(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231024BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231024BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231024BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231024BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20231024BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20231024BHJP
C01B 25/30 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/36 E
H01M4/36 A
H01M4/1391
H01M4/131
C01B25/30 B
(21)【出願番号】P 2019145143
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018178708
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川村 博昭
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-033016(JP,A)
【文献】特開2011-159421(JP,A)
【文献】特開2020-009560(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139957(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/505
H01M 4/58
H01M 4/36
H01M 4/1391
H01M 4/131
H01M 4/62
C01B 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状酸化物系正極活物質粒子の表面に、導電性カーボンでコートされたオリビン系正極活物質粒子が表面担持率40%以上85%以下で担持され
、かつ、前記オリビン系正極活物質粒子の担持厚みが200nm以上500nm以下であるリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項2】
前記オリビン系正極活物質粒子の一次粒子の平均粒径が30nm以上100nm以下である、請求項
1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項3】
前記層状酸化物系正極活物質粒子の平均粒径が1μm以上30μm以下である、請求項1
または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項4】
前記層状酸化物系正極活物質粒子が造粒体である、請求項1~
3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項5】
前記オリビン系正極活物質粒子がリン酸マンガンリチウム粒子もしくはリン酸マンガン鉄リチウム粒子である、請求項1~
4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項6】
前記導電性カーボンでコートされたオリビン系正極活物質粒子の体積抵抗率が1×10
1~1×10
8 Ω・cmである、請求項1~
5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を含むリチウムイオン二次電池用正極。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極材料および導電助剤を含むリチウムイオン二次電池用正極スラリー。
【請求項9】
請求項
7に記載のリチウムイオン二次電池用正極を用いてなるリチウムイオン二次電池。
【請求項10】
工程1:導電性カーボンでコートされたオリビン系正極活物質粒子を解砕する工程;
工程2:解砕したオリビン系正極活物質粒子と層状酸化物系正極活物質粒子を重量比が35:65から20:80となる範囲で溶媒に分散させた分散液を調製する工程
工程3:該分散液を乾燥し、造粒する工程;
を有するリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項11】
前記工程2における解砕を湿式ジェットミルにより行う、請求項1
0に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項12】
前記工程3における乾燥および造粒をスプレードライヤーにより行う、請求項
10または11に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項13】
前記スプレードライヤーとしてノズル式のスプレードライヤーを用いる、請求項1
2に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極材料とその製造方法、それを用いたリチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池用正極スラリーおよびリチウムイオン二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車や非常用電源用の電池として、リチウムイオン二次電池の用途拡大が進んでいる。
【0003】
リチウムイオン二次電池は莫大なエネルギーを貯蔵できる反面、不具合が生じると貯蔵されているエネルギーが短時間に放出され、電池が発火・炎上する危険性がある。そのためリチウムイオン二次電池にとってエネルギー密度を高めることも重要であるが、安全性の向上も同様に重要な課題である。
【0004】
リチウムイオン二次電池の安全性を大きく左右するのが正極活物質であることはよく知られている。特にスマートフォンや電気自動車などに用いられることが多い層状酸化物系と呼ばれる正極活物質は、リチウムイオン二次電池の正極活物質の中でも高エネルギー密度を有する活物質であるが、例えば過充電によって電池内で酸素を放出し、発火に至る危険性があるなど安全性に課題がある。
【0005】
一方で、定置用電池などに用いられることが多いオリビン系正極活物質、例えばリン酸鉄リチウムは酸素がリンと共有結合しているために容易には酸素を放出せず、高温でも比較的安定であることが知られている。オリビン系正極活物質としてはより高エネルギー密度であるリン酸マンガンリチウムやリン酸マンガン鉄リチウムの開発も進められてはいるものの、エネルギー密度は層状酸化物系正極活物質に対しては劣るために、電気自動車などへの採用は限定的である。
【0006】
そこでエネルギー密度に優れる層状酸化物系正極活物質と安全性に優れるオリビン系正極活物質を混合することで、エネルギー密度と安全性を両立することが検討されている。電気抵抗が大きいオリビン系正極活物質を層状酸化物系正極活物質と混ぜることで、電池が内部短絡したときなどに流れる電流を小さくすることが期待できるためである。これは、リチウムイオン二次電池の正負極間の電圧が3~4.4V程度であり、オームの法則(I=V/R)をそのまま当てはめると、内部短絡時の短絡電流の大きさが内部抵抗に反比例することから説明がされる。また、熱安定性に優れるオリビン系正極活物質は高温下におかれても熱暴走しにくく、電池の熱安定性を向上させることも期待される。例えば、特許文献1においては、層状酸化物系正極活物質とオリビン系正極活物質を混合することによる安全性の向上について言及されている。
【0007】
層状酸化物系正極活物質とオリビン系正極活物質を混合する際の割合は、エネルギー密度をできるだけ高めるためには、オリビン系正極活物質は少ない方が好ましい。しかしながら、オリビン系正極活物質の混合割合を小さくしすぎると電池の安全性を十分に向上させることができなくなる恐れがある。したがって該混合においては、できるだけ少量のオリビン系正極活物質の混合で電池の安全性を大きく向上することが求められる。そこで、特許文献2~4においては、少量のオリビン系正極活物質の混合で電池の安全性を向上させるため、層状酸化物系正極活物質をオリビン系正極活物質で被覆した正極材料を得る試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5574239号公報
【文献】特許第3632686号公報
【文献】特許第5253512号公報
【文献】特開2002-75368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献2~4においては、層状酸化物系正極活物質の全面をオリビン系正極活物質で被覆している。しかし、オリビン系正極活物質はリチウムイオン伝導性が低いため、オリビン系正極活物質で覆い尽くしてしまうと、安全性向上と引き換えに層状酸化物系正極活物質の高速充放電特性が大きく低下する。
【0010】
本発明の目的は、高速充放電特性を犠牲にすることなくエネルギー密度と安全性を向上させたリチウムイオン二次電池用正極材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明は、層状酸化物系正極活物質粒子の表面に、導電性カーボンでコートされたオリビン系正極活物質粒子が表面担持率40%以上85%以下で担持されてなるリチウムイオン二次電池用正極材料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全性が高く、かつ高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池用正極材料を得ることができる。また、本発明の正極材料を用いることで、リチウムイオン二次電池の安全性およびエネルギー密度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例2で作製したリチウムイオン二次電池用正極材料の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<リチウムイオン二次電池用正極材料>
層状酸化物系正極活物質とは、組成式Li(NixCoyMnz)O2(ただし、x+y+z=1、0≦x、y、z、≦1)もしくはLi(NixCoyAlz)O2(ただし、x+y+z=1、0.7≦x<1、0≦y≦0.2、0≦z≦0.1)にて表される化合物である。ただし、ドーピングとして上記以外の金属が5重量%以下の範囲で添加されていてもよいものとする。
【0015】
コアとなる層状酸化物系正極活物質粒子の平均粒径は、1μm以上30μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μm未満であると、オリビン系正極活物質粒子を担持した後であっても比表面積が大きな粒子となり、電極塗工時には分散媒が大量に必要になるなど、ハンドリング性が低下する場合がある。一方、平均粒径が30μmを上回ると、リチウムイオン二次電池用正極を作製する際の一般的な正極スラリーの塗膜厚みである50~100μmに近くなるため、平滑な表面の塗膜を得ることが困難になる傾向がある。
【0016】
なお、コアとなる層状酸化物系正極活物質粒子は、一次粒子でもあってもよく、一次粒子が造粒された造粒体であってもよいが、同じ平均粒径の粒子であっても、小粒子から造粒してなる粒子の方が、比表面積が大きくなるために電解液との反応性がより向上し、充放電反応が進行しやすくなる点において、造粒体であることが好ましい。造粒体である場合には当該平均粒径は造粒体を構成する個々の一次粒子ではなく造粒体の平均粒径を意味するものとする。なお、本明細書における層状酸化物系正極活物質粒子の平均粒径は走査型電子顕微鏡にて撮影した二次元画像から実測した値であり、具体的には後述する測定Dに従って測定するものとする。
【0017】
オリビン系正極材料とは、組成式LiMPO4(ただし、MはFe,Mn,Co,Niから1つもしくは複数選択される)で表される化合物である。ただし、ドーピングとして上記以外の金属が5重量%以下の範囲で添加されていてもよいものとする。
【0018】
オリビン系正極活物質としては、層状酸化物系正極活物質と充放電電位が近く電圧互換性が高い点、またエネルギー密度が高い点において、リン酸マンガンリチウムもしくはリン酸マンガン鉄リチウムが好ましい。リン酸マンガン鉄リチウム(LiMnxFeyPO4(x+y=1))においてはマンガンと鉄のモル比を変えることができるが、鉄の割合が高いと放電電圧の大部分が3.4V付近となるため、リン酸マンガン鉄リチウムを用いる場合には、マンガンの割合が高いことが好ましく、層状酸化物系正極活物質との電圧互換性とエネルギー密度をより向上させることができる。組成式LiMnxFeyPO4(x+y=1)において、0.5≦x≦1が好ましく、0.7≦x≦1がより好ましい。
【0019】
本発明において、オリビン系正極活物質粒子は表面が導電性カーボンでコートされたものを用いる。導電性カーボンでコートされたオリビン系正極活物質粒子を用いることによって、電子電導性の低いオリビン系正極活物質粒子を担持することによる層状酸化物系正極活物質粒子の完全な電気的孤立を防ぐことができる。充放電を阻害しない程度の導電性を付与するという点において、カーボンコートされたオリビン系正極活物質粒子の体積抵抗率は1×101~1×108Ω・cmの範囲であることが好ましく、より高速な充放電にも対応できるという点において1×101~1×106Ω・cmの範囲であることがより好ましい。なお、以下本明細書においてはカーボンコートされたオリビン系正極活物質粒子も含めて単に「オリビン系正極活物質粒子」という場合がある。カーボンコートされたオリビン系正極活物質粒子の体積抵抗率は、例えば、カーボンコート量により調整することができ、カーボンコート時に添加するカーボンコート源を増量することにより、体積抵抗率を低減することができる。
【0020】
本発明におけるオリビン系正極活物質粒子の一次粒子の平均粒径は30nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒径が30nm以上であると、表面積を適度に抑え、表面における劣化反応の進行を抑制することができる。また、平均粒径が100nm以下であると、後述するように層状酸化物系正極活物質粒子に担持された際に担持厚みを小さくしやすく、目標とする担持厚み内に容易に調整することができる。なお、本明細書におけるオリビン系正極活物質粒子の平均粒径は、層状酸化物系正極活物質粒子同様走査型電子顕微鏡を用いて撮影した二次元画像から実測した値であり、具体的には後述する測定Aに従って測定するものとする。
【0021】
本発明のリチウムイオン二次電池用正極材料(以下、単に「正極材料」という場合がある)は、前述の一つの層状酸化物系正極活物質粒子(造粒体である場合も全体として一粒子と考える)の表面の一部に前述のオリビン系正極活物質粒子が複数担持された構造を有する。言い換えれば、本発明の正極材料は、一つの層状酸化物系正極活物質粒子の表面が複数のオリビン系正極活物質粒子によって不完全に被覆されてなり、層状酸化物系正極活物質粒子の表面が一部露出している。
【0022】
なお、本明細書において「担持」とは、コアとなる粒子上に、該粒子よりも小粒径の粒子が一定の接着力をもって接してなる状態である。一定の接着力の有無は、正極材料を電極化した際に担持構造を維持できるか否かで区別できる。すなわち、単なる2種類の正極粒子の混合体であれば電極化した際に2種類の正極材料の間にバインダーや導電助剤が介在し得るが、該担持構造であれば正極材料間にそれらは介在しない。
【0023】
本発明においては、層状酸化物系正極活物質粒子の表面において複数のオリビン系正極活物質粒子が存在する領域の割合を示す指標として、オリビン系正極活物質粒子の表面担持率(以下、単に「表面担持率」という場合がある)を用いる。本明細書における「表面担持率」とは、層状酸化物系正極活物質粒子の表面の一部にオリビン系正極活物質粒子が担持された正極材料粒子を走査型電子顕微鏡を用いて撮影した二次元画像において、正極材料粒子全体の面積と、コアとなる層状酸化物系正極活物質粒子が露出している部分の面積の差を複合材料粒子全体の面積で除して100を乗じた値(百分率)であり、具体的には後述する測定Dに従って測定するものとする。層状酸化物系正極活物質とオリビン系正極活物質の区別が困難な場合は、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いてリンを含有する粒子をオリビン系正極活物質粒子として区別することができる。
【0024】
本発明において、オリビン系正極活物質粒子の表面担持率は、電極化した際に層状酸化物系正極活物質が電極中の高導電性パスからある程度電気的に孤立するようにして安全性を向上させるため、40%以上とする。電極中の高導電性パスとは、電極中に含まれるアセチレンブラックやカーボンナノファイバーなどの導電助剤によって形成される導電パスである。層状酸化物系正極活物質粒子の孤立性をより高めるためには、表面担持率は50%以上が好ましい。また、電池内において層状酸化物系正極活物質粒子に十分な電解液との接触面積を持たせ、エネルギー密度を高めて高速充放電特性を低下させないために、表面担持率は85%以下とする。より高速な充放電特性を維持するためには、表面担持率は75%以下であることが好ましい。表面担持率が当該範囲であることで、本発明の正極材料は、電極化した際に、層状酸化物系正極活物質は電極内において高導電性のパスとつながりにくい状態をとるため、電池が短絡した時の短絡電流の減少につながる。また、層状酸化物系正極活物質粒子が電解液と直接接する部分が存在することによりイオン伝導性の低下を抑えることができ、高速充放電にも対応が可能である。また、層状酸化物系正極活物質が自己発熱した場合も、担持しているオリビン系正極活物質がスペーサーとして作用し、層状酸化物系正極活物質同士がお互いを加熱することを避けられる。その結果、発熱の連鎖による電池の熱暴走を抑止する効果が期待出来る。
【0025】
本発明において、層状酸化物系正極活物質粒子に担持されているオリビン系正極活物質粒子層の厚み(以下、「オリビン系正極活物質粒子の担持厚み」または単に「担持厚み」という)は、200nm以上500nm以下が好ましい。担持厚みが200nm以上であると、層状酸化物系正極活物質粒子の孤立性をより高め、電極内の高導電性のパスとのつながりをより抑制し、電池の安全性をより向上させることができる。また、オリビン系正極活物質粒子の担持厚みが500nm以下であると、電池のエネルギー密度をより高く維持することができる。なお、本明細書におけるオリビン系正極活物質の担持厚み担持厚みは、正極材料を電極化するか、もしくは樹脂包埋し、当該電極もしくは樹脂包埋体の断面の走査型電子顕微鏡によって撮影した画像に基づいて測定することができ、具体的には後述する測定Dに従って測定するものとする。
【0026】
<リチウムイオン二次電池用正極スラリー>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極スラリー(以下、単に「正極スラリー」という)は、本発明の正極材料および導電助剤を含む。必要に応じて、バインダー樹脂や溶剤を含有してもよい。本発明のリチウムイオン二次電池用正極スラリーは、例えば、本発明の正極活物質と導電助剤、そして、必要に応じバインダーとを溶剤中で混合することにより得ることができる。
【0027】
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、本発明の正極材料を含んでなるものである。さらに集電体を有することが好ましい。集電体としては、金属箔あるいは金属メッシュが好ましく用いられ、特にアルミニウム箔が好ましく用いられる。本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、典型的には、本発明の正極スラリーを集電体に塗布し、その後正極スラリーを乾燥させることによって製造することができる。
【0028】
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極材料を正極に含むものである。本発明の正極材料を用いることで、リチウムイオン二次電池の安全性およびエネルギー密度を向上させることができる。
【0029】
<リチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法>
本発明の正極材料は、一例として、
工程1:導電性カーボンでコートされたオリビン系正極活物質粒子を解砕する工程;
工程2:解砕したオリビン系正極活物質粒子を層状酸化物系正極活物質粒子とともに溶媒に分散させた分散液を調製する工程;
工程3:該分散液を乾燥し、造粒する工程;
を有するリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法により製造することができる。
【0030】
〔工程1〕
本製造方法においては、まず、導電性カーボンでコートされたオリビン系正極活物質粒子を準備する。
【0031】
オリビン系正極活物質粒子の作製方法は特に限定されないが、特に粒径が30nm以上100nm以下のオリビン系正極活物質粒子を得るためには、液相合成が好ましく用いられる。液相合成には公知の方法を用いることができるが、当該粒径とするためには、溶媒として少なくとも一部にアルコール系溶媒、具体的にはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2-プロパノール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールもしくはジメチルスルホキシドを含むことが好ましい。また合成の過程で結晶性を高めるために加圧してもかまわない。
【0032】
オリビン系正極活物質粒子表面への導電性カーボンのコートは、合成後のオリビン系正極活物質粒子を水に分散させた後、グルコースなどの糖類を添加し、乾燥・焼成することで行うことができる。
【0033】
導電性カーボンによるコートを行った後のオリビン系正極活物質粒子は通常凝集体を形成している。そのため、オリビン系正極活物質粒子を層状酸化物系正極活物質へ担持させる前に、当該凝集体を解砕して一次粒子の状態とすることが好ましい。オリビン系正極活物質粒子を一次粒子の状態まで分散させることで、層状酸化物系正極活物質粒子とオリビン系正極活物質粒子の混合比によって表面担持率を制御することが可能となる。解砕には、ビーズミル、遊星ボールミル、気流式ジェットミルなどを用いることができるが、オリビン系正極活物質粒子表面へのダメージが小さく、分散液全体を均一に処理できるという点から、湿式ジェットミルを用いるのが好適であり、特に湿式ジェットミルを用いて50MPa以上200MPa以下で処理する方法が好ましい。
【0034】
〔工程2〕
次に、解砕したオリビン系正極活物質粒子を層状酸化物系正極活物質粒子とともに溶媒に分散させた分散液を調製する。
【0035】
層状酸化物系正極活物質粒子は、公知の方法に従って固相法で作製することができ、また市販の活物質粒子を用いることもできる。
【0036】
層状酸化物系正極活物質粒子とオリビン系正極活物質粒子とを分散させる分散媒は、乾燥・造粒時に粒径を数マイクロメートルのオーダーで制御しやすい水またはN-メチルピロリジノンを用いることが好ましい。排ガス処理が容易である点では水を用いることが好ましいが、層状酸化物系正極活物質が水により劣化しやすいことを考慮すると、N―メチルピロリジノンを用いてもよい。
【0037】
正極材料において前述の表面担持率を40%以上85%以下とするには、層状酸化物系正極活物質と解砕処理を施されたオリビン系正極活物質を、重量比65:35から80:20の間で混合して分散液を調製することが好ましい。また、分散液の固形分濃度を高くすると、担持厚みが大きくなり、表面担持率が低くなる傾向にある。分散液の固形分濃度を20重量%以上50重量%以下に調整すると、担持厚みおよび表面担持率を所望の範囲に調製しやすいため好ましく、少量のオリビン系正極活物質で担持厚みを厚くしやすい点において、分散液の固形分濃度は、25重量%以上が好ましい。より少ないオリビン系正極活物質で表面担持率を高められる点において、分散液の固形分濃度は、40重量%以下が好ましい。
【0038】
〔工程3〕
続いて、工程2で調製した分散液を乾燥し、造粒する。
【0039】
乾燥および造粒は、これらを同時にできるスプレードライヤーを用いて行うことが好適である。スプレードライヤーには噴霧方式にノズル式とディスク式があるが、10~20マイクロメートル程度の粒径の造粒体が得られやすいノズル式が好ましく、さらに造粒体の粒径の均一性が高い点で3流体ノズルもしくは4流体ノズルが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0041】
[測定A]オリビン系正極活物質粒子の平均粒径の測定
粉末の状態のオリビン系正極活物質粒子を、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 S-5500)を用いて、加速電圧5kVで、10個の一次粒子の全体像が1視野内に収まる最大の倍率(1万倍~20万倍)で撮影し、二次元画像を得た。当該二次元画像から、活物質粒子の一次粒子について長軸と短軸の平均値として合計30個の活物質粒子の粒径を測定し、30個の粒径の平均値を平均粒径とした。
【0042】
[測定B]オリビン系正極活物質粒子の体積抵抗率の測定
カーボンコート後のリン酸マンガン鉄リチウムおよびリン酸鉄リチウムの体積抵抗率は、体積抵抗率計(株式会社三菱ケミカルアナリテック社製 粉体抵抗測定システム MCP-PD51型およびロレスタ-GP)を用いて測定した。測定条件は試料の重量を1g、試料半径を10mm、測定時圧力を25MPaとした。
【0043】
[測定C]正極材料の重量エネルギー密度の測定
アセチレンブラック(デンカ株式会社製 Li-400)とバインダー(株式会社クレハKFポリマー L#9305)を混合した後、各実施例、比較例で作製した正極材料を添加して乳鉢で固練りを実施した。含まれる各材料の重量比は、正極材料:アセチレンブラック:バインダーが90:5:5となるようにした。その後、N-メチルピロリジノンを添加して固形分が45重量%となるように調整し電極スラリーを得た。得られたスラリーに流動性がない場合には、N-メチルピロリジノンをスラリーに流動性が得られるまで、適宜追加した。
【0044】
得られた電極スラリーをアルミニウム箔(厚さ18μm)にドクターブレード(300μm)を用いて塗布し、80℃30分間の乾燥後、プレスを施し電極板を得た。作製した電極板を直径15.9mmに切り出して正極とし、直径16.1mm厚さ0.2mmに切り出したリチウム箔を負極とし、直径20mmに切り出した“セティーラ”(登録商標)(東レ株式会社)をセパレータとし、LiPF6を1M含有するエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)の溶液を電解液として、2032型コイン電池を作製し、電気化学評価を行った。
【0045】
測定は、カットオフ電位を2.5V、最大充電電圧4.3Vとし、充放電を0.1Cレートで3回行い、3回目の放電におけるコイン電池のエネルギー(Wh)から、0.1Cにおける正極の重量当たりの放電容量(Wh/kg)を算出した。さらに0.1Cにて充電した後、3Cで放電させることで3Cにおける正極の重量当たりの放電容量(Wh/kg)を算出した。
【0046】
[測定D]層状酸化物系活物質の粒径、表面担持率および担持厚みの測定
測定Cに記載の方法に従ってプレスまで施した正極の一部を、イオンミリング装置(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 IM4000PLUS)を用いて加速電圧2kVから5kVの条件で電極断面を出し、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製 S-5500)にて、加速電圧5kVで、一視野内に正極材料の粒子一つの全体像が最大限の大きさで表示される倍率(5万倍~20万倍)にて撮影し、二次元画像を得た。
【0047】
当該二次元画像から、コアとなっている層状酸化物系正極活物質粒子の粒径について、長軸と短軸の平均値として合計30個の活物質粒子の粒径を測定し、30個の粒径の平均値を平均粒径とした。層状酸化物系正極活物質が造粒体構造をとっている場合は、造粒体の長軸と短軸から該平均粒径を求めた。
【0048】
さらに当該二次元画像から、正極材料粒子全体の面積と、コアとなる層状酸化物系正極活物質粒子が露出している部分の面積の差を複合材料粒子全体の面積で除して100を乗じた値(百分率)を求めた。このようにして30個の正極活物質について個々の表面担持率を求め、30個の平均値を表面担持率とした。
【0049】
また、層状酸化物系正極活物質粒子の周囲に存在するオリビン系正極活物質粒子層の最も厚い部分の厚みを、同様に30個の正極材料について測定した上で、その平均値をオリビン系正極活物質粒子の担持厚みとした。
【0050】
[測定E]圧壊試験時の電池表面温度の測定および発火有無の評価
測定Cで作製した正極と、負極として市販のカーボン系負極(負極活物質:日立化成株式会社製 人造黒鉛MAG)、セパレータとして“セティーラ”(登録商標)(東レ株式会社)、電解液としてLiPF6を1M含有するエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(体積比)を用いて3Ahセルの積層ラミネートセルを作製した。積層数は正極(サイズ:70mm×40mm)を21層、負極(サイズ:74mm×44mm)を22層とし、対向する正極と負極の容量比率(NP比)は1.05とした。
【0051】
作製したセルを0.1Cで3回充放電させた後、0.1Cで再度充電し、圧壊試験に供した。圧壊試験は半径10mmの丸棒を10mm/秒の速度で満充電状態の電池の中央部に最大荷重10kNで押しつけることで行った。また、丸棒が押しつけられる場所から10mm離れた箇所に熱電対を貼り付け、圧壊時の最大温度を測定するとともに、発火の有無を記録した。
【0052】
[実施例1]
純水150gにジメチルスルホキシド200gを加え、水酸化リチウム1水和物を360ミリモル添加した。得られた溶液に、85%リン酸水溶液を用いてリン酸を120ミリモルさらに添加し、さらに硫酸マンガン1水和物を84ミリモル、硫酸鉄(II)7水和物を36ミリモル添加した。得られた溶液をオートクレーブに移し、容器内が150℃を維持するように4時間加熱保持した。加熱後に溶液の上澄みを捨て、沈殿物としてリン酸マンガン鉄リチウムを得た。得られたリン酸マンガン鉄リチウムは純水にて洗浄した後に、遠心分離にて上澄みを除去することを5回繰り返し、最後に再度純水を加えて分散液とした。
【0053】
続いて分散液中のリン酸マンガン鉄リチウムの15重量%と同重量のグルコースを分散液に添加して溶解させた後、純水を加えることで分散液の固形分濃度を50重量%に調整した。得られた分散液をスプレードライヤー(藤崎電機社製 MDL-050B)にて200℃の熱風を用いて乾燥・造粒した。得られた粉体をロータリーキルン(高砂工業社製 デスクトップロータリーキルン)にて窒素雰囲気下700℃4時間加熱し、カーボンコートされたリン酸マンガン鉄リチウム(LiMn0.7Fe0.3PO4)の造粒体を得た。
【0054】
得られたリン酸マンガン鉄リチウムの造粒体に純水に添加し、湿式ジェットミル(スギノマシン社製 スターバーストミニ)にて圧力150MPaの条件で5パス処理し、リン酸マンガン鉄リチウム造粒体を解砕し、カーボンコートされたリン酸マンガン鉄リチウム粒子(一次粒子 平均粒径55nm)を得た。
【0055】
層状酸化物系正極活物質粒子(ユミコア社製LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2 平均粒径13μmの造粒体)と該解砕後のリン酸マンガン鉄リチウム粒子を重量比70:30で混合し、水に分散させ、固形分濃度を20%に調整した後にスプレードライヤー(藤崎電機社製 MDL-050B)にて200℃の熱風を用いて乾燥・造粒し正極材料を得た。
【0056】
[実施例2]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際の分散液の固形分濃度を30重量%にした以外は実施例1と同様にして、正極材料を得た。得られた正極材料の走査型電子顕微鏡写真を
図2に示す。
【0057】
[実施例3]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際の分散液における、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を75:25とし、固形分濃度を30重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0058】
[実施例4]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際の分散液における、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を75:25とした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0059】
[実施例5]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を75:25とし、固形分濃度を10重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0060】
[実施例6]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を65:35とし、固形分濃度を55重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0061】
[実施例7]
オリビン系正極活物質粒子の合成において、硫酸マンガン1水和物を添加せず、硫酸鉄(II)7水和物を120ミリモルとし、オートクレーブに移した後の容器内の維持温度を180℃として、オリビン系正極活物質粒子としてリン酸鉄リチウム粒子を採用した点、さらに、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の固形分濃度を30重量%にした点以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0062】
[実施例8]
オリビン系正極活物質粒子の合成において、オートクレーブに移した後の容器内の維持温度を220℃とした点、さらに、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の固形分濃度を30重量%にした点以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0063】
[実施例9]
オリビン系正極活物質粒子のカーボンコート時のグルコースの添加量をリン酸マンガン鉄リチウムの5重量%と同重量とした点、さらに、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の固形分濃度を30重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0064】
[実施例10]
オリビン系正極活物質粒子のカーボンコート時のグルコースの添加量をリン酸マンガン鉄リチウムの7.5重量%と同重量とした点、さらに、層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の固形分濃度を30重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0065】
[実施例11]
オリビン系正極活物質粒子の合成において、硫酸マンガン1水和物を96ミリモル、硫酸鉄(II)7水和物を24ミリモル添加し、オートクレーブに移した後の容器内の維持温度を175℃とした点以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0066】
[実施例12]
オリビン系正極活物質粒子の合成において、硫酸マンガン1水和物を96ミリモル、硫酸鉄(II)7水和物を24ミリモル添加した点、さらに層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際の分散液の固形分濃度を30重量%にした以外は実施例1と同様にして、正極材料を得た。
【0067】
[実施例13]
純水に硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンをモル比で1:1:1になるように溶解させた後、水酸化ナトリウム溶液を加えてpHを12以上になるように保ち、共沈物として複合水酸化物粒子を得た。生成した共沈物をろ過、水洗し、乾燥させた後、大気中で700℃まで昇温して6時間保持した後、室温まで炉冷することにより熱処理を行い、層状酸化物系正極粒子前駆体を得た。
【0068】
得られた前駆体に炭酸リチウムを、モル比がLi:(Ni+Co+Mn)=103:100となるようにして混合して、酸素気流中で500℃まで昇温して500℃で3時間保持した後に、745℃まで昇温して12時間保持した後、室温まで炉内で冷却することにより、層状酸化物系正極粒子LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を得た。
【0069】
層状酸化物系正極活物質粒子としてLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を用いた以外は実施例11と同様にして正極材料を得た。
【0070】
[比較例1]
実施例1と同様にしてカーボンコートされたリン酸マンガン鉄リチウムの造粒体粒子を得た。その後、湿式ジェットミルを用いた造粒体の解砕および層状酸化物系正極活物質粒子との複合化は行わずに、当該造粒体粒子をそのまま正極材料として用いた。
【0071】
[比較例2]
層状酸化物系正極活物質(ユミコア社製 LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2 平均粒径13μm)を正極材料として用いた。
【0072】
[比較例3]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸鉄リチウムを乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を90:10とし、固形分濃度を30重量%にした以外は請求項1と同様にして正極材料を得た。
【0073】
[比較例4]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸鉄リチウムを乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を92.5:7.5とし、固形分濃度を40重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0074】
[比較例5]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸鉄リチウムを乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を95:5とし、固形分濃度を30重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0075】
[比較例6]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸鉄リチウムを乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を60:40とし、固形分濃度を18重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0076】
[比較例7]
層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸鉄リチウム粒子を乾燥・造粒するためにスプレードライヤーに供する際における分散液の層状酸化物系正極活物質粒子とリン酸マンガン鉄リチウム粒子の重量比を60:40とし、固形分濃度を25重量%にした以外は実施例1と同様にして正極材料を得た。
【0077】
[比較例8]
実施例11と同様にしてカーボンコートされたリン酸マンガン鉄リチウムの造粒体粒子を得た。その後、湿式ジェットミルを用いた造粒体の解砕および層状酸化物系正極活物質粒子との複合化は行わずに、当該造粒体粒子をそのまま正極材料として用いた。
【0078】
[比較例9]
実施例13と同様にして、層状酸化物系正極活物質LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を得た。得られたLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2を正極材料として用いた。
【0079】
各実施例、比較例における正極材料の主な構成を表1に、前述の方法により評価した結果を表2に示す。
【0080】
【0081】