(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】電力増幅装置及び電磁波放射装置
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20231024BHJP
H03F 3/20 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H03F1/02
H03F3/20
(21)【出願番号】P 2019053358
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木下 洋平
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-141757(JP,A)
【文献】特開2003-218646(JP,A)
【文献】特表2005-521312(JP,A)
【文献】特開2009-130150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
H05K1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が入力される入力端子及び出力信号を出力する出力端子を有するトランジスタと、
前記トランジスタ上に積層され且つ前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第1の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の基本波に対する負荷インピーダンスを、前記トランジスタのインピーダンスに整合させる基本波整合回路と、
前記第1の導電膜との間に第1の誘電体層を挟んで前記第1の導電膜上に積層され且つ前記第1の誘電体層を貫通するビアを介して前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第2の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の高調波に対するインピーダンスを調整する高調波処理回路と、
を含み、
前記高調波処理回路は、フローティング電位とされる第5の導電膜を含
み、
前記第1の導電膜は、前記トランジスタと前記第1の誘電体層との間に設けられており、
前記第5の導電膜は、前記第2の導電膜が設けられた導電体層と同じ導体層において、前記第2の導電膜の周囲に設けられている
電力増幅装置。
【請求項2】
前記第1の誘電体層上に積層され、所定の電位が印加される第3の導電膜と、
前記第3の導電膜と前記第2の導電膜との間に設けられた第2の誘電体層と、
を含む
請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項3】
前記高調波処理回路は、
前記第2の誘電体層上に積層され、前記第2の誘電体層を貫通するビアを介して前記第3の導電膜に接続された第4の導電膜と、
前記第2の導電膜に一方の電極が接続され、前記第4の導電膜に他方の電極が接続されたキャパシタと、
を含む
請求項2に記載の電力増幅装置。
【請求項4】
前記第1の導電膜は、前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接する導電体層を含み、
前記第1の誘電体層は、前記導電体層に積層され、
前記第2の導電膜は、前記第1の誘電体層を貫通するビア及び前記導電体層を介して、前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続される
請求項1に記載の電力増幅装置。
【請求項5】
前記高調波処理回路は、
前記第2の導電膜を含んで構成されるインダクタと、前記キャパシタとが直列接続されたLC共振回路を形成しており、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の2倍波に対するインピーダンスをゼロとするように構成されている
請求項
3に記載の電力増幅装置。
【請求項6】
供給される信号に対して所定の処理を行う信号処理装置と、前記信号処理装置によって処理された信号が入力信号として入力され、前記入力信号の電力を増幅して出力する電力増幅装置と、前記電力増幅装置から出力された出力信号を電磁波として放射するアンテナと、を含む電磁波放射装置であって、
前記電力増幅装置は、
入力信号が入力される入力端子及び出力信号を出力する出力端子を有するトランジスタと、
前記トランジスタ上に積層され且つ前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第1の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の基本波に対する負荷インピーダンスを、前記トランジスタのインピーダンスに整合させる基本波整合回路と、
前記第1の導電膜との間に第1の誘電体層を挟んで前記第1の導電膜上に積層され且つ前記第1の誘電体層を貫通するビアを介して前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第2の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の高調波に対するインピーダンスを調整する高調波処理回路と、
を含み、
前記高調波処理回路は、フローティング電位とされる第5の導電膜を含
み、
前記第1の導電膜は、前記トランジスタと前記第1の誘電体層との間に設けられており、
前記第5の導電膜は、前記第2の導電膜が設けられた導電体層と同じ導体層において、前記第2の導電膜の周囲に設けられている
電磁波放射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、高調波処理回路を備えた電力増幅装置及び電磁波放射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高調波処理回路に関する技術として、以下の技術が知られている。例えば、高調波処理回路を備えた入力側整合回路基板及び出力側整合回路基板と、半導体素子とが電気的に接続された半導体装置が知られている。この半導体装置において、入力側整合回路基板及び出力側整合回路基板が、誘電率の異なる高誘電率基板及び低誘電率基板から構成されており、誘電率の高い層で基本波整合の処理が行われ、誘電率の低い層で2倍波、3倍波の高調波処理が行われる。
【0003】
また、複数の絶縁層膜のうちトランジスタと整合回路との間にある絶縁層膜にトランジスタのソース電極と接続されている配線が形成され、その配線がトランジスタのゲート電極及びドレイン電極の上部を覆っているように構成された高周波増幅器が知られている。
【0004】
また、複数のセラミック基板を積層して構成された高周波電力増幅回路装置が記載されている。この装置において、最上の第1セラミック基板の上に半導体チップと、高周波整合回路とが搭載され、中間の第2セラミック基板にグランド層が形成され、最下の第3セラミック基板の上面にバイアス回路、下面にグランド電極がそれぞれ形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-309198号公報
【文献】特開2015-103913号公報
【文献】特開平8-335836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高周波の入力信号の電力を増幅して出力する電力増幅装置においては、主に、複数の周波数成分のうちの基本波に対してインピーダンス整合を行うことで電力変換効率の向上が図られている。
【0007】
図1は、電力増幅装置をA級動作で動作させた場合の電流・電圧波形の一例を示す図である。A級動作においては、電流波形と電圧波形は、互いに反転関係となり、
図1においてハッチングで示された、電流と電圧の双方が発生している領域において電力は熱に変換され、消費される。A級動作における、下記の(1)式によって表わされる変換効率PAE(Power Added Efficiency)は、60%程度である。例えば300W級の電力増幅装置の変換効率PAEが60%の場合、120Wが熱に変換され、放熱が間に合わず、電力増幅装置を構成するデバイス性能が劣化または破損する可能性がある。なお、(1)式において、P
outは電力増幅装置から出力される出力電力、P
inは電力増幅装置に入力される入力電力、P
dcは、電力増幅装置に供給される直流電力である。
【数1】
【0008】
図2は、電力増幅装置をF級動作で動作させた場合の電流・電圧波形の一例を示す図である。F級動作においては、電圧波形は矩形波となり、電流波形は半波整流波形となる。そして、電圧が発生している期間において電流は略ゼロとなり、電流が発生している期間において電圧は略ゼロとなる。従って、
図2においてハッチングで示された、電流と電圧の双方が発生している領域の面積は、A級動作の場合と比較して顕著に小さくなる。すなわち、電力増幅装置をF級動作で動作させることで、A級動作で動作させた場合と比較して変換効率PAEを大幅に向上させることができる。
【0009】
電力増幅装置をF級動作で動作させた場合における電流I
dは(2)式によって表わされ、電圧V
dは(3)式によって表わされる。なお、(2)式においてI
maxは電流Idのピーク値を示し、(3)式においてV
maxは、電圧Vdのピーク値を示す。
【数2】
【数3】
(2)式に示すように、電流Idは偶数次高調波の重ね合わせであり、電圧Vdは、奇数次高調波の重ね合わせである。電力増幅装置においてF級動作を実現するためには、奇数次高調波(主に3倍波)に対するインピーダンスを無限大とし、偶数次高調波(主に2倍波)に対するインピーダンスをゼロにすればよい。このような高調波に対するインピーダンス調整は、例えば、
図3に示すように、電力増幅用のトランジスタ200の出力端子(ドレイン)に、高調波のインピーダンスを調整する高調波処理回路201を接続することにより実現される。なお、2倍波及び3倍波の双方に対するインピーダンスを適切なインピーダンスに調整する事が望ましいが、2倍波に対してのみインピーダンス調整を行う場合でも、変換効率PAEは10%程度改善する。
【0010】
図4は、高調波(例えば2倍波)に対するインピーダンスを調整する高調波処理回路201を備えた電力増幅装置300の構成の一例を示す斜視図である。電力増幅装置300は、電力増幅用のトランジスタ200、高調波処理回路201に加え、トランジスタ200から出力される信号の基本波に対する負荷インピーダンスを、トランジスタのインピーダンスに整合させる基本波整合回路202を備えている。トランジスタ200、高調波処理回路201及び基本波整合回路202は、同一平面上に並置され、トランジスタ200と、基本波整合回路202との間に、高調波処理回路201が配置されている。トランジスタ200と高調波処理回路201及びトランジスタ200と基本波整合回路202とがそれぞれワイヤ203により接続されている。
【0011】
しかしながら、この構成によれば、トランジスタ200と基本波整合回路202とを接続するワイヤ203の長さが長くなる。トランジスタ200の出力インピーダンスは、通常数オーム程度と低いため、ワイヤ203の長さが長くなると、ワイヤ203の持つ損失成分が大きく見えてしまう。すなわち、
図4に示す構成によれば、高調波処理回路201によって変換効率を向上させたとしても、基本波整合回路202における損失が過大となり電力増幅装置300全体としての変換効率を向上させることが困難となる。
【0012】
開示の技術は、1つの側面として、電力増幅装置の変換効率を従来よりも高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示の技術に係る電力増幅回路は、入力信号が入力される入力端子及び出力信号を出力する出力端子を有するトランジスタを含む。電力増幅装置は、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の基本波に対する負荷インピーダンスを、前記トランジスタのインピーダンスに整合させる基本波整合回路を含む。電力増幅装置は、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の高調波に対するインピーダンスを調整する高調波処理回路を含む。前記基本波整合回路は、トランジスタ上に積層され且つ前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第1の導電膜を含む。前記高調波処理回路は、前記第1の導電膜との間に第1の誘電体層を挟んで前記第1の導電膜上に積層され且つ前記第1の誘電体層を貫通するビアを介して前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第2の導電膜を含む。前記高調波処理回路は、フローティング電位とされる第5の導電膜を含む。前記第1の導電膜は、前記トランジスタと前記第1の誘電体層との間に設けられている。前記第5の導電膜は、前記第2の導電膜が設けられた導電体層と同じ導体層において、前記第2の導電膜の周囲に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
開示の技術によれば、1つの側面として、電力増幅装置の変換効率を従来よりも高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】電力増幅装置をA級動作で動作させた場合の電流・電圧波形の一例を示す図である。
【
図2】電力増幅装置をF級動作で動作させた場合の電流・電圧波形の一例を示す図である。
【
図3】F級動作を実現するための構成の一例を示す図である。
【
図4】電力増幅装置の構成の一例を示す斜視図である。
【
図5A】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図5B】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図6】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の構成要素を分解して示した斜視図である。
【
図7】開示の技術の実施形態に係る基本波整合回路を構成する導電膜のパターンの一例を示す平面図である。
【
図8】開示の技術の実施形態に係る第2のメタル層に設けられた導電膜のパターンの一例を示す平面図である。
【
図9】開示の技術の実施形態に係る高調波処理回路を構成する導電膜のパターンの一例を示す平面図である。
【
図10】開示の技術の実施形態に係る高調波処理回路の等価回路図である。
【
図11】開示の技術の実施形態に係る高調波処理回路を構成する導電膜のパターンの一例を示す平面図である。
【
図12】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図13A】開示の技術の実施形態に係る電磁波放射装置の構成の一例を示す図である。
【
図13B】開示の技術の実施形態に係る電磁波放射装置の構成の一例を示す図である。
【
図14A】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14B】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14C】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14D】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14E】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14F】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14G】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14H】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14I】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14J】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14K】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14L】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14M】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14N】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14O】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14P】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【
図14Q】開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0017】
図5A及び
図5Bは、それぞれ、開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置1の構成の一例を示す断面図である。電力増幅装置1は、ベース部材10、トランジスタ20、多層基板30を含んで構成されている。
【0018】
ベース部材10は、アルミニウム及び銅等の導電率及び熱伝導率が比較的高い材料で構成されており、その表面にトランジスタ20が搭載されている。ベース部材10には接地電位が印加される。
【0019】
トランジスタ20は、電力増幅用の能動素子であり、入力信号が入力される入力端子としてのゲート電極(
図5A、
図5Bにおいて図示せず)、出力信号が出力される出力端子としてのドレイン電極21、接地電位が印加される接地端子としてのソース電極22を上面側に有する。トランジスタ20の下面側には、ビア25を介してソース電極22に接続された裏面電極24が設けられている。裏面電極24は、AuSn及びAgペースト等の導電性接合部材を用いて、ベース部材10に接合されている。すなわち、トランジスタ20のソース電極22には、ベース部材10、裏面電極24及びビア25を介して接地電位が印加される。トランジスタ20として、例えば、高周波・高出力トランジスタとして知られている窒化ガリウム高電子移動度トランジスタ(GaN-HEMT)を用いることが可能である。トランジスタ20のゲート電極に入力される入力信号及びトランジスタ20のドレイン電極21から出力される出力信号は、一例として基本波の周波数が2.45GHzである高周波信号が想定される。
【0020】
多層基板30は、トランジスタ20上に積層されている。多層基板30は、第1のメタル層M1、第1の誘電体層D1、第2のメタル層M2、第2の誘電体層D2及び第3のメタル層M3がこの順で積層された積層構造を有する。第1のメタル層M1に設けられた導電膜が、トランジスタ20のドレイン電極21、ソース電極22、ゲート電極のいずれかに接続される。
【0021】
多層基板30とトランジスタ20との積層構造は、例えば、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)技術を用いて実現することができる。FOWLP技術によれば、多層基板30を構成する各メタル層が再配線プロセスを用いて形成され、
図5Aに示すように、ワイヤ及びバンプを用いることなく、トランジスタ20と多層基板30とを接続することができる。また、多層基板30とトランジスタ20との積層構造は、フリップチップボンディング技術を用いて実現することもできる。フリップチップボンディング技術によれば、別々に製造された多層基板30とトランジスタ20が、
図5Bに示すように、バンプ11を介して接続される。
【0022】
図6は、電力増幅装置1の構成要素を分解して示した斜視図である。
図6において、第1の誘電体層D1及び第2の誘電体層D2の図示が省略されている。
【0023】
トランジスタ20上に積層される第1のメタル層M1には、基本波整合回路40を構成する導電膜41が設けられている。基本波整合回路40は、トランジスタ20のドレイン電極21から出力される出力信号の基本波に対する負荷インピーダンスを、トランジスタ20のインピーダンスに整合させる回路である。負荷インピーダンスは、トランジスタ20から電力の供給を受ける負荷(図示せず)の入力インピーダンスである。多層基板30とトランジスタ20との接続を、フリップチップボンディング技術を用いて行う場合、基本波整合回路40を構成する導電膜41は、バンプ11を介してドレイン電極21に接続される。また、第1のメタル層M1には、バンプ11を介してソース電極22に接続された導電膜42が設けられている。導電膜42は、導電膜41から絶縁されている。
【0024】
図7は、基本波整合回路40を構成する導電膜41のパターンの一例を示す平面図である。導電膜41は、一端部においてバンプ11に接続され、他端部に向けて伸びている。導電膜41の各部の形状または寸法を調整することで、基本波整合回路40のインピーダンスを調整することができ、出力信号の基本波に対する負荷インピーダンスを、トランジスタ20のインピーダンスに整合させることができる。
【0025】
第1の誘電体層D1は、第1のメタル層M1上に積層されている。第1の誘電体層D1は、例えば、アルミナ及びジルコニウム等の誘電体によって構成されている。
【0026】
第2のメタル層M2は、第1の誘電体層D1上に積層されている。第2のメタル層M2には、第1の誘電体層D1を貫通するビア12及び第1のメタル層M1に設けられた導電膜42を介してソース電極22に接続された導電膜50を有する。すなわち、導電膜50はソース電極22と電気的に接続され、導電膜50には接地電位が印加される。
【0027】
図8は、第2のメタル層M2に設けられた導電膜50のパターンの一例を示す平面図である。導電膜50は、第2のメタル層M2の略全域に亘って延在しており、これにより、第2のメタル層M2にはグランドプレーンが形成される。また、導電膜50は、第1のメタル層M1から第2のメタル層M2を通過して、第3のメタル層M3まで伸びるビア13を回避するようにパターニングされている。
【0028】
第3のメタル層M3は、第2の誘電体層D2上に積層されている。第3のメタル層M3には、高調波処理回路60を構成する導電膜61、62が設けられている。高調波処理回路60は、トランジスタ20のドレイン電極21から出力される出力信号の高調波のインピーダンスを調整する回路である。本実施形態において、高調波処理回路60は、出力信号の2倍波に対するインピーダンスをゼロに調整する。出力信号の2倍波に対するインピーダンスをゼロに調整することで、電力増幅装置1においてF級動作を実現できる。高調波処理回路60を構成する導電膜61は、第1の誘電体層D1及び第2の誘電体層D2を貫通するビア13及び第1のメタル層M1に設けられた導電膜41を介してドレイン電極21に接続されている。一方、高調波処理回路60を構成する導電膜62は、第2の誘電体層D2を貫通するビア14を介して第2のメタル層M2に設けられた導電膜50に接続されている。すなわち、導電膜62には、接地電位が印加される。
【0029】
図9は、第3のメタル層M3に設けられた高調波処理回路60を構成する導電膜のパターンの一例を示す平面図である。
【0030】
上記のように、高調波処理回路60は、ビア13を介してドレイン電極21に接続された導電膜61と、ビア14を介して第2のメタル層M2に設けられた導電膜50に接続された導電膜62を有する。導電膜62は、導電膜61との間に間隙を隔てて導電膜61の近傍に配置されている。
【0031】
また、高調波処理回路60は、導電膜61の周囲に配列された複数の導電膜63を有する。導電膜63の各々は、第1のメタル層M1、第2のメタル層M2及びトランジスタ20のいずれにも接続されておらず、フローティング電位とされている。導電膜63の直下には、第2の誘電体層D2を挟んで第2のメタル層M2に形成された導電膜50が配置されている。この構造により、導電膜63を一方の電極とし、導電膜50を他方の電極とするキャパシタが構成される。
【0032】
図9に示すように、高調波処理回路60は、一方の電極が導電膜61に接続され、他方の電極が導電膜62に接続されたチップキャパシタ64を含み得る。
【0033】
図10は、高調波処理回路60の等価回路図である。高調波処理回路60は、導電膜61及びビア13を含んで構成されるインダクタ成分601と、チップキャパシタ64を含んで構成されるキャパシタ成分602とが直列接続されたLC直列回路を形成している。例えば、導電膜61の形状または寸法を調整することで、インダクタ成分601のインダクタンスを調整することが可能である。また、例えば、チップキャパシタ64の増設などによりキャパシタ成分602のキャパシタンスを調整することが可能である。更に、
図9に示すように、導電膜63と導電膜61とをワイヤ65によって結線することで、キャパシタ成分602のキャパシタンスを調整することも可能である。複数の導電膜63のうち、導電膜61に結線されるものの数を増やすことで、キャパシタ成分602のキャパシタンスを大きくすることができる。高調波処理回路60において、インダクタ成分601のインダクタンス及びキャパシタ成分602のキャパシタンスを調整することで、例えば、トランジスタ20から出力される出力信号の2倍波に対するインピーダンスを略ゼロに調整することができる。これにより、電力増幅装置1においてF級動作を実現できる。
【0034】
以上のように、開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置1において、第1のメタル層M1に基本波整合回路40が形成され、第3のメタル層M3に高調波処理回路60が形成された多層基板30が、トランジスタ20に積層されている。基本波整合回路40を構成する導電膜41は、トランジスタ20の直上に配置され、ドレイン電極21に接続されている。また、高調波処理回路60を構成する導電膜61が、第1の誘電体層D1及び第2の誘電体層D2を貫通するビア13及び第1のメタル層M1を介してドレイン電極21に接続されている。すなわち、トランジスタ20上に基本波整合回路40及び高調波処理回路60が積層されている。電力増幅装置1が上記のように構成されることで、基本波整合回路40及び高調波処理回路60をトランジスタ20の直近に配置することができる。また、基本波整合回路40及び高調波処理回路60と、トランジスタ20との接続にワイヤを用いることを要しない。従って、基本波整合回路40及び高調波処理回路60と、トランジスタ20との接続部における損失を抑制することができるので、電力増幅装置1の変換効率を従来よりも高めることが可能となる。
【0035】
また、高調波処理回路60は、トランジスタ20のドレイン電極21に接続された導電膜61と、第2のメタル層M2に設けられた導電膜50に接続された導電膜62とを含む。これにより、一方の電極が導電膜61に接続され、他方の電極が導電膜62に接続されたチップキャパシタ64を高調波処理回路60に含めることができ、高調波処理回路60のインピーダンス調整を柔軟に行うことが可能となる。また、高調波処理回路60は、導電膜61の近傍に配置され且つフローティング電位とされた複数の導電膜63を含む。これにより、導電膜63と導電膜61とをワイヤ65によって結線することによって高調波処理回路60のインピーダンス調整を行うことができ、高調波処理回路60におけるインピーダンス調整の柔軟性をより高めることができる。
【0036】
なお、以上の説明では、基本波整合回路及び高調波処理回路が、それぞれ、トランジスタの出力端子であるドレイン電極に接続された構成を例示したが、この態様に限定されない。基本波整合回路及び高調波処理回路は、トランジスタの入力端子であるゲート電極に接続されていてもよい。すなわち、電力増幅装置1は、トランジスタ20に入力される入力信号に対して処理を行う基本波整合回路及び高調波処理回路を有していてもよい。また、ドレイン電極及びゲート電極の各々に、別々の基本波整合回路及び別々の高調波処理回路が接続されていてもよい。すなわち、電力増幅装置1は、トランジスタ20に入力される入力信号に対して処理を行う基本波整合回路及び高調波処理回路と、トランジスタ20から出力される出力信号に対して処理を行う基本波整合回路及び高調波処理回路を有していてもよい。
【0037】
また、以上の説明では、第3のメタル層M3に、出力信号の2倍波に対するインピーダンスをゼロとする高調波処理回路60のみを形成する場合を例示したが、この態様に限定されない。例えば、
図11に示すように、第3のメタル層M3には、出力信号の2倍波に対するインピーダンスをゼロとする高調波処理回路60A及び出力信号の3倍波に対するインピーダンスを無限大とする高調波処理回路60Bが設けられていてもよい。
【0038】
また、電力増幅装置1は、
図12に示すように、第3のメタル層M3に設けられる導電膜62に接続された放熱板80を含んでいてもよい。これにより、トランジスタ20から発せられる熱の拡散を促進させることができ、トランジスタ20の温度上昇を抑制することができる。
【0039】
図13Aは、電力増幅装置1を含んで構成される開示の技術の実施形態に係る電磁波放射装置100の構成の一例を示す図である。電磁波放射装置100は、信号を電磁波に変換して放射することにより、外部装置と通信を行う機能を有し、電力増幅装置1、信号処理装置101、ドライバアンプ102及びアンテナ103を含んで構成されている。
【0040】
信号処理装置101は、デジタルアナログ変換器110、変調回路111を含んで構成されている。デジタルアナログ変換器110は、入力されるデジタル信号をアナログ信号に変換する。変調回路111は、デジタルアナログ変換器110から出力されるアナログ信号に所定の変調処理を施す。ドライバアンプ102は、変調回路111から出力される高周波信号を、電力増幅装置1における飽和出力値において、効率が最大となるレベルにまで増幅する。電力増幅装置1は、ドライバアンプ102から出力される信号の電力を増幅して出力する。アンテナ103は、電力増幅装置1の出力インピーダンスに整合した入力インピーダンスを有する。電力増幅装置1から出力される信号は、電磁波としてアンテナ103から放射される。
【0041】
図13Bは、電磁波放射装置100が、2つの通信チャンネルを有する場合の構成の一例を示す図である。この場合、ドライバアンプ102、電力増幅装置1及びアンテナ103は、それぞれ2つずつ用いられる。なお、電磁波放射装置100は、3つ以上の通信チャンネルを有していてもよい。電磁波放射装置100が、N個の通信チャンネルを有する場合、ドライバアンプ102、電力増幅装置1及びアンテナ103は、それぞれN個ずつ用いられる。
【0042】
以下に、開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法について
図14A~
図14Qを参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、FOWLP技術を用いて電力増幅装置を製造する場合を例示する。また、以下の説明では、トランジスタのドレイン電極に、出力側の基本波整合回路及び出力側の高調波処理回路を接続し、トランジスタのゲート電極に入力側の基本波整合回路及び入力側の高調波処理回路を接続する場合について例示する。
【0043】
はじめに、ベース部材10の表面に、AuSn及びAgペースト等の導電性接合部材(図示せず)を用いてトランジスタ20を接合する(
図14A)。
【0044】
次に、ベース部材10の表面に感光性を有するレジスト70aを形成する。トランジスタ20は、レジスト70aの内部に埋設される(
図14B)。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト70aをパターニングする。これにより、ドレイン電極21とゲート電極23の間に開口部71が形成される(
図14C)。次に、レジスト70aの表面に感光性を有するレジスト70bを形成する(
図14D)。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト70bをパターニングする。これにより、レジスト70a、ドレイン電極21及びゲート電極23の表面が露出し、ドレイン電極21とゲート電極23との間にレジスト70bの残存部分からなるマスク72が形成される(
図14E)。
【0045】
次に、スパッタ法または蒸着法を用いて、トランジスタ20の上部を覆う導電膜41を形成する。導電膜41が形成される層が第1のメタル層M1とされる(
図14F)。次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて導電膜41をパターニングする。導電膜41のマスク72上に形成された部分は、マスク72とともに除去される。導電膜41のパターニングにより、第1のメタル層M1において、ゲート電極23に接続された入力側の基本波整合回路40G及びドレイン電極21に接続された出力側の基本波整合回路40Dが形成される(
図14G)。
【0046】
次に、導電膜41の表面に、感光性を有するレジスト70cを形成する。レジスト70cが形成される層が第1の誘電体層D1とされる(
図14H)。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト70cをパターニングする。これにより、導電膜41の、入力側の基本波整合回路40Gを構成する部分及び出力側の基本波整合回路40Dを構成する部分をそれぞれ部分的に露出させる開口部73が形成される(
図14I)。次に、レジスト70cの表面に感光性を有するレジスト70dを形成する。レジスト70cの開口部73にはレジスト70dが充填される(
図14J)。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト70dをパターニングする。これにより、レジスト70dの開口部73に充填された部分が除去されると共に、レジスト70cの表面に、レジスト70dの残存部分からなるマスク74が形成される(
図14K)。
【0047】
次に、スパッタ法または蒸着法を用いて、レジスト70cの表面に導電膜50を形成する。導電膜50が形成される層が第2のメタル層M2とされる(
図14L)。次に、導電膜50のマスク74上に形成された部分を、マスク74とともに除去する。これにより、導電膜50がパターニングされる。導電膜50は、ビア(図示せず)を介してトランジスタ20のソース電極(図示せず)に接続された部分がグランドプレーンとして機能する。また、導電膜50の、レジスト70cの開口部73(
図14K参照)に充填された部分おいてビア51が形成される。ビア51は、第1のメタル層M1に設けられた導電膜41に接続される。
【0048】
次に、導電膜50の表面にレジスト70eを形成する。レジスト70eが形成される層が第2の誘電体層D2とされる(
図14N)。次に、フォトリソグラフィ技術を用いてレジスト70eをパターニングする。これにより、導電膜50を部分的に露出させる開口部75a、75bが形成される。また、所定のパターンを有するマスク76が形成される(
図14O)。
【0049】
次に、スパッタ法または蒸着法を用いて、レジスト70eの表面に導電膜66を形成する。導電膜66が形成される層が第3のメタル層M3とされる(
図14P)。
【0050】
次に、導電膜66のマスク76上に形成された部分を、マスク76とともに除去する(
図14Q)。これにより、導電膜66がパターニングされ、第3のメタル層M3において、入力側の高調波処理回路60G及び出力側の高調波処理回路60Dが形成される。また、導電膜66の、レジスト70eの開口部75a(
図14O参照)に充填された部分においてビア67が形成され、導電膜66の、レジスト70eの開口部75b(
図14O参照)に充填された部分においてビア68が形成される。入力側の高調波処理回路60Gは、ビア67、導電膜50、導電膜41を介してゲート電極23に接続された部分と、ビア68を介して導電膜50のグランドプレーンとして機能する部分に接続された部分とを含む。同様に、出力側の高調波処理回路60Dは、ビア67、導電膜50、導電膜41を介してドレイン電極21に接続された部分と、ビア68を介して導電膜50のグランドプレーンとして機能する部分に接続された部分とを含む。
【0051】
以上の各工程を経ることにより電力増幅装置が完成する。上記した開示の技術の実施形態に係る電力増幅装置の製造方法によれば、基本波整合回路40G、40D及び高調波処理回路60G、60Dをトランジスタ20の直近に配置することができる。また、基本波整合回路40G、40D及び高調波処理回路60G、60Dと、トランジスタ20との接続にワイヤを用いることを要しない。従って、基本波整合回路40G、40D及び高調波処理回路60G、60Dと、トランジスタ20との接続部における損失を抑制することができるので、電力増幅装置の変換効率を従来よりも高めることが可能となる。
【0052】
なお、電力増幅装置1は開示の技術における電力増幅装置の一例である。トランジスタ20は、開示の技術におけるトランジスタの一例である。ゲート電極23は開示の技術における入力端子の一例である。ドレイン電極21は開示の技術における出力端子の一例である。ゲート電極23は開示の技術における入力端子の一例である。
基本波整合回路40、40D、40Gは、開示の技術における基本波整合回路の一例である。導電膜41は開示の技術における第1の導電膜の一例である。高調波処理回路60、60A、60B、60D、60Gは開示の技術における高調波処理回路の一例である。導電膜61は開示の技術における第2の導電膜の一例である。第1の誘電体層D1は開示の技術における第1の誘電体層の一例である。第2の誘電体層D2は開示の技術における第2の誘電体層の一例である。導電膜50は開示の技術における第3の導電膜の一例である。導電膜62は開示の技術における第4の導電膜の一例である。導電膜63は開示の技術における第5の導電膜の一例である。チップキャパシタ64は開示の技術におけるキャパシタの一例である。電磁波放射装置100は開示の技術における電磁波放射装置の一例である。
【0053】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0054】
(付記1)
入力信号が入力される入力端子及び出力信号を出力する出力端子を有するトランジスタと、
前記トランジスタ上に積層され且つ前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第1の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の基本波に対する負荷インピーダンスを、前記トランジスタのインピーダンスに整合させる基本波整合回路と、
前記第1の導電膜との間に誘電体層を挟んで前記第1の導電膜上に積層され且つ前記誘電体層を貫通するビアを介して前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第2の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の高調波に対するインピーダンスを調整する高調波処理回路と、
を含む電力増幅装置。
【0055】
(付記2)
前記第1の導電膜上に積層された第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層上に積層され、所定の電位が印加される第3の導電膜と、
前記第3の導電膜と前記第2の導電膜との間に設けられた第2の誘電体層と、
を含む
付記1に記載の電力増幅装置。
【0056】
(付記3)
前記高調波処理回路は、
前記第2の誘電体層上に積層され、前記第2の誘電体層を貫通するビアを介して前記第3の導電膜に接続された第4の導電膜と、
前記第2の導電膜に一方の電極が接続され、前記第4の導電膜に他方の電極が接続されたキャパシタと、
を含む
付記2に記載の電力増幅装置。
【0057】
(付記4)
前記高調波処理回路は、前記第2の誘電体層上に積層され、フローティング電位とされた第5の導電膜を含む
付記3に記載の電力増幅装置。
【0058】
(付記5)
前記高調波処理回路は、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の2倍波に対するインピーダンスをゼロとするように構成されている
付記1から付記4のいずれか1つに記載の電力増幅装置。
【0059】
(付記6)
供給される信号に対して所定の処理を行う信号処理装置と、前記信号処理装置によって処理された信号が入力信号として入力され、前記入力信号の電力を増幅して出力する電力増幅装置と、前記電力増幅装置から出力された出力信号を電磁波として放射するアンテナと、を含む電磁波放射装置であって、
入力信号が入力される入力端子及び出力信号を出力する出力端子を有するトランジスタと、
前記トランジスタ上に積層され且つ前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第1の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の基本波に対する負荷インピーダンスを、前記トランジスタのインピーダンスに整合させる基本波整合回路と、
前記第1の導電膜との間に誘電体層を挟んで前記第1の導電膜上に積層され且つ前記誘電体層を貫通するビアを介して前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第2の導電膜を含み、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の高調波に対するインピーダンスを調整する高調波処理回路と、
を含む電磁波放射装置。
【0060】
(付記7)
前記第1の導電膜上に積層された第1の誘電体層と、
前記第1の誘電体層上に積層され、所定の電位が印加される第3の導電膜と、
前記第3の導電膜と前記第2の導電膜との間に設けられた第2の誘電体層と、
を含む
付記6に記載の電磁波放射装置。
【0061】
(付記8)
前記高調波処理回路は、
前記第2の誘電体層上に積層され、前記第2の誘電体層を貫通するビアを介して前記第3の導電膜に接続された第4の導電膜と、
前記第2の導電膜に一方の電極が接続され、前記第4の導電膜に他方の電極が接続されたキャパシタと、
を含む
付記7に記載の電磁波放射装置。
【0062】
(付記9)
前記高調波処理回路は、前記第2の誘電体層上に積層され、フローティング電位とされた第5の導電膜を含む
付記8に記載の電磁波放射装置。
【0063】
(付記10)
入力信号が入力される入力端子及び出力信号を出力する出力端子を有するトランジスタ上に、前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の基本波に対する負荷インピーダンスを前記トランジスタのインピーダンスに整合させる基本波整合回路を構成し且つ前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第1の導電膜を積層する工程と、
前記入力信号及び前記出力信号の少なくとも一方の高調波に対するインピーダンスを調整する高調波処理回路を構成し且つ前記第1の導電体膜との間に設けられた誘電体層を貫通するビアを介して前記入力端子及び前記出力端子の少なくとも一方に接続された第2の導電膜を、前記誘電体層を間に挟んで前記第1の導電膜上に積層する工程と、
を含む電力増幅装置の製造方法。
【符号の説明】
【0064】
1 電力増幅装置
12、13、14 ビア
20 トランジスタ
21 ドレイン電極
22 ソース電極
23 ゲート電極
30 多層基板
40、40D、40G 基本波整合回路
41、42、50、61、62、63 導電膜
60、60A、60B、60D、60G 高調波処理回路
64 チップキャパシタ
100 電磁波放射装置
101 信号処理装置
102 ドライバアンプ
103 アンテナ
D1 第1の誘電体層
D2 第2の誘電体層