(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】積層コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 17/00 20060101AFI20231024BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01F17/00 D
H01F27/29 123
(21)【出願番号】P 2019009396
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-11-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英和
(72)【発明者】
【氏名】吉野 真
(72)【発明者】
【氏名】飛田 和哉
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】數田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】濱地 紀彰
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-015493(JP,A)
【文献】特開2001-332424(JP,A)
【文献】特開2017-005104(JP,A)
【文献】国際公開第2017/018109(WO,A1)
【文献】特開2008-108882(JP,A)
【文献】特開2002-100515(JP,A)
【文献】特開2009-173488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有し、一方の前記主面が実装面である素体と、
前記素体内に配置されており、一対の前記主面の対向方向に沿ってコイル軸が延在しているコイルと、
前記素体に埋設されていると共に、一対の前記端面のそれぞれと一対の前記側面のそれぞれとによって形成されている前記素体の四つの角部のそれぞれに配置されている四つの端子電極と、
前記素体に埋設されており、一対の前記側面の対向方向において対向して配置されている一対の前記端子電極を連結していると共に、前記実装面に配置されている第一連結電極及び第二連結電極と、を備え、
四つの前記端子電極のそれぞれは、一対の前記主面の対向方向において延在し、少なくとも前記端面、前記実装面及び前記側面にわたって配置されており、
前記コイルの一部は、一対の前記主面の対向方向から見て、一対の前記側面の対向方向において対向して配置されている一対の前記端子電極の間に形成されている第一領域及び第二領域、及び、一対の前記端面の対向方向において対向して配置されている一対の前記端子電極の間に形成されている第三領域及び第四領域の少なくとも一方に配置されており、
四つの前記端子電極のそれぞれにおいて、一対の前記主面の対向方向での寸法は、一対の前記側面の対向方向での寸法よりも大き
く、
前記第一連結電極は、一方の前記端面側に配置されている一対の前記端子電極を連結しており、一対の前記端面の対向方向において、当該端子電極よりも他方の前記端面側に突出しており、
前記第二連結電極は、他方の前記端面側に配置されている一対の前記端子電極を連結しており、一対の前記端面の対向方向において、当該端子電極よりも一方の前記端面側に突出している、積層コイル部品。
【請求項2】
前記素体の一対の前記端面の対向方向での第一寸法は、一対の前記側面の対向方向での第二寸法よりも大きく、
前記コイルの一部は、少なくとも前記第一領域及び前記第二領域に配置されている、請求項1に記載の積層コイル部品。
【請求項3】
四つの前記端子電極のそれぞれにおいて、一対の前記端面の対向方向での寸法は、一対前記側面の対向方向での寸法よりも大きい、請求項2に記載の積層コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層コイル部品として、たとえば、特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の積層コイル部品は、素体と、素体内に配置されているコイルと、素体の一対の端面の対向方向において離間して配置されていると共に、素体に埋設されている一対の端子電極と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の積層コイル部品のように、端子電極が素体に埋設されている構成では、積層コイル部品の小型化を図れる。しかしながら、端子電極を素体内に配置すると、素体内の領域が小さくなるため、コイルの内径を大きくすることができない。また、従来の積層コイル部品において、コイルの内径を大きくしようとすると、端子電極とコイルとの間の距離が短くなる。これにより、コイルと端子電極とにより形成される浮遊容量(寄生容量)が大きくなり、特性が低下するという問題が生じる。
【0005】
本発明の一側面は、特性の向上が図れる積層コイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る積層コイル部品は、互いに対向している一対の端面と、互いに対向している一対の主面と、互いに対向している一対の側面と、を有し、一方の主面が実装面である素体と、素体内に配置されており、一対の主面の対向方向に沿ってコイル軸が延在しているコイルと、素体に埋設されていると共に、一対の端面のそれぞれと一対の側面のそれぞれとによって形成されている素体の四つの角部のそれぞれに配置されている四つの端子電極と、を備え、四つの端子電極のそれぞれは、少なくとも端面、実装面及び側面にわたって配置されており、コイルの一部は、一対の主面の対向方向から見て、一対の側面の対向方向において対向して配置されている一対の端子電極の間に形成されている第一領域及び第二領域、及び、一対の端面の対向方向において対向して配置されている一対の端子電極の間に形成されている第三領域及び第四領域の少なくとも一方に配置されている。
【0007】
本発明の一側面に係る積層コイル部品では、四つの端子電極のそれぞれは、素体に埋設されている。そのため、四つの端子電極が素体の外形内に収まり、素体の外表面から突出しない。したがって、積層コイル部品は、小型化が図れる。この構成において、積層コイル部品では、コイルの一部は、第一領域及び第二領域、及び、第三領域及び第四領域の少なくとも一方に配置されている。このように、積層コイル部品では、対向して配置されている一対の端子電極の間の領域にコイルの一部を配置している。そのため、積層コイル部品では、コイルの内径を大きくすることができるため、Q値の向上が図れる。したがって、積層コイル部品では、特性の向上が図れる。また、積層コイル部品では、コイルの内径を大きくした場合であっても、コイルと端子電極との間の距離を確保できる。したがって、積層コイル部品では、端子電極とコイルとの間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。その結果、積層コイル部品では、特性の向上が図れる。
【0008】
積層コイル部品では、四つの端子電極のそれぞれは、少なくとも端面、実装面及び側面にわたって配置されている。この構成では、積層コイル部品を例えば回路基板などに実装したときに、四つの端子電極のそれぞれにおいて、端面、実装面及び側面に対応する部分にはんだが形成される。したがって、積層コイル部品と回路基板とを強固に固着させることができる。また、積層コイル部品では、四つの端子電極のそれぞれにおいて、端面及び側面に対応する部分に形成されるため、はんだが確実に形成されていることを視認できる。
【0009】
一実施形態においては、素体の一対の端面の対向方向での第一寸法は、一対の側面の対向方向での第二寸法よりも大きく、コイルの一部は、少なくとも第一領域及び第二領域に配置されていてもよい。この構成では、直方体形状を呈する素体内に配置されているコイルにおいて、コイルの内径を最も大きくすることができる。したがって、積層コイル部品では、特性の向上をより一層図れる。
【0010】
一実施形態においては、四つの端子電極のそれぞれにおいて、一対の端面の対向方向での寸法は、一対の側面の対向方向での寸法よりも大きくてもよい。この構成では、一対の側面の対向方向において、第一領域及び第二領域を大きくすることができる。したがって、積層コイル部品では、コイルの内径を大きくしつつ、コイルと端子電極との間の距離を確保できる。その結果、積層コイル部品では、特性の向上をより一層図れる。
【0011】
一実施形態においては、一対の側面の対向方向において対向して配置されている一対の端子電極を連結していると共に、実装面に配置されている連結電極を有していてもよい。この構成では、積層コイル部品を例えば回路基板などに実装したときに、積層コイル部品と回路基板とをより一層強固に固着させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、特性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される積層コイル部品の素体及びコイル導体の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、端子電極及びコイルの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、端子電極及びコイルの構成を示す図である。
【
図5】
図5は、端子電極及びコイルの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る積層コイル部品を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示される積層コイル部品の素体及びコイル導体の構成を示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、他の実施形態に係る積層コイル部品の端子電極及びコイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
[第1実施形態]
図1に示されるように、積層コイル部品1は、直方体形状を呈している素体2と、端子電極3,4,5,6と、を備えている。四つの端子電極3,4,5,6は、素体2の角部にそれぞれ配置されている。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。
【0016】
素体2は、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の主面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。一対の主面2c,2dの対向方向、すなわち、端面2a,2bに平行な方向が、第一方向D1である。一対の端面2a,2bの対向方向、すなわち、主面2c,2dに平行な方向が、第二方向D2である。一対の側面2e,2fの対向方向が、第三方向D3である。本実施形態では、第一方向D1は、素体2の高さ方向である。第二方向D2は、素体2の長手方向であり、第一方向D1と直交している。第三方向D3は、素体2の幅方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。
【0017】
素体2の第二方向D2に沿った長さ寸法(第一寸法)Lは、第三方向D3に沿った幅寸法(第二寸法)Wよりも大きい(L>W)。素体2の長さ寸法Lは、第一方向D1に沿った高さ寸法Hよりも大きい(L>W)。素体2の幅寸法Wは、高さ寸法Hと同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態では、素体2の各寸法は、積層コイル部品1の各寸法に相当する。
【0018】
一対の端面2a,2bは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の端面2a,2bは、第三方向D3、すなわち、一対の主面2c,2dの短辺方向にも延在している。一対の側面2e,2fは、一対の主面2c,2dの間を連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面2e,2fは、第二方向D2、すなわち、一対の端面2a,2bの長辺方向にも延在している。積層コイル部品1は、電子機器(たとえば、回路基板又は電子部品)に、たとえば、はんだ実装される。積層コイル部品1では、主面2dが、電子機器に対向する実装面を構成する。
【0019】
図2に示されるように、素体2は、第三方向D3に複数の絶縁体層7が積層されて構成されている。素体2は、積層されている複数の絶縁体層7を有している。素体2では、複数の絶縁体層7が積層されている方向が、第一方向D1と一致する。実際の素体2では、各絶縁体層7は、各絶縁体層7の間の境界が視認できない程度に一体化されている。各絶縁体層7は、たとえば、磁性材料により構成されている。磁性材料は、たとえば、Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料を含んでいる。各絶縁体層7を構成する磁性材料は、Fe合金を含んでいてもよい。各絶縁体層7は、非磁性材料から構成されていてもよい。非磁性材料は、たとえば、ガラスセラミック材料又は誘電体材料を含んでいる。本実施形態では、各絶縁体層7は、磁性材料を含むグリーンシートの焼結体から構成されている。
【0020】
端子電極3は、素体2の端面2a側に配置されている。端子電極3は、素体2において、端面2aと側面2eとによって形成されている角部に配置されている。端子電極4は、素体2の端面2a側に配置されている。端子電極4は、素体2において、端面2aと側面2fとによって形成されている角部に配置されている。端子電極5は、素体2の端面2b側に配置されている。端子電極5は、素体2において、端面2bと側面2eとによって形成されている角部に配置されている。端子電極6は、素体2の端面2b側に配置されている。端子電極6は、素体2において、端面2bと側面2fとによって形成されている角部に配置されている。
【0021】
端子電極3と端子電極4とは、第三方向D3で互いに離間しており、互いに対向して配置されている。端子電極5と端子電極6とは、第三方向D3で互いに離間しており、互いに対向して配置されている。端子電極3と端子電極5とは、第二方向D2で互いに離間しており、互いに対向して配置されている。端子電極4と端子電極6とは、第二方向D2で互いに離間しており、互いに対向して配置されている。
【0022】
各端子電極3,4,5、6は、素体2に埋設されている。各端子電極3,4,5、6は、素体2に形成される凹部に配置されている。端子電極3は、端面2a、主面2d及び側面2eにわたって配置されている。端子電極4は、端面2a、主面2d及び側面2fにわたって配置されている。端子電極5は、端面2b,主面2d及び側面2eにわたって配置されている。端子電極6は、端面2b、主面2d及び側面2fにわたって配置されている。本実施形態では、端子電極3の表面は、端面2a、主面2d及び側面2eのそれぞれと略面一である。端子電極4の表面は、端面2a、主面2d及び側面2fのそれぞれと略面一である。端子電極5の表面は、端面2b、主面2d及び側面2eのそれぞれと略面一である。端子電極6の表面は、端面2b、主面2d及び側面2fのそれぞれと略面一である。
【0023】
各端子電極3,4,5,6は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。各端子電極3,4,5,6は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。各端子電極3,4,5,6の表面には、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、電気めっき又は無電解めっきにより形成される。めっき層は、たとえば、Ni、Sn、又はAuを含んでいる。
【0024】
端子電極3は、直方体形状を呈している。
図2に示されるように、端子電極3は、複数の電極層10が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層10の数は、「6」である。電極層10は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。各電極層10は、対応する絶縁体層7に形成されている欠損部に設けられている。電極層10は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。グリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから絶縁体層7が得られる際に、導電性ペーストから電極層10が得られる。実際の端子電極3では、各電極層10は、各電極層10の間の境界が視認できない程度に一体化されている。グリーンシートに形成された欠損部によって、焼成後の素体2の、端子電極3が配置される凹部が得られる。
【0025】
図1に示されるように、端子電極4は、直方体形状を呈している。
図2に示されるように、端子電極4は、複数の電極層11が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層11の数は、「6」である。電極層11は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。各電極層11は、対応する絶縁体層7に形成されている欠損部に設けられている。電極層11は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。グリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから絶縁体層7が得られる際に、導電性ペーストから電極層11が得られる。実際の端子電極4では、各電極層11は、各電極層11の間の境界が視認できない程度に一体化されている。グリーンシートに形成された欠損部によって、焼成後の素体2の、端子電極4が配置される凹部が得られる。
【0026】
図1に示されるように、端子電極5は、直方体形状を呈している。
図2に示されるように、端子電極5は、複数の電極層12が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層12の数は、「6」である。電極層12は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。各電極層12は、対応する絶縁体層7に形成されている欠損部に設けられている。電極層12は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。グリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから絶縁体層7が得られる際に、導電性ペーストから電極層12が得られる。実際の端子電極5では、各電極層12は、各電極層12の間の境界が視認できない程度に一体化されている。グリーンシートに形成された欠損部によって、焼成後の素体2の、端子電極5が配置される凹部が得られる。
【0027】
図1に示されるように、端子電極6は、直方体形状を呈している。
図2に示されるように、端子電極6は、複数の電極層13が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層13の数は、「6」である。電極層13は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。各電極層13は、対応する絶縁体層7に形成されている欠損部に設けられている。電極層13は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。グリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから絶縁体層7が得られる際に、導電性ペーストから電極層13が得られる。実際の端子電極6では、各電極層13は、各電極層13の間の境界が視認できない程度に一体化されている。グリーンシートに形成された欠損部によって、焼成後の素体2の、端子電極6が配置される凹部が得られる。
【0028】
図3に示されるように、各端子電極3,4,5,6の第二方向D2の寸法aは、第三方向D3の寸法bよりも大きい(a>b)。各端子電極3,4,5,6の第一方向D1の寸法cは、寸法a及び寸法bよりも大きい。
図4及び
図5に示されるように、各端子電極3,4,5,6の第一方向D1の寸法cは、素体2の高さ寸法Hよりも小さい(c<H)。すなわち、各端子電極3,4,5,6は、主面2cには露出していない。各端子電極3,4,5,6の主面2c側の端部と主面2cとの間には、素体2が存在している。
【0029】
積層コイル部品1は、素体2内に配置されているコイル8を備えている。コイル8のコイル軸AXは、第一方向D1に沿って延在している。コイル8の外形は、第一方向D1から見て、楕円形状を呈している。
【0030】
コイル8は、
図2に示されるように、第一コイル導体20と、第二コイル導体21と、を有している。第一コイル導体20及び第二コイル導体21は、第一方向D1に沿って、第一コイル導体20及び第二コイル導体21の順に配置されている。第一コイル導体20及び第二コイル導体21は、ループの一部が途切れた形状を略呈しており、一端と他端とを有している。コイル8は、接続導体23を有している。接続導体23は、矩形状を呈している。
【0031】
第一コイル導体20は、一つの電極層10と、一つの電極層11と、一つの電極層12と、一つの電極層13と、同じ層に位置している。第一コイル導体20は、24を介して、電極層13に連結されている。連結導体24は、第一コイル導体20と同じ層に位置している。第一コイル導体20の一端が、連結導体24と接続されている。連結導体24は、電極層13と接続されている。連結導体24は、第一コイル導体20と電極層13とを連結している。これにより、コイル8の一端は、端子電極6に電気的に接続されている。第一コイル導体20は、同じ層に位置している電極層10,11,12から離間している。本実施形態では、第一コイル導体20、連結導体24、及び電極層13は、一体に形成されている。
【0032】
接続導体23は、第一コイル導体20と第二コイル導体21との間の絶縁体層7に配置されている。接続導体23が配置されている絶縁体層7には、一つの電極層10と、一つの電極層11と、一つの電極層12と、一つの電極層13と、が位置している。接続導体23は、同じ層に位置している電極層10,11,12,13から離間している。接続導体23は、第一コイル導体20の他端と接続されていると共に、第二コイル導体21の一端と接続されている。接続導体23は、第一コイル導体20と第二コイル導体21とを連結している。
【0033】
第二コイル導体21は、一つの電極層10と、一つの電極層11と、一つの電極層12と、一つの電極層13と、同じ層に位置している。第二コイル導体21は、連結導体25を介して、電極層10に連結されている。連結導体25は、第二コイル導体21と同じ層に位置している。第二コイル導体21の他端が、連結導体25と接続されている。連結導体25は、電極層10と接続されている。連結導体25は、第二コイル導体21と電極層10とを連結している。これにより、コイル8の他端は、端子電極3に電気的に接続されている。第二コイル導体21は、同じ層に位置している電極層11,12,13から離間している。本実施形態では、第二コイル導体21、連結導体25、及び電極層10は、一体に形成されている。
【0034】
第一コイル導体20及び第二コイル導体21は、接続導体23を通して、電気的に接続されている。第一コイル導体20及び第二コイル導体21は、コイル8を構成している。コイル8は、連結導体24を通して、端子電極6と電気的に接続されている。コイル8は、連結導体24を通して、端子電極3と電気的に接続されている。
【0035】
第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、Ag又はPdを含んでいる。第一コイル導体20及び第二コイル導体21、連結導体24,25、及び、接続導体23は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。
【0036】
本実施形態では、第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25は、各端子電極3,4,5,6と同じ導電性材料を含んでいる。第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25は、各端子電極3,4,5,6と異なる導電性材料を含んでいてもよい。
【0037】
第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25は、対応する絶縁体層7に形成されている欠損部に設けられている。第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25は、グリーンシートに形成された欠損部内に位置している導電性ペーストが焼成されることによって、形成される。上述したようにグリーンシートと導電性ペーストとは同時に焼成される。したがって、グリーンシートから絶縁体層7が得られる際に、導電性ペーストから第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25が得られる。
【0038】
グリーンシートに形成される欠損部は、たとえば、以下の過程によって形成される。まず、絶縁体層7の構成材料及び感光性材料を含む素体ペーストを基材上に付与することにより、グリーンシートを形成する。基材は、たとえば、PETフィルムである。素体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法によりグリーンシートを露光及び現像し、基材上のグリーンシートに欠損部を形成する。欠損部が形成されたグリーンシートは、素体パターンである。
【0039】
電極層10,11,12,13、第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25は、たとえば、以下の過程によって形成される。
【0040】
まず、感光性材料を含む導電性ペーストを基材上に付与することにより、導体材料層を形成する。導電性ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。次に、欠損部に対応するマスクを用い、フォトリソグラフィ法により導体材料層を露光及び現像し、欠損部の形状に対応する導体パターンを基材上に形成する。
【0041】
積層コイル部品1は、たとえば、上述した過程に続く以下の過程によって得られる。導体パターンが、素体パターンの欠損部に組み合わされることにより、素体パターンと導体パターンとが同一層とされたシートが用意される。用意した所定枚数のシートを積層して得られた積層体を熱処理した後に、積層体から、複数のグリーンチップを得る。本過程では、たとえば、切断機で、グリーン積層体をチップ状に切断する。これにより、所定の大きさを有する複数のグリーンチップが得られる。次に、グリーンチップを焼成する。この焼成により、積層コイル部品1が得られる。
【0042】
図3に示されるように、第一方向D1から見て、コイル8の一部は、端子電極3と端子電極4との間の第一領域A1、及び、端子電極5と端子電極6との間の第二領域A2のそれぞれに配置されている。第一領域A1は、第三方向D3において対向して配置されている端子電極3と端子電極4との間に形成されている領域である。第二領域A2は、第三方向D3において対向して配置されている端子電極5と端子電極6との間に形成されている領域である。具体的には、楕円形状を呈するコイル8の長軸方向の両端部が、第一領域A1及び第二領域A2のそれぞれに配置されている。本実施形態では、コイル8の内縁8aの一部が、第一領域A1及び第二領域A2に位置している。
【0043】
図4に示されるように、第三方向D3から見て、コイル8は、端子電極3,4,5,6と重なっている。具体的には、第三方向D3から見て、コイル8の端面2a側の端部が、端子電極3及び端子電極4と重なっている。第三方向D3から見て、コイル8の端面2b側の端部が、端子電極5及び端子電極6と重なっている。
【0044】
コイル8は、端子電極3及び端子電極6に電気的に接続されている。本実施形態では、端子電極4及び端子電極5は、ダミー電極である。積層コイル部品1を回路基板などに実装する場合には、配線に接続されているランド電極に端子電極3及び端子電極6が実装されるように、積層コイル部品1を回路基板に配置する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コイル部品1では、端子電極3,4,5,6が素体2に埋設されている。そのため、端子電極3,4,5,6が素体2の外形内に収まり、素体2の外表面から突出しない。したがって、積層コイル部品1は、小型化が図れる。この構成において、積層コイル部品1では、コイル8の一部は、第一領域A1及び第二領域A2に配置されている。このように、積層コイル部品1では、対向して配置されている一対の端子電極3,4及び一対の端子電極5,6の間の領域にコイル8の一部を配置している。そのため、積層コイル部品1では、コイル8の内径を大きくすることができるため、Q値の向上が図れる。したがって、積層コイル部品1では、特性の向上が図れる。また、積層コイル部品1では、コイル8の内径を大きくした場合であっても、コイル8と端子電極3,4,5,6との間の距離を確保できる。したがって、積層コイル部品1では、端子電極3,4,5,6とコイル8との間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。その結果、積層コイル部品1では、特性の向上が図れる。
【0046】
積層コイル部品1では、四つの端子電極3,4,5,6のそれぞれは、端面2a又は端面2b、主面2d、及び、側面2e又は側面2fにわたって配置されている。この構成では、積層コイル部品1を例えば回路基板などに実装したときに、四つの端子電極3,4,5,6のそれぞれにおいて、端面2a又は端面2b、主面2d、及び、側面2e又は側面2fに対応する部分にはんだが形成される。したがって、積層コイル部品1と回路基板とを強固に固着させることができる。また、積層コイル部品1では、四つの端子電極3,4,5,6のそれぞれにおいて、端面2a又は端面2b、及び、側面2e又は側面2fに対応する部分に形成されるため、はんだが確実に形成されていることを視認できる。
【0047】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、素体2の長さ寸法Lは、素体2の幅寸法Wよりも大きい。コイル8の一部は、第一領域A1及び第二領域A2に配置されている。この構成では、直方体形状を呈する素体2内に配置されているコイル8において、コイル8の内径を最も大きくすることができる。したがって、積層コイル部品1では、特性の向上をより一層図れる。
【0048】
本実施形態に係る積層コイル部品1では、四つの端子電極3,4,5,6のそれぞれにおいて、第二方向D2での寸法aは、第三方向D3での寸法bよりも大きい。この構成では、第三方向D3において、第一領域A1及び第二領域A2を大きくすることができる。したがって、積層コイル部品1では、コイル8の内径を大きくしつつ、コイル8と端子電極3,4,5,6との間の距離を確保することができる。その結果、積層コイル部品1では、特性の向上が図れる。
【0049】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。
図6に示されるように、積層コイル部品1Aは、直方体形状を呈している素体2と、端子電極3,4,5,6と、連結電極26,27と、を備えている。
【0050】
連結電極(第一連結電極)26は、端子電極3と端子電極4とを連結している。連結電極26は、主面2dに配置されている。連結電極26は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。連結電極26は、素体2に埋設されている。連結電極26は、端面2a及び主面2dにわたって配置されている。連結電極26は、第二方向D2において、端子電極3,4よりも端面2b側に突出している。連結電極26の表面は、端面2a及び主面2dと略面一である。
【0051】
連結電極(第二連結電極)27は、端子電極5と端子電極6とを連結している。連結電極27は、主面2dに配置されている。連結電極27は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。連結電極27は、素体2に埋設されている。連結電極27は、端面2b及び主面2dにわたって配置されている。連結電極27は、第二方向D2において、端子電極5,6よりも端面2a側に突出している。連結電極27の表面は、端面2b及び主面2dと略面一である。
【0052】
連結電極26,27は、導電性材料を含んでいる。導電性材料は、たとえば、Ag又はPdを含んでいる。連結電極26,27は、導電性材料粉末を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。導電性材料粉末は、たとえば、Ag粉末又はPd粉末を含んでいる。連結電極26,27の表面には、めっき層が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、電気めっき又は無電解めっきにより形成される。めっき層は、たとえば、Ni、Sn、又はAuを含んでいる。
【0053】
図7に示されるように、端子電極3は、複数の電極層30及び電極層34が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層30の数は、「5」であり、電極層34の数は「1」である。端子電極4は、複数の電極層31及び電極層34が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層31の数は、「5」であり、電極層34の数は「1」である。端子電極5は、複数の電極層32及び電極層35が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層32の数は、「5」であり、電極層35の数は「1」である。端子電極6は、複数の電極層33及び電極層35が積層されて構成されている。本実施形態では、電極層33の数は、「5」であり、電極層35の数は「1」である。連結電極26は、電極層34で構成されている。連結電極27は、電極層35で構成されている。
【0054】
本実施形態に係る積層コイル部品1Aでは、コイル8の一部は、第一領域A1及び第二領域A2に配置されている。このように、積層コイル部品1Aでは、対向して配置されている一対の端子電極3,4及び一対の端子電極5,6の間の領域にコイル8の一部を配置している。そのため、積層コイル部品1Aでは、コイル8の内径を大きくすることができるため、Q値の向上が図れる。したがって、積層コイル部品1Aでは、特性の向上が図れる。また、積層コイル部品1Aでは、コイル8の内径を大きくした場合であっても、コイル8と端子電極3,4,5,6との間の距離を確保できる。したがって、積層コイル部品1Aでは、端子電極3,4,5,6とコイル8との間に発生する浮遊容量を小さくすることができる。その結果、積層コイル部品1Aでは、特性の向上が図れる。
【0055】
本実施形態に係る積層コイル部品1Aは、端子電極3と端子電極4とを連結している連結電極26と、端子電極5と端子電極6とを連結している連結電極27と、を備えている。連結電極26,27は、実装面である主面2dに配置されている。この構成では、積層コイル部品1Aを例えば回路基板などに実装したときに、積層コイル部品1Aと回路基板とをより一層強固に固着させることができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0057】
上記実施形態では、コイル8が端子電極3及び端子電極6に接続されている形態を一例に説明した。しかし、コイル8は、端子電極4及び端子電極5にも接続されていてもよい。
【0058】
上記実施形態では、第一方向D1から見て、コイル8が楕円形状を呈している形態を一例に説明した。しかし、コイル8の形状をこれに限定されない。例えば、
図8に示されるように、積層コイル部品1Bでは、コイル8Aは、多角形形状を呈していてもよい。
【0059】
上記実施形態では、コイル8,8Aの一部が第一領域A1及び第二領域A2に配置されている形態を一例に説明した。しかし、コイル8,8Aの一部は、端子電極3と端子電極5との間の第三領域、及び、端子電極4と端子電極6との間の第四領域に配置されていてもよい。また、コイル8,8Aの一部は、第一領域A1及び第二領域A2、及び、第三領域及び第四領域に配置されていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、端子電極3,4,5,6の寸法cが素体2の高さ寸法Hよりも小さい形態を一例に説明した。しかし、端子電極3,4,5,6の寸法cは、素体2の高さ寸法Hと同等であってもよい。端子電極3,4,5,6は、主面2cから主面2dにわたって配置されていてもよい。
【0061】
上記実施形態では、コイル8が、第一コイル導体20及び第二コイル導体21、接続導体23、及び、連結導体24,25を有している形態を一例に説明した。しかし、コイル8を構成する各導体の数は上述した値に限られない。コイル8Aについても同様である。
【0062】
上記実施形態では、絶縁体層7が、磁性材料又は非磁性材料により構成されている形態を一例に説明した。しかし、絶縁体層7は、たとえば、樹脂材料により構成されていてもよい。この構成において、コイル8,8Aの各導体を構成する材料は、たとえば、Cuであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,1A,1B…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c,2d…主面、2e,2f…側面、3,4,5,6…端子電極、8,8A…コイル、26,27…連結電極、A1…第一領域、A2…第二領域、AX…コイル軸。