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特許7371464クリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】クリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G03G21/00 318
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019217832
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021089308
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新宮 剣太
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 智雄
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-90974(JP,A)
【文献】特開2008-51867(JP,A)
【文献】特開2008-51901(JP,A)
【文献】特開2015-138076(JP,A)
【文献】特開2018-72468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有し、
前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも大きい(A1>A2)、クリーニングブレード。
【請求項2】
前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)が、10以上40以下である、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)が、20以上30以下である、請求項2に記載のクリーニングブレード。
【請求項4】
被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有し、
前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも小さい(B1<B2)、クリーニングブレード。
【請求項5】
前記炭素含有層は、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)が、2N/mm以上20N/mm以下である、請求項4に記載のクリーニングブレード。
【請求項6】
前記炭素含有層は、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)が、3N/mm以上15N/mm以下である、請求項5に記載のクリーニングブレード。
【請求項7】
前記炭素含有層は、膜厚が、100nm以上450nm以下である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のクリーニングブレード。
【請求項8】
前記炭素含有層は、膜厚が、150nm以上300nm以下である、請求項7に記載のクリーニングブレード。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のクリーニングブレードを備えたクリーニング装置。
【請求項10】
請求項9に記載のクリーニング装置を備え、画像形成装置に対して脱着自在であるプロセスカートリッジ。
【請求項11】
像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体上に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写装置と、
前記転写装置によって前記トナー像が転写された後の前記像保持体の表面に、前記クリーニングブレードを接触させてクリーニングする請求項9に記載のクリーニング装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレード、クリーニング装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「画像形成装置において被接触部材に接触しながら摺擦されるよう配置される摺擦部材であって、sp3結合を有する炭素を含む炭素含有領域を少なくとも前記被接触部材との接触側に有する基材を備え、且つ下記(A)および(a)の要件、または下記(B)および(b)の要件を満たす画像形成用摺擦部材」が、開示されている。
【0003】
(A)前記炭素含有領域が前記被接触部材との接触部を構成する。
(a)前記炭素含有領域が、前記接触部を含む少なくとも一部の領域に、前記sp3結合を有する炭素の濃度が一方向に向かって段階的または連続的に変化し且つ前記一方向の前記接触部に近い側ほど前記濃度が高くなる濃度変化領域を有する。
(B)前記炭素含有領域の前記被接触部材との接触側表面に、sp3結合を有する炭素が前記炭素含有領域の表面に蒸着され積層された炭素層を備え、該炭素層が前記被接触部材との接触部を構成する。
(b)前記炭素含有領域と前記炭素層との少なくとも一方が、前記炭素含有領域と前記炭素層との接触界面のうち前記接触部に最も近い部分を含む少なくとも一部の領域に、前記sp3結合を有する炭素の濃度が一方向に向かって段階的または連続的に変化し且つ前記一方向の前記接触部に近い側ほど前記濃度が高くなる濃度変化領域を有する。
【0004】
特許文献2には、「搬送される被クリーニング部材に対し、基材上に水素原子含有量が10atm%以下のアモルファスカーボンを含む表面層を設けたクリーニング部材を圧接し、前記被クリーニング部材表面のトナーを除去するクリーニング方法であって、前記クリーニング部材が、表面層が除去され基材が露出した摺擦面で被クリーニング部材に圧接され、該圧接位置において、被クリーニング部材の表面が前記摺擦面の搬送方向上流側の表面層断面、基材面、及び、搬送方向下流側の表面層断面の順に摺擦されることを特徴とするクリーニング方法」が、開示されている。
【0005】
特許文献3には、「被クリーニング部材に当接して前記被クリーニング部材の表面を清掃するクリーニングブレードであって、ブレードの厚さ方向に関して、前記被クリーニング部材に当接する当接面の内側に、ヤング率が極大値となるピーク位置を有し、前記当接面におけるヤング率の値をYcとし、前記ピーク位置におけるヤング率の値をYmとし、前記厚さ方向に関して前記ピーク位置よりも前記当接面から離れた所定位置におけるヤング率の値をYbとしたとき、Ym>Yc>Ybの関係が成立する、ことを特徴とするクリーニングブレード」が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-090974号公報
【文献】特開2008-051867号公報
【文献】特開2018-036562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のクリーニングブレードは、画像形成装置に搭載したときに、筋状の画像欠陥及び画像の濃度ムラが生じることがあった。
そこで、本発明では、
被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有するクリーニングブレードにおいて、
前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも小さい(A1<A2)場合、
又は、
前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも大きい(B1>B2)場合、
に比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニングブレードを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0009】
[1] 被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有し、
前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも大きい(A1>A2)、クリーニングブレード。
[2] 前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)が、10以上40以下である、[1]に記載のクリーニングブレード。
[3] 前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)が、20以上30以下である、[2]に記載のクリーニングブレード。
[4] 被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有し、
前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも小さい(B1<B2)、クリーニングブレード。
[5] 前記炭素含有層は、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)が、2N/mm以上20N/mm以下である、[4]に記載のクリーニングブレード。
[6] 前記炭素含有層は、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)が、3N/mm以上15N/mm以下である、[5]に記載のクリーニングブレード。
[7] 前記炭素含有層は、膜厚が、100nm以上450nm以下である、[1]~[6]のいずれか1つに記載のクリーニングブレード。
[8] 前記炭素含有層は、膜厚が、150nm以上300nm以下である、[7]に記載のクリーニングブレード。
[9] [1]~[8]のいずれか1つに記載のクリーニングブレードを備えたクリーニング装置。
[10] [9]に記載のクリーニング装置を備え、画像形成装置に対して脱着自在であるプロセスカートリッジ。
[11] 像保持体と、
前記像保持体を帯電する帯電装置と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、
前記像保持体の表面に形成された静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
前記像保持体上に形成されたトナー像を記録媒体上に転写する転写装置と、
前記転写装置によって前記トナー像が転写された後の前記像保持体の表面に、前記クリーニングブレードを接触させてクリーニングする[9]に記載のクリーニング装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
[1]に係る発明によれば、
被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有するクリーニングブレードにおいて、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも小さい(A1<A2)場合に比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニングブレードが提供される。
【0011】
[2]に係る発明によれば、
前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)が、10未満又は40超えである場合に比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニングブレードがより提供される。
【0012】
[3]に係る発明によれば、
前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)が、20未満又は30超えである場合に比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニングブレードがより提供される。
【0013】
[4]に係る発明によれば、
被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有するクリーニングブレードにおいて、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも大きい(B1>B2)場合に比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニングブレードが提供される。
【0014】
[5]に係る発明によれば、
前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)が、2N/mm未満又は20N/mm超えである場合に比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニングブレードがより提供される。
【0015】
[6]に係る発明によれば、
前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)が、3N/mm未満又は15N/mm超えである場合に比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニングブレードがより提供される。
【0016】
[7]に係る発明によれば、
前記炭素含有層の膜厚が、100nm未満又は450nm超えであるに比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥がより抑制されるクリーニングブレードが提供される。
【0017】
[8]に係る発明によれば、
前記炭素含有層の膜厚が、150nm未満又は300nm超えであるに比べて、画像形成装置に備えたときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥がより抑制されるクリーニングブレードが提供される。
【0018】
[9]、[10]又は[11]に係る発明によれば、
被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有し、且つ、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも小さい(A1<A2)クリーニングブレードを備える場合、
又は、
被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有し、且つ、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも大きい(B1>B2)クリーニングブレードを備える場合、
に比べて、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥が抑制されるクリーニング装置、プロセスカートリッジ又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るクリーニングブレードが停止した被クリーニング部材に接触する状態を示す概略図である。
図2】本実施形態に係るクリーニングブレードが駆動する被クリーニング部材に接触する状態を示す概略図である。
図3】本実施形態に係るクリーニングブレードの一例を示す概略図である。
図4】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略模式図である。
図5】本実施形態に係るクリーニング装置の一例を示す模式断面図である。
図6】本実施形態に係るクリーニングブレードが被クリーニング部材に接触する状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0021】
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0022】
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0023】
本実施形態において、被クリーニング部材の表面に残留した静電荷像現像用トナーを、「残留トナー」とも称す。
本実施形態において、被クリーニング部材の回転方向上流側で被クリーニング部材と対向するクリーニングブレードの対向面を、「被クリーニング部材の回転方向上流側で対向する対向面」とも称す。
【0024】
≪クリーニングブレード≫
第一の実施形態に係るクリーニングブレードは、被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記被クリーニング部材と対向する対向面に、炭素含有層を有し、前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも大きい(A1>A2)。
【0025】
第二の実施形態に係るクリーニングブレードは、被クリーニング部材と接触する接触部から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記電子写真感光体と対向する対向面に、炭素含有層を有し、前記炭素含有層は、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも小さい(B1<B2)。
【0026】
(筋状の画像欠陥の抑制)
従来のクリーニングブレードは、被クリーニング部材の表面を清掃する際に、被クリーニング部材の回転方向上流側で対向する対向面に、残留トナーが付着することがあった。この前記対向面に付着した残留トナーは、被クリーニング部材の上に剥がれ落ち、クリーニングブレードによって押しつぶされてしまうことがある。前記押しつぶされた残留トナーは、清掃されずに、被クリーニング部材の表面に付着して皮膜を形成する現象(以下、「フィルミング」とも称す。)を起こすことがある。その結果、繰り返し画像を形成したときに、筋状の画像欠陥が発生することがある。
【0027】
一方、第一の実施形態に係るクリーニングブレード及び第二の実施形態に係るクリーニングブレードは、上記構成を有することにより、筋状の画像欠陥が抑制される。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
【0028】
第一の実施形態に係るクリーニングブレード及び第二の実施形態に係るクリーニングブレードは、被クリーニング部材の回転方向上流側で対向する対向面に、表面エネルギーが低い炭素含有層を有する。そのため、被クリーニング部材の表面を清掃する際に、そもそも残留トナーが前記対向面に付着し難い傾向にある。その結果、その結果、繰り返し画像を形成しても、筋状の画像欠陥が抑制されると考えられる。
【0029】
(画像の濃度ムラの抑制)
クリーニングブレードは、被クリーニング部材の表面に接触し、両者の間で摩擦を生じさせながら被クリーニング部材の表面を清掃する。このとき、被クリーニング部材の表面では、局所的に摩擦係数にバラツキが生じ、クリーニングブレードの挙動が不安定化し易い傾向にある。そのため、クリーニングブレードの先端(つまり接触部)へ掛かる負荷が大きくなり易く、磨耗する量も増大する傾向にある。その結果、偏磨耗が生じ、この偏磨耗が生じた部分では、残留トナー等の除去物の除去性が低下するため、繰り返し画像を形成したときに、画像の濃度ムラが生じることがある。
【0030】
一方、第一の実施形態に係るクリーニングブレード及び第二の実施形態に係るクリーニングブレードは、上記構成を有することにより、画像の濃度ムラが抑制される。この理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
【0031】
第一の実施形態に係るクリーニングブレードは、前記炭素含有層において、前記接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、前記接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも大きい(A1>A2)。
第二の実施形態に係るクリーニングブレードは、前記炭素含有層において、前記接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、前記接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも小さい(B1<B2)。
【0032】
一般に、グラファイト等のsp2結合を多く含む炭素材料は、ダイヤモンド等のsp3結合を多く含む炭素材料に比べて、柔らかい性質を有する。そうすると、前記A1とA2の関係がA1>A2である、又は、前記B1とB2の関係がB1<B2であるということは、接触部から100μm以内の領域の方が、接触部から300μm以上離れた領域よりも、柔らかい性質を有することを意味する。そして、硬い性質を有する接触部から300μm以上の領域の炭素含有層は、クリーニングブレードの振動を支える支持的な役割をもつ。他方、接触部から100μm以内の領域、つまり接触部に近い領域の炭素含有層は、柔らかく柔軟性を有する。
このように、支持的役割をもつ領域と、柔軟性を付与する領域とを有する対向面とすることにより、被クリーニング部材の表面において局所的に摩擦係数にバラツキが生じた場合も、クリーニングブレードの挙動が不安定化することが抑制される傾向にある。そのため、偏磨耗が生じ難くなり、残留トナー等の除去物の除去性も低下しない傾向にある。その結果、第一の実施形態に係るクリーニングブレード又は第2の実施形態に係るクリーニングブレードを用いると、繰り返し画像を形成したときも、画像の濃度ムラが抑制されると考えられる。
【0033】
以下、第一の実施形態に係るクリーニングブレードと第二の実施形態に係るクリーニングブレードの両方をあわせて、単に、「本実施形態に係るクリーニングブレード」とも称す。
【0034】
〔クリーニングブレードの具体例〕
本実施形態のクリーニングブレードの具体例について、図面を用いて一例を説明する。
【0035】
図1は、本実施形態に係るクリーニングブレードの一例を示す概略図である。
図1は、被クリーニング部材31が停止している状態を示す。
図1に示されるように、クリーニングブレード342は、被クリーニング部材31の表面に、接触部3Aで接触するよう配置されている。ただし、図1には、便宜上、被クリーニング部材31が駆動する方向が、矢印Aとして描かれている。
【0036】
図1に示されるように、クリーニングブレード342は、被クリーニング部材31と接触する接触部3Aと、対向面3Bと、腹面3Cと、背面3Dと、側面3Eと、を有する。
対向面3Bとは、被クリーニング部材31の駆動方向上流側で、被クリーニング部材31と対向する対向面を表す。対向面3Bは、接触部3Aが1つの辺を構成している。
腹面3Cとは、被クリーニング部材31の駆動方向下流側で、被クリーニング部材31と対向する面を表す。腹面3Cは、接触部3Aが1つの辺を構成している。
背面3Dとは、対向面3Bと1つの辺を共有し、且つ、腹面3Cに対向する面を表す。
側面3Eとは、対向面3B、腹面3C及び背面3Dと、それぞれ1つの辺を共有する一対の面を表す。
【0037】
図2は、本実施形態に係るクリーニングブレードの一例を示す概略図である。
図2は、被クリーニング部材31が駆動している状態を示す。
図2に示されるように、クリーニングブレード342は、駆動している被クリーニング部材31の表面に、接触面3Aで接触している。接触面Tは、3Bの一部で構成される。図2に記載のクリーニングブレード342は、被クリーニング部材31の駆動により対向面3Bの一部が接触面Tを形成している以外は、図1に記載のクリーニングブレード342と同一である。
【0038】
図3は、本実施形態に係るクリーニングブレードの一例を示す概略図である。
クリーニングブレード10は、対向面3Bの全域に、炭素含有層14を有する。炭素含有層14は、接触部3Aから100μmの位置(P100)以内の領域14Aと、接触部3Aから300μmの位置(P300)以上離れた領域14Bと、を有する。
図示はしないが、対向面3Bは、接触部3Aから100μm位置超え300μm未満離れた領域においても、炭素含有層14を有する。領域14Aは、sp2/sp3含有比A1が領域14Bにおけるsp2/sp3含有比A2よりも大きい、又は、平均インデンテーション硬度B1が領域14Bにおける平均インデンテーション硬度B2よりも小さい。
【0039】
以下、クリーニングブレードを構成する各層、材料等について説明する。なお、符号は省略する。
【0040】
〔炭素含有層〕
本実施形態に係るクリーニングブレードは、被クリーニング部材と接触する接触部(以下、単に「接触部」とも称す。)から、前記被クリーニング部材の駆動方向上流側で、前記電子写真感光体と対向する対向面(以下、単に「対向面」とも称す。)に、炭素含有層を有する。本実施形態に係るクリーニングブレードは、対向面以外のその他の面に炭素含有層を有していてもよい。
【0041】
(sp2/sp3含有比)
第一の実施形態に係る炭素含有層は、接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも大きい(A1>A2)。
第二の実施形態に係る炭素含有層は、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥をより抑制する観点から、接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1が、接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも大きい(A1>A2)ことが好ましい。
【0042】
接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1を、接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2よりも大きくする手法は、特に制限されないが、例えば、後述する炭素含有層の形成において、(1)照射するレーザー光の波長や照射エネルギーに変化をつけることで、sp3結合を有する炭素材料とsp2結合を有する炭素材料の蒸着比率を変化させる手法;(2)メタルマスク等を用いて炭素材料の種類を領域ごとに変更しながら蒸着していく手法;(3)炭素材料の蒸着時間を調整する手法;(4)印加電圧を変えながら蒸着する手法;などが挙げられる。
【0043】
前記炭素含有層は、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥をより抑制する観点から、接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)が、10以上40以下であることが好ましく、20以上30以下であることがより好ましい。
【0044】
接触部から100μm以内の領域におけるsp2/sp3含有比A1と、接触部から300μm以上離れた領域のsp2/sp3含有比A2と、の差(A1-A2)を、上記範囲内とする手法は、特に制限されないが、例えば、先述のsp2/sp3含有比A1を、sp2/sp3含有比A2よりも大きくする手法と同様の手法が挙げられる。
【0045】
(A1)接触部から100μm以内の領域のsp2/sp3含有比A1の求め方
(1)対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、100μm位置を、X線光電子分光装置(アルバック社製、PHI5000VersaProbe)を用いてX線光電子分光(XPS)測定する。
(2)285eVから286eVの間で検出されたピークに対して、ピーク分離を行い、最も強度の高いピークを2つ抽出する。抽出された2つのピークのうち、低エネルギー側のピークを、sp2炭素に起因するピークとして帰属する。他方、高エネルギー側のピークを、sp3炭素に起因するピークとして帰属する。そして、sp2炭素に起因するピークの積分値と、sp3炭素に起因するピークの積分値と、の比(sp2炭素に起因するピークの積分値/sp3炭素に起因するピークの積分値)を、sp2/sp3含有比とする。
(3)上記工程(1)~(2)と同様にして、対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、30μm、50μm及び70μm位置について、それぞれXPS測定し、各位置におけるsp2/sp3含有比を求める。
(4)各位置で求めたsp2/sp3含有比の算術平均値を、接触部から100μm以内の領域のsp2/sp3含有比A1とする。
【0046】
(A2)接触部から300μm以上の領域のsp2/sp3含有比A2の求め方
(1)対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、300μm位置を、X線光電子分光装置(アルバック社製、PHI5000VersaProbe)を用いてX線光電子分光(XPS)測定する。
(2)285eVから286eVの間で検出されたピークに対して、ピーク分離を行い、最も強度の高いピークを2つ抽出する。抽出された2つのピークのうち、低エネルギー側のピークを、sp2炭素に起因するピークとして帰属する。他方、高エネルギー側のピークを、sp3炭素に起因するピークとして帰属する。そして、sp2炭素に起因するピークの積分値と、sp3炭素に起因するピークの積分値と、の比(sp2炭素に起因するピークの積分値/sp3炭素に起因するピークの積分値)を、sp2/sp3含有比とする。
(3)上記工程(1)~(2)と同様にして、対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、350μm、400μm及び450μm位置について、それぞれXPS測定し、各位置におけるsp2/sp3含有比を求める。
(4)各位置で求めたsp2/sp3含有比の算術平均値を、接触部から300μm以上の領域のsp2/sp3含有比A2とする。
【0047】
(平均インデンテーション硬度)
第二の実施形態に係る炭素含有層は、接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも小さい(B1<B2)。
第一の実施形態に係る炭素含有層は、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥をより抑制する観点から、接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも小さい(B1<B2)ことが好ましい。
【0048】
接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1が、接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2よりも小さくする手法は、特に制限されないが、例えば、後述する炭素含有層の形成において、(1)照射するレーザー光の波長や照射エネルギーに変化をつける手法;(2)メタルマスク等を用いて炭素材料の種類を領域ごとに変更しながら蒸着していく手法;(3)炭素材料の蒸着時間を調整する手法;(4)印加電圧を変えながら蒸着する手法;などが挙げられる。
【0049】
前記炭素含有層は、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥をより抑制する観点から、接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)が、2N/mm以上20N/mm以下であることが好ましく、3N/mm以上15N/mm以下であることがより好ましい。
【0050】
接触部から300μm以上離れた領域の平均インデンテーション硬度B2と、接触部から100μm以内の領域における平均インデンテーション硬度B1と、の差(B2-B1)を、上記範囲内とする手法は、特に制限されないが、例えば、先述の平均インデンテーション硬度B1を、平均インデンテーション硬度B2よりも小さくする手法と同様の手法が挙げられる。
【0051】
(B1)接触部から100μm以内の領域の平均インデンテーション硬度B1の求め方
(1)対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、100μm位置を、ピコデンター(フィッシャー・インストルメンツ社製HM500)を用いて、ベルコビッチ圧子により、押し込み速度1μm/s、最大押し込み深さ0.5μmとし、インデンテーション硬度を測定する。
(2)上記工程(1)と同様にして、対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、30μm、50μm及び70μm位置について、それぞれインデンテーション硬度を測定する。
(3)各位置で求めたインデンテーション硬度の算術平均値を、接触部から100μm以内の領域の平均インデンテーション硬度B1とする。
【0052】
(B2)接触部から300μm以上の領域の平均インデンテーション硬度B2の求め方
(1)対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、300μm位置を、ピコデンター(フィッシャー・インストルメンツ社製HM500)を用いて、ベルコビッチ圧子により、押し込み速度1μm/s、最大押し込み深さ0.5μmとし、インデンテーション硬度を測定する。
(2)上記工程(1)と同様にして、対向面における接触部から、クリーニングブレードの厚み方向に沿って、350μm、400μm及び450μm位置について、それぞれインデンテーション硬度を測定する。
(3)各位置で求めたインデンテーション硬度の算術平均値を、接触部から300μm以上の領域の平均インデンテーション硬度B2とする。
【0053】
接触部から100μm以内の領域の平均インデンテーション硬度B1は、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥をより抑制する観点から、1N/mm以上30N/mm以下であることが好ましく、10N/mm以上25N/mm以下であることがより好ましく、16N/mm以上23N/mm以下であることがさらに好ましい。
【0054】
接触部から300μm以上の領域の平均インデンテーション硬度B2は、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥をより抑制する観点から、22N/mm以上45N/mm以下であることが好ましく、22N/mm以上40N/mm以下であることがより好ましく、22N/mm以上38N/mm以下であることがさらに好ましい。
【0055】
(膜厚)
本実施形態に係る炭素含有層の膜厚は、各領域で所望のsp2/sp3含有比又は平均インデンテーション硬度とすることができれば、特に制限されない。
本実施形態に係る炭素含有層の膜厚は、例えば、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥をより抑制する観点からは、100nm以上450nm以下であることが好ましく、110nm以上420nm以下であることがより好ましく、150nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。
【0056】
炭素含有層の膜厚は、以下のようにして求める。
接触部から100μm以内の領域、及び、接触部から300μm以上の領域の両方を含むようにして任意の10カ所を、光学顕微鏡により観察して厚みを測定する。そして、得られた各位置の算術平均値を、炭素含有層の膜厚とする。
【0057】
(炭素含有層を構成する材料)
炭素含有層は、sp2混成軌道をもつ炭素材料(sp2結合を有する炭素材料)、及びsp3混成軌道をもつ炭素材料(sp3結合を有する炭素材料)を含む層であれば、特に制限されない。例えば、炭素含有層としては、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)が挙げられる。DLCとは、sp2結合とsp3結合の両方を有する炭素を主成分とした物質で作られた膜のことを指す。DLCは、その炭素中のsp2結合とsp3結合との割合、水素含有量等によって、アモルファスカーボン(a-C)、テトラヘドラルアモルファスカーボン(ta-C)、水素化テトラヘドラルアモルファスカーボン(ta-C:H)、水素化アモルファスカーボン(a-C:H)等の種類がある。炭素含有層は、前記DLCの種類のうち、1種単独の膜であってもよく、2種以上を組み合わせた膜であってもよい。
【0058】
例えば、接触部から100μm以内の領域は、sp2結合の割合が比較的高いアモルファスカーボン(a-C)を含むことが好ましい。
例えば、接触部から300μm以上の領域は、sp3結合の割合が比較的高いDLCであるテトラヘドラルアモルファスカーボン(ta-C)を含むことが好ましい。
【0059】
炭素含有層の形成方法は、特に制限されない。例えば、炭素含有層は、クリーニングブレード本体、つまり、炭素含有層が形成されていないクリーニングブレードの表面に、物理気相成長法(PVD法);化学気相成長法(CVD法);フィルター・カソード・バキューム・アーク法(FCVA法);等の一般的な方法により、炭素材料を用いて、成膜することができる。
炭素材料としては、例えば、黒鉛等の含炭素固体;メタン、エタン、プロパン、エチレン、ベンゼン、アセチレン等の炭化水素系ガス;塩化メチレン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロルエタン等のハロゲン化炭素;ケトン類、一酸化炭素、二酸化炭素及びこれらの含炭素ガスにN、H、O、HO、Ar等を混合したもの;などが挙げられる。
【0060】
〔クリーニングブレード本体〕
本実施形態に係るクリーニングブレードの炭素含有層以外の部分、つまり炭素含有層を形成する対象のクリーニングブレード本体を構成する材料としては、特に限定されず、公知のクリーニングブレードの材料が使用される。
クリーニングブレード本体は、ゴム弾性体を含むことが好ましく、ゴム弾性体を含むことが好ましい。ゴム弾性体としては、ウレタンゴム、ポリイミドゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、プロピレンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。ただし、耐磨耗性、機械的強度、耐油性、及び耐オゾン性に優れるとの観点から、ウレタンゴムを含むことが好ましい。なお、ウレタンゴムとしては、例えば、特開2017-053909号公報の段落0037乃至0052に記載のポリウレタンゴムが挙げられる。
【0061】
〔接着層〕
本実施形態に係るクリーニングブレードは、必要に応じて、クリーニングブレード本体と、炭素含有層との間に、クリーニングブレード本体と炭素含有層との接着性を高める接着層を有していてもよい。接着層としては、例えば、金属酸化物を含む金属酸化物層等が挙げられる。
【0062】
〔支持材〕
本実施形態に係るクリーニングブレードは、必要に応じて、支持材に接着して用いてもよい。支持材としては、剛性を有する板状の支持材が挙げられ、例えば金属板が好ましい。
【0063】
〔クリーニングブレードの製造方法〕
本実施形態に係るクリーニングブレードは、例えば、公知の方法により製造されたクリーニングブレード本体に対し、腹面におけるブレード幅方向の全域に、前述の方法により炭素含有層を形成することにより製造できる。例えば、ポリウレタンを含むクリーニングブレード本体を、プレポリマー法やワンショット法等の一般的な方法により作製した後、クリーニングブレード本体における対向面の全域に炭素含有層を形成し、次いで、このクリーニングブレードにおける対向面以外の面を板状の支持材に接着して製造する方法が挙げられる。
【0064】
〔被クリーニング部材〕
本実施形態に係るクリーニングブレードによるクリーニングの対象となる被クリーニング部材としては、表面のクリーニングが要求される部材であれば特に限定されない。例えば、画像形成装置に用いられる場合であれば、像保持体(例えば電子写真感光体)、中間転写体、帯電ロール、転写ロール、被転写材搬送ベルト、用紙搬送ロール等が挙げられる。また、像保持体からトナーを除去するクリーニングブラシから更にトナーを除去するデトーニングロール等も挙げられる。本実施形態においては、像保持体であることが特に好ましい。
【0065】
≪クリーニング装置≫
本実施形態のクリーニング装置は、被クリーニング部材表面に接触し、被クリーニング部材表面をクリーニングするクリーニングブレードとして、本実施形態のクリーニングブレードを備えたものであれば特に限定されない。例えば、クリーニング装置の構成例としては、被クリーニング部材側に開口部を有するクリーニングケース内に、エッジ先端(つまり接触面)が開口部側となるようクリーニングブレードを固定すると共に、クリーニングブレードにより被クリーニング部材表面から回収された廃トナー等の除去物を除去物回収容器に導く搬送部材を備えた構成などが挙げられる。また、本実施形態のクリーニング装置には、本実施形態のクリーニングブレードが2つ以上用いられていてもよい。
【0066】
〔クリーニング装置の具体例〕
本実施形態のクリーニング装置の具体例について、図面を用いて詳細に説明する。
図5は、本実施形態のクリーニング装置の一例を示す模式断面図であり、図4中に示すクリーニング装置34と共にサブカートリッジ化された感光体ドラム31、帯電ロール32や、現像ユニット33も示した図である。図5中、32は帯電ロール(帯電装置)、331はユニットケース、332は現像ロール、333はトナー搬送部材、334は搬送パドル、335はトリミング部材、341はクリーニングケース、342はクリーニングブレード、344はフィルムシール、345は搬送部材を表す。
【0067】
クリーニング装置34は、残留トナーが収容され且つ感光体ドラム31に対向して開口するクリーニングケース341を有する。クリーニングケース341の開口下縁には、感光体ドラム31に接触配置されるクリーニングブレード342が、図示外のブラケットを介して取り付けられている。一方、クリーニングケース341の開口上縁には、感光体ドラム31との間が気密に保たれるフィルムシール344が、取り付けられている。なお、符号345は、クリーニングケース341内に収容された廃トナーを側方の廃トナー容器に導く搬送部材である。
【0068】
本実施形態では、各作像ユニット22(22a乃至22d)の全てのクリーニング装置34において、クリーニングブレード342として本実施形態のクリーニングブレードが用いられる。本実施形態のクリーニングブレードは、ベルトクリーニング装置53で用いられるクリーニングブレード531としても適用できる。
【0069】
クリーニングブレード342は、図5に示すようにクリーニング装置34内のフレーム部材に直接固定されるのではなく、バネ材を介して固定されてもよい。
【0070】
現像ユニット(現像装置)33は、例えば、図5に示されるように、現像剤が収容され且つ感光体ドラム31に対向して開口するユニットケース331を有している。ユニットケース331の開口に面した箇所には、現像ロール332が配設される。ユニットケース331内には、現像剤攪拌搬送のためのトナー搬送部材333が配設されている。現像ロール332とトナー搬送部材333との間には、搬送パドル334が配設されていてもよい。現像は、例えば、現像ロール332に現像剤を供給した後、トリミング部材335にて現像剤が層厚規制された状態で、感光体ドラム31に対向する現像領域に搬送される態様であってもよい。現像ユニット33は、例えば、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を使用しても、トナーのみからなる一成分現像剤を使用してもよい。
【0071】
本実施形態のクリーニングブレードを像保持体のクリーニングに利用する場合、清掃対象であるトナーのクリーニングを良好に行いつつかつ潤滑剤(外添剤)のすり抜けも良好に行わせクリーニングブレードの磨耗を抑制する観点から、クリーニングブレードが像保持体に押し付けられる力NF(Normal Force)は1.3gf/mm以上2.3gf/mm以下の範囲であることが好ましく、1.6gf/mm以上2.0gf/mm以下の範囲であることがより好ましい。
【0072】
ここで、クリーニングブレードの押し付け力NFは、次式で算出される。
・式:N=dEt/4L
式中、dは図6に示されるクリーニングブレード342の食い込み量dを、Eはクリーニングブレード342のヤング率を、tは図6に示されるクリーニングブレード342の厚みtを、Lは図6に示されるクリーニングブレード342の自由長(つまり支持材346によって固定されていない領域の長さ)を表す。
【0073】
また、クリーニングブレード342の像保持体31への食い込み量dは、0.8mm以上1.2mm以下の範囲であることが好ましく、0.9mm以上1.1mm以下の範囲であることがより好ましい。
また、図6に示されるクリーニングブレード342と像保持体31との接触部分における角度α(W/A、Working Angle)は8°以上14°以下の範囲であることが好ましく、10°以上12°以下の範囲であることがより好ましい。
【0074】
≪プロセスカートリッジ≫
本実施形態のプロセスカートリッジは、像保持体や像保持体等の1つ以上の被クリーニング部材表面に接触し、被クリーニング部材表面をクリーニングするクリーニング装置として、本実施形態のクリーニング装置を備えたものであれば特に限定されない。例えば、像保持体と、この像保持体表面をクリーニングする本実施形態のクリーニング装置とを含み、画像形成装置に対して脱着自在な態様等が挙げられる。例えば、各色のトナーに対応した像保持体を有するいわゆるタンデム機であれば、各々の像保持体毎に本実施形態のクリーニング装置を設けてもよい。加えて、本実施形態のクリーニング装置の他に、クリーニングブラシ等を併用してもよい。
【0075】
≪画像形成装置≫
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記像保持体の表面をクリーニングする、本実施形態に係るクリーニング装置と、を備える。
【0076】
〔画像形成装置の具体例〕
本実施形態の画像形成装置の具体例について、図面を用いて詳細に説明する。
図4は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略模式図であり、いわゆるタンデム型の画像形成装置について示したものである。図4中、21は本体ハウジング、22、22a乃至22dは作像ユニット、23はベルトモジュール、24は記録媒体供給カセット、25は記録媒体搬送路、30は各感光体ユニット、31は被クリーニング部材としての感光体ドラム(像保持体の一例)、33は各現像ユニット(現像手段の一例)、34はクリーニング装置、35、35a乃至35dはトナーカートリッジ、40は露光ユニット(静電潜像形成手段の一例)、41はユニットケース、42はポリゴンミラー、51は一次転写装置、52は二次転写装置、53はベルトクリーニング装置、61は送出しロール、62は搬送ロール、63は位置合わせロール、66は定着装置、67は排出ロール、68は排紙部、71は手差し供給装置、72は送出しロール、73は両面記録用ユニット、74は案内ロール、76は搬送路、77は搬送ロール、230は中間転写ベルト、231、232は支持ロール、521は二次転写ロール、531はクリーニングブレードを表す。
【0077】
図4に示すタンデム型画像形成装置は、本体ハウジング21内に四つの色(本実施形態ではイエロ、マゼンタ、シアン、ブラック)の作像ユニット22(具体的には22a乃至22d)を配列し、その上方には各作像ユニット22の配列方向に沿って循環搬送される中間転写ベルト230が含まれるベルトモジュール23を配設する一方、本体ハウジング21の下方には用紙等の記録媒体(図示せず)が収容される記録媒体供給カセット24を配設すると共に、この記録媒体供給カセット24からの記録媒体の搬送路となる記録媒体搬送路25を垂直方向に配置したものである。
【0078】
本実施形態において、各作像ユニット22(22a乃至22d)は、中間転写ベルト230の循環方向上流側から順に、例えばイエロ用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用(配列は必ずしもこの順番とは限らない)のトナー像を形成するものであり、各感光体ユニット30と、各現像ユニット33と、共通する一つの露光ユニット40とを備えている。
ここで、感光体ユニット30は、例えば感光体ドラム31と、この感光体ドラム31を予め帯電する帯電ロール32(帯電手段の一例)と、感光体ドラム31上の残留トナーを除去するクリーニング装置34とを一体的にサブカートリッジ化したものである。
【0079】
また、現像ユニット33は、帯電された感光体ドラム31上に露光ユニット40にて露光形成された静電潜像を対応する色トナー(本実施形態では例えば負極性)で現像するものであり、例えば感光体ユニット30からなるサブカートリッジと一体化されてプロセスカートリッジ(所謂Customer Replaceable Unit)を構成している。
なお、感光体ユニット30を現像ユニット33から切り離して単独のプロセスカートリッジとしてもよいことは勿論である。また、図4中、符号35(35a乃至35d)は各現像ユニット33に各色成分トナーを補給するためのトナーカートリッジである(トナー補給経路は図示せず)。
【0080】
一方、露光ユニット40は、ユニットケース41内に例えば四つの半導体レーザー(図示せず)、一つのポリゴンミラー42、結像レンズ(図示せず)及び各感光体ユニット30に対応するそれぞれミラー(図示せず)を格納し、各色成分の半導体レーザーからの光をポリゴンミラー42で偏向走査し、結像レンズ、ミラーを介して対応する感光体ドラム31上の露光ポイントに光像を導くよう配置したものである。
【0081】
また、本実施形態において、ベルトモジュール23は、例えば一対の支持ロール(一方が駆動ロール)231,232間に中間転写ベルト230を掛け渡したものであり、各感光体ユニット30の感光体ドラム31に対応した中間転写ベルト230の裏面には一次転写装置(本例では一次転写ロール)51が配設され、この一次転写装置51にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム31上のトナー像を中間転写ベルト230側に静電的に転写する。更に、中間転写ベルト230の最下流作像ユニット22dの下流側の支持ロール232に対応した部位には二次転写装置52が配設されており、中間転写ベルト230上の一次転写像を記録媒体に二次転写(一括転写)する。
【0082】
本実施形態では、二次転写装置52は、中間転写ベルト230のトナー像保持面側に圧接配置される二次転写ロール521と、中間転写ベルト230の裏面側に配置されて二次転写ロール521の対向電極をなす背面ロール(本例では支持ロール232を兼用)とを備えている。そして、例えば二次転写ロール521が接地されており、また、背面ロール(支持ロール232)にはトナーの帯電極性と同極性のバイアスが印加されている。
更にまた、中間転写ベルト230の最上流作像ユニット22aの上流側にはベルトクリーニング装置53が配設されており、中間転写ベルト230上の残留トナーを除去する。
【0083】
また、記録媒体供給カセット24には記録媒体を送り出す送出しロール61が設けられ、この送出しロール61の直後には記録媒体を送出する搬送ロール62が配設されると共に、二次転写部位の直前に位置する記録媒体搬送路25には記録媒体を定められたタイミングで二次転写部位へ供給する位置合わせロール63が配設されている。一方、二次転写部位の下流側に位置する記録媒体搬送路25には定着装置66が設けられ、この定着装置66の下流側には記録媒体排出用の排出ロール67が設けられており、本体ハウジング21の上部に形成された排紙部68に排出記録媒体が収容される。
【0084】
更に、本実施形態では、本体ハウジング21の側方には手差し供給装置(MSI)71が設けられており、この手差し供給装置71上の記録媒体は送出しロール72及び搬送ロール62にて記録媒体搬送路25に向かって送出される。
更にまた、本体ハウジング21には両面記録用ユニット73が付設されており、この両面記録用ユニット73は、記録媒体の両面に画像記録を行う両面モード選択時に、片面記録済みの記録媒体を排出ロール67にて逆転させ、かつ、入口手前の案内ロール74にて内部に取り込み、搬送ロール77にて内部の記録媒体戻し搬送路76に沿って記録媒体を搬送し、再度位置合わせロール63側へと供給するものである。
【0085】
〔画像形成装置の作動例〕
本実施形態に係る画像形成装置の作動の一例を説明する。
図4に示すように、各作像ユニット22(22a乃至22d)にて、各色に対応した単色トナー像が形成されると、形成された各色の単色トナー像は、中間転写ベルト230表面に、元の原稿情報と一致するよう、順次重ね合わせて一次転写される。続いて、中間転写ベルト230表面に転写されたカラートナー像は、二次転写装置52にて記録媒体表面に転写される。カラートナー像が転写された記録媒体は、定着装置66による定着処理を経た後、排紙部68へと排出される。
各作像ユニット22(22a乃至22d)における、感光体ドラム31上の残留トナーは、クリーニング装置34にて清掃される。中間転写ベルト230上の残留トナーは、ベルトクリーニング装置53にて清掃される。
上述したように、各作像過程において、それぞれの残留トナーは、クリーニング装置34又はベルトクリーニング装置53によって清掃される。
【実施例
【0086】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0087】
<クリーニングブレードA1~A6及びcA1~cA4の作製>
-クリーニングブレード本体の準備-
ポリカプロラクトンポリオール(株式会社ダイセル製、プラクセル205、平均分子量529、水酸基価212KOHmg/g)と、ポリカプロラクトンポリオール(株式会社ダイセル製、プラクセル240、平均分子量4155、水酸基価27KOHmg/g)とを、ポリオール成分のソフトセグメント材料として用いた。また、2つ以上のヒドロキシ基を含むアクリル樹脂(綜研化学(株)製、アクトフローUMB-2005B)を、ハードセグメント材料として用いた。上記ソフトセグメント材料と上記ハードセグメント材料とを、8:2(質量比)の割合で混合した。
【0088】
次に、このソフトセグメント材料とハードセグメント材料との混合物100部に対して、イソシアネート化合物として4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業(株)製、ミリオネートMT、以下「MD1」という)を6.26部加え、窒素雰囲気下で70℃、3時間反応させた。なお、この反応で使用したイソシアネート化合物量は、反応系に含まれる水酸基に対するイソシアネート基の比(イソシアネート基/水酸基)が0.5となるように選択したものである。
続いて、上記イソシアネート化合物を更に34.3部加え、窒素雰囲気下で70℃、3時間反応させて、プレポリマーを得た。なお、プレポリマーの使用に際して利用したイソシアネート化合物の全量は40.56部であった。
次に、このプレポリマーを100℃に昇温し、減圧下で1時間脱泡した。その後、プレポリマー100部に対して、1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンとの混合物(質量比=60/40)を7.14部加え、3分間気泡が入らないように充分に混合した。この混合物をクリーニングブレード金型に注入し、ポリウレタン製で、硬度75度、347mm×10mm×2mm(厚み)の板状物であるクリーニングブレード本体を得た。
【0089】
-炭素含有層の形成-
上記クリーニングブレード本体における対向面(図3における対向面3B)の全域に対し、まず接着層として金属酸化物層(具体的には酸化チタン層)を、スパッタリングにより形成した。
【0090】
次に、前記接着層が設けられた対向面の全域に対し、島津製作所製のフィルター・カソード・バキューム・アーク(FCVA)装置と、炭素原料である黒鉛と、を用いて、バキュームアーク放電により炭素プラズマを発生させ、そこからイオン化した炭素を抽出し堆積させることで、炭素含有層を成膜した。このとき、接触部から200μm以内の領域と、接触部から200μm以上の領域とで、炭素含有層の形成条件をそれぞれ表1に示す条件として成膜した。
【0091】
-支持材の形成-
炭素含有層を有する各クリーニングブレードを、支持材(SUS)に接着し、これをクリーニングブレードA1~A6及びcA1~cA4とした。
【0092】
各クリーニングブレードについて、炭素含有層が設けられている対向面における、接触部から100μm以内のsp2/sp3含有比A1、接触部から300μm以上のsp2/sp3含有比A2、差(A1-A2)、接触部から100μm以内の平均インデンテーション硬度B1、接触部から100μm以内の平均インデンテーション硬度B2、差(B2-B1)、及び、炭素含有層の膜厚を、前述の方法によりそれぞれ求めた。その結果を表2に示す。
【0093】
<クリーニングブレードcA5の作製>
接着層及び炭素含有層の形成を行わなかった以外は、クリーニングブレードA1と同様の手法により、クリーニングブレードcA3を作製した。
【0094】
[実施例1~6及び比較例1~5]
各実施例及び比較例のクリーニングブレードを、富士ゼロックス社製:Versant 2100 Pressに装着し、押し付け力NF(Normal Force)を2.0gf/mm、角度W/A(Working Angle)を10°に設定した。A4用紙(210×297mm、富士ゼロックス社製、P紙)を用い、Az環境(つまり温度28℃、湿度85%RHの環境)にて、テスト画像(K色、画像濃度5%のハーフトーン画像)の印刷を50万枚行った。
【0095】
-画像の濃度ムラの評価-
クリーニングブレードにおける偏摩耗の発生の有無の指標として、50万枚目の画像について、濃度ムラの発生状態を下記の基準で目視により評価した。なお、許容できるのはA及びBである。
・評価基準
A:50万枚目の画像に濃度ムラが確認されない。
B:50万枚目の画像に濃度ムラが僅かに確認されるが許容範囲。
C:50万枚目の画像に濃度ムラが確認され、許容し得ない。
【0096】
-筋状の画像欠陥の評価-
各例の画像形成装置において、低温低湿環境下(10℃、15%)での残留トナーのすり抜けによる筋状の画像欠陥の発生について、以下の試験により評価を実施した。
像密度1%の画像で5000pv(pv=画像形成処理枚数(プリントボリューム))画像を出力後、全面ハーフトーン50%の画像を1枚出力した。電子写真感光体上のフィルミング発生有無を顕微鏡により観察、及びハーフトーン画像上の白筋発生有無の確認を実施した。評価基準は、次の通りである。なお、許容できるのはA及びBである。
A:電子写真感光体上にフィルミングなし、画質上白筋なし。
B:電子写真感光体上にフィルミング極軽微に発生、画質上白筋なし。
C:電子写真感光体上にフィルミングが筋状に発生、画質上白筋なし。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表1及び表2に示すように、本実施例のクリーニングブレードは、比較例のクリーニングブレードに比べて、画像形成装置に搭載したときに、画像の濃度ムラ及び筋状の画像欠陥を抑制することがわかった。
【符号の説明】
【0100】
3A 接触部
3B 対向面
3C 腹面
3D 背面
3E 側面
10、10B クリーニングブレード
12 接触面
14、142、144 炭素含有層
14A 高sp2炭素領域
14B 低sp2炭素領域
21 本体ハウジング
22、22a乃至22d 作像ユニット
23 ベルトモジュール
24 記録媒体供給カセット
25 記録媒体搬送路
30 感光体ユニット
31 被クリーニング部材(像保持体/感光体ドラム)
32 帯電ロール
33 現像ユニット
34 クリーニング装置
35、35a乃至35d トナーカートリッジ
40 露光ユニット
41 ユニットケース
42 ポリゴンミラー
51 一次転写装置
52 二次転写装置
53 ベルトクリーニング装置
61 送出しロール
62 搬送ロール
63 位置合わせロール
66 定着装置
67 排出ロール
68 排紙部
71 手差し供給装置
72 送出しロール
73 両面記録用ユニット
74 案内ロール
76 搬送路
77 搬送ロール
230 中間転写ベルト
231、232 支持ロール
331 ユニットケース
332 現像ロール
333 トナー搬送部材
334 搬送パドル
335 トリミング部材
341 クリーニングケース
342 クリーニングブレード
344 フィルムシール
345 搬送部材
521 二次転写ロール
531 クリーニングブレード
図1
図2
図3
図4
図5
図6