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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231024BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231024BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20231024BHJP
   C23C 16/458 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H02N13/00 D
C23C16/458
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019162316
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021040112
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 実
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 均
(72)【発明者】
【氏名】重住 司
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-119654(JP,A)
【文献】特表2016-512393(JP,A)
【文献】特開2016-201411(JP,A)
【文献】特開平07-211705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H02N 13/00
C23C 16/458
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着の対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、
前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、
前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、高周波電源と接続される少なくとも1つの第1電極層と、
前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、吸着用電源と接続される少なくとも1つの第2電極層と、
を備え、
前記第1電極層は、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板に向かうZ軸方向において、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2主面側から給電され、
前記第2電極層は、前記Z軸方向において、前記第1電極層と前記第1主面との間に設けられる静電チャックにおいて、
前記第1電極層は、前記Z軸方向に垂直な平面に投影したときに中央側に位置する第1部分と、前記Z軸方向に垂直な平面に投影したときに前記第1部分よりも外周側に位置する第2部分と、を有し、
前記第1部分は、前記第1主面側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、
前記第2部分は、前記第1主面側の第3面と、前記第3面とは反対側の第4面と、を有し、
前記第3面は、前記Z軸方向において、前記第1面と前記第2電極層との間に位置し、
前記第3面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、
前記第2部分は、前記Z軸方向に垂直な平面に投影したときに前記セラミック誘電基板の外側に位置する第1端部と、前記Z軸方向に垂直な平面に投影したときに前記セラミック誘電体基板において前記第1端部よりも内側に位置する第2端部と、を有し、
前記第2部分の前記第1端部における前記第3面と前記第4面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第2部分の中央部における前記第3面と前記第4面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さく、
前記第2部分の前記第2端部における前記第3面と前記第4面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第2部分の中央部における前記第3面と前記第4面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
前記第2面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、
前記第1部分の端部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第1部分の中央部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第1面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、
前記第1部分の端部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第1部分の中央部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング、CVD(Chemical Vapor Deposition)、スパッタリング、イオン注入、アッシングなどを行うプラズマ処理チャンバ内では、半導体ウェーハやガラス基板などの処理対象物を吸着保持する手段として、静電チャックが用いられている。静電チャックは、内蔵する電極に静電吸着用電力を印加し、シリコンウェーハ等の基板を静電力によって吸着するものである。
【0003】
プラズマ処理を行う際には、例えば、チャンバ内の上部に設けられた上部電極と、上部電極よりも下方に設けられた下部電極と、にRF(Radio Frequency)電源(高周波電源)から電圧を印加し、プラズマを発生させる。
【0004】
従来の静電チャックでは、静電チャックの下部に設けられるベースプレートを下部電極としてプラズマを発生させていた。しかし、適切な周波数を選択してプラズマ密度のウェーハ面内分布の更なる制御が求められる状況では、このような構成でのプラズマ制御には限界がある。
【0005】
そこで、近年、ベースプレートの上に設けられる誘電体層にプラズマ発生用の下部電極を内蔵させて、プラズマ制御性を高める試みがなされている。しかし、誘電体層に下部電極を内蔵させるだけでは、プラズマ密度の面内均一性を十分に得ることができない場合があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-188342号公報
【文献】特開2011-119654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、プラズマ密度の面内均一性を高めることができる静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、吸着の対象物が載置される第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を有するセラミック誘電体基板と、前記セラミック誘電体基板を支持するベースプレートと、前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、高周波電源と接続される少なくとも1つの第1電極層と、前記セラミック誘電体基板の内部に設けられ、吸着用電源と接続される少なくとも1つの第2電極層と、を備え、前記第1電極層は、前記ベースプレートから前記セラミック誘電体基板に向かうZ軸方向において、前記第1主面と前記第2主面との間に設けられ、前記第2主面側から給電され、前記第2電極層は、前記Z軸方向において、前記第1電極層と前記第1主面との間に設けられる静電チャックにおいて、前記第1電極層は、前記Z軸方向に垂直な平面に投影したときに中央側に位置する第1部分と、前記Z軸方向に垂直な平面に投影したときに前記第1部分よりも外周側に位置する第2部分と、を有し、前記第1部分は、前記第1主面側の第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記第2部分は、前記第1主面側の第3面と、前記第3面とは反対側の第4面と、を有し、前記第3面は、前記Z軸方向において、前記第1面と前記第2電極層との間に位置し、前記第3面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、前記第2部分の端部における前記第3面と前記第4面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第2部分の中央部における前記第3面と前記第4面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0009】
高周波電流を印加すると、電極の中央付近で電界強度が強くなる一方、電極の外周部分では電界強度が弱くなることが知られている。この静電チャックによれば、Z軸方向に垂直な平面に投影したときに中央側に位置する第1部分と、Z軸方向に垂直な平面に投影したときに第1部分よりも外周側に位置する第2部分と、を有する第1電極層を設けている。また、第2部分の第1主面側の面(第3面)が、Z軸方向において、第1部分の第1主面側の面(第1面)と第2電極層との間に位置するようにしている。これにより、第1電極層の中央側に位置する第1部分の第1面と上部電極との間の距離を、第1電極層の外周側に位置する第2部分の第3面と上部電極との間の距離よりも大きくすることができ、第1電極層の外周部分(第2部分)に比べて電界強度が強くなりやすい第1電極層の中央付近(第1部分)の電界強度を弱くすることができる。したがって、プラズマ制御性を高め、第1電極層におけるプラズマ密度の面内均一性を高めることができる。
さらに、この静電チャックによれば、第3面と第1主面との間のZ軸方向に沿う距離を一定にし、かつ、第2部分の端部における第3面と第4面との間のZ軸方向に沿う距離を第2部分の中央部における第3面と第4面との間のZ軸方向に沿う距離よりも小さくすることで、第2部分において電界を集中させることができる。これにより、第1部分に比べてプラズマ密度が疎になりやすい第2部分のプラズマ密度を高めることができる。したがって、第1電極層におけるプラズマ密度の面内均一性を高めることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記第2面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、前記第1部分の端部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第1部分の中央部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0011】
この静電チャックによれば、第2面と第1主面との間のZ軸方向に沿う距離を一定にし、かつ、第1部分の端部における第1面と第2面との間のZ軸方向に沿う距離を第1部分の中央部における第1面と第2面との間のZ軸方向に沿う距離よりも小さくすることで、第1部分の端部において電界集中が生じることを抑制できる。これにより、第1電極層において、電界集中による絶縁破壊が生じることを抑制できる。
【0012】
第3の発明は、第1の発明において、前記第1面と前記第1主面との間の前記Z軸方向に沿う距離は一定であり、前記第1部分の端部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離は、前記第1部分の中央部における前記第1面と前記第2面との間の前記Z軸方向に沿う距離よりも小さいことを特徴とする静電チャックである。
【0013】
この静電チャックによれば、第1面と第1主面との間のZ軸方向に沿う距離を一定にし、かつ、第1部分の端部における第1面と第2面との間のZ軸方向に沿う距離を第1部分の中央部における第1面と第2面との間のZ軸方向に沿う距離よりも小さくすることで、冷却機能を有するベースプレート側に位置する第1部分の第2面の表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、第1電極層をより効果的に放熱させることができ、プラズマ密度の面内均一性をより高めることができる。また、第2面から第1面までの給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の態様によれば、プラズマ密度の面内均一性を高めることができる静電チャックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る静電チャックを模式的に表す断面図である。
図2】実施形態に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の一例を模式的に表す平面図及び断面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の別の一例を模式的に表す平面図及び断面図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の別の一例を模式的に表す平面図及び断面図である。
図6図6(a)~図6(e)は、実施形態に係る静電チャックの第1部分及び第2部分の配置の例を表す断面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、実施形態に係る静電チャックの第2部分の例を模式的に表す断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の例を模式的に表す断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1部分の例を模式的に表す断面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1部分の例を模式的に表す断面図である。
図11】実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
図1は、実施形態に係る静電チャックを模式的に表す断面図である。
図1に表したように、静電チャック100は、セラミック誘電体基板10と、第1電極層11と、第2電極層12と、ベースプレート50と、を備える。
【0018】
セラミック誘電体基板10は、例えば焼結セラミックによる平板状の基材である。例えば、セラミック誘電体基板10は、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)を含む。例えば、セラミック誘電体基板10は、高純度の酸化アルミニウムで形成される。セラミック誘電体基板10における酸化アルミニウムの濃度は、例えば、90質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、好ましくは、95質量パーセント(mass%)以上100mass%以下、より好ましくは、99質量パーセント(mass%)以上100mass%以下である。高純度の酸化アルミニウムを用いることで、セラミック誘電体基板10の耐プラズマ性を向上させることができる。なお、酸化アルミニウムの濃度は、蛍光X線分析などにより測定することができる。
【0019】
セラミック誘電体基板10は、第1主面10aと、第2主面10bと、を有する。第1主面10aは、吸着の対象物Wが載置される面である。第2主面10bは、第1主面10aとは反対側の面である。吸着の対象物Wは、例えば、シリコンウェーハなどの半導体基板である。
【0020】
なお、本願明細書において、ベースプレート50からセラミック誘電体基板10に向かう方向をZ軸方向とする。Z軸方向は、例えば、各図に例示する通り、第1主面10aと第2主面10bとを結ぶ方向である。Z軸方向は、例えば、第1主面10a及び第2主面10bに対して略垂直な方向である。Z軸方向と直交する方向の1つをX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に直交する方向をY軸方向ということにする。本願明細書において、「面内」とは、例えばX-Y平面内である。
【0021】
セラミック誘電体基板10の内部には、第1電極層11及び第2電極層12が設けられる。第1電極層11及び第2電極層12は、第1主面10aと、第2主面10bと、の間に設けられる。すなわち、第1電極層11及び第2電極層12は、セラミック誘電体基板10の中に挿入されるように設けられる。第1電極層11及び第2電極層12は、例えば、セラミック誘電体基板10に一体焼結されることで内蔵されてもよい。
【0022】
第1電極層11は、Z軸方向において、第1主面10aと第2主面10bとの間に位置する。第2電極層12は、Z軸方向において、第1主面10aと第1電極層11との間に位置する。換言すれば、第1電極層11は、Z軸方向において、第2電極層12と第2主面10bとの間に位置する。
【0023】
このように、第1電極層11をセラミック誘電体基板10の内部に設けることで、静電チャック100よりも上方に設けられる上部電極(図11の上部電極510)と第1電極層11(下部電極)との間の距離を短くすることができる。これにより、例えば、ベースプレート50を下部電極とする場合などに比べて、低い電力でプラズマ密度を高めることができる。換言すれば、高いプラズマ密度を得るために必要となる電力を低減させることができる。
【0024】
第1電極層11及び第2電極層12の形状は、セラミック誘電体基板10の第1主面10a及び第2主面10bに沿った薄膜状である。第1電極層11の形状については、後述する。第2電極層12は、第1主面10a及び第2主面10bに対して平行である。より具体的には、第2電極層12の第1主面10a側の面(上面)及び第2主面10b側の面(下面)は、それぞれ、第1主面10a及び第2主面10bに対して平行である。
【0025】
第1電極層11は、高周波電源(図11の高周波電源504)と接続される。上部電極(図11の上部電極510)及び第1電極層11に高周波電源から電圧(高周波電圧)が印加されることで、処理容器501内部においてプラズマが発生する。第1電極層11は、換言すれば、プラズマを発生させるための下部電極である。高周波電源は、高周波のAC(交流)電流を第1電極層11に供給する。ここでいう「高周波」は、例えば、200kHz以上である。
【0026】
第1電極層11は、例えば、金属製である。第1電極層11は、例えば、Ag、Pd、及びPtの少なくともいずれかを含む。第1電極層11は、例えば、金属とセラミックスとを含んでいてもよい。
【0027】
第2電極層12は、吸着用電源(図11の吸着用電源505)と接続される。静電チャック100は、吸着用電源から第2電極層12に電圧(吸着用電圧)を印加することによって、第2電極層12の第1主面10a側に電荷を発生させ、静電力によって対象物Wを吸着保持する。換言すれば、第2電極層12は、対象物Wを吸着させるための吸着電極である。吸着用電源は、直流(DC)電流またはAC電流を第2電極層12に供給する。吸着用電源は、例えば、DC電源である。吸着用電源は、例えば、AC電源であってもよい。
【0028】
第2電極層12は、例えば、金属製である。第2電極層12は、例えば、Ag、Pd、Pt、Mo、及びWの少なくともいずれかを含む。第2電極層12は、例えば、金属とセラミックスとを含んでいてもよい。
【0029】
第2電極層12には、セラミック誘電体基板10の第2主面10b側に延びる接続部20が設けられている。接続部20は、例えば、第2電極層12と導通するビア(中実型)やビアホール(中空型)である。接続部20は、ロウ付けなどの適切な方法によって接続された金属端子でもよい。
【0030】
ベースプレート50は、セラミック誘電体基板10を支持する部材である。セラミック誘電体基板10は、接着部材60によってベースプレート50の上に固定される。接着部材60としては、例えばシリコーン接着剤が用いられる。
【0031】
ベースプレート50は、例えば、アルミニウムなどの金属製である。ベースプレート50は、例えば、セラミック製であってもよい。ベースプレート50は、例えば、上部50aと下部50bとに分けられており、上部50aと下部50bとの間に連通路55が設けられている。連通路55の一端側は、入力路51に接続され、連通路55の他端側は、出力路52に接続される。
【0032】
ベースプレート50は、静電チャック100の温度調整を行う役目も果たす。例えば、静電チャック100を冷却する場合には、入力路51からヘリウムガスなどの冷却媒体を流入し、連通路55を通過させ、出力路52から流出させる。これにより、冷却媒体によってベースプレート50の熱を吸収し、その上に取り付けられたセラミック誘電体基板10を冷却することができる。一方、静電チャック100を保温する場合には、連通路55内に保温媒体を入れることも可能である。セラミック誘電体基板10やベースプレート50に発熱体を内蔵させることも可能である。ベースプレート50やセラミック誘電体基板10の温度を調整することで、静電チャック100によって吸着保持される対象物Wの温度を調整することができる。
【0033】
この例では、セラミック誘電体基板10の第1主面10a側に、溝14が設けられている。溝14は、第1主面10aから第2主面10bに向かう方向(Z軸方向)に窪み、X-Y平面内において連続して延びている。溝14が設けられていない部分を凸部13とすると、対象物Wは、凸部13に載置される。第1主面10aは、対象物Wの裏面と接する面である。すなわち、第1主面10aは、凸部13の上面を含む平面である。静電チャック100に載置された対象物Wの裏面と溝14との間に空間が形成される。
【0034】
セラミック誘電体基板10は、溝14と接続された貫通孔15を有する。貫通孔15は、第2主面10bから第1主面10aにかけて設けられる。すなわち、貫通孔15は、第2主面10bから第1主面10aまでZ軸方向に延び、セラミック誘電体基板10を貫通する。
【0035】
凸部13の高さ(溝14の深さ)、凸部13及び溝14の面積比率、形状等を適宜選択することで、対象物Wの温度や対象物Wに付着するパーティクルを好ましい状態にコントロールすることができる。
【0036】
ベースプレート50には、ガス導入路53が設けられる。ガス導入路53は、例えば、ベースプレート50を貫通するように設けられる。ガス導入路53は、ベースプレート50を貫通せず、他のガス導入路53の途中から分岐してセラミック誘電体基板10側まで設けられていてもよい。また、ガス導入路53は、ベースプレート50の複数箇所に設けられてもよい。
【0037】
ガス導入路53は、貫通孔15と連通する。すなわち、ガス導入路53に流入した伝達ガス(ヘリウム(He)等)は、ガス導入路53を通過した後に、貫通孔15に流入する。
【0038】
貫通孔15に流入した伝達ガスは、貫通孔15を通過した後に、対象物Wと溝14との間に設けられた空間に流入する。これにより、対象物Wを伝達ガスによって直接冷却することができる。
【0039】
図2は、実施形態に係る静電チャックの一部を拡大して模式的に表す断面図である。
図3(a)及び図3(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の一例を模式的に表す平面図及び断面図である。
図4(a)及び図4(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の別の一例を模式的に表す平面図及び断面図である。
図5(a)及び図5(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の別の一例を模式的に表す平面図及び断面図である。
図2は、図1に示す領域R1を拡大して示す。
図3(b)は、図3(a)に示したA1-A2線による断面図である。図4(b)は、図4(a)に示したB1-B2線による断面図である。図5(b)は、図5(a)に示したC1-C2線による断面図である。
なお、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)、及び図5(b)においては、ガス導入路53及び接続部20を挿通させる孔部を省略している。
【0040】
図2図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)、及び図5(b)に表したように、第1電極層11は、第1部分111と、第2部分112と、を有する。第1部分111は、Z軸方向に垂直な平面(X-Y平面)に投影したときに、第1電極層11の中央側に位置する。第2部分112は、Z軸方向に垂直な平面に投影したときに、第1部分111よりも第1電極層11の外周側に位置する。換言すれば、第1部分111は、X-Y平面において内側に位置し、第2部分112は、X-Y平面において外側に位置する。第1部分111は、例えば、Z軸方向に垂直な平面に投影したときの静電チャック100の中心と重なる位置に設けられる。
【0041】
第1部分111は、第1面111aと、第2面111bと、を有する。第1面111aは、第1主面10a側の面である。第2面111bは、第1面111aとは反対側の面である。第1面111aは、換言すれば、第2電極層12と対向する面である。第2面111bは、換言すれば、第2主面10b側の面である。この例では、第1面111aと第2面111bとは、平行である。また、第1面111a及び第2面111bは、それぞれ、第1主面10aに対して平行である。
【0042】
本願明細書において、2つの面が平行な状態は、例えば面のうねりなどを含むことができる。例えば、静電チャック100の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で低倍率(例えば100倍程度)で観察したときに、2つの面の間の距離が概ね一定であれば「平行」とみなすことができる。
【0043】
第2部分112は、第3面112aと、第4面112bと、を有する。第3面112aは、第1主面10a側の面である。第4面112bは、第3面112aとは反対側の面である。第3面112aは、換言すれば、第2電極層12と対向する面である。第4面112bは、換言すれば、第2主面10b側の面である。
【0044】
第2部分112は、中央部112cと、端部112dと、を有する。第2部分112の端部(end portion)112dは、第2部分112のX-Y平面における縁部(edge)112eを含む領域である。第2部分112の縁部112eとは、第3面112aまたは第4面112bに位置し、Z軸方向からみたときの第2部分112とセラミック誘電体基板10との界面を指す。第2部分112の中央部112cは、X-Y平面において、2つの端部112dの間に位置する領域である。
【0045】
第3面112aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D23は、一定である。より具体的には、第2部分112の中央部112cにおける第3面112aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D23cは、第2部分112の端部112dにおける第3面112aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D23dと同じである。つまり、この例では、第3面112aは、第1主面10aに対して平行である。
【0046】
ここで、「一定」とは、例えば第3面112aのうねりなどを含むことができる。例えば、静電チャック100の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で低倍率(例えば100倍程度)で観察したときに、距離が概ね一定であればよい。距離D23cと距離D23dとの差は、例えば、0±150μmである。
【0047】
また、図2に表したように、第2部分112の断面形状は、下に凸である。より具体的には、第2部分112の端部112dにおける第3面112aと第4面112bとの間のZ軸方向に沿う距離D22dは、第2部分112の中央部112cにおける第3面112aと第4面112bとの間のZ軸方向に沿う距離D22cよりも小さい。距離D22cは、換言すれば、中央部112cにおける第2部分112の厚さである。距離D22dは、換言すれば、端部112dにおける第2部分112の厚さである。つまり、端部112dにおける第2部分112の厚さは、中央部112cにおける第2部分112の厚さよりも小さい。例えば、端部112dにおいて、第2部分112の厚さは、中央部112c側から縁部112eに向かうにつれて小さくなる。第2部分112は、第4面112b側に凸の形状である。
【0048】
距離D22c及び距離D22dは、例えば、第2部分112の断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像から求めることができる。距離D22cは、例えば、中央部112cにおける3点の厚さの平均値として求めることができる。本願明細書においては、この平均値を距離D22cと定義する。
【0049】
第3面112aは、Z軸方向において、第1面111aと第2電極層12との間に位置する。つまり、第1部分111(第1面111a)と第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離は、第2部分112(第3面112a)と第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離よりも大きい。したがって、第1部分111(第1面111a)と上部電極との間の距離は、第2部分112(第3面112a)と上部電極との間の距離よりも大きい。
【0050】
これにより、第1電極層11の外周部分(第2部分112)に比べて電界強度が強くなりやすい第1電極層11の中央付近(第1部分111)の電界強度を弱くすることができる。換言すれば、第1電極層11の中央付近(第1部分111)に比べてプラズマ密度が疎になりやすい第1電極層11の外周部分(第2部分112)のプラズマ密度を高めることができる。したがって、プラズマ制御性を高め、第1電極層11におけるプラズマ密度の面内均一性を高めることができる。
【0051】
さらに、実施形態においては、第3面112bと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D21を一定にし、かつ、第2部分112の端部112dにおける第3面112aと第4面112bとの間のZ軸方向に沿う距離D22dを第2部分112の中央部112cにおける第3面112aと第4面112bとの間のZ軸方向に沿う距離D22cよりも小さくすることで、第2部分112において電界を集中させることができる。これにより、第1部分111に比べてプラズマ密度が疎になりやすい第2部分112のプラズマ密度を高めることができる。したがって、第1電極層11におけるプラズマ密度の面内均一性を高めることができる。
【0052】
第1電極層11には、第2主面10b側の面(例えば、第2面111bや第4面112bなど)から高周波電流が給電される。
【0053】
図3(a)、図4(a)、及び図5(a)に表したように、第1部分111は、単極型でも双極型でもよい。第1部分111が単極型の場合、図3(a)及び図4(a)に表したように、X-Y平面に沿って拡がる1つの第1部分111が設けられる。第1部分111は、例えば、Z軸方向に沿って見たときに略円形である。一方、第1部分111が双極型の場合、図5(a)に表したように、X-Y平面に沿って拡がり、同一平面状に位置する2つの第1部分111が設けられる。2つの第1部分111は、それぞれ、例えば、Z軸方向に沿って見たときに略半円形である。
【0054】
また、図3(a)、図3(b)、図4(a)、図4(b)、図5(a)、及び図5(b)に表したように、第2部分112は、例えば、Z軸方向に沿って見たときに第1部分111を囲む環状である。これらの例では、第2部分112の一部は、Z軸方向において、第1部分111と重なっている。また、これらの例では、第2部分112は、X軸方向またはY軸方向において、第1部分111と重なっていない。また、これらの例では、第2部分112は、第1部分111と電気的に接続されている。また、これらの例では、第2部分112は、第1部分111と直接的に接続されている。換言すれば、第2部分112は、第1部分111と接触している。第1部分111及び第2部分112の配置は、これらに限定されない。第1部分111及び第2部分112の配置の別の例については、後述する。
【0055】
また、図4(a)及び図4(b)に表したように、第1電極層11は、Z軸方向に垂直な平面に投影したときに、第2部分112よりも第1電極層11の外周側に位置する部分を1つ以上有していてもよい。この例では、第1電極層11は、第3部分113をさらに有している。第3部分113は、Z軸方向に垂直な平面に投影したときに、第2部分112よりも第1電極層11の外周側に位置する。第3部分113は、Z軸方向に沿って見たときに第2部分112を囲む環状である。第3部分113の断面形状は、例えば、第2部分112の断面形状と同じである。
【0056】
第3部分113は、第5面113aと、第6面113bと、を有する。第5面113aは、第1主面10a側の面である。第6面113bは、第5面113aとは反対側の面である。第5面112aは、換言すれば、第2電極層12と対向する面である。第6面113bは、換言すれば、第2主面10b側の面である。この例では、第5面113aは、第1主面10aに対して平行である。第5面113aは、Z軸方向において、第3面112aと第2電極層12との間に位置している。
【0057】
図6(a)~図6(e)は、実施形態に係る静電チャックの第1部分及び第2部分の配置の例を表す断面図である。
上述のように、第1部分111及び第2部分112は、第2部分112の第3面112aがZ軸方向において第1部分111の第1面111aと第2電極層12との間に位置するように配置されていればよく、第1部分111及び第2部分112の配置は適宜変更可能である。
【0058】
図6(a)~図6(c)に表したように、第2部分112の一部は、Z軸方向において、第1部分111と重なっていてもよい。図6(d)及び図6(e)に表したように、第2部分112は、Z軸方向において、第1部分111と重ならなくてもよい。
【0059】
また、図6(b)及び図6(e)に表したように、第2部分112の一部は、X軸方向またはY軸方向において、第1部分111と重なっていてもよい。図6(a)、図6(c)、及び図6(d)に表したように、第2部分112は、X軸方向またはY軸方向において、第1部分111と重ならなくてもよい。
【0060】
また、図6(a)、及び図6(b)に表したように、第2部分112は、第1部分111と電気的に接続されていてもよい。この場合、第1部分111と第2部分112との電気的な接続は、図6(b)に表したように、直接的な接続であってもよいし、図6(a)に表したように、間接的な接続であってもよい。換言すれば、第1部分111と第2部分112とは、導体からなる接続部材を介して電気的に接続されていてもよい。第1部分111と第2部分112とを電気的に接続することで、第1部分111及び第2部分112を一括で制御することができる。
【0061】
また、図6(c)、図6(d)、及び図6(e)に表したように、第2部分112は、第1部分111と電気的に接続されなくてもよい。第1部分111と第2部分112とを電気的に接続しないことで、第1部分111及び第2部分112を別々に制御することができる。
【0062】
また、図6(a)~図6(e)の例では、第4面112bは、Z軸方向において、第3面112aと第2面111bとの間に位置している。第4面112bは、例えば、第2面111bと同一平面上に位置していてもよい。また、第2面111bは、例えば、Z軸方向において、第3面112aと第4面112bとの間に位置していてもよい。
【0063】
また、図6(a)~図6(e)の例では、第3面112aと第4面112bとの間のZ軸方向に沿う距離(第2部分112の厚さ)は、第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離(第1部分111の厚さ)と同じである。第2部分112の厚さは、第1部分111の厚さよりも大きくてもよいし、第1部分111の厚さよりも小さくてもよい。
【0064】
図7(a)及び図7(b)は、実施形態に係る静電チャックの第2部分の例を模式的に表す断面図である。
図7(a)及び図7(b)に表したように、第2部分112の断面形状は、図2に表したものに限定されない。図2の例では、中央部112cにおいて、第2部分112の厚さは、一定である。換言すれば、中央部112cにおいて、第4面112bは、第3面112aに対して、平行である。一方、端部112dにおいて、第2部分112の厚さは、中央部112c側から縁部112eに向かって小さくなる。換言すれば、端部112dにおいて、第4面112bは、中央部112c側から縁部112eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有する。図2の例では、傾斜面は、平面状である。傾斜面は、図7(a)に表したように、曲面状であってもよい。
【0065】
また、図7(b)に表したように、第4面112bは、第4面112bのX-Y平面における中心から縁部112eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有していてもよい。換言すれば、中央部112cにおいて、第2部分112の厚さは、一定でなくてもよい。つまり、中央部112cにおいて、第4面112bは、第3面112aに対して、平行でなくてもよい。また、このとき、傾斜面は、図7(b)に表したように、曲面状であってもよい。
【0066】
図8(a)及び図8(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1電極層の例を模式的に表す断面図である。
図9(a)、図9(b)、図10(a)、及び図10(b)は、実施形態に係る静電チャックの第1部分の例を模式的に表す断面図である。
図8(a)及び図8(b)に表したように、第1部分111は、例えば、中央部111cと、端部111dと、を有する。第1部分111の端部(end portion)111dは、第1部分111のX-Y平面における縁部(edge)111eを含む領域である。第1部分111の縁部111eとは、第1面111aまたは第2面111bに位置し、Z軸方向からみたときの第1部分111とセラミック誘電体基板10との界面を指す。第1部分111の中央部111cは、X-Y平面において、2つの端部111dの間に位置する領域である。
【0067】
図8(a)に表した例では、第2面111bと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D11は、一定である。より具体的には、第1部分111の中央部111cにおける第2面111bと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D11cは、第1部分111の端部111dにおける第2面111bと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D11dと同じである。つまり、この例では、第2面111bは、第1主面10aに対して平行である。
【0068】
ここで、「一定」とは、例えば第2面111bのうねりなどを含むことができる。例えば、静電チャック100の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で低倍率(例えば100倍程度)で観察したときに、距離が概ね一定であればよい。距離D11cと距離D11dとの差は、例えば、0±150μmである。
【0069】
一方、図8(a)に表したように、この例では、第1面111aは、第1主面10aに対して平行ではない。この例では、第1部分111の断面形状は、上に凸である。より具体的には、第1部分111の端部111dにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12dは、例えば、第1部分111の中央部111cにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12cよりも小さい。距離D12cは、換言すれば、中央部111cにおける第1部分111の厚さである。距離D12dは、換言すれば、端部111dにおける第1部分111の厚さである。つまり、端部111dにおける第1部分111の厚さは、中央部111cにおける第1部分111の厚さよりも小さい。第1部分111は、第1面111a側に凸の形状である。
【0070】
距離D12c及び距離D12dは、例えば、第1部分111の断面SEM(Scanning Electron Microscope)画像から求めることができる。距離D12cは、例えば、中央部111cにおける3点の厚さの平均値として求めることができる。本願明細書においては、この平均値を距離D12cと定義する。
【0071】
このように、第2面111bと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D11を一定にし、かつ、第1部分111の端部111dにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12dを第1部分111の中央部111cにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12cよりも小さくすることで、第1部分111の端部111dにおいて電界集中が生じることを抑制できる。これにより、第1電極層11において、電界集中による絶縁破壊が生じることをさらに抑制できる。
【0072】
なお、第2部分112の断面形状は、図8(a)に表したものに限定されない。図8(a)の例では、中央部111cにおいて、第1部分111の厚さは、一定である。換言すれば、中央部111cにおいて、第1面111aは、第2面111bに対して、平行である。一方、端部111dにおいて、第1部分111の厚さは、中央部111c側から縁部111eに向かって小さくなる。換言すれば、端部111dにおいて、第1面111aは、中央部111c側から縁部111eに向かって下方に傾斜する傾斜面を有する。図8(a)の例では、傾斜面は、平面状である。傾斜面は、図9(a)に表したように、曲面状であってもよい。
【0073】
また、図9(b)に表したように、第1面111aは、第1面111aのX-Y平面における中心から縁部111eに向かって下方に傾斜する傾斜面を有していてもよい。換言すれば、中央部111cにおいて、第1部分111の厚さは、一定でなくてもよい。つまり、中央部111cにおいて、第1面111aは、第2面111bに対して、平行でなくてもよい。また、このとき、傾斜面は、図9(b)に表したように、曲面状であってもよい。
【0074】
図8(b)に表した例では、第1面111aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D13は、一定である。より具体的には、第1部分111の中央部111cにおける第1面111aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D13cは、第1部分111の端部111dにおける第1面111aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D13dと同じである。つまり、この例では、第1面111aは、第1主面10aに対して平行である。
【0075】
ここで、「一定」とは、例えば第1面111aのうねりなどを含むことができる。例えば、静電チャック100の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)等で低倍率(例えば100倍程度)で観察したときに、距離が概ね一定であればよい。距離D13cと距離D13dとの差は、例えば、0±150μmである。
【0076】
一方、図8(b)に表したように、この例では、第2面111bは、第1主面10aに対して平行ではない。この例では、第1部分111の断面形状は、下に凸である。より具体的には、第1部分111の端部111dにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12d(すなわち、端部111dにおける第1部分111の厚さ)は、第1部分111の中央部111cにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12c(すなわち、中央部111cにおける第1部分111の厚さ)よりも小さい。第1部分111は、第2面111b側に凸の形状である。
【0077】
このように、第1面111aと第1主面10aとの間のZ軸方向に沿う距離D13を一定にし、かつ、第1部分111の端部111dにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12dを第1部分111の中央部111cにおける第1面111aと第2面111bとの間のZ軸方向に沿う距離D12cよりも小さくすることで、冷却機能を有するベースプレート50側に位置する第1部分111の第2面111bの表面積を相対的に大きくすることができる。これにより、第1電極層11をより効果的に放熱させることができ、プラズマ密度の面内均一性をより高めることができる。また、第2面111bから第1面111aまでの給電距離を短くすることができる。これにより、RF出力の変更などの制御に対する応答性(RF応答性)を高めることができる。
【0078】
なお、第2部分112の断面形状は、図8(b)に表したものに限定されない。図8(b)の例では、中央部111cにおいて、第1部分111の厚さは、一定である。換言すれば、中央部111cにおいて、第2面111bは、第1面111aに対して、平行である。一方、端部111dにおいて、第1部分111の厚さは、中央部111c側から縁部111eに向かって小さくなる。換言すれば、端部111dにおいて、第2面111bは、中央部111c側から縁部111eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有する。図8(b)の例では、傾斜面は、平面状である。傾斜面は、図10(a)に表したように、曲面状であってもよい。
【0079】
また、図10(b)に表したように、第2面111bは、第2面111bのX-Y平面における中心から縁部111eに向かって上方に傾斜する傾斜面を有していてもよい。換言すれば、中央部111cにおいて、第1部分111の厚さは、一定でなくてもよい。つまり、中央部111cにおいて、第2面111bは、第1面111aに対して、平行でなくてもよい。また、このとき、傾斜面は、図10(b)に表したように、曲面状であってもよい。
【0080】
以下、第1電極層11及び第2電極層12が内部に設けられたセラミック誘電体基板10の作製方法について説明する。
【0081】
第1電極層11及び第2電極層12が内部に設けられたセラミック誘電体基板10は、例えば、セラミック誘電体基板10の中に第1電極層11及び第2電極層12がある状態で一体焼結して作成してもよい。
【0082】
第1電極層11(第1部分111及び第2部分112)は、例えば、スクリーン印刷、ペーストの塗布(スピンコート、コーター、インクジェット、ディスペンサーなど)及び蒸着などにより形成される。例えば、第1主面10aを下にした状態で、複数回に分けて各層を積層させて第1電極層11を形成することができる。このとき、例えば積層範囲の調整などにより、端部112dにおける第3面112aと第4面112bとの間の距離D22dと、中央部112cにおける第3面112aと第4面112bとの間の距離D22cとの関係がD22d<D22cを満たすようにすることができる。
【0083】
図11は、実施形態に係る静電チャックを備えたウェーハ処理装置を模式的に表す断面図である。
図11に表したように、ウェーハ処理装置500は、処理容器501と、高周波電源504と、吸着用電源505と、上部電極510と、静電チャック100と、を備えている。処理容器501の天井には、処理ガスを内部に導入するための処理ガス導入口502、及び、上部電極510が設けられている。処理容器501の底板には、内部を減圧排気するための排気口503が設けられている。静電チャック100は、処理容器501の内部において、上部電極510の下に配置されている。静電チャック100の第1電極層11及び上部電極510は、高周波電源504と接続されている。静電チャック100の第2電極層12は、吸着用電源505と接続されている。
【0084】
第1電極層11の第1部分111と上部電極510とは、互いに所定の間隔を隔てて略平行に設けられている。より具体的には、第1部分111の第1面111aは、上部電極510の下面510aに対して略平行である。また、セラミック誘電体基板10の第1主面10aは、上部電極510の下面510aに対して略平行である。対象物Wは、第1電極層11と上部電極510との間に位置する第1主面10aに載置される。
【0085】
高周波電源504から第1電極層11及び上部電極510に電圧(高周波電圧)が印加されると、高周波放電が起こり処理容器501内に導入された処理ガスがプラズマにより励起、活性化されて、対象物Wが処理される。
【0086】
吸着用電源505から第2電極層12に電圧(吸着用電圧)が印加されると、第2電極層12の第1主面10a側に電荷が発生し、静電力によって対象物Wが静電チャック100に吸着保持される。
【0087】
以上、説明したように、実施形態によれば、プラズマ密度の面内均一性を高めることができる静電チャックを提供することができる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、静電チャックが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0089】
10 セラミック誘電体基板、 10a 第1主面、 10b 第2主面、 11 第1電極層、 12 第2電極層、 13 凸部、 14 溝、 15 貫通孔、 20 接続部、 50 ベースプレート、 50a 上部、 50b 下部、 51 入力路、 52 出力路、 53 ガス導入路、 55 連通路、 60 接着部材、 100 静電チャック、 111 第1部分、 111a、111b 第1、第2面、 112 第2部分、 112a、112b 第3、第4面、 113 第3部分、 113a、113b 第5、第6面、 500 ウェーハ処理装置、 501 処理容器、 502 処理ガス導入口、 503 排気口、 504 高周波電源、 505 吸着用電源、 510 上部電極、 510a 下面、 R1 領域、 W 対象物
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