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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20231024BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01B7/00 301
H02G3/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020062131
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021163569
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】清水 敏男
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/098657(WO,A1)
【文献】実開昭61-035318(JP,U)
【文献】特開平09-035539(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038259(WO,A1)
【文献】特開2002-163934(JP,A)
【文献】特開2002-067829(JP,A)
【文献】特開2012-157095(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168633(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H02G 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の線状伝送部材と、
前記複数の線状伝送部材を少なくとも一方の面上に配置するベース部材と、
前記複数の線状伝送部材を前記ベース部材に配置された状態に保持するカバー部材と、
を備え、
前記複数の線状伝送部材は、
前記ベース部材に配置されるベース部材配置区間と、
前記ベース部材に配置されない非ベース部材配置区間と、を有する配線部材であって、
前記ベース部材配置区間において、
前記複数の線状伝送部材は、少なくとも第1線状伝送部材束及び第2線状伝送部材束に分けられており、
前記カバー部材は、前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束との両側及びその間の位置で前記ベース部材に固定されて前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束とを覆い、
前記非ベース部材配置区間において、
前記複数の線状伝送部材は、前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束とが束ねられた大束部とされており、
前記カバー部材と前記ベース部材とが固定された固定部が前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の延在方向に沿って間隔をあけて複数設けられ、
前記第1線状伝送部材束を構成する少なくとも1本の線状伝送部材が前記第2線状伝送部材束へ移行するシフト領域が複数の前記固定部の間に設けられている、配線部材。
【請求項2】
請求項に記載の配線部材であって、
1つの前記シフト領域において前記第1線状伝送部材束を構成する2本以上の前記線状伝送部材が前記第2線状伝送部材束へ移行する、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載の配線部材であって、
前記ベース部材と前記カバー部材とは融着されて固定されている、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
少なくとも前記第1線状伝送部材束を構成する複数の線状伝送部材は前記少なくとも一方の面を構成する材料と異種材料によって形成された被覆層を有する線状伝送部材を含む、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記カバー部材に覆われた前記複数の線状伝送部材それぞれが第1の線状伝送部材とされたときに、
伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆層とを含み、前記少なくとも一方の面上に配置された第2の線状伝送部材をさらに備え、
前記第2の線状伝送部材の前記被覆層が前記少なくとも一方の面に融着されている、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1線状伝送部材束は前記少なくとも一方の面上で曲がった経路に配置された曲げ部を含み、
前記曲げ部の両隣の位置において前記カバー部材が前記ベース部材に固定されている、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1線状伝送部材束は粘着テープが巻かれたテープ巻部を含み、
前記カバー部材は前記テープ巻部を覆う部分の側方位置において前記ベース部材と固定されている、配線部材。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記ベース部材上に前記線状伝送部材の余長を吸収する余長吸収部が設けられている、配線部材。
【請求項9】
請求項に記載の配線部材であって、
前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の延在方向に沿って間隔をあけて前記カバー部材と前記ベース部材とが固定された第1固定部及び第2固定部が設けられ、
前記余長吸収部は、前記第1固定部及び前記第2固定部の間での前記線状伝送部材の経路が最短経路よりも遠回りの経路で延びる遠回り経路部を含む、配線部材。
【請求項10】
請求項に記載の配線部材であって、
前記カバー部材は前記遠回り経路部を覆う部分を含む、配線部材。
【請求項11】
請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記カバー部材は前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の延在方向に沿って間隔をあけて設けられた複数の帯シートを含み、
前記複数の帯シートそれぞれが前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の両側及びその間の位置で前記ベース部材に固定されている、配線部材。
【請求項12】
請求項1から請求項1のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記ベース部材における複数の端部それぞれから前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束が前記ベース部材の外方に延び出ている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電線束と、該電線束に添設された基体と、前記基体との間に前記電線束を挟むように該基体に重ねられた、柔軟で緩衝性ある被覆体と、を備えるワイヤハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-27242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のワイヤハーネスのようにベース部材上に線状伝送部材束が配置された配線部材において、高さ寸法を小さくすることが望まれている。しかしながら、例えば接続先の増加に伴い、線状伝送部材束を構成する線状伝送部材が多くなると、線状伝送部材束が大きくなってしまい、ベース部材上に線状伝送部材束を配置する場合であっても高さ寸法を抑えることができないおそれがある。また特にベース部材上における配線部材の高さ寸法を抑えることがより求められる。
【0005】
そこで、ベース部材上に線状伝送部材束が配置された配線部材において、ベース部材上における高さ寸法を抑えることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材を少なくとも一方の面上に配置するベース部材と、前記複数の線状伝送部材を前記ベース部材に配置された状態に保持するカバー部材と、を備え、前記複数の線状伝送部材は、前記ベース部材に配置されるベース部材配置区間と、前記ベース部材に配置されない非ベース部材配置区間と、を有する配線部材であって、前記ベース部材配置区間において、前記複数の線状伝送部材は、少なくとも第1線状伝送部材束及び第2線状伝送部材束に分けられており、前記カバー部材は、前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束との両側及びその間の位置で前記ベース部材に固定されて前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束とを覆い、前記非ベース部材配置区間において、前記複数の線状伝送部材は、前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束とが束ねられた大束部とされている、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ベース部材上に線状伝送部材束が配置された配線部材において、ベース部材上における高さ寸法を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかる配線部材を示す概略平面図である。
図2図2図1の部分拡大図である。
図3図3図4のIV-IV線に沿って切断された断面図である。
図4図4図1の部分拡大図である。
図5図5は配線部材の変形例を示す平面図である。
図6図6は遠回り経路部の概念図である。
図7図7は配線部材の別の変形例を示す平面図である。
図8図8図7のVII-VII線に沿って切断された断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)複数の線状伝送部材と、前記複数の線状伝送部材を少なくとも一方の面上に配置するベース部材と、前記複数の線状伝送部材を前記ベース部材に配置された状態に保持するカバー部材と、を備え、前記複数の線状伝送部材は、前記ベース部材に配置されるベース部材配置区間と、前記ベース部材に配置されない非ベース部材配置区間と、を有する配線部材であって、前記ベース部材配置区間において、前記複数の線状伝送部材は、少なくとも第1線状伝送部材束及び第2線状伝送部材束に分けられており、前記カバー部材は、前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束との両側及びその間の位置で前記ベース部材に固定されて前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束とを覆い、前記非ベース部材配置区間において、前記複数の線状伝送部材は、前記第1線状伝送部材束と前記第2線状伝送部材束とが束ねられている大束部を有する、配線部材である。複数の線状伝送部材は非ベース部材配置区間において大束部として延び、ベース部材配置区間で第1線状伝送部材束及び第2線状伝送部材束に分かれて延びるため、ベース部材配置区間において配線部材の高さ寸法を抑えることができる。また、カバー部材は第1線状伝送部材束及び第2線状伝送部材束の両側及びその間の位置でベース部材に固定されているため、各線状伝送部材束の線状伝送部材が混ざって配線部材の高さ寸法が意図しない高さとなることが抑制される。これらより、ベース部材上に線状伝送部材束が配置された配線部材において、ベース部材上における高さ寸法を抑えることができる。
【0012】
(2)(1)の配線部材において、前記カバー部材と前記ベース部材とが固定された固定部が前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の延在方向に沿って間隔をあけて複数設けられ、前記第1線状伝送部材束を構成する少なくとも1本の線状伝送部材が前記第2線状伝送部材束へ移行するシフト領域が複数の前記固定部の間に設けられていてもよい。これにより、大束部から複数の線状伝送部材束に別れる際、経路ごとに線状伝送部材束を設定せずに済み、線状伝送部材束の数、それぞれの線状伝送部材束の太さなどを適切に設定しやすくなる。
【0013】
(3)(2)の配線部材において、1つの前記シフト領域において前記第1線状伝送部材束を構成する2本以上の前記線状伝送部材が前記第2線状伝送部材束へ移行してもよい。これにより、シフト領域がベース部材上に広く分散することを抑制できる。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線部材において、前記ベース部材と前記カバー部材とは融着されて固定されていてもよい。これにより、配線部材においてカバー部材とシートとを固定する部材を省略できる。
【0015】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの配線部材において、少なくとも前記第1線状伝送部材束を構成する複数の線状伝送部材は前記少なくとも一方の面を構成する材料と異種材料によって形成された被覆層を有する線状伝送部材を含んでいてもよい。これにより、ベース部材に直接融着しにくい線状伝送部材がカバー部材によってベース部材上に保持される。
【0016】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの配線部材において、前記カバー部材に覆われた前記複数の線状伝送部材それぞれが第1の線状伝送部材とされたときに、伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆層とを含み、前記少なくとも一方の面上に配置された第2の線状伝送部材をさらに備え、前記第2の線状伝送部材の前記被覆層が前記少なくとも一方の面に融着されていてもよい。これにより、ベース部材に第2の線状伝送部材が直接固定される。
【0017】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの配線部材において、前記第1線状伝送部材束は前記少なくとも一方の面上で曲がった経路に配置された曲げ部を含み、前記曲げ部の両隣の位置において前記カバー部材が前記ベース部材に固定されていてもよい。これにより、線状伝送部材がベース部材の外方に向けて引っ張られた際、線状伝送部材とベース部材とが線状伝送部材の延在方向に沿って位置ずれすることが抑制される。
【0018】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの配線部材において、前記第1線状伝送部材束は粘着テープが巻かれたテープ巻部を含み、前記カバー部材は前記テープ巻部を覆う部分の側方位置において前記ベース部材と固定されていてもよい。これにより、テープ巻部において線状伝送部材束がばらけにくくなり、カバー部材とベース部材とを固定する際、線状伝送部材がカバー部材とベース部材との間に噛み込まれることが抑制される。
【0019】
(9)(1)から(8)のいずれか1つの配線部材において、前記ベース部材上に前記線状伝送部材の余長を吸収する余長吸収部が設けられていてもよい。これにより、ベース部材上において線状伝送部材の公差が吸収される。
【0020】
(10)(9)の配線部材において、前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の延在方向に沿って間隔をあけて前記カバー部材と前記ベース部材とが固定された第1固定部及び第2固定部が設けられ、前記余長吸収部は、前記第1固定部及び前記第2固定部の間での前記線状伝送部材の経路が最短経路よりも遠回りの経路で延びる遠回り経路部を含んでいてもよい。これにより、簡易に余長吸収部を設けることができる。
【0021】
(11)(10)の配線部材において、前記カバー部材は前記遠回り経路部を覆う部分を含んでいてもよい。これにより、線状伝送部材の余長部分が外方に飛び出すことが抑制される。
【0022】
(12)(1)から(11)のいずれか1つの配線部材において、前記カバー部材は前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の延在方向に沿って間隔をあけて設けられた複数の帯シートを含み、前記複数の帯シートそれぞれが前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束の両側及びその間の位置で前記ベース部材に固定されていてもよい。これにより、ベース部材全体にカバー部材を設けずに済む。
【0023】
(13)(1)から(12)のいずれか1つの配線部材において、前記ベース部材における複数の端部それぞれから前記第1線状伝送部材束及び前記第2線状伝送部材束が前記ベース部材の外方に延び出ていてもよい。これにより、ベース部材上において線状伝送部材が複数の線状伝送部材束に分かれた状態に保たれやすい。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる配線部材について説明する。図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す概略平面図である。図2及び図4図1の部分拡大図である。図2及び図4は互いに異なる部分が拡大されている。図3図4のIV-IV線に沿って切断された断面図である。
【0026】
配線部材10は、ベース部材20と複数の電線30とカバー部材40とを備える。ここでは配線部材10は線状伝送部材50をさらに備える。電線30及び線状伝送部材50は、ベース部材20に固定されている。電線30及び線状伝送部材50は、ベース部材20への固定態様が異なる。電線30は第1の線状伝送部材の一例であり、線状伝送部材50は第2の線状伝送部材の一例である。
【0027】
ベース部材20の少なくとも一方の面上に電線30及び線状伝送部材50が配置される。ベース部材20において電線30及び線状伝送部材50が配置される面は配置面21とされる。ここではベース部材20において片面が配置面21とされる。ベース部材20は如何なる形状、構造を有していてもよい。ここではベース部材20がシート状に形成されている例が説明される。
【0028】
ここではベース部材20の形状は電線30及び線状伝送部材50の経路に沿った形状に形成される。具体的にはベース部材20は電線30及び線状伝送部材50の曲がった経路に応じて曲がった部分を有する。またベース部材20は電線30及び線状伝送部材50の分岐する経路に応じて分岐する部分を有する。ベース部材20は1つの大きな方形状などに形成されていてもよい。
【0029】
ここではベース部材20は第1層22と第2層24との2層構造を有する。ベース部材20は、1層構造を有していてもよいし、3層以上の構造を有していてもよい。
【0030】
第1層22の一方の表面がベース部材20の配置面21とされる。第1層22に電線30及び線状伝送部材50が固定されている。ここでは第1層22はベース部材側融着層である。融着層は樹脂材料、好ましくは熱可塑性樹脂材料を含む。融着層の樹脂材料が軟化して融着相手に融着される。かかる樹脂材料の種類は特に限定されるものではなく、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を採用することができる。
【0031】
第1層22の構造は特に限定されるものではない。例えば第1層22は一様充実断面を有するシート(非発泡シート又はソリッドシートなどとも呼ばれる)であってもよい。また例えば、第1層22は、発泡シート等であることも考えられる。また例えば、第1層22は、編布、織布又は不織布等の繊維材シートであることも考えられる。
【0032】
第2層24は第1層22とは異なる材料で形成されたり、異なる構造を有したりする。第2層24は第1層22にある機能を高めたり、第1層22にない機能をベース部材20に追加したりする。第2層24を構成する材料は、上記第1層22で説明された材料のほか、金属等などであってもよい。第2層24の構造は、上記第1層22で説明された構造のいずれかであってもよい。第2層24の一方の表面がベース部材20の配置面21とは反対側の主面とされる。
【0033】
第1層22の他方の表面と第2層24の他方の表面とが接触しつつ、第1層22と第2層24とが固定されている。第1層22と第2層24との固定態様は特に限定されるものではないが、融着又は接着により固定されているとよい。例えば、第1層22及び第2層24の少なくとも一方が、繊維材シート又は発泡シートのように表面に空隙があるシートであると、空隙に樹脂材料又は接着剤が入り込んで固定されることができる。これによりいわゆるアンカー効果が発揮されて、第1層22及び第2層24が強固に固定される。
【0034】
ここでは第1層22が樹脂製のソリッドシートであり、第2層24が繊維材シートであるものとして説明される。ここでは第1層22と第2層24とが融着されているものとして説明される。つまり、第1層22の樹脂が流動性を有する状態で第2層24の繊維の間に入り込んだ後に硬化される。これにより、第1層22の樹脂が第2層24における繊維の間に入り込んだ状態が維持され、第1層22と第2層24とが強固に固定される。
【0035】
第1層22及び第2層24は同じ大きさ(同じ平面形状)に形成されている。第1層22及び第2層24は一方が他方よりも大きく形成されていてもよい。第1層22及び第2層24は接触する領域が全体的に固定されている。第1層22及び第2層24は接触する領域の一部のみが固定されていてもよい。
【0036】
ベース部材20は柔らかい部材であってもよい。例えば、第1層22が軟質PVCなど軟質な樹脂を材料とする一様充実断面を有する樹脂層であり、第2層24がPETを材料とする不織布であるなどして、ベース部材20が柔らかい部材とされる。例えば、ベース部材20は電線30及び線状伝送部材50の曲げに追従可能な可撓性を有してもよい。配線部材10はベース部材20が設けられた部分において厚み方向への曲げ(折目がベース部材20の主面に沿うような曲げ)が可能とされてもよい。もっとも、ベース部材20は厚み方向に湾曲できない部材であってもよい。ベース部材20は厚み方向に曲げられた際、割れずに屈曲することが可能な部材であってもよい。ベース部材20は厚み方向に曲げられた際、割れずに屈曲することが不可能な部材であってもよい。ベース部材20が電線曲げに追従不可な剛性を有していてもよい。
【0037】
電線30は、電気を伝送する線状の部材である。線状伝送部材50は、電気又は光等を伝送する線状の部材である。電線30は、ベース部材配置区間と非ベース部材配置区間とを有する。ベース部材配置区間は電線30のうちベース部材20に配置される区間である。ベース部材配置区間は電線30のうち配置面21上に位置する区間である。非ベース部材配置区間は電線30のうちベース部材20に配置されない区間である。非ベース部材配置区間は電線30のうち配置面21の外方に位置する区間である。ベース部材配置区間と非ベース部材配置区間とは電線30においていずれの位置に設けられていてもよい。ここでは電線30の中間部がベース部材配置区間とされ、電線30の端部が非ベース部材配置区間とされる。電線30の中間部が非ベース部材配置区間とされてもよい。電線30の端部がベース部材配置区間とされてもよい。ここでは2つの非ベース部材配置区間の間にベース部材配置区間が設けられている。2つのベース部材配置区間の間に非ベース部材配置区間が設けられていてもよい。ベース部材配置区間と非ベース部材配置区間とはそれぞれが少なくとも1つずつ設けられていればよい。ベース部材20は、全体として扁平な形状に形成されている。複数の電線30及び線状伝送部材50がベース部材20に固定されることによって、ベース部材配置区間において配線部材10が扁平な形態に保たれる。
【0038】
複数の電線30及び線状伝送部材50は、車両における部品同士を接続する部材であることが想定される。電線30及び線状伝送部材50の端部には、例えばコネクタCが設けられる。このコネクタCが相手側部品に設けられたコネクタと接続されることで、電線30及び線状伝送部材50が相手側部品に接続される。つまり、本配線部材10は、車両等において各種部品同士を電気的に(或は光通信可能に)接続する配線部材10として用いられる。コネクタCは、ベース部材20に固定されていてもよい。
【0039】
複数の電線30及び線状伝送部材50の経路は、接続先となる部品の位置等に応じて設定される。複数の電線30及び線状伝送部材50がベース部材20に固定されることによって、ベース部材配置区間において複数の電線30及び線状伝送部材50がそれぞれの接続先となる部品の位置等に応じた配線経路に沿った状態に保たれる。複数の電線30及び線状伝送部材50は、幹線から枝線が分岐する態様で、ベース部材20に固定されていてもよい。ベース部材20も幹線が固定される部分から枝線が固定される部分が分岐する形状に形成されていてもよい。ここでは複数の電線30及び線状伝送部材50はベース部材20上で分岐している。
【0040】
複数の電線30はベース部材配置区間において複数の電線束34に分かれて並行する。各電線束34は複数の電線30のうち2本以上の電線30が集合したものである。ここでは分岐領域から第1の向きに3つの電線束34A、34B、34Cが並行して延びる。分岐領域から第2の向きに2つの電線束34D、34Eが並行して延びる。分岐領域から第3の向きに2つの電線束34F、34Gが並行して延びる。分岐領域から第1、第2、第3の向きそれぞれに並行に延びる電線束34の数は如何なる数であってもよく、適宜設定可能である。電線束34の数が多くなることによって例えば配線部材10の高さ寸法を小さくできる。また電線束34の数が少なくなることによって例えば配線部材10の幅寸法を小さくできる。電線束34は線状伝送部材束の一例である。上記電線束34のうち任意のいずれか2つを第1線状伝送部材束及び第2線状伝送部材束とすることができる。第1線状伝送部材束及び第2線状伝送部材束は、上記電線束34のうち並行するものの組み合わせのうちの任意のいずれか2つであるとよい。
【0041】
3つの電線束34A、34B、34Cは3つに分かれたままベース部材配置区間から非ベース部材配置区間に延び出て、非ベース部材配置区間において集合している。3つの電線束34A、34B、34Cが束ねられた大束部36が非ベース部材配置区間に設けられている。大束部36は粘着テープTA又は結束バンドなどの結束部材によって束ねられている。大束部36はコルゲートチューブ又はプロテクタなどの外装材に収められて束ねられていてもよい。複数の電線30は非ベース部材配置区間において大束部36として延びる部分を有すると共に、ベース部材配置区間配置面において3つの電線束34A、34B、34Cに分かれて延びる部分を有する。大束部36を構成する複数の電線30は大束部36の一端側において1つのコネクタC1に接続される。大束部36を構成する複数の電線30は大束部36の一端側において分岐して複数のコネクタに接続されてもよい。
【0042】
ここでは3つの電線束34A、34B、34Cから大束部36に移行する部分は非ベース部材配置区間に設けられている。3つの電線束34A、34B、34Cは3つに分かれたままベース部材20の端部20aから非ベース部材配置区間に延び出て、1つのコネクタC1に接続される。3つの電線束34A、34B、34Cから大束部36に移行する部分はベース部材配置区間に設けられていてもよい。なお、移行する部分としては、上述した通り、3つの電線束34A、34B、34Cから大束部36に移行する部分を例示したが、例えば移行する部分としては、3つの電線束34A、34B、34Cから大束部によって最も幅方向において小さくされた箇所までと把握されても良い。また、3つの電線束34A、34B、34Cから大束部によって最も高さ方向において大きくなる箇所までと把握されても良い。
【0043】
2つの電線束34D、34Eは2つに分かれたままベース部材20の端部20bから非ベース部材配置区間に延び出て、1つのコネクタC2に接続される。2つの電線束34D、34Eは非ベース部材配置区間において大束部とされていない。また電線束34Dを構成する電線30は非ベース部材配置区間において粘着テープTAなどによってまとめられていない。電線束34Eを構成する電線30は非ベース部材配置区間において粘着テープTAなどによってまとめられていない。
【0044】
2つの電線束34F、34Gは2つに分かれたままベース部材20の端部20cから非ベース部材配置区間に延び出て、それぞれ別のコネクタC3、C4に接続される。2つの電線束34D、34Eは非ベース部材配置区間において大束部とされていない。電線束34Fを構成する電線30は、非ベース部材配置区間において粘着テープTAなどによってまとめられている。電線束34Gを構成する電線30は、非ベース部材配置区間において粘着テープTAなどによってまとめられている。
【0045】
ベース部材配置区間において複数の電線束34が並行する部分は並行経路部と称されることがある。ここでは3つの電線束34A、34B、34Cの並行経路部と、2つの電線束34D、34Eの並行経路部と、2つの電線束34F、34Gの並行経路部との3つの並行経路部が設けられている。もっとも、3つの並行経路部が設けられる必要はなく、並行経路部の数は1つであってもよいし、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。少なくとも1つの並行経路部が設けられていればよい。例えば複数の電線30がベース部材20上において分岐しない場合、並行経路部の数は1つとなる。また例えば複数の電線30がベース部材20上において分岐する場合でも、並行経路部の数は1つとなり得る。例えば図1において2つの電線束34D、34E、34F、34Gに代えて分岐領域から第2、第3の向きにそれぞれ電線束が1つのみ延びる共に場合は並行経路部の数は3つの電線束34A、34B、34Cの並行経路部の1つとなる。
【0046】
3つの並行経路部のうち1つの並行経路部に大束部36が設けられている。複数の並行経路部に大束部36が設けられていてもよい。複数の並行経路部のうち1つに束ねられたときに最も太くなる並行経路部に大束部36が設けられていると良い。これにより、最も太い大束部36がベース部材20上において並行経路部とされることによって、ベース部材20上における配線部材10の高さ寸法を抑えることができる。
【0047】
電線30は、芯線31及び絶縁被覆32を含む。絶縁被覆32は電線30において最も外側に位置する被覆層である。線状伝送部材50は、伝送線本体51及び被覆層52を含む。被覆層52は線状伝送部材50において最も外側に位置する層である。例えば、線状伝送部材50は、芯線と芯線の周囲の被覆層とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、ツイスト線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。伝送線本体は、電気又は光等を伝送する。伝送線本体は被覆電線における芯線に相当し、光ファイバーケーブルにおけるコア及びクラッドに相当する。
【0048】
電線30及び電気を伝送する線状伝送部材50としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電線30及び電気を伝送する線状伝送部材50の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0049】
また、電線30及び線状伝送部材50は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。
【0050】
カバー部材40は電線30をベース部材20に固定するのに用いられている。線状伝送部材50はカバー部材40を介さずにベース部材20に固定されている。
【0051】
カバー部材40は複数の電線束34を覆う。カバー部材40は配置面21に固定されている。カバー部材40は複数の電線束34の両側及びその間の位置で配置面21に固定されている。電線束34はベース部材20とカバー部材40との間に挟まれている。ベース部材20とカバー部材40とによって電線束34の周囲を囲う環状部が形成される。電線束34は環状部の内部空間を通っている。電線束34の両側方においてベース部材20とカバー部材40とが固定されている。これにより、電線束34が、カバー部材40を介してベース部材20に固定されている。
【0052】
ベース部材20とカバー部材40とが固定された部分は固定部FPとされる。固定部FPが電線束34の並列方向に沿って間隔をあけて3つ以上設けられている。固定部FPは電線束34の延在方向に沿って全体に亘って連続的に設けられていてもよい。ここでは固定部FPが電線束34の延在方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。
【0053】
ベース部材20とカバー部材40との固定態様は如何なる固定態様であってもよい。かかる固定態様としては、接触部位固定であってもよいし、非接触部位固定であってもよいし、両者が併用されていてもよい。ここで接触部位固定とは、ベース部材20とカバー部材40とが接触する部分がくっついて固定されているものである。また、非接触部位固定とは、接触部位固定でない固定態様であり、例えば、縫糸、カバー、粘着テープなどが、カバー部材40をベース部材20に向けて押え込んだり、ベース部材20とカバー部材40を挟み込んだりして、その状態に維持するものである。以下では、ベース部材20とカバー部材40とが、接触部位固定の状態にあるものとして説明する。
【0054】
係る接触部位固定の態様として、接触部位間接固定であってもよいし、接触部位直接固定であってもよいし、異なる領域で両者が併用されていてもよい。ここで接触部位間接固定とは、ベース部材20とカバー部材40とが、その間に設けられた接着剤、粘着剤、両面粘着テープなどを介して間接的にくっついて固定されているものである。また接触部位直接固定とは、ベース部材20とカバー部材40とが別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。接触部位直接固定では、例えばベース部材20とカバー部材40とのうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることが考えられる。
【0055】
かかる接触部位直接固定の状態が形成されるに当たり、樹脂は、例えば、熱によって溶かされることも考えられるし、溶剤によって溶かされることも考えられる。つまり、接触部位直接固定の状態としては、熱による接触部位直接固定の状態であってもよいし、溶剤による接触部位直接固定の状態であってもよい。好ましくは、熱による接触部位直接固定の状態であるとよい。
【0056】
このとき接触部位直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を用いることができる。ここではベース部材20とカバー部材40とは融着されて直接的に固定されている。カバー部材40は、カバー部材側融着層を含む。
【0057】
カバー部材側融着層はベース部材側融着層と融着されている。カバー部材側融着層の材料、構造は、上記ベース部材側融着層で説明された材料、構造が採用可能である。カバー部材40は、1層構造であってもよいし、複数層が積層された積層構造であってもよい。カバー部材40が積層構造である場合、カバー部材側融着層がカバー部材40の一方主面に現れているとよい。カバー部材40はベース部材20と同じ構造であってもよいし、別構造であってもよい。カバー部材40がベース部材20と異なる構造である場合、カバー部材40の構造としては特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば、カバー部材40の厚みとベース部材20の厚みとは同じであってもよいし、カバー部材40の厚みの方がベース部材20の厚みより厚くてもよいし、ベース部材20の厚みの方がカバー部材40の厚みより厚くてもよい。
【0058】
ここではカバー部材40は、ベース部材20と異なる構造である。ここではカバー部材40はカバー部材側融着層のみの1層構造である。従ってカバー部材側融着層の一方主面はカバー部材40の一方主面をなし、カバー部材側融着層の他方主面はカバー部材40の他方主面をなしている。
【0059】
カバー部材40の大きさは特に限定されるものではないが、カバー部材40はベース部材20よりも小さく形成されているとよい。カバー部材40はベース部材20の延在方向及び幅方向のうち少なくとも一方の方向における寸法がベース部材20よりも小さく形成されているとよい。ここではカバー部材40は複数の帯シート42を含む。
【0060】
各帯シート42はベース部材20の延在方向及び幅方向のうち両方の方向における寸法がベース部材20よりも小さく形成されている。各帯シート42は電線束34の延在方向にそって電線束34よりも短尺に形成されている。各帯シート42は電線束34の延在方向に沿った一部を覆う。複数の帯シート42が電線束34の延在方向に沿って間隔をあけて設けられている。各帯シート42はその位置に配置された複数の電線束34を覆う。各帯シート42において複数の電線束34の両側及びその間の位置に固定部が設けられている。各帯シート42に固定部FPが設けられることによって、固定部FPが電線束34の延在方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。
【0061】
電線束34はベース部材配置区間で曲がった経路に配置された曲げ部38を含む。曲げ部38の角度は特に限定されるものではなく、適宜設定可能である。例えば直線部における角度を180度とすると、曲げ部38の角度は150度である。曲げ部38の角度は90度から150度のうちのいずれかの値であるとよい。
【0062】
曲げ部38の両隣の位置においてカバー部材40がベース部材20に固定されている。ここでは電線束34はベース部材20及びカバー部材40とは直接的に接合されていない。このため、電線束34はベース部材20及びカバー部材40に対して延在方向に沿って動くことが可能とされる。曲げ部38の両隣の位置においてカバー部材40がベース部材20に固定されていることによって、この電線束34の延在方向に沿った動きを抑制している。曲げ部38の両隣の位置とは、曲がり始め部分及び曲がり終わり部分の隣の位置である。つまり、一方の固定部FP1に対して他方の固定部FP2側の隣の位置で電線束34が曲り始め、他方の固定部FP2に対して一方の固定部FP1側の隣の位置で電線束34が曲り終わる。
【0063】
すなわち、電線束34は曲げ部38の一方側において第1方向に沿って延び、曲げ部38の他方側において第2方向に沿って延びる。第1方向及び第2方向は相互に交差する方向である。また曲げ部38の一方隣の位置に帯シート42Aが設けられている。また曲げ部38の他方隣の位置に帯シート42Bが設けられている。電線束34のうち曲げ部38の一方側に位置する部分が第1方向に沿って端部側に引っ張られて電線束34が移動しようすると、電線束34が帯シート42A、42Bの少なくとも一方と干渉することによって、移動が抑制される。同様に電線束34のうち曲げ部38の他方側に位置する部分が第2方向に沿って端部側に引っ張られて電線束34が移動しようすると、電線束34が帯シート42A、42Bの少なくとも一方と干渉することによって、移動が抑制される。
【0064】
ここでは分岐領域が1つのみ設けられている。分岐領域は、一部の電線が他の一部の電線と分岐する領域である。分岐領域が複数設けられていてもよい。
【0065】
複数の固定部FPの間にシフト領域が設けられている。シフト領域は複数の電線30のうち少なくとも1本の電線30が自身の属する電線束34を変える領域である。ここでは配線部材10に1つのシフト領域が設けられている。配線部材10において複数のシフト領域が設けられていてもよい。
【0066】
シフト領域は分岐領域に設けられている。分岐領域に設けられたシフト領域は分岐シフト領域とされる。分岐シフト領域において、1つの電線束34に属する複数の電線30のうち一部の電線30が他の一部の電線30と分岐するために電線束34を変えている。分岐領域において電線束における一部の電線30が分岐せずに、電線束34同士が分岐していてもよい。この場合は、当該分岐領域は分岐シフト領域とはみなされないものとする。
【0067】
シフト領域は並行領域に設けられた並行シフト領域を含んでいてもよい。例えば、帯シート42Aと帯シート42Bとの間において、並行する3つの電線束34A、34B、34Cのいずれかの電線30が他の電線束34に移って並行シフト領域とされてもよい。
【0068】
1つのシフト領域において2本以上の電線30が自身の属する電線束34を変えている。ここでは1つの分岐シフト領域が設けられている。この1つの分岐シフト領域において複数の電線30が自身の属する電線束34を変えている。
【0069】
シフト領域において自身の属する電線束34を変えている電線30の組み合わせはシフト線対と称される。ここでシフト線対は並行シフト線対と分岐シフト線対とを含む。並行シフト線対はシフト領域を経た後で分岐せずに並行に延びつつ、電線束34を変える電線30の組み合わせである。並行シフト線対は分岐シフト領域及び並行シフト領域の両方に生じうる。分岐シフト線対は分岐シフト領域を経た後で分岐するのに伴って電線束34を変える電線30の組み合わせである。分岐シフト線対は並行シフト領域には生じえない。
【0070】
具体的には、図4に示す例において、電線束34Aを基準にすると電線30Aは分岐シフト領域を経て電線束34Gに延び、他の電線30は電線束34Fに延びている。このため、電線束34Aを基準にすると電線30Aと他の電線30とは並行シフト線対である。
【0071】
電線束34Bを基準にすると電線30Bはシフト領域を経て電線束34Dに延び、電線30Cは電線束34Eに延び、他の電線30は電線束34Gに延びている。このため、電線束34Bを基準にすると電線30B、30Cは並行シフト線対である。また電線30B、30Cと、他の電線30とは分岐シフト線対である。
【0072】
電線束34Dを基準にすると電線30Bは分岐シフト領域を経て電線束34Bに延び、電線30Dは電線束34Fに延びている。このため、電線束34Dを基準にすると電線30B、30Dは分岐シフト線対である。
【0073】
電線束34Eを基準にすると電線30Cは分岐シフト領域を経て電線束34Bに延び、他の電線30は電線束34Cに延びている。このため、電線束34Eを基準にすると電線30Cと他の電線30とは並行シフト線対である。
【0074】
電線束34Fを基準にすると電線30Dは分岐シフト領域を経て電線束34Dに延び、他の電線30は電線束34Aに延びている。このため、電線束34Fを基準にすると電線30Dと他の電線30とは分岐シフト線対である。
【0075】
電線束34Gを基準にすると電線30Aは分岐シフト領域を経て電線束34Aに延び、他の電線30は電線束34Bに延びている。このため、電線束34Gを基準にすると電線30Aと他の電線30とは並行シフト線対である。
【0076】
なお電線束34Cを基準にするとシフト線対は存在しない。
【0077】
線状伝送部材50はベース部材配置区間に配置されている。線状伝送部材50の被覆層が配置面21に融着されている。線状伝送部材50と配置面21とが融着された部分は融着部WPと称される。第1層22を構成する樹脂材料及び被覆層52を構成する樹脂材料は種類が同じである。
【0078】
ここでは、線状伝送部材50は延在方向に沿って間隔をあけた複数箇所でベース部材20に融着されている。線状伝送部材50は、延在方向に沿って全体に一連にベース部材20に固定されていてもよい。
【0079】
ここでは電線束34及び線状伝送部材50が並行する区間において、固定部FP及び融着部WPが延在方向に沿って同じ位置に設けられている。もっとも、電線束34及び線状伝送部材50が並行する区間において、固定部FP及び融着部WPが延在方向に沿って異なる位置に設けられていてもよい。
【0080】
線状伝送部材50は、複数本(ここでは2本)含まれている。線状伝送部材50は1本のみ含まれていてもよいし、3本以上含まれていてもよい。配線部材10が線状伝送部材50を備える場合、少なくとも1本含まれていればよい。線状伝送部材50は省略されてもよい。図2に示すように複数の電線束34A、34B、34Cと共にベース部材20の外方に延び出る線状伝送部材50は大束部36に束ねられている。複数の電線束34A、34B、34Cと共にベース部材20の外方に延び出る線状伝送部材50は大束部36に束ねられていなくてもよい。
【0081】
ここでは線状伝送部材50の数は電線束34の数よりも少ない。線状伝送部材50の数は電線束34の数と同じかそれよりも多くてもよい。ここでは線状伝送部材50は複数の電線束34の並列方向に沿って最も外側に位置にしている。複数の電線束34の外側に線状伝送部材50が位置している。複数の電線束34の間に線状伝送部材50が位置していてもよい。
【0082】
2本の線状伝送部材50は一部の経路で並行し、分岐領域で分岐して互いに異なる向きに延びる。線状伝送部材50はベース部材20上において全体にわたって並行するものを含んでいてもよい。線状伝送部材50はベース部材20上において全体にわたって並行しないものを含んでいてもよい。2本の線状伝送部材50の一端部は電線30が接続されるコネクタC3、C4とは別のコネクタC5に接続される。2本の線状伝送部材50の他端部は電線30が接続されるコネクタC1、C2に接続される。もっとも線状伝送部材50の一端部及び他端部の両方が、電線30が接続されるコネクタとは異なるコネクタに接続されてもよいし、同じコネクタに接続されてもよい。
【0083】
複数の電線30は配置面21を構成する材料と異種材料によって形成された絶縁被覆32を有する電線(以下、異種線と称される)を含む。異種線の絶縁被覆32を構成する樹脂材料は、第1層22を構成する樹脂材料及び被覆層52を構成する樹脂材料とは種類が異なっている。
【0084】
例えば、第1層22を構成する樹脂材料及び被覆層52を構成する樹脂材料はPVCであり、異種線の絶縁被覆32を構成する材料はPVCとは異なる樹脂材料である。この場合、異種線の絶縁被覆32を構成する材料はPVC以外であれば特に限定されるものではなく、例えば、PE及びPPなどのポリオレフィンであってもよいし、シリコーン樹脂であってもよいし、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂であってもよい。
【0085】
かかる樹脂材料はハロゲンフリーであってもよい。ハロゲンフリーとは、ハロゲンのうち塩素及び臭素が含有されていないか、含有されているとしても微量であることを言う。例えば、IEC(国際電気標準会議)の規格では塩素、臭素のそれぞれの含有率が900ppm以下であって、塩素及び臭素の総量含有率が1500ppm以下の場合をハロゲンフリーと定義している。ハロゲンフリーの線状伝送部材は、ノンハロ線(例えば、電線の場合はノンハロ電線)などとも呼ばれる。
【0086】
第1層22、異種線の絶縁被覆32、及び被覆層52を構成する材料の組み合わせは、上記したものに限られない。例えば、第1層22を構成する樹脂材料及び被覆層52を構成する樹脂材料がPEであり、異種線の絶縁被覆32を構成する材料がPEとは異なる樹脂材料であってもよい。
【0087】
ベース部材側融着層が同じ条件でカバー部材側融着層及び異種線の絶縁被覆32にそれぞれ融着された場合に、ベース部材側融着層とカバー部材側融着層との融着強度は、ベース部材側融着層と異種線の絶縁被覆32との融着強度よりも強い。ベース部材側融着層を構成する樹脂材料は、異種線の絶縁被覆32を構成する樹脂材料とは異なる種類であり、カバー部材側融着層を構成する樹脂材料とは同じ種類であるため、ベース部材側融着層とカバー部材側融着層との融着強度は、ベース部材側融着層と異種線の絶縁被覆32との融着強度よりも強くされやすい。ここで本明細書における融着強度は例えば同じ種類の剥離試験(例えばJIS K6854の各試験)で別々に試験した結果を用いて評価することができる。
【0088】
かかる融着状態を形成する手段は特に限定されるものではない。例えば、超音波融着、加熱加圧融着、熱風融着、高周波融着など種々の融着手段を採用することができる。またこれらの手段によって融着の状態が形成されると、ベース部材20と、カバー部材40及び線状伝送部材50とは、その手段による融着固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波融着によってベース部材20と、カバー部材40及び線状伝送部材50とが融着されている場合、固定部FP及び融着部WPは、超音波融着部となる。
【0089】
各帯シート42において、図4に示すように配線部材10が延在方向に沿って観察された際、カバー部材側融着層のうち電線30の延在方向に沿った一部がベース部材側融着層と融着されている。つまり各帯シート42が電線30の延在方向に沿って全体にベース部材に融着されていない。各帯シート42において電線30の延在方向に沿った一部にベース部材側融着層と融着されていない部分が存在する。
【0090】
<実施形態1の効果等>
以上のように構成された配線部材10によると、複数の電線30は非ベース部材配置区間において大束部36として延び、ベース部材配置区間で複数の電線束34に分かれて延びる。このため、ベース部材配置区間において配線部材10の高さ寸法を抑えることができる。例えば図3に示すように複数の電線束34A、34B、34Cが設けられた部分の高さ寸法を、これらが束ねられた大束部36の高さ寸法よりも小さくできる。また、カバー部材40は複数の電線束34の両側及びその間の位置で配置面21に固定されているため、各電線束34の線状伝送部材が混ざって配線部材10の高さ寸法が意図しない高さとなることが抑制される。これらより、ベース部材20上に電線束34が配置された配線部材10において、ベース部材20上における高さ寸法を抑えることができる。
【0091】
また電線束34の延在方向に沿って間隔をあけた複数の固定部FPの間のシフト領域において、一部の電線30が電線束34を変えている。これにより、大束部36から複数の電線束34に別れる際、経路ごとに電線束34を設定せずに済む。これにより、電線束34の数、それぞれの電線束34の太さなどを適切に設定しやすくなる。例えば、ある区間において複数の電線束34の太さをそろえたり、車両のスペースに応じて特定の電線束34の太さを変えたりすることができる。
【0092】
また1つのシフト領域において2本以上の電線30が自身の属する電線束34を変えている。これにより、シフト領域がベース部材20上に広く分散することを抑制できる。
【0093】
また曲げ部38の両隣の位置においてカバー部材40がベース部材20に固定されている。これにより、電線30がベース部材20の外方に向けて引っ張られた際、電線30とベース部材20とが電線30の延在方向に沿って位置ずれすることが抑制される。
【0094】
またベース部材20とカバー部材40とは融着されて固定されている。これにより、配線部材10においてカバー部材40とベース部材20とを固定する部材を省略できる。
【0095】
また複数の電線30は配置面21を構成する材料と異種材料によって形成された絶縁被覆32を有する線状伝送部材を含む。これにより、配置面21に直接融着しにくい線状伝送部材がカバー部材40によってベース部材配置区間に保持される。
【0096】
また線状伝送部材50の被覆層が配置面21に融着されている。これにより、他の固定部材を介さずにベース部材20に線状伝送部材50が直接固定される。
【0097】
また複数の帯シート42それぞれが複数の電線束34の両側及びその間の位置でベース部材20に固定されている。これにより、ベース部材20全体にカバー部材40を設けずに済む。
【0098】
またベース部材20における複数の端部20a、20b、20cそれぞれから複数の電線束34がベース部材20の外方に延び出ている。これにより、ベース部材20上において電線30が複数の電線束34に分かれた状態に保たれやすい。
【0099】
[変形例]
図5は配線部材10の変形例を示す平面図である。
【0100】
変形例にかかる配線部材110においてベース部材20上に電線30の余長を吸収する余長吸収部が設けられている。余長吸収部は例えば電線30の公差によって生じる余長を吸収する。1つの電線束34を構成する複数の電線30それぞれの余長は異なる値となり得る。この場合、余長吸収部によって吸収される余長の大きさは同じ電線束34を構成する電線30同士で異なり得る。
【0101】
余長吸収部は遠回り経路部35を含む。遠回り経路部35は2つの固定部FPの間に設けられる。当該2つの固定部FPの一方が第1固定部FPとされ、他方が第2固定部FPとされる。遠回り経路部35は第1固定部FPと第2固定部FPとの間での電線30の経路が最短経路よりも遠回りの経路で延びる部分である。ここでは電線30E、30F、30Gに遠回り経路部35が設けられている。電線30E、30Fにおいて遠回り経路部35は曲げ部38に設けられている。
【0102】
図6は曲げ部38における遠回り経路部35の概念図である。
【0103】
図6において曲げ部38の両隣に設けられた固定部FP3、FP4が第1固定部、第2固定部である。線分L1は固定部FP3と固定部FP4とを結ぶ線分である。交点Pは固定部FP3からそれまでの延在方向に沿って延びる直線と、固定部FP4からそれまでの延在方向に沿って延びる直線との交点である。線分L2は固定部FP3と交点Pとを結ぶ線分である。線分L3は固定部FP4と交点Pとを結ぶ線分である。3つの線分は三角形Tの3辺である。
【0104】
電線30が固定部FP3と固定部FP4との間において線分L1に沿って延びたときの電線30の経路が最短経路となる。電線30が線分L1よりも外に膨らんだ経路に沿って延びることによって電線30の経路が遠回り経路部35とされる。電線30の経路が線分L2、L3に沿う経路よりも外側に膨らんでいなくてもよい。電線30の経路が三角形Tの内部にあってもよい。電線30の経路が線分L2、L3に沿う経路よりも外側に膨らんで遠回り経路部35とされていてもよい。電線30の経路が三角形Tの外方に突出していてもよい。
【0105】
図5に戻って電線30Gにおいて遠回り経路部35は直線部に設けられている。遠回り経路部35が直線部に設けられる場合、上記例における線分L2、L3に沿う経路が線分L1に沿う経路と一致する。直線部に遠回り経路部35が設けられる場合、図5に示すように電線30Gは第1固定部FPと第2固定部FPとの間で蛇行する。この際、電線30Gは第1固定部FPと第2固定部FPとの間に山(谷)が1つ現れるように蛇行している。電線30Gは第1固定部FPと第2固定部FPとの間に山(谷)が複数現れるように蛇行してもよい。
【0106】
余長吸収部は遠回り経路部35である必要はない。余長吸収部は例えば撚り部を含んでいてもよい。撚り部は電線束34を構成する電線30が撚られた部分である。電線束34のうち撚り部が形成された部分において電線30は螺旋状に延在して余長が吸収される。撚り部が形成された部分において電線束34を構成するすべての電線30が螺旋状に延在していてもよい。撚り部が形成された部分において電線束34を構成するすべての電線30が螺旋状に延在している必要はなく、一部の電線30が螺旋状に延在していればよい。例えば撚り部が形成された電線束34において余長吸収の必要がない電線30が存在する場合、当該電線30は撚られていなくてもよい。つまり、1つの電線束34において余長吸収の必要のない電線30の周りに余長吸収の必要のある電線30が巻きついて撚り部とされていてもよい。
【0107】
1つの電線束34に遠回り経路部35と撚り部との両方が設けられていてもよい。一組の第1固定部FPと第2固定部FPとの間に遠回り経路部35と撚り部との両方が設けられていてもよい。例えば、2つの固定部FP間における電線束34の経路が最短経路ではなく、当該2つの固定部FP間における電線束34に撚り部が形成されている場合、2つの固定部FP間に遠回り経路部35と撚り部との両方が設けられているとみなすことができる。一組の第1固定部FPと第2固定部FPとの間に遠回り経路部35が設けられ、他の組の第1固定部FPと第2固定部FPとの間に撚り部が設けられていてもよい。1つの電線束34に遠回り経路部35が設けられ、他の電線束34に撚り部が設けられていてもよい。
【0108】
図5に示す例では、遠回り経路部35が分岐領域に設けられている。遠回り経路部35が分岐領域に設けられている必要はなく、如何なる位置に設けられていてもよい。図5に示す例では、複数の電線30E、30F、30Gに遠回り経路部35が設定されている。複数の電線30に遠回り経路部35が設けられている必要はなく、1つの電線30にのみ遠回り経路部35が設けられていてもよい。複数の電線30に設定された遠回り経路部35が一組の第1固定部FPと第2固定部FPとの間に設けられている。複数の電線30に設定された遠回り経路部35が一組の第1固定部FPと第2固定部FPとの間に設けられている必要はなく、複数組の第1固定部FPと第2固定部FPとの間に分散して設けられていてもよい。
【0109】
配線部材110において、カバー部材40はカバー部分44を含む。カバー部分44は遠回り経路部35を覆う部分である。ここではカバー部分44は、帯シート42とは異なる部材である。カバー部分44はその間に遠回り経路部35が設けられた2つの帯シート42も覆っている。カバー部分44の材料、剛性等は如何なる材料、剛性等であってもよい。カバー部分44は例えば帯シート42よりも高剛性のベース部材20であってもよい。
【0110】
ここではカバー部分44は分岐領域を覆っている。カバー部分44はベース部材20の分岐部分に応じた形状に形成されている。
【0111】
カバー部分44はベース部材20に固定されている。ここではベース部材20の側縁部の位置においてカバー部分44とベース部材20とが固定されている。カバー部分44とベース部材20との固定部FP5はベース部材20の側縁に沿って延びている。ここではカバー部分44と帯シート42とは固定されていない。カバー部分44と帯シート42とは固定されていてもよい。カバー部分44とベース部材20とはベース部材20の幅方向中間部において固定されていない。カバー部分44とベース部材20とはベース部材20の幅方向中間部において固定されていてもよい。並行する複数の電線束34の間においてカバー部分44とベース部材20とは固定されていない。並行する複数の電線束34の間においてカバー部分44とベース部材20とは固定されていてもよい。この場合、帯シート42が省略されてもよい。
【0112】
カバー部分44とベース部材20との固定態様は如何なる固定態様であってもよく、例えば帯シート42とベース部材20との固定態様で説明した固定態様のいずれかであってもよい。カバー部分44とベース部材20との固定態様は帯シート42とベース部材20との固定態様と同じであってもよいし、異なっていてもよい。ここではカバー部分44はベース部材20と融着されている。
【0113】
このような配線部材110によると、ベース部材20上に電線30E、30F、30Gの余長を吸収する余長吸収部が設けられている。これにより、ベース部材20上において電線30E、30F、30Gの公差が吸収される。また余長吸収部は、第1固定部FP3及び第2固定部FP4の間での電線30の経路が最短経路よりも遠回りの経路で延びる遠回り経路部35を含む。これにより、簡易に余長吸収部を設けることができる。また遠回り経路部35がカバー部分44に覆われていることにより、電線30E、30F、30Gの余長部分が外方に飛び出すことが抑制される。
【0114】
図7は配線部材10の別の変形例を示す平面図である。図8図7のVIII-VIII線に沿って切断された断面図である。
【0115】
変形例にかかる配線部材210において電線束34はテープ巻部39を含む。テープ巻部39は粘着テープTAが巻かれた部分である。実施形態1の配線部材10では電線束34は粘着テープTAによって束ねられていないのに対し、本例の配線部材210では電線束34は粘着テープTAによって束ねられている。カバー部材40はテープ巻部39を覆う部分の側方位置においてベース部材20と固定されている。これにより、テープ巻部39において電線束がばらけにくくなり、カバー部材40とベース部材20とを固定する際、電線30がカバー部材40とベース部材20との間に噛み込まれることが抑制される。
【0116】
ここではテープ巻部39は電線束34の延在方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。テープ巻部39は電線束34の延在方向に沿って全体にわたって連続的に設けられていてもよい。各テープ巻部39の位置に別の帯シート42が被せられている。延在方向に沿って間隔をあけた複数のテープ巻部39を一つのカバー部材40が覆っていてもよい。各帯シート42がベース部材20と固定されている。
【0117】
電線束34において、テープ巻部39が設けられる部分と、帯シート42が被せられる部分とが対応していてもよい。つまり、テープ巻部39が設けられる部分にはもれなく帯シート42が被せられ、帯シート42が被せられる部分にはもれなくテープ巻部39が設けられていてもよい。
【0118】
電線束34において、テープ巻部39が設けられる部分と、帯シート42が被せられる部分とが対応していなくてもよい。テープ巻部39が設けられる部分に帯シート42が被せられない部分があってもよい。例えば電線束34において電線30の本数が多い場合などに、帯シート42の間にテープ巻部39が設けられてもよい。これにより、帯シート42の間において1つの電線束34を構成する複数の電線30がばらけにくくなる。また例えば曲げ部38においてテープ巻部39が設けられてもよい。これにより、曲げ部38において1つの電線束34を構成する複数の電線30がばらけにくくなる。
【0119】
帯シート42が被せられる部分にテープ巻部39が設けられていない部分があってもよい。例えば電線束34において電線30の本数が少ない場合などに、帯シート42が被せられる部分にテープ巻部39が設けられていなくてもよい。これにより、テープ巻き作業が簡略化される。また例えば幹線部から枝線部に分岐する際、幹線部における1つの電線束34を構成する電線30の数が、枝線部における1つの電線束34を構成する電線30の数よりも多い場合が考えられる。この場合、幹線部において、電線束34にテープ巻部39が設けられ、枝線部にテープ巻部39が設けられていなくてもよい。
【0120】
図8に示す例ではテープ巻部39の横断面形状は円形状に形成されている。テープ巻部39の横断面形状は、偏平形状に形成されていてもよい。
【0121】
このほか、複数の電線30は線状伝送部材50よりも配置面21への融着が難しい電線(以下、難融着線と称される)を含んでいてもよい。難融着線は上記異種線のほか例えばツイスト線などが想定される。ツイスト線は差動信号を送るペアの被覆電線が撚られたものである。
【0122】
具体的にはツイスト線がベース部材配置区間に配置されると、ツイスト線の延在方向に沿って横並び部分と縦並び部分とが交互に連続する。横並び部分は2本の被覆電線が配置面21に平行な方向に並ぶ部分である。縦並び部分は2本の被覆電線が配置面21の法線方向に並ぶ部分である。ツイスト線においてノイズ抑制効果を低減させないためになるべく横並び部分及び縦並び部分が乱れないことが好ましい。電線が配置面21に融着される際、加熱と共にプレスされることがある。この際、ツイスト線がプレスされるにあたって、横並び部分及び縦並び部分の乱れを生じさせずに、良好な融着強度を得るための条件設定が難しいことがある。このため、ツイスト線は単心線よりもベース部材20に融着が難しい。
【0123】
また非ベース部材配置区間における3つの電線束34A、34B、34Cの構成、2つの電線束34D、34Eの構成、2つの電線束34F、34Gの構成は上記したものに限られず、適宜変更可能であり、任意に組み合わせることもできる。例えば、2つの電線束34D、34Eは非ベース部材配置区間において、大束部とされていてもよい。
【0124】
また実施形態1の配線部材10のように非ベース部材配置区間が複数設けられる場合、複数の非ベース部材配置区間のうち少なくとも1つに大束部36が設けられていればよい。またベース部材配置区間において電線束34を構成する複数の電線30には、大束部36とされない電線30があってもよい。ベース部材配置区間において電線束34を構成する複数の電線30のうち少なくとも一部の電線30が、少なくとも1つの非ベース部材配置区間のいずれかにおいて大束部36とされていればよい。実施形態1の配線部材10では、ベース部材配置区間において電線束34D、34Fを構成する電線30Dは、非ベース部材配置区間において大束部36とされていない。ベース部材配置区間において電線束34を構成する複数の電線30すべてが、少なくとも1つの非ベース部材配置区間のうちのいずれかにおいて大束部36とされてもよい。
【0125】
上記例ではシフト領域と遠回り経路部35とが共に分岐領域に設けられていたが、このことは必須の構成ではない。シフト領域と遠回り経路部35とがそれぞれ異なる固定部FP間に設けられていてもよい。例えば、シフト領域と遠回り経路部35との一方が分岐領域に設けられ、他方が曲げ部38に設けられてもよい。またシフト領域と遠回り経路部35とが同じ固定部FP間設けられる場合でも、その固定部FP間が分岐領域以外の固定部間FPであってもよい。例えば、シフト領域と遠回り経路部35とが共に曲げ部38に設けられてもよい。つまり、遠回り経路部35のような特定の固定部FP間に設けられる余長吸収部は、シフト領域と同じ固定部FP間に設けられていてもよい。この場合、当該固定部FP間の位置は特に限定されず、分岐領域、曲げ部38、直線部など、いずれの固定部FP間であってもよい。また遠回り経路部35のような特定の固定部FP間における余長吸収部が第1の固定部FP間に設けられ、シフト領域が第1の固定部FP間とは異なる第2の固定部FP間に設けられてもよい。この場合、第1の固定部FP間の位置、及び第2の固定部FP間の位置は互いに異なる位置であればよく、それぞれの位置は、分岐領域、曲げ部38、直線部など、いずれの固定部FP間であってもよい。
【0126】
このような余長吸収部とシフト領域との位置関係については、シフト線対をなす電線30に遠回り経路部35のような余長吸収部が設けられる場合に適用されてもよいし、シフト線対をなす電線30とは別の電線30に遠回り経路部35が設けられる場合に適用されてもよい。つまり、シフト線対をなす電線30におけるシフト領域と、当該電線30に設けられた余長吸収部とが同じ固定部FP間にあってもよいし、異なる固定部FP間にあってもよい。またシフト線対をなす電線30におけるシフト領域と、当該電線30とは別の電線に設けられた余長吸収部とが同じ固定部FP間にあってもよいし、異なる固定部FP間にあってもよい。
【0127】
上記例ではカバー部材40によって覆われる第1線状伝送部材が電線30であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。第1線状伝送部材は、第2の線状伝送部材としての線状伝送部材50と同様に電気又は光を伝送する線状伝送部材であればよい。上記例ではすべての電線束34が電気を伝送する電線30のみで構成されていたが、このことは必須の構成ではない。例えば少なくとも1つの電線束34には光を伝送する線状伝送部材(例えば光ファイバーケーブルなど)が含まれていてもよい。また例えば少なくとも1つの電線束34に代えて光を伝送する線状伝送部材のみで構成された線状伝送部材束が採用されてもよい。
【0128】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0129】
10、110、210 配線部材
20 ベース部材
20a、20b、20c 端部
21 配置面
22 第1層
24 第2層
30、30A、30B、30C、30D、30E、30F、30G 電線(第1の線状伝送部材)
31 芯線
32 絶縁被覆(被覆層)
34、34A、34B、34C、34D、34E、34F、34G 電線束(線状伝送部材束)
35 遠回り経路部
36 大束部
38 曲げ部
39 テープ巻部
40 カバー部材
42、42A、42B 帯シート
44 カバー部分
50 線状伝送部材(第2の線状伝送部材)
51 伝送線本体
52 被覆層
C、C1、C2、C3、C4、C5 コネクタ
FP、FP1、FP2、FP3、FP4 固定部
WP 融着部
L1、L2、L3 線分
T 三角形
TA 粘着テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8