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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 43/02 20060101AFI20231024BHJP
   B65G 43/06 20060101ALI20231024BHJP
   B65G 17/20 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B65G43/02 Z
B65G43/06
B65G17/20 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020020447
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021123497
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田代 学
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】実開昭47-030482(JP,U)
【文献】特開2004-051289(JP,A)
【文献】特開2009-262592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 17/00-17/48
B65G 43/00-43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を支持する複数の搬送部材が間隔をおいて設けられ、当該搬送物を搬送するべく駆動されるエンドレスのコンベヤと、
上記搬送部材が上記搬送物の搬送方向から係合する複数の係合部材が間隔をおいて設けられており、上記コンベヤによる上記搬送物の搬送ラインに沿って延びる沿線部を有し、該沿線部において上記コンベヤから上記搬送部材を介して上記係合部材に駆動力を受けて走行するエンドレス要素と、
上記搬送部材が上記コンベヤによらずに自走する搬送異常を検出する搬送異常検出手段と、
上記搬送異常検出手段によって上記搬送異常が検出されたときに、上記エンドレス要素の走行に制動力を与えるブレーキ装置とを備えており、
上記エンドレス要素の走行異常を検出する走行異常検出手段を備え、
上記走行異常検出手段によって上記エンドレス要素の走行異常が検出されたときに上記コンベヤを停止させることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記コンベヤによる上記搬送物の搬送ラインは上記搬送物を下降させていく下り傾斜部を備え、
上記エンドレス要素の上記沿線部は上記下り傾斜部に沿って延びていることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記エンドレス要素が上記コンベヤの側方を走行するように、上記コンベヤと上記エンドレス要素が並設されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
上記複数の係合部材は上記コンベヤにおける上記搬送部材の配設ピッチに略対応するピッチで上記エンドレス要素に設けられていることを特徴とする搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体等を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送物を搬送部材に搭載して駆動チェーン等のエンドレスコンベヤで搬送する搬送装置、例えば、車体等の搬送に利用されるオーバヘッド型搬送装置では、搬送力を与える駆動チェーンが切れたときに搬送物を搭載した搬送部材が暴走する可能性がある。例えば、搬送物を高位置のストレージラインから低位置の作業ステーションに斜めに下降させていく箇所では、駆動チェーンが切れたときに搬送物を搭載した搬送部材がその自重で走行して暴走する懸念がある。
【0003】
このような搬送部材の暴走を防止する技術の一例が特許文献1に記載されている。それは、オーバヘッド型搬送装置において、搬送部材の暴走を検出したときに、キャリッジの車輪が通過する軌道レール内にストッパを突出させて車輪に当て、キャリッジの前進を停止させるというものである。特許文献2には、暴走防止技術の別の例が記載されている。それは、搬送部材の暴走を検出したときに、トロリーの前方にストッパを突出させてトロリーの前進を止めるというものである。
【0004】
また、搬送物の搬送ラインの下り傾斜部にエンドレスの暴走防止チェーンを平行に配置し、該チェーンに間隔をおいて多数の係合部材を設け、この係合部材を搬送部材に設けた係止アームに係合させることによって、搬送部材の暴走を防止することも知られている。このチェーンタイプの暴走防止技術では、暴走防止チェーンが搬送部材の搬送速度よりも僅かに大なる速度をもって走行するように専用の駆動手段で駆動される。各係合部材は係止アームに当たったときに退避回動して係止アームを追い越していく。搬送部材の速度が暴走によって速くなると、搬送部材の係止アームが暴走防止チェーンの係合部材に当たってこれを押すため、これを検出して暴走防止チェーンを停止させるようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-262592号公報
【文献】特開2009-184481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のストッパタイプの暴走防止技術では、搬送ラインの搬送部材の暴走を生ずる可能性がある箇所全てにストッパ及びその作動手段を設ける必要があり、設備コストが大きくなる。しかも、キャリッジの車輪或いはトロリーがストッパに当たるまでは搬送部材の暴走が止まらない。従って、例えば、搬送物と作業者の安全距離確保して搬送部材を停止させるには、ストッパの数を増やしてその間隔を短くする必要がある。
【0007】
チェーンタイプの暴走防止技術の場合も、搬送部材側の係止アームが暴走防止チェーンの係止片に当たるまでは暴走が止まらない。従って、上記安全距離の確保のために係止片の数を多くする必要がある。また、暴走防止チェーンを走行させる専用の駆動手段が必要になるとともに、搬送物の搬送速度を変える場合は、それに応じて暴走防止チェーンの速度を変えるためのインバータが必要になる。さらに、暴走防止チェーンの係止片が搬送部材側の係止アームを追い越していくときに、係止アームに当たって退避回動と復帰回動を行なうため、騒音が大きくなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、駆動コンベヤに搬送異常があったとき、搬送物を支持する搬送部材を速やかに停止させること、設備コストを軽減すること、そして、騒音を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、搬送ラインに沿って設けた暴走防止用のエンドレス要素に専用の駆動手段を設けるのではなく、このエンドレス要素が搬送部材に押されて走行するようにし、コンベヤの走行異常があったときに、当該エンドレス要素にブレーキをかけて搬送部材の暴走を止めるようにした。
【0010】
すなわち、ここに開示する搬送装置は、
搬送物を支持する複数の搬送部材が間隔をおいて設けられ、当該搬送物を搬送するべく駆動されるエンドレスのコンベヤと、
上記搬送部材が上記搬送物の搬送方向から係合する複数の係合部材が間隔をおいて設けられており、上記コンベヤによる上記搬送物の搬送ラインに沿って延びる沿線部を有し、該沿線部において上記コンベヤから上記搬送部材を介して上記係合部材に駆動力を受けて走行するエンドレス要素と、
上記搬送部材が上記コンベヤによらずに自走する搬送異常を検出する搬送異常検出手段と、
上記搬送異常検出手段によって上記搬送異常が検出されたときに、上記エンドレス要素の走行に制動力を与えるブレーキ装置とを備えており、
上記エンドレス要素の走行異常を検出する走行異常検出手段を備え、
上記走行異常検出手段によって上記エンドレス要素の走行異常が検出されたときに上記コンベヤを停止させることを特徴とする。
【0011】
これによれば、エンドレス要素は、コンベヤから搬送部材を介して係合部材に駆動力を受けて、つまり、係合部材が搬送部材に押されて走行する。従って、エンドレス要素を走行させるための専用の駆動手段を必要としない。そうして、エンドレス要素は、コンベヤの搬送部材が係合部材に係合した状態で、コンベヤと同期して走行するから、エンドレス要素を強制的に停止させると、係合部材に係合している搬送部材はエンドレス要素の停止と同時に停止することになる。従って、コンベヤの搬送異常、すなわち、搬送部材の自走が検出されたときに、エンドレス要素に制動力が加わると、係合部材に係合している搬送部材の走行が瞬時に抑えられ、搬送部材の暴走を速やかに止めることができる。
【0012】
また、エンドレス要素の係合部材がコンベヤ側の搬送部材を追い越すことはないから、従来のチェーンタイプで発生していた係合部材の追越し騒音も生じなくなる。さらに、エンドレス要素に専用の駆動手段を必要とせず、エンドレス要素をコンベヤの速度よりも僅かに大なる速度をもって走行させる必要がないから、設備コストの低減に有利になる。
【0013】
ここに、搬送部材が自走によってその速度が大きくなると、エンドレス要素の走行速度がコンベヤの走行速度を上回るから、両者の走行速度差を監視することによって、搬送異常を検出することができる。
【0014】
また、搬送部材は、コンベヤが切れたとき、或いはコンベヤから外れたときに自走する状態となる。そのときは、搬送部材の搬送においてコンベヤ駆動手段に加わる負荷が低下する。従って、搬送異常(搬送部材の自走)は、例えば、当該負荷の変化に基づいてを検出することができる。或いは、コンベヤの切断はコンベヤの張力低下を招くから、その張力の低下に基いて搬送異常を検出することができる。
【0015】
一実施形態では、上記コンベヤによる上記搬送物の搬送ラインは上記搬送物を下降させていく下り傾斜部を備え、上記エンドレス要素の上記沿線部は上記下り傾斜部に沿って延びている。従って、搬送異常(搬送部材の自走)があったときの下り傾斜部での搬送部材の暴走を効率良く速やかに止めることができる。
【0016】
一実施形態では、上記エンドレス要素が上記コンベヤの側方を走行するように、上記コンベヤと上記エンドレス要素が並設されている。従って、コンベヤとエンドレス要素をコンパクトにまとめることができ、設備レイアウトが容易になる。
【0017】
一実施形態では、上記複数の係合部材は上記コンベヤにおける上記搬送部材の配設ピッチに略対応するピッチで上記エンドレス要素に設けられている。従って、エンドレス要素に制動力が付与されたときに、エンドレス要素の沿線部において搬送方向に並ぶ搬送部材全てを瞬時に若しくは僅かな移動でもって対応する各係合部材に係合させてその走行を抑えることができる。よって、作業者や作業機械との安全距離を確保して搬送物の暴走を止める上で有利になる。
【0018】
本構成では、上記エンドレス要素の走行異常を検出する走行異常検出手段を備え、この走行異常検出手段によって上記エンドレス要素の走行異常が検出されたときに上記コンベヤを停止させる。
【0019】
エンドレス要素が円滑に走行しない走行異常があると、コンベヤによる搬送部材の走行がエンドレス要素の係合部材によって抑えられるため、コンベヤ側に過負荷が加わる。そこで、エンドレス要素の走行異常が検出されたときはコンベヤを停止させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンベヤの搬送ラインに沿って延びる沿線部を有するエンドレス要素を備え、このエンドレス要素がコンベヤから搬送部材を介して係合部材に駆動力を受けて走行するようにし、搬送部材がコンベヤによらずに自走する搬送異常が検出されたときに、エンドレス要素の走行に制動力を与えるようにしたから、搬送部材が自走するようになったときに、その暴走を速やかに止めることができるととともに、騒音の低減及び設備コストの低減にも有利になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】搬送装置を示す側面図。
図2】暴走防止チェーン及びそのガイドレールを示す側面図。
図3】暴走防止チェーンのブレーキ装置の支持構造を示す側面図。
図4図3のIV-IV線における断面図。
図5】制御系のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1に示す搬送装置は、搬送物としての車体1を各種の車両部品の組付けや車体塗装等が行なわれる各作業ステーションを巡るように搬送するオーバヘッド型搬送装置である。同図において、2は車体搬送用のエンドレスのコンベヤとしてのチェーン(以下、「コンベヤチェーンという。)、3は搬送部材の暴走を防止するためのエンドレス要素としての暴走防止チェーン、4は車体1を支持する搬送部材としてのハンガーである。当該搬送装置には多数のハンガー4が搬送方向に間隔をおいて設けられている。
【0024】
<搬送物の搬送手段>
コンベヤチェーン2は、駆動スプロケット(図示省略)と従動スプロケット5に巻き掛けられている。コンベヤ駆動手段(電動モータ)による駆動スプロケットの回転によってコンベヤチェーン2が走行する。従動スプロケット5にはテークアップ装置6が設けられている。車体1の搬送ラインには、車体1をストレージラインから作業ステーションに下降させていく下り傾斜部7が設けられている。コンベヤチェーン2はサイドローラ付きチェーンである。コンベアチェーン2のサイドローラ8を転動させてコンベヤチェーン2の車体搬送方向への走行を案内するガイドレール9が搬送ラインに沿って設けられている。
【0025】
ガイドレール9の下側には、搬送用のトロリー11を案内する走行レール12がガイドレール9に沿って設けられている。各ハンガー4は、ロードバー13を介してトロリー11によって走行レール12に支持されている。ハンガー4を支持するロードバー13は前側ロードバー13と後側ロードバー13に連結されている。前後のロードバー13にはオイルパン14が支持されている。
【0026】
前側ロードバー13を支持する先頭のトロリー11に、コンベヤチェーン2のチェーンリンクから下方に突出したプッシャーが連結されることによって、ハンガー4に搬送力が与えられる。ハンガー4には、搬送ラインの下り傾斜部7や上り傾斜部において車体1の水平状態を保つための水平保持機構15が設けられている。ハンガー4の上部フレーム16の前端には、暴走防止チェーン3の後述する係合部材31に係合させるための、上方に突出した係合爪17が設けられている。
【0027】
<暴走防止チェーン>
暴走防止チェーン3は、車体搬送方向における下り傾斜部7の手前側と下り傾斜部7の先側に配置した2つのスプロケット21,22に巻き掛けられている。スプロケット21,22は遊転スプロケットであり、暴走防止チェーン3には専用の駆動手段は設けられていない。手前側スプロケット21には、該スプロケット21の回転に制動力を与える、すなわち、暴走防止チェーン3の走行に制動力を与えるブレーキ装置23が設けられている。先側スプロケット22にはテークアップ装置24が設けられている。
【0028】
暴走防止チェーン3は、下り傾斜部7に沿って車体搬送方向にチェーンを走行させるように延びる傾斜沿線部25を有する。コンベヤチェーン2と暴走防止チェーン3は、暴走防止チェーン3が傾斜沿線部25においてコンベヤチェーン2の側方を走行するように並設されている。
【0029】
暴走防止チェーン3は、図2に示すように、サイドローラ付きチェーンである。暴走防止チェーン3に対して、そのサイドローラ26を転動させて暴走防止チェーン3の走行を案内する搬送側ガイドレール27と戻り側ガイドレール28とが設けられている。図1に示すように、ガイドレール27,28は、スプロケット21,22間を結ぶように下り傾斜部7に沿って延びている。搬送側ガイドレール27は、暴走防止チェーン3を下り傾斜部7に沿って車体搬送方向に下り走行するように案内する。戻り側ガイドレール28は、暴走防止チェーン3を下り傾斜部7に沿って上り走行するように案内する。
【0030】
図2に示すように、暴走防止チェーン3には、ハンガー4の上端の係合爪17が車体搬送方向から係合する複数の係合部材31が車体搬送方向に間隔をおいて設けられている。図1に示すように、係合部材31は、コンベヤチェーン2におけるハンガー4の配設ピッチに略対応するピッチで配設されている。
【0031】
図2に示すように、係合部材31は、車体搬送方向に直交する水平ピン32によってチェーンリンク3aに回動自在に枢支されている。係合部材31は、暴走防止チェーン3が車体搬送方向に走行する搬送側にあるとき、自重で下方に突出してハンガー4の係合爪17が係合する係合位置になる。係合部材31の基端部には、暴走防止チェーン3に当たって係合部材31を係合位置に保持するストッパ33が設けられている。係合部材31は、暴走防止チェーン3の戻り側では、暴走防止チェーン3の上に伏せた状態になる。
【0032】
<ブレーキ装置>
図3及び図4に示すように、暴走防止チェーン3の手前側スプロケット21は、そのシャフト21aが軸受36によって機枠35に回転自在に支持されている。ブレーキ装置23は、機枠35の側方においてシャフト21aに回転自在に嵌められたブレーキ支持板37に支持されている。
【0033】
ブレーキ装置23は、無励磁作動形であり、シャフト21aと一体になって回転するディスク23aと、ディスク23aをプレート23bに押しつけて制動力を発生するアーマチュア23c、アーマチュア23cをディスク23aに押しつける方向に付勢するスプリング(図示省略)と、スプリングの付勢に抗してアーマチュア23cをディスク23cから離すための電磁コイル23dとを備えてなる。
【0034】
電磁コイル23dに通電する電源がオンであるときは、アーマチュア23cが電磁コイル23dに引き寄せられてディスク23aが解放されるため、ブレーキ装置23は非作動状態となり、手前側スプロケット21に制動力を及ぼさない。上記電源がオフになると、アーマチュア23cがスプリングの付勢によってディスク23aをプレート23bに押しつける。これにより、ディスク23aの回転が抑えられるから、手前側スプロケット21に制動力が付与される。すなわち、ブレーキ装置23が作動状態になる。
【0035】
<ロータリエンコーダ>
機枠35における手前側スプロケット21を挟んでブレーキ装置23の反対側には、手前側スプロケット21の回転位置(回転角度)を検出するロータリエンコーダ38が支持されている。このエンコーダ38は、ハンガー4がコンベヤチェーン2によらず自走する(暴走する)搬送異常を検出するためのものであり、この点は後述する。
【0036】
<ブレーキ装置の支持構造>
ブレーキ支持板37の支持について説明する。ブレーキ支持板37は、機枠35には固定されていない。図3に示すように、ブレーキ支持板37から下り傾斜部7側に延設した延設板41が、機枠35に固定した固定支持板42に上下動可能に支持されている。
【0037】
すなわち、固定支持板42に設けられた支持部43にシャフト21aと平行な支持孔43aが形成されている。この支持孔43aに支持ピン44が通されている。支持孔43aの内周面と支持ピン44の間にはゴムブッシュ45が嵌められていて、支持ピン44は支持孔43aにおいて上下動可能になっている。この支持ピン44にブレーキ支持板37から延びる延設板41が固定されている。また、固定支持板42には、支持ピン44を下方に付勢する付勢手段46が設けられている。
【0038】
付勢手段46は、支持ピン44に結合されて下方に延びるロッド47と、ロッド47の下端の下スプリング受け48と固定支持板42に固定された上スプリング受け49の間に介装された圧縮スプリング51とを備えてなる。圧縮スプリング51によってロッド47を介して支持ピン44が下方に付勢されている。これにより、ブレーキ支持板37と一体になった延設板41は、手前側スプロケット21のシャフト21aを中心に手前側スプロケット21の回転方向Aとは逆方向に回転するように付勢され、支持部43の支持孔43aの内周面下半周側をストッパとして、ゴムブッシュ45の下半周側を圧縮させた状態で保持されている。
【0039】
<リミットスイッチ>
固定支持板42にはリミットスイッチ52が支持されている。そして、ブレーキ支持板37と一体になった延設板41の端部がリミットスイッチ52のローラレバー53に手前側スプロケット21の回転方向A側から接触している。
【0040】
ここに、ブレーキ装置23が正常な非作動状態にあるときは、手前側スプロケット21はブレーキ装置23から制動力を受けずに回転し、従って、暴走防止チェーン3も円滑に走行する。これに対して、何らかの原因によってブレーキ装置23が手前側スプロケット21に制動力を付与した状態になると、暴走防止チェーン3が円滑に走行し難くなる。一方、この暴走防止チェーン3はハンガー4を介してコンベヤチェーン2の走行力を受けるから、手前側スプロケット21を回転させようとする。従って、その回転力がブレーキ装置23を介してブレーキ支持板37に伝わる。そのため、ブレーキ支持板37が、圧縮スプリング51の付勢に抗して、延設板41と共に手前側スプロケット21の回転方向Aに回転する。その結果、延設板41がリミットスイッチ52のローラレバー53を回動させてリミットスイッチ52からオン信号が出る。
【0041】
<コントローラ>
図5に示すように、上記エンコーダ38及びリミットスイッチ52は、ブレーキ装置23及びコンベヤ駆動手段54の作動を制御するマイクロコンピュータを利用したコントローラ55に接続されている。また、搬送装置は、コンベヤチェーン2の走行速度を検出するコンベヤ速度センサ56を備えている。
【0042】
コンベヤ速度センサ56及びエンコーダ38各々の検出信号はコントローラ55の搬送異常検出手段57に入力される。搬送異常検出手段57は、エンコーダ38の検出信号に基づいて暴走防止チェーン3の速度を算出し、暴走防止チェーン3の走行速度がコンベヤチェーン2の走行速度を上回ったときに、ハンガー4が自走によって暴走し始めたとして搬送異常の検出信号を出力する。
【0043】
コントローラ55は、車体1の搬送時に、コンベヤ駆動手段54にコンベヤチェーン2を作動させる信号を出力する一方、ブレーキ装置23にブレーキ解放信号(コイル電源オン)を出力する。コントローラ55は、車体1の搬送停止時に、コンベヤ駆動手段54にコンベヤチェーン2の駆動を停止する信号を出力する一方、ブレーキ装置23に作動信号(コイル電源オフ)を出力する。
【0044】
コントローラ55は、搬送異常の検出信号が出たときにブレーキ装置23に作動信号(コイル電源オフ)を出力するとともに、コンベヤ駆動手段54にコンベヤチェーン2の駆動を停止する信号を出力する。また、コントローラ55は、リミットスイッチ52のオン信号を受けたときに暴走防止チェーン3の走行に異常を生じたとして、コンベヤ駆動手段54にコンベヤチェーン2の駆動を停止する信号を出力する。
【0045】
リミットスイッチ52からオン信号が出るときは、ブレーキ装置23の作動又は故障により暴走防止チェーン3の走行に異常を生じたときである。従って、リミットスイッチ52は暴走防止チェーン3の走行異常検出手段を構成する。
【0046】
<搬送装置の作動>
車体1を搭載したハンガー4は、コンベヤチェーン2の駆動によってトロリー11が走行レール12を走行することにより、ストレージラインから下り傾斜部7を下って作業ステーションに移動していく。暴走防止チェーン3は、専用の駆動手段は備えていないが、ハンガー4の上端の係合爪17が暴走防止チェーン3の係合部材31に搬送方向から係合することによってハンガー4に押されて、コンベヤチェーン2と同期して走行する。
【0047】
コンベヤチェーン2の切断やコンベヤチェーン2からのトロリー11の外れ等によってハンガー4が走行レール12を自走する状態になると、搬送ラインの下り傾斜部7において、ハンガー4の暴走を招く懸念がある。これに対して、当該搬送装置では、暴走防止チェーン3がハンガー4に押されて走行する。従って、ハンガー4の暴走が始まって暴走防止チェーン3の走行速度がコンベヤチェーン2の走行速度を上回ると、そのことが、つまり当該暴走がエンコーダ38を介して搬送異常検出手段57で検出され、ブレーキ装置23に作動信号が出力される。すなわち、コイル電源がオフになる。これにより、ブレーキ装置23が作動して手前側スプロケット21に制動力が与えられて、暴走防止チェーン3の走行が止まる。
【0048】
暴走防止チェーン3は、その係合部材31がハンガー4の係合爪17によって押されて走行しているから、ブレーキ装置23から制動力が与えられて停止すると、暴走防止チェーン3の係合部材31がストッパとなって当該ハンガー4も同時に停止する。また、暴走防止チェーン3の各係合部材31はハンガー4の配設ピッチに略対応するピッチで配設されているから、下り傾斜部7に存するハンガー4は全て暴走防止チェーン3の停止とほとんど同時に停止することになる。従って、作業ステーションに作業者がいる場合でも、ハンガー4や車体1が作業者に接触しない安全距離を保って、当該ハンガー4を停止させることができる。
【0049】
また、ハンガー4の暴走時には、ブレーキ装置23が作動状態になるとともに、コンベヤチェーン2の駆動が止まる。従って、搬送異常を生じた状態でコンベヤチェーン2が走行を続けて不測の事態を招くことが避けられる。
【0050】
次に、コンベヤチェーン2側に搬送異常がない場合でも、暴走防止チェーン3に走行異常があったときは、そのことがリミットスイッチ52によって検出される。例えば、ブレーキ装置23のコイル電源が偶発的にオフになったり、或いはブレーキ装置23が異物の噛み込み等によって手前側スプロケット21に制動力が付与された状態になって、暴走防止チェーン3が円滑に走行しなくなったときである。
【0051】
ハンガー4の係合爪17が暴走防止チェーン3の係合部材31に係合しているから、暴走防止チェーン3が円滑に走行しない場合は、コンベヤチェーン2の走行負荷が大きくなって、その切断を招いたり、その駆動手段(電動モータ)58に許容以上の負荷が加わって焼き付き等の故障を招く懸念がある。
【0052】
これに対して、当該搬送装置では、ブレーキ装置23の異常によって暴走防止チェーン3に走行異常を生じたときは、暴走防止チェーン3が手前側スプロケット21を回転させようとする力がブレーキ装置23を介してブレーキ支持板37に伝わる。そのため、ブレーキ支持板37が、圧縮スプリング51の付勢に抗して、延設板41と共に手前側スプロケット21の回転方向Aに回転する。その結果、延設板41がリミットスイッチ52のローラレバー53を回動させてリミットスイッチ52からオン信号が出る。これにより、コンベヤ駆動手段54に停止信号が出力され、コンベヤチェーン2の走行が止まる。よって、コンベヤチェーン2の切断やコンベヤ駆動手段(電動モータ)54の故障を招くことが避けられる。
【0053】
なお、エンドレスのコンベヤとしては、上記チェーン2に限らず、ベルト、索条等の他のエンドレス部材であってもよい。
【0054】
また、暴走防止用のエンドレス要素としては、上記チェーン3に限らず、索条等の他のエンドレス部材であってもよい。
【0055】
また、搬送部材についても、上記ハンガー4に限らず、台車等の他の搬送部材であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 車体(搬送物)
2 コンベヤチェーン(エンドレスコンベヤ)
3 暴走防止チェーン(エンドレス要素)
4 ハンガー(搬送部材)
7 下り傾斜部
23 ブレーキ装置
25 沿線部
31 係合部材
38 エンコーダ(搬送異常を検出するためのセンサ)
52 リミットスイッチ(走行異常検出手段)
54 コンベヤ駆動手段
55 コントローラ
56 コンベヤ速度センサ
57 搬送異常検出手段
図1
図2
図3
図4
図5