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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】化合物半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20231024BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20231024BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20231024BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/06 301F
H01L29/78 301B
H01L29/78 301G
H02M7/12 Q
H02M3/28 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019142479
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021027105
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 史朗
(72)【発明者】
【氏名】多木 俊裕
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-101755(JP,A)
【文献】特開2009-059946(JP,A)
【文献】特開2016-066641(JP,A)
【文献】特開2012-175018(JP,A)
【文献】特開2016-072358(JP,A)
【文献】特開2016-096343(JP,A)
【文献】特開2014-183080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/338
H01L 29/06
H01L 21/336
H02M 7/12
H02M 3/28
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、
前記電子供給層の上方のゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に設けられ、ゲートリセスが形成された絶縁層と、
を有し、
前記ゲート電極は、
前記ゲートリセス内の第1の部分と、
前記第1の部分につながり、前記ゲートリセスより前記ドレイン電極側で前記絶縁層上の第2の部分と、
を有し、
前記絶縁層は、前記半導体積層構造に直接接する酸化アルミニウム膜を有し、
前記酸化アルミニウム膜は、少なくとも、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第2の部分と前記半導体積層構造との間に位置し、
前記酸化アルミニウム膜の組成をAlO と表したとき、xの値が1.5より大きく、
前記酸化アルミニウム膜は、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第1の部分と前記半導体積層構造との間にも位置することを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項2】
前記第1の部分は、前記酸化アルミニウム膜に直接接することを特徴とする請求項に記載の化合物半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記酸化アルミニウム膜上の窒化シリコン膜を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物半導体装置。
【請求項4】
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、
前記電子供給層の上方のゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に設けられ、ゲートリセスが形成された絶縁層と、
を有し、
前記ゲート電極は、
前記ゲートリセス内の第1の部分と、
前記第1の部分につながり、前記ゲートリセスより前記ドレイン電極側で前記絶縁層上の第2の部分と、
を有し、
前記絶縁層は、前記半導体積層構造に直接接する酸化アルミニウム膜を有し、
前記酸化アルミニウム膜は、少なくとも、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第2の部分と前記半導体積層構造との間に位置し、
前記酸化アルミニウム膜の組成をAlO と表したとき、xの値が1.5より大きく、
前記絶縁層は、前記酸化アルミニウム膜上の窒化シリコン膜を有することを特徴とする化合物半導体装置。
【請求項5】
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造を準備する工程と、
前記電子供給層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層にゲートリセスを形成する工程と、
前記ゲートリセス内の第1の部分と、前記第1の部分につながり、前記ゲートリセスより前記ドレイン電極側で前記絶縁層上の第2の部分と、を有するゲート電極を形成する工程と、
を有し、
前記絶縁層を形成する工程は、
前記半導体積層構造に直接接する酸化アルミニウム膜を形成する工程と、
前記酸化アルミニウム膜の組成をAlOと表したとき、xの値が1.5より大きくなるように、前記酸化アルミニウム膜を酸化性雰囲気中で熱処理する工程と、
を有し、
前記酸化アルミニウム膜は、少なくとも、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第2の部分と前記半導体積層構造との間に位置することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化合物半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物半導体は、高い飽和電子速度及びワイドバンドギャップ等の特徴を有している。このため、これらの特性を利用して窒化物半導体を高耐圧及び高出力の半導体デバイスに適用することについて種々の検討が行われている。近年では、例えば、GaN系高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)に関する技術が開発されている。
【0003】
GaN系HEMTの一例では、電子走行層にGaNが用いられ、電子供給層にAlGaNが用いられ、GaNにおけるピエゾ分極や自発分極の作用により電子走行層において高濃度の二次元電子ガス(two-dimensional electron gas:2DEG)が生成される。このため、GaN系HEMTは高出力増幅器や高効率スイッチング素子への応用が期待されている。また、耐圧の向上等の目的で、フィールドプレートを備えたゲート電極が用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-62976号公報
【文献】特開2015-56457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、フィールドプレートを備えたゲート電極を含む化合物半導体装置のゲートリーク電流の更なる低減の要請が高まっている。
【0006】
本開示の目的は、ゲートリーク電流をより低減することができる化合物半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、前記電子供給層の上方のゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に設けられ、ゲートリセスが形成された絶縁層と、を有し、前記ゲート電極は、前記ゲートリセス内の第1の部分と、前記第1の部分につながり、前記ゲートリセスより前記ドレイン電極側で前記絶縁層上の第2の部分と、を有し、前記絶縁層は、前記半導体積層構造に直接接する酸化アルミニウム膜を有し、前記酸化アルミニウム膜は、少なくとも、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第2の部分と前記半導体積層構造との間に位置し、前記酸化アルミニウム膜の組成をAlOと表したとき、xの値が1.5より大きく、前記酸化アルミニウム膜は、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第1の部分と前記半導体積層構造との間にも位置する化合物半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ゲートリーク電流をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
図2A】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図2B】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図2C】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図2D】第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図3】第2の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
図4A】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図4B】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図4C】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図4D】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図4E】第2の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図5】第2の実施形態の変形例に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
図6】第3の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
図7A】第3の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図7B】第3の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図7C】第3の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図8】閾値電圧及びゲートリーク電流の測定結果を示す図である。
図9】第4の実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
図10】第5の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
図11】第6の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
図12】第7の実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明者らは、フィールドプレートを備えたゲート電極を含む化合物半導体装置のゲートリーク電流を低減すべく鋭意検討を行った。この結果、フィールドプレートと、電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、これらの間の絶縁層とによりMIS(metal-insulator-semiconductor)構造が構成され、MIS構造における閾値電圧が深いほどゲートリーク電流が大きくなることが明らかになった。MIS構造では、ピンチオフ時に、フィールドプレートから絶縁層及び半導体積層構造に空乏層が広がり得る。また、MIS構造にも2DEGが含まれる。ところが、閾値電圧が深いほど空乏層は2DEGまで広がりにくくなり、フィールドプレートのドレイン電極側の端部にかかる電界が強くなる。このため、閾値電圧が深いほどゲートリーク電流が大きくなるのである。本願発明者らは、このような新たな知見に基づき、MIS構造の閾値電圧を浅くすべく更に鋭意検討を行った結果、下記の本開示の実施形態に想到した。
【0011】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、高電子移動度トランジスタ(HEMT)を含む化合物半導体装置に関する。図1は、第1の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【0013】
第1の実施形態に係る化合物半導体装置100は、図1に示すように、化合物半導体の電子走行層102及び電子供給層104を含む半導体積層構造106を有する。化合物半導体装置100は、電子供給層104の上方のゲート電極130、ソース電極113及びドレイン電極114を有する。化合物半導体装置100は、ソース電極113とドレイン電極114との間で半導体積層構造106上に設けられ、ゲートリセス123が形成された絶縁層120を有する。ゲート電極130は、ゲートリセス123内の第1の部分131と、第1の部分131につながり、ゲートリセス123よりドレイン電極114側で絶縁層120上の第2の部分132と、を有する。ゲート電極130が、ゲートリセス123よりソース電極113側で絶縁層120上の第3の部分133と、第1の部分131上の第4の部分134とを有してもよい。第4の部分134は、第1の部分131と、第2の部分132と、第3の部分133とを互いにつなぐ。絶縁層120は、半導体積層構造106に直接接する酸化アルミニウム膜121を有する。酸化アルミニウム膜121は、少なくとも、絶縁層120の厚さ方向で、第2の部分132と半導体積層構造106との間に位置する。酸化アルミニウム膜121の組成をAlOx1と表したとき、x1の値が1.5より大きい。絶縁層120が、酸化アルミニウム膜121上の窒化シリコン膜122を有してもよい。
【0014】
化合物半導体装置100では、電子走行層102の電子供給層104との界面近傍に2DEG109が生成される。また、第2の部分132がフィールドプレートとして機能するため、優れた耐圧を得ることができる。また、化合物半導体装置100では、ピンチオフ時に、第1の部分131の下方において半導体積層構造106に空乏層が広がるとともに、第2の部分132から半導体積層構造106に空乏層が広がる。
【0015】
本実施形態では、第2の部分132の下方で、酸化アルミニウム膜121が半導体積層構造106に直接接しており、酸化アルミニウム膜121の組成をAlOx1と表したとき、x1の値が1.5より大きい。つまり、酸化アルミニウム膜121にはAl空孔が含まれる。このため、酸化アルミニウム膜121と半導体積層構造106との界面に、Al空孔に起因する負電荷が発生する。従って、第2の部分132と、絶縁層120と、半導体積層構造106との積層構造の閾値電圧は、酸化アルミニウム膜121に代えて窒化シリコン膜122が半導体積層構造106と直接接する場合と比較して、著しく浅くなる。そして、本実施形態によれば、ピンチオフ時に、空乏層が第2の部分132から2DEG109まで広がり、第2の部分132のドレイン電極114側の端部での電界集中が緩和され、ゲートリーク電流が低減される。
【0016】
なお、Al空孔の準位は3eV~5eV程度と非常に深く、固定電荷として作用するため、Al空孔に起因する負電荷は化合物半導体装置100の実際の動作に悪影響を及ぼさない。
【0017】
次に、第1の実施形態に係る化合物半導体装置100の製造方法について説明する。図2A図2Dは、第1の実施形態に係る化合物半導体装置100の製造方法を示す断面図である。
【0018】
図2Aに示すように、化合物半導体の電子走行層102及び電子供給層104を含む半導体積層構造106を形成する。電子走行層102の表面近傍に、2DEG109が生成する。図2Bに示すように、電子供給層104の上方にソース電極113及びドレイン電極114を形成する。図2Cに示すように、ソース電極113とドレイン電極114との間で半導体積層構造106上に酸化アルミニウム膜121及び窒化シリコン膜122を含む絶縁層120を形成する。酸化アルミニウム膜121は、半導体積層構造106に直接接するように形成する。図2Dに示すように、絶縁層120にゲートリセス123を形成する。ゲートリセス123は、例えば、酸化アルミニウム膜121の少なくとも一部よりソース電極213側に形成する。次いで、ゲートリセス123内の第1の部分131と、第1の部分131につながり、ゲートリセス123よりドレイン電極114側で絶縁層120上の第2の部分132と、を有するゲート電極130を形成する(図1参照)。ゲート電極130は、ゲートリセス123よりソース電極113側で絶縁層120上の第3の部分133と、第1の部分131上の第4の部分134とを更に有するように形成してもよい。
【0019】
このようにして、第1の実施形態に係る化合物半導体装置100を製造することができる。
【0020】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、GaN系HEMTを含む化合物半導体装置に関する。図3は、第2の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【0021】
第2の実施形態に係る化合物半導体装置200は、図3に示すように、基板201上に形成された半導体積層構造206を有する。半導体積層構造206は、例えば、化合物半導体の電子走行層202、スペーサ層203、電子供給層204及びキャップ層205を含む。電子走行層202は、例えば厚さが2μm~4μmで不純物の意図的なドーピングが行われていないGaN層(i-GaN層)である。スペーサ層203は、例えば厚さが4nm~6nmで不純物の意図的なドーピングが行われていないAlGaN層(i-AlGaN層)である。電子供給層204は、例えば厚さが25nm~35nmのn型のAlGaN層(n-AlGaN層)である。キャップ層205は、例えば厚さが1nm~10nmのGaN層である。電子供給層204には、例えばSiが5×1018cm-3程度の濃度でドーピングされている。半導体積層構造206が電子走行層202と基板201との間に、AlGaN等のバッファ層を含んでもよい。
【0022】
キャップ層205に開口部211及び212が形成されており、開口部211内にソース電極213が形成され、開口部212内にドレイン電極214が形成されている。キャップ層205上に絶縁層220が形成されている。絶縁層220がソース電極213の側面及び上面を覆ってもよく、絶縁層220がドレイン電極214の側面及び上面を覆ってもよい。絶縁層220は、半導体積層構造206に直接接する酸化アルミニウム膜221と、酸化アルミニウム膜221上の窒化シリコン膜222とを有する。酸化アルミニウム膜221は、少なくとも、絶縁層220の厚さ方向で、第2の部分232と半導体積層構造206との間に位置する。化合物半導体装置200では、酸化アルミニウム膜221は、キャップ層205の上面と、ソース電極213の側面及び上面と、ドレイン電極214の側面及び上面とを覆う。酸化アルミニウム膜221の組成をAlOx2と表したとき、x2の値が1.5より大きい。酸化アルミニウム膜221の厚さは、例えば0.5nm~10nm程度である。窒化シリコン膜222の厚さは、例えば10nm~100nm程度である。絶縁層220にはゲートリセス223が形成されている。ゲートリセス223はソース電極213とドレイン電極214との間に形成されている。ソース電極213及びドレイン電極214は、例えば金属からなり、チタン(Ti)膜と、その上のアルミニウム(Al)膜との積層体を含んでもよい。
【0023】
化合物半導体装置200はゲート電極230を有する。ゲート電極230は、ゲートリセス223内の第1の部分231と、第1の部分231につながり、ゲートリセス223よりドレイン電極214側で絶縁層220上の第2の部分232と、を含む。ゲート電極230は、ゲートリセス223よりソース電極213側で絶縁層220上の第3の部分233と、第1の部分231上の第4の部分234とを含む。第4の部分234は、第1の部分231と、第2の部分232と、第3の部分233とを互いにつなぐ。ゲート電極230は、いわゆるT字型構造を有している。第1の部分231とキャップ層205との間には酸化アルミニウム膜221が存在する。ゲート電極230は、例えば金属からなり、ニッケル(Ni)膜230Aと、その上の金(Au)膜230Bとの積層体を含んでもよい。第1の部分231に含まれるNi膜230Aは、窒化シリコン膜222に直接接してもよい。
【0024】
化合物半導体装置200では、電子走行層202の電子供給層204との界面近傍に2DEG209が生成される。また、第2の部分232がフィールドプレートとして機能するため、優れた耐圧を得ることができる。また、化合物半導体装置200では、ピンチオフ時に、第1の部分231の下方において半導体積層構造206に空乏層が広がるとともに、第2の部分232から半導体積層構造206に空乏層が広がる。
【0025】
本実施形態では、第2の部分232の下方で、酸化アルミニウム膜221が半導体積層構造206に直接接しており、酸化アルミニウム膜221の組成をAlOx2と表したとき、x2の値が1.5より大きい。つまり、酸化アルミニウム膜221にはAl空孔が含まれる。このため、酸化アルミニウム膜221と半導体積層構造206との界面に、Al空孔に起因する負電荷が発生する。従って、第2の部分232と、絶縁層220と、半導体積層構造206とのMIS構造の閾値電圧は、酸化アルミニウム膜221に代えて窒化シリコン膜222が半導体積層構造206と直接接する場合と比較して、著しく浅くなる。そして、本実施形態によれば、ピンチオフ時に、空乏層が第2の部分232から2DEG209まで広がり、第2の部分232のドレイン電極214側の端部での電界集中が緩和され、ゲートリーク電流が低減される。
【0026】
なお、Al空孔の準位は3eV~5eV程度と非常に深く、固定電荷として作用するため、Al空孔に起因する負電荷は化合物半導体装置200の実際の動作に悪影響を及ぼさない。
【0027】
ゲート電極230に含まれるNiと窒化シリコン膜122に含まれるSiとからニッケルシリサイド(NiSi)が生成されることがある。化合物半導体装置200では、第1の部分231とキャップ層205との間に酸化アルミニウム膜221が存在するため、ニッケルシリサイドが生成された場合でも、ニッケルシリサイドをパスとするゲートリーク電流を抑制することができる。
【0028】
なお、酸化アルミニウム膜221の厚さは限定されないが、5nm以下であることが好ましい。酸化アルミニウム膜221の厚さが5nm超であると、相互コンダクタンス(gm)が劣化するおそれがあるためである。
【0029】
次に、第2の実施形態に係る化合物半導体装置200の製造方法について説明する。図4A図4Eは、第2の実施形態に係る化合物半導体装置200の製造方法を示す断面図である。
【0030】
まず、図4Aに示すように、基板201上に、電子走行層202、スペーサ層203、電子供給層204及びキャップ層205を含む半導体積層構造206を形成する。半導体積層構造206は、例えば有機金属気相成長(metal organic vapor phase epitaxy:MOVPE)法により形成することができる。この結果、電子走行層202の表面近傍に、2DEG209が生成する。
【0031】
半導体積層構造206の形成に際しては、例えば、Al源であるトリメチルアルミニウム(TMA)ガス、Ga源であるトリメチルガリウム(TMG)ガス、及びN源であるアンモニア(NH)ガスの混合ガスを用いる。このとき、成長させる化合物半導体層の組成に応じて、トリメチルアルミニウムガス及びトリメチルガリウムガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。各化合物半導体層に共通の原料であるアンモニアガスの流量は、例えば100ccm~10LM程度とする。また、例えば、成長圧力は50Torr~300Torr程度、成長温度は1000℃~1200℃程度とする。また、n型の化合物半導体層(例えば電子供給層204)を成長させる際には、例えば、Siを含むSiHガスを所定の流量で混合ガスに添加し、化合物半導体層にSiをドーピングする。Siのドーピング濃度は、例えば1×1018cm-3程度~1×1020cm-3とする。
【0032】
次いで、図4Bに示すように、キャップ層205に開口部211及び212を形成し、開口部211内にソース電極213を形成し、開口部212内にドレイン電極214を形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術によってソース電極213の形成予定領域及びドレイン電極214の形成予定領域のそれぞれに開口部を有するレジスト膜を設け、塩素系ガスを用いたドライエッチングを行うことによって、開口部211及び212を形成することができる。更に、例えば、このレジスト膜を成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このレジスト膜をその上の金属膜と共に除去することで、レジスト膜の開口部の内側にソース電極213及びドレイン電極214を形成することができる。すなわち、リフトオフ法によりソース電極213及びドレイン電極214を形成することができる。金属膜の形成では、例えば、Ti膜を形成した後にAl膜を形成する。レジスト膜の除去後に、例えば、窒素雰囲気中にて400℃~1000℃で熱処理を行い、オーミック特性を確立する。
【0033】
開口部211及び212の形成前に、半導体積層構造206に素子領域を画定する素子分離領域を形成してもよい。素子分離領域の形成では、例えば、素子分離領域を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンをキャップ層205上に形成し、このパターンをマスクとしてAr等のイオン注入を行う。このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いたドライエッチングを行ってもよい。素子分離領域では、2DEG209が消失する。
【0034】
ソース電極213及びドレイン電極214の形成後、図4Cに示すように、キャップ層205の上面と、ソース電極213の側面及び上面と、ドレイン電極214の側面及び上面とを覆う酸化アルミニウム膜221を形成する。酸化アルミニウム膜221の組成をAlOx2と表したとき、x2の値が1.5より大きい。酸化アルミニウム膜221の形成では、例えば、原子層堆積(atomic layer deposition:ALD)法により酸化アルミニウム膜を形成し、その後に、この酸化アルミニウム膜の酸化性雰囲気中で熱処理を行う。ALD法により形成される酸化アルミニウム膜の組成はAlリッチの組成となる。つまり、この酸化アルミニウム膜の組成をAlOと表すと、yの値は1.5未満となる。その後の酸化性雰囲気中での熱処理により、酸素リッチの組成を有する酸化アルミニウム膜221を得ることができる。ALD法による酸化アルミニウム膜の形成では、酸素源として、酸素プラズマ又はオゾンを用いることが好ましい。その後の熱処理により、酸素リッチの組成を有する酸化アルミニウム膜221を得やすくするためである。酸素プラズマは、例えば、酸素ラジカルや酸素イオン等の活性酸素を含むことができる。熱処理の雰囲気は、例えば、水蒸気、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素若しくは一酸化窒素又はこれらの任意の組み合わせを含む雰囲気であることが好ましい。例えば、水蒸気及び酸素を含む大気中で熱処理を行うことができる。熱処理の温度は、例えば、100℃~750℃の範囲内の温度であることが好ましく、250℃~350℃の範囲内の温度であることがより好ましい。熱処理の時間は、例えば30分~2時間とすることができる。
【0035】
酸化アルミニウム膜221の形成後、図4Dに示すように、酸化アルミニウム膜221上に窒化シリコン膜222を形成する。窒化シリコン膜222は、例えば、プラズマ化学気相成長(chemical vapor deposition:CVD)法により形成することができる。酸化アルミニウム膜221と窒化シリコン膜222とが絶縁層220に含まれる。
【0036】
次いで、図4Eに示すように、絶縁層220にゲートリセス223を形成する。例えば、フォトリソグラフィ技術によって第1の部分231の形成予定領域に開口部を有するレジスト膜を設け、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを行うことによって、ゲートリセス223を形成することができる。このドライエッチングでは、窒化シリコン膜222が除去されるが、酸化アルミニウム膜221は残存する。
【0037】
その後、第1の部分231と、第2の部分232と、第3の部分233と、第4の部分234とを含むゲート電極230を形成する(図3参照)。ゲート電極230の形成では、例えば、フォトリソグラフィ技術によってゲート電極230の形成予定領域に開口部を有するレジスト膜を設ける。そして、このレジスト膜を成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このレジスト膜をその上の金属膜と共に除去することで、レジスト膜の開口部の内側にゲート電極230を形成することができる。すなわち、リフトオフ法によりゲート電極230を形成することができる。金属膜の形成では、例えば、Ni膜を形成した後にAu膜を形成する。
【0038】
このようにして、第2の実施形態に係る化合物半導体装置200を製造することができる。
【0039】
なお、フッ素系ガスを用いたドライエッチングによりゲートリセス223を形成した場合、酸化アルミニウム膜221の上面上にフッ化アルミニウム膜が形成されることがあり、このフッ化アルミニウム膜が化合物半導体装置200に含まれてもよい。すなわち、図5に示すように、第1の部分231と酸化アルミニウム膜221との間にフッ化アルミニウム膜224があってもよい。フッ化アルミニウム膜224は、例えば結晶性のAlFを主成分としてもよい。
【0040】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は、GaN系HEMTを含む化合物半導体装置に関し、酸化アルミニウム膜の構成の点で第2の実施形態と相違する。図6は、第3の実施形態に係る化合物半導体装置を示す断面図である。
【0041】
第3の実施形態に係る化合物半導体装置300は、図6に示すように、第2の実施形態における酸化アルミニウム膜221に代えて酸化アルミニウム膜321が設けられている。酸化アルミニウム膜321は、少なくとも、絶縁層220の厚さ方向で、第2の部分232と半導体積層構造206との間に位置する。酸化アルミニウム膜321は、第1の部分231とキャップ層205との間にも存在する。化合物半導体装置300では、酸化アルミニウム膜321は、キャップ層205の上面の一部と、ドレイン電極214の側面及び上面とを覆う。キャップ層205の上面のうち、第1の部分231とソース電極213との間の部分が酸化アルミニウム膜321から露出している。酸化アルミニウム膜321の組成をAlOx3と表したとき、x3の値が1.5より大きい。酸化アルミニウム膜321の厚さは、例えば0.5nm~10nm程度である。窒化シリコン膜222は、酸化アルミニウム膜321上に設けられるとともに、キャップ層205の上面のうち、第1の部分231とソース電極213との間の部分を覆う。窒化シリコン膜222は、ソース電極213の側面及び上面をも覆う。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0042】
第3の実施形態によっても第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
次に、第3の実施形態に係る化合物半導体装置300の製造方法について説明する。図7A図7Cは、第3の実施形態に係る化合物半導体装置300の製造方法を示す断面図である。
【0044】
まず、第2の実施形態と同様にして、酸化アルミニウム膜221の形成及び熱処理までの処理を行う(図4C参照)。次いで、図7Aに示すように、酸化アルミニウム膜221の一部を除去する。すなわち、酸化アルミニウム膜221の、第1の部分231が形成される予定の領域とソース電極213との間の部分と、ソース電極213の側面及び上面を覆う部分とを除去する。この結果、酸化アルミニウム膜321が形成される。酸化アルミニウム膜221の上記一部の除去では、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を用いたウェットエッチングを行う。
【0045】
その後、図7Bに示すように、第2の実施形態と同様にして、窒化シリコン膜222を形成する。窒化シリコン膜222は、酸化アルミニウム膜321上に形成するとともに、キャップ層205の上面のうち酸化アルミニウム膜321から露出した部分を覆い、更にソース電極213の側面及び上面を覆うように形成する。
【0046】
続いて、図7Cに示すように、絶縁層220にゲートリセス223を形成する。ゲートリセス223は、第2の実施形態と同様の方法で形成することができる。
【0047】
次いで、第1の部分231と、第2の部分232と、第3の部分233と、第4の部分234とを含むゲート電極230を形成する(図6参照)。
【0048】
このようにして、第3の実施形態に係る化合物半導体装置300を製造することができる。
【0049】
第2の実施形態と同様に、第1の部分231と酸化アルミニウム膜321との間にフッ化アルミニウム膜があってもよい。このフッ化アルミニウム膜は、例えば結晶性のAlFを主成分としてもよい。
【0050】
ここで、本願発明者らが行った実験について説明する。この実験では、構成の異なる三つの化合物半導体装置を準備した。一つの化合物半導体装置は、第2の実施形態に倣った構成Aを有する。構成Aは、第2の実施形態と同様に酸化アルミニウム膜を含み、この酸化アルミニウム膜の組成をAlOx11と表したとき、x11の値が1.57である。他の一つの化合物半導体装置は、第2の実施形態に類似した構成Bを有する。構成Bは、酸化アルミニウム膜を含むが、この酸化アルミニウム膜の組成をAlOx12と表したとき、x12の値が1.38である。他の一つの化合物半導体装置は、第2の実施形態から酸化アルミニウム膜を除いた構成Cを有する。構成Cは、酸化アルミニウム膜を含まず、ゲート電極の第2の部分(フィールドプレート)の下方で窒化シリコン膜がキャップ層に直接接する。
【0051】
そして、構成A、構成B及び構成Cのそれぞれについて、高温通電試験を想定して、第2の部分と、絶縁層と、半導体積層構造とのMIS構造の閾値電圧と、150℃でのゲートリーク電流とを測定した。この結果を図8に示す。図8の横軸は閾値電圧を示し、図8の縦軸は150℃でのゲートリーク電流を示す。
【0052】
信頼性の観点から、150℃でのゲートリーク電流は1.0×10-5A/mm以下であることが望ましい。構成Aでは、ゲートリーク電流が1.0×10-5A/mm以下であった。一方、構成B及び構成Cでは、ゲートリーク電流が1.0×10-5A/mm超であった。また、図8に示すように、閾値電圧が深いほど、すなわち、閾値電圧が負で、その絶対値が大きいほど、ゲートリーク電流が大きかった。
【0053】
なお、半導体積層構造に含まれる化合物半導体の層の組成は、上記の実施形態に記載されたものに限定されない。例えば、InAlN、InGaAlN等の窒化物半導体が用いられてもよい。また、InP等の化合物半導体が用いられてもよい。
【0054】
また、本開示の製造方法における各工程の順序は、上記の実施形態に記載のものに限定されない。例えば、絶縁層がソース電極及びドレイン電極より先に形成されてもよい。
【0055】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は、HEMTのディスクリートパッケージに関する。図9は、第4の実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【0056】
第4の実施形態では、図9に示すように、第1~第3の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置1210の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてランド(ダイパッド)1233に固定されている。また、ドレイン電極114又は214が接続されたドレインパッド1226dに、Alワイヤ等のワイヤ1235dが接続され、ワイヤ1235dの他端が、ランド1233と一体化しているドレインリード1232dに接続されている。ソース電極113又は213に接続されたソースパッド1226sにAlワイヤ等のワイヤ1235sが接続され、ワイヤ1235sの他端がランド1233から独立したソースリード1232sに接続されている。ゲート電極130又は230に接続されたゲートパッド1226gにAlワイヤ等のワイヤ1235gが接続され、ワイヤ1235gの他端がランド1233から独立したゲートリード1232gに接続されている。そして、ゲートリード1232gの一部、ドレインリード1232dの一部及びソースリード1232sの一部が突出するようにして、ランド1233及び化合物半導体装置1210等がモールド樹脂1231によりパッケージングされている。
【0057】
このようなディスクリートパッケージは、例えば、次のようにして製造することができる。先ず、化合物半導体装置1210をはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてリードフレームのランド1233に固定する。次いで、ワイヤ1235g、1235d及び1235sを用いたボンディングにより、ゲートパッド1226gをリードフレームのゲートリード1232gに接続し、ドレインパッド1226dをリードフレームのドレインリード1232dに接続し、ソースパッド1226sをリードフレームのソースリード1232sに接続する。その後、トランスファーモールド法にてモールド樹脂1231を用いた封止を行う。続いて、リードフレームを切り離す。
【0058】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は、HEMTを備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。図10は、第5の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0059】
PFC回路1250には、スイッチ素子(トランジスタ)1251、ダイオード1252、チョークコイル1253、コンデンサ1254及び1255、ダイオードブリッジ1256、並びに交流電源(AC)1257が設けられている。そして、スイッチ素子1251のドレイン電極と、ダイオード1252のアノード端子及びチョークコイル1253の一端子とが接続されている。スイッチ素子1251のソース電極と、コンデンサ1254の一端子及びコンデンサ1255の一端子とが接続されている。コンデンサ1254の他端子とチョークコイル1253の他端子とが接続されている。コンデンサ1255の他端子とダイオード1252のカソード端子とが接続されている。また、スイッチ素子1251のゲート電極にはゲートドライバが接続されている。コンデンサ1254の両端子間には、ダイオードブリッジ1256を介してAC1257が接続される。コンデンサ1255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子1251に、第1~第3の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置が用いられている。
【0060】
PFC回路1250の製造に際しては、例えば、はんだ等を用いて、スイッチ素子1251をダイオード1252及びチョークコイル1253等に接続する。
【0061】
(第6の実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態は、サーバ電源に好適な、HEMTを備えた電源装置に関する。図11は、第6の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0062】
電源装置には、高圧の一次側回路1261及び低圧の二次側回路1262、並びに一次側回路1261と二次側回路1262との間に配設されるトランス1263が設けられている。
【0063】
一次側回路1261には、第5の実施形態に係るPFC回路1250、及びPFC回路1250のコンデンサ1255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路1260が設けられている。フルブリッジインバータ回路1260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dが設けられている。
【0064】
二次側回路1262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cが設けられている。
【0065】
本実施形態では、一次側回路1261を構成するPFC回路1250のスイッチ素子1251、並びにフルブリッジインバータ回路1260のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dに、第1~第3の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置が用いられている。一方、二次側回路1262のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0066】
(第7の実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。第7の実施形態は、HEMTを備えた増幅器に関する。図12は、第7の実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【0067】
増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路1271、ミキサー1272a及び1272b、並びにパワーアンプ1273が設けられている。
【0068】
ディジタル・プレディストーション回路1271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー1272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ1273は、第1~第3の実施形態のいずれかと同様の構造を備えた化合物半導体装置を備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー1272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路1271に送出できる。この増幅器は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。高周波増幅器は、例えば、携帯電話基地局用送受信装置、レーダー装置及びマイクロ波発生装置に用いることができる。
【0069】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0070】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0071】
(付記1)
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造と、
前記電子供給層の上方のゲート電極、ソース電極及びドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に設けられ、ゲートリセスが形成された絶縁層と、
を有し、
前記ゲート電極は、
前記ゲートリセス内の第1の部分と、
前記第1の部分につながり、前記ゲートリセスより前記ドレイン電極側で前記絶縁層上の第2の部分と、
を有し、
前記絶縁層は、前記半導体積層構造に直接接する酸化アルミニウム膜を有し、
前記酸化アルミニウム膜は、少なくとも、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第2の部分と前記半導体積層構造との間に位置し、
前記酸化アルミニウム膜の組成をAlOと表したとき、xの値が1.5より大きいことを特徴とする化合物半導体装置。
(付記2)
前記酸化アルミニウム膜は、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第1の部分と前記半導体積層構造との間にも位置することを特徴とする付記1に記載の化合物半導体装置。
(付記3)
前記第1の部分は、前記酸化アルミニウム膜に直接接することを特徴とする付記2に記載の化合物半導体装置。
(付記4)
前記絶縁層は、前記酸化アルミニウム膜上の窒化シリコン膜を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記5)
前記第1の部分は、前記窒化シリコン膜に直接接するニッケル膜を含むことを特徴とする付記4に記載の化合物半導体装置。
(付記6)
前記半導体積層構造の前記第1の部分と前記ソース電極との間の部分は、前記酸化アルミニウム膜から露出していることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記7)
前記酸化アルミニウム膜の厚さは5nm以下であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
(付記8)
化合物半導体の電子走行層及び電子供給層を含む半導体積層構造を準備する工程と、
前記電子供給層の上方にソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で前記半導体積層構造上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層にゲートリセスを形成する工程と、
前記ゲートリセス内の第1の部分と、前記第1の部分につながり、前記ゲートリセスより前記ドレイン電極側で前記絶縁層上の第2の部分と、を有するゲート電極を形成する工程と、
を有し、
前記絶縁層を形成する工程は、
前記半導体積層構造に直接接する酸化アルミニウム膜を形成する工程と、
前記酸化アルミニウム膜の組成をAlOと表したとき、xの値が1.5より大きくなるように、前記酸化アルミニウム膜を酸化性雰囲気中で熱処理する工程と、
を有し、
前記酸化アルミニウム膜は、少なくとも、前記絶縁層の厚さ方向で、前記第2の部分と前記半導体積層構造との間に位置することを特徴とする化合物半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記酸化性雰囲気は、水蒸気、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化窒素若しくは一酸化窒素又はこれらの任意の組み合わせを含む雰囲気であることを特徴とする付記8に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記酸化アルミニウム膜は、酸素源として酸素プラズマ又はオゾンを用いた原子層堆積法により形成されることを特徴とする付記8又は9に記載の化合物半導体装置の製造方法。
(付記11)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の化合物半導体装置を有することを特徴とする増幅器。
【符号の説明】
【0072】
100、200、300:化合物半導体装置
102、202:電子走行層
104、204:電子供給層
106、206:半導体積層構造
113、213:ソース電極
114、214:ドレイン電極
120、220:絶縁層
121、221、321:酸化アルミニウム膜
122、222:窒化シリコン膜
123、223:ゲートリセス
130、230:ゲート電極
131、231:第1の部分
132、232:第2の部分
230A:ニッケル膜
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12