(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
B60L 5/00 20060101AFI20231024BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20231024BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20231024BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B60L5/00 A
B60M7/00 U
B60L53/14
H02J7/00 301B
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2019124448
(22)【出願日】2019-07-03
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【氏名又は名称】諏訪 華子
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】飯吉 亮太
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-068241(JP,A)
【文献】特表2013-515645(JP,A)
【文献】国際公開第2018/172294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 5/00
B60M 7/00
B60L 53/14
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の充電位置に停止した電動車両
を、前記電動車両の車体の上方に配置された上側充電構造
と前記車体の下方に配置された下側充電構造
とを備え
た充電設備を用いて充電する充電システムであって、
前記上側充電構造は、正
極の上側電極と、
前記電動車両及び前記充電設備の双方に配置されて前記上側電極に前記電動車両を電気的に断接するための上側可動子と、前記電動車両が前記上側電極に
、又は、前記上側電極が前記電動車両に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記上側電極から
、又は、前記上側電極が前記電動車両から離間する離間位置との間で前記上側可動子を移動させる上側駆動機構と、を備えており、
前記下側充電構造は、
負極の下側電極と、
前記電動車両に配置されて前記下側電極に前記電動車両を電気的に断接するための下側可動子と、前記電動車両が前記下側電極に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記下側電極から離間する離間位置との間で前記下側可動子を移動させる下側駆動機構と、を備えている
ことを特徴とする、充電システム。
【請求項2】
所定の充電位置に停止した電動車両
を、前記電動車両の車体の上方に配置された上側充電構造
と前記車体の下方に配置された下側充電構造
とを備え
た充電設備を用いて充電する充電システムであって、
前記上側充電構造は、正
極の上側電極と、
前記電動車両及び前記充電設備の双方に配置されて前記上側電極に前記電動車両を電気的に断接するための上側可動子と、前記電動車両が前記上側電極に
、又は、前記上側電極が前記電動車両に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記上側電極から
、又は、前記上側電極が前記電動車両から離間する離間位置との間で前記上側可動子を移動させる上側駆動機構と、を備えており、
前記下側充電構造は、
負極の下側電極と、
前記充電設備に配置されて前記下側電極に前記電動車両を電気的に断接するための下側可動子と
、前記下側電極
が前記電動車両に電気的に接続される接続位置
と前記下側電極
が前記電動車両から離間する離間位置との間で前記下側可動子を移動させる下側駆動機構と、を備えている
ことを特徴とする充電システム。
【請求項3】
所定の充電位置に停止した電動車両
を、前記電動車両の車体の上方に配置された上側充電構造
と前記車体の下方に配置された下側充電構造
とを備え
た充電設備を用いて充電する充電システムであって、
前記上側充電構造は、
負極の上側電極と、
前記電動車両に配置されて前記上側電極に前記電動車両を電気的に断接するための上側可動子と、前記電動車両が前記上側電極に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記上側電極から離間する離間位置との間で前記上側可動子を移動させる上側駆動機構と、を備えており、
前記下側充電構造は、正
極の下側電極と、
前記電動車両及び前記充電設備の双方に配置されて前記下側電極に前記電動車両を電気的に断接するための下側可動子と、前記電動車両が前記下側電極に
、又は、前記下側電極が前記電動車両に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記下側電極から
、又は、前記下側電極が前記電動車両から離間する離間位置との間で前記下側可動子を移動させる下側駆動機構と、を備えている
ことを特徴とする充電システム。
【請求項4】
所定の充電位置に停止した電動車両
を、前記電動車両の車体の上方に配置された上側充電構造
と前記車体の下方に配置された下側充電構造
とを備え
た充電設備を用いて充電する充電システムであって、
前記上側充電構造は、
負極の上側電極と、
前記充電設備に配置されて前記上側電極に前記電動車両を電気的に断接するための上側可動子と
、前記上側電極
が前記電動車両に電気的に接続される接続位置
と前記上側電極
が前記電動車両から離間する離間位置との間で前記上側可動子を移動させる上側駆動機構と、を備えており、
前記下側充電構造は、正
極の下側電極と、
前記電動車両及び前記充電設備の双方に配置されて前記下側電極に前記電動車両を電気的に断接するための下側可動子と、前記電動車両が前記下側電極に
、又は、前記下側電極が前記電動車両に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記下側電極から
、又は、前記下側電極が前記電動車両から離間する離間位置との間で前記下側可動子を移動させる下側駆動機構と、を備えている
ことを特徴とする充電システム。
【請求項5】
前記上側可動子と前記下側可動子とは、前記車体の上下方向に伸縮可能なパンタグラフとして構成されている
ことを特徴とする、請求項1
~4のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項6】
前記上側駆動機構と前記下側駆動機構とは、前記電動車両が前記所定の充電位置に停車したときに前記上側可動子と前記下側可動子とを前記接続位置に移動させる
ことを特徴とする、請求項1
~5のいずれか1項に記載の充電システム
。
【請求項7】
前記上側可動子および前記下側可動子が前記離間位置に移動された状態で、前記上側電極および前記下側電極の少なくとも一方を覆うシャッター体を備えている
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の充電システム。
【請求項8】
前記上側可動子および前記下側可動子が前記接続位置に移動された状態で、前記上側電極および前記下側電極の少なくとも一方に対する外部からの接触を制限し得るように構成されたガード機構を備えている
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の充電システム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に駆動用の電力を充電するための充電システム、前記充電システムの電動車両、および、前記充電システムの充電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電動自動車の充電では、一般に、充電設備の充電コネクタを手動で車両に接続する。また、大型の電動車両の充電では、パンタグラフを介して車両に充電設備を接続する方式(「パンタグラフ充電方式」ともいう)も提案されている。
【0003】
従来のパンタグラフ充電方式では、車体の上方に正極および負極の両方の電極が配置された構造(例えば特許文献1を参照)や、車体の下方に正極および負極の両方の電極が配置された構造(例えば特許文献2を参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-120404号公報
【文献】特表2018-535631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1,2に記載の技術は、車体の上方および下方のいずれか一方に正極および負極の両方の電極が配置された構造であるため、正極と負極との両電極が近接して配置されている。このため、正極と負極とが同時接触されやすく、短絡や漏電のおそれがある。したがって、パンタグラフを利用した電動車両の充電には、安全性に改善の余地があった。
【0006】
本件は、このような課題に鑑み案出されたもので、安全性を向上させることを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示する充電システムの一つは、所定の充電位置に停止した電動車両を、前記電動車両の車体の上方に配置された上側充電構造と前記車体の下方に配置された下側充電構造とを備えた充電設備を用いて充電する充電システムである。前記上側充電構造は、正極の上側電極と、前記電動車両及び前記充電設備の双方に配置されて前記上側電極に前記電動車両を電気的に断接するための上側可動子と、前記電動車両が前記上側電極に、又は、前記上側電極が前記電動車両に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記上側電極から、又は、前記上側電極が前記電動車両から離間する離間位置との間で前記上側可動子を移動させる上側駆動機構と、を備えており、前記下側充電構造は、負極の下側電極と、前記電動車両に配置されて前記下側電極に前記電動車両を電気的に断接するための下側可動子と、前記電動車両が前記下側電極に電気的に接続される接続位置と前記電動車両が前記下側電極から離間する離間位置との間で前記下側可動子を移動させる下側駆動機構と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
(2)前記上側可動子と前記下側可動子とは、前記車体の上下方向に伸縮可能なパンタグラフとして構成されていることが好ましい。
(3)前記上側駆動機構と前記下側駆動機構とは、前記電動車両が前記所定の充電位置に停車したときに前記上側可動子と前記下側可動子とを前記接続位置に移動させることが好ましい。
【0010】
(7)前記充電システムは、前記上側可動子および前記下側可動子が前記離間位置に移動された状態で、前記上側電極および前記下側電極の少なくとも一方を覆うシャッター体を備えていることが好ましい。
(8)前記充電システムは、前記上側可動子および前記下側可動子が前記接続位置に移動された状態で、前記上側電極および前記下側電極の少なくとも一方に対する外部からの接触を制限し得るように構成されたガード機構を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本件によれば、車体の上方および下方に分離して配置された上側充電構造と下側充電構造とを備えており、上側充電構造で正極および負極の一方の上側電極に電動車両が電気的に断接され、下側充電構造で正極および負極の他方の下側電極に電動車両が電気的に断接される。このため、正極と負極との両電極が車体の上方または下方にまとめて配置される構造に比べて、両電極に同時接触されにくくなり、短絡や漏電のおそれを軽減できる。よって安全性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第一実施形態に係る充電システムの電動車両と充電設備とを示す側面図である。
【
図2】
図1の電動車両と充電設備とを示す正面図である。
【
図3】(a),(b)は正面から見た上側可動子と下側可動子とを示す拡大図であって、(a)は上側可動子を示し、(b)は下側可動子を示す。
【
図4】第二実施形態に係る充電システムの電動車両と充電設備とを示す側面図である。
【
図5】
図4の電動車両と充電設備とを示す正面図である。
【
図6】(a),(b)は正面から見た上側可動子と下側可動子とを示す拡大図であって、(a)は上側可動子を示し、(b)は下側可動子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、実施形態としての充電システムについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0016】
[第一実施形態]
[1.構成]
図1は電動車両20(以下、単に「車両」ともいう)と充電設備30とを示す側面図であり、
図2は車両20と充電設備30とを示す正面図である。充電システム10は、充電設備30を用いて所定の充電位置に停車した車両20に充電するシステムである。
充電システム10は、所定の充電位置に停車した車両20の車体21の上方に配置された上側充電構造15Aと、車体21の下方に配置された下側充電構造15Bとを備えている。所定の充電位置は、充電するときに車両20が停車する停車位置であり、充電設備30から車両20へ電力を供給し得る位置として規定されている。
図1,
図2は、車両20が充電位置に停車した状態を示している。
【0017】
上側充電構造15Aは、正極(正極および負極の一方)の上側電極34Aと、上側電極34Aに車両20を電気的に断接するための上側可動子25Aと、上側可動子25Aを移動させる上側駆動機構27A(一点鎖線で示す)とを備えている。また、下側充電構造15Bは、負極(正極および負極の他方)の下側電極34B(破線で示す)と、下側電極34Bに車両20を電気的に断接するための下側可動子25Bと、下側可動子25Bを移動させる下側駆動機構27B(一点鎖線で示す)とを備えている。
【0018】
本実施形態では、上側電極34A,下側電極34Bは、充電設備30に配置されている。上側可動子25A,下側可動子25Bと、上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bとは、車両20に配置されている。
【0019】
車両20は、走行用モータ(図示せず)を搭載した電気自動車又はハイブリッド自動車であり、路線バス等の大型車両である。走行用モータは、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素電池といった駆動用バッテリ22(一点鎖線で示す)の電力で作動する交流電動発電機である。駆動用バッテリ22は、車両20の外部電源を利用した外部充電が可能な二次電池である。
【0020】
充電設備30は、車両20の駆動用バッテリ22に充電用の電力を供給するための外部電源装置であり、路線バスの停留所,駐車場等の駐停車用施設内の一区画に設置される。
【0021】
〈充電設備の構成〉
充電設備30は、車両20に充電用の電力を供給するための外部電源であり、
図2に示すように正面視でコの字型の構造物として構成されている。充電設備30は、地面5から立設された支柱部31と、支柱部31の上端から
図2の左方向に突設された屋根部32と、支柱部31の下端から左方向に延びる床面部33(破線で示す)と、を備えている。
【0022】
屋根部32は、充電位置に停止中の車両20の頂部(ルーフ)23の上方に張り出された屋根状の部位であり、下面に上側電極34Aが配設されている。床面部33(破線で示す)は、充電位置に停止中の車両20の底部(フロア)24の下方に延びた土台であり、上面に下側電極34Bが配設されている。
【0023】
上側電極34Aと下側電極34Bとは、屋根部32と床面部33とに分離して配設されているので、充電位置に停止中の車両20に対しては、その車体21の上方および下方に分離して配置されることになる。上側電極34Aと下側電極34Bとのそれぞれは、電源装置(図示せず)に電気的に接続されており、前後方向および左右方向に延在する導電材料により形成されている。なお、床面部33は地下に埋設されるが、下側電極34Bの上面は地面5に露呈している。
【0024】
〈車両の構成〉
車両20において、上側可動子25Aは車体21の頂部23の上面に取り付けられており、下側可動子25Bは、車体21の底部24の下面に取り付けられている。上側可動子25Aは、上側電極34Aに車両20を電気的に接続するための正極の車両側電極部として機能する。また、下側可動子25Bは、下側電極34Bに車両20を電気的に接続するための負極の車両側電極部として機能する。
【0025】
上側可動子25Aと下側可動子25Bとは、上側電極34A,下側電極34B(充電設備30)に車両20が電気的に断接され得るように、上下方向に伸縮可能に構成される。
図1,
図2の上側可動子25A,下側可動子25Bは、上下方向に伸縮変形可能なひし形リンク構造のパンタグラフとして構成されている。すなわち、本実施形態の充電システム10は、車両20に設けられたパンタグラフ(上側可動子25A,下側可動子25B)を用いて充電を行うパンタグラフ充電方式のシステムとして構成される。
【0026】
上側可動子25A,下側可動子25Bは、伸縮変形に応じて所定の接続位置と所定の離間位置との間で移動される。接続位置と離間位置とは、伸縮変形に応じた上側可動子25A,下側可動子25Bの状態である。接続位置は、車両20が上側電極34A,下側電極34Bに電気的に接続される位置として規定される。離間位置は、車両20が上側電極34A,下側電極34Bから離間する位置として規定される。
図1,
図2では、上側可動子25A,下側可動子25Bが接続位置にある状態を示す。
【0027】
上側可動子25Aは、一端において車体21の頂部23の上面に連結され、他端において上側接続部26Aに連結されている。また、下側可動子25Bは、一端において車体21の底部24の下面に連結され、他端において下側接続部26Bに連結されている。
【0028】
上側接続部26A,下側接続部26Bは、それぞれに対応する上側電極34Aまたは下側電極34Bに電気的に断接される部位である。上側接続部26A,下側接続部26Bのそれぞれは、前後方向および左右方向に延在する導電材料により形成され、図示しない接続線により駆動用バッテリ22に電気的に接続されている。なお、
図2に示すように、車両20には、左右方向に並設された一対の上側可動子25Aと左右方向に並んだ一対の下側可動子25Bとが設けられている。
【0029】
上側接続部26A(上側可動子25A),下側接続部26B(下側可動子25B)は、車両20が所定の充電位置に停止した状態で、それぞれに対応する上側電極34A,下側電極34Bに対向する位置に配置されている。
したがって、所定の充電位置は、充電設備30の上側電極34Aに車両20の上側接続部26A(上側可動子25A)が対向するとともに、充電設備30の下側電極34Bに車両20の下側接続部26B(下側可動子25B)が対向する停車位置とも規定できる。
【0030】
上側可動子25A,下側可動子25Bが収縮している状態(離間位置)では、
図3(a),(b)において実線で示すように、上側接続部26A,下側接続部26Bが上側電極34A,下側電極34Bから離間する。このため、車両20は充電設備30から電気的に遮断されている。
一方、上側可動子25A,下側可動子25Bが伸長している状態(接続位置)では
図3(a),(b)において二点鎖線で示すように、上側接続部26A,下側接続部26Bが上側電極34A,下側電極34Bに物理的に接触する。このため、車両20は、充電設備30に電気的に接続される。なお、接続位置において、上側接続部26A,下側接続部26Bと上側電極34A,下側電極34Bとは電気的に接続されさえすればよく、必ずしも物理的に接触する必要はない。
なお、
図3(a),(b)では、車両20および充電設備30のそれぞれを一部省略して描いている。
【0031】
車両20には、上記の上側可動子25A,下側可動子25Bに加えて、接続位置と離間位置との間で上側可動子25A,下側可動子25Bを移動させる上側駆動機構27A,下側駆動機構27B(一点鎖線で示す)が内蔵されている。上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bは、上側可動子25A,下側可動子25Bに機械的に連結されているとともに制御装置28(一点鎖線で示す)に電気的に接続される。上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bは、制御装置28からの制御信号に従って上側可動子25A,下側可動子25Bのそれぞれを接続位置へ伸長または離間位置へ収縮する。
【0032】
制御装置28は、車両20の任意の位置に設けられた電子制御装置(Electronic Control Unit)であり、図示しないマイクロプロセッサ,ROM,RAM等を集積したLSIデバイスや組み込み電子デバイスとして構成される。制御装置28の入力側には、図示しないセンサ等が接続されて、出力側には上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bが接続される。
【0033】
[2.制御]
制御装置28は、車両20が所定の充電位置に停止したときに上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bを制御することで、上側可動子25Aおよび下側可動子25Bを接続位置まで伸長させる制御(移動制御)を実施する。移動制御を実施するための機能要素には、図示しないセンサの検知信号等に基づき車両20が所定の充電位置に停止したことを検知する機能や、制御信号を生成して上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bに出力する機能が含まれる。
【0034】
次に、上記の充電システム10における上側可動子25A,下側可動子25B(パンタグラフ)を利用した充電制御の内容を説明する。前提として、非充電中は、上側可動子25Aおよび下側可動子25Bを収縮させておく。これにより、非充電中に上側可動子25A,下側可動子25Bが車両20の走行の妨げとなることを防止できる。
【0035】
まず、車両20が所定の充電位置にて停止したことが検知されると、制御装置28は制御信号を生成して、生成した制御信号を上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bに出力する。この制御信号は、上側可動子25A,下側可動子25Bを伸長するように指示する信号である。
【0036】
制御信号に応じて上側可動子25A,下側可動子25Bが伸長して接続位置に移動されると、上側接続部26A,下側接続部26Bがそれぞれに対応する上側電極34A,下側電極34Bに電気的に接続される。したがって、車両20を充電位置に停車するだけで自動的に車両20が充電設備30に電気的に接続されて充電が開始される。
【0037】
充電中、制御装置28は、駆動用バッテリ22の充電容量のモニタと充電終了判断とを含む充電制御を実施する。充電終了が判断されると、制御装置28は制御信号を生成して、生成した制御信号を上側駆動機構27A,下側駆動機構27Bに出力する。この制御信号は、上側可動子25Aおよび下側可動子25Bの収縮を指示する信号である。
【0038】
制御信号に応じて上側可動子25A,下側可動子25Bが収縮すると、上側接続部26A,下側接続部26Bのそれぞれは、上側電極34A,下側電極34Bから離間する。これにより、車両20が充電設備30に電気的に遮断され、充電設備30による充電が終了する。
【0039】
[第二実施形態]
[3.構成]
次に、第二実施形態の充電システム50を説明する。なお、
図4~
図6は、それぞれ、
図1~
図3に対応する図である。本実施形態の充電システム50は、上記の充電システム10に対して、上側可動子,下側可動子が車両20ではなく充電設備30に配置されている点を除いて同様に構成されている。以下、
図1~
図3を参照して説明した第一実施形態と共通の構成要素については、第一実施形態と共通の符号を付与して、その説明を適宜省略する。
【0040】
車両20には、車体21の頂部23の上面に正極(正極および負極の一方)の上側接続部26A′が設けられており、底部24の下面に負極(正極および負極の他方)の下側接続部26B′が設けられている。上側接続部26A′,下側接続部26B′は、車体21の頂部23,底部24に直接固定されている点が、第一実施形態の上側接続部26A,下側接続部26Bとは異なっている。
【0041】
充電設備30には、車体21の上方に配置された上側可動子35Aと車体21の下方に配置された下側可動子35Bとが設けられている。上側可動子35A,下側可動子35Bは、上側可動子25A,下側可動子25Bと同様なパンタグラフとして構成されている。
【0042】
上側可動子35Aの一端は、充電設備30の屋根部32の下面に連結されており、他端は上側電極34A′に連結されている。また、下側可動子25Bの一端は、充電設備30の床面部33の上面に連結されており、他端は下側電極34B′に連結されている。
【0043】
上側可動子35A,下側可動子35Bは、伸縮変形によって接続位置と離間位置との間で上下方向に移動可能である。接続位置は、上側電極34A′,下側電極34B′が上側接続部26A′,下側接続部26B′に電気的に接続される位置である。離間位置は、上側電極34A′,下側電極34B′が上側接続部26A′,下側接続部26B′から離間する位置である。
図4,
図5では、上側可動子35A,下側可動子35Bが接続位置にある状態を示す。
【0044】
上側可動子35A,下側可動子35Bが収縮している状態(離間位置)では、
図6(a),(b)において実線で示すように、上側電極34A′,下側電極34B′が上側接続部26A′,下側接続部26B′から離間する。よって、車両20は充電設備30から電気的に遮断されている。
一方、上側可動子35A,下側可動子35Bが伸長している状態(接続位置)では、
図6(a),(b)において二点鎖線で示すように、上側電極34A′,下側電極34B′が上側接続部26A′,下側接続部26B′に物理的に接触される。よって、車両20は充電設備30に電気的に接続される。
【0045】
充電設備30には、上記の上側可動子35A,下側可動子35Bに加えて、上側可動子35A,下側可動子35Bを移動させる上側駆動機構37A,下側駆動機構37B(一点鎖線で示す)が内蔵されている。また、上側駆動機構37A,下側駆動機構37Bを制御する制御装置38(一点鎖線で示す)が内蔵されている。
【0046】
上側駆動機構37A,下側駆動機構37Bは、上側可動子35A,下側可動子35Bを接続位置に伸長または離間位置へ収縮する点を除いて第一実施形態と同様に構成される。制御装置38は、充電設備30に設けられた上側駆動機構37A,下側駆動機構37Bを制御する点を除いて第一実施形態と同様に構成される。
【0047】
[4.制御]
制御装置38は、車両20が所定の充電位置に停止したときに上側駆動機構37A,下側駆動機構37Bを制御することで、上側可動子35A,下側可動子35Bを接続位置まで伸長させる制御(移動制御)を実施する。
上記の充電システム50における上側可動子35A,下側可動子35B(パンタグラフ)を利用した充電制御の内容は、充電設備30側で上側可動子35A,下側可動子35Bを移動させる点を除き、第一実施形態と同様である。
【0048】
[5.付設機構]
上記の各実施形態において、以下の付設機構が備えられてもよい。
図7は、第一実施形態の充電設備30の屋根部32を示す拡大斜視図であり、充電設備30の一部を省略して描いている。屋根部32の下面には、上側電極34Aを覆うシャッター体60が設けられている。シャッター体60は、非充電時(上側可動子25A,下側可動子25Bが離間位置にあるとき)に上側電極34Aを覆い、上側電極34Aへの接触を物理的に遮断するための遮蔽物であり、例えば絶縁材料からなる。
【0049】
シャッター体60は、車体21の上方(充電設備30の屋根部32)に限らず車体21の下方(充電設備30の床面部33)に設けられも良いし、車体21の上方および下方の両方に設けられてもよい。なお、
図7では、第一実施形態の充電システム10を描いているが、第二実施形態の充電システム50にシャッター体60が設けられてもよい。
また、車両20にシャッター体60が設けられてもよい。この場合、シャッター体60は、上側接続部26A(26A′),下側接続部26B(26B′)を非充電時に覆う。
【0050】
また、
図8は、第一実施形態の充電設備30の屋根部32と車両20の頂部23とを示す拡大図であり、車両20,充電設備30の一部を省略して描いている。
図8において、屋根部32の下面には、充電時(上側可動子25A,下側可動子25Bが接続位置にあるとき)に、上側電極34Aおよび上側接続部26Aへの接触(外部からのアクセス)を抑制するためのガード機構70が設けられている。
図8のガード機構70は、上側電極34Aおよび上側接続部26Aの側面部分を覆うように構成されている。
【0051】
ガード機構70は、車体21の上方だけでなく下方に設けられても良いし、車体21の上方および下方の両方に設けられてもよい。また、ガード機構70は、充電設備30に設けられてもよいし、車両20に設けられてもよい。なお、
図8では、第一実施形態の充電システム10を描いているが、第二実施形態の充電システム50にガード機構70を設けてもよい、
【0052】
[6.作用および効果]
第一実施形態および第二実施形態の充電システム10,50は上記の構成を備えることで、以下の作用および効果を奏する。
【0053】
(1)上述した各実施形態の充電システム10,50では、車体21の上方および下方に分離して配置された上側充電構造15A,下側充電構造15Bが設けられている。そして、上側可動子25A,35Aと下側可動子25B,35Bを伸縮移動させることで、車体21の上方および下方に分離して配置された上側電極(例えば正極)34A,34A′と下側電極(例えば負極)34B,34B′とに車両20が電気的に断接される。このため、車体の上方または下方に正極および負極の両電極がまとめて配置された構造に比べて、正極と負極とが同時接触されにくくなり、短絡や漏電のおそれを軽減できる。よって充電システム10,50の安全性を向上できる。例えば人体が正極と負極とに同時接触した場合、感電するおそれがある。充電システム10,50では、感電のリスクを効果的に抑制できる。
【0054】
また、車体の上方または下方に両電極が配置された構造では、比較的狭い配置スペースに両電極を配置しなければならず、このため車両の充電位置の制約が大きくなるという課題がある。これに対して、上述した各実施形態の充電システム10,50では、両電極が車体21の上方および下方に分散して配置されているので、充電位置の制約が小さくなり、充電位置の範囲を広く設定し得る。
【0055】
(2)上側可動子25A,35Aおよび下側可動子25B,35Bが上下方向に伸縮変形可能なパンタグラフとして構成されているので、安全性を向上したパンタグラフ式充電方式を提供できる。
また、上側可動子25A,35Aおよび下側可動子25B,35Bを上下方向に伸縮させるだけで、上側接続部26A,26A′,下側接続部26B,26B′を、上側電極34A,34A′,下側電極34B,34B′に離接できる。このため、充電コネクタの接続を手動で行う充電コネクタ接続式に比べて接続の手間がかからず、利便性が向上する。
(3)車両20が所定の充電位置に停車したときに、上側可動子25A,35Aと下側可動子25B,35Bとが自動的に接続位置に移動されるので、車両20を充電位置に停車するだけで自動的に充電が開始される。したがって、利便性がより向上する。
【0056】
(4)シャッター体60は上側可動子25A,35A,下側可動子25B,35Bが離間位置に移動された状態で、上側電極34A,34A′および下側電極34B,34B′の少なくとも一方を覆うように構成される。この構成により、非充電中に電極への接触を物理的に抑制し、非充電中の安全性をより向上できる。
(5)また、ガード機構70は上側可動子25A,35A,下側可動子25B,35Bが接続位置に移動された状態で、上側電極34A,34A′および下側電極34B,34B′の少なくとも一方に対する外部からの接触を制限し得るように構成される。この構成により、充電中の電極への接触を物理的に抑制し、充電中の安全性をより向上できる。
【0057】
(6)第一実施形態の充電システム10では、上側可動子25A,下側可動子25Bが電動車両20に配置されている。このため、車体21の上下に分散して配置された上側電極34A,下側電極34Bを備えている充電設備30を用いて車両20を充電できる。よって、車両20の充電時に、正極と負極とが同時接触されにくくなり、安全性を向上できる。
【0058】
(7)第二実施形態の充電システム10では、上側可動子35A,下側可動子35Bが充電設備30に配置されており、上側可動子35A,下側可動子35Bに上側電極34A′,下側電極34B′が連結されている。このため、車体の上方または下方に正極および負極の両電極がまとめて配置された構造に比べて、正極と負極とが同時接触されにくくなり、短絡や漏電のおそれを軽減できる。よって、安全性を向上できる。
【0059】
[7.その他]
上述した充電システムの構成は一例であって、上述したものに限られない。
上述した各実施形態では、上側可動子25A,下側可動子25Bが車両20に配置された充電システム10の構成(第一実施形態)と、上側可動子35A,下側可動子35Bが充電設備30に配置された充電システム50の構成(第二実施形態)とを説明した。しかし、充電システムの構成は、上記の各実施形態に限らない。
【0060】
充電システムは、上側可動子および下側可動子の少なくとも一方が車両20に配置され、上側可動子および下側可動子の少なくとも他方が電動車両20に配置される構成であってもよい。
その場合、以下のような組み合わせ(A)~(G)が考えられる。
(A)電動車両20に上側可動子を備えており、充電設備30に下側可動子を備えている。
(B)電動車両20に下側可動子を備えており、充電設備30に上側可動子を備えている。
(C)電動車両20に上側可動子と下側可動子とを備えており、充電設備30にも上側可動子と下側可動子とを備える。
(D)電動車両20に上側可動子と下側可動子とを備えており、充電設備30に上側可動子を備える。
(E)電動車両20に上側可動子と下側可動子とを備えており、充電設備30に下側可動子を備える。
(F)電動車両20に上側可動子を備えており、充電設備30に上側可動子と下側可動子とを備える。
(G)電動車両20に下側可動子を備えており、充電設備30に上側可動子と下側可動子とを備える。
上記の各組み合わせ(A)~(G)おいても、正極と負極とが同時接触されにくくなるので、安全性を向上できる。
【0061】
上側可動子25A,35Aと下側可動子25B,35Bとは、パンタグラフとして構成された可動子に限らず、車体の上方および下方に分離して配置された電極に車両20を電気的に断接し得る構成でさえあれば、どのような構成の可動子であってもよい。例えば、上側可動子,下側可動子は上下方向に伸縮可能なピストンとして構成されてもよい。
【0062】
また、第一実施形態の充電システム10において充電設備30に、車両20が充電位置に停止したか否かを判定する機構を設けて、充電設備30から車両20に検知信号を送信してもよい。また、また、第二実施形態の充電システム50において車両20に、当該車両20が充電位置に停止したか否かを判定する機構を設けて、車両20から充電設備30に検知信号を送信してもよい。
【符号の説明】
【0063】
5 地面
10,50 充電システム
15A 上側充電構造
15B 下側充電構造
20 電動車両
21 車体
22 駆動用バッテリ
23 頂部
24 底部
25A 上側可動子
25B 下側可動子
26A,26A′ 上側接続部
26B,26B′ 下側接続部
27A 上側駆動機構
27B 下側駆動機構
28 制御装置
30 充電設備
31 支柱部
32 屋根部
33 床面部
34A,34A′ 上側電極
34B,34B′ 下側電極
35A 上側可動子
35B 下側可動子
37A 上側駆動機構
37B 下側駆動機構
38 制御装置
60 シャッター体
70 ガード機構