(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ゴルフスイング分析装置
(51)【国際特許分類】
A63B 60/42 20150101AFI20231024BHJP
A63B 60/46 20150101ALI20231024BHJP
A63B 69/36 20060101ALI20231024BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20231024BHJP
【FI】
A63B60/42
A63B60/46
A63B69/36 541P
A63B69/36 541W
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2019183457
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【氏名又は名称】山下 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100170542
【氏名又は名称】桝田 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 弘祐
(72)【発明者】
【氏名】植田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 佑斗
【審査官】右田 純生
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-217423(JP,A)
【文献】特開2014-121412(JP,A)
【文献】特開2016-214634(JP,A)
【文献】特開2017-170105(JP,A)
【文献】特開2013-165808(JP,A)
【文献】特開2014-233420(JP,A)
【文献】特開2005-021329(JP,A)
【文献】特開2019-058600(JP,A)
【文献】特開2012-239627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0040380(US,A1)
【文献】特開2016-209120(JP,A)
【文献】特開2017-029460(JP,A)
【文献】特開2020-065800(JP,A)
【文献】特開2020-074835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 60/42
A63B 60/46
A63B 69/36
A63B 71/06
A63B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測データを取得する取得部と、
前記計測データに基づいて、前記ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプであるローテーションタイプを分類する分類部と、
前記ゴルファーのローテーションタイプを表示する画面を作成する画面作成部と
を備え
、
前記分類部は、前記計測データに基づいて、インパクト直前に前記ゴルファーが前記ゴルフクラブを引く動きの大きさを示す第1指標と、ダウンスイング中に前記ゴルファーが前記ゴルフクラブを押す動きの大きさを示す第2指標とを算出し、前記第1指標及び前記第2指標に応じて、前記ゴルファーのローテーションタイプを分類する、
ゴルフスイング分析装置。
【請求項2】
前記画面作成部は、前記第1指標を表す軸を有する領域内に、前記計測データに基づく前記第1指標の値をプロットしたグラフを表示する画面を作成する、
請求項
1に記載のゴルフスイング分析装置。
【請求項3】
前記画面作成部は、前記第1指標を表す軸及び前記第2指標を表す軸を有する領域内に、前記計測データに基づく前記第1指標及び前記第2指標の値をプロットしたグラフを表示する画面を作成する、
請求項
1に記載のゴルフスイング分析装置。
【請求項4】
前記分類部は、前記ゴルファーのローテーションタイプを、インパクト直前にフェースローテーションを行うタイプを含む複数のタイプの中から分類する、
請求項1から
3のいずれかに記載のスイング分析装置。
【請求項5】
前記複数のタイプは、ダウンスイング全体でフェースローテーションを行うタイプをさらに含む、
請求項
4に記載のゴルフスイング分析装置。
【請求項6】
ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測データを取得することと、
前記計測データに基づいて、前記ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプであるローテーションタイプを分類することと、
前記ゴルファーのローテーションタイプを表示する画面を作成することと
をコンピュータに実行させ
、
前記分類することは、前記計測データに基づいて、インパクト直前に前記ゴルファーが前記ゴルフクラブを引く動きの大きさを示す第1指標と、ダウンスイング中に前記ゴルファーが前記ゴルフクラブを押す動きの大きさを示す第2指標とを算出することと、前記第1指標及び前記第2指標に応じて、前記ゴルファーのローテーションタイプを分類することとを含む、
ゴルフスイング分析プログラム。
【請求項7】
ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測データを取得する取得部と、
前記計測データに基づいて、前記ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプであるローテーションタイプを分類する分類部と、
前記ゴルファーのローテーションタイプを表示する画面を作成する画面作成部と
を備え、
前記分類部は、前記分類されたゴルファーのローテーションタイプに応じて、前記ゴルファーに適したゴルフクラブのバランスを決定する、
ゴルフスイング分析装置。
【請求項8】
ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測データを取得する取得部と、
前記計測データに基づいて、前記ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプであるローテーションタイプを分類する分類部と、
前記ゴルファーのローテーションタイプを表示する画面を作成する画面作成部とを備えるゴルフスイング分析装置を用いて、前記画面を表示させることと、
前記画面上に表示された前記ゴルファーのローテーションタイプに応じて、前記ゴルファーに適したゴルフクラブのバランスを決定し、前記ゴルファーに前記バランスを推奨することと
を含む、フィッティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を分析するゴルフスイング分析装置及びプログラム、並びにこれを用いたゴルフクラブのフィッティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測装置により計測し、このときの計測データに基づいてゴルファーの特性を分析する様々な方法(例えば、特許文献1等)が提案されている。このようなゴルフスイングの分析結果は、ゴルファーに適したゴルフクラブを選択すること(所謂、フィッティング)や、ゴルファーによるショットの改善等、様々な用途で利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ゴルフスイング中に行われるフェースローテーションのタイミングは、人それぞれである。よって、ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプを正確に把握することは、ゴルファーの特性をより適切に把握することに寄与し得る。
【0005】
本発明は、ゴルファーの特性をより適切に把握することを可能にするゴルフスイング分析装置及びプログラム、並びにこれを用いたゴルフクラブのフィッティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点に係るゴルフスイング分析装置は、ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測データを取得する取得部と、前記計測データに基づいて、前記ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプであるローテーションタイプを分類する分類部と、前記ゴルファーのローテーションタイプを表示する画面を作成する画面作成部とを備える。
【0007】
第2観点に係るゴルフスイング分析装置は、第1観点に係るゴルフスイング分析装置であって、前記分類部は、前記計測データに基づいて、インパクト直前に前記ゴルファーが前記ゴルフクラブを引く動きの大きさを示す第1指標を算出し、前記第1指標の大きさに応じて、前記ゴルファーのローテーションタイプを分類する。
【0008】
第3観点に係るゴルフスイング分析装置は、第2観点に係るゴルフスイング分析装置であって、前記画面作成部は、前記第1指標を表す軸を有する領域内に、前記計測データに基づく前記第1指標の値をプロットしたグラフを表示する画面を作成する。
【0009】
第4観点に係るゴルフスイング分析装置は、第2観点に係るゴルフスイング分析装置であって、前記分類部は、前記計測データに基づいて、ダウンスイング中に前記ゴルファーが前記ゴルフクラブを押す動きの大きさを示す第2指標をさらに算出し、前記第1指標及び前記第2指標に応じて、前記ゴルファーのローテーションタイプを分類する。
【0010】
第5観点に係るゴルフスイング分析装置は、第4観点に係るゴルフスイング分析装置であって、前記画面作成部は、前記第1指標を表す軸及び前記第2指標を表す軸を有する領域内に、前記計測データに基づく前記第1指標及び前記第2指標の値をプロットしたグラフを表示する画面を作成する。
【0011】
第6観点に係るゴルフスイング分析装置は、第1観点から第5観点のいずれかに係るゴルフスイング分析装置であって、前記分類部は、前記ゴルファーのローテーションタイプを、インパクト直前にフェースローテーションを行うタイプを含む複数のタイプの中から分類する。
【0012】
第7観点に係るゴルフスイング分析装置は、第6観点に係るゴルフスイング分析装置であって、前記複数のタイプは、ダウンスイング全体でフェースローテーションを行うタイプをさらに含む。
【0013】
第8観点に係るゴルフスイング分析プログラムは、以下のことをコンピュータに実行させる。
・ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測機器により計測した計測データを取得すること
・前記計測データに基づいて、前記ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプであるローテーションタイプを分類すること
・前記ゴルファーのローテーションタイプを表示する画面を作成すること
【0014】
第9観点に係るフィッティング方法は、以下のことを含む。
・第1観点から第7観点のいずれかに係るゴルフスイング分析装置を用いて、前記画面を表示させること
・前記画面上に表示された前記ゴルファーのローテーションタイプに応じて、前記ゴルファーに適したゴルフクラブのバランスを決定し、前記ゴルファーに前記バランスを推奨すること
【発明の効果】
【0015】
以上の観点によれば、ゴルファーによるゴルフクラブのスイング動作を計測した計測データに基づいて、ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプが分類され、これを表示する画面が作成される。この画面を視たユーザは、ゴルファーのフェースローテーションのタイミングに関するタイプを知り、ゴルファーの特性をより適切に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係るゴルフスイング分析装置を備える分析システムを示す図。
【
図2】第1実施形態に係る分析システムの機能ブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る分析処理の流れを示すフローチャート。
【
図4A】第1実施形態に係るローテーションタイプを分類するための指標を説明する図。
【
図4B】第1実施形態に係るローテーションタイプを分類するための別の指標を説明する図。
【
図5】第1実施形態に係るローテーションタイプを分類するため指標とローテーションタイプとの関係を示すグラフ。
【
図7】多数のゴルファーが実際にゴルフクラブを試打したときの、第1実施形態に係るローテーションタイプを分類するため2つの指標と、最適バランスとの関係をまとめたグラフ。
【
図8】第2実施形態に係るゴルフスイング分析装置を備える分析システムを示す図。
【
図9】第2実施形態に係る分析システムの機能ブロック図。
【
図10】第2実施形態に係るローテーションタイプを分類するため指標を説明する図。
【
図12】多数のゴルファーが実際にゴルフクラブを試打したときの、第2実施形態に係るローテーションタイプを分類するため指標と、最適バランスとの関係をまとめた表。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の幾つかの実施形態に係るゴルフスイング分析装置及びプログラム、並びにこれを用いたゴルフクラブのフィッティング方法について説明する。
【0018】
<1.第1実施形態>
<1-1.ゴルフスイング分析装置の概略構成>
図1及び
図2に、本実施形態に係るゴルフスイング分析装置2を備える分析システム100の全体構成を示す。ゴルフスイング分析装置2は、ゴルファーGがテスト用のゴルフクラブ(以下、テストクラブという)4をスイングする様子を計測した計測データに基づいて、当該ゴルファーGの特性を分析するための装置である。テストクラブ4は、一般的なゴルフクラブであり、シャフト40と、シャフト40の一端に設けられたヘッド41と、シャフト40の他端に設けられたグリップ42とを含む。スイング動作の計測を行う計測機器は、本実施形態では、慣性センサユニット1である。ゴルフスイング分析装置2は、この慣性センサユニット1とともに、分析システム100を構成する。
【0019】
ゴルフスイング分析装置2は、ゴルファーGの特性として、ゴルファーGのフェースローテーションのタイミングに関するタイプであるローテーションタイプを分析する。フェースローテーションとは、ゴルファーGがスイング動作中にヘッド41のフェース面41aを開閉する等して、フェース面41aを回転させることを意味する。
【0020】
本実施形態では、ゴルファーGのローテーションタイプに関する分析結果は、ゴルファーGに対するゴルフクラブのフィッティングの用途で使用され、特に、ゴルファーに適したバランス(以下、最適バランスということがある)のゴルフクラブを選択するために使用される。バランスとは、スイングウェイトとも呼ばれ、ゴルフクラブを振ったときのヘッドの重量感を表す指標であり、振り心地に影響する。一般に、バランスは、A~Eのアルファベットと、0~9の数字との組み合わせにより表され、「A0」が一番軽く、「E9」が一番重い。バランスが「重い」とは、ゴルフクラブの重心がヘッド側により近く、ゴルフクラブを振り回したときにヘッドの抵抗を感じ易く、従って、より振り回しにくいことを意味し得る。反対に、バランスが「軽い」とは、ゴルフクラブの重心がグリップ側により近く、ゴルフクラブを振り回したときにヘッドの抵抗を感じにくく、従って、より振り回し易いことを意味し得る。本実施形態では、以上のようなバランスが考慮され、ゴルファーGに最適な振り心地のゴルフクラブを提供することが可能になる。
【0021】
以下、慣性センサユニット1及びゴルフスイング分析装置2の構成について説明した後、分析システム100を用いて実現されるフィッティング方法について説明する。
【0022】
<1-2.各部の構成>
<1-2-1.慣性センサユニットの構成>
慣性センサユニット1は、
図1に示す通り、テストクラブ4のグリップ42におけるヘッド41と反対側の端部に取り付けられており、グリップ42の挙動を計測する。慣性センサユニット1は、スイング動作の妨げとならないよう、小型且つ軽量に構成されている。慣性センサユニット1は、テストクラブ4に対して着脱自在に構成することができる。
【0023】
図2に示すように、慣性センサユニット1には、加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13が搭載されている。また、慣性センサユニット1には、これらのセンサ11~13から出力される計測データを外部のゴルフスイング分析装置2に送信するための通信装置10も搭載されている。なお、本実施形態では、通信装置10は、スイング動作の妨げにならないように無線式であるが、ケーブルを介して有線式にゴルフスイング分析装置2に接続するようにしてもよい。
【0024】
加速度センサ11、角速度センサ12及び地磁気センサ13はそれぞれ、これらのセンサ11~13の取付位置を原点とするxyz局所座標系における加速度、角速度及び地磁気を計測する。より具体的には、加速度センサ11は、x軸、y軸及びz軸方向の加速度ax,ay,azを計測する。角速度センサ12は、x軸、y軸及びz軸周りの角速度ωx,ωy,ωzを計測する。地磁気センサ13は、x軸、y軸及びz軸方向の地磁気mx,my,mzを計測する。これらの計測データは、所定のサンプリング周期Δtで少なくともアドレスからフィニッシュまでの時系列データとして収集され、通信装置10を介してゴルフスイング分析装置2に送信される。xyz局所座標系は、3軸直交座標系であり、z軸は、シャフト40に略平行に配向される。x軸は、ヘッド41のトゥ-ヒール方向にできる限り平行になるように配向され、y軸は、ヘッド41のフェース面の法線方向にできる限り平行になるように配向される。
【0025】
<1-2-2.ゴルフスイング分析装置の構成>
ゴルフスイング分析装置2は、ハードウェアとしては汎用のコンピュータであり、例えば、デスクトップ型コンピュータ、ノート型コンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン等として実現される。
図2に示す通り、ゴルフスイング分析装置2は、本実施形態に係る分析プログラム3を汎用のコンピュータにインストールすることにより製造される。分析プログラム3は、コンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体20から、或いは通信部25に接続されるローカルエリアネットワーク(LAN)やインターネット等の通信ネットワークを介して、ゴルフスイング分析装置2に取得される。分析プログラム3は、慣性センサユニット1から送信されてくる計測データに基づいて、ゴルファーGのローテーションタイプを分析するためのソフトウェアである。分析プログラム3は、ゴルフスイング分析装置2に後述する動作を実行させる。
【0026】
ゴルフスイング分析装置2は、表示部21、入力部22、記憶部23、制御部24及び通信部25を備える。これらの部21~25は、バス線26を介して接続されており、相互に通信可能である。本実施形態では、表示部21は、液晶ディスプレイ等で構成され、後述する情報をユーザに対し表示する。なお、ここでいうユーザとは、ゴルファーG自身やそのインストラクター、ゴルフクラブの販売員等の、ここでの分析結果を必要とする者の総称である。入力部22は、マウス、キーボード、タッチパネル等で構成することができ、ゴルフスイング分析装置2に対するユーザからの操作を受け付ける。通信部25は、ゴルフスイング分析装置2と外部装置との通信を可能にする通信インターフェースであり、慣性センサユニット1から計測データを受信する。
【0027】
記憶部23は、ハードディスク等の不揮発性の記憶装置により構成される。記憶部23内には、分析プログラム3が格納されている他、慣性センサユニット1から送信されてくる計測データが保存される。
【0028】
制御部24は、CPU、ROMおよびRAM等から構成することができる。制御部24は、記憶部23内の分析プログラム3を読み出して実行することにより、仮想的に取得部24A、分類部24B及び画面作成部24Cとして動作する。各部24A~24Cの動作の詳細については、後述する。
【0029】
<1-3.フィッティング方法>
続いて、分析システム100により実行される分析処理、及びその分析結果に基づくフィッティング方法について説明する。
【0030】
本実施形態に係る分析処理は、
図3の通りに進行する。まず、ステップS1では、計測データが収集される。より具体的には、ゴルファーGが、慣性センサユニット1が取り付けられたテストクラブ4をスイングし、ボールを打撃する。このとき、慣性センサユニット1は、少なくともアドレスからフィニッシュまでの間の加速度a
x,a
y,a
z、角速度ω
x,ω
y,ω
z及び地磁気m
x,m
y,m
zの時系列データを計測する。この時系列データは、ゴルファーGによるテストクラブ4のスイング動作を計測した計測データとして、通信装置10を介してゴルフスイング分析装置2に送信される。一方、ゴルフスイング分析装置2側では、取得部24Aが通信部25を介してこの計測データを取得し、記憶部23内に格納する。
【0031】
続くステップS2では、分類部24Bが、記憶部23内に格納された計測データに基づいて、ゴルファーGのスイング動作の特徴を表す指標であって、ゴルファーGのローテーションタイプを分類するための基準となる所定の指標C
11及びC
12を算出する。なお、スイング動作中にフェースローテーションを行うタイミングには、人それぞれの傾向がある。ローテーションタイプとは、スイング動作中にどのようなタイミングでフェースローテーションを行うかに関するゴルファーGの特性を分類するタイプである。指標C
11及びC
12は、いずれも、スイング動作時のヘッド41のフェース面41aの開き具合を含む姿勢の変化量を表す指標であり、本実施形態では、以下の通り定義される。
【数1】
【数2】
【0032】
ここで、ω
z_
impとは、インパクトのタイミングでの角速度ω
zであり、ω
z_
topとは、トップのタイミングでの角速度ω
zである。また、C
12に含まれる積分は、トップのタイミングからインパクトのタイミングまでの積分を表す。
図4A及び
図4Bは、実際に計測されたω
z及びω
xのグラフを用いて、指標C
11及びC
12を説明した図である。指標C
11及びC
12は、その定義の通り、計測データに含まれる角速度ω
x及びω
zのデータに基づいて算出することができる。
【0033】
続くステップS3では、分類部24Bは、指標C11及びC12の大きさに応じて、ゴルファーGのローテーションタイプを分類する。本実施形態では、ゴルファーGのローテーションタイプは、インパクト直前にフェースローテーションを行うタイプ(以下、インパクトローテーションタイプということがある)と、ダウンスイング全体でフェースローテーションを行うタイプ(以下、トータルローテーションタイプということがある)との2つのタイプの中から分類される。
【0034】
ここで、指標C
11は、
図4Aに示される通り、トップとインパクトとの間におけるシャフト40の延びる方向に略平行な軸周りの角速度ω
zの変化量の大きさを示している。これは、実質的には、ダウンスイング中においてインパクト直前にゴルファーGが自身の身体の方へテストクラブ4を引く動きの大きさを示している。あるいは、これは、インパクト直前のフェースローテーションの量を示していると言うこともできる。よって、指標C
11の値が大きい程、ゴルファーGはインパクトローテーションタイプに該当し易く、指標C
11の値が小さい程、トータルローテーションタイプに該当し易いと言うことができる。
【0035】
一方、指標C
12は、
図4Bに示される通り、トップとインパクトとの間におけるトゥ-ヒール方向に略平行な軸周りの角速度ω
xの変化量の大きさの累積値を示している。これは、実質的には、ダウンスイング中にゴルファーGがテストクラブ4をスイング方向(肩回りの回転方向)に押す動きの大きさを示している。あるいは、これは、ダウンスイング全体でのフェースローテーションの量を示していると言うこともできる。よって、指標C
12の値が大きい程、ゴルファーGはトータルローテーションタイプに該当し易く、指標C
12の値が小さい程、インパクトローテーションタイプに該当し易いと言うことができる。
【0036】
以上より、
図5に示す通り、指標C
11及びC
12を軸とする平面を考えたとき、同平面内においてインパクトローテーションタイプに対応する領域と、トータルローテーションタイプに対応する領域とは、所定の直線L1を境界線として分けることができる。直線L1は、指標C
11及びC
12の一方の値が大きくなる程、他方の値も大きくなるような傾きを有する直線である。
【0037】
ステップS3では、分類部24Bは、ステップS2で算出された指標C
11及びC
12の値を、両指標C
11及びC
12を軸とする平面内にプロットし、プロットされた点が、同平面内で予め定められている境界線(
図5のL1参照)により分けられるいずれの領域に属するかを判断する。そして、プロットされた点が属する領域に予め対応付けられているローテーションタイプを、ゴルファーGのローテーションタイプとして決定する。
【0038】
続くステップS4では、以上の分析結果がユーザに向けて表示される。より具体的には、画面作成部24Cは、結果画面W1(
図6参照)を作成し、これを表示部21上に表示させる。結果画面W1上には、ゴルファーGのローテーションタイプが表示される。これに限定されないが、
図6の例では、D2に示すように、候補となる複数のローテーションタイプにそれぞれ対応する複数のオブジェクトが表示され、該当するオブジェクトに色が付される。これらのオブジェクトには、それぞれに対応するローテーションタイプの名称を示す文字が付される。
図6の例では、D3に示すように、該当するローテーションタイプの説明も表示される。よって、結果画面W1を視たユーザは、ゴルファーGの特性を適切に把握することができる。
【0039】
また、結果画面W1上には、D1に示すように、ローテーションタイプを分類するための指標C
11及びC
12を表す軸を有するグラフ領域D11が表示される。グラフ領域D11内には、ステップS2で算出された指標C
11及びC
12の値をプロットした点D12が表示される。また、グラフ領域D11の軸の説明として、ユーザに分かり易いように、指標C
11及びC
12の意味が表示される。
図6の例では、縦軸に対応する指標C
11の説明として、「クラブを引く動き」と表示され、横軸に対応する指標C
12の説明として、「クラブを押す動き」と表示される。よって、結果画面W1を視たユーザは、ゴルファーGのローテーションタイプを知ることができるだけでなく、そのローテーションタイプに分類される理由となるゴルファーGの特性についても知ることができる。
図6の例では、スイング動作中にゴルフクラブを引く動き及び押す動きの大きさに関するゴルファーGの特性を知ることができ、このような特性の結果として、どのようにフェースローテーションが行われているのかを把握することができる。
【0040】
本実施形態では、結果画面W1上に表示されたゴルファーGのローテーションタイプの情報は、ゴルファーGに適したゴルフクラブのフィッティングに利用される。本発明者らが得た知見によると、ゴルファーGに適したゴルフクラブのバランス(最適バランス)は、ゴルファーGのローテーションタイプに依存する。よって、ユーザは、結果画面W1上でゴルファーGのローテーションタイプを確認し、これに応じて、最適バランスを決定する。また、ユーザは、カタログ等を参照して、最適バランスを有するゴルフクラブを特定することができる。また、このとき、ユーザは、最適バランスを達成するために、特定のゴルフクラブに使用するべきグリップをカタログ等から特定してもよい。あるいは、特定のゴルフクラブのグリップやヘッド等に取り付けるべきウェイト又はその重量をカタログ等から特定してもよい。ユーザがゴルフクラブの販売員やインストラクター等である場合には、ゴルファーGに対し、このようなゴルフクラブ、グリップ、ウェイト又はその重量を推奨することができる。
【0041】
本発明者らは、最適バランスがゴルファーGのローテーションタイプに依存することを、以下の実験により確認した。より詳細には、この実験では、最適バランスが、ローテーションタイプを分類するための指標C11及びC12に依存することを確認した。まず、本発明者らは、23人の被験者に、バランスの異なる2本のゴルフクラブを試打させた。2本のゴルフクラブのうち、1本は、バランスが「D5」のゴルフクラブ(以下、通常クラブということがある)であり、もう1本は、これよりもバランスの軽い、バランスが「D2」のゴルフクラブ(以下、軽バランスクラブということがある)であった。通常クラブと軽バランスクラブとでは、ヘッド及びシャフトは共通しており、通常クラブのグリップをより重いグリップに変更することにより、軽バランスクラブを用意した。
【0042】
また、本発明者らは、23人の被験者各人が通常クラブを試打したときの指標C
11及びC
12を、上述したのと同様の計測機器及び計測方法により算出した。また、23人の被験者各人について、以上の2本のゴルフクラブのうち、ショットの結果がより良かったクラブを特定した。ショットの結果の良否は、飛距離及び方向性(左右ブレ)を観察し、総合的に評価した。
図7は、この結果をまとめたグラフである。同グラフに示される実験結果からは、指標C
11が小さいゴルファーには、通常クラブがより適しており、指標C
11が大きいゴルファーには、軽バランスクラブがより適しているという傾向が確認された。また、指標C
12が小さいゴルファーには、軽バランスクラブがより適しており、指標C
12が大きいゴルファーには、通常クラブがより適しているという傾向が確認された。ただし、指標C
11及びC
12は、いずれもスイング動作時のフェース面41aの開き具合の変化量を表すが、ω
xよりもω
zの方が、フェース面41aの開き具合に対しより支配的である。その結果、指標C
11の方が、指標C
12よりも、以上の傾向が強く現れる結果となったと考えられる。
【0043】
以上の結果、
図7に示すように、指標C
11及びC
12を軸とする領域は、直線状の境界線L2により、通常クラブが合う領域と、軽バランスクラブが合う領域とに分けられることが分かった。なお、
図7では、以上の傾向から外れた結果を丸印で囲んでいる。この実験結果によれば、23名中21名において、すなわち、91%以上の確率で、以上の傾向が現れた。よって、指標C
11及びC
12に定義されるような、スイング動作時のフェース面41aの開き具合の変化量が分かれば、最適バランスを決定可能であることが分かった。
【0044】
上述したローテーションタイプを分類するための境界線L1を、このような最適バランスを分類するための境界線L2に一致するように設定しておくことで、ローテーションタイプに応じて、最適バランスを適切に分類することが可能になる。本実施形態では、予め以上のような実験を多数の被験者に対し繰り返すことにより、精度の良い境界線L2を特定し、これを境界線L1として記憶部23内に記憶しておく。そして、記憶部23内のこのような境界線L1を特定する情報を参照することにより、ステップS3の分類が実現される。
【0045】
<2.第2実施形態>
図8及び
図9に、第2実施形態に係るゴルフスイング分析装置102を有する分析システム200の全体構成を示す。第1実施形態及び第2実施形態の主な相違点は、ゴルファーGのローテーションタイプを分類するための基準となる指標が異なる点にある。また、このような指標を算出するための計測データを計測する計測機器の構成も異なる。以下では、第1実施形態との共通点についての説明は省略し、両実施形態の相違点を中心に、第2実施形態について説明する。
【0046】
スイング動作の計測を行う計測機器は、第2実施形態では、カメラシステム5である。カメラシステム5は、ゴルフ用品の販売店やゴルフスクール等の専門の場所において、ゴルファーGが試打を行う打席に導入されており、打席に立つゴルファーGのスイング動作を計測する。
図8及び
図9に示す通り、カメラシステム5は、複数台のカメラ51及び52と、複数台のストロボ53、53、54及び54とを備えており、ストロボ式の撮影を行う。カメラ51は、インパクト前後のヘッド41及びボール60の様子を上方から撮影できるように、ゴルファーGの正面側において、支持台57に固定されており、アドレス時のボール60の斜め上方に配置されている。ストロボ53及び53も、支持台57に固定されており、カメラ51の下方に配置されている。また、カメラ52は、カメラ51とは異なる位置からインパクト前後のヘッド41及びボール60の様子を撮影できるように、ゴルファーGの正面側において、アドレス時のボール60の前方に配置されている。ストロボ54及び54は、カメラ52の左右に配置されている。なお、ヘッド41及びボール60には、カメラ51及び52により撮影された画像データからヘッド41及びボール60の挙動を抽出し易いように、適宜、点状、線状等の形状のマーカーが付されている。
【0047】
また、カメラシステム5は、投光器55A及び55Bと、受光器56A及び56Bとを備えており、投光器55A及び受光器56Aが1つのタイミングセンサを構成し、投光器55B及び受光器56Bがもう1つのタイミングセンサを構成している。これらのタイミングセンサにより生成されるタイミング信号は、ストロボ53、53、54及び54の発光及びそれに続くカメラ51及び52の撮影のタイミングを決定するのに使用される。
【0048】
さらに、カメラシステム5は、以上の装置51~56Bの動作を制御するための制御装置50も備えている。制御装置50は、CPU、ROM及びRAM等を有しており、以上の装置51~56Bの他、ゴルフスイング分析装置102の通信部25にも接続されている。
【0049】
投光器55A及び55Bは、ゴルファーGの正面側の地面付近において、カメラ51の下方に配置されている。一方、受光器56A及び56Bは、ゴルファーGの足のつま先付近に配置されている。投光器55A及び受光器56Aは、ゴルファーGの背から腹に向かう方向に概ね平行な直線上に配置されており、互いに対向している(
図8参照)。投光器55B及び受光器56Bについても同様である。投光器55A及び55Bは、ゴルファーGによるスイング動作中、常時、それぞれ受光器56A及び56Bに向けて光を照射しており、受光器56A及び56Bがこれを受光する。しかし、テストクラブ4が投光器55A及び55Bと受光器56A及び56Bとの間を通過するタイミングでは、投光器55A及び55Bからの光がテストクラブ4により遮られるため、受光器56A及び56Bはこれを受光することができない。受光器56A及び56Bはこのタイミングを検出し、これを受けてタイミング信号を生成する。制御装置50は、タイミング信号が生成された時刻を基準とする所定のタイミングで、ストロボ53、53、54及び54に発光を命令するとともに、カメラ51及び52に撮影を命令する。カメラ51及び52により撮影された画像データの形式の計測データは、制御装置50に送信され、制御装置50からさらにゴルフスイング分析装置102に送信される。
【0050】
第2実施形態に係る分析処理も、第1実施形態と同様に、
図3に示す通りに進行する。まず、ステップS1では、計測データが収集される。より具体的には、ゴルファーGが、カメラシステム5が導入された打席に立ち、テストクラブ4をスイングし、ボール60を打撃する。このとき、カメラシステム5は、インパクト前後のヘッド41及びボール60の近傍の様子を写す画像データを撮影する。この画像データは、ゴルファーGによるテストクラブ4のスイング動作を計測した計測データとして、制御装置50を介してゴルフスイング分析装置102に送信される。一方、ゴルフスイング分析装置102側では、取得部24Aが通信部25を介してこの計測データを取得し、記憶部23内に格納する。
【0051】
続くステップS2では、分類部24Bは、記憶部23内に格納された計測データに基づいて、ゴルファーGのローテーションタイプを分類するための基準となる指標C13を算出する。指標C13は、スイング動作時のフェース面41aの開き具合の変化量として定義され、特に、インパクト直前のフェース面41aの開き具合の変化量として定義される。よって、指標C13の値が大きい程、ゴルファーGはインパクトローテーションタイプに該当し易く、指標C13の値が小さい程、トータルローテーションタイプに該当し易くなる。
【0052】
より具体的には、
図10に示すように、アドレス時のボール60から所定の距離だけ離れた第1位置でのフェース角FA
1と、第1位置よりもボール60に近づいたが、依然としてボール60から所定の距離だけ離れている第2位置でのフェース角FA
2とが算出される。そして、指標C
13は、これらの差であるフェース角の変化量FA
1-FA
2として算出される。第1位置及び第2位置は、いずれも、テストクラブ4がインパクト直前に通過する位置である。
【0053】
本実施形態では、指標C
13は、カメラシステム5により撮影された画像データである計測データを画像処理することにより算出される。
図10に示すように、本実施形態では、フェース角を捉え易いように、ヘッド41のクラウン部に、フェース面41aに沿うように帯状のマーカーM1が貼付されている。マーカーM1は、ストロボ53及び54からの光を効率的に反射する素材で形成されている。従って、カメラ51及び52により撮影された画像上においては、マーカーM1の領域、言い換えると、ヘッド41の平面視においてフェース面41aに沿った帯状の領域が鮮明に写り込む。分類部24Bは、記憶部23内に格納されているインパクト直前のストロボ53及び54の発光のタイミングでの2枚の画像(第1位置及び第2位置での画像)上のマーカーM1の像を抽出する。そして、これらのマーカーM1の像に基づいて、フェース角FA
1及びFA
2を算出し、指標C
13=FA
1-FA
2を算出する。
【0054】
続くステップS3では、分類部24Bは、指標C13の大きさに応じて、ゴルファーGのローテーションタイプを分類する。より具体的には、分類部24Bは、指標C13を予め定められている閾値と比較し、指標C13が閾値よりも大きければ、ゴルファーGのローテーションタイプをインパクトローテーションタイプに分類し、指標C13が閾値以下であれば、トータルローテーションタイプに分類する。
【0055】
続くステップS4では、画面作成部24Cが、結果画面W2(
図11参照)を作成し、これを表示部21上に表示させる。結果画面W2上には、D2及びD3に示すように、第1実施形態と同様に、ゴルファーGのローテーションタイプ及びその説明が表示される。また、結果画面W2上には、D1のような2次元のグラフに代えて、D4に示すような1次元のグラフが表示される。より具体的には、指標C
13を表す軸を有するグラフ領域D41が表示され、グラフ領域D41内には、ステップS2で算出された指標C
13の値をプロットした点D42が表示される。また、グラフ領域D41の軸の説明として、ユーザに分かり易いように、指標C
13の意味が表示される。
【0056】
よって、第2実施形態でも、結果画面W2を視たユーザは、ゴルファーGの特性を適切に把握することができる。また、ユーザは、ゴルファーGのローテーションタイプを知ることができるだけでなく、そのローテーションタイプに分類される理由となるゴルファーGの特性についても知ることができる。
【0057】
また、第2実施形態でも、結果画面W2上に表示されたゴルファーGのローテーションタイプの情報は、ゴルファーGに適したゴルフクラブのフィッティングに利用され、ユーザにより最適バランスが決定される。
【0058】
本発明者らは、最適バランスが指標C
13にも依存することを確認した。具体的には、本発明者らは、27人の被験者に、上述した通常クラブ及び軽バランスクラブの2本のゴルフクラブを試打させる実験を行った。そして、27人の被験者各人が、通常クラブを試打したときの指標C
13を、上述したのと同様の計測機器及び計測方法により算出した。また、27人の被験者各人について、以上の2本のゴルフクラブのうち、ショットの結果がより良かったクラブを特定した。ショットの結果の良否の判断は、第1実施形態と同様に行った。
図12は、この結果をまとめた表である。同表に示される実験結果からは、指標C
13が小さいゴルファーには、通常クラブがより適しており、同指標C
13が大きいゴルファーには、軽バランスクラブがより適しているという傾向が確認された。なお、
図12では、指標C
13の大小を判断する閾値を6degとした上で、以上の傾向から外れた結果に背景色を付している。この実験結果によれば、27名中24名において、すなわち、88%以上の確率で、以上の傾向が現れた。よって、フェース面の開き具合の変化量を表す指標C
13が分かれば、最適バランスを決定可能であることが分かった。
【0059】
以上の結果、ユーザは、結果画面W2上でゴルファーGのローテーションタイプを確認し、これに応じて、最適バランスを決定することができる。また、本実施形態でも、ユーザは、最適バランスを有するゴルフクラブ、最適バランスを達成するために特定のゴルフクラブに使用するべきグリップ、或いは、最適バランスを達成するために特定のゴルフクラブのグリップやヘッド等に取り付けるべきウェイト又はその重量を、カタログ等から特定してもよい。ユーザがゴルフクラブの販売員やインストラクター等である場合には、ゴルファーGに対し、このようなゴルフクラブ、グリップ、ウェイト又はその重量を推奨することができる。
【0060】
<3.変形例>
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0061】
<3-1>
上記実施形態では、スイング動作を計測する計測機器として、カメラシステム5又は慣性センサユニット1が用いられた。しかしながら、計測機器の構成はこれに限らず、適宜変更することができる。例えば、三次元モーションキャプチャーシステムや距離画像センサー等を用いてもよいし、ここで例示された又はその他の計測機器の中から複数種類の計測機器を選択し、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0062】
<3-2>
上記実施形態では、ゴルファーGのローテーションタイプが表示部21上に表示され、これに基づき、ユーザが最適バランスを決定した。しかしながら、分類部24Bが、ステップS3で決定されたローテーションタイプに応じて最適バランスを決定し、画面作成部24Cが、ゴルファーGのローテーションタイプの情報に代えて又は加えて、最適バランスの情報を表示部21上に表示させてもよい。
【0063】
また、分類部24Bは、最適バランスだけでなく、最適バランスを有するゴルフクラブ、最適バランスを達成するために特定のゴルフクラブに使用するべきグリップ、或いは最適バランスを達成するために特定のゴルフクラブのグリップやヘッド等に取り付けるべきウェイト又はその重量を特定してもよい。そして、画面作成部24Cは、このようにして特定された情報を表示部21上に表示させることができる。これを実現する方法としては、例えば、記憶部23内に、クラブデータベース(DB)、ヘッドデータベース(DB)、シャフトデータベース(DB)及びグリップデータベース(DB)を格納しておく。ここでいうクラブDBには、多数のゴルフクラブの各種仕様(全体重量、ヘッドの重量、ヘッドの体積、シャフトの重量、シャフトの長さ、シャフトの各種剛性、ロフト角、バランス等)を示す情報が、ゴルフクラブの種類を特定する情報に関連付けて格納される。同様に、ヘッドDBには、多数のヘッドの各種仕様(重量、体積、ロフト角等)を示す情報が、ヘッドの種類を特定する情報に関連付けて格納され、シャフトDBには、多数のシャフトの各種仕様(重量、長さ、各種剛性等)を示す情報が、シャフトの種類を特定する情報に関連付けて格納され、グリップDBには、多数のグリップの各種仕様(重量、硬さ等)を示す情報が、グリップの種類を特定する情報に関連付けて格納される。そして、分類部24Bは、クラブDB内を検索して、最適バランスの条件に合致するゴルフクラブを抽出し、これをゴルファーGに適したゴルフクラブ(以下、最適クラブということがある)として特定する。或いは、分類部24Bは、ヘッドDB、シャフトDB及びグリップDB内から抽出される適当なヘッド、シャフト及びグリップを組み合わせて、最適バランスの条件に合致するゴルフクラブを作成し、これを最適クラブとして特定してもよい。このとき、ユーザから入力部22を介して、ゴルフクラブに関するユーザの希望を示す情報の入力を受け付け、当該希望に合致するような最適クラブを作成してもよい。例えば、ユーザは、自身が気に入ったヘッドの種類を指定することができる。このとき、分類部24Bは、ヘッドDB内から当該指定された種類のヘッドの各種仕様を示す情報を抽出し、当該ヘッドにシャフトDB及びグリップDB内から適当なシャフト及びグリップを選択して組み合わせることにより、当該ヘッドを有し、かつ、最適バランスを有するゴルフクラブを作成し、最適クラブとして特定することができる。また、分類部24Bは、以上のように特定される最適クラブに含まれるグリップ、或いはこれに含まれるグリップやヘッド等に取り付けるべきウェイト又はその重量を特定することができる。
【0064】
<3-3>
ゴルファーGのローテーションタイプを分類するための基準となる上述した指標は、例示であり、適宜変更を加えることができる。例えば、指標C
11に代えて、以下のC
11’を用いることもできるし、指標C
12に代えて、以下の指標C
12’を用いることもできる。また、C
12及びC
11’の積分区間の始点及び終点をトップ及びインパクト以外のタイミングに設定することもできるし、C
11及びC
12’の差分がとられる角速度のタイミングをトップ及びインパクト以外のタイミングに設定することもできる。
【数3】
【数4】
【0065】
以上、ゴルファーGのローテーションタイプを分類するための基準となる様々な指標を説明したが、これらの1つ又は複数の組み合わせに応じて、ゴルファーGのローテーションタイプを分類することができる。例えば、C11のみでゴルファーGのローテーションタイプを分類(例えば、インパクトローテーションタイプか否かを判断)してもよいし、C11及びC13を組み合わせてゴルファーGのローテーションタイプを分類(例えば、インパクトローテーションタイプか否かを判断)してもよい。
【0066】
<3-4>
ゴルファーGのローテーションタイプの分類は、上述したインパクトローテーションタイプ及びトータルローテーションタイプの例に限定されず、適宜設定することができる。また、ゴルファーGのローテーションタイプを、3つ以上のタイプの中から分類してもよい。例えば、上述した境界線L1上、又はその周辺の領域内を、ダウンスイングの初期にフェースローテーションを行うアーリーローテーションタイプに対応する領域とし、これを含む3つのローテーションタイプの中からゴルファーGのローテーションタイプを選択することもできる。
【符号の説明】
【0067】
100,200 分析システム
1 慣性センサユニット(計測機器)
2,102 ゴルフスイング分析装置
24A 取得部
24B 分類部
24C 画面作成部
3 分析プログラム
4 テストクラブ(ゴルフクラブ)
40 シャフト
41 ヘッド
42 グリップ
5 カメラシステム(計測機器)
G ゴルファー