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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】コネクタおよび端子金具
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/72 20110101AFI20231024BHJP
   H01R 12/91 20110101ALI20231024BHJP
   H01R 13/11 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01R12/72
H01R12/91
H01R13/11 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019217841
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021089793
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
(72)【発明者】
【氏名】守安 聖典
(72)【発明者】
【氏名】田中 真二
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-192333(JP,A)
【文献】特開2001-110247(JP,A)
【文献】特開2011-119129(JP,A)
【文献】特開2015-090786(JP,A)
【文献】特開昭61-082689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R12/00-12/91
H01R13/05
H01R13/11
H01R13/56-13/72
H01R24/00-24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に幅方向に沿って配置される回路基板と、
前記ハウジング内に配置され、前記回路基板に接続される接続部材と、を備え、
前記接続部材は、前記幅方向に首振り可能に構成され
前記接続部材は、前記ハウジング内に保護部材とともに配置され、
前記保護部材は、前記接続部材の首振り動作の支点部を有しているコネクタ。
【請求項2】
前記接続部材は、前後方向に延びる形状であって、前部に弾性変形可能な弾性接触部を有し、前記弾性接触部より後方に前記支点部を受ける支点受け部を有し、前記弾性接触部が前記回路基板に接触するように構成されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記保護部材は、前記接続部材の前記首振り動作を許容した状態で、前記接続部材を保持する保持部を有している請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記接続部材は、前記保護部材に対して保護位置と接続位置とに移動可能に保持され、前記弾性接触部は、前記保護位置において前記保護部材で覆われ、前記接続位置において前記保護部材から露出して前記回路基板に接触する請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記支点受け部は、前後方向に延びるレール状をなし、前記保持部は、前記支点部が前記支点受け部の前端側に配置された状態で、前記接続部材に後方から当たるように構成されている請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記弾性接触部は、前記幅方向の両側に張り出す一対の突起を有し、前記保護部材は、前記幅方向の両側に一対の側壁部を有し、前記一対の側壁部には開口部が開口して設けられ、前記突起は、前記保護位置において前記側壁部と対向して配置され、前記接続位置において前記開口部と対向して配置される請求項4または請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
接続部材と、前記接続部材を内側に配置する保護部材と、を備え、
前記保護部材は、支点部を有し、
前記接続部材は、前後方向に延びる形状であって、前部に弾性変形可能な弾性接触部を有し、前記弾性接触部より後方に前記支点部を受ける支点受け部を有しており、
前記弾性接触部は、幅方向に沿った回路基板に接触し、
前記接続部材は、前記保護部材に対し、前記支点部を支点として前記幅方向に首振り可能とされている端子金具
【請求項8】
前記接続部材は、前記保護部材に対して保護位置と接続位置とに移動可能に保持され、前記弾性接触部は、前記保護位置において前記保護部材で覆われ、前記接続位置において前記保護部材から露出して前記回路基板に接触する請求項7に記載の端子金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタおよび端子金具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコネクタは、回路基板を収容する基板収容部材と、端子を収容する端子収容部材と、を備える。基板収容部材と端子収容部材が嵌合状態にあるときに、端子の接触部が回路基板に接続される。回路基板に接続される端子を備えたコネクタは、特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-84570号公報
【文献】特開2015-90786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、端子と回路基板は、異なる材質で構成され、それぞれ熱膨張率が異なる。このため、コネクタの設置環境の温度上昇などによって、端子と回路基板との間に熱膨張差が生じると、端子に、回路基板との相対位置を変化させる応力が加わることになる。その結果、端子と回路基板との接続状態を維持することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、回路基板に対する接続信頼性を確保することが可能なコネクタおよび端子金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、ハウジングと、前記ハウジング内に幅方向に沿って配置される回路基板と、前記ハウジング内に配置され、前記回路基板に接続される接続部材と、を備え、前記接続部材は、前記幅方向に首振り可能に構成されている。
【0007】
本開示の端子金具は、接続部材と、前記接続部材を内側に配置する保護部材と、を備え、前記保護部材は、支点部を有し、前記接続部材は、前後方向に延びる形状であって、前部に弾性変形可能な弾性接触部を有し、後部に前記支点部を受ける支点受け部を有しており、前記弾性接触部は、幅方向に沿った回路基板に接触し、前記接続部材は、前記保護部材に対し、前記支点部を支点として前記幅方向に首振り可能とされている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、回路基板に対する接続信頼性を確保することが可能なコネクタおよび端子金具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、コネクタの分解斜視図である。
図2図2は、インナハウジングがアウタハウジングに対して初期位置にある状態を示す断面図である。
図3図3は、コネクタが相手コネクタと嵌合され、インナハウジングがアウタハウジングに対して嵌合位置にある状態を示す断面図である。
図4図4は、接続部材が保護部材に対して保護位置にある状態を示す断面図である。
図5図5は、接続部材が保護部材に対して接続位置にある状態を示す断面図である。
図6図6は、電線に接続された接続部材の斜視図である。
図7図7は、保護部材の斜視図である。
図8図8は、接続部材が保護位置にあるときに、支点部が支点受け部の前端側に配置された状態を示す拡大断面図である。
図9図9は、図8のA-A線断面図である。
図10図10は、接続部材が接続位置にあるときに、支点部が支点受け部の後端側に配置された状態を示す拡大断面図である。
図11図11は、図10のB-B線断面図である。
図12図12は、弾性接触部が首振りせずに保護部材の内側に配置された状態を示す拡大断面図である。
図13図13は、弾性接触部が首振り変位し、突起が開口部から外側に突出した状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)ハウジングと、前記ハウジング内に幅方向に沿って配置される回路基板と、前記ハウジング内に配置され、前記回路基板に接続される接続部材と、を備え、前記接続部材は、前記幅方向に首振り可能に構成されている。仮に、接続部材と回路基板が接続された状態で、回路基板が熱膨張すると、接続部材が幅方向に首振り変位することで、接続部材と回路基板との間の熱膨張差を吸収することができる。その結果、接続部材が回路基板に接続される状態を良好に維持することができる。
【0011】
(2)前記接続部材は、前記ハウジング内に保護部材とともに配置され、前記保護部材は、前記接続部材の首振り動作の支点部を有しているのが好ましい。この構成によれば、ハウジングに支点部を設ける必要がなくなり、ハウジングの構造が複雑になるのを回避することができる。
【0012】
(3)前記接続部材は、前後方向に延びる形状であって、前部に弾性変形可能な弾性接触部を有し、前記弾性接触部より後方に前記支点部を受ける支点受け部を有し、前記弾性接触部が前記回路基板に接触するように構成されていると良い。この構成によれば、弾性接触部と支点受け部との間の前後距離を適宜規定することにより、接続部材の首振り幅を調整することができる。
【0013】
(4)前記保護部材は、前記接続部材の前記首振り動作を許容した状態で、前記接続部材を保持する保持部を有していると良い。この構成によれば、接続部材と保護部材を、保持部を介して、一体に取り扱うことができる。
【0014】
(5)前記接続部材は、前記保護部材に対して保護位置と接続位置とに移動可能に保持され、前記弾性接触部は、前記保護位置において前記保護部材で覆われ、前記接続位置において前記保護部材から露出して前記回路基板に接触すると良い。この構成によれば、接続部材が保護位置にあるときに、弾性接触部が保護部材で保護される。このため、弾性接触部が異物との干渉に起因して損傷するのを防止することができる。接続部材が接続位置にあるときには、弾性接触部が回路基板に接触する状態を良好に実現することができる。
【0015】
(6)前記支点受け部は、前後方向に延びるレール状をなし、前記保持部は、前記支点部が前記支点受け部の前端側に配置された状態で、前記接続部材に後方から当たるように構成されていると良い。保持部が接続部材に後方から当たることで、支点部が支点受け部から外れるのを防止することができ、ひいては接続部材が保護部材から抜け出るのを防止することができる。
【0016】
(7)前記弾性接触部は、前記幅方向の両側に張り出す一対の突起を有し、前記保護部材は、前記幅方向の両側に一対の側壁部を有し、前記一対の側壁部には開口部が開口して設けられ、前記突起は、前記保護位置において前記側壁部と対向して配置され、前記接続位置において前記開口部と対向して配置されると良い。接続部材が保護位置にあるときには、突起が側壁部と対向して配置されるから、弾性接触部が一対の側壁部間に首振り動作を規制された状態に配置される。一方、接続部材が接続位置にあるときには、突起が開口部と対向して配置されるから、弾性接触部の首振り時に、突起が開口部に入り込むことができる。突起の幅方向への突出分、弾性接触部の首振り範囲を幅方向に拡張することができ、弾性接触部が側壁部と干渉して首振り範囲を確保できない事態を回避することができる。
【0017】
また、本開示の端子金具は、
(1)接続部材と、前記接続部材を内側に配置する保護部材と、を備え、前記保護部材は、支点部を有し、前記接続部材は、前後方向に延びる形状であって、前部に弾性変形可能な弾性接触部を有し、前記弾性接触部より後方に前記支点部を受ける支点受け部を有しており、前記弾性接触部は、幅方向に沿った回路基板に接触し、前記接続部材は、前記保護部材に対し、前記支点部を支点として前記幅方向に首振り可能とされている。この構成によれば、接続部材が保護部材に対し幅方向に首振りすることにより、接続部材と回路基板との熱膨張差を吸収することができる。その結果、接続部材が回路基板に接続される状態を良好に維持することができる。また、接続部材と保護部材を、端子金具として、一体に取り扱うことができる。
【0018】
(2)前記接続部材は、前記保護部材に対して保護位置と接続位置とに移動可能に保持され、前記弾性接触部は、前記保護位置において前記保護部材で覆われ、前記接続位置において前記保護部材から露出して前記回路基板に接触すると良い。この構成によれば、接続部材が保護位置にあるときに、弾性接触部が保護部材で保護される。接続部材が接続位置にあるときには、弾性接触部が回路基板に接触する状態を良好に実現することができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタおよび端子金具の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<基本構造>
本開示のコネクタは、図1に示すように、ハウジング10と、端子金具40と、を備えている。ハウジング10は、合成樹脂製であって、インナハウジング11と、アウタハウジング12と、を有している。端子金具40は、金属製の板材であって、図4に示すように、接続部材41と、保護部材42と、を有している。図2に示すように、接続部材41は、アウタハウジング12に保持される。保護部材42は、インナハウジング11に保持される。図3に示すように、ハウジング10は、相手コネクタ90に嵌合される。相手コネクタ90は、図示しないケースに固定されている。ケース内には、回路基板80が設置されている。接続部材41は、回路基板80に電気的に接続される。
【0021】
<ハウジング>
ハウジング10は、図2に示すように、アウタハウジング12の前部にインナハウジング11を組み付けて構成される。インナハウジング11は、複数の前側キャビティ13を有している。各前側キャビティ13は、高さ方向に2段でかつ幅方向に複数並んで配置されている。
【0022】
インナハウジング11は、各前側キャビティ13と対応する位置に、複数のランス14を有している。各ランス14は、各前側キャビティ13の内壁面(上段の前側キャビティ13の上面および下段の前側キャビティ13の下面)から前方に延び、前端部が前側キャビティ13内に突出する形状になっている。各前側キャビティ13には、保護部材42が挿入される。保護部材42は、ランス14により弾性的に係止され、インナハウジング11に保持される。
【0023】
インナハウジング11は、上下の各前側キャビティ13間となる高さ方向中央部に、回路基板80を収容可能な基板挿入部15を有している。基板挿入部15は、図1に示すように、幅方向に沿ったスリット溝状をなし、インナハウジング11の前面および両側面に開口している。基板挿入部15は、インナハウジング11内において上下の各前側キャビティ13と連通している。
【0024】
アウタハウジング12は、ハウジング本体16と、ハウジング本体16の外周を包囲する嵌合筒部17と、を有している。ハウジング本体16の外周には、シールリング37が装着される。図3に示すように、嵌合筒部17とハウジング本体16との間には、相手コネクタ90のフード部91が嵌合される。シールリング37は、フード部91とハウジング本体16との間に挟まれ、ハウジング10と相手コネクタ90との間を液密にシールする。嵌合筒部17の上壁には、ロックアーム18が設けられている。ロックアーム18は、相手コネクタ90のフード部91を係止し、ハウジング10と相手コネクタ90とを嵌合状態に保持する。
【0025】
ハウジング本体16は、前面に開口するインナ嵌合部19を有している。インナハウジング11は、インナ嵌合部19に嵌合可能とされている。インナハウジング11は、アウタハウジング12に対し、インナ嵌合部19に浅く嵌合される初期位置(図2を参照)と、初期位置から相対的に後退し、インナ嵌合部19に深く嵌合される嵌合位置(図3を参照)と、に移動可能とされている。インナハウジング11は、初期位置から嵌合位置に移動するに従いアウタハウジング12から前方への突出量を減少させる。詳述しないが、インナハウジング11とアウタハウジング12には、インナハウジング11を初期位置と嵌合位置とに保持するロック構造が設けられている。
【0026】
ハウジング本体16は、図2に示すように、各前側キャビティ13と連通する位置に、複数の後側キャビティ21を有している。各後側キャビティ21には、接続部材41の後部が挿入される。
また、ハウジング本体16には、リテーナ20が組み付けられる。リテーナ20は、インナ嵌合部19の奥面(後面)に沿って移動可能に配置される。リテーナ20は、接続部材41を係止する。接続部材41は、リテーナ20によってアウタハウジング12に対し前後移動を規制された状態に保持される。
【0027】
ハウジング本体16の後部には、一括ゴム栓30が組み付けられる。一括ゴム栓30は、シリコンゴムなどのゴム製であって、ハウジング本体16の後面に開口する収容部22に収容される。一括ゴム栓30は、各後側キャビティ21と連通する位置に、複数のシール孔31を有している。一括ゴム栓30の各シール孔31には、接続部材41に接続された電線33が液密に挿入される。
【0028】
ハウジング本体16の収容部22には、一括ゴム栓30に続いてリアホルダ35が収容される。リアホルダ35は、ハウジング本体16に保持される。一括ゴム栓30は、リアホルダ35によって収容部22からの抜け出しが規制される。リアホルダ35は、各シール孔31と連通する位置に、複数の貫通孔36を有している。リアホルダ35の各貫通孔36には、電線33が遊びをもって挿入される。
【0029】
<端子金具>
端子金具40は、図4に示すように、接続部材41の前部に保護部材42を配置して構成される。接続部材41は、一枚の金属板を曲げ加工することで前後方向に細長い形状に形成される。
図6に示すように、接続部材41は、前部に弾性接触部43を有し、後部に電線接続部44を有し、弾性接触部43と電線接続部44との間に基部47を有している。
【0030】
電線接続部44は、前部にワイヤバレル部45を有し、後部にインシュレーションバレル部46を有している。インシュレーションバレル部46は、オープンバレル状をなし、ワイヤバレル部45より短い前後寸法で構成される。ワイヤバレル部45は、オープンバレル状をなし、電線33の導体部分(芯線部)に圧着して接続される。インシュレーションバレル部46は、電線33の絶縁被覆に圧着して接続される。
【0031】
基部47は、板面を幅方向に沿わせて前後方向に延びる帯板状を呈している。接続部材41は、基部47の後端部の幅方向両端から上向きに突出する一対の突片部48を有している。両突片部48がリテーナ20に係止されることで、接続部材41がアウタハウジング12内に保持される(図2および図3を参照)。
【0032】
接続部材41は、両突片部48より前方において基部47の幅方向両端から下向きに突出する一対の側部49を有している。両側部49は、板面を高さ方向に沿わせて前後方向に延びる形状になっている。接続部材41の前後中間部は、基部47と両側部49とにより門型の断面形状を呈している。図8に示すように、側部49の前側下部は、下向きに長く突出し、後縁が、後述する抜け止め部68と当たることが可能な被抜け止め部51として構成される。
【0033】
接続部材41は、図6図8および図9に示すように、前後方向にレール状に延びる支点受け部52を有している。支点受け部52は、基部47の前後中間部において、下向きビード状に屈曲する形状になっている。支点受け部52は、基部47の上面において、前後方向に一定の溝幅で延び、平坦な溝底を有する凹溝状を呈している。支点受け部52には、保護部材42の後述する支点部66が配置される。接続部材41は、支点受け部52の内側に配置された支点部66を支点として幅方向に首振り可能とされている。
【0034】
弾性接触部43は、図6に示すように、基部47の前端から湾曲して斜め前下方に延びる中継部53を有している。弾性接触部43は、中継部53より前方に、折り返し部54を有している。図4に示すように、折り返し部54は、中継部53を介することで、両側部49より下方に配置される。折り返し部54には、下板部55(外板部分)と上板部56(内板部分)とが高さ方向に並んで配置される。
【0035】
下板部55は、下向きに湾曲する側面視半円弧状の接点部57を有している。接点部57は、中継部53の前端に湾曲して連なる。接点部57の下端は、回路基板80の導電部81(図1を参照)に電気的に接触する。上板部56は、下板部55の前端から折り返されて後方に延びる形状になっている。図4に示すように、上板部56の前端部と下板部55の前端部は、高さ方向に重なった状態で配置される。上板部56の後端部は、接点部57の後端部に重なり、中継部53に臨むように配置される。上板部56の前後中間部は、前端部と後端部との間において接点部57より上方に離れて配置される。
【0036】
弾性接触部43は、図6に示すように、上板部56の前後中間部の幅方向両端から側方(幅方向)に張り出す一対の突起58を有している。両突起58は、平面視矩形の板状をなし、前後方向に関して接点部57の下端と同じ位置に配置される。両突起58は、上板部56に設けられていることにより、下板部55に設けられた接点部57より上方に距離をあけて配置される。
【0037】
保護部材42は、図7に示すように、全体として箱状、詳細には角筒状に形成されている。接続部材41の前部は、保護部材42の内側に配置される。
保護部材42は、前後方向に延びる上壁部59と、上壁部59の幅方向両端から下向きに突出する一対の側壁部61と、側壁部61の下端から側方に突出する下壁部62と、下壁部62の前端から上方に突出する前壁部63と、を有している。上壁部59の板面および下壁部62の板面は幅方向に沿って平行に配置される。両側壁部61の板面は、高さ方向に沿って配置される。前壁部63の板面は、高さ方向に沿って配置される。図4および図12に示すように、前壁部63は、側壁部61の前端から側方に突出する壁部分を内側に有し、二重壁になっている。
【0038】
図7に示すように、上壁部59は、前部に、平面視矩形のランス孔64を有し、ランス孔64の前縁を上方に屈曲させた形態の係止突起65を有している。図2に示すように、ランス孔64には、ランス14の前端部が進入する。係止突起65は、ランス14の前端部によって係止される。
【0039】
保護部材42は、図7に示すように、上壁部59の後部に支点部66を有している。支点部66は、図8に示すように、上壁部59の後部の幅方向中央部において下向き(内向き)に突出するエンボス形状を呈している。支点部66は、図9に示すように、円形の平断面形状をなし、支点受け部52の溝幅より小さい直径を有している。支点部66は、支点受け部52の溝内に前後方向に変位可能に配置される。
【0040】
保護部材42は、両側壁部61の後部に一対の保持部67を有している。両保持部67は、両側壁部61にU字形の切り込みが入れられ、切り込み内の板片部67A(図7を参照)を内側に曲げ起こして形成される。両保持部67は、相互の先端同士を対向させた状態で幅方向に沿って配置される。図8に示すように、保持部67の前端は、抜け止め部68とされ、幅方向に沿って配置される。
【0041】
両保持部67は、図8に示すように、対向する上壁部59との間に、接続部材41の前後中間部を挟み込むようにして配置される。接続部材41の前後中間部は、両保持部67と上壁部59との間において、動きを許容された状態に保持される。
【0042】
保護部材42は、図4に示すように、下壁部62の前後方向の途中に、前方へ向けて上り勾配で傾斜するスロープ部69を有している。下壁部62の前部は、スロープ部69を介して、下壁部62の後部より一段高く配置される上段部73になっている。上段部73には、スロープ部69の前方に、接続孔71が開口して設けられている。また、両側壁部61には、前後方向に関して接続孔71と同じ位置に、一対の開口部72が開口して設けられている。
【0043】
<コネクタの全体構造および嵌合構造>
端子金具40の製造に際し、支点部66が支点受け部52の後端側に挿入され、両保持部67が屈曲させられる。これにより、両保持部67が保護部材42の前後中間部の両側部49に下方から当たるように配置される。接続部材41の前後中間部は、上壁部59と両保持部67との間に緩く保持される。図4に示すように、接続部材41が保護位置にあるとき、弾性接触部43の接点部57は、スロープ部69の後方において、上壁部59、両側壁部61および下壁部62の内側に保護状態に配置される。このため、異物が接点部57と干渉するのを回避することができる。接続部材41が保護位置にあるとき、両突起58の先端は、両側壁部61と対向して配置される。これにより、保護位置における接続部材41の幅方向への首振り動作が規制される。
【0044】
そして、接続部材41が保護位置にあるとき、図8に示すように、抜け止め部68が被抜け止め部51に後方から当たるように配置される。これにより、接続部材41が保護部材42から後方に抜け出るのが規制される。また、接続部材41が保護位置にあるとき、図4に示すように、接点部57がスロープ部69に後方から当たるように配置される。これにより、接続部材41が保護位置から前方へ移動するのが規制される。
【0045】
上記によって接続部材41と保護部材42とが一体化された端子金具40を得ることができる。
続いて、端子金具40がハウジング10に挿入される。インナハウジング11は、端子金具40の挿入前、アウタハウジング12に対して初期位置に保持される。
【0046】
保護部材42は、貫通孔36、シール孔31および後側キャビティ21を経て前側キャビティ13に挿入され、図2に示すように、ランス14により抜け止めされる。接続部材41は、保護部材42とともにハウジング10内を移動し、リテーナ20により抜け止めされる。接続部材41のうち、電線接続部44側の後部は、後側キャビティ21に配置され、弾性接触部43側の前部は、保護部材42とともに前側キャビティ13に配置される。保護部材42の接続孔71は、基板挿入部15に開口し、スロープ部69は、基板挿入部15に後方から臨むように配置される。また、電線接続部44に接続された電線33は、シール孔31に液密に挿入され、貫通孔36を通して外部に引き出される。
【0047】
次いで、ハウジング10が相手コネクタ90に嵌合される。これにより、図3に示すように、回路基板80の一端部が基板挿入部15に差し込まれる。回路基板80の板面は、幅方向に沿って配置される。また、ハウジング10が相手コネクタ90に嵌合されるに伴い、インナハウジング11とアウタハウジング12を初期位置に保持するロックが解除され、アウタハウジング12がインナハウジング11に対して相対的に前進することが可能となる。ハウジング10の嵌合動作が進行すると、インナハウジング11がインナ嵌合部19に深く挿入される。
【0048】
ここで、保護部材42はインナハウジング11に保持され、接続部材41はアウタハウジング12に保持されている。このため、アウタハウジング12とインナハウジング11が相対的に接近すると、接続部材41と保護部材42も相対的に接近する。これにより、接続部材41は、保護部材42に対して保護位置から接続位置側に移動可能となる。
【0049】
接続部材41の移動過程において、弾性接触部43が撓み変形した状態で、接点部57がスロープ部69を摺動し、さらに接点部57の下端が上段部73にいったん乗り上がる。そして、支点部66が支点受け部52の前端側から後端側へと相対的に変位する(図9および図11を参照)。
【0050】
インナハウジング11がアウタハウジング12に対し嵌合位置に至ると、インナハウジング11の後面がリテーナ20に当たるように配置される。そして、インナハウジング11が嵌合位置に至るに伴い、接続部材41も接続位置に至ることができる。
【0051】
接点部57は、接続位置において、上段部73から落下し、図5に示すように、接続孔71を通して回路基板80の導電部81に接触する。弾性接触部43は、撓み変形した状態が維持される。接続部材41が接続位置にあるときには、図12に示すように、両突起58の先端部が両側壁部61の開口部72に臨むように配置される。
【0052】
ところで、コネクタが高温下に設置されるなどの要因により、回路基板80が熱膨張し、回路基板80の幅寸法が増加することがある。ここで、接続部材41は、回路基板80との間に熱膨張差を有するものの、支点部66を支点として幅方向に首振り可能となっている。このため、接続部材41は、回路基板80の熱膨張に応じて首振りして追従変位することができる。これにより、接点部57と回路基板80との間に過大な応力(ずれの応力)が加わるのを回避することができる。
【0053】
特に、本実施形態の場合、接続部材41の首振り時に、弾性接触部43の突起58が開口部72に入り込むことができる。さらに、図13に示すように、突起58の先端部が開口部72から側壁部61の外側に突出することができる。このように弾性接触部43が突起58を有することで、接続部材41の首振り角度を大きく設定することができ、回路基板80が幅方向に大きく熱膨張した場合にも対応することが可能となる。
【0054】
また、接続部材41の首振り時に、支点部66が支点受け部52の溝内で回動する。この場合に、両保持部67が接続部材41の前後中間部を緩く保持しているので、支点部66と支点受け部52との摩擦抵抗が大きくならず、接続部材41の首振り動作を円滑に行うことができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、回路基板80が熱膨張した場合においても、接続部材41が幅方向に首振り変位することで、回路基板80と接続部材41との間の熱膨張差を吸収することができる。その結果、接続部材41が回路基板80の導電部81に接続される状態を良好に維持することができる。
【0056】
また、接続部材41の首振り動作の支点部66が、端子金具40の一部である保護部材42に設けられているから、ハウジング10の構造が複雑にならずに済む。
また、接続部材41は、前部に弾性接触部43を有し、弾性接触部43より後方に支点部66を受ける支点受け部52を有している。このため、弾性接触部43と支点受け部52との間の前後距離を適宜規定することにより、接続部材41の首振り幅を調整することができる。
【0057】
また、保護部材42の保持部67は、接続部材41の首振り動作を許容した状態で、接続部材41を保持する。このため、接続部材41と保護部材42が相対的に変位する構造であっても、比較的簡単な構造で、接続部材41と保護部材42を一体に取り扱うことができる。
【0058】
また、接続部材41の弾性接触部43は、保護位置において、保護部材42によって覆われて保護される。このため、弾性接触部43が異物との干渉に起因して損傷するのを防止することができる。その結果、接続部材41が接続位置にあるときに、弾性接触部43が回路基板80に接触する状態を良好に実現することができる。
【0059】
また、保護部材42の支点部66が接続部材41の支点受け部52の前端側に配置された状態で、保持部67の抜け止め部68が接続部材41の被抜け止め部51に後方から当たるように構成されている。このため、支点部66が支点受け部52から外れるのを防止することができ、ひいては接続部材41が保護部材42から抜け出るのを防止することができる。特に、抜け止め部68が保持部67の前端に設けられるに過ぎないため、保護部材42の構造が複雑になるのを回避することができる。
【0060】
さらに、弾性接触部43の突起58は、保護位置において側壁部61と対向して配置され、接続位置において開口部72と対向して配置される。突起58は、接続位置において開口部72から外部に突出することができる。このため、突起58の幅方向への突出分、弾性接触部43の首振り範囲を幅方向に拡張することができ、弾性接触部43が側壁部61と干渉して首振り範囲が規制される事態を回避することができる。
【0061】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態の場合、保護部材が端子金具に設けられていたが、他の実施形態としては、保護部材がハウジングに設けられていても良い。
上記実施形態の場合、支点部が保護部材に設けられていたが、他の実施形態としては、支点部がハウジングなどの保護部材以外の部分に設けられていても良い。
上記実施形態の場合、接続部材とは別に保護部材が設けられていたが、他の実施形態としては、接続部材がハウジング内に幅方向に首振り可能に配置されていれば良く、コネクタが保護部材を有していない構成であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
10…ハウジング
11…インナハウジング
12…アウタハウジング
13…前側キャビティ
14…ランス
15…基板挿入部
16…ハウジング本体
17…嵌合筒
18…ロックアーム部
19…インナ嵌合部
20…リテーナ
21…後側キャビティ
22…収容部
30…一括ゴム栓
31…シール孔
33…電線
35…リアホルダ
36…貫通孔
37…シールリング
40…端子金具
41…接続部材
42…保護部材
43…弾性接触部
44…電線接続部
45…ワイヤバレル部
46…インシュレーションバレル部
47…基部
48…突片部
49…側部
51…被抜け止め部
52…支点受け部
53…中継部
54…折り返し部
55…下板部
56…上板部
57…接点部
58…突起
59…上壁部
61…側壁部
62…下壁部
63…前壁部
64…ランス孔
65…係止突起
66…支点部
67…保持部
67A…板片部
68…抜け止め部
69…スロープ部
71…接続孔
72…開口部
73…上段部
80…回路基板
81…導電部
90…相手コネクタ
91…フード部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13