(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】連続式熱処理炉の抽出システムおよびワーク抽出方法
(51)【国際特許分類】
F27B 9/40 20060101AFI20231024BHJP
F27B 9/39 20060101ALI20231024BHJP
F27D 21/00 20060101ALI20231024BHJP
F27D 3/06 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F27B9/40
F27B9/39
F27D21/00 A
F27D3/06 B
(21)【出願番号】P 2019166632
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】森 雅史
(72)【発明者】
【氏名】小塚 俊之
【審査官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-292008(JP,A)
【文献】特開2009-074776(JP,A)
【文献】特開2005-227159(JP,A)
【文献】特開2006-234760(JP,A)
【文献】特開2017-109280(JP,A)
【文献】特開平09-229637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00- 9/40
F27D 3/00- 5/00
F27D 17/00-99/00
G01B 11/00-11/30
B65G 47/00-47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続式熱処理炉のコンベア上に、搬送方向に平行な複数の列となるよう並べられたワークを抽出するための抽出システムであって、
炉体の外部且つ搬送方向下流側で、前記ワークの各列と対向する位置に設けられ、各列の先頭に位置する前記ワークに向けてレーザ光を照射し、前記先頭のワークまでの距離を検出する検出手段と、
可動アームの先端に把持部を有し、前記検出手段から送出された各列の距離情報を利用して前記コンベア上の前記ワークを把持し炉外に抽出する抽出ロボットと、
を備えていることを特徴とする連続式熱処理炉の抽出システム。
【請求項2】
前記ワークを炉外に抽出する際に前記可動アームを挿通させる、炉壁に形成された抽出開口を利用して前記レーザ光を炉内に照射させるとともに、
前記レーザ光が、前記抽出開口の可動アーム挿通領
域よりも下側の領域を通過するように、前記検出手段が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の連続式熱処理炉の抽出システム。
【請求項3】
前記レーザ光を通過させる貫通孔を備えた遮熱板が前記検出手段と前記ワークとの間に設けられ、前記貫通孔の内面に黒色の加工が施されていることを特徴とする請求項1,2の何れかに記載の連続式熱処理炉の抽出システム。
【請求項4】
前記検出手段の、前記遮熱板が設けられた前方以外の三方を覆うフードが設けられ、該フード内の空間に高圧エアを供給するエア供給路が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の連続式熱処理炉の抽出システム。
【請求項5】
前記ワークに向けて照射される前記レーザ光の焦点位置が、前記遮熱板と前記ワークとの間の位置に設定されていることを特徴とする請求項3,4の何れかに記載の連続式熱処理炉の抽出システム。
【請求項6】
連続式熱処理炉のコンベア上に、搬送方向に平行な複数の列となるよう並べられたワークを抽出する方法であって、
炉体の外部且つ搬送方向下流側で、前記ワークの各列と対向する位置に設けられた検出手段と、可動アームの先端に把持部を有し、前記コンベア上の前記ワークを把持し炉外に抽出する抽出ロボットと、を備え、
各列の先頭に位置する前記ワークに向けて前記検出手段からレーザ光を照射し、前記先頭のワークまでの距離を検出するステップと、
前記検出手段から送出された各列の距離情報を利用して前記コンベアの抽出側端部から最短距離にある列を抽出対象列として特定するステップと、
前記抽出ロボットにより前記抽出対象列の先頭に位置するワークを把持し炉外に抽出するステップと、
を有することを特徴とするワーク抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炉内にワークを搬送するコンベアを備えた連続式熱処理炉において、ワークを炉外に抽出するための抽出システムおよびこれを用いたワークの抽出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、炉内にワークを搬送するコンベアを備えた連続式熱処理炉では、コンベア上に複数列となるようワークを並べて熱処理する場合がある。このような場合のワークの抽出装置として、ワークの各列に対応した検出棒を炉天井部から炉内に垂下させたものが知られている(下記特許文献1参照)。この引用文献1に記載のものは、コンベアによって搬送されたワークが検出棒の下端部に当り、検出棒を揺動させることでワークが検知される。ワークが検知された場合、検出棒を上昇させてワークの抽出経路を確保し、その後、ロボットアームを用いてワークを把持し炉外に抽出する。
【0003】
しかしながら引用文献1に記載のものは、検出棒とワークが高温環境下で繰り返し接触するため、経時的に検出棒に曲がりが生じて、ワークのミスグリップに繋がる虞があった。また、ワーク検出後にロボットアームがワークを把持するためには、検出棒の上昇が完了して抽出経路が確保されるのを待たなければならず、抽出作業の生産性を高めることが難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情を背景とし、コンベア上に複数の列となるよう並べられたワークを非接触で検出し得て、連続式熱処理炉における抽出作業の生産性を高めることが可能な抽出システムおよびワーク抽出方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而して本発明の抽出システムは、連続式熱処理炉のコンベア上に、搬送方向に平行な複数の列となるよう並べられたワークを抽出するための抽出システムであって、
炉体の外部且つ搬送方向下流側で、前記ワークの各列と対向する位置に設けられ、各列の先頭に位置する前記ワークに向けてレーザ光を照射し、前記先頭のワークまでの距離を検出する検出手段と、
可動アームの先端に把持部を有し、前記検出手段から送出された各列の距離情報を利用して前記コンベア上の前記ワークを把持し炉外に抽出する抽出ロボットと、
を備えていることを特徴とする。
【0007】
このように構成された本発明の抽出システムによれば、コンベア上に複数の列並べられたワークを非接触で検出し各列ごとの距離情報を取得できるため、ワークに接触させる従来の検出棒は不要となり、検出棒に起因するワークのミスグリップや検出棒の上昇が完了するまでの抽出待ちの問題が解消され、抽出作業の生産性を高めることができる。
【0008】
また、本発明では、前記ワークを炉外に抽出する際に前記可動アームを挿通させる、炉壁に形成された抽出開口を利用して、前記レーザ光を炉内に照射させるように、前記検出手段を配置することができる。この場合に、前記レーザ光が前記抽出開口の可動アーム挿通領域よりも下側の領域を通過するように、前記検出手段を配置することができる。
このようにすればレーザ光を挿通させるための開口を別途炉壁に設ける必要がなく、可動アームを挿通させる抽出開口との共用化を図ることができる。
【0009】
本発明の抽出システムでは、前記レーザ光を通過させる貫通孔を備えた遮熱板を、前記検出手段と前記ワークとの間に設けるとともに、前記貫通孔の内面に黒色の加工を施すことができる。
ワークと対向して配置される検出手段は、熱処理炉からの熱に晒されやすい。検出手段を保護するためには検出手段とワークとの間に遮熱板を設けることが有効である。この場合、遮熱板にはレーザ光を通過させる貫通孔を形成する必要があるが、貫通孔を通過するレーザ光の一部が貫通孔の内面で反射して迷光となり、迷光が検出手段にて受光され誤検出となる虞がある。このような問題を解決する手段として、貫通孔の内面に黒色の加工を施すことが有効である。迷光が黒色面にて吸収されやすくなり、検出手段における誤検出を抑制することができる。
【0010】
ここで本発明では、前記検出手段の、前記遮熱板が設けられた前方以外の3方を覆うフードを設け、該フード内の空間に高圧エアを供給するエア供給路を設けることができる。
検出手段が設けられているフード内の空間に高圧エアを供給することで、フード内への粉塵の進入を防止するとともに、検出手段が高温になるのを防止することができる。
【0011】
また本発明では、前記ワークに向けて照射される前記レーザ光の焦点位置を、前記遮熱板と前記ワークとの間の位置に設定することができる。
ワークに当るレーザ光の径が過度に小さいとレーザ光が当たった部分のワーク形状により距離の検出にばらつきが生じやすい。このためレーザ光の焦点位置をワークよりも手前に設けて、ワークに当るレーザ光の径をある程度広げることが望ましい。一方、焦点位置を過度に検出手段に近づけた場合には、遮熱板での迷光が生じやすくなる。このため、レーザ光の焦点位置は、遮熱板とワークとの間に設定することが望ましい。
【0012】
本発明のワーク抽出方法は、連続式熱処理炉のコンベア上に、搬送方向に平行な複数の列となるよう並べられたワークを抽出する方法であって、
炉体の外部且つ搬送方向下流側で、前記ワークの各列と対向する位置に設けられた検出手段と、可動アームの先端に把持部を有し、前記コンベア上の前記ワークを把持し炉外に抽出する抽出ロボットと、を備え、
各列の先頭に位置する前記ワークに向けて前記検出手段からレーザ光を照射し、前記先頭のワークまでの距離を検出するステップと、
前記検出手段から送出された各列の距離情報を利用して前記コンベアの抽出側端部から最短距離にある列を抽出対象列として特定するステップと、
前記抽出ロボットにより前記抽出対象列の先頭に位置するワークを把持し炉外に抽出するステップと、
を有することを特徴とする。
【0013】
このように構成されたワーク抽出方法によれば、上記抽出システムの発明と同様に、コンベア上に複数の列並べられたワークを非接触で検出し各列ごとの距離情報を取得できるため、ワークに接触させる従来の検出棒は不要となり、検出棒に起因するワークのミスグリップや検出棒の上昇が完了するまでの抽出待ちの問題が解消され、抽出作業の生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の抽出システムを備えた連続式熱処理炉の全体構成を示した図である。
【
図2】
図1の連続式熱処理炉の装入部のコンベア上にワークが配置された状態の一例を示した図である。
【
図3】
図1の連続式熱処理炉の抽出部およびその周辺部を示した平面視の図である。
【
図4】
図1の連続式熱処理炉の抽出部およびその周辺部を示した側面視の図である。
【
図5】
図4のレーザセンサおよびその周辺部を拡大して示した図である。
【
図6】ワークWに向けて照射されるレーザ光の焦点位置を模式的に示した図である。
【
図7】抽出システムの抽出動作についての説明図である。
【
図8】抽出システムの抽出動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態である抽出システムを備えた連続式熱処理炉の全体構成を示したものである。
図1において、10は連続式熱処理炉、Wは被処理物としてのリング状のワークである。連続式熱処理炉10の炉内は、装入部12と、熱処理部14と、抽出部16とに区画されており、熱処理部14には加熱用のヒータ15が配設されている。
また、炉内にはワークWを搬送するためのコンベア20が、装入部12と熱処理部14と抽出部16に亘って設けられている。コンベア20は、端部ローラ21,22および支持ローラ23を備えている。
【0016】
連続式熱処理炉10の装入側(搬送方向上流側)および抽出側(搬送方向下流側)の炉壁には、それぞれ装入開口17および抽出開口18が形成されている。装入開口17より装入されたワークWは、熱処理部14にて熱処理(例えば焼ならし)され、所定の熱処理が完了した後は抽出開口18より炉外に抽出される。
【0017】
炉体11の外部且つ搬送方向上流側には、装入手段としての装入ロボット30が配置されている。この装入ロボット30は、基部32と、そこから延びる可動アーム34を有している。可動アーム34は回転又は屈曲する複数の関節部を有し、可動アーム34の先端にはワークWを把持するための把持部36が取り付けられている。把持部36は拡径方向もしくは縮径方向に移動可能な複数の爪を有しており、縮径された状態の爪をワークWの孔内に挿入し、爪を広げてワークWの内周面に圧接させることでワークWを把持する。なお、ワークWを把持する方法はこれに限定されるものではなく、例えばワークWの外周面を爪で掴んで把持することも可能である。
【0018】
装入ロボット30は、炉外コンベア39にて供給されたワークWを把持し、装入開口17を通じて炉内(装入部12)の、所定速度で移動しているコンベア20上に載置する。本例では、
図2に示されているように、ワークWがコンベア20の幅方向9列(2A~2I)に並べられており、各列を構成するワークWは、コンベア20の搬送方向に平行な直線に沿って並べられている。コンベア20上に並べられたワークは、順次図中左方向に搬送され、熱処理部14にて熱処理され、図中左側の抽出部16へと移動する。
【0019】
図3、
図4に示すように、連続式熱処理炉10の抽出部16の側には、検出手段としての複数のレーザセンサ40と、抽出手段としての抽出ロボット60と、これらレーザセンサ40および抽出ロボット60に接続された制御部70が設けられている。本実施形態の抽出システム75は、これらレーザセンサ40、抽出ロボット60および制御部70を含んで構成されている。
【0020】
レーザセンサ40は、
図3、
図4に示すように、炉体11の外部且つ搬送方向下流側で、ワークWの各列2A~2Iと対向する位置に設けられている。
レーザセンサ40は、TOF(Time Of Flight)方式を用いて測定対象物であるワークWまでの距離を検出するもので、ワークWに対してレーザ光を間欠的に照射し、レーザ光が照射されてからワークWの表面で反射したレーザ光(反射光)が検出されるまでの時間に基づきワークWまでの距離を検出する。
レーザセンサ40は、内部に図示を省略するレーザ光を照射する投光部と、ワークWから反射して戻った戻り光(反射光)を受光する受光部と、ワークWまでの距離を計測し計測距離に対応した電気信号を出力する距離計測部と、を備えている。
【0021】
このように構成されたレーザセンサ40は、
図4に示すように、炉体11から分離・離間して設けられた専用の固定架台41に、ブラケット42を介して取付固定されている。専用の固定架台41を使用することでコンベア20の振動や、炉体熱膨張による影響を抑えることができる。なお、固定架台41は、
図3に示すように、搬送方向と直交する方向(炉幅方向)に延びる取付面41aを備えており、この取付面41a上に複数(本例では9個)のレーザセンサ40が並んで取り付けられている。
【0022】
レーザセンサ40は、取付面41a上にて、レーザ光がワークWに向けて水平方向に照射されるような高さに調整されている。
図4に示すように、レーザセンサ40の照射方向には抽出開口18が設けられており、レーザ光は抽出開口18を通じて炉内へと進行して目的のワークWの側面に到達する。そしてワークWの側面で反射したレーザ光は、抽出開口18を通じて炉外へと進行してレーザセンサ40の受光部に到達する。更に詳しくは、抽出開口18の上側の領域は後述する抽出ロボット60の可動アーム34により利用される可動アーム挿通領域であり、レーザ光は抽出開口18の可動アーム挿通領域よりも下側の領域を通過する。
【0023】
ここで、本例では抽出開口18の近傍位置に配置されているレーザセンサ40に、抽出開口18から外方に発せられる熱の影響が及ぶのを防止するため、
図5に示すように、レーザセンサ40の前方、レーザセンサ40とワークWとの間に、遮熱板44が設けられている。遮熱板44は金属薄板44aと断熱材44bとで構成されており、下向きに延出させた金属薄板44aの下端部が、固定架台41から水平方向に延び出した棒状部材46にて支持固定されている。
【0024】
加えて、レーザセンサ40の上方および後方(遮熱板44とは反対の側)には、断面略L字状のカバー48が設けられ、カバー48および固定架台41の上部により、遮熱板44が存在しないレーザセンサ40の三方(上方、後方および下方)を覆うフードが形成されている。そして、固定架台41の上部には、図示を省略する高圧エア源と接続されたエア供給路43を形成する管体が取り付けられており、エア供給路43の先端43aからフード内の空間に高圧エアを供給することで、レーザセンサ40の粉塵対策および熱対策を図っている。
【0025】
なお
図5の部分拡大図で示すように、遮熱板44にはレーザ光を通過させるための貫通孔45が形成されており、その内面には黒色の加工が施されている。黒色の加工は、例えば貫通孔45の内面に黒色の塗料を塗付することによって実現できる。貫通孔45の内面に黒色の加工を施すことで、迷光が黒色面にて吸収されやすくなり、レーザセンサ40における誤検出を抑制することができる。本例では、部分拡大図中点線で示すように、遮熱板44の貫通孔45の内面、および、レーザセンサ40の投受光面と対向する面、に黒色の加工が施されている。
【0026】
また本例では、
図6の模式図に示すように、ワークWに向けて照射されるレーザ光の焦点位置51を、遮熱板44とワークWとの間の位置に設定している。レーザ光の焦点位置とは、換言すればレーザ光の光束径が最も小さい位置である。
ワークWに当るレーザ光の径が過度に小さいとレーザ光が当った部分のワーク形状により距離の検出にばらつきが生じやすい。このためレーザ光の焦点位置51をワークWよりも手前に設けて、ワークWに当るレーザ光の径をある程度広げることが望ましい。一方、焦点位置を過度にレーザセンサ40に近づけた場合には、遮熱板44で迷光が生じやすくなる。このため本例では、レーザ光の焦点位置51を、遮熱板44とワークWとの間の位置に設定している。
【0027】
次に、制御部70(
図4参照)は、レーザセンサ40および抽出ロボット60と接続されている。制御部70はレーザセンサ40から送られてきた各列ごとの距離情報を記憶し、その中から最短距離(コンベア20の抽出側端部20aから最短距離)にある列を抽出対象列として特定し、その列番号およびその距離情報を抽出ロボット60に送信する。制御部70は、CPU、RAM、ROM、記憶部等を備えるコンピュータにより構成することができる。また、制御部70は抽出ロボット60の制御部の一部として構成することも可能である。
【0028】
抽出ロボット60は、コンベア20上のワークWを把持して炉外に抽出する。抽出ロボット60の基本的な構成は、装入ロボット30と同じである。装入ロボット30の構成と共通する構成については同じ符号を用いて示すとともに、その説明を省略する。抽出ロボット60は、制御部70から送られてきた抽出対象列の列番号およびその距離情報と、コンベア速度の情報を利用して、抽出対象列のワークWが予定抽出地点に到達するタイミングに合わせて、可動アーム34先端の把持部36を、抽出開口18より炉内に挿入し、爪を広げてワークWを把持し、炉外に(詳しくは
図1で示す炉外テーブル65上に)抽出する。
【0029】
次に、
図7、
図8を用いて一連の抽出動作について説明する。ここでは
図7(A)に示すように、9列すべてのワークWが熱処理完了ラインP1に達しており、レーザセンサ40により検出可能である場合を例に以下の説明を行っている。
まず、
図7(A)に示すように、各列2A~2Iに対応して配置されたレーザセンサ40が、間欠的にレーザ光を照射し、接近するワークWに対する検出動作を実行する(ステップS001)。レーザセンサ40にて検出された各列の距離情報は制御部70に送信され、制御部70の記憶部に記憶される(ステップS002)。
【0030】
次に、制御部70は記憶された各列の距離情報を比較して、コンベア20の抽出側端部20aから最短距離の列(ここでは2A)を抽出対象列として特定する(ステップS003)。そして、制御部70は、抽出対象列の情報として列番号(ここでは2A)とその距離情報を抽出ロボット60に送信する(ステップS004)。
【0031】
抽出ロボット60は、制御部70から送られてきた列の番号およびその距離情報と、コンベア速度の情報を利用して、把持部36と抽出対象列2Aの先頭のワークWとの相対位置関係を認識する。そして抽出ロボット60は、この相対位置関係に基づいて、
図7(B)に示すように、抽出対象列2Aの先頭のワークWが予定抽出地点P2に到達するタイミングで、ワークWを把持し炉外に抽出する動作を実行する(ステップS005)。
【0032】
抽出対象列2AのワークWを炉外に抽出する動作完了の後(
図7(C)参照)、ステップS001~S005までを繰り返し実施することで、2B列から2I列に位置するワークWも順次炉外に抽出される。
【0033】
なお、抽出するワークWおよびその周辺雰囲気は高温である(ワークWの温度として700℃を例示することができる)。本発明者の調査によれば、高温雰囲気下において距離検出が行われると、測定値が実際の距離よりも大きくなる傾向が認められる場合がある。このような場合には、光路上の雰囲気温度や高温雰囲気を通過する光路長に応じて、測定値に所定の補正を加えたものを実際の距離として取り扱うことが望ましい。
【0034】
以上のように本実施形態の抽出システム75によれば、コンベア20上に複数の列並べられたワークWを非接触で検出し、各列2A~2Iの距離情報を取得できるため、ワークWに接触させる従来の検出棒は不要となり、検出棒に起因するワークのミスグリップや検出棒の上昇が完了するまでの抽出待ちの問題が解消され、抽出作業の生産性を高めることができる。
【0035】
本実施形態の抽出システム75では、レーザ光が、抽出開口18における可動アーム挿通領域によりも下側の領域を通過するように、レーザセンサ40を配置しているため、レーザ光を挿通させるための開口を別途炉壁に設ける必要がなく、可動アーム34を挿通させる抽出開口18との共用化を図ることができる。
【0036】
本実施形態の抽出システム75では、レーザ光を通過させる貫通孔45を備えた遮熱板44をレーザセンサ40とワークWとの間に設けるとともに、貫通孔45の内面に黒色の加工を施している。このようにすることで、レーザセンサ40が熱処理炉からの熱に晒されるのを防止するとともに、貫通孔45の内面に形成された黒色面により迷光が吸収されやすくなり、レーザセンサ40における誤検出を抑制することができる。
【0037】
本実施形態の抽出システム75では、レーザセンサ40の、遮熱板44が設けられた前方以外の三方を覆うフードを設けるとともに、このフード内の空間に高圧エアを供給するエア供給路43を設けている。レーザセンサ40が設けられているフード内の空間に高圧エアを供給することで、フード内への粉塵の進入を防止するとともに、レーザセンサ40が高温になるのを防止することができる。
【0038】
また本実施形態の抽出システムでは、ワークWに向けて照射されるレーザ光の焦点位置51を遮熱板44とワークWとの間の位置に設定することで、距離の検出時のばらつきを抑えることができる。
【0039】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。例えばワークはリング形状以外の形状を採用することも可能であり、ロボットの把持機構はワークの形状に適したものを適宜採用することができる。また上記実施形態で例示した抽出動作は一例であり、ワークまでの距離を検出する頻度やタイミングは適宜変更可能である。また上記実施形態は単一の抽出ロボットを用いた例であったが、場合によっては複数の抽出ロボットを併用して抽出動作を実行することも可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。
【符号の説明】
【0040】
2A~2I 列
10 連続式熱処理炉
11 炉体
18 抽出開口
20 コンベア
34 可動アーム
36 把持部
40 レーザセンサ(検出手段)
43 エア供給路
44 遮熱板
45 貫通孔
51 焦点位置
60 抽出ロボット
75 抽出システム
W ワーク