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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】コイル部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20231024BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20231024BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20231024BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20231024BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20231024BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F27/29 P
H01F17/04 F
H01F41/04 C
H01F27/32 130
H01F27/28 104
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019223191
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021093450
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】山谷 学
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将典
(72)【発明者】
【氏名】竹内 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 延也
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-204835(JP,A)
【文献】特開2018-186241(JP,A)
【文献】特開2016-219579(JP,A)
【文献】特開2018-190828(JP,A)
【文献】特開2005-051050(JP,A)
【文献】特開2017-069523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 41/04
H01F 27/32
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の絶縁層を含む複数の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に設けられた最下層に位置する第1の導体層、並びに、前記第1の導体層を覆う前記第2の絶縁層上に設けられた第2の導体層を含む複数の導体層とが、交互に積層された構成を有するコイル部を備え、
前記コイル部は、前記第1の絶縁層上に設けられた第1の給電パターンを含み
前記第1の導体層は、第1のコイルパターン、並びに、前記第1のコイルパターンの外周端に接続され、且つ、前記第1の給電パターンの一部と重なる第1の電極パターンを含
前記第2の導体層は、内周端が前記第1のコイルパターンの内周端に接続された第2のコイルパターンを含
前記第1の給電パターンは、前記第1の導体層よりも膜厚が薄く、
前記第1の給電パターンのうち前記第1の電極パターンに覆われる部分の幅は、前記第1の給電パターンのうち前記第1の電極パターンから露出する部分の幅よりも広いことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1の給電パターンのうち前記第1の電極パターンから露出する部分の幅は、前記第1のコイルパターンの幅よりも狭いことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2の導体層は、前記第1の電極パターンと重なり、且つ、前記第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンをさらに含み、
前記第1の電極パターンは前記第2の電極パターンよりも平面サイズが小さいことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の電極パターンの露出面積は、前記第2の電極パターンの露出面積よりも小さいことを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1の導体層は、前記第1のコイルパターンから見て前記第1の電極パターンとは反対側に配置された第3の電極パターンをさらに含み、
前記第2の導体層は、前記第3の電極パターンと重なり、且つ、前記第3の電極パターンに接続された第4の電極パターンをさらに含み、
前記第3の電極パターンは前記第4の電極パターンよりも平面サイズが小さく、
前記第3の電極パターンの露出面積は、前記第4の電極パターンの露出面積よりも小さいことを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の絶縁層上に設けられ、一部が前記第3の電極パターンと重なり、且つ、前記第3の電極パターンよりも膜厚の薄い第2の給電パターンをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記コイル部を埋め込む磁性素体と、
前記磁性素体に埋め込まれ、前記第1及び第2の電極パターンに接続された導体ポストと、をさらに備え、
前記磁性素体は、前記第1及び第2のコイルパターンの軸方向に対して垂直な底面と、前記軸方向と平行な側面を有し、
前記導体ポストは、前記磁性素体の前記底面及び側面から露出し、
前記第1及び第2の電極パターンは、前記磁性素体の前記側面から露出し、
前記第1の電極パターンの前記側面における露出幅は、前記導体ポストの前記側面における露出幅よりも狭いことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項8】
支持基板の表面に第1の絶縁層を形成する第1の工程と、
前記第1の絶縁層上に、第1の区間と、第2の区間と、前記第1の区間と前記第2の区間の間に位置する第3の区間と、を含む給電パターンを形成する第の工程と、
前記第1の絶縁層上に、複数の導体層のうち最下層に位置する第1の導体層であって、第1のコイルパターン、前記第1のコイルパターンの外周端に接続され、且つ、前記給電パターンの前記第1の区間と重なる第1の電極パターン、並びに、面内で前記第1のコイルパターン及び前記第1の電極パターンのいずれにも接することなく、前記給電パターンの前記第2の区間と重なる第1の犠牲パターンを含む前記第1の導体層を電解メッキによって形成する第の工程と、
前記第1の導体層を覆い、且つ、前記第1の犠牲パターンの少なくとも一部が露出するよう、前記第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する第の工程と、
前記第2の絶縁層上に、内周端が前記第1のコイルパターンの内周端に接続された第2のコイルパターン、並びに、面内で前記第2のコイルパターンに接することなく、前記第1の犠牲パターンと接する第2の犠牲パターンを含む第2の導体層を電解メッキによって形成する第の工程と、
前記第1及び第2の犠牲パターンを除去する第の工程と、を備え、
前記給電パターンは、前記第1の導体層よりも膜厚が薄く、
前記給電パターンの前記第1の区間の幅は、前記給電パターンの前記第3の区間の幅よりも広く、
前記第及び第の工程における電解メッキにおいては、前記給電パターンを介してそれぞれ前記第1及び第2のコイルパターンに給電を行うことを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項9】
前記給電パターンの前記第3の区間の間の長さは、前記第1の電極パターンのうち前記給電パターンの前記第1の区間と接する部分と、前記第1の犠牲パターンのうち前記給電パターンの前記第2の区間と接する部分の間の直線距離よりも長いことを特徴とする請求項に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品及びその製造方法に関し、特に、スパイラル状に巻回された複数のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル状に巻回された複数のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品としては、特許文献1に記載されたコイル部品が知られている。特許文献1に記載されたコイル部品は、1層目に位置する第1のコイルパターン及び第1の犠牲パターンを形成し、さらに、絶縁層を介して2層目に位置する第2のコイルパターン及び第2の犠牲パターンを形成した後、第1及び第2の犠牲パターンを除去することによって作製される。ここで、各導体パターンを電解メッキによって形成する場合、下地となる給電パターンに所定の電位を与えることによって、メッキ膜が成長する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-160610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コイルパターンのターン数が多くなると、外周端側から給電を行っても、内周端に近づくにつれて給電パターンの電位が低下し、その結果、内周端に近づくにつれてコイルパターンの膜厚が薄くなるという現象が生じる。これにより、コイルパターンの平坦性が低下するとともに、内周端に近づくにつれてコイルパターンの断面積が小さくなることから、抵抗値が増大するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、スパイラル状に巻回された複数のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品及びその製造方法において、内周端に近づくにつれてコイルパターンの膜厚が薄くなるという現象を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、第1の絶縁層と、第1の絶縁層上に設けられた給電パターンと、第1の絶縁層上に設けられ、第1のコイルパターン、並びに、第1のコイルパターンの外周端に接続され、且つ、給電パターンの一部と重なる第1の電極パターンを含む第1の導体層と、第1の導体層を覆うよう、第1の絶縁層上に設けられた第2の絶縁層と、第2の絶縁層上に設けられ、内周端が第1のコイルパターンの内周端に接続された第2のコイルパターンを含む第2の導体層とを備え、第1の給電パターンは、第1の導体層よりも膜厚が薄いことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1のコイルパターンの外周端に第1の給電パターンが設けられていることから、第2のコイルパターンを電解メッキによって形成する際、外周端側だけでなく、第1のコイルパターンを介して内周端側からも給電を行うことが可能となる。これにより、第2のコイルパターンの平坦性が向上するとともに、設計通りの抵抗値を得ることが可能となる。しかも、第1の給電パターンは、第1の導体層よりも膜厚が薄いことから、酸などのエッチング液を用いて犠牲パターンをエッチングする際、エッチング液が第1の電極パターンまで容易に到達しない。つまり、第1の給電パターンの一部がエッチングされずに残存した状態でエッチングを終了することができる。
【0008】
本発明において、第1の給電パターンのうち第1の電極パターンから露出する部分の幅は、第1のコイルパターンの幅よりも狭くても構わない。これによれば、酸などのエッチング液が第1の電極パターンによりいっそう到達しにくくなる。この場合、第1の給電パターンのうち第1の電極パターンに覆われる部分の幅は、第1の給電パターンのうち第1の電極パターンから露出する部分の幅よりも広くても構わない。これによれば、第1の電極パターンと第1の給電パターンの電気的接続をより確実とすることが可能となる。
【0009】
本発明において、第2の導体層は、第1の電極パターンと重なり、且つ、第1の電極パターンに接続された第2の電極パターンをさらに含み、第1の電極パターンは第2の電極パターンよりも平面サイズが小さくても構わない。これによれば、第1の給電パターンを配置する領域を十分に確保することが可能となる。
【0010】
この場合、第1の電極パターンの露出面積は、第2の電極パターンの露出面積よりも小さくても構わない。これによれば、第1の電極パターンの露出面積が小さいことから、ハンダを用いてマザーボードに実装した場合に、ハンダフィレットの過剰な広がりを防止することが可能となる。また、この場合、第1の導体層は、第1のコイルパターンから見て第1の電極パターンとは反対側に配置された第3の電極パターンをさらに含み、第2の導体層は、第3の電極パターンと重なり、且つ、第3の電極パターンに接続された第4の電極パターンをさらに含み、第3の電極パターンは第4の電極パターンよりも平面サイズが小さく、第3の電極パターンの露出面積は、第4の電極パターンの露出面積よりも小さくても構わない。これによれば、第3の電極パターンの露出面積が小さいことから、ハンダを用いてマザーボードに実装した場合に、ハンダフィレットの過剰な広がりを防止することが可能となる。さらに、この場合、第1の絶縁層上に設けられ、一部が第3の電極パターンと重なり、且つ、第3の電極パターンよりも膜厚の薄い第2の給電パターンをさらに備えていても構わない。これによれば、パターンの対称性が高められることから、製造プロセスにおける基板の反りを抑制することが可能となる。
【0011】
本発明によるコイル部品は、第1及び第2の絶縁層、並びに、第1及び第2の導体層を埋め込む磁性素体と、磁性素体に埋め込まれ、第1及び第2の導体パターンに接続された導体ポストとをさらに備え、磁性素体は、第1及び第2のコイルパターンの軸方向に対して垂直な底面と、軸方向と平行な側面を有し、導体ポストは磁性素体の底面及び側面から露出し、第1及び第2の電極パターンは磁性素体の側面から露出し、第1の電極パターンの側面における露出幅は、導体ポストの側面における露出幅よりも狭くても構わない。これによれば、磁性素体の底面とマザーボードが向かい合うようにハンダを用いてマザーボードに搭載することにより、磁性素体の底面及び側面にフィレットを形成することができるとともに、側面におけるフィレットの過剰な広がりを防止することが可能となる。
【0012】
本発明によるコイル部品の製造方法は、第1の絶縁層上に給電パターンを形成する第1の工程と、第1の絶縁層上に、第1のコイルパターン、第1のコイルパターンの外周端に接続され、且つ、給電パターンの第1の区間と重なる第1の電極パターン、並びに、面内で第1のコイルパターン及び第1の電極パターンのいずれにも接することなく、給電パターンの第2の区間と重なる第1の犠牲パターンを含む第1の導体層を電解メッキによって形成する第2の工程と、第1の導体層を覆い、且つ、第1の犠牲パターンの少なくとも一部が露出するよう、第1の絶縁層上に第2の絶縁層を形成する第3の工程と、第2の絶縁層上に、内周端が第1のコイルパターンの内周端に接続された第2のコイルパターン、並びに、面内で第2のコイルパターンに接することなく、第1の犠牲パターンと接する第2の犠牲パターンを含む第2の導体層を電解メッキによって形成する第4の工程と、第1及び第2の犠牲パターンを除去する第5の工程とを備え、給電パターンは第1の導体層よりも膜厚が薄く、第2及び第4の工程における電解メッキにおいては、給電パターンを介してそれぞれ第1及び第2のコイルパターンに給電を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第2のコイルパターンを電解メッキによって形成する際、外周端側だけでなく、第1のコイルパターンを介して内周端側からも給電されることから、第2のコイルパターンの平坦性が向上するとともに、設計通りの抵抗値を得ることが可能となる。しかも、第1の給電パターンは、第1の導体層よりも膜厚が薄いことから、酸などのエッチング液を用いて第1及び第2の犠牲パターンをエッチングする際、エッチング液が第1の電極パターンまで容易に到達することがない。
【0014】
本発明において、給電パターンの第1の区間と第2の区間の間の長さは、第1の電極パターンのうち給電パターンの第1の区間と接する部分と、第1の犠牲パターンのうち給電パターンの第2の区間と接する部分の間の直線距離よりも長くても構わない。これによれば、酸などのエッチング液を用いて第1及び第2の犠牲パターンをエッチングする際、エッチング液がより第1の電極パターンに到達しにくくなる。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によれば、スパイラル状に巻回された複数のコイルパターンが積層された構造を有するコイル部品及びその製造方法において、内周端に近づくにつれてコイルパターンの膜厚が薄くなるという現象を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、コイル部品1のxy平面図である。
図3図3は、図2に示すA-A線に沿った略断面図である。
図4図4は、端子電極E1の形状を説明するためのyz側面図である。
図5図5は、導体層10のパターン形状を説明するためのxy平面図である。
図6図6は、図5に示すB-B線に沿った略斜視図である。
図7図7は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図8図8は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図9図9は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図10図10は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図11図11は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図14図14は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図15図15は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図16図16は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図17図17は、コイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図18図18は、給電パターンFPの平面形状を説明するための拡大図である。
図19図19は、第1の変形例による給電パターンFPの平面形状を説明するための拡大図である。
図20図20は、第2の変形例による給電パターンFPの平面形状を説明するための拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の好ましい実施形態によるコイル部品1の外観を示す略斜視図である。また、図2はコイル部品1のxy平面図であり、図3図2に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0019】
本実施形態によるコイル部品1は、電源回路用のインダクタとして用いることが好適な表面実装型のチップ部品であり、図1図3に示すように、磁性素体Mと、磁性素体Mに埋め込まれたコイル部Cと、一対の導体ポストBP1,BP2とを備える。コイル部Cの構成については後述するが、本実施形態においてはスパイラル状のコイルパターンを有する導体層が4層積層され、これによって1つのコイル導体が形成される。そして、コイル導体の一端が導体ポストBP1に接続され、コイル導体の他端が導体ポストBP2に接続される。
【0020】
磁性素体Mは、磁性粉を含有する樹脂からなる複合部材であり、コイル導体に電流を流すことによって生じる磁束の磁路を構成する。磁性粉としては、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などの磁性金属や、フェライトなどの磁性酸化物を用いることができる。樹脂としては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることができる。
【0021】
図3に示すように、コイル部品1に含まれるコイル部Cは、絶縁層51~55と導体層10,20,30,40が交互に積層された構成を有している。導体層10,20,30,40はそれぞれスパイラル状のコイルパターンCP1~CP4を有しており、コイルパターンCP1~CP4の上面、下面及び側面は絶縁層51~55で覆われている。
【0022】
コイルパターンCP1~CP4は、絶縁層52~54に形成されたスルーホールを介して互いに接続されることにより、コイル導体を構成している。導体層10,20,30,40及び導体ポストBP1,BP2の材料としては、銅(Cu)を用いることが好ましい。コイルパターンCP1~CP4の内径領域及び外側領域にも、磁性素体Mが埋め込まれている。絶縁層51~55のうち、少なくとも絶縁層52~54については非磁性材料が用いられる。絶縁層51,55については磁性材料を用いても構わない。
【0023】
導体層10は、最下層に位置する導体層であるが、図3に示すように、実使用時においては上下反転してマザーボードなどに実装されるため、実使用時においては最上層に位置する。導体層10には、スパイラル状に約4ターン巻回されたコイルパターンCP1と、2つの電極パターン11,12が設けられている。コイルパターンCP1及び電極パターン11,21の下面及び側面は絶縁層51で覆われ、上面は絶縁層52で覆われている。所定の断面においては、コイルパターンCP1の外周端と電極パターン11が接続されている。これに対し、電極パターン12はコイルパターンCP1とは独立して設けられている。
【0024】
導体層20は、導体層10の上面に絶縁層52を介して形成された2層目の導体層である。導体層20には、スパイラル状に約3.9ターン巻回されたコイルパターンCP2と、2つの電極パターン21,22が設けられている。コイルパターンCP2及び電極パターン21,22の下面及び側面は絶縁層52で覆われ、上面は絶縁層53で覆われている。コイルパターンCP2の内周端は、絶縁層52に形成されたスルーホールを介してコイルパターンCP1の内周端に接続されている。電極パターン21,22は、いずれもコイルパターンCP2とは独立して設けられており、絶縁層52に形成されたスルーホールを介してそれぞれ電極パターン11,12に接続されている。
【0025】
導体層30は、導体層20の上面に絶縁層53を介して形成された3層目の導体層である。導体層30には、スパイラル状に約3.6ターン巻回されたコイルパターンCP3と、2つの電極パターン31,32が設けられている。コイルパターンCP3及び電極パターン31,31の下面及び側面は絶縁層53で覆われ、上面は絶縁層54で覆われている。コイルパターンCP3の外周端は、絶縁層53に形成されたスルーホールを介してコイルパターンCP2の外周端に接続されている。電極パターン31,32は、いずれもコイルパターンCP3とは独立して設けられており、絶縁層53に形成されたスルーホールを介してそれぞれ電極パターン21,22に接続されている。
【0026】
導体層40は、導体層30の上面に絶縁層54を介して形成された4層目の導体層である。導体層40には、スパイラル状に約4ターン巻回されたコイルパターンCP4と、2つの電極パターン41,42が設けられている。コイルパターンCP4及び電極パターン41,42の下面及び側面は絶縁層54で覆われ、上面は絶縁層55で覆われている。コイルパターンCP4の内周端は、絶縁層54に形成されたスルーホールを介してコイルパターンCP3の内周端に接続されている。所定の断面においては、コイルパターンCP4の外周端と電極パターン42が接続されている。これに対し、電極パターン41はコイルパターンCP4とは独立して設けられている。電極パターン41,42は、絶縁層54に形成されたスルーホールを介してそれぞれ電極パターン31,32に接続されている。
【0027】
そして、導体ポストBP1は、絶縁層55に形成されたスルーホールを介して電極パターン41に接続され、導体ポストBP2は、絶縁層55に形成されたスルーホールを介して電極パターン42に接続される。これにより、コイルパターンCP1~CP4によって15.5ターンのコイル導体が形成され、その一端が導体ポストBP1に接続され、他端が導体ポストBP2に接続された構成となる。図3に示すように、導体ポストBP1,BP2は、積層方向における高さがコイルパターンCP1~CP4のそれぞれの高さよりも高い。
【0028】
本実施形態においては、電極パターン11,21,31,41及び導体ポストBP1の側面は、磁性素体Mの一方のyz側面に露出し、端子電極E1を構成する。また、電極パターン12,22,32,42及び導体ポストBP2の側面は、磁性素体Mの他方のyz側面に露出し、端子電極E2を構成する。yz側面とは、コイルパターンCP1~CP4の軸方向と平行な面である。さらに、導体ポストBP1,BP2は、磁性素体Mのxy底面にも露出している。xy底面とは、コイルパターンCP1~CP4の軸方向に対して垂直な面である。これにより、磁性素体Mのxy底面とマザーボードが向かい合うよう、ハンダを用いてコイル部品1をマザーボードに搭載すると、磁性素体Mの底面及び側面にフィレットが形成される。尚、図3に示す例では、電極パターン11,12,21,22,31,32,41,42の側面が完全に露出し、導体ポストBP1,BP2の底面及び側面が完全に露出しているが、本発明においてこの点は必須でなく、電極パターン11,12,21,22,31,32,41,42及び導体ポストBP1,BP2の露出面に導電性ペーストなどを形成しても構わない。
【0029】
図4は、端子電極E1の形状を説明するためのyz側面図である。
【0030】
図4に示すように、端子電極E1を構成する電極パターン21,31,41のy方向における露出幅W2は、互いにほぼ同じである。また、導体ポストBP1のy方向における露出幅W3は、W2よりもやや広いが、両者は同じであっても構わない。これに対し、電極パターン11のy方向における露出幅W1は、露出幅W2よりも狭い。これにより、本実施形態によるコイル部品1をマザーボードに実装した場合に、端子電極E1の上部におけるハンダフィレットの過剰な広がりが抑えられる。また、磁性素体Mのyz側面には、電極パターン11と電極パターン21を接続するビア導体61、電極パターン21と電極パターン31を接続するビア導体62、電極パターン31と電極パターン41を接続するビア導体63、並びに、電極パターン41と導体ポストBP1を接続するビア導体64も露出している。このうち、ビア導体61については、端子電極E1のy方向における略中央部に配置されているのに対し、ビア導体62~64は、いずれもy方向における一方側又は他方側にオフセットして配置されている。具体的には、ビア導体62,64については+y方向(図4における左側)にオフセットして配置されており、ビア導体63については-y方向(図4における右側)にオフセットして配置されている。このように、ビア導体62~64のオフセット方向を交互とすることにより、ビア導体の形成位置における段差が緩和されるとともに、ハンダのフィレットが高さ方向(-z方向)に上りにくくなることから、ハンダフィレットの過剰な広がりが抑えられる。
【0031】
図5は、導体層10のパターン形状を説明するためのxy平面図である。
【0032】
図5に示すように、導体層10は、約4ターン巻回されたスパイラル状のコイルパターンCP1と、コイルパターンCP1の外周端に接続された電極パターン11と、コイルパターンCP1から見て電極パターン11とは反対側に設けられた電極パターン12を有している。そして、電極パターン11,12には、それぞれ給電パターンFP1,FP2が接続されている。給電パターンFP1,FP2は、絶縁層51と導体層10の間に位置する薄い導体からなる。図5に示す例では、給電パターンFP1は電極パターン11から+y方向に延在し、さらに-x方向に折れ曲がる形状を有している。また、給電パターンFP2は電極パターン12から-y方向に延在し、さらに+x方向に折れ曲がる形状を有している。給電パターンFP1,FP2がこのような折れ曲がり形状を有している点は必須でないが、少なくとも、+y方向又は-y方向に延在する部分が残存していることが好ましい。
【0033】
給電パターンFP1は、平面視で電極パターン21,31,41及び導体ポストBP1と重なっており、電極パターン11の幅W1と電極パターン21,31,41及び導体ポストBP1の幅W2,W3の差分に相当する領域に給電パターンFP1が配置される。同様に、給電パターンFP2は、平面視で電極パターン22,32,42及び導体ポストBP2と重なっており、電極パターン12の幅W1と電極パターン22,32,42及び導体ポストBP2の幅W2,W3の差分に相当する領域に給電パターンFP2が配置される。
【0034】
図6は、図5に示すB-B線に沿った略斜視図である。
【0035】
図6に示すように、給電パターンFP1と導体層10はいずれも絶縁層51の表面に形成されているが、給電パターンFP1の方が下層に位置し、その膜厚は導体層10よりもかなり薄い。これは、導体層10が電解メッキによって形成された厚膜であるのに対し、給電パターンFP1は例えば金属箔からなるためである。図6に示すように、給電パターンFP1の一部は電極パターン11と重なりを有しており、残りの部分は電極パターン11と重なりを有していない。給電パターンFP1は、電解メッキ工程においてコイルパターンCP1~CP4に給電するために用いる導体パターンであり、製造後はコイル部品1の特性にほとんど寄与しないが、給電パターンFP1が電極パターン11と重ならない部分が残存している点は、後述する犠牲パターンの除去工程において用いるエッチング液が電極パターン11を浸食していないことを意味する。これに対し、給電パターンFP1が残存していない場合には、電極パターン11がエッチング液によって浸食されているおそれがあるため、このような製品は例えば不良品として選別しても構わない。
【0036】
次に、本実施形態によるコイル部品1の製造方法について説明する。
【0037】
図7図17は、本実施形態によるコイル部品1の製造方法を説明するための工程図である。図7図9に示す工程図はx方向に隣接する2個のコイル部品1に対応する平面を示し、図10図17に示す工程図は1個のコイル部品1に対応する平面又は断面を示しているが、実際には、集合基板を用いて多数のコイル部品1を同時に作製することによって多数個取りすることができる。
【0038】
まず、図示しない支持基板の表面に絶縁層51を形成した後、絶縁層51をパターニングすることによって、開口部51a,51bを形成する(図7)。絶縁層51の形成は、ラミネート法によって行うことができ、フォトリソグラフィー法によって絶縁層51をパターニングすることによって開口部51a,51bを形成することができる。以降に形成する絶縁層52~55の形成方法も同様である。開口部51aはコイルパターンCP1~CP4の外側領域と重なる位置に設けられ、開口部51bはコイルパターンCP1~CP4の内径領域と重なる位置に設けられる。また、絶縁層51は、コイルパターンCP1~CP4と重なる位置に設けられるだけでなく、x方向に隣接する2つコイル部品を繋ぐ位置にも設けられる。
【0039】
絶縁層51の表面のうち、x方向に隣接する2つコイル部品を繋ぐ位置には、ミアンダ状の給電パターンFPが形成される(図8)。つまり、ミアンダ状の給電パターンFPは、2つコイル部品の境界を跨ぐように配置される。給電パターンFPの形成方法については特に限定されないが、樹脂層と銅箔の積層体をラミネートすることによって絶縁層51を形成する場合、積層体に含まれる銅箔をパターニングすることによって形成することができる。この場合、樹脂層と銅箔の積層体をラミネートした後、まず銅箔をパターニングすることによって給電パターンFPを形成し、その後、絶縁層51をパターニングすることによって開口部51a,51bを形成すれば良い。
【0040】
次に、支持基板及び絶縁層51の表面に導体層10を形成する(図9)。導体層10は、スパッタリング法などの薄膜プロセスを用いて下地金属膜を形成し、これをフォトリソグラフィー法などを用いてパターニングした後、電解メッキ法を用いて所望の膜厚までメッキ成長させることにより形成する。以降に形成する導体層20,30,40の形成方法も同様である。導体層10は、コイルパターンCP1、電極パターン11,12及び犠牲パターンVP11,V12を含んでいる。犠牲パターンVP11,V12は、面内で、コイルパターンCP1及び電極パターン11,12のいずれにも接しない。コイルパターンCP1は、外周端から内周端に向かって右回り(時計回り)に巻回されており、その外周端は、電極パターン11に接続されている。電極パターン12は、面内でコイルパターンCP1には接続されていない。ここで、電極パターン11,12及び犠牲パターンVP11は、給電パターンFPと重なる位置に設けられる。これにより、電解メッキ工程におけるコイルパターンCP1への給電は、犠牲パターンVP11、給電パターンFP及び電極パターン11を介して行うことができる。
【0041】
給電パターンFPの平面形状は図18に示すとおりであり、犠牲パターンVP1と重なる区間71,79と、y方向に延在する区間72,74,76,78と、x方向に延在する区間73,75,77を含んでおり、区間71から区間79に亘って一筆書き可能なミアンダ形状を有している。そして、電極パターン11は区間74,75の一部と重なる位置に設けられ、電極パターン12は区間75,76の一部と重なる位置に設けられる。区間75の幅は、区間72~74,76~78の幅よりも広く設計されており、これにより電極パターン11,12との確実な電気的接続が確保される。これに対し、区間72~74,76~78の幅が細く設計されているのは、後述する犠牲パターンの除去工程においてエッチング液が電極パターン11,12に到達するのを防止するためである。区間72~74,76~78の幅については、コイルパターンCP1の幅よりも狭く設計することが好ましい。
【0042】
次に、導体層10を覆うよう、絶縁層51の表面に絶縁層52を形成した後、絶縁層52をパターニングすることによって、開口部52a~52eを形成する(図10)。開口部52aはコイルパターンCP1の外側領域と重なる位置に設けられ、開口部52bはコイルパターンCP1の内径領域と重なる位置に設けられる。また、開口部52cは電極パターン11と重なる位置に設けられ、開口部52dは電極パターン12と重なる位置に設けられる。さらに、開口部52eは、コイルパターンCP1の内周端と重なる位置に設けられる。
【0043】
次に、絶縁層52の表面に導体層20を形成する(図11)。導体層20は、コイルパターンCP2、電極パターン21,22及び犠牲パターンVP21,V22を含んでいる。犠牲パターンVP21,V22は、面内で、コイルパターンCP2及び電極パターン21,22のいずれにも接しない。コイルパターンCP2は、内周端から外周端に向かって右回り(時計回り)に巻回されており、その内周端は、絶縁層52に設けられた開口部52eを介してコイルパターンCP1の内周端に接続される。このため、電解メッキ工程におけるコイルパターンCP2への給電は、外周端側だけでなく、給電パターンFP、電極パターン11及びコイルパターンCP1を介して、内周端側からも給電することができる。また、犠牲パターンVP21,V22は、それぞれ開口部52a,52bを介して犠牲パターンVP11,VP12に接続され、電極パターン21,22は、それぞれ開口部52c,52dを介して電極パターン11,12に接続される。
【0044】
次に、導体層20を覆うよう、絶縁層52の表面に絶縁層53を形成した後、絶縁層53をパターニングすることによって、開口部53a~53eを形成する(図12)。開口部53aはコイルパターンCP2の外側領域と重なる位置に設けられ、開口部53bはコイルパターンCP2の内径領域と重なる位置に設けられる。また、開口部53cは電極パターン21と重なる位置に設けられ、開口部53dは電極パターン22と重なる位置に設けられる。さらに、開口部53eは、コイルパターンCP2の外周端と重なる位置に設けられる。
【0045】
次に、絶縁層53の表面に導体層30を形成する(図13)。導体層30は、コイルパターンCP3、電極パターン31,32及び犠牲パターンVP31,V32を含んでいる。犠牲パターンVP31,V32は、面内で、コイルパターンCP3及び電極パターン31,32のいずれにも接しない。コイルパターンCP3は、外周端から内周端に向かって右回り(時計回り)に巻回されており、その外周端は、絶縁層53に設けられた開口部53eを介してコイルパターンCP2の外周端に接続される。また、犠牲パターンVP31,V32は、それぞれ開口部53a,32bを介して犠牲パターンVP21,VP22に接続され、電極パターン31,32は、それぞれ開口部53c,53dを介して電極パターン21,22に接続される。
【0046】
次に、導体層30を覆うよう、絶縁層53の表面に絶縁層54を形成した後、絶縁層54をパターニングすることによって、開口部54a~54eを形成する(図14)。開口部54aはコイルパターンCP3の外側領域と重なる位置に設けられ、開口部54bはコイルパターンCP3の内径領域と重なる位置に設けられる。また、開口部54cは電極パターン31と重なる位置に設けられ、開口部54dは電極パターン32と重なる位置に設けられる。さらに、開口部54eは、コイルパターンCP3の内周端と重なる位置に設けられる。
【0047】
次に、絶縁層54の表面に導体層40を形成する(図15)。導体層40は、コイルパターンCP4、電極パターン41,42及び犠牲パターンVP41,V42を含んでいる。犠牲パターンVP41,V42は、面内で、コイルパターンCP4及び電極パターン41,42のいずれにも接しない。コイルパターンCP4は、内周端から外周端に向かって右回り(時計回り)に巻回されており、その外周端は電極パターン42に接続され、その内周端は絶縁層54に設けられた開口部54eを介してコイルパターンCP3の内周端に接続される。このため、電解メッキ工程におけるコイルパターンCP4への給電は、外周端側だけでなく、給電パターンFP、電極パターン11及びコイルパターンCP1~CP3を介して、内周端側からも給電することができる。また、犠牲パターンVP41,V42は、それぞれ開口部54a,54bを介して犠牲パターンVP31,VP32に接続され、電極パターン41,42は、それぞれ開口部54c,54dを介して電極パターン31,32に接続される。
【0048】
次に、導体層40を覆うよう、絶縁層54の表面に絶縁層55を形成した後、絶縁層55をパターニングすることによって、開口部55a~55dを形成する(図16)。開口部55aはコイルパターンCP4の外側領域と重なる位置に設けられ、開口部55bはコイルパターンCP4の内径領域と重なる位置に設けられる。また、開口部55cは電極パターン41と重なる位置に設けられ、開口部55dは電極パターン42と重なる位置に設けられる。
【0049】
この状態で酸などのエッチング液を用いたウェットエッチングを行うことにより、犠牲パターンVP11,VP12,VP21,VP22,VP31,VP32,VP41,VP42を除去する(図17)。コイルパターンCP1~CP4や、電極パターン11,12,21,22,31,32,41,42については、絶縁層51~55で覆われているため、エッチングされることはない。これにより、コイルパターンCP1~CP4の内径領域及び外側領域には、空間SPが形成される。ここで、給電パターンFPは犠牲パターンVP11と接していることから、犠牲パターンVP11,VP12,VP21,VP22,VP31,VP32,VP41,VP42のエッチングにおいては給電パターンFPの一部もエッチング液によって浸食される。しかしながら、図6及び図18を用いて説明したように、給電パターンFPは膜厚が薄く、且つ、その平面形状もミアンダ状であり、給電パターンFPに沿った犠牲パターンVP11と電極パターン11,12の距離は、犠牲パターンVP11と電極パターン11,12の直線距離よりも長いことから、エッチング液が電極パターン11,12に到達するのに要する時間が十分に確保される。このため、犠牲パターンVP11,VP12,VP21,VP22,VP31,VP32,VP41,VP42が完全に除去されるよう十分な時間をかけてエッチングを行っても、過剰な時間をかけない限り、エッチング液が電極パターン11,12に到達することはない。エッチング液は、給電パターンFPの一部を浸食するため、給電パターンFPは、図5に示す給電パターンFP1,FP2として残存する。図5に示す例は、図18に示す区間71,72の全体が除去され、区間73の一部が除去されることによって給電パターンFP1が残存し、区間79,78の全体が除去され、区間77の一部が除去されることによって給電パターンFP2が残存した状態が示されている。
【0050】
そして、開口部55c,55dを介してそれぞれ電極パターン41,42に接続される導体ポストBP1,BP2を形成した後、空間SPを埋める磁性素体Mを形成し、個々のコイル部品1に個片化すれば、本実施形態によるコイル部品1が完成する。磁性素体Mの形成は、未硬化又は半効果状態の複合部材を形成した後、熱処理を行うことによって、複合材料に含まれる樹脂を硬化させることによって行うことができる。
【0051】
このように、本実施形態によるコイル部品1の製造工程においては、最下層に位置する電極パターン11に給電パターンFPを接続していることから、上層に位置するコイルパターンCP2~CP4を電解メッキによって形成する際に、コイルパターンCP1からも給電を行うことができる。これにより、コイルパターンCP1~CP4の平坦性が向上するとともに、設計通りの抵抗値を得ることが可能となる。しかも、給電パターンFPは、導体層10よりも膜厚が薄く、且つ、ミアンダ形状を有していることから、酸などのエッチング液を用いて犠牲パターンVP11,VP12,VP21,VP22,VP31,VP32,VP41,VP42をエッチングする際に、エッチング液が電極パターン11,12に到達することを防止することもできる。
【0052】
また、本実施形態においては、給電パターンFPの平面形状が回転対称であることから、製造プロセスにおける基板の反りも抑制される。また、電極パターン11に対しては、区間71側からのみならず、区間79側からも給電されることから、より十分な給電を行うことが可能となる。但し、電極パターン12については、コイルパターンCP1~CP4に接続されないことから、図19に示す第1の変形例のように、給電パターンFPのうち電極パターン12に接続される部分を省略しても構わない。
【0053】
さらに、図20に示す第2の変形例のように、給電パターンFPを電極パターン11にのみ接続するとともに、電極パターン11,12を-y方向(又は+y方向)にオフセットして配置しても構わない。これによれば、犠牲パターンVP11と電極パターン11の間のスペースが広がることから、給電パターンFPに沿った犠牲パターンVP11から電極パターン11までの距離をより長くすることができる。しかも、マザーボードにコイル部品1を搭載する際、z軸を中心にコイル部品1を180°回転させると電極パターン11のオフセット方向が反転することから、これを方向性マークとして利用することも可能となる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0055】
例えば、上記実施形態よるコイル部品1は、積層された4つのコイルパターンCP1~CP4を備えているが、本発明において、コイルパターンの積層数についてはこれに限定されるものではない。また、各コイルパターンのターン数についても特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
1 コイル部品
10,20,30,40 導体層
11,12,21,22,31,32,41,42 電極パターン
51~55 絶縁層
51a,51b,52a~52e,53a~53e,54a~54e,55a~55d 開口部
61~64 ビア導体
71~79 区間
BP1,BP2 導体ポスト
C コイル部
CP1~CP4 コイルパターン
E1,E2 端子電極
FP,FP1,FP2 給電パターン
M 磁性素体
SP 空間
VP11,VP12,VP21,VP22,VP31,VP32,VP41,VP42 犠牲パターン
W1~W3 露出幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20