凹陥部分aの底壁25から突出した突出壁a4を足場として軸j1に巻装されたロック部材付勢バネs3により押圧される被押圧部t4とを備えている。
【0075】
係合部材Uは、前のレール受け部材5に取り付けられている。係合部材Uは、上下方向に延びてなる合成樹脂製のものである。係合部材Uは、上部に設けられ前のレール受け部材5に当該前のレール受け部材5と一体的に動作し得るように取り付けられる取付部u1と、下部に設けられロック部材Tの一端部である先端係合部t1が挿入され得る前後方向に貫通する窓孔u2とを備えたものである。
【0076】
ロック部材Tのロック姿勢(M)は、窓孔u2に先端係合部t1が挿入された状態のものであり、ロック部材Tの非ロック姿勢(N)は、窓孔u2に先端係合部t1が挿入されていない状態のものである。
【0077】
取付部u1は、前のレール受け部材5に設けられた嵌合溝たる凹溝b5に嵌合し得る形態をなしている。取付部u1は、レール接続壁51に形成された下方に凹む凹溝b5に内嵌する内嵌部分u11を備えている。係合部材Uは、内嵌部分u11が凹溝b5に対して上側から挿入されて嵌まり込み、その後、下レール部材4aが前のレール受け部材5にねじv3により取り付けられると、係合部材Uは、前のレール受け部材5から抜け出せないものとなる。
【0078】
窓孔u2は、レールBがロック位置(K)及び下限位置(J)にあるときに、前のレール受け部材5から下方に突出するように設けられている。すなわち、窓孔u2は、前ベース部2を構成する凹陥部分aの底壁25に形成された貫通孔a3を通じてレールBがロック位置(K)及び下限位置(J)にあるときに底壁25よりも下に大きく突出し得るものとなっている。
【0079】
窓孔u2における上下方向の内法寸法w2は、先端係合部t1の上下寸法w1よりも大きく設定されている。つまり、ロック姿勢(M)において窓孔u2に挿入された先端係合部t1は、ロック位置(K)において窓孔u2における下の開口縁すなわち下枠部分u21と係わり合い、ロック部材TがレールBのロック位置(K)を保持しつつバネs1の付勢力に抗して上位置(L)への移動を禁止している。
【0080】
一方で、ロック位置(K)にあるレールBが使用者のスライダーEに対する操作により下限位置(J)方向に押下されると窓孔u2が降下することにより当該窓孔u2と先端係合部t1との相対位置が変わり(先端係合部t1が窓孔u2における上の開口縁側に近づくように相対位置が変わる。)、レールBは下限位置(J)まで移動し得るものとなっている。
【0081】
<<ロック解除手段G>>
ロック解除手段Gは、ロック姿勢(M)にあるロック部材Tを非ロック姿勢(N)の方向に操作することにより、レールBにおけるロック位置(K)にロックされていた状態をワンタッチにより解除し、当該レールBを上位置(L)に戻すことができるものである。
【0082】
ロック解除手段Gは、ベースAを構成する前ベース部2における上壁21に突設された一対の軸支持部212に対して回転可能に支持された回転部材Vにより構成されている。回転部材Vは、レールBが上位置(L)にある場合には、第一姿勢(Q)を採り得るものとなり、レールBがロック位置(K)及び下限位置(J)にある場合には、第二姿勢(R)を採り得るものとなっている。回転部材Vは、ロック部材Tと連動し得るように構成されている。
【0083】
回転部材Vは、前側を向く第一表示部分W1を有した第一壁部たる前壁部v1と、前壁部v1と隣り合う位置すなわち前壁部v1の上端縁から後方に延出し上側を向く第二表示部分W2を有した第二壁部たる上壁部v2と、前壁部v1及び上壁部v2の側端縁間に配設され前ベース部2に設けられた垂下壁状の軸支持部212に支持される軸部j2を有した左右の側壁v3と、右の側壁v3から下方に向かって一体に延設され先端部にロック部材Tの回転部材係合部t2と係合し得る下向きコ字状をなす係合部分v41を有した延出壁v4と、上壁部v2の後端部から後方に一体に延設され前ベース部2の上壁21の下に位置し得る鍔部v5を備えたものである。
【0084】
レールBが上位置(L)にある場合には、回転部材Vは第一姿勢(Q)をなし、第二表示部分W2が前ベース部2の上壁21と略面一をなしている。つまり、第一姿勢(Q)の回転部材Vは、第一表示部分W1を有した前壁部v1が前ベース部2の上壁21の下に隠れている。
【0085】
レールBがロック位置(K)及び下限位置(J)にある場合には、回転部材Vは第二姿勢(R)をなし、前ベース部2の上壁21よりも上に位置するようになっている。換言すれば、レールBがロック位置(K)及び下限位置(J)にある場合には、ロック部材Tにより付勢された回転部材Vは、第二姿勢(R)を採り、第一表示部分W1が前ベース部2の上壁21よりも上に移動して使用者に対して視認可能に出現し、前ベース部2に隠れない姿勢をなしている。
【0086】
<<表示手段H>>
表示手段Hは、使用者に対して視覚を通じてレールBが上位置(L)にある場合とロック位置(K)にある場合とを判別し易くするためのものである。表示手段Hは、ロック部材Tと連動し、レールBが上位置(L)にある場合の表示態様(第一の表示態様)とロック位置(K)にある場合の表示態様(第二の表示態様)とを異ならせるものである。
【0087】
表示手段Hは、第一の表示態様を採る第一姿勢(Q)と、レールBがロック位置(K)にある場合の表示態様である第二表示態様を採る第二姿勢(R)とを採り得る回転部材Vにより構成されている。
【0088】
表示手段Hは、ロック解除手段Gを構成する回転部材Vにより構成されている。換言すれば、表示手段Hとロック解除手段Gは、共通の部材である回転部材Vにより構成されたものである。
【0089】
表示手段Hを構成する回転部材Vの具体的な構造説明はロック解除手段Gにおいて既に説明しているため省略する。
【0090】
続いて、レールロック機構Fと、レールロック機構Fに関連して設けられたロック解除手段G及び表示手段Hとを有した裁断機の作動について、その一例を概略的に説明する。
【0091】
まず、使用者により裁断するべき用紙PをベースAの載置面m上に載置する。このとき、レールBは上位置(L)に設定しておく。レールBに支持された紙押さえDとベースAの載置面mとの間には、用紙Pを挿入するための隙間skが形成されている。
【0092】
レールBが上位置(L)にあるときは、レールロック機構Fのロック部材Tは非ロック姿勢(N)をなしている。ロック部材Tの先端係合部t1は係合部材Uにおける窓孔u2の下端部(下枠部分u21)をロック部材付勢バネs3の付勢力により押圧した状態をなしている。ロック部材Tの回転部材係合部t2は回転部材Vと係り合っており、回転部材Vの第二表示部分W2のみを前ベース部2の上壁21に設けた開口部211を通じて上方に表出させている。
【0093】
続いて、使用者の操作によりレールBをベースA方向に押下することにより、レールBを上位置(L)からロック位置(K)方向に移動させる。レールBは、一対の姿勢保持リンクCにより載置面mに対して略平行な姿勢が保持されているため、レールBにおける任意の一箇所を下方に押下すればレールBは略平行な姿勢を保ちつつ降下し得るものとなっている。
【0094】
レールBがロック位置(K)方向に移動する過程においてレールBに支持された紙押さえDが裁断すべき用紙Pに当接し、紙押さえ用バネs2の付勢力により用紙PをベースAに対して押し付けるものとなる。
【0095】
レールBが降下すると前のレール受け部材5に取り付けられた係合部材Uも一体に降下することになる。レールBが一定程度降下すると係合部材Uに設けられた窓孔u2に、ロック部材付勢バネs3により付勢されたロック部材Tの先端係合部t1が挿入される。この段階で、レールBはロック位置(K)に位置することになり、ロック部材Tがロック姿勢(M)をとることになる。
【0096】
ロック部材Tの先端係合部t1が係合部材Uの窓孔u2に挿入されると、先端係合部t1に対してバネs1により上方向に付勢された係合部材Uにおける窓孔u2の下枠部分u21が係合し、レールBは上位置(L)への移動が規制されたロック位置(K)に保持されることになる。
【0097】
ロック部材Tが非ロック姿勢(N)からロック位置(M)に遷移する過程で、ロック部材Tの回転部材係合部t2と係り合っている回転部材Vは、ロック部材Tの付勢力を受けて第一姿勢(Q)から第二姿勢(R)に回転させられる。すなわち、ベース2に支持された軸部j2よりも下に位置する係合部分v41がロック部材Tにより前方に移動させられる結果、前ベース部2の上壁21に隠れていた回転部材Vの第一表示部分W1が開口部211を通過して上壁21の上側に移動し、使用者に対して視認可能に出現するようになっている。
【0098】
例えば、前壁部v1の第一表示部分W1に「ロック中」という文字を表示させることにより、使用者に対して、レールBがロック位置(K)に位置していることを見えやすく示すことができるようになっている。
【0099】
レールBをロック位置(K)に位置させて裁断すべき用紙PがベースAに対して固定された後に、使用者は、スライダーEを押下しつつ進退動作させることにより、用紙Pを裁断することになる。
【0100】
この実施形態では、使用者の操作により、レールBをロック位置(K)よりも下に位置させることにより、スライダーEの回転刃KHが用紙Pを裁断し得る適切な位置を採り得るように設定されている。
【0101】
レールロック機構Fを構成する係合部材Uにおける窓孔u2の上下内法寸法w2は、ロック部材Tにおける先端係合部t1の上下寸法w1よりも大きく設定されているため、レールBがロック位置(K)と下限位置(J)との間を上下動できるものとなっている。これにより、使用者はロック位置(K)にあるレールBを、スライダーEを介して下限位置(J)方向に押し下げつつ用紙Pを裁断することができるようになっている。
【0102】
なお、レールBが下限位置(J)及びその近傍に位置するときは、窓孔u2内の上部にロック部材Tの先端係合部t1が位置するとともに窓孔u2内の下部に隙間smが形成されるものとなっている。
【0103】
用紙Pの裁断を終えた後は、使用者によりロック解除手段Gである回転部材Vを第二姿勢(R)から第一姿勢(Q)に変更するように回転し、ロック位置(K)にあるレールBを上位置(L)に戻す操作を行う。
【0104】
使用者により、回転部材Vが第一姿勢(Q)方向に回動されると、回転部材Vと係合したロック部材Tがロック部材付勢バネs3の付勢力に抗して非ロック姿勢(N)方向に強制的に回動される。
【0105】
そして、ロック部材Tの先端係合部t1が窓孔u2から抜け出ると、レールBがバネs1の付勢力により上動し、上位置(L)に復帰することになる。これにより、紙押さえDによる用紙Pに対する押さえ付けが解除され、使用者は用紙Pの一部を紙押さえDに邪魔されることなく無理なく取り除くことができることになる。
【0106】
レールBがロック位置(K)から上位置(L)に戻ると、回転部材Vは、第二姿勢(R)から第一姿勢(Q)に姿勢変更し、前ベース部2の開口部211を通じて第二表示部分W2のみが上方から視認されるものとなる。
【0107】
例えば、第二表示部分W2に「解除中」という文字を表示させておけば、使用者に対してレールBが上位置(L)にあること(レールBがレールロック機構Fによりロックされているという状態が解除されていること)を示すことができるようになっている。
【0108】
以上説明したように、本実施形態に係る裁断機は、切断対象であるシート体たる用紙Pが配設される載置面mを有したベースAと、ベースAに対して近接した下限位置(J)とこの下限位置(J)よりも離れた上位置(L)との間で載置面mに対して略平行に移動するように支持され付勢手段たるバネs1により上方に付勢されたレールBと、レールBに対してスライド移動可能に支持され用紙Pを裁断し得る回転刃KHを設けたスライダーEと、ベースAとレールBとの間に設けられレールBを上位置(L)よりも下に設定されたロック位置(K)において少なくとも上位置(L)方向に移動しないようにロックし得るレールロック機構Fを備えてなるものである。そして、レールロック機構Fが、上位置(L)から降下されたレールBをロック位置(K)において自動的にロックし得るように構成されている。
【0109】
このため、レールBを上位置(L)よりも下の位置すなわちロック位置(K)に好適にロックさせ得る構成を有した裁断機を提供することができるものとなる。
【0110】
つまり、ベースAに対して略平行移動し得るレールBを所定の位置において上動しないように自動的にロックさせることができるため、使用者により用紙Pを裁断する操作を好適に実行し得るものとなっている。
【0111】
ロック位置(K)が、下限位置(J)よりも上に設定されたものである。このため、裁断すべき用紙Pの積層枚数を多寡にかかわらず、用紙Pを裁断するための操作を好適に実施し得るものとなっている。
【0112】
レールロック機構Fが、ベースAに対して相対移動可能に設けられたロック部材Tと、レールBに一体的に設けられロック位置(K)においてロック部材Tが係合し得る係合部材Uとを備えたものである。そして、ロック部材Tが、係合部材Uと係合することによりレールBの上動を禁止し得るロック姿勢(M)と当該ロック姿勢(M)よりも係合部材Uから退避した非ロック姿勢(N)とを採り得るものであり、付勢手段たるロック部材付勢バネs3によりロック姿勢(M)方向に付勢されている。
【0113】
このため、ベースAに対して相対移動可能に設けられたロック部材Tと、レールBに一体的に設けられた係合部材Uとを主体にして、好適なレールロック機構Fを構成することができるものとなっている。
【0114】
用紙Pを上から押さえ得る紙押さえDを備えたものであり、レールBが、ロック位置(K)において、紙押さえDを介してシート体を上から押さえ得るものである。
【0115】
このため、レールBがロック位置(K)にあるときに裁断すべき用紙Pを適切に押さえ得るものとなっている。
【0116】
ロック姿勢(M)にあるロック部材Tを非ロック姿勢(N)の方向に操作することにより、レールBがロック位置(K)にロックされた状態を解除し得るロック解除手段Gを備えている。
【0117】
このため、ロック部材Tを操作し得る構成を実現することにより、レールBがロック位置(K)にロックされた状態を適切に解除し得るものとなっている。
【0118】
ロック部材Tが、ベースAに対して回転可能に支持されたものである。そして、ロック解除手段Gが、ベースAに対して回転可能に支持された回転部材Vにより構成されている。
【0119】
このため、ベースAに対して回転動作し得るロック部材T及び回転部材Vの動きを利用して、レールBがロック位置(K)にロックされた状態を解除し得る構成を実現し得るものとなっている。
【0120】
ロック部材Tと連動し、レールBが上位置(L)にある場合の表示態様とロック位置(K)にある場合の表示態様とを異ならせる表示手段Hを備えている。
【0121】
このため、ロック部材Tと連動し得る構成を実現することにより、使用者に対して、レールBが上位置(L)にあるのか又はロック位置(K)にあるのかを異なる表示により示すことができるものとなる。
【0122】
ロック部材Tが、ベースAに対して回転可能に支持されたものであり、表示手段Hが、ベースAに対して回転可能に支持された回転部材Vにより構成されている。
【0123】
このため、ベースAに対して回転動作し得るロック部材T及び回転部材Vの動きを利用して、レールBが上位置(L)にあるのか又はロック位置(K)にあるのかを異なる表示により示すことができる構成を実現し得るものとなっている。
【0124】
回転部材Vが、第一表示部分W1を有した第一壁部と、この第一壁部と隣り合う位置に設けられ第二表示部分W2を有した第二壁部とを備えたものである。そして、レールBが上位置(L)にある場合には、第一表示部分W1が前ベース部2により隠される姿勢をなすとともに、レールBがロック位置(K)にある場合には、第一表示部分W1が前ベース部2に隠れない姿勢をなすものである。
【0125】
このため、使用者に対して第一表示部分W1が見える場合と見えない場合とを採り得るものとなるため、レールBが上位置(L)にあるのか又はロック位置(K)にあるのかを異なる表示にさせやすいものとなっている。
【0126】
ベースAが、載置面mを有したベース本体1と、ベース本体1の前端部に設けられた前ベース部2と、ベース本体1の後端部に設けられた後ベース部とを備えたものである。そして、レールロック機構Fが、前ベース部2とレールBとの間に設けられている。
【0127】
このため、レールロック機構Fを好適な位置に設けることができるとともに、これに関連させたロック解除手段Gや表示手段Hを使用者に対して近接した好適な位置に設けることができるものとなっている。
【0128】
係合部材Uが、ロック部材Tの一端部たる先端係合部t1が挿入され得る窓孔u2を有したものであり、ロック姿勢(M)は窓孔u2に先端係合部t1が挿入された状態のものである。
【0129】
このため、先端係合部t1が窓孔u2に挿入されることにより、ロック部材Tがロック姿勢(M)を採り、レールBがロック位置(K)にロックされることになるため、ロック位置(K)にロックされた状態が安定し得るものとなっている。
【0130】
窓孔u2における上下方向の内法寸法w2が、ロック部材Tの一端部たる先端係合部t1の上下寸法w1よりも大きく設定されている。
【0131】
このため、窓孔u2の上下方向の内方寸法の範囲でレールBが下限位置(J)方向に移動し得るものとなるため、レールBがロック位置(K)よりも下限位置(J)方向に動作し得る構成を好適に実現し得るものとなっている。
【0132】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0133】
裁断機による裁断対象は用紙に限られるものではなく種々のシート体であってもよいのはもちろんのことである。
【0134】
スライダーの回転刃は、スライダー本体に対して上下動しないものであってもよい。
【0135】
レールのロック位置は、下限位置よりも上に設定されたものに限られるものではなく、下限位置と同じ位置であってもよい。
【0136】
レールロック機構は、ロック部材がレールに対して相対移動可能に設けられ、係合部材がベースに対して一体的に設けられたものであってもよい。
【0137】
レールロック機構を構成するロック部材は、ベースに対して相対移動可能に設けられたものであればよく、回転可能に設けられたものには限定されるものではない。
【0138】
レールロック機構を構成する係合部材は、レール受け部材と別体をなすものに限られるものではなく、レール受け部材と合成樹脂により一体成形されたものであってもよい。
【0139】
上述した実施形態では、ロック解除手段と表示手段とを同じ回転部材により実現していたが、このようなものに限られるものではなく、別個独立の回転部材により構成したものであってもよい。
【0140】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0141】
A…ベース
B…レール
D…紙押さえ
E…スライダー
F…レールロック機構
G…ロック解除手段
H…表示手段