(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両の制御システム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/34 20060101AFI20231024BHJP
G08G 1/123 20060101ALI20231024BHJP
B60L 53/68 20190101ALN20231024BHJP
B60L 53/64 20190101ALN20231024BHJP
B60L 53/62 20190101ALN20231024BHJP
B60L 58/12 20190101ALN20231024BHJP
【FI】
G01C21/34
G08G1/123 A
B60L53/68
B60L53/64
B60L53/62
B60L58/12
(21)【出願番号】P 2019156726
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】夏目 貴史
(72)【発明者】
【氏名】井村 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】東谷 光晴
(72)【発明者】
【氏名】南條 弘行
(72)【発明者】
【氏名】伊東 悠太郎
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G08G 1/123
B60L 53/68
B60L 53/64
B60L 53/62
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1目的地に向かって搬送対象を搬送する第1車両(30)と、第2目的地に向かって搬送対象を搬送する第2車両(40)との間で走行エネルギを授受することが可能な車両の制御システムであって、
前記第1目的地に向かって前記第1車両を第1走行ルートに沿って走行させる第1走行制御部(600)と、
前記第1車両の走行エネルギ量を監視する第1エネルギ監視部(602)と、
前記第1車両が現在地から前記第1目的地まで走行するために必要な必要走行エネルギを算出する第1必要エネルギ算出部(601)と、
前記第2目的地に向かって前記第2車両を第2走行ルートに沿って走行させる第2走行制御部(700)と、
前記第2車両の走行エネルギ量を監視する第2エネルギ監視部(702)と、
前記第2車両が現在地から所定の合流地点を経由して第2目的地まで走行するために必要な必要走行エネルギを算出する第2必要エネルギ算出部(701)と、を備え、
前記第1走行制御部は、前記第1車両の走行エネルギ量及び前記第1車両の必要走行エネルギの少なくとも一方に基づいて、前記第1車両が前記第1目的地に到着するまでに前記第1車両の走行エネルギが不足するか否かを判断し、前記第1車両の走行エネルギが不足すると判断した場合には、その旨を前記第2車両に通知し、
前記第2走行制御部は、前記第2車両の走行エネルギ量が前記第2車両の必要走行エネルギと前記第1車両に供給可能な走行エネルギとの加算値以上であるか否かを判断し、前記第2車両の走行エネルギ量が前記加算値以上である場合には前記合流地点に向かって第2車両を走行させ、
前記第1車両は、前記合流地点において前記第2車両と合流して前記第2車両から走行エネルギを受け取
り、
前記所定の合流地点は、前記第1走行ルート上の地点であって、且つ前記第2走行ルートを走行する前記第2車両が最も接近すると予想される地点に設定されている
車両の制御システム。
【請求項2】
前記第2走行制御部は、前記第2車両の走行エネルギ量が前記加算値以上である場合には、走行エネルギに関する条件とは別の条件が満たされるか否かを判断し、前記別の条件が満たされると判断した場合には、前記合流地点に向かって前記第2車両を走行させる
請求項
1に記載の車両の制御システム。
【請求項3】
前記第2走行制御部は、前記別の条件として、前記第2車両が前記第2目的地に到着する時刻を遅延させることが可能であるという条件、前記第1車両が予め定められた供給対象に該当するという条件、及び前記第2車両から前記第1車両への走行エネルギの供給に際して所定の対価を受け取ることが可能であるという条件の少なくとも一つの条件を用いる
請求項
2に記載の車両の制御システム。
【請求項4】
前記第1必要エネルギ算出部は、前記第1車両が現在地から前記第1目的地まで走行するまでの区間に存在するエネルギ供給ステーションにおいて補給可能な走行エネルギを補給エネルギとするとき、前記第1車両が現在地から前記第1目的地まで無補給で走行するために必要な基準走行エネルギから前記補給エネルギを減算した値を前記必要走行エネルギとして用いる
請求項1~
3のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【請求項5】
前記第1車両に供給可能な走行エネルギは、前記第1車両の不足分の走行エネルギと同一の値に設定されている
請求項1~
4のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【請求項6】
前記第2車両が複数存在し、
複数の前記第2車両のそれぞれにおいて設定される前記第1車両に供給可能な走行エネルギは、前記第1車両の不足分の走行エネルギよりも小さい値であり、
複数の前記第2車両のそれぞれにおいて設定される前記第1車両に供給可能な走行エネルギの合計が、前記第1車両の不足分の走行エネルギ以上である
請求項1~
4のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【請求項7】
前記合流地点として、複数の前記第2車両のそれぞれに対応した複数の地点が存在する
請求項
6に記載の車両の制御システム。
【請求項8】
前記合流地点は、前記第1車両の現在地からの走行距離と前記第2車両の現在地からの走行距離とが最短となる地点に設定されている
請求項1~
7のいずれか一項に記載の車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の車両の制御装置がある。特許文献1に記載の車両は、バッテリを動力源として稼働する無人搬送車である。この無人搬送車の制御装置は、停止中の無人搬送車に対して通信を行い、バッテリ情報を計算する。この制御装置は、自身のバッテリ情報と、受信した他の無人搬送車のバッテリ情報とを比較し、充電を受ける無人搬送車と、充電を行う無人搬送車とを決定する。それらの無人搬送車は接続手段を用いて互いに接続される。これにより、バッテリ切れで停止中の無人搬送車に対して他の無人搬送車から充電を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の充電方法を用いる場合、無人搬送車が一旦停止すると、他の無人搬送車により充電が行われるまでは、無人搬送車は停止した状態を維持することになる。すなわち、一旦停止した後に充電が行われるまでの間は搬送サービスが一時的に途絶えることとなるため、好ましくない。
【0005】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送サービスを継続し易い車両の制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両の制御システムは、第1目的地に向かって搬送対象を搬送する第1車両(30)と、第2目的地に向かって搬送対象を搬送する第2車両(40)との間で走行エネルギを授受することが可能な車両の制御システムである。車両の制御システムは、第1走行制御部(600)と、第1エネルギ監視部(602)と、第1必要エネルギ算出部(601)と、第2走行制御部(700)と、第2エネルギ監視部(702)と、第2必要エネルギ算出部(701)と、を備える。第1走行制御部は、第1目的地に向かって第1車両を第1走行ルートに沿って走行させる。第1エネルギ監視部は、第1車両の走行エネルギ量を監視する。第1必要エネルギ算出部は、第1車両が現在地から第1目的地まで走行するために必要な必要走行エネルギを算出する。第2走行制御部は、第2目的地に向かって第2車両を第2走行ルートに沿って走行させる。第2エネルギ監視部は、第2車両の走行エネルギ量を監視する。第2必要エネルギ算出部は、第2車両が現在地から所定の合流地点を経由して第2目的地まで走行するために必要な必要走行エネルギを算出する。第1走行制御部は、第1車両の走行エネルギ量及び第1車両の必要走行エネルギの少なくとも一方に基づいて、第1車両が第1目的地に到着するまでに第1車両の走行エネルギが不足するか否かを判断し、第1車両の走行エネルギが不足すると判断した場合には、その旨を第2車両に通知する。第2走行制御部は、第2車両の走行エネルギ量が第2車両の必要走行エネルギと第1車両に供給可能な走行エネルギとの加算値以上であるか否かを判断し、第2車両の走行エネルギ量が加算値以上である場合には合流地点に向かって第2車両を走行させる。第1車両は、合流地点において第2車両と合流して第2車両から走行エネルギを受け取る。所定の合流地点は、第1走行ルート上の地点であって、且つ第2走行ルートを走行する第2車両が最も接近すると予想される地点に設定されている。
【0007】
この構成によれば、第1車両が第1目的地に到着するまでに第1車両の走行エネルギが不足する場合には、その旨が第1車両から第2車両に通知される。よって、第1車両の走行エネルギが枯渇するよりも前に、すなわち走行エネルギの不足により第1車両が停止するよりも前に、第1車両の走行エネルギが不足する可能性があることを第2車両に通知することができる。これにより、第1車両は、走行している状態を可能な限り維持したまま第2車両と合流できる。したがって、第1車両の搬送サービスを継続し易くなる。
【0008】
一方、第2車両の走行エネルギの残量が、合流地点を経由して目的地まで走行するために必要な必要走行エネルギと、第1車両に供給可能な走行エネルギとの加算値以上であることを条件に、第2車両が合流地点に向かって走行する。これにより、第2車両は、合流地点を経由し、更に不足分の走行エネルギを第1車両に供給した場合であっても自身の第2目的地まで走行できるため、第2車両の搬送サービスも継続し易くなる。
【0009】
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、搬送サービスを継続し易い車両の制御システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の車両の制御システムの概要を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の第1車両及び第2車両の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の管理センタの概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の第1車両の走行制御ECU及び第2車両の走行制御ECUによりそれぞれ実行される処理の手順の一部を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1実施形態の第1車両の走行制御ECU及び第2車両の走行制御ECUによりそれぞれ実行される処理の手順の一部を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1実施形態の第1変形例の車両の制御システムの概要を模式的に示す図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態の第2変形例の車両の制御システムの概要を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態の第1車両の走行制御ECU及び第2車両の走行制御ECUによりそれぞれ実行される処理の手順の一部を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2実施形態の第1車両の走行制御ECU及び第2車両の走行制御ECUによりそれぞれ実行される処理の手順の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、車両の制御システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、第1実施形態の車両の制御システムについて説明する。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態の車両の制御システム10は、複数の車両により搬送対象を目的地20まで搬送するシステムである。
図1では、複数の車両のうちの2台の車両30,40が図示されている。車両30,40により搬送される搬送対象には荷物や人が含まれる。車両30,40は、無人で搬送対象を目的地20まで自動的に搬送する電気自動車である。以下では、車両30を「第1車両30」とも称し、車両40を「第2車両40」とも称する。本実施形態では、第1車両30の第1目的地と第2車両40の第2目的地とが同一の目的地20に設定されている。
【0014】
次に、
図2を参照して車両30,40の具体的な構成について説明する。
図2に示されるように、第1車両30は、バッテリ31と、インバータ装置32と、モータジェネレータ33とを備えている。
【0015】
バッテリ31は、充電及び放電の可能なリチウムイオン電池等の二次電池からなる。
インバータ装置32は、バッテリ31に充電されている直流電力を交流電力に変換し、変換された交流電力をモータジェネレータ33に供給する。
【0016】
モータジェネレータ33は、インバータ装置32から供給される交流電力に基づいて駆動する。モータジェネレータ33の駆動により生成される動力が第1車両30の車輪に伝達されることにより第1車両30が走行する。
第1車両30は、更に、遠距離通信部34と、近距離通信部35と、位置センサ36と、周辺検知センサ37と、車速センサ38と、SOC(State Of Charge)センサ39と、走行制御ECU(Electronic Control Unit)60とを備えている。
【0017】
遠距離通信部34は、車両30,40とは別の管理センタ50とネットワーク回線を介して遠距離無線通信を可能とする部分である。管理センタ50は、車両30,40を含め、制御システム10に用いられる複数の車両の走行状況を統括的に管理している。遠距離通信部34は、管理センタ50との遠距離無線通信を通じて、第1車両30が走行すべき走行ルートの情報や第2車両40の走行状況等の各種情報を取得する。
【0018】
近距離通信部35は、第1車両30と第2車両40との間の近距離無線通信を可能とする部分である。
位置センサ36は、GPS(Global Positioning System)等を利用して第1車両30の現在地を取得する。位置センサ36は、取得した第1車両30の現在地の情報を走行制御ECU60に送信する。
【0019】
周辺検知センサ37は、第1車両30の周辺情報を検知するセンサである。周辺検知センサ37により取得される情報には、第1車両30の周辺を走行する車両や、第1車両30の前方に位置する障害物、第1車両30の前方に位置する信号機、第1車両30が走行している走行レーンの車線等が含まれる。周辺検知センサ37は、例えばカメラや赤外線センサ、レーダ装置により構成される。周辺検知センサ37は、検知された第1車両30の周辺情報を走行制御ECU60に送信する。
【0020】
車速センサ38は、第1車両30の走行速度を検出するとともに、検出された走行速度の情報を走行制御ECU60に送信する。
SOCセンサ39は、バッテリ31のSOC(State Of Charge)値を検出するとともに、検出したSOC値に応じた信号を走行制御ECU60に出力する。SOC値は、バッテリ31の完全放電状態を「0[%]」と定義し、バッテリ31の満充電状態を「100[%]」と定義した上で、バッテリ31の充電状態を「0[%]~100[%]」の範囲で表したものである。
【0021】
走行制御ECU60は、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。走行制御ECU60は、メモリに予め記憶されているプログラムを実行することにより、第1車両30を自動的に走行させるための各種制御を実行する。
具体的には、走行制御ECU60は、第1車両30に搭載される他のECU、例えばEV(Electric Vehicle)ECU61や制動ECU62、操舵ECU63等と各種情報を授受することが可能となっている。EVECU61は、インバータ装置32を駆動させることにより、モータジェネレータ33の動作を制御する。制動ECU62は第1車両30の制動装置を制御する。操舵ECU63は第1車両30の操舵装置を制御する。
【0022】
また、走行制御ECU60は、第1車両30に搭載される地図情報データベース64から地図情報を読み込むことが可能である。
走行制御ECU60は、第1車両30を自動的に走行させるための加速度の目標値や操舵角の目標値等の制御指令値を演算する。走行制御ECU60は、演算された制御指令値をEVECU61や制動ECU62、操舵ECU63に送信する。この制御指令値に基づいてEVECU61や制動ECU62、操舵ECU63が第1車両30のモータジェネレータ33や制動装置、操舵装置を制御することにより、第1車両30の自動走行が実現される。
【0023】
なお、走行制御ECU60は、第1車両30の自動走行制御を実行する際に、必要に応じて、第1車両30に搭載される車両情報データベース65から、第1車両30に関する各種情報を読み込むことが可能である。車両情報データベース65には、第1車両30に搭載される各種センサの検出値や、各種ECUの演算値がデータベース化されて逐次記憶されている。車両情報データベース65に記憶されている情報には、例えば第1車両30の車速の推移や平均車速、加速度の推移、走行距離、電費等が含まれている。
【0024】
第2車両40も、第1車両30と同様に、バッテリ41、インバータ装置42、モータジェネレータ43、遠距離通信部44、近距離通信部45、位置センサ46、周辺検知センサ47、車速センサ48、SOCセンサ49、走行制御ECU70、EVECU71、制動ECU72、操舵ECU73、地図情報データベース74、及び車両情報データベース75を備えている。これらの要素の構成及び機能は、第1車両30において対応する各要素と同一又は類似の構成及び機能を有するものであるため、それらの詳細な説明は割愛する。
【0025】
第1車両30及び第2車両40は、互いに接続可能な接続部66,76をそれぞれ有している。第1車両30の接続部66と第2車両40の接続部76とが互いに接続されることにより、第1車両30のバッテリ31と第2車両40のバッテリ41との間で電力を授受することが可能となる。
【0026】
図3に示されるように、管理センタ50は、通信部51と、地図情報データベース52と、交通流データベース53と、ECU54とを備えている。
通信部51は、車両30,40とネットワーク回線を介して遠距離無線通信を可能とする部分である。
【0027】
地図情報データベース52には、地図情報が記憶されている。
交通流データベース53には、各地点における現在の交通情報や過去の交通情報等が記憶されている。管理センタ50は、道路上に設置される車両監視装置を通じて、道路上を走行中の各車両の状態量を取得している。管理センタ50により取得される情報には、各地点における渋滞情報や平均車速の情報等が含まれている。管理センタ50は、それらの情報をデータベース化して交通流データベース53に記憶している。
【0028】
ECU54は、CPUやメモリ等を有するマイクロコンピュータを中心に構成されている。ECU54は、地図情報データベース52に記憶されている地図情報、及び交通流データベース53に記憶されている交通情報等に基づいて、搬送対象を搬送するために必要な情報、具体的には車両30,40の目的地20、走行ルート、到着時刻等を設定する。ECU54は、設定した目的地20や走行ルート、到着時刻等の情報を、通信部51を介して車両30,40に送信する。
【0029】
図2に示される第1車両30の走行制御ECU60は、管理センタ50から送信される目的地20等の情報を、遠距離通信部34を介して取得すると、第1車両30を目的地20まで自動的に走行させる走行制御を実行する。具体的には、走行制御ECU60は、管理センタ50から送信される目的地20等の情報、位置センサ36を通じて検出される第1車両30の現在地、及び地図情報データベース64から取得する地図情報等に基づいて、到着時刻までに目的地20に到着するように第1車両30を走行ルートに沿って自動的に走行させる。
【0030】
同様に、第2車両40の走行制御ECU70も、管理センタ50から送信される目的地20等の情報に基づいて、到着時刻までに目的地20に到着するように第2車両40を走行ルートに沿って自動的に走行させる。
なお、
図1では、第1車両30の走行ルートが「R10」で示され、第2車両40の走行ルートが「R20」で示されている。第1車両30の走行ルートR10及び第2車両40の走行ルートR20は、異なるルートを経由して同一の目的地20に到達するように設定されている。本実施形態では、第1車両30の走行ルートR10が第1走行ルートに相当し、第2車両40の走行ルートR20が第2走行ルートに相当する。
【0031】
ところで、このような車両30,40の制御システム10では、例えば第1車両30のバッテリ31に蓄えられている電力量の残量が低下すると、第1車両30が目的地20に到達できない可能性がある。そこで、本実施形態の制御システム10では、目的地20に到達できない程度に第1車両30のバッテリ31の電力量の残量が低下した際には、その旨が複数の第2車両40に通知される。この通知を受信した複数の第2車両40のうちの一台の車両が第1車両30に合流した後、第2車両40から第1車両30に電力が供給される。これにより、第1車両30に不足分の電力量が補充されるため、第1車両30が目的地20まで走行することが可能となる。本実施形態では、各車両30,40のバッテリ31,41に蓄えられている電力が走行エネルギに相当する。
【0032】
次に、このような第1車両30及び第2車両40との間で電力を授受する構成について具体的に説明する。
図2に示されるように、第1車両30の走行制御ECU60は、走行制御部600と、必要エネルギ算出部601と、エネルギ監視部602とを有している。本実施形態では、走行制御部600が第1走行制御部に相当し、必要エネルギ算出部601が第1必要エネルギ算出部に相当し、エネルギ監視部602が第1エネルギ監視部に相当する。
【0033】
走行制御ECU60は、上述した第1車両30を自動的に走行させる自動走行制御を実行する。
必要エネルギ算出部601は、位置センサ36により検出される第1車両30の現在地から目的地20まで走行するために必要な電力量Waを演算する。具体的には、必要エネルギ算出部601は、地図情報データベース64に記憶されている地図情報に基づいて、第1車両30が現在地から目的地20まで走行ルートR10に沿って走行した際の走行距離を演算する。また、必要エネルギ算出部601は、車両情報データベース65から第1車両30の過去の電費の情報を読み込む。必要エネルギ算出部601は、第1車両30の過去の電費と走行距離とから演算式等に基づいて、第1車両30の現在地から目的地20まで走行するために必要な電力量Waを演算する。本実施形態では、必要電力量Waが必要走行エネルギに相当する。
【0034】
エネルギ監視部602は、SOCセンサ39により検出されるバッテリ31のSOC値に基づいて、第1車両30のバッテリ31の電力量の残量Wbを監視している。
第2車両40の走行制御ECU70も、同様に、走行制御部700と、必要エネルギ算出部701と、エネルギ監視部702とを有している。これらの要素の構成及び機能は、第1車両30において対応する各要素と同一又は類似の構成及び機能を有するものであるため、それらの詳細な説明は割愛する。本実施形態では、本実施形態では、走行制御部700が第2走行制御部に相当し、必要エネルギ算出部701が第2必要エネルギ算出部に相当し、エネルギ監視部702が第2エネルギ監視部に相当する。
【0035】
なお、以下では、第1車両30の必要エネルギ算出部601により演算される必要電力量を「Wa10」で表記し、第2車両40の必要エネルギ算出部701により演算される必要電力量を「Wa20」で表記する。また、第1車両30のエネルギ監視部602により検出されるバッテリ31の電力量の残量を「Wb10」で表記し、第2車両40のエネルギ監視部702により演算される必要電力量を「Wb20」で表記する。
【0036】
次に、
図4を参照して、第1車両30及び第2車両40の間で電力が授受される際に各走行制御ECU60,70により実行される処理の手順について具体的に説明する。なお、
図4に示される処理では、第1車両30において電力不足が生じる場合を例に挙げて説明する。
【0037】
図4に示されるように、第1車両30の走行制御部600は、まず、ステップS100の処理として、第1車両30が目的地20まで走行できるか否かを判断する。具体的には、第1車両30の走行制御部600は、エネルギ監視部602により検出される第1車両30のバッテリ31の電力量の残量Wb10が、必要エネルギ算出部601により演算される第1車両30の必要電力量Wa10以上であるか否かを判断する。第1車両30の走行制御部600は、バッテリ31の電力量の残量Wb10が必要電力量Wa10以上である場合には、第1車両30が目的地20まで走行できると判断する。この場合、第1車両30の走行制御部600は、ステップS100の処理で肯定判断して、
図4に示される処理を終了する。
【0038】
第1車両30の走行制御部600は、バッテリ31の電力量の残量Wb10が必要電力量Wa10未満である場合には、第1車両30が目的地20まで走行できないと判断する。この場合、第1車両30の走行制御部600は、ステップS100の処理で否定判断して、続くステップS101の処理として、不足分の電力量ΔWを複数の第2車両40に通知する。
【0039】
具体的には、第1車両30の走行制御部600は、バッテリ31の電力量の残量Wb10から必要電力量Wa10を減算するとともに、その減算値の絶対値|Wb10-Wa10|を求める。第1車両30の走行制御部600は、この減算値の絶対値|Wb10-Wa10|を不足分の電力量ΔWとして、遠距離通信部34を通じて管理センタ50に送信する。管理センタ50は、第1車両30から送信される不足分の電力量ΔWの情報を受信すると、その情報を複数の第2車両40に通知する。本実施形態では、この不足分の電力量ΔWを第2車両40に通知する処理が、第1車両30の走行エネルギが不足している旨を第2車両40に通知する処理に相当する。以降、管理センタ50は、第1車両30と第2車両40との間で行われる遠距離無線通信を中継する。
【0040】
第2車両40の走行制御部700は、ステップS200の処理として、管理センタ50から送信される第1車両30の不足分の電力量ΔWの情報を受信すると、ステップS201の処理として、第2車両40から第1車両30に電力を供給することが可能であるか否かを判断する。具体的には、第2車両40の走行制御部700は、第1車両30の不足分の電力量ΔWと、必要エネルギ算出部701により演算される第2車両40の必要電力量Wa20とを加算した値を加算値「ΔW+Wa20」とするとき、エネルギ監視部702により検出される第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa20」以上であるか否かを判断する。ステップS201の判断処理は、第1車両30の不足分の電力量ΔWを一台の第2車両40が供給可能であり、且つその第2車両40が目的地20まで走行可能であるか否かを判断するための処理に相当する。このように、本実施形態の第2車両40の走行制御部700は、第1車両30に供給すべき電力量として、第1車両30の不足分の電力量ΔWを用いる。第2車両40の走行制御部700は、バッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa20」未満である場合には、第2車両40から第1車両30に電力を供給することができないと判断する。この場合、第2車両40の走行制御部700は、ステップS201の処理で否定判断して、
図4に示される処理を終了する。
【0041】
第2車両40の走行制御部700は、バッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa20」以上である場合には、第2車両40から第1車両30に電力を供給することが可能であると判断する。この場合、第2車両40の走行制御部700は、ステップS201の処理で肯定判断して、続くステップS202の処理として、走行ルートR20の情報を、管理センタ50を介して第1車両30に送信する。
【0042】
ステップS200~S202の処理が複数の第2車両40においてそれぞれ実行されることにより、電力を供給可能な単数又は複数の第2車両40が走行ルートR20の情報を第1車両30に送信することになる。なお、
図1に示される走行ルートR20は複数の第2車両40のそれぞれにおいて異なる。
【0043】
第1車両30の走行制御部600は、ステップS102の処理として、第2車両40から送信される走行ルートR20の情報を受信すると、ステップS103の処理として、合流地点を設定する。本実施形態の合流地点は、例えば
図1に示されるように、第1車両30の走行ルートR10上の地点Paに設定される。具体的には、第1車両30の走行制御部600は、第2車両40の走行ルートR20と第1車両30の走行ルートR10とを比較し、第2車両40が第1車両30の走行ルートR10に最も接近する地点を合流地点Paとして決定する。そして、第1車両30の走行制御部600は、ステップS103に続くステップS104の処理として、決定した合流地点Paの情報を、管理センタ50を介して第2車両40に送信する。
【0044】
このステップS102~S104の処理が、走行ルートR20の情報を送信した複数の第2車両40のそれぞれに対して行われることにより、第1車両30から単数又は複数の第2車両40に合流地点Paの情報が送信されることになる。
第2車両40の走行制御部700は、ステップS203の処理として、第1車両30から送信される合流地点Paの情報を受信すると、ステップS204の処理として、第2車両40が合流地点Paを経由した場合に第1車両30に電力を供給することが可能であるか否かを判断する。具体的には、第2車両40の走行制御部700は、合流地点Paを経由して目的地20に向かう場合の第2車両40の走行ルートである合流時走行ルートを設定する。合流時走行ルートは、例えば
図1に二点鎖線R21で示されるように設定される。第2車両40の必要エネルギ算出部701は、第2車両40が合流時走行ルートR21を走行する際に必要な合流時必要電力量Wa21を演算する。第2車両40の走行制御部700は、第1車両30の不足分の電力量ΔWと、必要エネルギ算出部701により演算される合流時必要電力量Wa21とを加算した値を加算値「ΔW+Wa21」とするとき、エネルギ監視部702により検出される第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa21」以上であるか否かを判断する。第2車両40の走行制御部700は、バッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa21」未満である場合には、第2車両40から第1車両30に電力を供給することができないと判断する。この場合、第2車両40の走行制御部700は、ステップS204の処理で否定判断して、
図4に示される処理を終了する。
【0045】
第2車両40の走行制御部700は、バッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa21」以上である場合には、第2車両40が合流地点Paを経由した場合であっても第2車両40から第1車両30に電力を供給することが可能であると判断する。この際、第2車両40の走行制御部700は、ステップS204の処理で肯定判断し、続くステップS205の処理として、第2車両40の合流時走行ルートR21を、管理センタ50を介して第1車両30に送信する。
【0046】
このステップS203~S205の処理が、合流地点Paが送信された単数又は複数の第2車両40において実行されることにより、合流地点Paを経由した場合であっても第1車両30に電力を供給可能な単数又は複数の第2車両40が合流時走行ルートR21の情報を第1車両30に送信することになる。
【0047】
第1車両30の走行制御部600は、ステップS105の処理として、第2車両40から送信される合流時走行ルートR21の情報を受信すると、ステップS106の処理として、合流車両を選定する。具体的には、第1車両30の走行制御部600は、合流時走行ルートR21の情報を送信した第2車両40が一台だけであった場合には、その第2車両40を合流車両として選定する。また、第1車両30の走行制御部600は、合流時走行ルートR21の情報を送信した第2車両40が複数台存在する場合には、そのうちの一台を合流車両として選定する。例えば、第1車両30の走行制御部600は、合流時走行ルートR21の情報を送信した複数の第2車両40のうち、最も早期に合流可能な第2車両40を合流車両として選定する。
【0048】
第1車両30の走行制御部600は、ステップS106に続いて、
図5に示されるステップS107の処理を実行する。第1車両30の走行制御部600は、ステップS107の処理として、合流車両に選定された第2車両40に管理センタ50を介して合流指示を通知した後、ステップS108の処理として、第1車両30を合流地点Paに向かって走行させる。一方、第2車両40の走行制御部700は、
図4に示されるステップS205に続いて、
図5に示されるステップS206の処理を実行する。第2車両40の走行制御部700は、ステップS206の処理として、第1車両30から送信される合流指示を受信すると、ステップS207の処理として、第2車両40を合流地点Paに向かって走行させる。これにより、第1車両30及び第2車両40が合流地点Paで合流する。
【0049】
第1車両30の走行制御部600は、ステップS109の処理として、第2車両40が合流したか否かを判断し、ステップS109の処理で肯定判断した場合には、続くステップS110の処理として、電力受け取り処理を実行する。また、第2車両40の走行制御部700は、ステップS208の処理として、第1車両30が合流したか否かを判断し、ステップS208の処理で肯定判断した場合には、続くステップS209の処理として、電力供給処理を実行する。第1車両30により実行される電力受け取り処理、及び第2車両40により実行される電力供給処理では、第1車両30の近距離通信部35及び第2車両40の近距離通信部45を介した近距離無線通信を通じて各車両30,40の走行制御部600,700が協調することにより、第2車両40から第1車両30への電力の供給が行われる。具体的には、第1車両30の接続部66及び第2車両40の接続部76が互いに接続された後、第2車両40から第1車両30への不足分の電力量ΔWの供給が行われる。第2車両40から第1車両30への電力の供給が完了すると、第1車両30の接続部66及び第2車両40の接続部76の接続が解除される。
【0050】
第1車両30の走行制御部600は、ステップS111の処理として、第2車両40からの電力の受け取りが完了したか否かを判断し、ステップS111の処理で肯定判断した場合には、続くステップS112の処理として、目的地20に向かって第1車両30を走行させる。また、第2車両40の走行制御部700は、ステップS210の処理として、第1車両30への電力の供給が完了したか否かを判断し、ステップS210の処理で肯定判断した場合には、続くステップS211の処理として、第2車両40を目的地20に向かって走行させる。
【0051】
以上説明した本実施形態の車両30,40の制御システム10によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)第1車両30が目的地20に到着するまでに第1車両30の電力が不足する場合には、その旨を示す不足分の電力量ΔWが第1車両30から第2車両40に通知される。よって、第1車両30のバッテリ31の電力が枯渇するよりも前に、すなわち電力不足により第1車両30が停止するよりも前に、第1車両30の走行エネルギが不足する可能性があることを第2車両40に通知することができる。これにより、第1車両30は、走行している状態を可能な限り維持したまま第2車両40と合流できる。したがって、第1車両30の搬送サービスを継続し易くなる。
【0052】
(2)第2車両40が合流地点Paを経由して目的地20に到着するために必要な合流時必要電力量Wa21と、第1車両30の不足分の電力量ΔWとを加算した値を加算値「ΔW+Wa21」とするとき、第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa21」以上であることを条件に、第2車両40は合流地点Paに向かって走行する。これにより、第2車両40は、合流地点Paを経由し、更に不足分の電力量ΔWを第1車両30に供給した場合であっても目的地20まで走行できるため、第2車両40の搬送サービスも継続することができる。
【0053】
(3)合流地点Paは、第1車両30の走行ルートR10上に設定されている。このような構成によれば、第1車両30が走行ルートR10を外れて走行することがないため、第2車両40と合流するまでに第1車両30が消費する電力を最小限に抑えることができる。
【0054】
(4)第1車両30に電力を供給可能な第2車両40が複数存在する。このような構成によれば、第1車両30の不足分の電力量ΔWを補い易くなる。
(第1変形例)
次に、第1実施形態の車両30,40の制御システム10の第1変形例について説明する。
【0055】
第1車両30の走行制御部600は、ステップS103の処理において第1車両30の走行ルートR10から外れた地点を合流地点Paとして設定してもよい。例えば、
図6に示されるように、第1車両30の走行制御部600は、第1車両30の現在地からの走行距離と第2車両40の現在地からの走行距離とが最短となる地点に合流地点Paを設定してもよい。この場合、第2車両40の走行ルートが「R20」から「R22」に変更されるだけでなく、第1車両30の走行ルートも「R10」から「R12」に変更される。このような構成によれば、各車両30,40が合流するまでに消費される電力を最小限に抑えることが可能であるため、第1車両30が停止するような状況を回避し易くなるとともに、第1車両30に合流するために消費される第2車両40の電力を低減することができる。
【0056】
(第2変形例)
次に、第1実施形態の車両30,40の制御システム10の第2変形例について説明する。
図7に示されるように、第1車両30が現在地から目的地まで走行する区間に電力ステーションSwが存在する場合には、第1車両30の必要エネルギ算出部601は、電力ステーションSwで補給可能な電力量を考慮して第1車両30の必要電力量Wa10を算出してもよい。具体的には、第1車両30の必要エネルギ算出部601は、電力ステーションSwで第1車両30に補給することが可能な電力量を補給可能電力量とするとき、第1車両30が現在地から目的地20まで無補給で走行するために必要な基準電力量から補給可能電力量を減算した値を第1車両30の必要電力量Wa10として用いる。本変形例では、電力ステーションSwがエネルギ供給ステーションに相当する。また、補給可能電力量が補給エネルギに相当し、基準電力が基準走行エネルギに相当する。
【0057】
このような構成によれば、第2車両40に要求する電力量を少なくできるため、第2車両40から第1車両30への電力の供給を更に行い易くなる。
(第3変形例)
次に、第1実施形態の車両30,40の制御システム10の第3変形例について説明する。
【0058】
第1車両30の走行制御部600は、複数の第2車両40のそれぞれに対して合流地点Paを設定した上で、第1車両30を複数の第2車両40と合流させてもよい。具体的には、
図4に示されるステップS106,S201,S202,S204,S205の処理を例えば以下のように変更する。
【0059】
ステップS201の処理において、第2車両40の走行制御部700は、第1車両30に供給可能な電力量Wc10と第2車両40の必要電力量Wa20とを加算した値を加算値「Wc10+Wa20」とするとき、第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「Wc10+Wa20」以上であるか否かを判断する。供給可能な電力量Wc10は、例えば第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20から第2車両40の必要電力量Wa20を減算した減算値以下の値に設定することができる。
【0060】
第2車両40の走行制御部700は、ステップS202の処理において、走行ルートR20の情報と共に、供給可能な電力量Wc10の情報を第1車両30に送信する。
第2車両40の走行制御部700は、ステップS204の処理において、第1車両30に供給可能な電力量Wc11と合流時必要電力量Wa21とを加算した値を加算値「Wc11+Wa21」とするとき、第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「Wc11+Wa21」以上であるか否かを判断する。第1車両30に供給可能な電力量Wc11は、例えば第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20から合流時必要電力量Wa21を減算した減算値以下の値に設定することができる。
【0061】
第2車両40の走行制御部700は、ステップS205の処理において、合流時走行ルートR21の情報と共に、供給可能な電力量Wc11の情報を第1車両30に送信する。
第1車両30の走行制御部600は、ステップS106の処理において、電力を供給可能な複数の第2車両40のうち、第1車両30の不足分の電力量ΔWを補うことが可能な複数の第2車両40を合流車両として選定する。具体的には、合流車両に選定された複数の第2車両40の供給可能な電力量Wc11の合計が第1車両30の不足分の電力量ΔW以上になるように複数の第2車両40を選定する。
【0062】
このような構成によれば、第1車両30の不足分の電力量ΔWを複数の第2車両40により分割して補うことが可能となる。よって、各第2車両40が第1車両30に供給可能な電力量は第1車両30の不足分の電力量ΔWよりも小さい電力量となるため、第2車両40から第1車両30への電力の供給が行われ易くなる。
【0063】
なお、合流車両に選定された複数の第2車両40のそれぞれに対して異なる合流地点が設定されていてもよい。
<第2実施形態>
次に、車両30,40の制御システム10の第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態の制御システム10との相違点を中心に説明する。
【0064】
図8に示されるように、本実施形態の第2車両40の走行制御部700は、ステップS201に続くステップS220の処理として、電力とは別の条件が満たされているか否かを判断する。具体的には、第2車両40の走行制御部700は、電力とは別の条件として、以下の(a1)及び(a2)に示される条件を用いる。
【0065】
(a1)第2車両40が目的地20に到着する時刻を遅延させることが可能である。到着時刻を遅延させることが可能であるか否かは、管理センタ50から第2車両40に予め通知される。
(a2)第1車両30が予め定められた供給対象に該当している。例えば第1車両30の搬送サービスを提供する事業者と、第2車両40の搬送サービスを提供する事業者とが異なる場合、第2車両40の搬送サービスを提供する事業者が第1車両30への電力の供給を望まない可能性がある。このような供給対象に該当するか否かの情報は、走行制御ECU70のメモリに予め記憶されている。第2車両40の走行制御部700は、メモリに記憶されている供給対象に第1車両が含まれている場合には、第1車両30が予め定められた供給対象であると判断する。
【0066】
第2車両40の走行制御部700は、上記の(a1)及び(a2)のうちの少なくとも一方の条件が満たされていない場合には、ステップS220の処理で否定判断して、
図8に示される処理を終了する。
第2車両40の走行制御部700は、上記の(a1)及び(a2)の条件が共に満たされている場合には、ステップS220の処理で肯定判断して、続くステップS221の処理として、第2車両40の走行ルートR20及び対価の情報を、管理センタ50を介して第1車両30に送信する。対価は、第1車両30への電力の供給に対して、第2車両40の搬送サービスを提供する事業者が受け取ることが可能な金銭や物品等を示す。なお、ステップS221の処理で第2車両40から第1車両30に送信される対価の情報は、対価の上限や下限等、対価の概要を示す情報である。
【0067】
第1車両30の走行制御部600は、ステップS120の処理として、第2車両40から送信される走行ルートR20及び対価の情報を受信すると、ステップS121の処理として、第2車両40からの電力の供給を受諾するか否かを判断する。例えば、第1車両30の走行制御部600は、第2車両40から送信された対価が所定の対価の範囲を超えている場合には、第2車両40からの電力の供給を受諾しないと判断する。この場合、第1車両30の走行制御部600は、ステップS121の処理で否定判断して、ステップS122の処理として、供給車両として不一致である旨を第2車両40に送信する。第2車両40の走行制御部700は、供給車両として不一致である旨が第1車両30から通知された場合には、第1車両30への電力の供給を中止する。
【0068】
第1車両30の走行制御部600は、第2車両40から送信された対価が所定の対価の範囲内である場合には、第2車両40からの電力の供給を受諾すると判断する。この場合、第1車両30の走行制御部600は、ステップS122の処理で肯定判断して、ステップS103の処理を実行した後、ステップS123の処理として、合流地点Paの情報と、第1車両30として許容可能な対価の情報とを第2車両40に送信する。
【0069】
第2車両40の走行制御部700は、ステップS222の処理として、第1車両30から送信される合流地点Paの情報及び第1車両30の許容可能な対価の情報を受信する。そして、第2車両40の走行制御部700は、続くステップS204の処理で肯定判断すると、
図9に示されるステップS223の処理を実行する。第2車両40の走行制御部700は、ステップS223の処理として、電力とは別の条件が満たされているか否かを判断する。具体的には、第2車両40の走行制御部700は、電力とは別の条件として、以下の(b1)~(b3)に示される条件を用いる。
【0070】
(b1)合流地点Paを経由して目的地20に向かった場合に第2車両40が目的地20に到着する時刻が、到着時刻として許容可能な時刻よりも遅延していない。
(b2)第1車両30が予め定められた供給対象に該当している。
【0071】
(b3)所定の対価を受け取ることが可能である。第2車両40の走行制御部700は、ステップS222の処理で受信した第1車両30の許容可能な対価が所定の対価の範囲内であることに基づいて、所定の対価を受け取ることが可能であると判断する。
第2車両40の走行制御部700は、上記の(b1)~(b3)のうちの少なくとも一つの条件が満たされていない場合には、電力とは別の条件が満たされていないと判断する。この場合、第2車両40の走行制御部700は、ステップS223の処理で否定判断して、
図8に示される処理を終了する。
【0072】
第2車両40の走行制御部700は、上記の(b1)~(b3)の全ての条件が満たされている場合には、電力とは別の条件が満たされていると判断する。この場合、第2車両40の走行制御部700は、ステップS223の処理で肯定判断して、続くステップS224の処理として、合流時走行ルート及び対価の情報を第1車両30に送信する。この際、第2車両40の走行制御部700は、第2車両40が合流時走行ルートを走行することを加味した上で、第2車両40から第1車両30に電力を供給することに対する対価の詳細を算出した後、この詳細な対価の情報を第2車両40に送信する。
【0073】
第1車両30の走行制御部600は、
図8に示されるステップS123の処理に続いて、
図9に示されるステップS124の処理を実行する。第1車両30の走行制御部600は、ステップS124の処理として、第2車両40から送信される合流時走行ルート及び対価の情報を受信すると、ステップS125の処理として、第2車両40からの電力の供給を受諾するか否かを判断する。例えば、第1車両30の走行制御部600は、第2車両40から送信された詳細な対価が所定の対価の範囲を超えている場合には、第2車両40からの電力の供給を受諾しないと判断する。この場合、第1車両30の走行制御部600は、ステップS125の処理で否定判断して、ステップS126の処理として、供給車両として不一致である旨を第2車両40に送信する。第2車両40の走行制御部700は、供給車両として不一致である旨が第1車両30から通知されると、第1車両30への電力の供給を中止する。
【0074】
第1車両30の走行制御部600は、第2車両40から送信された詳細な対価が所定の対価の範囲内である場合には、第2車両40からの電力の供給を受諾すると判断する。この場合、第1車両30の走行制御部600は、ステップS125の処理で肯定判断して、ステップS106以降の処理を実行する。
【0075】
以上説明した本実施形態の車両30,40の制御システム10によれば、以下の(5)に示される作用及び効果を更に得ることができる。
(5)第2車両40の走行制御部700は、第2車両40のバッテリ41の電力量の残量Wb20が加算値「ΔW+Wa21」以上である場合には、電力とは別の条件が満たされているか否かを判断する。具体的には、上記の(b1)~(b3)の条件が満たされているか否かを判断する。第2車両40の走行制御部700は、電力とは別の条件が満たされていると判断した場合には、合流地点Paに向かって第2車両40を走行させる。このような構成によれば、第2車両40から第1車両30へ電力の供給を行うべきであるか否かを、より適切に判断することが可能となる。
【0076】
<他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・
図8に示される処理では、ステップS220の処理を省略することも可能である。
【0077】
・第1車両30の目的地及び第2車両の目的地は互いに異なる地点に設定されていてもよい。
・第1車両30及び第2車両40は、管理センタ50を介さずに、互いに無線通信を直接行うことにより、
図4、
図5、
図8、
図9に示される処理を実行してもよい。
【0078】
・電力が不足している第1車両30が走行ルートを変更して第2車両40に合流してもよい。
・第1車両30及び第2車両40は、電気自動車に限らず、内燃機関を動力源として用いるエンジン車両や、内燃機関及びモータジェネレータの両方を動力源として用いるハイブリッド車両であってもよい。なお、第1車両30及び第2車両40がエンジン車両である場合には、内燃機関の駆動に用いられる燃料が走行エネルギに相当する。また、第1車両30及び第2車両40がエンジン車両である場合には、内燃機関の駆動に用いられる燃料、及びモータジェネレータの駆動に用いられる電力が走行エネルギに相当する。また、走行エネルギとしては、電力や燃料と相関関係のあるパラメータ、例えばバッテリのSOC値や車両の走行可能距離、電費、燃費を用いてもよい。
【0079】
・走行制御部600、必要エネルギ算出部601、及びエネルギ監視部602は、第1車両30とは別の機器、例えば自動運転を統括的に制御する管制塔のような中継部に設けられていてもよい。走行制御部700、必要エネルギ算出部701、及びエネルギ監視部702についても同様である。
・エネルギ監視部602は、バッテリ31の電力量の残量Wb10に限らず、第1車両10の走行エネルギ量に関連する所定の物理量を監視するものであればよい。エネルギ監視部702についても同様である。
【0080】
・走行制御部600は、
図4のステップS100の処理において、バッテリ31の電力量の残量Wb10、もしくは必要電力量Wa10に基づいて、第1車両30が目的地20まで走行できるか否かを判断してもよい。
・合流地点は、第2車両10の走行ルートR20上に設定されていてもよい。すなわち、第2車両20は、合流地点に向かって走行する際に、必ずしも走行ルートR20を外れる必要はない。
【0081】
・本開示に記載の走行制御ECU60,70及びその制御方法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の走行制御ECU60,70及びその制御方法は、1つ又は複数の専用ハードウェア論理回路を含むプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の走行制御ECU60,70及びその制御方法は、1つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと1つ又は複数のハードウェア論理回路を含むプロセッサとの組み合わせにより構成された1つ又は複数の専用コンピュータにより、実現されてもよい。コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。専用ハードウェア論理回路及びハードウェア論理回路は、複数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路により実現されてもよい。
【0082】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0083】
10:制御システム
30:第1車両
40:第2車両
600:走行制御部(第1走行制御部)
601:必要エネルギ算出部(第1必要エネルギ算出部)
602:エネルギ監視部(第1エネルギ監視部)
700:走行制御部(第2走行制御部)
701:必要エネルギ算出部(第2必要エネルギ算出部)
702:エネルギ監視部(第2エネルギ監視部)