IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び接着剤組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/32 20060101AFI20231024BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20231024BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20231024BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20231024BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20231024BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20231024BHJP
   C08F 220/32 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C08G59/32
C08L75/04
C09J133/04
C09J175/04
C08G18/10
C08G18/38 076
C08F220/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019234448
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102711
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】方田 大遥
(72)【発明者】
【氏名】石井 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】大宅 徹
(72)【発明者】
【氏名】澤口 壽一
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/028365(WO,A1)
【文献】特開2017-171735(JP,A)
【文献】特開2017-002222(JP,A)
【文献】特開2007-254724(JP,A)
【文献】国際公開第2010/038733(WO,A1)
【文献】特開2021-059709(JP,A)
【文献】特開2021-031529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/
C08G 18/
C08G 71/
C08C 19/
C08F220/
C09J133/
C09J175/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンユニットと、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂、及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物の製造方法であって、下記工程1~3を有し、下記連鎖移動剤がアミノアルカンチオール類、アミノベンゼンチオール類から選択される、樹脂組成物の製造方法。
工程1:ポリオールとイソシアネート基含有化合物とを、溶媒の非存在下で反応させて、両末端にイソシアネート基を有するウレタンユニットを得る工程
工程2:工程1で得られたウレタンユニットに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有する連鎖移動剤並びに溶媒の混合物を添加して反応させ、両末端にスルファニル基を有するウレタンプレポリマーを得る工程
工程3:工程2で得られたウレタンプレポリマーと、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体とを、2官能以上のエポキシ基を有する化合物及び重合開始剤の存在下に重合させて、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットを形成し、ウレタン・アクリル複合樹脂及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物を得る工程
【請求項2】
ウレタンユニットの含有量が、ウレタン・アクリル複合樹脂100質量部中、40~95質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の製造方法により製造された樹脂組成物と、架橋剤とを混合して接着剤組成物を得る工程を有する、接着剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタンユニットと、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットと、が連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂、及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物の製造方法であって、作業性に優れ臭気の少ない樹脂組成物の製造方法、並びに該樹脂組成物を用いた低臭気の接着剤組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロック共重合体に代表されるブロックポリマーは、異なる性質の高分子ユニットを複数連結した構造を有し、構成する高分子種や組成により多様な性質を制御できることから機能性材料として注目されている。このような材料は、一般にミクロ相分離構造を形成することが知られており、例えばスチレン・ブタジエン-ブロックコポリマー(SBS)やスチレン・イソプレン-プロックポリマー(SIS)等の構造体は、非架橋でもミクロ相分離構造を形成することによりゴム弾性を発現し、且つ高温時に軟化するという特性から、熱可塑性エラストマーとして広く用いられている。近年、これらの構造にさらに耐熱性や柔軟性等の機能を付与する目的で、架橋形成によるミクロ相分離構造の固定化や、複数の異なる高分子種を複合化したブロックポリマーが検討されている。
【0003】
ブロックポリマーの製造方法として、最も簡便なものにリビング重合法が挙げられる。本手法はモノマー選択の自由度が高く、常圧かつ比較的低温でブロックポリマーを得られることから広く検討されているが、製法上の特性から一般的にアクリルユニット同士のブロック構造のみに限定され、アクリル以外のポリマーユニットとの複合化は困難であった。
【0004】
これらに対し、例えば特許文献1には、リビング重合法とアート錯体を用いてアクリルユニットの末端に官能基を導入する手法が開示されている。このような手法を用いることで、アクリルユニットの末端に導入された官能基を起点に、アクリル以外のポリマーユニットと連結できる可能性はあるものの、重合時に使用する重金属やハロゲン化合物への安全性の懸念や、煩雑な精製工程が必要であるという課題があった。
【0005】
一方で、非リビング重合系のブロックポリマーとして、水酸基やカルボキシル基を有するメルカプタン系連鎖移動剤を用いた合成法が検討されている。例えば特許文献2では、チオグリコールを連鎖移動剤に用いた末端に2つの水酸基を有するアクリルユニットとウレタンユニットを連結させた櫛形のブロックポリマーが開示されている。しかしながら、これらの方法では一般的に架橋基の導入が制限され、また連鎖移動剤の多くは不快臭を発するため臭気が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-215472号公報
【文献】特開2015-078326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、作業性に優れ、臭気の少ないウレタン・アクリル複合樹脂、及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物の製造方法、並びに該樹脂組成物を用いた低臭気の接着剤組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の発明に関する。
〔1〕 ウレタンユニットと、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットが連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂、及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物の製造方法であって、下記工程1~4を有する、樹脂組成物の製造方法。
工程1:ポリオールとイソシアネート基含有化合物とを、溶媒の非存在下で反応させて、両末端にイソシアネート基を有するウレタンユニットを得る工程
工程2:工程1で得られたウレタンユニットに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有する連鎖移動剤並びに溶媒の混合物を添加して反応させ、両末端にスルファニル基を有するウレタンプレポリマーを得る工程
工程3:工程2で得られたウレタンプレポリマーと、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体とを、2官能以上のエポキシ基を有する化合物及び重合開始剤の存在下に重合させて、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットを形成し、ウレタン・アクリル複合樹脂及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物を得る工程
【0009】
〔2〕 ウレタンユニットの含有量が、ウレタン・アクリル複合樹脂100質量部中、40~95質量部である、〔1〕に記載の樹脂組成物の製造方法。
【0010】
〔3〕 前記連鎖移動剤が、アミノ基とスルファニル基とを有する化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の樹脂組成物の製造方法。
【0011】
〔4〕 〔1〕~〔3〕いずれか1項に記載の製造方法により製造された樹脂組成物と、架橋剤とを混合して接着剤組成物を得る工程を有する、接着剤組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、作業性に優れ、臭気の少ないウレタン・アクリル複合樹脂を含む樹脂組成物の製造方法、及び、該樹脂組成物を用いた低臭気の接着剤組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法は、ウレタンユニットと、水酸基を有する(メタ)アクリルユニットと、が連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂、及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物の製造方法であって、下記工程1~3を有することを特徴とする。
工程1:ポリオールとイソシアネート基含有化合物とを、溶媒の非存在下で反応させて、両末端にイソシアネート基を有するウレタンユニットを得る工程
工程2:工程1で得られたウレタンユニットに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有する連鎖移動剤並びに溶媒の混合物を添加して反応させ、両末端にスルファニル基を有するウレタンプレポリマーを得る工程
工程3:工程2で得られたウレタンプレポリマーと、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体とを、2官能以上のエポキシ基を有する化合物及び重合開始剤の存在下に重合させて、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットを形成し、ウレタン・アクリル複合樹脂及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物を得る工程
【0014】
本発明は、接着剤好ましくは無溶剤型接着剤への利用に適した樹脂組成物の製造に関し、両末端にイソシアネート基を有するウレタンユニットに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有する連鎖移動剤並びに溶媒の混合物を添加して、スルファニル基を有する連鎖移動剤を用いた反応を行うことで、臭気を大幅に改善することができる。したがって、本発明により得られる樹脂組成物は、フィルム基材や粘接着剤、コーティング剤、エラストマー、医療材料、光学材料等の分野において有用である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0015】
<工程1>
本発明におけるウレタン・アクリル複合樹脂は、ウレタンユニットと、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットと、が連鎖移動剤残基により連結した構造を有しており、前記ウレタンユニットは、ポリオールとイソシアネート基含有化合物とを反応させて形成することができる。
【0016】
<ポリオール>
ウレタンユニットを構成するポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、植物油系ポリオール、その他ポリオールが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン等の重合体又は共重合体として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン/プロピレン)グリコール、ポリテトラメチレングリコール等のグリコール;ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールあるいはこれらの混合物の縮合物類;2個以上の活性水素基を有する化合物に、酸化メチレン、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン、若しくはポリオキシテトラメチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させて得られるポリオール;等が挙げられる。
【0018】
前記2個以上の活性水素基を有する化合物としては、低分子ポリオール、脂肪族アミン化合物類、芳香族アミン化合物類、アルカノールアミン類又はビスフェノール類等が挙げられる。
【0019】
前記低分子ポリオールとしては、2官能の低分子ポリオール又は3官能以上の低分子ポリオール等が挙げられる。
【0020】
2官能の低分子ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール、ビスフェノールA、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ジメチロール酢酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジヒドロキシプロピオン酸、ジヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0021】
3官能以上の低分子ポリオールとしては、特に限定されず、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,1,1-トリメチロールブタン、1,2,3-ブタントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,6-ブタントリオール、トリメチロールブテン、トリメチロールペンテン、トリメチロールヘキセン、トリメチロールヘプテン、トリメチロールオクテン、トリメチロールノネン、トリメチロールデセン、トリメチロールウンデセン、トリメチロールドデセン、トリメチロールトリデセン、トリメチロールペンタデセン、トリメチロールヘキサデセン、トリメトロールヘプタデセン、トリメチロールオクタデセン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、トリメチロールヘキセン、1,2,3-オクタントリオール、1,3,7-オクタントリオール、3,7-ジメチル-1,2,3-オクタントリオール、1,1,1-、1,1,1-トリメチロールデカン、1,2,10-デカントリオール、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-sec-ブタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ペンタン、1,1,1-トリメチロール-tert-ノナン、1,1,1-トリメチロール-tert-トリデカン、1,1,1-トリメチロール-tert-ヘプタデカン、1,1,1-トリメチロール-2-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-メチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-2-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロール-3-エチル-ヘキサン、1,1,1-トリメチロールイソヘプタデカン、1,2,3,4-ブタンテトラオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ベンゼン-1,3,5-トリオール、ベンゼン-1,2,3-トリオール、スチルベン-3,4’、5-トリオール、シュークロース、イノシトール、ソルビタン、ソルビトール、マンニトール、サッカロース、セルロース、キシリトールが挙げられる。
【0022】
脂肪族アミン化合物類としては、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパンが挙げられる。芳香族アミン化合物類としては、例えば、トルエンジアミン、ジフェニルメタンー4,4-ジアミンが挙げられる。アルカノールアミン類としては、例えば、エタノールアミン及びジエタノールアミンが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールFが挙げられる。
【0023】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上述の低分子ポリオールと二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸等の脂肪族又は芳香族の二塩基酸、及びそれらの無水物が挙げられる。
【0024】
また、ポリエステルポリオールとして、ε-カプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類の環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールを用いてもよい。
【0025】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールとしては、上述の低分子ポリオールと、ジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネート等のカーボネート化合物と、の反応により得られるものが挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしてはジメチルカーボネート又はジエチルカーボネート等を、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネート等を、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネート等を、用いることができる。
【0026】
(ポリオレフィンポリオール)
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水添した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水添した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
【0027】
(植物油系ポリオール)
植物油系ポリオールとしては、例えば、植物由来のひまし油、ダイマー酸、若しくは大豆油を原料としたポリオールが挙げられる。
【0028】
ポリオールとして好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールであり、より好ましくはポリエーテルポリオールである。
【0029】
ポリオールの数平均分子量は、好ましくは500以上5,000未満であり、より好ましくは700以上3,500未満である。
【0030】
ポリオールは、上記以外のその他ポリオールを含有してもよく、ウレタン結合濃度の調節や各種官能基導入を目的として、上述の低分子ポリオールを併用することができる。
【0031】
<イソシアネート基含有化合物>
ウレタンユニットを構成するイソシアネート基含有化合物は、イソシアネート基を2つ以上有するポリイソシアネートであることが好ましく、例えば、芳香族、脂肪族又は脂環式のジイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアナネート、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシレンジイソシアナート、p-テトラメチルキシレンジイソシアナート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネートが挙げられる。
【0033】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートテトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0034】
脂環式ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、水添キシリレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
ポリオールとイソシアネート基含有化合物との反応は、溶媒の非存在下で行われ、イソシアネート基含有化合物を過剰にすることで、両末端にイソシアネート基を有するウレタンユニットを得ることができる。反応時のイソシアネート基と水酸基とのモル比(NCOモル数/OHモル数)は、好ましくは1.05~2.00、より好ましくは1.10~1.50であり、公知のウレタン化反応を用いることができる。ウレタン化反応では、反応性を調整する目的で触媒を用いてもよい。
【0036】
(触媒)
触媒としては、公知の金属系触媒、アミン系触媒等が使用できる。金属系触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、オクトエ酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキソエート)、2-エチルヘキソエート鉛、チタン酸2-エチルヘキシル、チタンエチルアセテート、2-エチルヘキソエート鉄、2-エチルヘキソエートコバルト、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、テトラ-n-ブチル錫等が挙げられる。アミン系触媒としては、テトラメチルブタンジアミン等の3級アミン等が挙げられる。触媒の使用量は、好ましくはポリオールに対して0.05~1モル%の範囲である。
【0037】
(ウレタンユニットの数平均分子量)
ウレタンユニットの数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは3,000~200,000である。3,000以上であると硬化物の強度や伸長性等の物性に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易である。
【0038】
<工程2>
次いで、工程1で得られたウレタンユニットに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有する連鎖移動剤並びに溶媒の混合物を添加して反応させることで、両末端にスルファニル基を有するウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0039】
<イソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有する連鎖移動剤>
連鎖移動剤は、分子内にイソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有するものであれば特に限定されず、公知の連鎖移動剤から単独又は2種以上を併用して用いることができる。
イソシアネート基と反応しうる官能基としては、水酸基又はアミノ基が挙げられるが、反応性の観点から好ましくはアミノ基である。アミノ基はスルファニル基よりも反応性が高いため、工程1で得られたウレタンユニットの末端イソシアネート基と優先的に反応してウレア結合を形成し、ウレタンプレポリマーの末端に効率的にスルファニル基を導入することができる。
【0040】
分子内に1つのアミノ基と1つのスルファニル基を有する化合物としては、例えば、2-アミノエタンチオール、3-アミノプロピル-1-チオール、1-アミノプロピル-2-チオール、4-アミノ-1-ブタンチオール等のアミノアルカンチオール類;2-アミノチオフェノール、3-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール等のアミノベンゼンチオール類;が挙げられる。中でも、好ましくはアミノアルカンチオール類であり、より好ましくは2-アミノエタンチオールである。
【0041】
<溶媒>
工程2において使用できる溶媒としては、例えば、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、プロピレンオキシド、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類の他、トルエン、メチルシクロヘキサン、アセトニトリルが挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明において溶媒としては、ケトン類が好適に用いられる。
本発明で使用する溶媒は、反応終了後に減圧下若しくは常圧下で除去されることが好ましい。溶媒の除去は、反応の途中段階で行われてもよい。
【0042】
本発明では、工程1で得られたウレタンユニットに、イソシアネート基と反応しうる官能基及びスルファニル基を有する連鎖移動剤並びに溶媒の混合物を添加して、スルファニル基を有する連鎖移動剤を用いた反応を行うことで、臭気を大幅に改善することができる。
該混合物における、連鎖移動剤と溶媒との比(連鎖移動剤の質量/溶媒の質量)は、好ましくは0.5~2であり、より好ましくは0.8~1.2である。上記範囲内であると、臭気をより改善できるため好ましい。
【0043】
<工程3>
次いで、工程2で得られたウレタンプレポリマーと、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体とを、2官能以上のエポキシ基を有する化合物及び重合開始剤の存在下に重合させることで、ウレタンユニットと、エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットとが、連鎖移動剤残基により連結したウレタン・アクリル複合樹脂及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む樹脂組成物を得ることができる。
【0044】
<エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体>
前記エポキシ基を有する(メタ)アクリルユニットは、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体を含むエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる構造体である。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体としては、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシブチル、(メタ)アクリル酸-4,5-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6,7-エポキシペンチル、(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、ラクトン変性(メタ)アクリル酸-3,4-エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシドが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキルエチレン性不飽和単量体類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキルエチレン性不飽和単量体類;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有するエチレン性不飽和単量体類;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、又はノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキルエーテル基を有するエチレン性不飽和単量体類;3-(アクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-メチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-エチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ブチルオキセタン、3-(アクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン及び3-(メタクリロイルオキシメチル)3-ヘキシルオキセタン等のオキセタニル基を有するエチレン性不飽和単量体類;スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、又は(メタ)アクリル酸アリル等のビニル基を有するエチレン性不飽和単量体類;エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、又はイソブチルビニルエーテル等のエーテル基を有するエチレン性不飽和単量体類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート又はこれらモノマーのカプロラクトン付加物(付加モル数は1~5)、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和単量体類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-アクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体類;アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチルメタクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N-ジメチルアミノスチレン、N,N-ジエチルアミノスチレン、メチルα-アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N-ビニルチオピロリドン、N-ビニルピロールこれらの塩等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート、ニトロスチレン等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N-ペントキシメチル-(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N-メチルN-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジ(メトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-メトキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(エトキシメチル)アクリルアミド、N-エトキシメチル-N-プロポキシメチルメタアクリルアミド、N,N-ジ(プロポキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(プロポキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-ブトキシメチル-N-(メトキシメチル)メタアクリルアミド、N,N-ジ(ペントキシメチル)アクリルアミド、N-メトキシメチル-N-(ペントキシメチル)メタアクリルアミド、桂皮酸アミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートクロライド、メチルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリレートブロマイド、トリメチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミドメトサルフェート、ベンジルジエチルアンモニオエチル(メタ)アクリルアミドカーボネート、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、トリメチルアリルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウムカチオンを含有するエチレン性不飽和単量体;が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体の含有量は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは5~100質量部であり、より好ましくは5~60質量部、さらに好ましくは15~35質量部である。含有量が5~100質量部であると、樹脂組成物の硬化物の強度や伸長性等の物性に優れるため好ましい。
【0047】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物や有機過酸化物を用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アゾ系化合物としては、特に制限されず、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカーボキシレート)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]が挙げられる。
有機過酸化物としては、特に制限されず、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサエート、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドが挙げられる。
【0048】
重合開始剤の使用量は、エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは0.001~15質量部である。0.001~15質量部の範囲であると、効果的に連鎖移動重合が進行するため好ましい。
【0049】
<2官能以上のエポキシ基を有する化合物>
2官能以上のエポキシ基を有する化合物は特に制限されないが、常温で液体状のものが好ましい。2官能以上のエポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノン型エポキシ樹脂及びそれらの変性物が挙げられる。また、2官能以上のエポキシ基を有する化合物として、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多官能グリシジルエーテルのような3官能以上の多官能エポキシ樹脂を用いてもよい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0050】
工程3で形成される(メタ)アクリルユニットの数平均分子量は、好ましくは2,000~200,000である。2,000以上であると硬化物の強度や伸長性等の物性に優れ、200,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0051】
工程3により得られるウレタン・アクリル複合樹脂の数平均分子量は、好ましくは、5,000~300,000であり、より好ましくは10,000~100,000であり、さらに好ましくは20,000~50,000である。5,000以上であると硬化物の強度や伸長性等の物性に優れ、300,000以下であると粘度の調整が容易であるため好ましい。
【0052】
ウレタン・アクリル複合樹脂中のウレタンユニットの含有量は、ウレタン・アクリル複合樹脂100質量部中、好ましくは40~95質量部であり、より好ましくは60~80質量部である。ウレタンユニットを40~95質量部含むと、硬化物の強度や伸長性等の物性に優れるため好ましい。
【0053】
<工程4>
工程3で得られた樹脂組成物が溶媒を含む場合、樹脂組成物から溶媒を除去することで、ウレタン・アクリル複合樹脂、及び2官能以上のエポキシ基を有する化合物を含む無溶剤型の樹脂組成物を得ることができる(以下、工程4)。溶媒を除去する方法は特に制限されないが、減圧下で脱気する方法が好適に用いられる。
【0054】
<接着剤組成物>
工程1~3で得られた樹脂組成物と、架橋剤とを混合することで、ウレタン・アクリル複合樹脂と2官能以上のエポキシ基を有する化合物と架橋剤とを含有する接着剤組成物を得ることができる。得られた接着剤組成物は、20~150℃程度の条件で架橋させることで硬化物を得ることができ、フィルム基材、粘着剤、接着剤、コーティング剤、エラストマー、医療材料、光学材料等の分野において有用である。
【0055】
<架橋剤>
架橋剤は、接着剤組成物に含まれるウレタン・アクリル複合樹脂又は2官能以上のエポキシ基を有する化合物が有するエポキシ基と反応し得る官能基を有するものが好ましく、例えば、アミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノール樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノヘキサン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミンポリエチレンイミンのダイマ-酸エステル等の脂肪族アミン類;イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン、ビス( アミノメチル) ノルボルナン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環式アミン類;テトラクロロ-p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノアニゾール、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、2,4-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-アミノフェノール、m-アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2-ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α-(m-アミノフェニル)エチルアミン、α-(p-アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、3,3’-ジイソプロピル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジ-t-ブチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-5,5’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の芳香族アミン類;2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジエチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール誘導体類;三フッ化ホウ素-モノエチルアミン、三フッ化ホウ素-ピペリジン、三フッ化ホウ素-トリエチルアミン、三フッ化ホウ素-アニリン錯体等の三フッ化ホウ素-アミン錯体類;ジシアンジアミド、メチルグアニジン、エチルグアニジン、プロピルグアニジン、ブチルグアニジン、ジメチルグアニジン、トリメチルグアニジン、フェニルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トルイルグアニジン、2,3-グアニルウレア、ベンゾイルジシアンジアミド、2,6-キシレニルビグアニド、フェニルビグアニド等のグアニジン誘導体類;トリエチレングリコ-ルジアミン、テトラエチレングリコ-ルジアミン、ジエチレングリコ-ルビス(プロピルアミン)、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレングリコール)トリアミン、ポリ(エチレングリコール)ジアミン、ポリ(エチレングリコール)トリアミン、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)ジアミン、ポリ(テトラメチレンエーテルグリコール)トリアミン、ポリ(プロピレン/エチレングリコール)ジアミン、ポリ(プロピレン/エチレングリコール)トリアミン等のポリエ-テルポリアミン類;が挙げられる。
【0057】
アミド系化合物としては、例えば、リノレン酸やオレイン酸の2量体(ダイマー酸)とジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン等のポリアミンとを反応させてなる、分子中に一級アミンと二級アミンを有するポリアミドアミンが挙げられる。
【0058】
酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸が挙げられる。
【0059】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、アルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0060】
中でも、長いポットライフを有し、高い接着強度が得られるため、架橋剤として好ましくはグアニジン誘導体類であり、より好ましくはジシアンジアミドである。
【0061】
接着剤樹脂組成物に含まれる全てのエポキシ基の合計のモル数と架橋剤中のエポキシ基との反応に関与する活性水素基の合計のモル数の比(エポキシ基/硬化剤中の活性水素基)は、好ましくは0.5~1.5である。上記範囲内であると、接着強度と柔軟性に優れるため好ましい。
【0062】
<その他成分>
本発明の接着剤組成物は、さらに、反応促進剤、シランカップリング剤、レベリング剤又は消泡剤、充填剤、噴射剤、可塑剤、超可塑剤、湿潤剤、難燃剤、粘度調整剤、保存剤、安定剤及び着色剤等の公知の添加剤を含むことができる。
【0063】
ジシアンジアミドを硬化剤として用いる場合、反応促進剤としては、例えば、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物類;トリエチルアミンや2,4,6-トリス( ジメチルアミノメチル) フェノール等の3級アミン化合物、三フッ化ホウ素・ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・トリエタノールアミン錯体、三塩化ホウ素・オクチルアミン錯体等のハロゲン化ホウ素等のルイス酸錯体類;アンモニウム塩やホスホニウム塩等のオニウム塩;N,N-ジメチル-N’-(3-クロロ-4 -メチルフェニル)尿素、N,N-ジメチル-N’-(4-クロロフェニル)尿素、N,N-ジメチル-N’-(3,4-ジクロロフェニル)尿素、N,N-ジメチル-N -(3,4-ジクロロメチルフェニル)尿素、2,4-(N',N’-ジメチルウレイド)トルエン、1,4-ビス(N',N’-ジメチルウレイド)ベンゼン等の尿素誘導体類等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
反応促進剤の添加量は、接着剤樹脂組成物中のウレタン・アクリル複合樹脂100質量部に対し、好ましくは0.005~5質量部である。
【0065】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を有するトリアルコキシシラン;3―メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を有するトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい
【0066】
シランカップリング剤の添加量は、接着剤組成物中のウレタン・アクリル複合樹脂100質量部に対し、好ましくは0.05~10質量部である。
【0067】
レベリング剤又は消泡剤の内、レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、レシチン等が挙げられる。
【0068】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アルキルビニルエーテルとアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合物等の公知のものが挙げられる。
【実施例
【0069】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、特に断りのない限り実施例における「部」及び「%」は、各々「質量部」及び「質量%」を表す。
【0070】
[数平均分子量(Mn)]
数平均分子量は、カラムとしてShodexGPCLF-604(Shodex社製)と、RI検出器とを備えたGPC(Shodex社製、GPC-104)を用いて、展開溶媒をTHFとした場合のポリスチレン換算分子量を用いた。
【0071】
<樹脂組成物の製造>
[実施例1]樹脂組成物(E-1)
(工程1)窒素ガス導入管、攪拌装置、温度計、還流器を備えた反応容器に、ポリオールとしてP-1000(製品名、一般名:2官能ポリプロピレングリコール、水酸基価110、ADEKA社製)100部、イソシアネート基含有化合物としてイソホロンジイソシアネート(以下、IPDI)28.3部、触媒としてチタンジイソプロポキシビズ(エチルアセトアセテート)を0.02部仕込み均一に撹拌した後、窒素雰囲気下110℃で5時間反応させて、両末端にイソシアネート基を有するウレタンユニットを得た。
(工程2)工程1で得られた生成物を80℃まで冷却し、メチルエチルケトン(以下、MEK)4.3部と連鎖移動剤である2-アミノエタンチオール4.3部との混合溶液を加え、75℃で2時間反応させて、両末端にスルファニル基を有するウレタンプレポリマーとメチルエチルケトンとを含む組成物を得た。反応の終点は、FT-IRによりイソシアネート基由来のピーク(2270cm-1付近)の消失により確認した。
(工程3)工程2で得られた組成物に、2官能以上のエポキシ基を有する化合物としてD.E.R.331(製品名、一般名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ価190、ダウ・ケミカル社製)59.0部、エポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体としてグリシジルメタクリレート(以下、GMA)13.3部、その他のエチレン性不飽和単量体としてn-ブチルメタクリレート(以下、BMA)31.0部を加え、均一に撹拌した後、窒素雰囲気下で75℃に昇温した。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.1部を30分毎に13回分割して加え、重合開始剤の添加後にさらに2時間反応させて(メタ)アクリルユニットが形成された、ウレタン・アクリル複合樹脂及びD.E.R.331を含む樹脂組成物を得た。
(工程4)次いで、減圧下で脱気してメチルエチルケトンを除去し、ウレタン・アクリル複合樹脂と2官能以上のエポキシ基を有する化合物とを含む樹脂組成物(E-1)を得た。
エチレン性不飽和単量体100部中のエポキシ基を有する(メタ)アクリル単量体の含有量、ウレタン・アクリル複合樹脂100部中のウレタンユニットの含有量、及びウレタン・アクリル複合樹脂の数平均分子量(Mn)は表1に示すとおりである。
【0072】
[実施例2]樹脂組成物(E-2)
工程3における2官能以上のエポキシ基を有する化合物を、jER630(製品名、一般名:N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン、エポキシ価97、三菱ケミカル社製)59.0部に変更した以外は、樹脂組成物(E-1)と同様にして、ウレタン・アクリル複合樹脂と2官能以上のエポキシ基を有する化合物とを含む樹脂組成物(E-2)を得た。
【0073】
[実施例3]樹脂組成物(E-3)
工程3における2官能以上のエポキシ基を有する化合物を、jER604(製品名、一般名:ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ価120、三菱ケミカル社製)59.0部に変更した以外は、樹脂組成物(E-1)と同様にして、ウレタン・アクリル複合樹脂と2官能以上のエポキシ基を有する化合物とを含む樹脂組成物(E-3)を得た。
【0074】
[比較例1]樹脂組成物(E-4)
工程2において、メチルエチルケトン4.3部と2-アミノエタンチオール4.3部とを予め混合した混合溶液を用いずに、メチルエチルケトン4.3部と2-アミノエタンチオール4.3部とを別々に添加した以外は、樹脂組成物(E-1)と同様にして、ウレタン・アクリル複合樹脂と2官能以上のエポキシ基を有する化合物とを含む樹脂組成物(E-4)を得た。
【0075】
[比較例2]樹脂組成物(E-5)
工程2において、メチルエチルケトン4.3部と2-アミノエタンチオール4.3部との混合溶液を用いずに、2-アミノエタンチオール4.3部のみを添加した以外は、樹脂組成物(E-1)と同様にして、ウレタン・アクリル複合樹脂と2官能以上のエポキシ基を有する化合物とを含む樹脂組成物(E-5)を得た。
【0076】
[比較例3]樹脂組成物(E-6)
工程2において、メチルエチルケトン4.3部と2-アミノエタンチオール4.3部との混合溶液を用いずに、2-アミノエタンチオール4.3部とD.E.R.331(製品名、一般名:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ価190、ダウ・ケミカル社製)58.0部とを別々に添加した以外は、樹脂組成物(E-1)と同様の所作を行ったところ、2-アミノエタンチオールとD.E.R.331を別々に添加した際に、反応系がゲル化し、樹脂組成物を得ることができなかった。
【0077】
<接着剤組成物の製造>
[実施例4]接着剤組成物(G-1)
樹脂組成物(E-1)を10部、架橋剤としてジシアンジアミド0.36部、硬化促進剤としてN,N-ジメチル-N’-(4-クロロフェニル)尿素0.05部を室温で攪拌混合し、接着剤組成物(G-1)を得た。
【0078】
[実施例5~6、比較例3~4]
表2に示す配合組成に変更した以外は、接着剤組成物(G-1)と同様の操作を行い、接着剤組成物(G-2~G-5)を得た
【0079】
<樹脂組成物及び接着剤組成物の評価>
得られた樹脂組成物及び接着剤組成物について以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0080】
[臭気評価]
得られた樹脂組成物及び接着剤組成物について、各々50gを500mlのガラス瓶に入れ、蓋をして密封した。ガラス瓶を40℃で2時間加熱した後、蓋を開けて臭気を確認した。評価は10人のパネラーによる官能評価とし、以下の基準で判断した。
A:10人中、0名~1名が不快臭を感じた
B:10人中、2名~3名が不快臭を感じた
C:10人中、4名以上が不快臭を感じた
【0081】
【表1】
【0082】
表1中の略称を以下に示す。
P-1000:2官能ポリプロピレングリコール、水酸基価110、ADEKA社製
IPDI:イソホロンジイソシアネート
MEK:メチルエチルケトン
GMA:メタクリル酸グリシジル
MMA:メチルメタクリレート
D.E.R.331:ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ価190、ダウ・ケミカル社製
jER630:N,N-ビス(2,3-エポキシプロピル)-4-(2,3-エポキシプロポキシ)アニリン、エポキシ価97、三菱ケミカル社製
jER604:ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、エポキシ価120、三菱ケミカル社製
【0083】
【表2】
【0084】
表1及び表2の結果から、本発明により得られた樹脂組成物及び接着剤組成物は、臭気に優れていた。よって、本発明の製造方法により得られる樹脂組成物及び接着剤は、作業性に優れ、且つフィルム基材や粘接着剤、コーティング剤、エラストマー、医療材料、光学材料等の分野において有用である。