(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】補助電源装置及び電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/19 20190101AFI20231024BHJP
B60L 50/15 20190101ALI20231024BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20231024BHJP
B60K 6/46 20071001ALI20231024BHJP
B60W 10/26 20060101ALI20231024BHJP
B60W 20/13 20160101ALI20231024BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20231024BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231024BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20231024BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60L58/19 ZHV
B60L50/15
B60L50/61
B60K6/46
B60W10/26 900
B60W20/13
B60W10/06 900
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
H02J7/00 302D
H02J7/00 303C
H02H7/18
H02H7/00 K
(21)【出願番号】P 2019096162
(22)【出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉山 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】西 幸二
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真一
(72)【発明者】
【氏名】三尾 巧美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文彦
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智史
(72)【発明者】
【氏名】小松原 幸弘
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-084601(JP,A)
【文献】実開平06-029301(JP,U)
【文献】特開2013-153617(JP,A)
【文献】特開2007-195398(JP,A)
【文献】特開2018-196274(JP,A)
【文献】特開2010-094016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 58/19
B60L 50/15
B60L 50/61
B60K 6/46
B60W 10/26
B60W 20/13
B60W 10/06
H02J 7/00
H02H 7/18
H02H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行に必要な駆動力を発生させる駆動モータに対して主電源からの電力を出力することにより走行可能な電動車両に搭載される補助電源装置であって、
前記主電源から前記駆動モータに到る電力の流れに沿って電力を出力する補助電源と、
前記主電源から前記駆動モータに対して電力を出力する場合において、前記補助電源から電力を出力する出力状態、あるいは前記補助電源から電力を出力しない非出力状態とする補助電源制御部と
、
前記主電源から前記駆動モータに至る電力の供給経路である第1供給経路と、
前記主電源と前記補助電源とを接続する電力の供給経路である第2供給経路と、
前記第1供給経路に前記補助電源を接続する電力の供給経路である第3供給経路と、
一端が前記主電源に接続されるとともに、他端が前記第1供給経路あるいは前記第2供給経路に切り替え接続可能に構成されているスイッチと、を備え、
前記第3供給経路上における電力の供給は、導通あるいは遮断のいずれかの状態とされるものであり、
前記補助電源制御部は、
前記駆動モータが必要とする必要電力値が、前記主電源が出力することのできる出力可能電力未満に設定されている所定電力値以下である場合に
、前記スイッチの前記他端の接続を前記第1供給経路に切り替えることで、前記主電源と前記駆動モータとを接続する前記非出力状態とし、
前記必要電力値が前記所定電力値よりも大きい場合に
、前記スイッチの前記他端の接続を前記第2供給経路に切り替えることで、前記補助電源と前記主電源とを直列接続する前記出力状態と
し、
前記非出力状態は、前記主電源から出力された電力により前記補助電源を充電させる充電非出力状態と、前記主電源から出力された電力により前記補助電源を充電させない非充電非出力状態とを含み、
前記補助電源制御部は、
前記スイッチの前記他端の接続を前記第1供給経路に切り替えた前記非出力状態において、前記第3供給経路上で電力の供給が導通される前記充電非出力状態とし、
前記スイッチの前記他端の接続を前記第1供給経路に切り替えた前記非出力状態において、前記第3供給経路上で電力の供給が遮断される前記非充電非出力状態とする補助電源装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の補助電源装置と、
前記主電源と前記主電源の前記駆動モータに対する電力の出力を制御する主電源制御部とを有する主電源装置と、
前記駆動モータとを備える電動車両。
【請求項3】
エンジンと、
前記エンジンの駆動に基づいて発電する発電機とを備え、
前記主電源及び前記補助電源の少なくとも一方は、前記発電機により発電された電力を用いて充電される請求項
2に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助電源装置及び電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、主電源である補機バッテリ及びバックアップ電源を有する電動車両が開示されている。上記電動車両では、主電源から駆動モータに対して電力を出力することで駆動モータは車輪を回転している。この主電源は、充放電可能なバッテリであって、発電機からの電力を用いて充電されている。一方、上記電動車両では、主電源から駆動モータへの電力の出力が停止したときに、主電源に代わってバックアップ電源から駆動モータへ電力の出力が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記電動車両では、主電源から出力される電力が、駆動モータが必要とする電力よりも大きくなることがある。この場合、駆動モータが必要とする電力の通りに主電源から電力が出力された場合と比べて、主電源の消費電力が増大する。特許文献1に開示の電動車両では、主電源の消費電力を抑えるという観点において対策が講じられているとは言い難い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する補助電源装置は、走行に必要な駆動力を発生させる駆動モータに対して主電源からの電力を出力することにより走行可能な電動車両に搭載される補助電源装置であって、前記主電源から前記駆動モータに到る電力の流れに沿って電力を出力する補助電源と、前記主電源から前記駆動モータに対して電力を出力する場合において、前記補助電源から電力を出力する出力状態、あるいは前記補助電源から電力を出力しない非出力状態とする補助電源制御部とを備え、前記補助電源制御部は、前記駆動モータが必要とする必要電力値が、前記主電源が出力することのできる出力可能電力未満に設定されている所定電力値以下である場合に前記非出力状態とし、前記必要電力値が前記所定電力値よりも大きい場合に前記出力状態とする。
【0006】
上記構成によれば、主電源の出力に余裕がある状況であっても、主電源から出力される電力が上記所定電力値を超えた分に応じて補助電源から電力を出力することができる。このため、主電源の出力に余裕がある状況で突発的に駆動モータが必要とする必要電力値が大きくなる事象が発生したとしても、主電源の消費電力を抑えることができる。
【0007】
上記の補助電源装置において、前記補助電源は、前記非出力状態である場合、前記主電源から出力された電力により充電されることが好ましい。
上記構成では、主電源から駆動モータへ電力を出力しつつ補助電源の充電が可能となる。主電源から駆動モータに到る電力の供給経路を補助電源の充電経路の一部と共通化できるため、電力の供給経路の簡素化に貢献することができる。
【0008】
上記の補助電源装置において、前記補助電源は、前記非出力状態である場合、エンジンの駆動に基づいて発電機により発電された電力を用いて充電されることが好ましい。
上記構成では、補助電源は、発電機により充電された電力を用いて充電しているため、エンジンの駆動の継続に応じて補助電源の充電も継続することができる。
【0009】
上記課題を解決する電動車両は、上記補助電源装置と、前記主電源と前記主電源の前記駆動モータに対する電力の出力を制御する主電源制御部とを有する主電源装置と、前記駆動モータとを備えている。
【0010】
上記構成によれば、出力状態において、主電源から駆動モータに到る電力の流れに沿って補助電源が電力を出力することから、主電源のみが電力を駆動モータに対して出力する場合と比べて、主電源から出力される電力を小さくできる。これにより、主電源から出力される電力が駆動モータの必要電力値よりも大きくなる状況であっても、必要電力値のうち上記所定電力値を超えた分に応じて補助電源から電力を出力することから、主電源の消費電力を抑えた電動車両を実現できる。
【0011】
上記の電動車両は、エンジンと、前記エンジンの駆動に基づいて発電する発電機とを備え、前記主電源及び前記補助電源の少なくとも一方は、前記発電機により発電された電力を用いて充電されることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、主電源及び補助電源の少なくとも一方は、発電機により発電された電力を用いて充電しているため、エンジンの駆動の継続に応じて主電源及び補助電源の少なくとも一方の充電を継続する電動車両を実現できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の補助電源装置及び電動車両によれば、主電源の消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】補助電源装置を搭載した電動車両の概略構成を示す図。
【
図2】第1実施形態において、補助電源制御部で実行される処理の流れを示す図。
【
図3】比較例における電力の出力及び充電の推移を示すグラフ。
【
図4】第1実施形態における電力の出力及び充電の推移を示すグラフ。
【
図5】非充電非出力状態、充電非出力状態、及び出力状態の推移の一例を模式的に示したグラフ。
【
図6】第2実施形態において、補助電源制御部で実行される処理の流れを示す図。
【
図7】他の実施形態において、補助電源装置を搭載した電動車両の概略構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
補助電源装置を電動車両に適用した第1実施形態について説明する。
図1に示すように、電動車両1は、主電源装置10と、補助電源装置20と、駆動回路30と、駆動モータ40と、ギヤ機構50と、エンジン60と、発電機70とを備えている。電動車両1は、主電源装置10から出力される電力を用いて駆動される駆動モータ40を駆動源として走行可能である。電動車両1は、レンジエクステンダー式の電気自動車である。
【0016】
駆動モータ40の出力軸はギヤ機構50に連結されている。駆動モータ40は、電動車両1の走行に必要な駆動力を発生させる。ギヤ機構50は、左右の駆動軸51に接続されている。各駆動軸51は、その一端がギヤ機構50に接続されているとともに、その他端が車輪52に接続されている。駆動モータ40の駆動力は、ギヤ機構50及び駆動軸51を介して車輪52に伝達される。主電源装置10は補助電源装置20に接続されており、補助電源装置20は駆動回路30に接続されており、駆動回路30は駆動モータ40に接続されている。
【0017】
エンジン60は、発電機70に接続されている。エンジン60は、発電機70による電力の発電に使用される。第1実施形態では、エンジン60は、ガソリンを燃料として駆動するガソリンエンジンである。発電機70は、主電源装置10に接続されている。発電機70は、エンジン60の駆動力に基づいて電力を発電する。発電機70で発電した電力は、主電源装置10に対して出力される。発電機70によって発電された電力は、主電源装置10の充電に用いられている。
【0018】
主電源装置10は、主電源11及び主電源制御部12を有している。主電源11は、電力を充放電可能な電源であって、例えばリチウムイオン電池が採用されている。主電源11は、給電対象である駆動モータ40に対して電力を出力する。主電源制御部12は、外部制御装置とCAN(Controller Area Network)通信等の通信回線を介して接続されており、外部制御装置から出力される情報を取得する。外部制御装置は、当該情報として、駆動モータ40が必要とする電力である必要電力値Wを演算し、当該必要電力値WをCAN通信を介して主電源制御部12に出力する。主電源制御部12は、必要電力値Wに基づいて、駆動回路30の動作を制御することで主電源11から駆動モータ40に対して出力する電力を制御する。また、主電源制御部12は、主電源11の残電力等の情報を取得する。主電源制御部12は、主電源11の残電力がその下限値を下回ることがないように、エンジン60に対してエンジン60を始動させる信号を出力する。主電源11の残電力の下限値は、主電源11が電力を出力することにより主電源11の劣化の進行が抑制される、または主電源11の最大容量の低下が引き起こされることが抑制される残電力の下限値である。主電源11の残電力の下限値は、実験等により設定されている。主電源制御部12は、エンジン60に対してエンジン60を始動させる信号を出力することにより、エンジン60の駆動を開始させる。これにより、エンジン60の駆動力に基づいて発電機70により充電用の電力を発電する。また、主電源制御部12は、主電源11の残電力が十分である場合、エンジン60に対してエンジン60を停止させる信号を出力することにより、エンジン60の駆動を停止させる。
【0019】
補助電源装置20は、補助電源21、補助電源制御部22、スイッチ23、及び昇圧回路24を有している。補助電源21は、電力を充放電可能な電源であって、例えばリチウムイオンキャパシタが採用されている。リチウムイオンキャパシタは、耐熱性が良く、寿命が長く、充放電性能が良好で、エネルギー密度が高く、安全性が高いという利点がある。特に、リチウムイオンキャパシタは、リチウムイオン電池と比べて、充放電可能な回数がかなり多く、その寿命が長いという特徴がある。補助電源21は、その残電力が下限値を下回ることがないように、主電源11から出力された電力により充電されている。補助電源21の残電力の下限値は、補助電源21が電力を出力することにより補助電源21の劣化の進行が抑制される、または補助電源21の最大容量の低下が引き起こされることが抑制される残電力の下限値である。補助電源21の残電力の下限値は、実験等により設定されている。補助電源21は、その一端が駆動回路30と接続されている。補助電源21は、駆動回路30に向けて電力を出力することにより、主電源11から駆動モータ40に到る電力の流れに沿って電力を出力している。
【0020】
補助電源制御部22は、主電源制御部12とCAN通信等の通信回線を介して接続されており、主電源制御部12から必要電力値Wを取得する。補助電源制御部22は、主電源11から駆動モータ40に対して電力を出力する場合において、補助電源21から電力を出力する出力状態、あるいは補助電源21から電力を出力しない非出力状態とする。補助電源制御部22は、出力状態あるいは非出力状態とするべくスイッチ23のスイッチ状態の制御を実行する。非出力状態には、補助電源21を充電させる充電状態の非出力状態である充電非出力状態と、補助電源21を充電させない非充電状態の非出力状態である非充電非出力状態とがある。
【0021】
スイッチ23は、複数のスイッチング素子によって構成されている。スイッチ23は、一端が主電源11に接続されるとともに、他端が第1供給経路L1あるいは第2供給経路L2に切り替え接続可能に構成されている。第1供給経路L1は、主電源11から駆動モータ40に到る電力の供給経路であって、主電源11と駆動回路30とを接続する電力の供給経路である。第1供給経路L1上の接続点P1には、第3供給経路L3が接続されている。補助電源21は、第3供給経路L3によって第1供給経路L1上の接続点P1に接続されている。第3供給経路L3上には、昇圧回路24が設けられている。昇圧回路24は、入力される電力の電圧を昇圧する。スイッチ23の他端の接続を第1供給経路L1に切り替えていて、かつ補助電源21を充電させない非充電非出力状態では、第1供給経路L1によって主電源11と駆動回路30とが接続されているとともに、補助電源21と第1供給経路L1とを接続する第3供給経路L3上で電力の供給が遮断されている。一方、スイッチ23の他端の接続を第1供給経路L1に切り替えていて、かつ補助電源21を充電させる充電非出力状態では、補助電源21と第1供給経路L1とを接続する第3供給経路L3上で電力の供給が導通されている。すなわち、第1供給経路L1における接続点P1と主電源11との間は、充電非出力状態での充電経路の一部としても機能する。つまり、第1供給経路L1は、充電経路の一部と共通化されている。また、スイッチ23の他端の接続を第1供給経路に切り替えていて、かつ充電非出力状態では、補助電源21は、低電位側が第3供給経路L3に接続されて、高電位側が接地されている。第1供給経路L1及び第3供給経路L3は並列接続されていることから、昇圧回路24には第1供給経路L1を流れる電力の電圧、すなわち主電源11からの電力の電圧と同電位の電圧が入力される。昇圧回路24は、主電源11からの電力の電圧と同電位の電圧を昇圧して、当該昇圧した電圧を補助電源21に出力する。このような補助電源21の接続態様の切り替えは、スイッチ23を構成するスイッチング素子のスイッチ状態の切り替えを通じて行われている。
【0022】
第2供給経路L2は、主電源11と補助電源21とを接続する電力の供給経路である。第1供給経路L1上における接続点P1と駆動回路30との間に位置する接続点P2には、第4供給経路L4が接続されている。補助電源21は、第4供給経路L4によって第1供給経路L1上の接続点P2に接続されている。スイッチ23の他端の接続を第2供給経路に切り替えた場合、第1供給経路L1及び第2供給経路L2によって、主電源11と補助電源21とは直列接続されている。また、スイッチ23の他端の接続を第2供給経路に切り替えた場合、第4供給経路L4及び第1供給経路L1によって、補助電源21と駆動回路30とは接続されている。
【0023】
補助電源制御部22は、非充電非出力状態あるいは充電非出力状態とする場合、スイッチ23の他端の接続を第1供給経路L1に切り替えている。また、補助電源制御部22は、出力状態とする場合、スイッチ23の他端の接続を第2供給経路L2に切り替えている。
【0024】
駆動回路30は、駆動モータ40の各相(U相、V相、W相)にそれぞれ2つのスイッチング素子を備えた公知の回路である。駆動モータ40は、駆動回路30を介して入力される電力に基づいて駆動し、駆動モータ40からの駆動力がギヤ機構50及び駆動軸51を介して車輪52に伝達されることにより、車輪52が回転する。
【0025】
補助電源制御部22で行われる処理の流れを
図2を用いて説明する。
図2の処理の流れは、補助電源制御部22が制御周期毎に周期処理を実行することによって実現されている。
【0026】
図2の処理は、電動車両1を始動状態にする始動スイッチのオンを契機とする開始時から始動スイッチのオフを契機とする終了時までの期間において、補助電源制御部22で実行される。開始時においては、非充電非出力状態とされているものとする。この場合、スイッチ23の他端は第1供給経路L1に接続されており、第3供給経路L3上の電力の供給が導通された状態にある。また、外部制御装置により演算された必要電力値Wが主電源制御部12に出力されている。
図2で行われる処理は、このように主電源11から駆動回路30に対する電力の出力が行われる中で実行されている。また、主電源11は、残電力がその下限値を下回ることがないように発電機70によって発電された電力を用いて充電されており、
図2に示す処理の実行ができるように主電源11の残電力がある程度確保された状態となるように充電されている。
【0027】
図2に示すように、補助電源制御部22は、補助電源21からの電力の電圧である補助電源電圧Vcが補助電源21の電圧の下限値である充電下限電圧Vs未満であるか否かを判定する(ステップS1)。補助電源電圧Vcは、補助電源21の残電力を示しており、充電下限電圧Vsは、補助電源21の残電力の下限値を示している。補助電源制御部22は、充電下限電圧Vsを記憶している。
【0028】
補助電源制御部22は、補助電源電圧Vcが充電下限電圧Vs未満である場合(ステップS1のYES)、充電非出力制御を実行する(ステップS2)。補助電源制御部22は、ステップS2の後、ステップS1に戻る。充電非出力制御は、充電非出力状態へと切り替える制御である。この場合、スイッチ23の他端の接続を第1供給経路L1に切り替えることで、第1供給経路L1によって主電源11と駆動回路30とを接続するとともに、第3供給経路L3上の電力の供給を導通する。補助電源制御部22は、充電非出力制御において、主電源11からの電力の電圧を昇圧回路24により昇圧して、当該昇圧した電圧を補助電源21に入力することによって補助電源21を充電させる。
【0029】
補助電源制御部22は、補助電源電圧Vcが充電下限電圧Vs以上である場合(ステップS1のNO)、必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きいか否かを判定する(ステップS3)。所定電力値Pは、出力制御を実行するか否かを切り分ける閾値である。所定電力値Pは、主電源11の消費電力をどの程度抑える必要があるのかを示す抑制度合い、補助電源21が出力することが可能な最大容量、主電源11が出力することが可能な最大容量等の要素に基づいて、実験的に求められている。所定電力値Pは、主電源11が出力することのできる出力可能電力未満に設定されている。第1実施形態では、所定電力値Pは、例えば主電源11が出力することのできる出力可能電力の半分程度に設定されている。補助電源制御部22は、所定電力値Pを記憶している。
【0030】
補助電源制御部22は、必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きい場合(ステップS3のYES)、出力状態とする出力制御を実行する(ステップS4)。補助電源制御部22は、出力制御において、出力状態とするべく、スイッチ23のスイッチ状態を切り替えている。この場合、スイッチ23の他端の接続を第2供給経路L2に切り替えることで、補助電源21と主電源11とを直列接続している。これにより、主電源11から駆動回路30に対して電力を出力するとともに、主電源11から駆動回路30に対して出力される電力の電圧を大きくするように補助電源21から駆動回路30に向けて電力を出力して必要電力値Wを満たすようにしている。このように補助電源21は主電源11から駆動モータ40に到る電力の流れに沿って電力を出力していて、主電源11から出力された電力と補助電源21から出力された電力とを合わせた電力が駆動回路30に向けて出力される。
【0031】
補助電源制御部22は、ステップS4の後、再びステップS1に戻る。
補助電源制御部22は、必要電力値Wが所定電力値P以下である場合(ステップS3のNO)、非充電非出力制御を実行する(ステップS5)。非充電非出力制御は、非充電非出力状態に切り替える制御である。補助電源制御部22は、非充電非出力制御において、非充電非出力状態とするべく、スイッチ23のスイッチ状態を切り替えている。この場合、スイッチ23の他端の接続を第1供給経路L1に切り替えることで、第1供給経路L1によって主電源11と駆動回路30とを接続するとともに、第3供給経路L3上で電力の供給を遮断する。これにより、主電源11からの電力を駆動モータ40に対して出力するとともに、補助電源21は駆動回路30に向けて電力を出力しないようにしている。
【0032】
補助電源制御部22は、ステップS5の後、再びステップS1に戻る。
図2に示す処理は、始動スイッチのオフを契機とする終了時において、割り込み終了される。
【0033】
本実施形態の作用を説明する。
図3は比較例の場合を示したものであり、
図4は第1実施形態の場合を示したものである。比較例の電動車両は、
図1に示した補助電源装置20が設けられておらず、主電源11のみが駆動モータ40に対して電力を出力するものである。
図3の給電側の山は当該山の頂点に対応した電力が主電源11から出力されたことを示し、充電側の山は当該山の頂点に対応した電力によって主電源11が充電されたことを示している。
【0034】
図3に示すように、比較例の場合、必要電力値Wが所定電力値Pを超えていても、必要電力値Wに応じた全ての電力を主電源11からの出力で担うことになる。このため、仮に必要電力値Wよりも大きい値の電力が主電源11から出力された場合には、必要電力値Wの値に従って電力が主電源11から出力された場合と比べて、主電源11の消費電力が増大する。その結果、主電源11の消費電力が増大することから、主電源11の残電力がその下限値を下回ることがないように主電源11を充電する頻度が増えることになり、エンジン60の駆動を開始してエンジン60の駆動力に基づいて発電機70により充電用の電力を発電する頻度が増えることになる。
【0035】
図1及び
図4に示すように、第1実施形態では、必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きい場合、補助電源制御部22は出力状態とするべく、スイッチ23の他端の接続を第2供給経路L2に切り替えている。これにより、主電源11と補助電源21とは直列接続されることになり、主電源11から駆動回路30に対して電力が出力されるだけでなく、主電源11から駆動回路30に対して出力される電力の電圧を大きくするように補助電源21から駆動回路30に向けて電力が出力される。必要電力値Wのうち所定電力値Pを超えた分の電力を補助電源21から出力する。すなわち、必要電力値Wに応じた電力の出力を、主電源11が担うだけでなく、補助電源21も担っている。なお、
図4に示す所定電力値Pを超えた電力の値に応じてどれだけ補助電源21から電力が出力されるかは成り行きであるため、
図4に示す所定電力値Pを超えた電力以上の電力が補助電源21によって出力されることもある。そのため、必要電力値W以上の電力が駆動回路30に向けて出力されることもある。本実施形態では、必要電力値Wの出力を主電源11と補助電源21とで分担しているため、必要電力値Wの出力を主電源11のみによって担う場合に比べて必要電力値W以上の電力の出力を抑制することができる。
【0036】
図5には、非充電非出力状態、充電非出力状態、及び出力状態の推移の一例を模式的に示している。
図1及び
図5に示すように、補助電源制御部22は、必要電力値Wが所定電力値P以下の場合は、非充電非出力状態とする非充電非出力制御を実行している。この場合、必要電力値Wに応じた電力の出力を全て主電源11が担う。
【0037】
補助電源制御部22は、必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きい場合は、出力状態とする出力制御を実行している。この場合、必要電力値Wのうち所定電力値Pに応じた電力の出力を主電源11が担い、必要電力値Wのうち所定電力値Pを超えた分に応じた電力の出力を補助電源21が担う。
【0038】
補助電源制御部22は、補助電源電圧Vcが充電下限電圧Vs未満である場合は、充電非出力状態とする充電非出力制御を実行している。補助電源21の残電力は出力制御中に減ることから、このような充電制御は出力制御が行われた後に実行されることが多い。このような充電非出力制御では、補助電源21は主電源11から出力された電力により充電されている。
【0039】
第1実施形態の効果を説明する。
(1)必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きい場合に行われる出力状態において、主電源11から駆動モータ40に到る電力の流れに沿って補助電源21が電力を出力する。すなわち、主電源11の出力に余裕がある状況であっても、主電源11から出力される電力が所定電力値Pを超えた分に応じて補助電源21から電力を出力することができる。このため、主電源11の出力に余裕がある状況で突発的に駆動モータ40が必要とする必要電力値Wが大きくなる事象が発生したとしても、主電源11の消費電力を抑えることができる。
【0040】
主電源11の消費電力を抑えることができることから、主電源11の残電力がその下限値を下回ることがないように主電源11を充電する頻度を減らすことができて、発電機70により充電用の電力を発電する頻度を減らすことができる。これにより、上記比較例と比べて、主電源11の消費電力を抑えた電動車両1を実現できて、電動車両1の燃費を向上させることができる。
【0041】
(2)充電非出力状態では、主電源11から駆動モータ40へ電力を出力しつつ、補助電源21の充電が可能となる。第1供給経路L1を補助電源21の充電経路の一部と共通化できるため、電力の供給経路の簡素化に貢献することができる。
【0042】
(3)仮に、第1供給経路L1に補助電源21が設けられており、駆動回路30及び補助電源21が直列接続されている場合には、充電非出力状態において、主電源11から出力される電力の電圧は、充電するために補助電源21に流れ込む電力の電圧と、駆動回路30に対して出力される電力の電圧とに分かれることになる。すなわち、補助電源21に流れ込む電力の電圧は、主電源11から出力される電力の電圧よりも小さくなる。これに対して、本実施形態の充電非出力状態では、第1供給経路L1及び第3供給経路L3が並列接続されていることから、第3供給経路L3に流れ込む電力の電圧は、主電源11から出力される電力の電圧と同じとなる。補助電源21はキャパシタであることから、入力された電圧に比例して充電される電力が増大する。このため、仮に第1供給経路L1に補助電源21が設けられている場合と比べて、充電非出力状態における補助電源21の充電を効率よく行うことができる。
【0043】
(4)充電非出力状態である場合、第3供給経路L3上の昇圧回路24には、主電源11からの電力の電圧と同電位の電圧が入力される。補助電源21に入力される電圧は、主電源11からの電力の電圧を昇圧した電圧である。補助電源21はキャパシタであることから、入力された電圧に比例して充電される電力が増大する。補助電源21は、昇圧回路24によって昇圧した電圧に基づいて充電することから、主電源11からの電力の電圧で充電する場合よりも充電される電力が増大する。このため、充電非出力制御において、昇圧回路24が設けられていない場合と比べて、補助電源21の充電を効率よく行うことができる。
【0044】
(5)主電源11を発電機70により発電された電力を用いて充電しているため、エンジン60の駆動の継続に応じて主電源11の充電を継続する電動車両1を実現できる。また、補助電源21を主電源11からの電力によって充電しているため、補助電源21の充電を可能にした電動車両1を実現できる。
【0045】
(6)
図2において、最初にステップS1を実行して充電非出力制御を行うかを判定していることから、ステップS4の出力制御を実行する際には、基本的に補助電源21の充電がなされた状態にすることができる。このため、ステップS3でYESと判定されることにより、出力制御が実行される状況であるにも関わらず、補助電源21の残電力がない状況を抑制することができる。
【0046】
<第2実施形態>
補助電源装置を電動車両に適用した第2実施形態について説明する。ここでは、第1実施形態との違いを中心に説明する。第2実施形態では、補助電源制御部22で実行される
図2に示す処理が
図6に示す処理に変更されている。
【0047】
図6に示すように、補助電源制御部22は、必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きいか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11は、ステップS3と同様の処理である。
【0048】
補助電源制御部22は、必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きい場合(ステップS11のYES)、補助電源電圧Vcが出力制御下限閾値Vtよりも大きいか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12は、補助電源21から駆動回路30に対して電力を出力できない状況であるにも関わらず、出力状態とする出力制御が実行されないようにするための処理である。出力制御下限閾値Vtは、出力制御を実行すると、補助電源21の劣化の進行が抑制される、または補助電源21の最大容量の低下が引き起こされることが抑制される補助電源電圧Vcの下限値である。出力制御下限閾値Vtは、充電下限電圧Vsよりも低い値に設定されている。補助電源制御部22は、出力制御下限閾値Vtを記憶している。
【0049】
補助電源制御部22は、補助電源電圧Vcが出力制御下限閾値Vtよりも大きい場合(ステップS12のYES)、出力制御を実行する(ステップS13)。ステップS13の出力制御は、ステップS4の出力制御と同様の処理である。補助電源制御部22は、ステップS13の後、再びステップS11に戻る。
【0050】
補助電源制御部22は、補助電源電圧Vcが出力制御下限電圧Vt以下である場合(ステップS12のNO)、非充電非出力制御を実行する(ステップS14)。ステップS14の非充電非出力制御は、ステップS5の非充電非出力制御と同様の処理である。補助電源制御部22は、ステップS14の後、再びステップS11に戻る。
【0051】
補助電源制御部22は、必要電力値Wが所定電力値P以下である場合(ステップS11のNO)、補助電源電圧Vcが充電下限電圧Vs未満であるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15は、ステップS1と同様の処理である。
【0052】
補助電源制御部22は、補助電源電圧Vcが充電下限電圧Vs未満である場合(ステップS15のYES)、充電非出力制御を実行する(ステップS16)。ステップS16の充電非出力制御は、ステップS2の充電非出力制御と同様の処理である。補助電源制御部22は、ステップS16の後、再びステップS11に戻る。
【0053】
補助電源制御部22は、補助電源電圧Vcが充電下限電圧Vs以上である場合(ステップS15のNO)、非充電非出力制御を実行する(ステップS17)。ステップS17の非充電非出力制御は、ステップS14の非充電非出力制御及びステップS5の非充電非出力制御と同様の処理である。
【0054】
図6に示す処理は、始動スイッチのオフを契機とする終了時において、割り込み終了される。
以上に説明した第2実施形態によれば、補助電源制御部22が実行する処理構成を
図6に示すものとした場合であっても、第1実施形態の効果(1)~(5)と同様の効果を得ることができる。
【0055】
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・補助電源21は、充電非出力状態である場合、主電源11から出力された電力により充電されたが、これに限らない。例えば、補助電源21は、主電源11と同様に、発電機70によって発電された電力を用いて充電されるようにしてもよい。また、主電源11を発電機70によって発電された電力を用いて充電せず、補助電源21のみを発電機70によって発電された電力を用いて充電するようにしてもよい。
【0056】
・
図6のステップS14において、充電非出力制御を行うようにしてもよい。
・第3供給経路L3に昇圧回路24を設けなくてもよい。
・スイッチ23を補助電源装置20の外部の構成としてもよい。
【0057】
・外部制御装置からの必要電力値Wは、主電源制御部12及び補助電源制御部22の両方に入力されるようにしてもよいし、補助電源制御部22のみに入力されるようにしてもよい。
【0058】
・
図7に示すように、発電機70は、第5供給経路L5によって駆動回路30に接続されていてもよい。駆動回路30には、エンジン60が駆動している間、発電機70によって発電された電力が第5供給経路L5を介して入力される。駆動モータ40は、エンジン60が駆動している間、第5供給経路L5を介して入力された電力に基づいて駆動する。
【0059】
・必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きい場合、必要電力値Wのうち所定電力値Pを超えた分の電力を補助電源21から出力したが、補助電源21から出力される電力と所定電力値Pとの関係はこれに限らない。すなわち、必要電力値Wが所定電力値Pよりも大きい場合、必要電力値Wのうち所定電力値Pを超えた分の全ての出力を補助電源21が担うのではなく、必要電力値Wのうち所定電力値Pを超えた分よりも小さい電力の出力を補助電源21が担うようにしてもよい。また、必要電力値Wのうち所定電力値Pを超えた分よりも大きい電力の出力を補助電源21が担うようにしてもよい。このように、補助電源21からの電力の出力は、適宜設定可能である。
【0060】
・必要電力値Wは、外部制御装置から取得したものに限らず、駆動回路30に入力されている電力をセンサによって検出し、当該検出値を必要電力値として用いてもよい。
・出力状態において、主電源11から出力される電力を所定電力値Pに制限するピークカット回路を設けるようにしてもよい。この場合、主電源11から出力される電力は、成り行きで決まるのではなく、回路構成によって所定電力値Pに制限されることになる。
【0061】
・主電源11には、リチウムイオン電池が採用されたが、電力を充放電可能な2次電源であればよく、例えばリチウムイオンポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の他の二次電池であってもよい。
【0062】
・補助電源21には、リチウムイオンキャパシタが採用されたが、電力を充放電可能な電源であればよく、例えば電気二重層コンデンサ等の他のキャパシタであってもよい。また、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の他の二次電池であってもよい。
【0063】
・駆動モータ40は、3相ブラシレスモータであってもよいし、ブラシ付きモータであってもよい。
・エンジン60は、ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジン、水素燃料を用いたエンジン、燃料電池を用いたエンジン等、その他のエンジンであってもよい。
【0064】
・電動車両1は、レンジエクステンダー式の電気自動車であったが、プラグインで主電源11及び補助電源21の少なくとも一方を充電する電気自動車であってもよい。すなわち、電動車両1は、エンジン60及び発電機70を搭載しない電動車両であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…電動車両、10…主電源装置、11…主電源、12…主電源制御部、20…補助電源装置、21…補助電源、22…補助電源制御部、23…スイッチ、24…昇圧回路、30…駆動回路、40…駆動モータ、50…ギヤ機構、51…駆動軸、52…車輪、60…エンジン、70…発電機、L1~L4…第1~第4供給経路、P…所定電力値、P1,P2…接続点、Vc…補助電源電圧、Vs…充電下限電圧、Vt…出力制御下限閾値、W…必要電力値。