(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】オイル分離構造
(51)【国際特許分類】
F01M 13/04 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
F01M13/04 E
(21)【出願番号】P 2020021448
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏隆
(72)【発明者】
【氏名】田所 正
(72)【発明者】
【氏名】大西 謙斗
(72)【発明者】
【氏名】榛澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山根 純
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-066319(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039142(WO,A1)
【文献】特開2017-115847(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111350(WO,A1)
【文献】特開2010-144696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
B01D 45/00 - 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン内で発生するブローバイガスからオイルを分離するためのオイル分離構造であって、
前記オイルを分離するためのオイルセパレータ室を有するハウジングと、
前記オイルセパレータ室に配置され、相対的に前記ブローバイガスの流れ方向の上流側に位置する第1オイル分離部と、
前記オイルセパレータ室に配置され、前記第1オイル分離部よりも前記流れ方向の下流側に位置する第2オイル分離部と、
前記第1オイル分離部と前記第2オイル分離部との間のオイル回収室に設けられ、分離されたオイルが流入するドレン口を有するドレン油路と、を備え、
前記第2オイル分離部は、
前記第1オイル分離部を通過した後のブローバイガスが通る通風口と、
前記流れ方向の上流側から見て、前記通風口を少なくとも部分的に囲むように該通風口の周囲に設けられ、前記オイル回収室側の端面から前記流れ方向の上流側に突出する突出壁と、
を有
し、
前記突出壁は、前記第1オイル分離部と前記第2オイル分離部とのうち第2オイル分離部にのみ設けられていることを特徴とするオイル分離構造。
【請求項2】
請求項1に記載のオイル分離構造において、
前記第2オイル分離部は、前記通風口及び前記突出壁を有するオイルセパレータを有し、
前記オイルセパレータは、該第2オイル分離部よりも前記流れ方向の下流側の空間と前記オイル回収室とを区画する区画壁に嵌め込まれており、
前記通風口は、前記流れ方向の上流側から見て、前記区画壁の中央に位置していることを特徴とするオイル分離構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のオイル分離構造において、
前記突出壁は、前記流れ方向の上流側から見て、前記通風口を囲む筒状をなしていることを特徴とするオイル分離構造。
【請求項4】
請求項3に記載のオイル分離構造において、
前記突出壁は、前記流れ方向の上流側に向かうに連れて径が大きくなるテーパー形状をなしていることを特徴とするオイル分離構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のオイル分離構造において、
前記ドレン口は、前記流れ方向に
おいて、前記オイル回収室の中央よりも上流側に設けられていることを特徴とするオイル分離構造。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載のオイル分離構造において、
前記オイル回収室の底面部は、前記第2オイル分離部が設けられた位置から前記ドレン口に向かって傾斜する傾斜部を有することを特徴とするオイル分離構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、オイル分離構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジン内で発生するブローバイガスからオイルを分離するためのオイル分離構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エンジンの本体とは別に設けられるハウジング内に、ブローバイガス中のオイルを分離するオイル分離部を、ブローバイガスの流通方向に直列に複数配置したオイルミストセパレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、本願発明者らが鋭意研究したところ、オイル分離部で分離されたオイルを回収するオイル回収室内で気圧変動が生じると、オイルを回収するドレン油路から該オイルの吹き返しが生じることが分かった。吹き返されたオイルはオイル回収室の壁面に付着した後、ブローバイガスの気流により、次室に押し流されることも判明した。
【0006】
特許文献1に記載のオイル分離構造のように、オイル分離部を複数設けると、オイル分離部が1つの場合と比較して、オイルの回収効率が向上する可能性がある。しかし、単純にオイル分離部を複数設ける構造では、吹き返されたオイルの全てを次室で回収することになる。次室での回収すべきオイルの量が多くなると、再びオイルが吹き返されるようになり、オイルの回収効率の向上が望めなくなる。
【0007】
ここに開示された技術は、複数のオイル分離部を有するオイル分離構造において、オイルの回収効率を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、エンジン内で発生するブローバイガスからオイルを分離するためのオイル分離構造を対象として、前記オイルを分離するためのオイルセパレータ室を有するハウジングと、前記オイルセパレータ室に配置され、相対的に前記ブローバイガスの流れ方向の上流側に位置する第1オイル分離部と、前記オイルセパレータ室に配置され、前記第1オイル分離部よりも前記流れ方向の下流側に位置する第2オイル分離部と、前記第1オイル分離部と前記第2オイル分離部との間のオイル回収室に設けられ、分離されたオイルが流入するドレン口を有するドレン油路と、を備え、前記第2オイル分離部は、前記第1オイル分離部を通過した後のブローバイガスが通る通風口と、前記流れ方向の上流側から見て、前記通風口を少なくとも部分的に囲むように該通風口の周囲に設けられ、前記オイル回収室側の端面から前記流れ方向の上流側に突出する突出壁と、を有し、前記突出壁は、前記第1オイル分離部と前記第2オイル分離部とのうち第2オイル分離部にのみ設けられているという構成とした。
【0009】
この構成によると、オイル回収室の壁面に付着したオイル(以下、残オイルという)が、ブローバイガスの気流により壁面に沿って下流に押し流されたとしても、突出壁により残オイルが通風口に浸入することが抑制される。また、残オイルは突出壁に沿って、オイル回収室の底面部に流れ落ちた後、ドレン口に流入する。これにより、オイル回収室の壁面に付着したオイルがオイル回収室の下流側の部屋に流入することが抑制される。この結果、オイルの回収効率を向上させることができる。
【0010】
前記オイル分離構造において、前記第2オイル分離部は、前記通風口及び前記突出壁を有するオイルセパレータを有し、前記オイルセパレータは、該第2オイル分離部よりも前記流れ方向の下流側の空間と前記オイル回収室とを区画する区画壁に嵌め込まれており、前記通風口は、前記流れ方向の上流側から見て、前記区画壁の中央に位置している、という構成でもよい。
【0011】
この構成によると、第2オイル分離部の通風口は、オイル回収室を区画する各壁部から十分に離れた位置に位置するため、各壁面に沿って下流側に流された残オイルの流れを突出壁により適切に遮断することができる。これにより、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0012】
前記オイル分離構造の一実施形態では、前記突出壁は、前記流れ方向の上流側から見て、前記通風口を囲む筒状をなしている。
【0013】
この構成によると、残オイルが第2オイル分離部の通風口に流入するのを効果的に抑制することができる。これにより、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0014】
前記一実施形態において、前記突出壁は、前記流れ方向の上流側に向かうに連れて径が大きくなるテーパー形状をなしている、という構成でもよい。
【0015】
この構成によると、残オイルが第2オイル分離部の通風口に流入するのをより効果的に抑制することができる。また、残オイルが区画壁と突出壁との間の領域に溜まり易くなる。これにより、残オイルの油滴が大きくなるため、残オイルが底面部に向かって移動しやすくなる。この結果、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0016】
前記ドレン口は、前記流れ方向において、前記オイル回収室の中央よりも上流側に設けられている、という構成でもよい。
【0017】
この構成によると、第1オイル分離部により分離されたオイルを効率良く回収することができる。また、ドレン口を第2オイル分離部から離すことで、ドレン口から吹き返したオイルが第2オイル分離部の通風口に直接入り込むことを抑制することができる。これにより、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0018】
前記オイル分離構造において、前記オイル回収室の底面部は、前記第2オイル分離部が設けられた位置から前記ドレン口に向かって傾斜する傾斜部を有する、という構成でもよい。
【0019】
この構成によると、底面部に流れ落ちた残オイルがドレン口に向かって流れやすくなる。これにより、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、複数のオイル分離部を有するオイル分離構造において、オイルの回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】例示的な実施形態に係るオイル分離構造が適用されたエンジンの断面図である。
【
図2】エンジンのヘッドカバー部分を示す斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線で切断した断面図であって、シリンダヘッド及びシリンダブロックの一部を含む図である。
【
図4】
図2のVII-VII線で切断した断面図である。
【
図5】第1オイル分離部の第1オイルセパレータを上流側から見た図である。
【
図6】第2オイル分離部の第2オイルセパレータを上流側から見た図である。
【
図7】
図3において第2オイル分離部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図8】突出壁と第2区画壁との間の領域にオイルが溜まる様子を示す図である。
【
図9】第2オイルセパレータの第1変型例を示す図であって、左図は第2オイルセパレータを上流側から見た図であり、右図は左図のA-A線で切断した断面図である。
【
図10】第2オイルセパレータの第2変型例を示す図であって、左図は第2オイルセパレータを上流側から見た図であり、右図は左図のA-A線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明では、車両についての前、後、左、右、上、及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上、及び下という。
【0023】
図1は、本発明の実施形態1に係るシリンダヘッドカバー構造が適用されたエンジン1の概略構成を示す。本実施形態では、エンジン1は、クランクシャフト9が前後方向(
図1の紙面に垂直な方向)に延びるように、車両の前部におけるエンジンルーム内に縦置きに搭載される6気筒直列エンジンである。エンジン1は、ディーゼルエンジンでもよく、ガソリンエンジンでもよい。
【0024】
エンジン1は、6つの気筒2(
図1では、1つのみ示す)がクランクシャフト9の軸方向に一列に並ぶように設けられたシリンダブロック3と、このシリンダブロック3上に配設されたシリンダヘッド4と、このシリンダヘッド4の上側を覆うシリンダヘッドカバー5とを有している。各気筒2内には、ピストン8が往復動可能に嵌挿されている。各気筒2のピストン8は、不図示のコンロッドを介してクランクシャフト9と連結される。
【0025】
図示は省略するが、シリンダヘッド4には、各気筒2毎に、吸気ポート及び排気ポートが形成されているとともに、これら吸気ポート及び排気ポートの燃焼室10側の開口を開閉する吸気弁及び排気弁がそれぞれ配設されている。本実施形態では、吸気ポートが左側に位置し、排気ポートが右側に位置する。
【0026】
シリンダヘッド4の上部からシリンダヘッドカバー5の下部にかけての部分には、全気筒2の上記吸気弁を開閉するカムが設けられた吸気カムシャフト11と、全気筒2の上記排気弁を開閉するカムが設けられた排気カムシャフト12とが、クランクシャフト9の軸方向に延びるように配設されている。図示は省略するが、吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12をそれぞれ回転可能に支持する軸受部には、潤滑油としてのオイルが供給される。また、吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12のカムには、それらの上側に配置されたオイルシャワーによりオイルが滴下供給される。
【0027】
また、シリンダヘッド4には、各気筒2毎に、燃料を噴射するインジェクタ18が設けられている。このインジェクタ18は、該インジェクタ18の燃料噴射口が燃焼室10の天井面から該燃焼室10に臨むように配設されていて、圧縮行程上死点付近で燃焼室10に燃料を直接噴射供給するようになっている。
【0028】
シリンダヘッド4の車両前側の面には、各気筒2の上記吸気ポートに連通するように吸気通路21が接続されている。この吸気通路21には、エアクリーナ22が設けられており、エアクリーナ22により塵等が取り除かれた吸気が吸気通路21を通って、燃焼室10に供給される。吸気通路21の下流側の部分は、吸気マニホールド26によって構成されていて、各気筒2毎に分岐する独立通路とされている。各独立通路の下流端が各気筒2の上記吸気ポートにそれぞれ接続されている。図示は省略しているが、吸気通路21におけるエアクリーナ22と吸気マニホールド26との間には、スロットル弁や過給機などが配置される。
【0029】
シリンダヘッド4の車両後側の面には、図示は省略するが、各気筒2の燃焼室10からの排気ガスを排出する排気通路が接続される。この排気通路の上流側の部分は、各気筒毎に分岐して上記排気ポートに接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成される。
【0030】
シリンダヘッドカバー5は、上側が閉塞されかつ下側が開放された有底筒状に形成されていて、シリンダヘッド4の上端に固定されて吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12の上側を覆う。シリンダヘッドカバー5は、樹脂等により構成されている。シリンダヘッドカバー5は、複数のボルトBによりシリンダヘッド4に固定されている。
【0031】
図2に示すように、シリンダヘッドカバー5は、気筒2の数に応じた(本実施形態では6つ)のプラグホール51を有する。プラグホール51には、それぞれ不図示の点火プラグが差し込まれる。
【0032】
シリンダヘッドカバー5は、プラグホール51よりも吸気側に、ブローバイガス中のオイルミストを分離除去するためのオイルセパレータ室30を有する。このオイルセパレータ室30は、
図3に示すように、吸気カムシャフト11及び排気カムシャフト12が配設されるカム室41とは区画されて形成されている。オイルセパレータ室30の出口39には、ブリーザーホース42が接続されている。オイルセパレータ室30でオイルミストが分離除去されたブローバイガスは、ブリーザーホース42を通って、エンジン1の吸気系に流入する。シリンダヘッドカバー5はオイルセパレータ室30を有するハウジングに相当する。
【0033】
以下、オイルセパレータ室30の構成について詳細に説明する。尚、本実施形態では、ブローバイガスの流れ方向の上流側を単に上流側といい、該流れ方向の下流側を単に下流側ということがある。
【0034】
本実施形態では、
図3に示すように、オイルセパレータ室30は、下壁部31によりカム室41と区画されている。オイルセパレータ室30は、下壁部31と上下に対向する天井部32と、下壁部31の周縁部と天井部32の周縁部とを上下に連結する側壁部33とにより形成されている。オイルセパレータ室30内には、相対的にブローバイガスの流れ方向の上流側に位置する第1オイル分離部60と、該第1オイル分離部60よりも前記流れ方向の下流側に位置する第2オイル分離部70との2つのオイル分離部が設けられている。第1オイル分離部60と第2オイル分離部70とは、直列に配置されている。オイルセパレータ室30内は、第1オイル分離部60及び第2オイル分離部70により、前記流れ方向の上流側から、ガス流入室34と、第1オイル回収室35と、第2オイル回収室36とに区画されている。
【0035】
図4に示すように、第1オイル回収室35は、第1オイル分離部60で分離されたオイルが流入する第1ドレン口37aを有する第1ドレン油路37と連通している。第1ドレン口37aは、下壁部31に設けられている。第1ドレン口37aは、前記流れ方向において、第2オイル分離部70よりも第1オイル分離部60に近い側に設けられている。第1ドレン油路37は、パイプやシリンダヘッド4及びシリンダブロック3の壁部に穿設された孔で構成されている。第1ドレン油路37の他端側の端部は、エンジン1のオイルパン(図示省略)に連通している。第1オイル回収室35の底面部35aは、第2オイル分離部70が設けられた位置から第1ドレン口37aに向かって下側(つまりシリンダヘッド4側)に傾斜する傾斜部35bを有する。
【0036】
図4に示すように、第2オイル回収室36は、第2オイル分離部70で分離されたオイルが流入する第2ドレン口38aを有する第2ドレン油路38と連通している。第2ドレン口38aは、下壁部31に設けられている。第2ドレン口38aは、前記流れ方向において、出口39よりも第2オイル分離部70に近い側に設けられている。第2ドレン油路38は、パイプやシリンダヘッド4及びシリンダブロック3の壁部に穿設された孔で構成されている。第2ドレン油路38の他端側の端部は、エンジン1の前記オイルパンに連通している。第2オイル回収室36の底面部36aは、第1オイル回収室35の底面部35aよりも下側に位置する。第2オイル回収室36の底面部36aは、下流側の側壁部33が設けられた位置から第2ドレン口38aに向かって下側に傾斜する傾斜部35bを有する。第2オイル回収室36を通ったブローバイガスは、出口39を通って、ブリーザーホース42に流入する。その後、該ブローバイガスは、ブリーザーホース42内を通ってエンジン1の吸気系に流入する。
【0037】
第1オイル分離部60は、
図4及び
図5に示すように、ガス流入室34と第1オイル回収室35とを区画するように、天井部32及び左右の側壁部33から延びる第1区画壁61と、第1区画壁61に嵌め込まれた第1オイルセパレータ62とを有する。第1オイルセパレータ62は、インパクタフィルタ方式のセパレータである。第1オイルセパレータ62は、第1本体部63と、第1本体部63を貫通して形成されかつブローバイガスが通過する第1通風口64と、第1通風口64の下流側に配置された第1フィルタ65と、第1フィルタ65を支持する第1フィルタ支持部66とを有する。
【0038】
第1区画壁61には、溝部61aが設けられている。この溝部61aに第1本体部63の周縁部が係合することにより、第1オイルセパレータ62が第1区画壁61に取り付けられる。
図5に示すように、第1本体部63の上流側の面には、上流側に向かって突出する第1ガイド部67が設けられている。第1ガイド部67は、第1本体部63の上側部分と左右両側部分とにそれぞれ設けられている。第1ガイド部67は、第1オイルセパレータ62を第1区画壁61に取り付けるガイドとなる部分である。第1オイルセパレータ62が第1区画壁61に嵌め込まれた状態において、第1ガイド部67の先端は、第1区画壁61の上流側の面と面一になるか、又は、当該上流側の面よりも下流側に位置する。
【0039】
第1通風口64は、上流側から見て、第1区画壁61の中央から僅かに下側にオフセットした位置に位置している。
【0040】
第1フィルタ支持部66は、第1本体部63の後側に取り付けられている。第1フィルタ65は、第1区画壁61の僅かに下流側で、第1フィルタ支持部66に貼り付けられている。第1フィルタ65の面積は、第1通風口64の縦断面積よりも大きい。第1フィルタ65は、第1通風口64を上流側から覗いたときに、該第1フィルタ65の端が見えないように配置されている。第1フィルタ65は、不織布や織物などで構成されている。
【0041】
第1通風口64を通り抜けたブローバイガスは、第1フィルタ65に衝突する。この衝突により、ブローバイガスのオイルミスが第1フィルタ65に捕捉されて、ブローバイガスから分離する。第1フィルタ65に捕捉されたオイルミストは、第1オイル回収室35の底面部35aに滴下される。そして、第1ドレン口37aから第1ドレン油路37に流入する。
【0042】
第2オイル分離部70は、
図4、
図6、及び
図7に示すように、第1オイル回収室35と第2オイル回収室36とを区画するように、天井部32及び左右の側壁部33から延びる第2区画壁71と、第2区画壁71に嵌め込まれた第2オイルセパレータ72とを有する。第2オイルセパレータ72は、インパクタフィルタ方式のセパレータである。第2オイルセパレータ72は、第2本体部73と、第2本体部73を貫通して形成されかつ第1オイル分離部60を通過した後のブローバイガスが通過する第2通風口74と、第2通風口74の下流側に配置された第2フィルタ75と、第2フィルタ75を支持する第2フィルタ支持部77とを有する。
【0043】
図7に示すように、第2区画壁71には、溝部71aが設けられている。この溝部71aに第2本体部73の周縁部が係合することにより、第2オイルセパレータ72が第2区画壁71に取り付けられる。第2本体部73の上流側の面には、上流側に向かって突出する第2ガイド部78が設けられている。第2ガイド部78は、第2本体部73の上側部分と左右両側部分とにそれぞれ設けられている。第2ガイド部78は、第2オイルセパレータ72を第2区画壁71に取り付けるガイドとなる部分である。第2オイルセパレータ72が第2区画壁71に嵌め込まれた状態において、第2ガイド部78の先端は、第2区画壁71の上流側の面と面一になるか、又は、当該上流側の面よりも下流側に位置する。
【0044】
また、第2本体部73には、上流側から見て、第2通風口74の周囲に設けられかつ第1オイル回収室35側の端面から上流側に突出する突出壁76が設けられている。
図6に示すように、突出壁76は、第2通風口74を囲む円筒状をなしている。より具体的には、
図7に示すように、突出壁76は、上流側に向かうに連れて径が大きくなるテーパー形状をなしている。突出壁76の先端は、第2区画壁71の上流側の面よりも上流側に位置している。詳しくは後述するが、突出壁76は、天井部32、側壁部33、及び第2区画壁71に沿って移動してきたオイルが、第2通風口74に流入するのを抑制するためのものである。
【0045】
第2通風口74は、上流側から見て、第2区画壁71の中央に位置している。
【0046】
図7に示すように、第2フィルタ支持部77は、第2本体部73の後側に取り付けられている。第2フィルタ支持部77は、第2本体部73への取り付け部分から下流側に向かって延びる複数の支柱77aと、支柱77aの下流側の端部に取り付けられたフィルタ取付部77bとを有する。フィルタ取付部77bは、第2区画壁71よりも僅かに下流側に位置する。フィルタ取付部77bは、中央に貫通孔77cを有する。貫通孔77cは、第2フィルタ75によりオイルが捕捉された後のブローバイガスが通過する孔である。
【0047】
第2フィルタ75は、第2区画壁71の僅かに下流側で、フィルタ取付部77bの上流側の面に貼り付けられている。第2フィルタ75の面積は、第2通風口74の縦断面積よりも大きい。第2フィルタ75は、第2通風口74を上流側から覗いたときに、該第2フィルタ75の端が見えないように配置されている。第2フィルタ75は、不織布や織物などで構成されている。
【0048】
第2通風口74を通り抜けたブローバイガスは、第2フィルタ75に衝突する。この衝突により、第1オイル分離部60を通過したブローバイガスに残ったオイルミストが第2フィルタ75に捕捉されて、該ブローバイガスから分離する。第2フィルタ75に捕捉されたオイルミストは、第2オイル回収室36の底面部36aに滴下される。そして、第2ドレン口38aから第2ドレン油路38に流入する。
【0049】
ここで、本願発明者らが鋭意研究したところ、エンジン1の回転数が上がって、ブローバイガスの流速が上昇することで、第1オイル回収室35内で気圧変動が生じると、第1ドレン油路37から該オイルの吹き返しが生じることが分かった。吹き返されたオイルは第1オイル回収室35の天井部32や側壁部33に付着した後、ブローバイガスの気流により、第2オイル回収室36に向かってに押し流される。第2オイル回収室36での回収すべきオイルの量が多くなると、第2ドレン油路38でもオイルが吹き返されるようになり、オイルの回収効率が悪化してしまう。
【0050】
これに対して、本実施形態では、第2オイル分離部70の第2オイルセパレータ72に突出壁76を設けることで、吹き返されて天井部32及び側壁部33の壁面に付着したオイル(以下、残オイルという)が、第2オイル回収室36に流入することを抑制している。すなわち、例えば、
図8に示すように、第1オイル回収室35の天井部32に付着した残オイルは、ブローバイガスの気流により天井部32に沿って下流に押し流された後、第2区画壁71を伝って下側に移動する。突出壁76は、第2区画壁71よりも上流側に延びているため、残オイルは突出壁76に付着する。突出壁76に付着した残オイルは、突出壁76のテーパー面に沿って突出壁76の基部に向かって移動する。その後、突出壁76の基部付近に溜まった残オイルは、自重によって、突出壁76に沿って下側に移動する。そして、第1オイル回収室35の底面部35aに流れ落ちた後、傾斜面36bに沿って流れて、第1ドレン口37aに流入する。これにより、第1オイル回収室35の天井部32及び側壁部33の壁面に付着した残オイルが、第2オイルセパレータ72を抜けて、第2オイル回収室36に流入することが抑制される。この結果、オイルの回収効率を向上させることができる。
【0051】
特に、本実施形態において、突出壁76は、上流側に向かうに連れて径が大きくなるテーパー形状をなしていることにより、残オイルが第2区画壁71と突出壁76との間の領域に溜まり易くなる。これにより、残オイルの油滴が大きくなるため、残オイルが底面部36aに向かって移動しやすくなる。この結果、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態において、突出壁76の先端は、第2区画壁71の上流側の面よりも上流側に位置する。これにより、第2区画壁71を伝ってきた残オイルが第2オイル分離部70の第2通風口74に流入するのをより効果的に抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態において、突出壁76は、上流側から見て、第2通風口74を囲む筒状をなしている。これにより、残オイルが第2オイル分離部70の第2通風口74に流入するのをより効果的に抑制することができる。この結果、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態において、第2通風口74は、上流側から見て、第2区画壁71の中央に位置している。これにより、第2通風口74は、第1オイル回収室35を区画する天井部32、下壁部31、及び両側側壁部33から十分に離れた位置に位置するため、各壁部31~33の壁面に沿って下流側に流された残オイルの流れを突出壁76により適切に遮断することができる。この結果、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態において、第1ドレン口37aは、第1オイル分離部60に近い側に設けられている。これにより、第1オイル分離部60により分離されたオイルを効率良く回収することができる。また、第1ドレン口37aを第2オイル分離部70から離すことで、第1ドレン口3aから吹き返した残オイルが第2オイル分離部70の第2通風口74に直接入り込むことを抑制することができる。この結果、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態において、第1オイル回収室35の底面部35aは、第2オイル分離部70が設けられた位置から第1ドレン口37aに向かって傾斜する傾斜部35bを有する。これにより、底面部35aに流れ落ちた残オイルが第1ドレン口37aに向かって流れやすくなる。この結果、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0057】
また、本実施形態において、第2オイル回収室36の底面部36aは、第1オイル回収室35の底面部35aよりも下側に位置する。すなわち、第2オイル回収室36に設けられた第2ドレン口38aからもオイルが吹き返す可能性がある。そこで、第2オイル回収室36の底面部36aを出来る限り下側に配置することで、第2ドレン口38aからオイルの吹き返しがあったとしても、吹き返したオイルが、ブローバイガスが流れている高さまで到達しにくくすることができる。これにより、オイルが出口39に流入しにくくなるため、オイルの回収効率をより向上させることができる。
【0058】
図9は、本実施形態の第1変型例を示す。この第1変型例では、突出壁の形状が異なる。体的には、第1変型例では、突出壁176は、上流側から見て、角筒状(ここでは六角筒状)をなしている。また、
図9の右側に示すように、突出壁176はテーパー状をなしておらず、第2本体部73から真っ直ぐ上流側に向かって延びている。
【0059】
このような構成であったとしても、第2区画壁71を伝ってきた残オイルが第2通風口74に流入することを抑制することができる。特に、角筒の角部が最も上側に位置するように形成することで、第2区画壁71を伝ってきた残オイルが下側に流れやすくなる。これにより、オイルの回収効率を向上させることができる。
【0060】
図10は、本実施形態の第2変型例を示す。この第2変型例では、突出壁76の形状が異なる。具体的には、第2変型例では、突出壁276は、上流側から見て、下側に開口するU字状をなしている。また、
図9の右側に示すように、突出壁276はテーパー状をなしておらず、第2本体部73から真っ直ぐ上流側に向かって延びている。
【0061】
このように突出壁276が筒状でなかったとしても、第2区画壁71を伝ってきた残オイルが第2通風口74に流入することを抑制することができる。特にU字の先端を第2本体部73の下端部にまで伸ばすことで、残オイルが底面部35aに到達しやすくなる。これにより、オイルの回収効率を向上させることができる。
【0062】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0063】
例えば、前述の実施形態では、突出壁76は、真円状をなしていたが、楕円形状であってもよい。このとき、長軸方向が上下方向となるように突出壁76を形成すれば、残オイルが下側に向かって流れやすくなる。
【0064】
また、前述の実施形態では、第1オイルセパレータ62と第2オイルセパレータ72とは、第2オイルセパレータ72に突出壁76,176,276が設けられる点以外は、基本的に同じ構成となっていた。これに限らず、第1オイルセパレータ62でのオイルの分離効率を向上させるために、突出壁76,176,276の有無以外にも、第2オイルセパレータ72と構成を変えてもよい。
【0065】
また、前述の実施形態では、第2通風口74は、上流側から見て、第2区画壁71の中央に位置していた。これに限らず。第2通風口74は、第2区画壁71の中央からずれた位置にあってもよい。
【0066】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
ここに開示された技術は、エンジン内で発生するブローバイガスからオイルを分離するためのオイル分離構造として有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 エンジン
5 シリンダヘッドカバー(ハウジング)
30 オイルセパレータ室
35 第1オイル回収室
35a 底面部
35b 傾斜部
37 第1ドレン油路
37a 第1ドレン口
60 第1オイル分離部
70 第2オイル分離部
71 第2区画壁
72 第2オイルセパレータ
74 第2通風口
76 突出壁
176 突出壁
276 突出壁