(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】半導体デバイス、及びこれを用いた無線受信器
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20231024BHJP
H01L 29/868 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20231024BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/66 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/20 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/40 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/872 20060101ALI20231024BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231024BHJP
H04B 1/16 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L29/91 L
H01L29/06 601N
H01L29/91 C
H01L29/91 A
H01L29/91 F
H01L29/66 C
H01L29/20
H01L29/42
H01L29/48
H01L21/28 301B
H04B1/16 Z
(21)【出願番号】P 2019120265
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「環境電波発電向けナノワイヤ半導体デバイスの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 剛
(72)【発明者】
【氏名】河口 研一
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-283672(JP,A)
【文献】特開2011-146682(JP,A)
【文献】特開2018-056381(JP,A)
【文献】特表2016-510943(JP,A)
【文献】特開2015-038954(JP,A)
【文献】特開2007-281352(JP,A)
【文献】特表2012-521655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/329
H01L 29/861
H01L 29/868
H01L 29/872
H01L 29/06
H01L 29/66
H01L 29/20
H01L 29/40
H01L 29/47
H01L 29/417
H01L 21/28
H04B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造体の第1導電型の半導体と、
前記第1導電型の半導体の端部でオーミック接合される第1電極と、
前記第1電極と接続され、前記第1導電型の半導体の側面に設けられる第2電極と、
前記ナノ構造体の内部の空乏層の拡張を制御する空乏化構成と、
前記第1導電型の半導体と前記第2電極の界面に配置される第2導電型の半導体膜と、
を有し、
前記空乏化構成は、前記第1導電型の半導体と前記第2導電型の半導体膜によって前記第2電極の界面に形成されるpn接合であり、
前記空乏化構成によって、前記第1導電型の半導体の内部で、キャリアの移動方向と交差する方向に前記空乏層が拡張され、
前記空乏層は、順方向バイアスの印加により、アノード側からカソード側への前記キャリアの移動方向と交差する方向に拡がる、
半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1導電型の半導体の前記空乏層が拡張される領域の不純物濃度は、1×10
18cm
-3以上である、請求項1に記載の半導体デバイス。
【請求項3】
前記空乏層の幅は、逆方向バイアスの印加により減少し、前記ナノ構造体に前記カソード側から前記アノード側へ前記キャリアが流れる、請求項1または2に記載の半導体デバイス。
【請求項4】
ナノ構造体の第1導電型の半導体と、
前記第1導電型の半導体の端部でオーミック接合される第1電極と、
前記第1電極と接続され、前記第1導電型の半導体の側面に設けられる第2電極と、
前記ナノ構造体の内部の空乏層の拡張を制御する空乏化構成と、
前記第1導電型の半導体と前記第2電極の界面に配置される、前記第1導電型の半導体よりも不純物濃度が低い、またはエネルギーバンドギャップが広い半導体膜
と、
を有し、
前記空乏化構成は、前記第2電極と前記半導体膜によって形成されるショットキー接合であ
り、
前記空乏化構成によって、前記第1導電型の半導体の内部で、キャリアの移動方向と交差する方向に前記空乏層が拡張され、
前記空乏層は、順方向バイアスの印加により、アノード側からカソード側への前記キャリアの移動方向と交差する方向に拡がる、
半導体デバイス。
【請求項5】
ナノ構造体の第1導電型の半導体と、
前記第1導電型の半導体の端部でオーミック接合される第1電極と、
前記第1電極と接続され、前記第1導電型の半導体の側面に設けられる第2電極と、
前記ナノ構造体の内部の空乏層の拡張を制御する空乏化構成と、
を有し、
前記空乏化構成によって、前記第1導電型の半導体の内部で、キャリアの移動方向と交差する方向に前記空乏層が拡張され、
前記第1導電型の半導体と前記第2電極の界面に配置される第2導電型の半導体膜、
を有し、
前記空乏化構成は、前記第1導電型の半導体と前記第2導電型の半導体膜によって前記第2電極の界面に形成されるpn接合である、
半導体デバイス。
【請求項6】
ナノ構造体の第1導電型の半導体と、
前記第1導電型の半導体の端部でオーミック接合される第1電極と、
前記第1電極と接続され、前記第1導電型の半導体の側面に設けられる第2電極と、
前記ナノ構造体の内部の空乏層の拡張を制御する空乏化構成と、
を有し、
前記空乏化構成によって、前記第1導電型の半導体の内部で、キャリアの移動方向と交差する方向に前記空乏層が拡張され、
前記第1導電型の半導体と前記第2電極の界面に配置される、前記第1導電型の半導体よりも不純物濃度が低い、またはエネルギーバンドギャップが広い半導体膜、
を有し、
前記空乏化構成は、前記第2電極と前記半導体膜によって形成されるショットキー接合である、
半導体デバイス。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の半導体デバイスと、
前記半導体デバイスに接続されるアンテナ、
とを有する無線受信器。
【請求項8】
前記半導体デバイスは検波器または電力変換器である、請求項
7に記載の無線受信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス、及びこれを用いた無線受信器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の受信器での検波素子、環境電波からのエネルギー変換素子などに、ショットキーダイオードが通常、用いられている。マイクロ波、ミリ波、テラヘルツ波などの高周波を感度良く検知し、または効率良く電気エネルギーに変換するには、電圧対電流(I-V)特性で0V付近の非線形性が大きいことが望ましい。すなわち、電流が流れる方向での電流の立ち上がりが急峻で、逆方向での耐圧が高いことが求められる。
【0003】
ショットキーダイオードでは、一般的なPN接合ダイオードと比較して、小さい順方向バイアスで電流が流れ始めるが、それでも、一定の立ち上がり電圧Vonを超えるまでは順方向の電流は流れない。そのため、ゼロバイアス(0V)付近で非線形性が小さくなり、電力変換効率、検波特性等が不十分になる。
【0004】
バックワードダイオードは、エサキダイオードの不純物濃度を制御して順方向のピークを抑制した構造である。負方向の電圧でバンド間トンネル電流による電流の立ち上がりが急峻であり、ゼロバイアス付近で比較的大きな非線形性を持つ。しかし、大きな入力電力に対しては、電圧スイングによって順方向に電流が流れ出し、非線形性が落ちる。
【0005】
ショットキーバリアダイオードの順方向電流特性と逆方向の耐圧を向上させる構成が知られている(たとえば、特許文献1参照)。また、半導体ナノワイヤの上面にオーミック接触する電極を設けた構成が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-2836726803号公報
【文献】特表2016-510943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
微弱な環境電波からの電力の取り出し、高周波信号の検波などでは、電力変換または検波に用いられる半導体デバイスの電流-電圧特性がゼロバイアス近傍で高い非線形性を持つことが望ましい。
【0008】
本発明は、ゼロバイアス近傍での非線形性が向上した半導体デバイスと、その応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの態様では、半導体デバイスは、
ナノ構造体の第1導電型の半導体と、
前記第1導電型の半導体の端部でオーミック接合される第1電極と、
前記第1電極と接続され、前記第1導電型の半導体の側面に設けられる第2電極と、
前記ナノ構造体の内部の空乏層の拡張を制御する空乏化構成と、
を有し、
前記空乏化構成によって、前記第1導電型の半導体の内部で、キャリアの移動方向と交差する方向に前記空乏層が拡張される。
【発明の効果】
【0010】
半導体デバイスのゼロバイアス近傍での非線形特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態の半導体デバイスの第1原理を説明する図である。
【
図2】第1原理が適用される半導体デバイスの模式図である。
【
図3】第1原理が適用される半導体デバイスの基本動作図である。
【
図4】実施形態の半導体デバイスの第2原理を説明する図である。
【
図5】第2原理が適用される半導体デバイスの模式図である。
【
図6】第2原理が適用される半導体デバイスの基本動作図である。
【
図7】実施形態の半導体デバイスの第3原理を説明する図である。
【
図8】第3原理が適用される半導体デバイスの模式図である。
【
図9】第3原理が適用される半導体デバイスの基本動作図である。
【
図10】第1実施形態の半導体デバイスの模式図である。
【
図11】第1実施形態の半導体デバイスのI-V特性図である。
【
図12A】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12B】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12C】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12D】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12E】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12F】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12G】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12H】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12I】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12J】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図12K】第1実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図13】第2実施形態の半導体デバイスの模式図である。
【
図14A】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14B】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14C】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14D】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14E】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14F】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14G】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14H】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14I】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14J】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図14K】第2実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図15】第2実施形態の半導体デバイスの変形例である。
【
図16】第3実施形態の半導体デバイスの模式図である。
【
図17A】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17B】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17C】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17D】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17E】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17F】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17G】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17H】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17I】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17J】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17K】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図17L】第3実施形態の半導体デバイスの作製工程図である。
【
図18】第3実施形態の半導体デバイスの変形例である。
【
図19】第3実施形態の半導体デバイスのさらに別の変形例である。
【
図25】実施形態の半導体デバイスが適用される無線受信器の模式図である。
【
図26】実施形態の半導体デバイスが適用される無線受信器の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
入射する高周波を効率良く処理するめに、実施形態ではナノワイヤ、ナノフィンなどのナノ構造体を用いた半導体デバイスで、ゼロバイアス付近のI-V特性の非線形性を向上する。半導体デバイスがバックワード的に動作するときは、逆方向での電流の立ち上がりを急峻にして、順方向の耐圧を大きくする。
【0013】
電流の立ち上がりと逆耐圧を改善するために、ナノ構造体の内部の空乏層の拡がりを、キャリアが流れる方向と交差する方向に制御する。これを実現する構成は、いくつか考えられる。
【0014】
<原理1>
図1は、実施形態の半導体デバイスの第1原理を説明する図である。第1原理では、第1導電型の半導体のナノ構造体と、電極とのMIS(Metal-Insulator-Semiconductor)接合により、キャリアが流れる方向と交差する方向に空乏層Ldepの拡がりを制御する。第1導電型の半導体の側面と電極の間に、絶縁膜Ldielを挿入して、MIS接合を形成する。このMIS構造のI-I’ライン上のバンド構造を併せて示す。
【0015】
第1導電型がp型のときは、p型半導体の側面とアノード電極の間に絶縁膜Ldielを挿入する。p型半導体の先端は、金属Mとオーミック接触している。順方向のバイアス(正電圧)が印加されると、空乏層Ldepはp型半導体の界面から中心部に向かって拡がり、ホールはオーミック接合の価電子帯準位へ通り抜けることができない。逆方向のバイアス(負電圧)が印加されると、空乏層Ldepの幅が小さくなり、ホールはオーミック接合側(カソード側)からアノード電極に流れ込む。
【0016】
第1導電型がn型のときは、n型半導体の側面とカソード電極の間に絶縁膜Ldielを挿入する。n型半導体の先端は、金属Mとオーミック接触している。順方向のバイアス(正電圧)が印加されると、空乏層Ldepがn型半導体の界面から中心部に向かって拡がり、電子はオーミック接合の伝導帯の位へ通り抜けることができない。逆方向のバイアス(負電圧)が印加されると、空乏層Ldepの幅(厚さ)が小さくなり、電子はオーミック接合側(アノード側)からカソード電極に流れ込む。
【0017】
これにより、順方向の耐圧が向上する。逆方向では、小さなVon電圧で電流が急峻に流れて、ゼロバイアス近傍での非線形性が高くなる。
【0018】
p型半導体とカソード電極の間、あるいはn型半導体とアノード電極の間にpn接合が形成される場合は、バックワードダイオード(図中、「BWD」と表記)となる。このときも、動作原理は同じである。
【0019】
図2は、原理1の半導体デバイス10の模式図である。半導体デバイス10は、たとえば、ナノワイヤ13で形成されている。この例では、基板11側にn型の半導体層12が配置され、n型の半導体層12の上に、n型半導体131とp型半導体132が接合されたナノワイヤ13が形成されている。p型半導体132に、第1電極16と第2電極17を含むアノード電極18が設けられ、n型の半導体層12にカソード電極14が設けられている。
【0020】
アノード電極18の第1電極16は、p型半導体132の先端とオーミック接合している。アノード電極18の第2電極17とp型半導体132の側面の間に絶縁膜15が挿入されて、MIS構造が形成されている。
【0021】
図3は、半導体デバイス10の基本動作図である。
図3の(a)はデバイスに逆方向のバイアス(負電圧)が印加された時の状態、
図3の(b)はデバイスに順方向のバイアス(正電圧)が印加されたときの状態を示す。
図3の(c)は、半導体デバイス10のI-V特性である。
図2のサークルAの領域に着目して説明する。
【0022】
アノード電極18のうち、第1電極16はp型半導体132の端面に電気的に接続されてオーミック接合(Cohmic)を形成している。逆方向バイアスが印加されると、p型半導体132と絶縁膜15の界面に存在する空乏層19の幅が薄くなり、第1電極16に向かってホールが流れやすくなる。
【0023】
順方向バイアスが印加されると、空乏層19がp型半導体132の中心に向かって広がり、ホールの流れが遮断される。この現象は、ナノ構造体のp型半導体132の幅(または径)が、空乏層19の拡がりに対して十分に小さいことから発現する。空乏層19の幅は、半導体中のドーピング濃度、材料等にも依存するため、これらのパラメータを制御して、順方向バイアスがかかったときに空乏層19の幅がp型半導体132の幅(または径)を超えるようにする。
【0024】
この構成により、
図3の(c)に示すように、順耐圧が高く、ゼロバイアス付近での非線形性の高いバックワードダイオードが実現する。
【0025】
<原理2>
図4は、実施形態の半導体デバイスの第2原理を説明する図である。第2原理では、第1導電型の半導体のナノ構造体と、電極の間に薄いpn接合を配置して、キャリアが流れる方向と交差する方向に空乏層Ldepの拡がりを制御する。p-n構造のII-II’ライン上のバンド構造を併せて示す。
【0026】
第1導電型がp型のときは、p型半導体の側面とアノード電極の間に、n型の半導体薄膜Lnが挿入される。p型半導体の先端は、金属Mとオーミック接触している。順方向のバイアス(正電圧)が印加されると、空乏層Ldepはp型半導体の中心部に向かって拡がり、ホールはオーミック接合の価電子帯準位へ通り抜けることができない。逆方向のバイアス(負電圧)が印加されると、空乏層Ldepの幅が薄くなり、ホールはオーミック接合側(カソード側)からアノード電極に流れ込む。
【0027】
第1導電型がn型のときは、n型半導体の側面とカソード電極の間に、p型の半導体薄膜Lpを挿入する。n型半導体の先端は、金属Mとオーミック接触している。順方向のバイアス(正電圧)が印加されると、空乏層Ldepはn型半導体の中心部に向かって拡がり、電子はオーミック接合側の伝導帯準位に通り抜けることができない。逆方向のバイアス(負電圧)が印加されると、空乏層Ldepの幅が小さくなり、電子はオーミック接合側(カソード側)から、アノード電極に流れ込む。
【0028】
これにより、順方向の耐圧が向上する。逆方向では、小さなVon電圧で電流が急峻に流れ、ゼロバイアス近傍での非線形性が高くなる。
【0029】
p型半導体とカソード電極の間、あるいはn型半導体とアノード電極の間にpn接合が形成される場合はバックワードダイオード(図中、「BWD」と表記)となる。このときも動作原理は同じである。
【0030】
図5は、原理2の半導体デバイス20の模式図である。半導体デバイス20は、たとえばナノワイヤ23で形成されている。この例では、基板21側にn型の半導体層22が配置され、n型の半導体層22の上に、n型半導体231とp型半導体232のpn接合を有するナノワイヤ23が形成されている。
【0031】
p型半導体232に、第1電極26と第2電極27を含むアノード電極28が設けられ、n型の半導体層22にカソード電極24が設けられている。p型半導体232の側面と第2電極27の界面に、n型半導体の薄膜233が挿入されている。
【0032】
図6は、半導体デバイス20の基本動作図である。
図6の(a)はデバイスに逆方向のバイアス(負電圧)が印加された時の状態、
図6の(b)はデバイスに順方向のバイアス(正電圧)が印加されたときの状態を示す。
図6の(c)は、半導体デバイス20のI-V特性である。
図5のサークルBの領域に着目して説明する。
【0033】
アノード電極18の第1電極26は、p型半導体232の端部と電気的に接続されてオーミック接合(Cohmic)を形成している。逆方向バイアスが印加されると、p型半導体232とn型半導体の薄膜233の界面に存在する空乏層29の幅が狭くなり、ホールは第1電極26に向かって流れやすくなる。
【0034】
順方向バイアスが印加されると、p型半導体232とn型半導体の薄膜233との界面からp型半導体232の内部に向かって伸びる空乏層29の幅が増大して、ホールの流れが遮断される。この現象は、ナノ構造体のp型半導体232の幅(または径)が、空乏層29の拡張に対して十分に小さいことから発現する。空乏層29の厚さは、半導体中のドーピング濃度、材料等にも依存するため、これらのパラメータを制御して、順方向バイアスの印加時に空乏層29の幅がp型半導体232の幅(または径)を超えるようにする。
【0035】
この構成により、
図6(c)に示すように、順耐圧が高く、ゼロバイアス付近での非線形性の高いバックワードダイオードが実現する。
【0036】
<原理3>
図7は、実施形態の半導体デバイスの第3原理を説明する図である。第3原理では、第1導電型の半導体のナノ構造体にショットキー接合を設けて、キャリアが流れる方向と交差する方向に空乏層Ldepの拡がりを制御する。ショットキー構造のIII-III’ライン上のバンド構造を併せて示す。
【0037】
第1導電型がp型のときは、p型半導体の側面の一部にアノード電極が設けられて、ショットキー接合を形成する。p型半導体の先端は、金属Mとオーミック接触している。順方向のバイアス(正電圧)が印加されると、空乏層Ldepがp型半導体の中心部に向かって拡がり、ホールはオーミック接合の価電子帯の準位へ通り抜けることができない。逆方向のバイアス(負電圧)が印加されると、空乏層Ldepの幅が小さくなり、ホールはオーミック接合側(カソード側)からアノード電極に流れ込む。
【0038】
第1導電型がn型のときは、n型半導体の側面とカソード電極がショットキー接合される。n型半導体の先端は、金属Mとオーミック接触している。順方向のバイアス(正電圧)が印加されると、空乏層Ldepがn型半導体の中心部に向かって拡がり、電子はオーミック接合の伝導帯準位へ通り抜けることができない。逆方向のバイアス(負電圧)が印加されると、空乏層Ldepの幅(厚さ)が小さくなり、電子はオーミック接合側(アノード側)からカソード電極に流れ込む。
【0039】
これにより、順方向の耐圧が向上する。逆方向では、小さなVon電圧で電流が急峻に流れて、ゼロバイアス近傍での非線形性が高くなる。
【0040】
p型半導体とカソード電極の間、あるいはn型半導体とアノード電極の間にpn接合が形成される場合はバックワードダイオード(図中、「BWD」と表記)となる。このときも動作原理は同じである。
【0041】
図8は、原理3の半導体デバイス30の模式図である。半導体デバイス30は、ナノワイヤ33などのナノ構造体で形成されている。この例では、基板31側に、n型の半導体層32が配置され、n型の半導体層32の上に、n型半導体331とp型半導体332のpn接合を有するナノワイヤ33が形成されている。
【0042】
p型半導体332に、第1電極36と第2電極37を含むアノード電極38が接続され、n型の半導体層32にカソード電極34が接続されている。
【0043】
図9は、半導体デバイス30の基本動作図である。
図9の(a)はデバイスに逆方向のバイアス(負電圧)が印加された時の状態、
図9の(b)はデバイスに順方向のバイアス(正電圧)が印加されたときの状態を示す。
図9の(c)は、半導体デバイス30のI-V特性である。
【0044】
アノード電極38の第1電極36は、p型半導体232の端部と電気的に接続されてオーミック接合(Cohmic)を形成している。アノード電極38の第2電極37は、p型半導体332の側面に形成されて、ショットキー接合を形成している。
【0045】
逆方向バイアスが印加されると、p型半導体332と第2電極37の界面に存在する空乏層39の幅が小さくなり、ホールは第1電極36に向かって流れやすくなる。
【0046】
順方向バイアスが印加されると、第2電極37との界面からp型半導体332の内部に伸びる空乏層39の幅が増大して、ホールの流れが遮断される。この現象は、ナノ構造体のp型半導体332の幅(または径)が、空乏層39の拡がりに対して十分に小さいことから発現する。空乏層39の幅さは、半導体中のドーピング濃度、材料等にも依存するため、これらのパラメータを制御して、順方向バイアス印加時に空乏層39の幅がp型半導体332の幅(または径)を超えるようにする。
【0047】
この構成により、
図9(c)に示すように、順耐圧が高く、ゼロバイアス付近での非線形性の高いバックワードダイオードが実現する。
【0048】
<第1実施形態>
図10は、第1原理が適用される半導体デバイス10の構成例である。第1実施形態では、ナノ構造体の第1導電型の半導体の側面にMIS接合を形成して、アノードを空乏化する。
図10の例では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、ナノワイヤのバックワードダイオードが提供される。
【0049】
基板11の上に、n型不純物が高濃度にドープされたn+型の半導体層12と、絶縁膜111が、この順で積層されている。絶縁膜111の一部が除去されて、カソード電極14と、ナノ構造のn型半導体131が、n+型の半導体層12に接続されている。n型半導体131の長軸方向に、ナノ構造のp型半導体132が接合されて、pn接合を含むナノワイヤ13が形成されている。
【0050】
ナノワイヤ13のp型半導体132の一部は層間絶縁膜113から突出して、アノード電極18に接続されている。アノード電極18の第1電極16は、p型半導体132の先端とオーミック接合している。アノード電極18の第2電極17とp型半導体132の側面の間に絶縁膜15が挿入され、MIS接合が形成されている。MIS接合を形成する絶縁膜15は、層間絶縁膜113の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0051】
層間絶縁膜113には、カソード電極14に電気的に接続される引き出し電極115が形成されている。引き出し電極115を介して、カソード電極14に電流、電気信号、または電圧が印加される。
【0052】
動作時に、順方向バイアスがかかると、
図3を参照して説明したように、p型半導体132の中心に向かって空乏層が拡がり、ホールの流れが抑制される。これにより、順方向の耐圧が向上する。逆方向バイアスがかかると、空乏層はナノワイヤの径方向に縮小し、ホールは第1電極16に向かって流れ込む。
【0053】
バックワードダイオードの動作としては、デバイスに逆方向の電圧がかかると、p型半導体132の価電子帯準位よりもn型半導体131の伝導帯準位がより低い状態になる。p型半導体132の価電子帯の電子は、p型半導体132とn型半導体131の間のエネルギーバンドの曲がり部の障壁を直接トンネリングして、n型半導体131の伝導帯に移動する。このバンド間トンネリングによって、逆方向電圧で電流が急峻に立ち上がる。
【0054】
バンド間トンネリングを可能にするために、ナノワイヤ13のp型半導体132の不純物濃度は1×1018cm-3以上に設定されている。このような高い不純物濃度であっても、ナノワイヤ13の側壁に形成されたMIS接合によって、キャリアの流れと交差する方向に空乏層を拡張することができる。これは、一般的なショットキーバリアダイオードと大きく異なる点である。一般的なショットキーバリアダイオードでは、空乏層を拡げるために、不純物濃度を1017cm-3、またはそれより低く設定されている。
【0055】
図10の構成では、不純物濃度が1×10
18cm
-3以上のナノ構造体の端部にオーミック接合が配置され、側面に空乏層を制御するMIS構造が設けられている。これにより、
図11のように、ゼロバイアス付近での非線形性の高いバックワードダイオード特性が得られる。
【0056】
図12A~
図12Kは、第1実施形態の半導体デバイス10の作製工程図である。以下で述べる工程と用いられる材料は、一例であって、本発明を限定するものではない。
【0057】
図12Aで、半絶縁性のGaAs(111)Bの基板11に、n型不純物が高濃度にドープされたn
+-GaAsの半導体層12を、厚さ200nmに成長する。n型の不純物濃度は、たとえば、1×10
19cm
-3 である。n
+-GaAsの半導体層12の上に、SiN,SiO
2等の絶縁膜111を50nm程度の厚みで堆積する。
【0058】
図12Bで、電子ビーム(EB)リソグラフィーを用いて所定の開口パターンを有するレジストマスクを形成し、フッ素系のドライエッチングで、絶縁膜111に開口112を形成する。このとき、たとえばAuを蒸着・リフトオフすることで、開口112内にAu触媒を形成してもよい。
【0059】
図12Cで、MOCVD法により開口112内に、n型半導体131として、n-InAsナノワイヤを成長する。
【0060】
図12Dで、n-InAsナノワイヤに引き続いて、p型半導体132として、p-GaAsSbナノワイヤを成長し、pn接合を含むナノワイヤ13を形成する。n-InAs/p-GaAsSbのナノワイヤ13は、バックワードダイオードとして動作する。
【0061】
図12Eで、たとえばALD(原子層堆積)法により、絶縁膜15として、厚さ10nm程度のAlO薄膜を全体に成膜する。
【0062】
図12Fで、フォトリソグラフィー法で電極領域を規定し、ドライエッチングにより、絶縁膜15及び絶縁膜111に開口を形成する。AuGeを蒸着・リフトオフすることで、n
+-GaAsの半導体層12に接続されるカソード電極14を形成する。
【0063】
図12Gで、例えば、BCB(Benzocyclobutene)樹脂を塗布し硬化することで、層間絶縁膜113を形成する。この時点では、ナノワイヤ13は完全に埋め込まれている。
【0064】
図12Hで、ドライエッチングにより層間絶縁膜113を所定の厚さだけ(たとえば、T1からT2まで)除去して、p型半導体132であるp-GaAsSbナノワイヤの一部を露出させる。このドライエッチングで、p-GaAsSbナノワイヤの先端を覆っていたAlOの絶縁膜15が除去される。ナノワイヤ13の側面の絶縁膜15は残ったままとなる。
【0065】
図12Iで、フォトリソグラフィーにより電極領域を規定し、Ptを蒸着・リフトオフすることで、アノード電極18を形成する。アノード電極18のうち、p型半導体132の先端とオーミック接合する部分は、第1電極16となる。アノード電極18のうち、ナノワイヤ13の側面に絶縁膜15を介したMIS構造を形成する部分は、第2電極17となる。このMIS構造によって、p型半導体132の界面に空乏層が形成され、バイアス印加によって、空乏層を完全に広げることができる。
【0066】
図12Jで、フォトリソグラフィーにより、層間絶縁膜113上にコンタクトホール領域を規定し、ドライエッチングでカソード電極14を露出する開口114を形成する。
【0067】
図12Kで、フォトリソグラフィーにより電極領域を規定し、めっきによってカソード電極14から引き出される引き出し電極115を形成する。これにより、順方向耐圧の高いバックワードダイオード10Aが形成される。
【0068】
<第2実施形態>
図13は、原理2が適用される半導体デバイス20の構成例である。第2実施形態ではナノ構造の第1導電型の半導体の側面にpn接合を形成して、アノードを空乏化する。
図13の例では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、ナノワイヤのバックワードダイオードが形成される。
【0069】
基板21の上に、n型不純物が高濃度にドープされたn+型の半導体層22と、絶縁膜211が、この順で積層されている。絶縁膜211の一部が除去されて、ナノ構造のn型半導体231とカソード電極24が、n+型の半導体層22に接続されている。n型半導体231の長軸方向に、ナノ構造のp型半導体232が接合されて、pn接合を含むナノワイヤ23が形成されている。
【0070】
ナノワイヤ23のp型半導体232の一部は層間絶縁膜213から突出して、アノード電極28に接続されている。アノード電極28の第1電極26は、p型半導体232の先端とオーミック接合している。アノード電極18の第2電極27とp型半導体232の側面の間にn-InAsの薄膜233が挿入されて、p型半導体232の外表面にpn接合が形成されている。p型半導体232の外周に配置されるn型半導体シェルまたは薄膜233は、n型半導体231と同じ材料でも、異なる材料でもよい。
【0071】
層間絶縁膜313には、カソード電極24に電気的に接続される引き出し電極215が形成されている。引き出し電極215を介して、カソード電極14に電流、電気信号、または電圧が印加される。
【0072】
動作時に、順方向バイアスがかかると、
図6を参照して説明したように、p型半導体232の中心に向かって空乏層が拡がり、ホールの流れが抑制される。これにより、順方向の耐圧が向上する。逆方向バイアスがかかると、空乏層はナノワイヤの径方向に縮小し、ホールは第1電極26に向かって流れ込む。
【0073】
バックワードダイオードの動作は、第1実施形態で説明したとおりである。ナノワイヤ23のp型半導体232の不純物濃度は1×1018cm-3以上に設定されている。このような高い不純物濃度であっても、ナノワイヤ23の側壁に形成されたpn接合型のショットキーバリアによって、キャリアの流れと交差する方向に空乏層を拡張することができる。
【0074】
図13の構成でも、
図11のように、ゼロバイアス付近での非線形性の高いバックワードダイオード特性が得られる。
【0075】
図14A~
図14Kは、第2実施形態の半導体デバイス20の作製工程図である。以下で述べる工程と用いられる材料は、一例であって、本発明を限定するものではない。
【0076】
図14Aで、半絶縁性のGaAs(111)Bの基板21に、n型不純物が高濃度にドープされたn
+-GaAsの半導体層22を、厚さ200nmに成長する。n型の不純物濃度は、たとえば、1×10
19cm
-3 である。n
+-GaAsの半導体層22の上に、SiN,SiO
2等の絶縁膜211を50nm程度の厚みで堆積する。
【0077】
図14Bで、電子ビーム(EB)リソグラフィーを用いて所定の開口パターンを有するレジストマスクを形成し、フッ素系のドライエッチングで、絶縁膜211に開口212を形成する。このとき、たとえばAuを蒸着・リフトオフすることで、開口212内にAu触媒を形成してもよい。
【0078】
図14Cで、MOCVD法により開口212内に、n型半導体231として、n-InAsナノワイヤを成長する。
【0079】
図14Dで、n-InAsナノワイヤに引き続いて、p型半導体232として、p-GaAsSbナノワイヤを成長し、pn接合を含むナノワイヤ23を形成する。n-InAs/p-GaAsSbのナノワイヤ23は、バックワードダイオードとして動作する。
【0080】
図14Eで、成長モードを変更し、p-GaAsSbナノワイヤを取り囲むように、n-InAsのナノシェルまたは薄膜233を成長させる。n-InAsの薄膜233の膜厚とドーピング濃度は、p-GaAsSbナノワイヤとn-InAsシェルの界面が空乏化するように制御されている。
【0081】
図14Fで、フォトリソグラフィー法で電極領域を規定し、ドライエッチングにより、絶縁膜211に開口を形成する。AuGeを蒸着・リフトオフすることで、n
+-GaAsの半導体層22に接続されるカソード電極24を形成する。
【0082】
図14Gで、例えば、BCB(Benzocyclobutene)樹脂を塗布し硬化することで、層間絶縁膜213を形成する。この時点では、ナノワイヤ23は完全に埋め込まれている。
【0083】
図14Hで、ドライエッチングにより層間絶縁膜213を所定の厚さだけ(たとえば、T1からT2まで)除去して、p型半導体232であるp-GaAsSbナノワイヤの一部と、これを取り囲むn-InAsの薄膜233を露出させる。
【0084】
図14Iで、フォトリソグラフィーにより電極領域を規定し、Ptを蒸着・リフトオフすることで、アノード電極28を形成する。アノード電極28のうち、p型半導体232の先端とオーミック接合する部分は、第1電極26となる。アノード電極28のうち、ナノワイヤ23の側面のpn接合と接する部分は、第2電極27となる。第2電極27の界面でのpn接合によって空乏層が形成され、バイアス印加によって、空乏層を完全に広げることができる。
【0085】
図14Jで、フォトリソグラフィーにより、層間絶縁膜213上にコンタクトホール領域を規定し、ドライエッチングでカソード電極24を露出する開口214を形成する。
【0086】
図14Kで、フォトリソグラフィーにより電極領域を規定し、めっきによってカソード電極24から引き出される引き出し電極215を形成する。これにより、順方向耐圧の高い半導体デバイス20が形成される。
【0087】
図15は、第2実施形態の変形例の模式図である。
図13の構成では、p型半導体232であるp-GaAsSbナノワイヤの外周のみにn-InAsシェルの薄膜233が配置されていた。
図15の半導体デバイス20Aのように、ナノワイヤ23Aのn型半導体231の外周にも、n-InAsの薄膜233を設けてもよい。
【0088】
この場合、n型半導体231は、n-InAsナノワイヤコアとなり、薄膜233はナノワイヤ23Aの全体を取り巻くn-InAsシェルとなる。n-InAsの薄膜233の内側のn型半導体231とp型半導体232の接合部が、バックワードダイオードとなる。この構成でも、順方向耐圧が高く、逆方向での電流の立ち上がりが急峻なI-V特性が得られる。
【0089】
<第3実施形態>
図16は、原理3が適用される半導体デバイス30の構成例である。第3実施形態ではナノ構造の第1導電型の半導体の側面にショットキー接合を形成して、アノードを空乏化する。
図16の例では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として、ナノワイヤのバックワードダイオードが形成される。
【0090】
基板31の上に、n型不純物が高濃度にドープされたn+型の半導体層32と、絶縁膜311が、この順で積層されている。絶縁膜311の一部が除去されて、ナノ構造のn型半導体331とカソード電極34が、n+型の半導体層32に接続されている。n型半導体331の長軸方向に、ナノ構造のp型半導体332が接合されて、pn接合を含むナノワイヤ33が形成されている。
【0091】
ナノワイヤ33のp型半導体332の一部は層間絶縁膜313から突出して、アノード電極38に接続されている。アノード電極38は、第1電極36と第2電極37を含む。第1電極36と第2電極37は電気的に接続されている。第1電極36は、p型半導体332の先端とオーミック接合している。第2電極37はp型半導体332の側面でショットキー接合を形成する。
【0092】
層間絶縁膜313には、カソード電極34に電気的に接続される引き出し電極315が形成されている。引き出し電極315を介して、カソード電極34に電流、電気信号、または電圧が印加される。
【0093】
動作時に、順方向バイアスがかかると、
図9を参照して説明したように、p型半導体332の中心に向かって空乏層が拡がり、ホールの流れが抑制される。これにより、順方向の耐圧が向上する。逆方向バイアスがかかると、空乏層はナノワイヤの径方向に縮小し、ホールは第1電極36に向かって流れ込む。
【0094】
バックワードダイオードの動作は、第1実施形態で説明したとおりである。ナノワイヤ33のp型半導体332の不純物濃度は1×1018cm-3以上に設定されている。このような高い不純物濃度であっても、ナノワイヤ33の側壁に形成されたショットキー接合によって、キャリアの流れと交差する方向に空乏層を拡張することができる。
【0095】
図16の構成でも、
図11のように、ゼロバイアス付近での非線形性の高いバックワードダイオード特性が得られる。
【0096】
図17A~
図17Lは、第3実施形態の半導体デバイス30の作製工程図である。以下で述べる工程と用いられる材料は、一例であって、本発明を限定するものではない。
【0097】
図17Aで、半絶縁性のGaAs(111)Bの基板31に、n型不純物が高濃度にドープされたn
+-GaAsの半導体層32を、厚さ200nmに成長する。n型の不純物濃度は、たとえば、1×10
19cm
-3 である。n
+-GaAsの半導体層32の上に、SiN,SiO
2等の絶縁膜311を50nm程度の厚みで堆積する。
【0098】
図17Bで、電子ビーム(EB)リソグラフィーを用いて所定の開口パターンを有するレジストマスクを形成し、フッ素系のドライエッチングで、絶縁膜311に開口312を形成する。このとき、たとえばAuを蒸着・リフトオフすることで、開口312内にAu触媒を形成してもよい。
【0099】
図17Cで、MOCVD法により開口312内に、n型半導体331として、n-InAsナノワイヤを成長する。
【0100】
図17Dで、n-InAsナノワイヤに引き続いて、p型半導体332として、p-GaAsSbナノワイヤを成長し、pn接合を含むナノワイヤ23を形成する。n-InAs/p-GaAsSbのナノワイヤ33は、バックワードダイオードとして動作する。
【0101】
図17Eで、フォトリソグラフィー法で電極領域を規定し、ドライエッチングにより、絶縁膜311に開口を形成する。AuGeを蒸着・リフトオフすることで、n
+-GaAsの半導体層32に接続されるカソード電極34を形成する。
【0102】
図17Fで、例えば、BCB(Benzocyclobutene)樹脂を塗布し硬化することで、層間絶縁膜313を形成する。この時点では、ナノワイヤ33は完全に埋め込まれている。
【0103】
図17Gで、ドライエッチングにより層間絶縁膜313を所定の厚さだけ(たとえば、T1からT2’まで)除去して、p型半導体332であるp-GaAsSbナノワイヤの先端を露出させる。
【0104】
図17Hで、フォトリソグラフィーにより電極領域を規定し、Ptを蒸着・リフトオフすることで、オーミック電極としての第1電極36を形成する。
【0105】
図17Iで、ドライエッチングで層間絶縁膜313をさらに所定の厚さ(たとえば、T2’からT3まで)除去して、p型半導体332の一部を露出する。
【0106】
図17Jで、フォトリソグラフィーにより電極領域を規定し、Tiを蒸着・リフトオフすることで、p型半導体332の側面に、ショットキー電極として、第2電極37を形成する。第2電極37は第1電極と電気的に接続されている。p型半導体332と第2電極37とのショットキー接合により、p型半導体332の界面に空乏層が形成され、バイアス印加によって、空乏層を完全に広げることができる。
【0107】
図17Kで、フォトリソグラフィーにより、層間絶縁膜313上にコンタクトホール領域を規定し、ドライエッチングでカソード電極34を露出する開口314を形成する。
【0108】
図17Lで、フォトリソグラフィーにより電極領域を規定し、めっきによってカソード電極34から引き出される引き出し電極315を形成する。これにより、順方向耐圧の高い半導体デバイス30が形成される。
【0109】
図18は、第3実施形態の変形例である半導体デバイス40を示す。ショットキー接合を用いて空乏層幅を制御する場合、空乏層の幅をできるだけナノワイヤ43の中心まで拡張し、ショットキーデバイスの耐圧を向上する。これを実現するために、ナノワイヤ43の不純物濃度を、コアと、コアを取り囲むシェルで変化させる。
【0110】
たとえば、p-GaAsSbで形成されるp型半導体のコア432で、アクセプタ濃度を1×1019cm-3にして、Ptの第1電極56とオーミック接合を形成する。p型半導体の外周部の半導体膜であるシェル433では、アクセプタ濃度を1×1018cm-3に設定し、Ptの第2電極47とショットキー接合を形成する。第1電極46と第2電極47は連続して形成されてアノード電極48となる。
【0111】
この構造では、不純物濃度が少ないシェル433で空乏化が起きやすく、ショットキー耐圧も向上する。一方、p型半導体のコア432の不純物濃度が高いことから、ナノワイヤ43の先端でPtのオーミック接合が得られる。
【0112】
ナノワイヤ43で、n型半導体431とp型半導体のコア432のpn接合でバックワードダイオード(BWD)が形成され、そのI-V特性は、
図11のようにゼロバイアス付近での非線形が高い。
【0113】
図19は、第3実施形態の別の変形例である半導体デバイス50を示す。半導体デバイス50では、空乏層の幅をできるだけナノワイヤ53の中心まで拡張し、ショットキーデバイスの耐圧を向上するために、p型半導体のコア532とシェル533の間で、バンドギャップ(BG)を変化させる。
【0114】
p型半導体のコア532のバンドギャップをBG1、シェル533のバンドギャップをBG2とすると、BG2>BG1となるように材料を選択する。たとえば、p-GaAsSbをp型半導体のコア532とし、p-GaAsSbよりもバンドギャップの大きいp-AlGaAsSbでシェル533を形成する。
【0115】
コア532に、オーミック電極である第1電極56を接続し、シェル533にショットキー電極である第2電極57を設ける。第1電極56と第2電極57は電気的に接続されてアノード電極58となる。シェル533のバンドギャップが大きいことから、障壁の高さが高くなり、ショットキー特性が向上する。ナノワイヤ53の中心部に向かう空乏層を制御しやすくなる。
【0116】
ナノワイヤ53で、n型半導体531とp型半導体のコア532のpn接合でバックワードダイオード(BWD)が形成され、そのI-V特性は、
図11のようにゼロバイアス付近での非線形が高い。
【0117】
<その他の構成例>
図20は、ナノ構造の例である。実施形態の半導体デバイスに用いられるナノ構造は、ナノワイヤに限定されない。
図20の(a)は、円柱型のナノロッド63Aである。ナノロッド63Aの一方の導電型の端部に電極68Aが設けられる。電極68Aは、ナノロッド63Aの先端面とオーミック接合する第1電極66Aと、ナノロッド63Aの側面とMIS接合、pn接合、またはショットキー接合する第2電極67Bを含む。
【0118】
図20の(b)は、角柱型のナノロッド63Bである。角柱は4角柱に限定されず、6角柱、8角柱等の多角柱を含む。ナノロッド63Bの一方の導電型の端部に電極68Bが設けられる。電極68Bは、ナノロッド63Bの先端面とオーミック接合する第1電極66Bと、ナノロッド63Bの側面とMIS接合、pn接合、またはショットキー接合する第2電極67Bを含む。
【0119】
図20の(c)は、ナノフィン63Cである。ナノフィン63Cでは、キャリアはフィンの高さ方向(z方向)と平行に流れる。順方向バイアスが印加されると、空乏層は、フィンの厚さ方向(x方向)に拡がって、キャリアの流れを抑制する。ナノフィン63Cの先端に電極68Cが設けられる。電極68Cは、ナノフィン63Cの上端面とオーミック接合する第1電極66Cと、ナノフィン63Cの側面とMIS接合、pn接合、またはショットキー接合する第2電極67Cを含む。
【0120】
図20の(a)~(c)のいずれのナノ構造も、空乏層の拡がりによってキャリアの流れを抑制できるだけの微細な構造体である。
【0121】
図21は、半導体デバイス70の模式図である。上述した構成例では、n型導電体のナノワイヤとp型導電体のナノワイヤが接合されていたが、積層方向の上側の半導体だけをナノ構造としてもよい。
【0122】
たとえば、半絶縁性のGaAs(111)Bの基板71に、n
+-GaAsの半導体層72と、n-InGaAsの半導体層731をこの順で成長する。p-GaAsSbのナノ構造体732は、絶縁膜711の開口を介して、n-InGaAsのn型半導体731に接続されて、pn接合を形成している。ナノ構造体732は、たとえばナノフィンである。
図21では、ナノフィンは、紙面の奥行方向に延びている。層間絶縁膜713の上に、p型のナノ構造体732に接続されるptのアノード電極78が設けられている。アノード電極78のうち、フィンの上面に接続される部分が第1電極76である。
【0123】
第1原理を用いる場合、p型半導体のフィンの側面とPtのアノード電極78の界面に絶縁膜が挿入される。第2原理を用いる場合、p型半導体のフィンの側面とPtのアノード電極78の界面にn型の半導体薄膜が挿入されて、pn接合が形成される。第3原理を用いる場合、たとえば、第1電極76をPtで形成し、フィン側面の第2電極77をTiで形成してショットキー接合を形成する。
【0124】
p型半導体のフィンの側面とアノード電極78の界面の不純物濃度をフィン本体の不純物濃度より低くしてもよい(
図18参照)。あるいは、p型半導体のフィンの側面とアノード電極78の界面に、フィン本体よりもエネルギーバンドギャップの大きい膜を挿入してもよい(
図19参照)。
【0125】
半導体デバイス70もバックワードダイオードとして機能するが、p型半導体だけがナノ構造体732で形成され、n型半導体731は層を形成しているので、機械的に安定した構成となっている。
【0126】
図22は、半導体デバイス80の模式図である。上述した例では、積層方向でナノ構造体の上部をp型、下部をn型としていたが、p型とn型を反対にしてもよい。たとえば、半絶縁性のGaAs(111)Bの基板71に、p
+-GaAsの半導体層82を配置し、絶縁膜811の開口を介して、p-GaAsSbなどのp型半導体832のナノワイヤが半導体層82に接続されている。p型半導体832の上端は、n-InAsなどのn型半導体831のナノワイヤに接続されて、pn接合を形成している。p型半導体832とn型半導体831で、ナノワイヤ83が形成されている。ナノワイヤ83の一部は、層間絶縁膜813から突き出ている。
【0127】
ナノワイヤ83のn型半導体831の上端は、たとえばPtの第1電極86とオーミック接合を形成している。ナノワイヤ83のn型半導体831の側面は、たとえばTiの第2電極87とショットキー接合を形成している。
【0128】
デバイスに順方向のバイアスがかかったときに、ショットキー界面からn型半導体831の中心に向かって空乏層が拡がり、電子の流れが遮断され、順方向耐圧が向上する。逆バイアスがかかったときは、拡散層が薄くなって電子が流れる。n型半導体831は1×1018cm-3以上の濃度に不純物がドープされており、電子はp型半導体832との界面の電位障壁を直接トンネリングする。これにより、小さな逆方向バイアスで電流が急峻に立ち上がる。一方、n型半導体831の側面に形成されたショットキー接合により、順方向バイアスでナノワイヤ83の中心方向に空乏層を拡張して、順方向耐圧が向上する。
【0129】
<半導体材料と電極材料>
ナノ構造体の材料として、Si,SiGe,Ge,GaAs,InP,InGaAs,InAs,GaN,InGaN,InN,GaSb,GaAsSb,AlGaSbなどを用いることができる。
【0130】
ナノ構造体にオーミック接合と、空乏層制御のためのショットキー的な接合を設けるために、電極材料は適切に選択される。半導体と金属の接合がオーミックになるかショットキーになるかは、仕事関数、電子親和力、界面準位等によって決まる。
【0131】
第1導電型の半導体がp-GaAsの場合、オーミック接合する金属としてPt、AuZn、Au等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Ag、Hf等を用いることができる。
【0132】
第1導電型の半導体がn-GaAsの場合、オーミック接合する金属として、Ti、AuGe、Cr等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Al、Au,Pt、Ta、W等を用いることができる。
【0133】
第1導電型の半導体がp-Siの場合、オーミック接合する金属として、Au、Mo等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Ti等を用いることができる。
【0134】
第1導電型の半導体がn-Siの場合、オーミック接合する金属として、Ti、Mg等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Al、Au,Pt、Ta、W等を用いることができる。
【0135】
第1導電型の半導体がp-GaAsSbの場合、オーミック接合する金属として、Ni,Pd,Pt等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Ti等を用いることができる。
【0136】
第1導電型の半導体がn-GaAsSbの場合、オーミック接合する金属として、Ti等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Pt等を用いることができる。
【0137】
第1導電型の半導体がp-GaNの場合、オーミック接合する金属として、Ni、Pd,Pt等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Ti、Al等を用いることができる。
【0138】
第1導電型の半導体がn-GaNの場合、オーミック接合する金属として、Ti、Al、Cr等を用いることができ、ショットキー接合する金属として、Ni、Pd,Pt等を用いることができる。
【0139】
第1導電型の半導体が少なくともGaとSbを含む化合物である場合、第2導電型の半導体として、少なくともInとAsを含む化合物を用いることができる。たとえば、第1導電体の半導体がGaSb、GaAsSb、AlGaSb等のとき、第2導電型の半導体として、InAs、InGaAs等を用いることができる。
【0140】
<特性計算>
図23は、実施形態の半導体デバイスの特性計算モデルの模式図である。第2原理(第2実施形態)の構成を採用し、円柱状のp型ナノワイヤコアと金属の界面に、n型半導体の薄膜を挿入したときのアノードでのI-V特性を計算する。
【0141】
p型ナノワイヤコアの径dは50~100nm、ナノワイヤコアと金属の間に配置されるn型ナノワイヤシェルの厚さtは25~30nm、ナノワイヤの側面に電極が配置される長軸方向の長さL1は0.5μm、ナノワイヤの底面から電極下端までの長さL2は0.5μmである。ナノワイヤコアはp-GaAsySb1-y、ナノワイヤシェルはp-GaAsySb1-y、金属はPtとする。ナノワイヤコアの上端と下端は、金属とオーミック接合している(Ohmic 1,Ohmic 2)。Ohmic 3はOhmic 1と同電位として計算した。Ohmic 3はOhmic 1と接続されていてもよい。このモデルは、バックワードダイオードを含んでいない。
【0142】
図24は、計算結果を示す。順(正)方向の耐圧が維持され、逆(負)方向で、0.1V未満の電圧で電流量が急峻に増えている。これは、順方向バイアスにより、ナノワイヤの中心まで空乏層Ldepが拡がってキャリアの流れを遮断するからである。
【0143】
<応用例>
図25は、実施形態の半導体デバイス10(または、半導体デバイス20、30、40、50、60、70、80のいずれであってもよい。以下、単に「半導体デバイス」とする)が適用される無線受信器100の模式図である。無線受信器100は、環境電波を電力に変換するエネルギーハーベスティングに用いられる。
【0144】
無線受信器100は、アンテナ101と、電力変換器110を有する。電力変換器110の出力に、昇圧器120、及び二次電池130が接続されていてもよい。アンテナ101で受信された環境電波は、高周波電流として、半導体デバイス10のカソードに印加される。半導体デバイス10はバックワードダイオードを形成し、入力された高周波を一方向の電流に整流する。
【0145】
半導体デバイス10と並列にキャパシタ118が配置されて、電荷が蓄積される。キャパシタ118とインダクタ119で平滑化出力フィルタが形成される。キャパシタ118から放電された電荷に含まれる交流成分はインダクタ119で除去されて、直流電圧が出力される。
【0146】
実施形態の半導体デバイス10は、順方向耐圧が大きく、負方向で感度良く動作するので、アンテナ101に入射した電波のパワーが比較的大きい場合でも耐圧が維持される。一方、微小な電力の電波が入射した場合も、バンド間トンネル電流によって感度よく電波を検知し、エネルギーハーベスティングの効率が良くなる。
【0147】
図26は、実施形態の半導体デバイス10が適用される無線受信器200の模式図である。無線受信器200は、無線通信の受信側の検波に用いられる。
【0148】
無線受信器200は、アンテナ201と、検波器210を有する。検波器210は、半導体デバイス10とインダクタ219を有する。アンテナ201で受信された高周波無線信号は、半導体デバイス10のカソードに印加される。半導体デバイス10はバックワードダイオードを形成し、入力された高周波を整流して出力する。インダクタ219は整流された電流に含まれる交流成分を除去して、直流電圧を出力する。
【0149】
実施形態の半導体デバイス10は、順方向耐圧が大きく、負方向で感度良く動作するので、アンテナ101で受信された無線信号のパワーが比較的大きい場合でも、耐圧が維持される。一方、微小な無線信号が受信される場合も、バンド間トンネル電流によって感度よく検波し、受信動作の信頼性が向上する。
【0150】
ナノワイヤ、ナノフィン等の微小な半導体のナノ構造体の側面で、空乏層の拡張を制御して耐圧を向上する。空乏層が完全にナノ構造体の中心まで拡がるように、ナノワイヤの径、またはナノフィンの厚さは50μm~500μmであり、より好ましくは、50μm~200μmである。
【0151】
実施形態の半導体デバイス10は、バンド間トンネル電流を動作原理とするので、感度良く動作する。ナノ構造体を用いているので、寄生容量が低減されて、さらに感度が向上する。耐圧性を維持して、微弱な環境電波の電力変換や小電力の受信信号の検波を行うことができる。
【0152】
以上の説明に関し、以下の付記を呈示する。
(付記1)
ナノ構造体の第1導電型の半導体と、
前記第1導電型の半導体の端部でオーミック接合される第1電極と、
前記第1電極と接続され、前記第1導電型の半導体の側面に設けられる第2電極と、
前記ナノ構造体の内部の空乏層の拡張を制御する空乏化構成と、
を有し、
前記空乏化構成によって、前記第1導電型の半導体の内部で、キャリアの移動方向と交差する方向に前記空乏層が拡張される、半導体デバイス。
(付記2)
前記第1導電型の半導体の前記空乏層が拡張される領域の不純物濃度は、1×1018cm-3以上である、付記1に記載の半導体デバイス。
(付記3)
前記空乏層は、順方向バイアスの印加により、前記キャリアの移動方向と交差する方向に拡がる、付記1または2に記載の半導体デバイス。
(付記4)
前記空乏層の幅は、逆方向バイアスの印加により減少し、前記ナノ構造体に前記キャリアが流れる、付記1~3のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記5)
前記第1導電型の半導体と前記第2電極の界面に配置される絶縁膜、
を有し、
前記空乏化構成は、前記第2電極と、前記絶縁膜と、前記第1導電型の半導体とで形成されるMIS構造である、付記1~4のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記6)
前記第1導電型の半導体と前記第2電極の界面に配置される第2導電型の薄膜、
を有し、
前記空乏化構成は、前記第1導電型の半導体と前記第2導電型の半導体膜によって前記第2電極の界面に形成されるpn接合である、付記1~4のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記7)
前記第1導電型の半導体と前記第2電極の界面に配置される、前記第1導電型の半導体よりも不純物濃度が低い、またはエネルギーバンドギャップが広い半導体膜、
を有し、
前記空乏化構成は、前記第2電極と前記半導体膜によって形成されるショットキー接合である、付記1~4のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記8)
前記空乏化構成は、前記第1導電型の半導体の前記側面で、前記第2電極と前記第1導電型の半導体によって形成されるショットキー接合である、付記1~4のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記9)
前記第1電極と反対側で、前記第1導電型の半導体に接合される第2導電型の半導体(131等)、を有する付記1~8のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記10)
前記第1導電型の半導体は、Si,SiGe,Ge,GaAs,InP、InGaAs、InAs,GaN、InGaN、InN、GaSb、GaAsSb、及びAlGaSbから選択される、付記1~9のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記11)
前記第1導電型の半導体は、少なくともGaとSbを含み、前記第2導電型の半導体は、少なくともInとAsを含む付記1~9のいずれかに記載の半導体デバイス。
(付記12)
前記第1導電型の半導体はp型のGaAsSbであり、前記第1電極は、Pt、Ni、またはPdであり、前記第2電極はTiである付記6または7に記載の半導体デバイス。(付記13)
前記第1導電型の半導体はn型のGaAsSbであり、前記第1電極はTi、前記第2電極はPtである、付記6または7に記載の半導体デバイス。
(付記14)
前記第1導電型の半導体は、p型GaAsであり、前記第1電極はPt、AuZn、及びAuから選択され、前記第2電極はAgまたはHfである、付記6または7に記載の半導体デバイス。
(付記15)
前記第1導電型の半導体は、n型GaAsであり、前記第1電極はTi,AuGe、及びCrから選択され、前記第2電極はAl、Au、Pt、Ta、及びWから選択される、付記6または7に記載の半導体デバイス。
(付記16)
前記第1導電型の半導体はp型のSiであり、前記第1電極はAuまたはMoであり、前記第2電極はTiである、付記6または7に記載の半導体デバイス。
(付記17)
前記第1導電型の半導体は、n型のSiであり、前記第1電極はTiまたはMgであり、前記第2電極はAl、Au、Cr、Cr、Pd、及びPtから選択される、付記6または7に記載の半導体デバイス。
(付記18)
付記1~17のいずれかに記載の半導体デバイスと、
前記半導体デバイスに接続されるアンテナ、
とを有する無線受信器。
(付記19)
前記半導体デバイスは検波器または電力変換器である、付記18に記載の無線受信器。
【符号の説明】
【0153】
10、20、30、40、50、60、70、80 半導体デバイス
13、23、33、43、53、83 ナノワイヤ(ナノ構造体)
131、231、331、431、531、831 n型半導体
132、232、332 p型半導体
233 n型半導体の薄膜
14、24、34 カソード電極
15 絶縁膜
16、26、36、46、56、66、76、86 第1電極
17、27、37、47、57、67、77、87 第2電極
18、28、38、48、58、68、78 アノード電極
63A、63B ナノロッド(ナノ構造体)
63C ナノフィン(ナノ構造体)
432、532 コア
433、533 シェル(半導体膜)
100、200 無線受信器
101、201 アンテナ
110 電力変換器
210 検波器